説明

多孔質材の脆弱化処理装置および脆弱化処理方法

【課題】工程も少なく、処理時間の短縮化が実現でき、また、高圧機器の保護が可能な多孔質材の脆弱化処理装置および脆弱化処理方法を提供する。
【解決手段】加減圧可能な高圧容器1とこの高圧容器1内に装填されるコンクリートガラ10等の多孔質材を水11とともに封入するカートリッジ2とからなり、このカートリッジ2は遮水性を有し、かつ伸縮自在である脆弱化処理装置を使用し、高圧容器1内の圧力を上げ、その後急激に前記高圧容器1内の圧力を大気圧程度まで減圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート建造物等の解体に伴って廃棄されるコンクリート塊やモルタル塊などのコンクリート系多孔質廃材から骨材を再生する前段階処理としての多孔質材の脆弱化処理装置および脆弱化処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、資源のリサイクルの観点から、解体に伴って廃棄されるコンクリート塊等から骨材を再生することが行われている。
【0003】
骨材の再生方法としては、例えば解体現場において生じたコンクリート塊を所定の大きさに破砕し、そのコンクリート破砕材から硬化セメントペーストを除去し、骨材を取出す。
【0004】
一般に脆性を持つ多孔質材料(ポーラスな材料)の破壊は機械的方法に頼ることが多く、コンクリートでは、これらをジョークラッシャー、インパクトクラッシャー、コーンクラッシャー等の破砕機によって破砕する。
【0005】
その後、ボールミル等のすりもみ装置により付着ベーストを除去し、所定品質の再生骨材を製造する。
【0006】
これらの方法では、付着ペーストの強度が高いため、その除去に時間が掛かり、骨材自体も粉砕してしまうため微粉の発生量が多く、骨材の回収率が悪い。また、生産効率の悪さから、設備が大型化して、設備費が嵩む上に、微粉処理に多大の費用を要するといった問題があった。
【0007】
そこで、発明者は先に下記特許文献にあるように、加減圧可能なタンク中に多孔質材料を入れ、前記タンク内圧力を上げ、その後急激に前記タンク内の圧力を大気圧程度まで減圧する、これを一定回数繰り返すことを特徴とした多孔質材料の脆弱化方法を提案し、特許出願した。
【特許文献1】特開2002−136891(多孔質材料の脆弱化方法)
【0008】
脆性材料の破砕は一般的に圧縮力を与え、それにより生じる内部応力としての引張力またはせん断力によって破壊する。通常、脆性材料の場合、圧縮強度に比べて引張強度は極めて弱く、直接材料内部に引張力を生じさせれば、少ないエネルギーで破壊させることができる。
【0009】
前記特許文献1の本発明によれば、加圧タンクが水圧タンクであるとしてこれを数百MPaに上げ、かかる数百MPaの圧力では多孔質材料の空隙に水は瞬時に満たされる。例えば、200MPaでは、水は10%程度圧縮されており、この状態から急激に減圧すると多孔質材料の空隙内部の水は膨張し、多孔質材料に引張応力を生じさせる。この処理により、多孔質材料内部に微細なクラックが生じ、材料強度は著しく低下する。
【0010】
また、下記特許文献では、加熱炉に投入して加熱した後、すりもみ装置に投入することによって、硬化セメントペーストや骨材(細骨材や粗骨材)を回収する方法が提案されている。
【特許文献2】特開2003−26459(骨材再生方法)
【0011】
これは、コンクリート塊を破砕して得られたコンクリート破砕材に対して熱風を用いた加熱処理を行った後、そのコンクリート破砕材から骨材を分離し再生するものであって、最大寸法で5mm以上のコンクリート破砕材に対して加熱、すりもみ処理を行うことにより、コンクリート破砕材の再生処理時間の短縮を図る。
【0012】
コンクリート塊を破砕するには、破砕機としては、例えば固定歯と可動歯との間にコンクリート塊を挟んで破砕するジョークラッシャや、高速で回転するハンマーの衝撃力を利用してコンクリート塊を破砕するハンマークラッシャや、コンクリート塊を遠心力によって高速で飛散させることにより、すでに周囲に存在するコンクリート塊やコンクリート破砕材に衝突させ、その際の衝撃力でコンクリート塊を破砕する遠心破砕機等の乾式のものが用いられる。
