説明

多孔質成形型

【課題】本発明では、従来に比べて有意な加工性を有するとともに、高温でも室温と同様に使用可能な多孔質成形型を提供することを目的とする。
【解決手段】主成分としてアルミナを含む多孔質成形型であって、最大長さが3μm〜10μmの範囲の板状アルミナ粒子を全体の50wt%以上含み、30%〜55%の範囲の気孔率を有し、2μm〜10μmの範囲の気孔径を有することを特徴とする多孔質成形型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体等を成形する際に使用される多孔質成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、成形体は、原料となる粉末を含むスラリーを多孔質成形型に注入し、スラリー中の水分を多孔質成形型に吸水、着肉させ、成形体を得た後、得られた湿潤成形体を乾燥させることにより製造される。
【0003】
このような多孔質成形型として、従来より石膏型や樹脂を含む成形型が広く用いられている。しかしながら、石膏型を使用して成形体を作製する場合、しばしば、成形体の成形中に石膏成分が溶出し、成形体の汚染が生じることが問題となる。また、石膏型は、50℃〜70℃程度の温度でしか使用することができない。一方、樹脂を含む成形型は、200℃〜300℃以上の温度では、樹脂が焼失してしまうため、使用することができない。
【0004】
このような成形型による汚染および/または耐熱性に関する問題に対処するため、特許文献1には、アルミナ−ガラス複合多孔質型を使用して、成形体を成形する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−179719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多孔質成形型として、特許文献1に記載のアルミナ−ガラス複合多孔質型を使用することにより、成形体の汚染の問題を軽減することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、多孔質成形型の加工性については、何らの考慮もなされておらず、このため、アルミナ−ガラス複合多孔質型は、製作時の加工性に問題を有する可能性がある。また、最近は、多孔質成形型に対して、温度に制約されず、より高温で使用することができるよう、耐熱性が要求されるようになってきている。しかしながら、このアルミナ−ガラス複合多孔質型は、ガラスを含んでいるため、ガラスが軟化するような高温では、型の変形、ゆがみが生じるという問題がある。このため、アルミナ−ガラス複合多孔質型は、成形体の仮焼処理(型と成形体を同時に高温に保持する処理)等には使用することはできない。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本発明では、従来に比べて有意な加工性を有するとともに、比較的良好な耐熱性を有する多孔質成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、主成分としてアルミナを含む多孔質成形型であって、
最大長さが3μm〜10μmの範囲の板状アルミナ粒子を全体の50wt%以上含み、
30%〜55%の範囲の気孔率を有し、
2μm〜10μmの範囲の気孔径を有することを特徴とする多孔質成形型が提供される。
【0010】
ここで、本発明による多孔質成形型は、アスペクト比(最大長さ/厚さ)が5以上の板状アルミナ粒子を50%以上含んでも良い。
【0011】
また、本発明による多孔質成形型は、さらに、アルミナ以外のセラミック成分を最大5wt%含んでも良い。
【0012】
この場合、前記アルミナ以外のセラミック成分は、カルシア(CaO)および/またはシリカ(SiO)であっても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、従来に比べて有意な加工性を有するとともに、比較的良好な耐熱性を有する多孔質成形型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】板状アルミナ粒子の形態の一例を概略的に示した図である。
【図1B】板状アルミナ粒子の別の形態の一例を概略的に示した図である。
【図1C】板状アルミナ粒子の別の形態の一例を概略的に示した図である。
