説明

多孔質支持体/水素選択透過膜基板及び多孔体支持型燃料電池

【課題】電極のガス透過性が高く、かつ、電解質膜のイオン伝導度が高い多孔体支持型燃料電池、及び、このような多孔体支持型燃料電池のアノード電極、水素分離膜等に使用することが可能な多孔質支持体/水素選択透過膜基板を提供すること。
【解決手段】以下の構成を備えた多孔質支持体/水素選択透過膜基板、及び、これをアノード電極に用いた多孔体支持型燃料電池。(a)前記多孔質支持体/水素選択透過膜基板は、多孔質基材と、前記多孔質基材の表面に形成された第1〜第n被覆膜(n≧1)とを含む多孔質支持体と、前記多孔質支持体の表面に形成された水素選択透過膜とを備えている。(b)第1〜第n被覆膜に含まれる開気孔の平均孔径は、それぞれ、前記多孔質基材に含まれる開気孔の平均孔径より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質支持体/水素選択透過膜基板及び多孔体支持型燃料電池に関し、さらに詳しくは、車載用動力源、定置型小型発電器、コジェネレーションシステム等に用いられる多孔体支持型燃料電池、及び、多孔体支持型燃料電池用のアノード電極、水素透過膜等に用いられる多孔質支持体/水素選択透過膜基板に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、使用する電解質の種類に応じて、固体高分子型、固体酸化物型、アルカリ型、リン酸型等に分類される。電解質の種類によらず、燃料電池は、一般に、電解質膜の一方の面にアノード電極が設けられ、他方の面にカソード電極が設けられた構造を持つ。電極に反応ガスが供給されると、反応ガスは電極内を拡散して電極/電解質界面に到達し、電極反応に消費される。また、一方の電極において電極反応により生じたイオン(例えば、プロトン、酸素イオンなど)は、電解質膜内を通って他方の電極まで伝導する。従って、高い出力を得るためには、電極のガス透過性及び電解質膜のイオン伝導度を高くすることが重要である。
【0003】
しかしながら、ガス透過性を高めるために電極を薄くし、電解質膜を自立可能な厚さとすると、電解質膜のイオン伝導度が低下する。一方、電極を自立可能な厚さとすれば、電解質膜の厚さを究極まで薄くすることができるが、電極のガス透過性が低下する。
また、自立可能な電極のガス透過性を高めるために電極の気孔率を大きくすると、電解質膜にピンホールが生成してガスリークしやすくなり、その結果、OCVが得られなくなる。一方、ピンホールの生成を防ぐために電解質膜を厚くすると、電解質膜のイオン伝導度が低下する。そのため、従来の構造では、電極の高ガス透過性と、電解質膜の高伝導度を両立させるのが難しいという問題があった。
【0004】
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、
(1) Ni粉焼結法により得られる気孔率80%、膜厚2mmのNi層の上に、グリーンシート法により気孔率25%、膜厚300μmのNi+SDC層を形成し、
(2) この上にEB蒸着法により膜厚6μmのYSZ層を形成し、さらに、
(3) この上にスパッタ法により気孔率30%、膜厚1.5μmのLSC層を形成する
ことにより得られるSOFC用単セル板が開示されている。
同文献には、多孔質のNi層の上に緻密なNi+SDC層を形成すると、YSZ層を薄膜化することができる点が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、
(1) 空孔率40%のLSM(LaSr0.3Mn0.73)焼結体の空孔内にポリイミドを含浸させて含浸体とし、
(2) 含浸体の表面を鏡面研磨し、研磨面上にEB蒸着法により1μmのYSZ膜を形成し、
(3) 含浸体からエッチングによりポリイミドを除去し、さらに、
(4) YSZ膜上にスパッタ法によりNi電極を形成する
ことにより得られる燃料電池が開示されている。
同文献には、このような方法により、被覆膜(YSZ膜)を支持する多孔質支持体(LSM多孔質電極)の空孔率及び空孔径を極めて大きくすることができる点が記載されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、燃料電池ではないが、開気孔径が0.2μmの多孔質アルミナ基板上に、誘導結合プラズマ支援マグネトロンスパッタ法を用いて膜厚3μmのパラジウム−銀合金膜を形成することにより得られる水素透過材料が開示されている。
同文献には、誘導結合rfプラズマ支援マグネトロンスパッタ法により形成されたパラジウム−銀合金からなる水素透過性膜は、非常に均一かつ緻密であり、従来の水素透過性膜に比べて、格段に水素透過速度及び水素選択透過性に優れている点が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−119108号公報
【特許文献2】特開2003−317740号公報
【特許文献3】特開2002−126477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されているSOFCは、Ni多孔体上に細孔構造のNi+SDC層を数百μm程度の厚さで形成したものをアノード電極とし、この上にセラミックスの電解質膜を形成している。セラミックスの電解質膜は、連続的な製膜性が金属に比べて低いため、ガスリークのない健全なYSZ膜を多孔質のNi−SDC層表面に形成するためには、YSZ膜の厚さを6〜50μmと厚くする必要がある。そのため、SOFCセルの構成要素の内、抵抗値が最も大きな電解質膜を薄くする上で限界がある。また、気孔率が10%程度のNi+SDC層の厚さが厚いために、必要な燃料ガス供給量が得られにくくなるおそれがある。さらに、Ni多孔体とNi+SDC層が熱衝撃により剥離しやすくなるおそれがある。
【0009】
また、特許文献2に開示されている燃料電池は、YSZ膜を薄膜化するために樹脂の含浸及び表面の鏡面研磨が必要であり、プロセスが複雑である。また、大きな孔の多孔体表面に薄い電解質膜を形成させているので、多孔体と電解質膜の接合面積及び点数が小さいため、膜自体に直接、大きな負荷がかかりやすい。そのため、熱衝撃、振動あるいはガス圧によって、電解質膜が破損するおそれがある。
さらに、特許文献3に開示されている水素透過材料は、開気孔径が0.2μmの多孔質支持体上にPd−Ag膜を形成しているので、Pd−Ag元素が開気孔の中に入りやすい。そのため、表面に形成される膜以上にPd−Ag量が必要となるおそれがある。また、多孔質支持体には、0.2μm以上の凹凸が存在しているので、それに近い凹凸もPd−Ag膜に形成される。そのため、Pd−Ag膜の上にさらに薄い膜を形成しにくくなる。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、電極のガス透過性が高い一方、反応抵抗が小さく、かつ、電解質膜の薄膜化によるイオン伝導度の増大(低抵抗化)が可能な多孔体支持型燃料電池、及び、このような多孔体支持型燃料電池のアノード電極、水素分離膜等に使用することが可能な多孔質支持体/水素選択透過膜基板を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、プロセスを複雑化させることがなく、低コストであり、しかも、熱衝撃、振動あるいはガス圧によって電解質膜及び水素選択透過膜が破損するおそれがない多孔体支持型燃料電池、及び、このような多孔体支持型燃料電池のアノード電極、水素分離膜等に使用することが可能な多孔質支持体/水素選択透過膜基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る多孔質支持体/水素選択透過膜基板は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(a) 前記多孔質支持体/水素選択透過膜基板は、