【0013】
熱風を用いた加熱処理は、連続処理方式でコンクリート破砕材を処理する充填型加熱炉によって行われる。
【0014】
すりもみ処理は、円筒状の外周壁を有し、その軸線方向を水平に向けた状態で、水平方向の軸回りに回転駆動されるようになっているすりもみ装置により行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記特許文献1では、少ないエネルギーで効率的にコンクリートを脆弱化させることができ、粉塵の発生もなく、装置も簡易なものですみ、しかも、強度の異なる材質での組み合わせであっても、強度の弱い材料だけを脆弱化させることができる。
【0016】
しかし、この加圧および減圧を一定回数繰り返す必要がある。また、このような処理において例えば粒径40mmのコンクリートガラの場合、水の浸透時間は約15秒で減圧時間は0.2秒と極めて短い。このため、加圧時間および材料や水を投入あるいは排出する時間が処理能力を決定する。
【0017】
また、高圧機器(バルブ、シール)は微粒子で容易に傷つくため、容器内部の清浄性を保持する必要がある。高圧容器内壁の傷も応力集中の要因となるためコンクリートガラからこれを保護する必要がある。
【0018】
前記特許文献2では、JASS5Nレベルの品質を確保できるものの、処理工程が多く、破砕機、加熱炉、すりもみ装置(一次、二次)と設備も大掛かりで、処理コストが高騰してしまう。また、処理エネルギーも400kJ/kg程度と大きい。
【0019】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、工程も少なく、処理時間の短縮化が実現でき、また、高圧機器の保護が可能な骨材再生装置および骨材再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は前記目的を達成するため、骨材再生装置としては、第1に、加減圧可能な高圧容器とこの高圧容器内に装填される多孔質材を液体とともに封入するカートリッジとからなり、このカートリッジは遮水性を有し、かつ伸縮自在であることを要旨とするものである。
【0021】
第2に、高圧容器は筒形であり、カートリッジはこの筒形高圧容器の内径と略等しい外形を有するパイプ体であり、長さ方向へ伸縮する伸縮部を有することを要旨とするものである。
【0022】
第3に、カートリッジ端部は、高圧容器の蓋を兼用し、高圧容器はこの蓋に対する固定用のカンヌキを有することを要旨とするものである。
【0023】
骨材再生方法としては、多孔質材を液体とともにカートリッジに封入し、このカートリッジを加減圧可能な高圧容器に装填し、高圧容器内圧力を上げ、その後急激に前記高圧容器内の圧力を大気圧程度まで減圧することを要旨とするものである。
【0024】
請求項1記載の本発明によれば、加減圧可能な高圧容器内に多孔質材を液体とともに封入したカートリッジを装填して、高圧容器内を数百MPaに上げれば、かかる数百MPaの圧力では多孔質材に微細なクラックが生じるため、その空隙に液体は瞬時に満たされる。この状態から急激に減圧すると多孔質材の空隙内部の液体は膨張し、多孔質材に引張応力を生じさせる。これにより、多孔質材にさらに多くの微細なクラックが生じ、材料強度は低下する。材料によっては、破壊に至る場合もある。
【0025】
この場合、遮水性のカートリッジは等圧化に置かれるため強度は必要としない。しかもカートリッジによりコンクリート系多孔質廃材塊あるいはこれから発生した微粒子は高圧容器と絶縁できる。よって、これらによる損傷は発生しない。
【0026】
また、高圧容器に対してのコンクリート系多孔質廃材塊の投入、排出時間を大幅に短縮できる。なお、カートリッジを複数個準備することにより、カートリッジへのコンクリート系多孔質廃材塊の投入、排出は処理時間から除外できる。
【0027】