【図1D】板状アルミナ粒子の別の形態の一例を概略的に示した図である。
【図2】本発明による多孔質成形型を製作する際のフローの一例を概略的に示した図である。
【図3】実施例1に係る多孔質成形型のサンプルから得たSEM組織写真である。
【図4】比較例1に係る多孔質成形型のサンプルから得たSEM組織写真である。
【図5】比較例2に係る多孔質成形型のサンプルから得たSEM組織写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の構成を説明する。
【0016】
これまで、成形体を成形する際などに広く使用されてきた石膏型は、使用中に、成形体中に石膏成分が溶出し、成形体の汚染が生じ得るという問題を抱えている。この問題を抑制するため、アルミナ−ガラス複合多孔質型を使用することが提案されている(特許文献1)。
【0017】
しかしながら、最近の多孔質成形型には、より幅広い温度範囲で使用できることが要求されるようになってきている。この点、特許文献1に記載のアルミナ−ガラス複合多孔質型は、ガラスを含んでおり、ガラスが軟化するような高温では、使用することができないため、使用温度範囲が限られるという問題がある。
【0018】
また、特許文献1では、多孔質成形型の加工性については、何らの考慮もなされておらず、このため、アルミナ−ガラス複合多孔質型は、製作時の加工性に問題を有する可能性がある。
【0019】
このような観点から、本願発明者らは、高温(1000℃〜1200℃)を含む幅広い温度範囲で使用可能であり、かつ加工が容易な多孔質成形型について、鋭意研究開発を行ってきた。そして、多孔質成形型の原材料主成分として板状アルミナ粒子を使用することにより、使用温度範囲の改善と、有意な加工性の両方が得られることを見出し、本発明に至った。
【0020】
すなわち、本発明では、
主成分としてアルミナを含む多孔質成形型であって、
最大長さが3μm〜10μmの範囲の板状アルミナ粒子を全体の50wt%以上含み、
30%〜55%の範囲の気孔率を有し、
2μm〜10μmの範囲の気孔径を有することを特徴とする多孔質成形型が提供される。
【0021】
本願において「主成分」とは、多孔質成形型中に50wt%以上含まれる成分を意味する。
【0022】
また、「板状アルミナ粒子」とは、縦a(最大長さ)、横b(縦aと直交する最大寸法)、および厚さcを有するアルミナ粒子であって、縦aと厚さcの比、すなわちアスペクト比が3以上である粒子を意味する。
【0023】
なお、本願では、板状アルミナ粒子の最大長さを、板状アルミナ粒子の「粒子径」とも称する。
【0024】
図1A〜図1Dには、板状アルミナ粒子の一形態を示す。図1Aの板状アルミナ粒子は、略楕円状または略台形状の扁平粒子である。図1Bの板状アルミナ粒子は、略短冊状の扁平粒子である。また、図1Cの板状アルミナ粒子は、略三角状の扁平粒子であり、図1Dの板状アルミナ粒子は、略多角状の扁平粒子である。この他にも、様々な形状の板状アルミナ粒子が存在することは、明らかであろう。
【0025】
ここで、本発明において、多孔質成形型の原材料主成分として板状アルミナ粒子を使用したのは、これにより、多孔質成形型の加工性が向上するからである。すなわち、主成分として板状アルミナ粒子を含む多孔質成形型の場合、球状粒子で構成された多孔質成形型に比べて、粒子相互の接触箇所が少なくなるとともに、粒子間に隙間が生じやすくなる。このため、主成分として板状アルミナ粒子を含む多孔質成形型の場合、比較的小さな力で、粒子間の結合を断ち切ることが可能となり、このため、多孔質成形型の加工が容易となる。
【0026】
また、同じ理由から、板状アルミナ粒子を使用することにより、多孔質成形型の気孔率を比較的容易に制御することが可能となり、例えば気孔率を広い範囲で調整することができるようになる。
【0027】
さらに、本発明の多孔質成形型は、ガラスを含まず、主成分としてアルミナを含むため、室温からアルミナの耐熱限界温度未満の温度(例えば約1200℃)までの、幅広い温度域で使用することができる。
【0028】