多孔質基材と、前記多孔質基材の表面に形成された第1〜第n被覆膜(n≧1)とを含む多孔質支持体と、
前記多孔質支持体の表面に形成された水素選択透過膜とを備えている。
(b) 第1〜第n被覆膜に含まれる開気孔の平均孔径は、それぞれ、前記多孔質基材に含まれる開気孔の平均孔径より小さい。
第1〜第n被覆膜は、薄く平滑な面を有するものが好ましい。
また、本発明に係る多孔体支持型燃料電池は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(a) 前記多孔体支持型燃料電池は、固体電解質膜の一方の面にアノード電極が設けられ、他方の面にカソード電極が設けられた膜電極接合体を備えている。
(b) 前記アノード電極は、本発明に係る多孔質支持体/水素選択透過膜基板からなる。
【発明の効果】
【0012】
多孔質支持体を、気孔径が相対的に大きい多孔質基材と気孔径が相対的に小さい(気孔数が多い)1層又は2層以上の被覆膜からなる層状構造にすると、多孔質支持体の表面に形成する水素選択透過膜の膜厚を薄くすることができる。そのため、水素選択透過膜の材料費を低減することができる。
また、水素選択透過膜は、緻密かつ平滑となるので、この上にさらに薄膜を形成するときには、膜厚が薄くかつ均一であり、しかもピンホールのない薄膜が得られる。そのため、このような多孔質支持体/水素選択透過膜基板を、例えば燃料電池のアノード電極として用いると、電極のガス透過性の増大及び電解質膜の薄膜化が可能となり、これによって膜の抵抗が減少することにより、発電性能の高い燃料電池が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
初めに、本発明に係る多孔質支持体/水素選択透過膜基板について説明する。
本発明に係る多孔質支持体/水素選択透過膜基板は、多孔質支持体と水素選択透過膜とを備えている。
【0014】
[1. 多孔質支持体]
多孔質支持体は、多孔質基材と、多孔質基材の表面に形成された第1〜第n被覆膜(n≧1)とを備えている。被覆膜は、1層の薄膜のみからなるものでも良く、あるいは、複数層の薄膜からなる積層体であっても良い。
なお、被覆膜が複数層の薄膜からなる積層体である場合、本願においては、便宜上、多孔質基材表面に積層される順に「第1被覆膜」、「第2被覆膜」…とし、最表面に形成される被覆膜を「第n被覆膜」と定義する。
【0015】
多孔質基材は、基板全体の機械的強度を担う機能、及び、原料ガスを実質的に無損失で被覆膜まで拡散させる機能を持つ。従って、多孔質基材は、基板全体の強度を保持するのに十分な相対的に厚い厚さと、原料ガスを実質的に無損失で拡散させるのに十分な相対的に大きな孔径を有する開気孔及び相対的に大きな気孔率を持つ。
一方、第1〜第n被覆膜は、水素選択透過膜を薄く、均一で、かつ平滑に形成する機能、及び、原料ガスを低損失で水素選択透過膜まで拡散させる機能を持つ。従って、第1〜第n被覆膜は、低損失で原料ガスを拡散させるのに十分な相対的に薄い厚さ及び相対的に大きな気孔率と、水素選択透過膜を薄く、緻密で、均一で、かつ平滑にするのに十分な相対的に小さな孔径を有する開気孔を持つ。
【0016】
上述した機能を両立させるためには、第1〜第n被覆膜に含まれる開気孔の平均孔径は、それぞれ、前記多孔質基材に含まれる開気孔の平均孔径より小さいことが必要である。
ここで、「平均孔径」とは、多孔質基材又は被覆膜に含まれる開気孔の径の平均値をいう。「平均孔径」は、例えば、水銀圧入法、ガス吸着法、バブルポイント法(JIS K3832)などにより測定することができる。
多孔質基材及び被覆膜は、以下のような条件をさらに満たしているものが好ましい。
【0017】
[1.1. 開気孔の平均孔径]
一般に、多孔質基材の開気孔の平均孔径が小さくなりすぎると、原料ガスの拡散抵抗が大きくなる。原料ガスを実質的に無損失で被覆膜まで拡散させるためには、多孔質基材の開気孔の平均気孔径は、0.2μm以上が好ましい。
一方、多孔質基材の開気孔の平均孔径が大きくなりすぎると、基板全体の機械的強度が低下する。従って、多孔質基材の開気孔の平均孔径は、10μm以下が好ましい。平均孔径は、さらに好ましくは5μm以下である。気孔構造は、ハニカム状でもランダム状でも良く、開気孔であればよい。多孔質基材は、ガス拡散(流動)の抵抗が小さい構造が好ましい。
【0018】
一般に、被覆膜の開気孔の平均孔径が大きくなりすぎると、水素選択透過膜を薄く、均一で、かつ平滑に形成するのが困難となる。従って、第1〜第n被覆膜に含まれる開気孔の平均孔径は、それぞれ、0.1μm以下が好ましい。
また、被覆膜が複数層からなる場合、水素選択透過膜側に形成された第k被覆膜に含まれる開気孔の平均孔径は、多孔質基材側に形成された第j被覆膜(1≦j<k≦n)に含まれる開気孔の平均孔径以下であることが好ましい。この場合、2層以上ある被覆層の一部がこの条件を満たしていても良く、あるいは、すべての被覆層がこの条件を満たしていても良い。特に、多孔質基材側から水素選択透過膜側に向かって段階的に開気孔の平均孔径を小さくすると、原料ガスの拡散抵抗を相対的に小さく維持したまま、水素選択透過膜を薄く、均一で、かつ平滑に形成するのが容易化する。
【0019】
[1.2. 気孔率]
一般に、多孔質基材の気孔率が小さくなりすぎると、原料ガスの拡散抵抗が大きくなる。原料ガスを実質的に無損失で被覆膜まで拡散させるためには、多孔質基材の気孔率は、40%以上が好ましい。さらに好ましくは、気孔径が小さく、開口面積が大きい(気孔数が多い)気孔構造である。
一方、多孔質基材の気孔率が大きくなりすぎると、基板全体の機械的強度が低下する。従って、多孔質基材の気孔率は、95%以下が好ましい。
【0020】
一般に、第1〜第n被覆膜の気孔率が小さくなりすぎると、原料ガスの拡散抵抗が大きくなる。従って、多孔質基材の最表面に形成された第1被覆膜の気孔率は、15%以上が好ましい。第1被覆膜の気孔率は、水素選択透過膜の均一性及び健全性を損なわない限りにおいて、大きいほどよい。
また、被覆膜が複数層からなる場合、水素選択透過膜側に形成された第q被覆膜の気孔率は、多孔質基材側に形成された第p被覆膜(1≦p<q≦n)の気孔率以下であることが好ましい。この場合、2層以上ある被覆層の一部がこの条件を満たしていても良く、あるいは、すべての被覆層がこの条件を満たしていても良い。特に、被覆膜が複数層からなる場合において、多孔質基材側から水素選択透過膜側に向かって段階的に気孔率を小さくすると、原料ガスの拡散抵抗を相対的に小さく維持したまま、水素選択透過膜を薄く、緻密で、均一で、かつ平滑に形成するのが容易化する。