請求項2記載の本発明によれば、前記作用に加えて、高圧容器は筒形であり、カートリッジはこの筒形高圧容器の内径と略等しい外形を有するパイプ体であり、長さ方向へ伸縮する伸縮部を有することで、カートリッジは高圧容器に装填し易いものであり、しかも、特に減圧時にはカートリッジは高圧容器内で特定方向にのみ伸縮自在なものとなり、無理な変形をカートリッジに与えることなく、耐久性を損なわせるようなこともない。
【0028】
請求項3記載の本発明によれば、カートリッジ端部は、高圧容器の蓋を兼用することで装置の簡略化を図れるとともに密閉が容易なものとなる。また、高圧容器はこの蓋に対する固定用のカンヌキを有することで、カートリッジの固定、解除を簡単かつ迅速にでき、高圧容器の密閉時間を短縮することができる。
【0029】
請求項4記載の本発明によれば、前記請求項1の作用と同様であるが、1回の加圧と減圧を行うだけで、極めて短時間で脆弱化処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
以上述べたように本発明の骨材再生装置および骨材再生方法は、工程も少なく、処理時間の短縮化が実現でき、また、高圧機器の保護が可能なものであり、脆弱化処理装置の大幅な処理能力の向上、処理コストの低減が実現できる。その結果、JASS5Nを満足する高品質骨材を実用レベルで製造することができ、コンクリートのリサイクルの促進に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の骨材再生装置および骨材再生方法の1実施形態を示す説明図、図2はカートリッジの一部切り欠いた正面図で、図中1は加減圧可能な金属製の高圧容器、2は高圧容器1内に装填され、装填された状態ではその内部が高圧容器1内と等圧化に置かれるカートリッジである。
【0032】
高圧容器1は筒状のものであり、その底の部分に配管3が接続され、配管3の途中は分岐して減圧バルブ4を設けた排管3aと逆止弁5を設けて高圧ポンプ6に接続される注入管3bとなる。
【0033】
高圧容器1を高圧とする手段は水等の液体が好適であるが、空気等の気体を用いることも可能である。高圧容器1と高圧ポンプ6との間には他の処理装置としての高圧容器1に接続を切替える切替バルブ7を介在させた。
【0034】
このように、複数の処理装置である高圧容器1を一台の高圧ポンプ6で稼動することにより、高圧ポンプの稼動率6の向上を図ることができる。
【0035】
カートリッジ2は伸縮性と遮水性を有するものであれば金属、合成樹脂等特に材質を問わないが、本実施形態では図2に示すようにパイプ体であり、長さ方向へ伸縮するジャバラ状の伸縮部8を有する。
【0036】
前記カートリッジ2はコンクリートガラ10等のコンクリート系多孔質廃材塊を水11等の液体とともに封入するもので、前記筒形高圧容器1の内径と略等しい外形を有し、端部に蓋9を備えるが、この蓋9は、高圧容器1の蓋を兼用している。そして、高圧容器1はこの蓋9に対する固定用のカンヌキ12を有する。
【0037】
図2の実施形態では、蓋9にシールとしてのOリング13を嵌め、また、蓋9は突起9aによりカートリッジ2の本体の縁に形成した鉤穴14に係合する。Oリング13のごとき軸シールはこれをカートリッジ2側に設けることも可能である。
【0038】
次に、このような骨材再生装置を用いる本発明の骨材再生方法を説明する。解体コンクリートを油圧圧砕機などにより所定の大きさのコンクリートガラ10に粉砕する。別に設けた投入装置(図示せず)によりカートリッジ2にコンクリートガラ10と水11(液体ならよい)を投入する。
【0039】
高圧容器1の蓋を兼ねたカートリッジの蓋9を装着する。
【0040】
このカートリッジ2を高圧容器1に装着する(高圧容器1の空隙分には予め水が入っている)。カートリッジ2はカンヌキ12により固定する。
【0041】
高圧容器1と配管3で接続された高圧ポンプ6は既に稼動しており、別の処理装置(高圧容器1)を加圧しているので、当該装置の加圧が完了したならば、切替バルブ7を切替え、高圧容器1内を加圧する。
【0042】