また、本発明において、3μm〜10μmの範囲の粒子径を有する板状アルミナ粒子の存在量は、全体の50wt%以上である。板状アルミナ粒子の存在量がこれよりも少ない場合、前述の効果が十分に得られなくなるおそれがあるからである。特に、板状アルミナ粒子の存在量は、全体の60wt%以上であることが好ましく、75wt%以上であることがより好ましい。また、板状アルミナ粒子の粒子径がこれよりも大きい場合、多孔質成形型の強度が低下するおそれがある。また、板状アルミナ粒子の粒子径がこれよりも小さい場合、多孔質成形型の加工性が低下するおそれがある。
【0029】
所定の寸法(最大長さが3μm〜10μm)の板状アルミナ粒子の存在量は、多孔質成形型のサンプルのSEM写真から、画像解析法等により、容易に測定することができる。
【0030】
前述のように本発明による多孔質成形型において、気孔径は、2μm〜10μmの範囲である。これは、気孔径が10μmを超える多孔質成形型では、成形体の成形過程において、毛細管現象によるスラリー中の水分の吸水現象が生じにくくなるためである。また、気孔径が2μm未満の場合、多孔質成形型の加工性が低下するという問題が生じ得る。気孔径は、特に、2μm〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0031】
また、本発明による多孔質成形型において、気孔率は、30%〜55%の範囲である。これは、気孔率が55%を超える多孔質成形型では、強度が著しく低下してしまうからである。また、気孔率が30%未満の場合、成形体の成形過程において、吸水量が減少するという問題が生じ得る。気孔率は、特に、40%〜50%の範囲であることが好ましい。
【0032】
なお、多孔質成形型の気孔径および気孔率は、多孔質成形型のサンプルを用いた水銀ポロシメータにより測定することができる。
【0033】
また、本発明による多孔質成形型において、板状アルミナ粒子のアスペクト比は、5以上(最大10程度)であることが好ましい。これは、実際の多孔質成形型の場合、多孔質成形型のサンプルのSEM写真において、アスペクト比が5以上の板状アルミナ粒子が50%以上存在するかどうかを判定することにより判断される。
【0034】
なお、本発明による多孔質成形型は、主成分としてのアルミナ以外にも、他のセラミック成分を含んでも良い。そのようなセラミック成分は、特に限られないが、例えば、カルシア(CaO)および/またはシリカ(SiO)等であっても良い。多孔質成形型がカルシアおよびシリカを含有する場合、これらの成分は、多孔質成形型の製造時にセメント成分として添加されるものであり、多孔質成形型の製造時の保形性を高めることができるという効果が得られる。なお、同様の理由で、多孔質成形型の製造の際には、セラミック成分の他に、さらに有機バインダを添加しても良い。
【0035】
(本発明による多孔質成形型の製造方法)
次に、図面を参照して、前述のような特徴を有する本発明の多孔質成形型の製造方法の一例について説明する。
【0036】
図2には、本発明の多孔質成形型の製造方法の一例を概略的に示す。
【0037】
図2に示すように、本発明による多孔質成形型の製造方法は、板状アルミナ粒子を含む原材料を準備するステップ(ステップS110)と、原材料に水等を加えて、原料スラリーを調製するステップ(ステップS120)と、原料スラリーを型中に注入し、成型物を形成するステップ(ステップS130)と、成型物を焼成するステップ(ステップS140)と、成型物を切削加工して、所望の形状の多孔質成形型を得るステップ(ステップS150)とを有する。以下、各ステップについて説明する。
【0038】
(ステップS110)
最初に、3μm〜10μmの範囲の粒子径を有する板状アルミナ粒子を含む原材料が準備される。
【0039】
この他、原材料には、板状アルミナ粒子以外のアルミナ粒子が添加されても良い。
【0040】
また、原材料には、必要に応じて、さらに、アルミナ以外のセラミック粒子(例えば、カルシア粒子および/またはシリカ粒子など)が添加されても良い。アルミナ以外のセラミック粒子は、原材料に対して最大5wt%の量だけ添加される。アルミナ以外のセラミック粒子の平均粒子径は、特に限られないが、例えば1μm〜5μmの範囲であっても良い。
【0041】
3μm〜10μmの粒子径を有する板状アルミナ粒子の量は、原材料全体に対して、重量比で、50wt%以上であり、これは、60wt%以上であることが好ましく、75wt%以上であることがより好ましい。
【0042】