【0021】
[1.3. 厚さ]
一般に、多孔質基材の厚さが薄くなりすぎると、基板全体の機械的強度が低下する。実用上十分な強度を得るためには、多孔質基材の厚さは、100μm以上が好ましい。多孔質基材の厚さは、さらに好ましくは、200μm以上である。
また、一般に、被覆膜の厚さが厚くなりすぎると、原料ガスの拡散抵抗が大きくなる。従って、第1〜第n被覆膜の厚さは、それぞれ、50μm以下が好ましい。第1〜第n被覆膜の厚さは、それぞれ、さらに好ましくは30μm以下である。
【0022】
[1.4. 表面粗度]
一般に、多孔質支持体の表面粗度(最表面に位置する第n被覆膜の表面粗度)が粗くなるほど、水素選択透過膜にピンホールができやすくなる。厚さが薄く、均一で、かつ、健全な水素選択透過膜を形成するためには、多孔質支持体の表面粗度Raは、1μm以下(Rzで8μm以下)が好ましい。多孔質支持体の表面粗度Raは、さらに好ましくは、0.1μm以下(Rzで0.8μm以下)である。
【0023】
[1.5. 材質]
多孔質基材及び被覆膜の材質は、特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の材料を用いることができる。
多孔質基材及び/又は被覆膜の材質としては、具体的には、
(a) Ni、Fe、Co、これらのいずれか1つ以上の元素を含む合金(例えば、ステンレス鋼、ニッケル鋼など)又はこれらのいずれか1つ以上の元素を含む金属間化合物、
(b) アルミナ、ジルコニア、コージエライト、スピネル、ムライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、サイアロン、ジルコン、マグネシア、若しくは、チタン酸アルミニウム、
(c) 4〜6族の金属、又は、
(d) 4〜6族の金属のいずれか1つ以上の元素を含む炭化物、ホウ化物、ケイ化物、窒化物、酸化物、若しくは、これらのいずれか1つ以上の化合物を含む複合化合物
などがある。
多孔質基材及び被覆膜には、それぞれ、これらのいずれか1種の材料を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、多孔質基材及び被覆膜には、それぞれ、同一の材料を用いても良く、あるいは、異なる材料を用いても良い。さらに、被覆膜が複数層からなる場合、各層には、それぞれ、同一の材料を用いても良く、あるいは、異なる材料を用いても良い。
【0024】
水素選択透過膜は、導電性材料であるので、多孔質支持体/水素選択透過膜基板を燃料電池用のアノード電極として用いる場合であっても、多孔質支持体として必ずしも導電性材料を用いる必要はないが、導電性を有する材料(導電性材料と絶縁材料とを複合化し、導電性を付与した複合材料も含む)が好ましい。多孔質基材の導電性は、高いほど良い。
また、多孔質支持体/水素選択透過膜を固体酸化物型燃料電池(SOFC)のアノード電極として用いる場合、多孔質支持体(又は、被覆膜のみ)として、NiとYSZなどの安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアの複合体を用いるのが好ましい。この場合、Niの粒径は、ジルコニアの粒径に比べて大きい方が好ましい。より好ましくは、Niの粒径/ジルコニアの粒径≧3である。このような粒径比とすることにより、絶縁材料中に導電パスを形成しやすくなる。
【0025】
また、第1〜第n被覆膜の少なくとも1つは、以下の条件を満たす多層粉末からなる粉末層を多孔質基材の表面に形成し、還元雰囲気下で焼結させることにより得られるものが好ましい。多層粉末は、還元性雰囲気下で加熱することによって構成元素の少なくとも一部を金属にすることができる化合物(例えば、酸化物、水酸化物、有機化合物(例えば、硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩)など)からなるもの(多層化合物粉末)であっても良く、あるいは、構成元素の少なくとも一部が初めから金属状態にあるもの(多層金属粉末)でも良い。
(a) 多層粉末は、還元雰囲気下において還元可能な易焼結性金属元素を主成分とし、前記還元雰囲気下において還元されない難焼結性金属元素を副成分として含む。
(b) 多層粉末に含まれる難焼結性金属元素の含有量は、中心部より表面の方が少ない。
また、多層粉末は、上述の条件に加えて、さらに以下の条件を備えているものが好ましい。
(c) 多層粉末は、その表面に易焼結性金属元素を主成分とする板状粒子が放射状に配置されている。
【0026】
上述の条件を満たす多層粉末は、表面に含まれる難焼結性金属元素の量が相対的に少ないので、還元性雰囲気下で加熱すると、表面において表面拡散による粒子間の焼結が容易に進行する。一方、内部においては、難焼結性金属元素の量が相対的に多いので、体積拡散が起こりにくく、粒子の粗大化、すなわち、細孔の収縮や消滅を抑制することができる。そのため、このような多層粉末を用いると、機械的強度が高く、かつ、開気孔の平均孔径が小さい被覆層を形成することができる。
特に、その表面に易焼結性金属元素を主成分とする板状粒子が放射状に付着している多層粉末は、粉末間の焼結が専ら板状粒子の先端で生ずるので、開気孔の気孔径が相対的に小さく、かつ、気孔率が相対的に大きい被覆層を形成することができる。
なお、このような多層粉末の構成及び製造方法に関する詳細は、後述する。
【0027】
[2. 水素選択透過膜]
水素選択透過膜は、多孔質支持体の表面に形成される。水素選択透過膜には、Pd膜、Pd合金膜、体心立方構造を有する金属からなる金属膜の片面又は両面にPd膜又はPd合金膜が接合された積層膜などを用いることができる。
Pd合金膜としては、具体的には、Pd/Ag合金膜、Pd/Au合金膜、Pd/Cu合金膜、Pd/Ni合金膜、Pd/Mn合金膜、Pd/Cr/Ni合金膜、Pd/Pt合金膜、Pd/Rh合金膜、Pd/Ag/Ru合金膜、Pd/Ag/Ni合金膜などがある。
また、体心立方構造を有する金属としては、V、Ta、Nbなどがある。
なお、体心立方構造を有する金属の片面又は両面にPd膜又はPd合金膜を接合するのは、
(1) 体心立方構造を有する金属は水素の拡散速度は大きいが、水素をプロトンに解離させる触媒活性が低いため、
(2) 体心立方構造を有する金属は水素選択透過膜の外側に形成される膜(例えば、酸化物系の電解質)のCO2被毒を抑制する効果が小さいため、及び、
(3) 体心立方構造を有する金属の温度上昇に伴う酸化を抑止するため、
である。
【0028】
水素選択透過膜は、高価なPdを主成分として使用しているので、水素選択透過膜の厚さが厚くなるほど、高コスト化する。一方、高価なPdを使用量を低減するために、水素選択透過膜の厚さを薄くすると、ピンホールが生成しやすくなる。しかしながら、本発明においては、多孔質支持体として、粗大孔を有する多孔質基材と微細孔を有する被覆膜からなる多層構造を備えたものを用いているので、従来の方法に比べて、水素選択透過膜の厚さを薄くすることができる。基板の製造コストを低減するためには、水素選択透過膜の厚さは、20μm以下が好ましい。水素選択透過膜の厚さは、さらに好ましくは、10μm以下である。