所定の圧力(数百MPa)に昇圧したならば、切替バルブ7を切替え、次の処理装置(高圧容器1)を加圧する。その時、高圧容器1内は逆止弁5により圧力は保持される。
【0043】
コンクリートガラ10内部に圧力が浸透するまでの15秒程度その状態を保持する。
【0044】
減圧バルブ4を開いて排管3aを開放して高圧容器1内部の圧力を大気圧にする。
【0045】
この加圧および減圧のうち、数百MPaの加圧ではコンクリートガラ10の空隙に水または液体が浸透して瞬時に満たされる。
【0046】
200MPaでは、水は7%程度圧縮されており、この状態から急激に減圧するとコンクリートガラ10の水は膨張し、コンクリートガラ10に引張応力を生じさせる。これにより、コンクリートガラ10の内部に微細なクラックが生じ、材料強度は低下し、破壊し易いものとして脆弱化する。
【0047】
本発明の効果を試すために、試験体(モルタル)〔直径50mm、高さ100mmの円柱形テストピース〕で、1サイクル1分、加圧→加圧状態(20秒)維持→急速降圧→降圧状態(0.3秒)で、処理を行った。圧力は250MPaである。
【0048】
試験体の一軸圧縮強度は処理前は542kgf/cmであったが、処理後は98kgf/cm
となった。
【0049】
カンヌキ12を外してカートリッジ2を取り出し、別のガラ排出装置まで搬送する。以上の処理を必要回数繰り返す。脆弱化したコンクリートガラ10は別の処理装置、例えば、ボールミルなどにより、粗骨材、細骨材、微粉に分離される。
【0050】
なお、前記のごとく250MPaで処理した場合、水11の体積収縮は9%程度となる。このため、カートリッジ2にはこれに追随できる伸縮性が必要となり、例えばゴム膜で筒状の部分を作成しても良いし、前記のごとく鋼製材料等の金属製材料で筒を作成し、その一部を伸縮部8としてもよい。
【0051】
カートリッジ2内の水はリサイクルとして使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の多孔質材の脆弱化処理装置および脆弱化処理方法の1実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明の多孔質材の脆弱化処理装置で使用するカートリッジの一部切り欠いた正面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…高圧容器 2…カートリッジ
3…配管 3a…排管
3b…注入管 4…減圧バルブ
5…逆止弁 6…高圧ポンプ
7…切替バルブ 8…伸縮部
9…蓋 9a…突起
10…コンクリートガラ
11…水 12…カンヌキ
13…Oリング 14…鉤穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加減圧可能な高圧容器とこの高圧容器内に装填される多孔質材を液体とともに封入するカートリッジとからなり、このカートリッジは遮水性を有し、かつ伸縮自在であることを特徴とする多孔質材の脆弱化処理装置。
【請求項2】
高圧容器は筒形であり、カートリッジはこの筒形高圧容器の内径と略等しい外形を有するパイプ体であり、長さ方向へ伸縮する伸縮部を有する請求項1記載の多孔質材の脆弱化処理装置。
【請求項3】
カートリッジ端部は、高圧容器の蓋を兼用し、高圧容器はこの蓋に対する固定用のカンヌキを有する請求項1または請求項2記載の多孔質材の脆弱化処理装置。
【請求項4】
多孔質材を液体とともにカートリッジに封入し、このカートリッジを加減圧可能な高圧容器に装填し、高圧容器内圧力を上げ、その後急激に前記高圧容器内の圧力を大気圧程度まで減圧することを特徴とした多孔質材の脆弱化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−231104(P2006−231104A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45198(P2005−45198)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】