原材料中に、3μm〜10μmの粒子径を有する板状アルミナ粒子以外の粒子が含まれる場合、各粒子は、十分に混合されることが好ましい。
【0043】
(ステップS120)
次に、ステップS110で得られた原材料に、水のような溶媒(以下、単に「溶媒」と称する)が添加、混合され、原料スラリーが調製される。原材料と溶媒の混合割合は、特に限られないが、例えば、60:40〜85:15(原材料:溶媒)の範囲であっても良い。
【0044】
原料スラリーには、さらに、分散剤(例えば、全体の5wt%程度)が添加されても良い。これにより、原材料の溶媒中の分散性が向上する。また、保形性を高めるため、原料スラリーには、さらに、例えば、1%〜2%程度の有機バインダを添加しても良い。
【0045】
(ステップS130)
次に、ステップS120で調製された原料スラリーは、型内に注入される。これにより、成型物が形成される。型は、例えばポリプロピレンのようなプラスチック、または木材等で構成されていても良い。
【0046】
また、注入後に、型の近傍に振動手段を設置し、この振動手段で型を振動させ、原料スラリー中の気泡を積極的に除去しても良い。
【0047】
これにより、型内に成型物が形成される。成型物は、その後、型から取り外される。
【0048】
(ステップS140)
次に、得られた成型物が乾燥、焼成される。
【0049】
乾燥方法は、特に限られず、自然乾燥、または乾燥炉(60℃〜90℃)による乾燥等、各種方法が使用され得る。
【0050】
焼成温度は、例えば、1400℃〜1700℃の範囲(例えば1600℃)であっても良い。
【0051】
(ステップS150)
次に、得られた成型物が切削加工される。これにより所望の形状の多孔質成形型が得られる。なお、得られた成型物は、前述のように、良好な加工性を有するため、容易に切削加工することができることに留意する必要がある。また、本発明による多孔質成形型は、アルミナを主成分としているため、高温(〜1200℃)でも使用することができる。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0053】
(実施例1)
以下の方法により、多孔質成形型用のブロックを作製した。
【0054】
まず、以下の方法により、原料の調製を行った。
【0055】
市販のアルミナ製粒子(昭和電工社製;AL−13KT)を解砕し、粒子径が3μm〜10μmの範囲の板状アルミナ粒子を75wt%含む原料アルミナ粒子を準備した。この原料アルミナ粒子は、他に、粒子径が1μm〜3μmの範囲の微細アルミナ粒子を10wt%、および、粒子径が10μm〜35μmの範囲の2次凝集アルミナ粒子を15wt%含む。
【0056】
次に、この原料アルミナ粒子と、セメント剤(AGCセラ社製;アルミナセメント1号)とを十分に混合し混合粉末を得た。原料アルミナ粒子とセメント剤の混合比は、95:5(重量比)とした。なお、このセメント剤は、アルミナ55wt%、カルシア36wt%、およびシリカ4wt%を含む。従って、混合粉末中のカルシア量は、0.05×36wt%=1.8wt%であり、混合粉末中のシリカ量は、0.05×4wt%=0.2wt%である。
【0057】
次に、重量比で、混合粉末75に対して水を25加えて、混合媒体を調製した。さらにこの混合媒体100に対して分散剤を5wt%添加した後、混練し、原料ペーストを調製した。
【0058】
得られた原料ペーストを振動台上に設置された型内に注入した。型は、ポリプロピレン性であり、寸法は、縦150mm×横150mm×深さ50mmである。その後、成型物を室温に維持し、乾燥させた。さらに、成型物を1600℃で焼成することにより、実施例1に係る多孔質成形型用のブロック(以下、「実施例1に係るブロック」と称する)を得た。実施例1に係るブロックの厚さは、45mmである。
【0059】
実施例1に係るブロックから、サンプルを切り出し、水銀ポロシメータにより、実施例1に係るブロックの気孔率および気孔径を測定した。その結果、気孔率は、43%であり、気孔径は、2.7μmであった。
【0060】
図3には、実施例1に係るブロックのサンプルから得た組織写真を示す。図3から、実施例1に係るブロックは、多数の板状アルミナ粒子で構成されていることがわかる。
【0061】
(実施例2)
実施例1と同様の方法により、実施例2に係る多孔質成形型用のブロック(以下、「実施例2に係るブロック」と称する)を得た。