【0029】
次に、本発明に係る多孔質支持体/水素選択透過膜基板の製造方法について説明する。
多孔質基材は、所定の組成及び粒径を有する原料粉末を成形し、焼結させることにより製造することができる。一般に、原料粉末の粒径が大きくなるほど、多孔質基材に形成される開気孔の孔径を大きくすることができる。
焼結時の雰囲気は、原料粉末の組成に応じて最適なものを選択する。例えば、金属粉末を焼結させる場合には、真空中又は還元雰囲気が好ましい。また、例えば、原料粉末が酸化物、水酸化物等であり、これを金属状態まで還元すると同時に焼結させる場合には、還元雰囲気が好ましい。一方、酸化物系のセラミックスを酸化物状態のまま焼結させる場合には、大気中又は酸素中が好ましい。また、非酸化物系のセラミックスの場合には、窒素ガス及び/又はアルゴンガス中が好ましい。
焼結温度及び焼結時間は、要求される開気孔径及び気孔率に応じて最適なものを選択する。一般に、焼結温度が高くなる程、及び/又は、焼結時間が長くなる程、開気孔が収縮又は消滅しやすくなる。焼結は、常圧で行っても良く、あるいは、ホットプレス、HIP等を用いて加圧下で行っても良い。また、仮焼とプレスを組み合わせて焼結しても良い。また、予め造孔剤を添加しておき、焼結後、造孔剤を分解又は昇華させても良い。
【0030】
被覆膜は、多孔質基材の表面に、所定の組成及び粒径を有する原料粉末からなる粉末層を形成し、焼結させることにより製造することができる。
粉末層の形成方法は、特に限定されるものではなく、金型プレス、CIP、ラバープレス、テープ成形、射出成形、スクリーン印刷、スリップキャスト法、転写法などを用いることができる。
焼結条件は、多孔質基材を製造する場合と同様であり、多孔質基材及び被覆膜の組成、要求される開気孔径及び気孔率に応じて、最適な条件を選択すればよい。
【0031】
水素選択透過膜は、スパッタ、レーザーアブレーション、CVD、真空蒸着、イオンプレーティング、MBE法、クラスタイオンビーム法、プラズマ成膜法などの物理成膜法を用いて多孔質支持体表面に形成することができる。あるいは、適当な基板表面に形成した水素選択透過膜を多孔質支持体表面に転写し、熱処理しても良い。
【0032】
次に、本発明に係る多孔体支持型燃料電池について説明する。
本発明に係る多孔質支持型燃料電池は、固体電解質膜の一方の面にアノード電極が設けられ、他方の面にカソード電極が設けられた膜電極接合体を備えている。
固体電解質膜は、使用温度域で固体であり、かつ、使用温度でプロトン伝導が可能なものであればよい。このような固体電解質としては、
(1) ナフィオン(登録商標)等のパーフルオロカーボンスルホン酸膜、炭化水素系高分子化合物にスルホン酸基が導入された各種炭化水素系電解質などの固体高分子電解質、
(2) BaCeO3、LaSrScO3、LaWO9、SrCeO3、BaInO3
ACoMO3(A=Ca、Ba、Sr。M=Nd、Y、Yb、Ce、In、Seなど)、
ACeMO3(A=Ca、Ba、Sr。M=Nd、Y、Yb、Ce、In、Seなど)、
AZrMO3(A=Ca、Ba、Sr。M=Nd、Y、Yb、Ce、In、Seなど)、
SrTiMO3(M=Nd、Y、Yb、Ce、In、Seなど)、
AZrO3(A=Ba、Sr、Ca)、LaSeMgO3、KTaO3
SrB126(B1=Y、Nd、Sm、Yb。B2=Nd、Ta)、BaYSmO5.5
SrCePO4、MgAl2、La6WO12、CeGdO、NdCaBO3
CeSrPO4、NdSrPO4、NdCaBO3
2ZrO7(M2=La、Sn、Gd)、SmPO4
Ca(Ti、M)O3(M=Al、Mg)、CeGdO、LaGaO3
(La、Sr)(Ga、Mg)O3、(La、Ca)AlO3、LaAlO3、CaHfO3
BaCeGdO3などのペロブスカイト型や蛍石形、モザナイト、アルゴナイト型、パイロクロア型及びスピネル型結晶構造の酸化物、ヘテロポリ酸複合体、及びリン酸、スルホン酸等の酸基(プロトン伝導基)を有する非晶質系のプロトン伝導体などのプロトン伝導酸化物、
などがある。
固体電解質膜の厚さは、伝導度に影響を及ぼす。一般に、高い伝導度を得るためには、固体電解質膜の厚さは、薄いほどよい。高い伝導度を得るためには、固体電解質膜の厚さは、10μm以下が好ましく、さらに好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。
【0033】
アノード電極は、上述した本発明に係る多孔質支持体/水素選択透過膜基板からなる。この点が、従来の燃料電池とは異なる。本発明においは、アノード電極として多孔質支持体/水素選択透過膜を用いているので、固体電解質膜の厚さを究極まで薄くすることができる。
カソード電極は、固体電解質膜の種類によって最適なものを用いる。例えば、固体電解質膜が固体高分子電解質からなる場合、カソード電極には、Pt/Cと固体高分子電解質との複合体からなる触媒層、及び、カーボンペーパー、カーボンクロス等からなる拡散層の二層構造を有するものを用いることができる。
また、例えば、固体電解質膜がプロトン伝導性の酸化物からなる場合、カソード電極には、(La、AE)MO3(AE=Ca、Sr、M=Mn、Fe、Co)、
LaSrFeCoO3、LaSrMnCoO3、(Pr、Sr)MnO3、LaCoO3
LaSrCrO3、PrCoO3、La(Ni、Bi)O3、(In、Sn)23
(In、Zr)O2、RuO2/ZrO2、(La、Sr)FeO3、YMnO3、CaMnO3
YFeO3などを用いることができる。
【0034】
多孔質支持体/水素選択透過膜基板の表面に電解質膜を形成する方法としては、押出し法、テープキャスト法、スピンコート、ゾルゲル法、転写法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法等の化学的手法や、スパッタ、レーザーアブレーション、EB蒸着、CVD、電子ビーム等の物理的手段を用いることができる。また、これらの方法を組み合わせても良い。水素選択透過膜は緻密であるので、この上に形成する電解質膜の厚さを極めて薄くすることができる。
また、電解質膜の上にカソード電極を形成する方法としては、上述の方法に加えて、プラズマ溶射、スピンコート法、スラリー噴霧法、一体焼成法などを用いることができる。これらの方法は、電解質膜及びカソード電極の組成に応じて、最適なものを選択すれば良い。
【0035】
次に、易焼結性金属元素と難焼結性金属元素を含む多層粉末について説明する。
[1. 易焼結性元素と難焼結性元素]
本発明において、「易焼結性金属元素」とは、多層粉末を焼結させる際の還元雰囲気下において、金属状態が熱力学的に安定であるものをいう。また、「難焼結性金属元素」とは、多層粉末を焼結させる際の還元雰囲気下において、酸化物、水酸化物又は有機化合物の状態が熱力学的に安定であるものをいう。
易焼結性金属元素としては、具体的には、Fe、Co、Ni、Ag、Mo、Au、Cuなどがある。これらは、いずれも比較的低い温度で焼結させることができる。被覆膜を形成するための多層粉末には、これらのいずれか1種が含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
また、難焼結性金属元素としては、具体的には、2A族元素、Al、Ba、In、Si、Ge、Mn、W、Re、Ti、Zr、Cr、Sc、Y、Yb、Znなどがある。これらは、いずれも少量で焼結の進行を阻害させることができる。被覆膜を形成するための多層粉末には、これらのいずれか1種が含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
【0036】
各種化合物の標準状態の生成エンタルピー、エントロピーの値は、既知である。従って、これらを用いると、ある種の金属元素の酸化物、水酸化物又は有機化合物がH2、COなどの還元ガスによって金属状態に還元される時の、平衡状態における温度と還元ガスの分圧との関係を熱力学的に算出することができる。
例えば、CuOを600℃においてH2又はCOで還元する場合、平衡状態におけるH2の分圧及びCOの分圧は、いずれも1気圧より遙かに小さい。従って、温度600℃において、1気圧のH2又は1気圧のCOで還元する還元雰囲気下において、Cuは、「易焼結性金属元素」と判断することができる。他の元素も同様である。
【0037】
[2. 難焼結性元素の含有量]
表面における難焼結性金属元素の含有量が中心部より少ない多層粉末の具体的態様には、以下のようなものがある。
(a) 多層粉末は、コア(中心層)と、コアの表面に配されたシェル(表面層)からなり、コアは難焼結性金属元素を含み、シェルは実質的に難焼結性金属元素を含まない。
(b) 多層粉末は、コアと、コアの表面に配されたシェルからなり、シェルは難焼結性金属元素を含むが、その含有量はコアの難焼結性金属元素の含有量より少ない。
(c) 多層粉末は、コアと、コアの表面に配されたシェルからなり(コアの周囲に複数層のシェルがある場合を含む)、中心から表面に向かって難焼結性金属元素の含有量が段階的又は連続的に減少している。
(d) 多層粉末は、コアと、コアの表面に放射状に配置された板状粒子からなり、コアは難焼結性金属元素を含み、板状粒子は実質的に難焼結性元素を含まない。
(e) 多層粉末は、コアと、コアの表面に放射状に配置された板状粒子からなり、板状粒子は難焼結性金属元素を含むが、その含有量はコアの難焼結性金属元素の含有量より少ない。
(f) 多層粉末は、コアと、コアの表面に配されたシェルと、シェルの表面に放射状に配置された板状粒子からなり、難溶性金属元素の含有量がコア>シェル>板状粒子になっている。
【0038】
上述したいずれの態様においても、多層粉末中に含まれる全金属元素のモル数Bに対する多層粉末中に含まれる難焼結性金属元素のモル数Aの比は、次の(1)式を満たすことが好ましい。
0.005≦A/B≦0.05 ・・・(1)
A/B比が小さくなりすぎると、多層粉末を焼結させて微細孔を有する被覆層を作製する際に、難焼結性金属元素による焼結の阻害効果が不十分となる。その結果、被覆層内の開気孔が消滅するおそれがある。従って、A/B比は、0.005以上が好ましい。
一方、A/B比が大きくなりすぎると、難焼結性金属元素による焼結の阻害効果が強く現れすぎて、多層粉末の焼結性が低下する。従って、A/B比は、0.05以下が好ましい。
【0039】
[3. 多層粉末の大きさ]
一般に、粉末を焼結させて多孔体を作製する場合、多孔体に含まれる開気孔の大きさは、出発原料として用いる粉末の粒径に依存する。この点は、上述した構成を有する多層粉末を用いて多孔質の被覆層を形成する場合も同様である。
多層粉末の粒径が小さすぎると、難焼結性金属元素による多層粉末の粗大化の抑制が不十分となり、細孔が消滅するおそれがある。従って、多層粉末の粒径は、0.2μm以上が好ましい。
一方、多層粉末の粒径が大きくなりすぎると、開気孔の平均孔径が大きくなり、水素選択透過膜を薄くかつ均一に形成するのが困難となる。従って、多層粉末の粒径は、3μm以下が好ましい。
【0040】
なお、多層粉末の粒径は、例えば、次のようにして測定することができる。
すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)にて多数の多層粉末を観察し、一定区画内にあるすべての多層粉末の縦方向と横方向の長さを求め、その平均値を粒径とする。この場合において、多層粉末が球状でないときには、多層粉末の最も長い方向の長さと、これと直角方向の長さの平均値を多層粉末の粒径とする。
【0041】
次に、易焼結性金属元素及び難焼結性金属元素を含む多層粉末の製造方法について説明する。
[1. 第1混合工程]
まず、易焼結性金属元素の塩と難焼結性金属元素の塩とを水に溶解させ、第1原料液を作製する(第1混合工程)。易焼結性金属元素の塩及び難焼結性金属元素の塩には、それぞれ、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、酢酸塩等を用いることができる。
第1原料液に含まれる易焼結性金属元素のモル数は、難焼結性金属元素のモル数より多くする。この時のモル比によって、析出粒子(コア)の組成が決まる。
【0042】
第1原料液に含まれる易焼結性金属元素の塩の濃度が低すぎると、析出粒子を回収する際に廃液が多量に発生するおそれがある。従って、第1原料液に含まれる易焼結性金属元素の塩の濃度は、0.01モル/L以上が好ましい。
一方、易焼結性金属元素の塩の濃度が高すぎると、粒子の析出が急激に進行し、形状及び組成が均一な析出粒子を得るのが困難となるおそれがある。従って、易焼結性金属元素の塩の濃度は、4.0モル/L以下が好ましい。
【0043】
[2. 第1析出工程]
次に、第1原料液と、シュウ酸水溶液又はアルカリ金属水酸化物水溶液からなる第1反応液とを混合する(第1析出工程)。これにより、易焼結性金属元素イオン及び難焼結性金属元素イオンと、シュウ酸イオン又は水酸化物イオンとが反応し、難溶性の金属シュウ酸塩又は金属水酸化物からなる析出粒子が析出する。
第1原料液と第1反応液との混合は、錯化剤共存下で行う必要がある。錯化剤共存下で第1原料液と第1反応液との混合を行わないと、粒径が制御された粉末が得られない。第1原料液に錯化剤を加えた後に、攪拌しながら第1反応液を直接混合しても良く、あるいは、錯化剤を水に溶解させた錯化剤水溶液中に両者を少量ずつ攪拌しながら添加しても良い。 特に、後者の方法は、粒径が制御された粉末を得る方法として好適である。いずれの混合方法を用いる場合であっても、第1反応液は、シュウ酸又はアルカリ金属水酸化物が、第1原料液中に含まれる金属イオンの等量(モル)以上となるように添加するのが好ましい。
【0044】
第1反応液としてシュウ酸水溶液を用いる場合、第1反応液中のシュウ酸の濃度が低すぎると、析出粒子を回収する際に廃液が多量に発生するおそれがある。従って、第1反応液に含まれるシュウ酸の濃度は、0.01モル/L以上が好ましい。