【0062】
ただし、実施例2では、市販のアルミナ製粒子(昭和電工社製;AL−13KT)を解砕する条件を変え、粒子径が3μm〜10μmの範囲の板状アルミナ粒子を50wt%含む原料アルミナ粒子を準備した。この原料アルミナ粒子は、他に、粒子径が1μm〜3μmの範囲の微細アルミナ粒子を10wt%、および、粒子径が10μm〜50μmの範囲の2次凝集アルミナ粒子を40wt%含む。その他の作製条件は、実施例1の場合と同様である。
【0063】
実施例2に係るブロックから、サンプルを切り出し、水銀ポロシメータにより、実施例2に係るブロックの気孔率および気孔径を測定した。その結果、気孔率は、47%であり、気孔径は、3.1μmであった。
【0064】
実施例2に係るブロックのサンプルから得た組織写真から、実施例2に係るブロックの組織は、多数の板状アルミナ粒子で構成されていることがわかった。
【0065】
(実施例3)
実施例1と同様の方法により、実施例3に係る多孔質成形型用のブロック(以下、「実施例3に係るブロック」と称する)を得た。
【0066】
ただし、実施例3では、焼成をおこなう温度を100℃下げて1500℃とした。その他の作成条件は、実施例1の場合と同様である。
【0067】
実施例3に係るブロックから、サンプルを切り出し、水銀ポロシメータにより、実施例3に係るブロックの気孔率および気孔径を測定した。その結果、気孔率は46%であり、気孔径は、2.96μmであった。
【0068】
実施例3に係るブロックのサンプルから得た組織写真から、実施例3に係るブロックの組織は、多数の板状アルミナ粒子で構成されていることがわかった。
【0069】
(比較例1)
実施例1と同様の方法により、比較例1に係る多孔質成形型用のブロック(以下、「比較例1に係るブロック」と称する)を得た。
【0070】
ただし、比較例1では、市販のアルミナ製粒子(昭和電工社製;AL−13KT)を解砕する条件を変え、粒子径が3μm〜10μmの範囲の板状アルミナ粒子を20wt%含むアルミナ粒子を準備した。この原料アルミナ粒子は、他に、粒子径が1.5μm〜3μmの範囲の微細アルミナ粒子を60wt%含み、粒子径が10μm〜20μmの範囲の2次凝集アルミナ粒子を20wt%含む。その他の作製条件は、実施例1の場合と同様である。
【0071】
比較例1に係るブロックから、サンプルを切り出し、水銀ポロシメータにより、実施例2に係るブロックの気孔率および気孔径を測定した。その結果、気孔率は、24%であり、気孔径は、1.26μmであった。
【0072】
図4には、比較例1に係るブロックのサンプルから得た組織写真を示す。図4から、比較例1に係るブロックは、隙間が少なく、粒子同士が緻密に結合された組織となっていることがわかる。
【0073】
(比較例2)
実施例1と同様の方法により、比較例2に係る多孔質成形型用のブロック(以下、「比較例2に係るブロック」と称する)を得た。
【0074】
ただし、比較例1では、市販のアルミナ製粒子(昭和電工社製;AL−13KT)を解砕する条件を変え、粒子径が3μm〜10μmの範囲の板状アルミナ粒子を20wt%含むアルミナ粒子を準備した。この原料アルミナ粒子は、他に、粒子径が10μm〜350μmの範囲の2次凝集アルミナ粒子を80wt%含む。その他の作製条件は、実施例1の場合と同様である。
【0075】
比較例2に係るブロックから、サンプルを切り出し、水銀ポロシメータにより、比較例2に係るブロックの気孔率および気孔径を測定した。その結果、気孔率は、62%であり、気孔径は、14.8μmであった。
【0076】
図5には、比較例2に係るブロックのサンプルから得た組織写真を示す。図5から、比較例2に係るブロックは、多数のアルミナの二次粒子を含んでおり、大きな隙間が多数存在する組織となっていることがわかる。
【0077】
(比較例3)
実施例1と同様の方法により、比較例3に係る多孔質成形型用のブロック(以下、「比較例3に係るブロック」と称する)を得た。
【0078】