一方、シュウ酸の濃度が高すぎると、粒子の析出が急激に進行し、形状及び組成が均一な析出粒子を得るのが困難となるおそれがある。従って、シュウ酸の濃度は、1.0モル/L以下が好ましい。なお、シュウ酸の濃度を1.0モル/Lとする時には、80℃以上の温度において、第1反応液と第1原料液とを反応させるのが好ましい。これは、溶解度の低いシュウ酸が完全に溶解した第1反応液と第1原料液とを反応させるためである。
また、第1反応液としてアルカリ金属水酸化物水溶液を用いる場合、同様の理由から、アルカリ金属水酸化物の濃度は、0.01〜4.0モル/Lが好ましい。
【0045】
錯化剤共存下で第1原料液と第1反応液とを混合する場合において、錯化剤の種類を最適化すると、錯化剤の種類に応じて析出粒子の形状を制御することができる。
錯化剤としては、金属イオンに配位する窒素原子を分子内に有する有機化合物(例えば、アンモニア、1,3−プロパンジアミン、グリオキシムなど)を用いることができる。錯化剤の種類は、第1析出工程において析出させようとするコア粒子の形状に応じて最適なものを選択する。例えば、第1析出工程において球状のコア粒子を析出させる場合、錯化剤には、アンモニアを用いるのが好ましい。
【0046】
錯化剤共存下で第1原料液及び第1反応液とを反応させる場合において、錯化剤水溶液中の錯化剤の濃度が低すぎると十分な量の錯体を形成することができず、析出粒子の形状を制御するのが困難となる。従って、錯化剤の濃度は、0.05モル/L以上が好ましい。
一方、錯化剤水溶液中の錯化剤の濃度が高すぎると、錯体が安定化しすぎて、析出粒子の回収量が低下するおそれがある。従って、錯化剤の濃度は、4.0モル/L以下が好ましい。
【0047】
第1原料液と第1反応液との反応が終了した後、析出粒子をろ過・水洗し、さらに粉砕する。第1原料液と第1反応液との反応条件(例えば、濃度、温度、試薬の種類等)を最適化すると、粒径が0.2〜3μmである析出粒子を得ることができる。また、析出粒子の粒径のバラツキが大きい時には、析出粒子を粉砕・分級することにより、粒径が0.2〜3μmの析出粒子を選別することができる。
【0048】
[3. 第2混合工程]
次に、易焼結性金属元素の塩、及び、必要に応じて難焼結性金属元素の塩を水に溶解させ、第2原料液を作製する(第2混合工程)。易焼結性金属元素の塩及び難焼結性金属元素の塩には、それぞれ、第1混合工程と同様のものを用いることができる。
第2原料液に含まれる難焼結性金属元素のモル数は、第1原料液中のモル数より少なくする。この時のモル比によって、シェル又は板状粒子の組成が決まる。
第2原料液に含まれる易焼結性金属元素の塩の濃度は、第1原料液と同様に、0.01〜4.0モル/Lが好ましい。
【0049】
[4. 第2析出工程]
次に、第1析出工程で得られた析出粒子と、第2原料液と、シュウ酸又はアルカリ金属水酸化物水溶液からなる第2反応液とを混合する(第2析出工程)。これにより、易焼結性金属元素イオン(及び、必要に応じて添加された難焼結性金属元素イオン)と、シュウ酸イオン又は水酸化物イオンとが反応し、析出粒子(コア)の表面に難溶性の金属シュウ酸塩又は金属水酸化物からなるシェル又は板状粒子が付着している多層析出粒子を得ることができる。
第2原料液と第2反応液との混合は、錯化剤共存下で行う必要がある。錯化剤共存下で第2原料液と第2反応液との混合を行わないと、粒径が制御された粉末が得られない。第2原料液に錯化剤を加えた後に、攪拌しながら第2反応液を直接混合しても良く、あるいは、錯化剤水溶液中に両者を少量ずつ攪拌しながら添加しても良い。 特に、後者の方法は、粒径が制御された粉末を得る方法として好適である。いずれの混合方法を用いる場合であっても、第2反応液は、シュウ酸又はアルカリ金属水酸化物が、第2原料液中に含まれる金属イオンの等量(モル)以上となるように添加するのが好ましい。
【0050】
第2反応液としてシュウ酸水溶液を用いる場合、第2反応液中のシュウ酸の濃度は、0.01〜1.0モル/Lが好ましい。また、シュウ酸の濃度が1.0モル/Lである第2反応液を用いる場合80℃以上の温度において、第2反応液と第2原料液とを反応させるのが好ましい。
また、第2反応液としてアルカリ金属水酸化物水溶液を用いる場合、第2反応液中のアルカリ金属水酸化物の濃度は、0.01〜4.0モル/Lが好ましい。
【0051】
錯化剤共存下で第2原料液と第2反応液とを混合する場合において、錯化剤の種類を最適化すると、錯化剤の種類に応じて析出粒子の表面に析出する析出物の形状を制御することができる。
錯化剤としては、金属イオンに配位する窒素原子を分子内に有する有機化合物(例えば、アンモニア、1,3−プロパンジアミン、グリオキシムなど)を用いることができる。
例えば、第2析出工程において析出粒子(コア)の表面にシェルを析出させる場合、錯化剤には、アンモニアを用いるのが好ましい。
一方、析出粒子(コア)の表面に、板状粒子を放射状に析出させる場合、錯化剤には、1,3−プロパンジアミン、グリオキシムなどを用いるのが好ましい。
さらに、錯化剤共存下で第2原料液及び第2反応液を反応させる場合において、錯化剤水溶液中の錯化剤の濃度は、0.05〜4.0モル/Lが好ましい。
【0052】
第2原料液と第2反応液との反応が終了した後、多層析出粒子をろ過・水洗し、さらに粉砕する。第2原料液と第2反応液との反応条件(例えば、濃度、温度、試薬の種類等)を最適化すると、粒径が0.2〜3μmである多層析出粒子を得ることができる。また、多層析出粒子の粒径のバラツキが大きい時には、多層析出粒子を粉砕・分級することにより、粒径が0.2〜3μmの多層析出粒子を選別することができる。
なお、第2混合工程及び第2析出工程を複数回繰り返しても良い。この時、第2原料液に含まれる難焼結性金属元素の濃度を段階的に少なくすると、中心から表面に向かって難焼結性金属元素の濃度が段階的又は連続的に減少している多層析出粒子を得ることができる。
【0053】
[5. 還元工程]
次に、第2析出工程で得られた多層析出粒子を還元雰囲気下で加熱する(還元工程)。これにより、多層析出粒子を構成する金属シュウ酸塩、金属水酸化物又は金属酸化物の少なくとも一部が金属に還元され、構成元素の少なくとも一部が金属状態である多層粉末を得ることができる。
還元ガスには、水素、一酸化炭素などを用いる。
加熱温度が低すぎると、還元ガスによる還元が不十分となる。還元が不十分な多層粉末を用いると、成形時に多層粉末が金型に付着しやすくなる。そのため、平滑な被覆膜を得るのが困難になり、あるいは、成形時に金型に離型剤を塗布する必要が生ずる場合がある。従って、加熱温度は、300℃以上が好ましい。
一方、加熱温度が高すぎると、還元時に粒子間の結合が起こりやすくなる。その結果、多層粉末の充填性が低下し、均質な成形体を得るのが困難になるおそれがある。従って、加熱温度は、600℃以下が好ましい。
【0054】
なお、多層析出粒子を還元することなく、そのまま成形し、還元雰囲気下で加熱しても良い。非金属状態にある多層析出粒子の成形体を還元雰囲気下で加熱すると、多層析出粒子の還元と同時に、還元により生成した金属状態の多層粉末を焼結させることができる。