ただし、比較例3では、板状粒子に替えて等軸状(球状)粒子を原料として用いた。アルミナ粒子としてフジミインコーポレーテッド製WA粒子を用い、#1000(粒径7〜32μm)、#3000(粒径2〜13μm)、および#8000(粒径0.6〜6μm)を配合して実施例1とほぼ同等の粒度分布を有する原料アルミナ粒子を調製した。すなわち、この原料アルミナ粒子は、粒子径が3μm〜10μmの範囲の等軸状(球状)アルミナ粒子を75wt%、粒子径が1μm〜3μmの範囲の微細アルミナ粒子を10wt%、および粒子径が10μm〜35μmの範囲の2次凝集アルミナ粒子を15wt%含む。その他の作製条件は、実施例1の場合と同様である。
【0079】
比較例3に係るブロックから、サンプルを切り出し、水銀ポロシメータにより、比較例3に係るブロックの気孔率および気孔径を測定した。その結果、気孔率は28%であり、気孔径は、1.91μmであった。
【0080】
比較例3に係るブロックのサンプルから得た組織写真から、比較例3に係るブロックの組織は、多数の等軸状(球状)アルミナ粒子で構成されていることがわかった。
【0081】
表1には、各ブロックの原料中に含まれる各粒子径のアルミナ粒子の存在量、ならびに各ブロックの気孔率および気孔径をまとめて示した。
【0082】
【表1】

(加工性評価)
前述の実施例1〜実施例3に係るブロック、ならびに比較例1〜比較例3に係るブロックを用いて、加工性の評価を行った。
【0083】
加工性の評価は、以下のようにして実施した。
【0084】
40×40×12mmのブロックの12mmの厚さ方向に、超硬ドリルで孔開け加工を行う。この際、荷重15kgで、ドリルをブロックに押し付け、直径8.5mm、深さ12mmの孔(貫通孔)を開口するのに必要な時間を測定した。
【0085】
測定の結果を前述の表1に示す。この結果から、比較例1および比較例3に係るブロックでは、孔開け加工に必要な時間は、215秒および240秒程度であり、加工性が極めて悪いことがわかる。一方、実施例1〜実施例3に係るブロックでは、孔開け加工に必要な時間は、それぞれ、75秒、55秒、および60秒程度であり、加工性が比較的良好であることがわかる。なお、比較例2に係るブロックでは、手で触れただけでもぽろぽろと崩れるほど脆く、孔開け加工を行うことはできなかった。
【0086】
以上の結果から、本発明による多孔質成形型は、良好な加工性を有することが確認された。
【0087】
(耐熱性評価)
次に、実施例1〜実施例3のブロックを用いて、耐熱性評価試験を行った。
【0088】
耐熱性評価試験は、以下のように実施した。
【0089】
まず、各ブロックに一定長さL1(100mm)の線を刻印する。次に、各ブロックを1200℃で2時間保持し、その後室温まで降温する。各ブロックの線の長さL2を再度測定し、以下の式(1)から、各ブロックの収縮度C(%)を評価した:

収縮度C(%)={(L1−L2)/L1}×100 式(1)

試験結果を表2に示す。
【0090】
【表2】

耐熱性評価試験の結果から、いずれのブロックにおいても、収縮度C(%)は、0.5%以内であった。このように、実施例1〜実施例3のブロックの耐熱性は、実用上問題ないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、セラミック製の多孔質成形型に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分としてアルミナを含む多孔質成形型であって、
最大長さが3μm〜10μmの範囲の板状アルミナ粒子を全体の50wt%以上含み、
30%〜55%の範囲の気孔率を有し、
2μm〜10μmの範囲の気孔径を有することを特徴とする多孔質成形型。
【請求項2】
当該多孔質成形型は、アスペクト比(最大長さ/厚さ)が5以上の板状アルミナ粒子を50%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の多孔質成形型。
【請求項3】
さらに、アルミナ以外のセラミック成分を最大5wt%含むことを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質成形型。
【請求項4】
前記アルミナ以外のセラミック成分は、カルシア(CaO)および/またはシリカ(SiO)であることを特徴とする請求項3に記載の多孔質成形型。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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