また、多層粉末の製造方法は、上述した液相合成法に限られるものではない。
多層粉末を得る他の方法としては、例えば、
(1) コア粒子を製造した後、スピンコートや旋回流を利用してコア粒子の表面にシェル又は板状粒子を付着させる方法、
(2) コア粒子と、これより細かい粉末(粒径比<1/5)を回転体の中で混合する方法、
(3) コア粒子の表面に、CVD、スパッタなどの物理的成膜法を用いてシェル又は板状粒子を付着させる方法、
(4) 共沈法やゾルゲル法を用いて、コア粒子の表面にシェル又は板状粒子を付着させる方法、
などがある。
【0055】
次に、本発明に係る多孔質支持体/水素透過膜基板及びその製造方法、並びに、多孔体支持型燃料電池の作用について説明する。
粗大孔を有する多孔質基材上に、微細な開気孔を有し、かつ、平滑な平面を有する1層又は2層以上の被覆層を形成すると、その上に緻密で平滑な水素選択透過膜を形成しやすくなる。そのため、このような多孔質支持体/水素選択透過膜基板を、例えば、燃料電池のカソードに用いると、貴金属であるPd使用量を1/10以下に低減することが可能となる。
また、水素選択透過膜を20μm以下に薄くできるので、厚い膜を用いた場合に比べて水素選択透過量が増大する。しかも、水素選択透過膜は緻密かつ健全であるので、その上に極めて薄い電解質膜を形成することができる。その結果、電解質膜のイオン伝導度も増大する。さらに、多孔質支持体は、粗大孔を有する多孔質基材と微細孔を有する被覆膜の層状構造を有しているので、反応ガスの透過性も高い。そのため、従来の燃料電池に比べて、高い発電性能を発現しやすくなる。
【0056】
また、微細な粒子からなる非常に平滑な被覆膜の上に水素選択透過膜が形成されるので、粗大孔のみを有する多孔質支持体を用いた場合に比べて、多孔質支持体と水素選択透過膜界面の接合面積が増大する。そのため、多孔質支持体/水素選択透過膜の界面剥離が起こりにくくなると同時に、ガス圧や振動等による機械的な荷重負荷に対する耐剥離性も高くすることができる。
【0057】
さらに、被覆層を形成するための原料として易焼結性金属元素と難焼結性金属元素とを含む多層粉末を用いると、相対的に開気孔径が小さく、かつ、相対的に気孔率が大きい被覆膜が得られる。これは、
(1) 難焼結性金属元素は、還元雰囲気下で焼結後も易焼結金属元素を主成分とする金属マトリックス中に酸化物の状態で微細に分散しており、この酸化物が金属マトリックスの粒界移動を抑制しているため、又は、
(2) 易焼結性金属元素より還元速度の遅い難焼結性金属元素が粒成長を抑制しているため、
と考えられる。
【実施例】
【0058】
(実施例1、比較例1)
[1. 被覆膜用多層Ni粉末の作製]
まず、水に1.98モル/L相当のNiSO4と、0.02モル/L相当のZnSO4とを溶解させたNiSO4/ZnSO4水溶液(第1原料液)と、濃度4モル/LのNaOH水溶液(第1反応液)とを作製した。
次に、濃度2.0モル/LのNH3水溶液(錯化剤水溶液)100mLを500mLのトールビーカーに入れ、ウォーターバスにて40℃に保持した。次いで、1000rpmで回転する攪拌棒でNH3水溶液を攪拌しつつ、これに第1原料液及び第1反応液を、それぞれ、毎分0.7mLずつ15分間供給した。その結果、水酸化ニッケルを主成分とする析出粒子が析出した。この析出粒子は、水酸化ニッケルの他にもZnを含有する。Znは、水酸化ニッケルのニッケルサイトにある一部のNiと置換されていると考えられる。得られた析出粒子をろ過により回収し、析出粒子を水洗して乾燥させた。
【0059】
次に、濃度1.0モル/LのNiSO4水溶液(第2原料液)、及び、濃度2.0モル/LのNaOH水溶液(第2反応液)を作製した。析出粒子、及び、濃度1.0モル/Lの1,3−プロパンジアミン水溶液(錯化剤水溶液)100mLを500mLのトールビーカーに入れ、温度0℃に保持した。次いで、2000rpmで回転する攪拌棒によって、1,3−プロパンジアミン水溶液を攪拌しつつ、これに第2原料液及び第2反応液とを、それぞれ、毎分0.7mLずつ30分間供給した。これにより、析出粒子の表面に、水酸化ニッケルからなる板状粒子が放射状に付着している多層析出粒子を得た。得られた多層析出粒子をろ過により回収し、多層析出粒子を水洗して乾燥させた。図1に、得られた多層析出粒子のSEM写真を示す。多層析出粒子は、中心部(析出粒子)の直径が約0.2μm、表面部(板状粒子)の粒径が約0.3μmであった。
得られた多層析出粒子を、水素ガス中において450℃×1hrの加熱処理を行った。これにより、水酸化ニッケルがNiに還元され、多層Ni粉末が得られた。多層Ni粉末の粒径は、0.2μmであった。
【0060】
[2. MEAの作製]
以下の手順に従い、図2に示すように、電解質膜の一方の面に、多孔質基材、被覆膜及びPd膜からなるアノード電極が接合され、他方の面にカソード電極が接合されたMEAを作製した。
[2.1. 多孔質基材の作製]
粒径1μmの市販Ni粉末を金型に充填し、0.3t/cm2(30MPa)でプレス成形した。成形体を、水素/N2混合ガス中において、450〜500℃×1hの仮焼を行った。その後、成形体にさらにプレス圧(200MPa)を加えた後、再度、水素/N2混合ガス中において、500℃×2hの熱処理を行い、多孔質基材を得た。得られた多孔質基材の厚さは250μm、開気孔径は5μm以下であった。
【0061】
[2.2. 被覆膜の作製]
多孔質基材の表面に、[1.]で得られた多層Ni粉末を厚さ0.2mm程度に塗布し、プレス成形(圧力:30MPa)した。成形後、水素/N2混合ガス中において、400℃×1h程度の仮焼を行った。その後、成形体にさらにプレス圧(200MPa)を加えた後、再度、水素/N2混合ガス中において、450〜500℃×1hの熱処理を行い、多孔質基材の表面に被覆膜が形成された多孔質支持体を得た。被覆膜の厚さは15μm、開気孔径は0.05μm以下、気孔率は約20%であった。
【0062】
[2.3. 水素透過膜、電解質膜及びカソード電極の作製]
多孔質支持体の表面に、スパッタ装置を用いて6μmのPd膜を成膜した。次いで、レーザーアブレーション法によって、Pd膜の上に厚さ1.5μmのプロトン導電体SZIO3を成膜し、その上に、厚さ50nmのLSCO3を成膜した。さらに、このLSCO3膜の上に、LSCO3ペーストを塗布してカソード電極を形成し、MEAを得た(実施例1)。
また、被覆膜の形成を省略した以外は、実施例1と同様の手順に従い、MEAを作製した(比較例1)。
【0063】
[3. 評価]
得られたMEAを用いて、400℃×3%加湿H2フロー時のOCVを測定した。比較例1で得られたMEAのOCVは0.5V以下であるのに対し、実施例1で得られたMEAのOCVは1.07〜1.25Vであった。
図3(a)及び図3(b)に、それぞれ、被覆膜(実施例1)及び多孔質基材(比較例1)表面の実体顕微鏡写真を示す。また、図4(a)及び図4(b)に、それぞれ、被覆膜上に形成されたPd膜(実施例1)及び多孔質基材の表面に形成されたPd膜(比較例1)表面の実体顕微鏡写真を示す。図3及び図4より、被覆膜の上にPd膜を形成すると、孔のない緻密なPd膜が得られることが分かる。比較例1のOCVが極端に低いのは、多孔質基材表面に被覆膜を形成しなかったために、粗大な開気孔によって電解質膜にピンホールが形成されたためと考えられる。この結果から、多孔質基材の表面に微細孔を有する被覆膜を形成することによって、高い性能を発現できることが確認された。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る多孔質支持体/水素選択透過膜基板は、燃料電池用のアノード電極、水素分離膜等に使用することができる。
また、本発明に係る多孔体支持型燃料電池は、車載用動力源、定置型小型発電器、コジェネレーションシステム等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】多層析出粒子のSEM写真である。
【図2】本発明に係る多孔体支持型燃料電池の概略構成図である。
【図3】図3(a)は、被覆膜(実施例1)表面の実体顕微鏡写真であり、図3(b)は、多孔質基材(比較例1)表面の実体顕微鏡写真である。
【図4】図4(a)は、被覆膜の上に形成されたPd膜(実施例1)表面の実体顕微鏡写真であり、図4(b)は、多孔質基材の表面に形成されたPd膜(比較例1)表面の実体顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成を備えた多孔質支持体/水素選択透過膜基板。
(a) 前記多孔質支持体/水素選択透過膜基板は、
多孔質基材と、前記多孔質基材の表面に形成された第1〜第n被覆膜(n≧1)とを含む多孔質支持体と、
前記多孔質支持体の表面に形成された水素選択透過膜とを備えている。
(b) 第1〜第n被覆膜に含まれる開気孔の平均孔径は、それぞれ、前記多孔質基材に含まれる開気孔の平均孔径より小さい。
【請求項2】
前記多孔質基材に含まれる前記前記開気孔の平均孔径は、0.2μm以上10μm以下であり、
前記第1〜第n被覆膜に含まれる前記開気孔の平均孔径は、それぞれ、0.1μm以下である
請求孔1に記載の多孔質支持体/水素選択透過膜基板。
【請求項3】
前記多孔質支持体は、前記第1〜第n被覆膜(n≧2)を含み、
前記水素選択透過膜側に形成された第k被覆膜に含まれる開気孔の平均孔径は、前記多孔質基材側に形成された第j被覆膜(1≦j<k≦n)に含まれる開気孔の平均孔径以下である
請求項2に記載の多孔質支持体水素選択透過膜基板。
【請求項4】
前記多孔質基材の気孔率は、40%以上95%以下であり、
前記多孔質基材の上に形成された前記第1被覆膜の気孔率は、15%以上である
請求項1に記載の多孔支持体/水素選択透過膜基板。
【請求項5】
前記多孔質支持体は、前記第1〜第n被覆膜(n≧2)を含み、
前記水素選択透過膜側に形成された第q被覆膜の気孔率は、前記多孔質基材側に形成された第p被覆膜(1≦p<q≦n)の気孔率以下である
請求項4に記載の多孔質支持体水素選択透過膜基板。
【請求項6】
前記多孔質基材の厚さは、100μm以上であり、
前記第1〜第n被覆膜の厚さは、それぞれ、50μm以下である
請求項1に記載の多孔支持体/水素選択透過膜基板。
【請求項7】
前記多孔質支持体の表面粗度Raは、1μm以下である
請求項1に記載の多孔支持体/水素選択透過膜基板。
【請求項8】
前記多孔質支持体は、
(a) Ni、Fe、Co、これらのいずれか1以上の元素を含む合金、及び、これらのいずれか1以上の元素を含む金属間化合物、
(b) アルミナ、ジルコニア、コージエライト、スピネル、ムライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、サイアロン、ジルコン、マグネシア、及び、チタン酸アルミニウム、
(c) 4〜6族の金属、並びに、
(d) 4〜6族の金属のいずれか1以上の元素を含む炭化物、ホウ化物、ケイ化物、窒化物、酸化物、及び、これらのいずれか1以上の化合物を含む複合化合物
からなる群から選ばれるいずれか1以上からなる
請求項1に記載の多孔質支持体/水素選択透過膜基板。
【請求項9】
前記第1〜第n被覆膜の少なくとも1つは、以下の条件を満たす多層粉末からなる粉末層を前記多孔質基材の表面に形成し、還元雰囲気下で焼結させることにより得られたものからなる請求項1に記載の多孔質支持体/水素選択透過膜基板。
(a) 前記多層粉末は、前記還元雰囲気下において還元可能な易焼結性金属元素を主成分とし、前記還元雰囲気下において還元されない難焼結性金属元素を副成分として含む。
(b) 前記多層粉末に含まれる前記難焼結性金属元素の含有量は、中心部より表面の方が少ない。
【請求項10】
前記多層粉末は、その表面に前記易焼結性金属元素を主成分とする板状粒子が放射状に配置されている
請求項9に記載の多孔質支持体/水素選択透過膜基板。
【請求項11】
前記易焼結性金属元素は、Fe、Co、Ni、Ag、Mo、Au、及びCuからなる群から選ばれるいずれか1以上である
請求項9に記載の多孔質支持体/水素選択透過膜基板。
【請求項12】
前記難焼結性金属元素は、2A族元素、Al、Ba、In、Si、Ge、Mn、W、Re、Ti、Zr、Cr、Sc、Y、Yb及びZnからなる群から選ばれるいずれか1以上である
請求項9に記載の多孔質支持体/水素選択透過膜基板。
【請求項13】
前記水素選択透過膜は、Pd膜、Pd合金膜、又は、体心立方構造を有する金属からなる金属膜の少なくとも片面にPd膜又はPd合金膜が接合された積層膜である
請求項1に記載の多孔質支持体/水素選択透過膜基板。
【請求項14】
前記Pd合金膜は、Pd/Ag合金、Pd/Au合金、Pd/Cu合金、Pd/Ni合金、Pd/Mn合金、Pd/Cr/Ni合金、Pd/Pt合金、Pd/Rh合金、Pd/Ag/Ru合金、又は、Pd/Ag/Ni合金からなる
請求項13に記載の多孔質支持体/水素選択透過膜基板。
【請求項15】
前記体心立方構造を有する金属は、V、Ta又はNbである
請求項13に記載の多孔質支持体/水素選択透過膜基板。
【請求項16】
前記水素選択透過膜の厚さは、20μm以下である
請求項1に記載の多孔質支持体/水素選択透過膜基板。
【請求項17】
以下の構成を備えた多孔体支持型燃料電池。
(a) 前記多孔体支持型燃料電池は、固体電解質膜の一方の面にアノード電極が設けられ、他方の面にカソード電極が設けられた膜電極接合体を備えている。
(b) 前記アノード電極は、請求項1から16までのいずれかに記載の多孔質支持体/水素選択透過膜基板からなる。
【請求項18】
前記固体電解質膜の厚さは、10μm以下である
請求項17に記載の多孔体支持型燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−239353(P2008−239353A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77898(P2007−77898)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】