説明

多孔質材料、吸遮音構造体、電気機器、電気掃除機、及び、多孔質材料の製造方法

【課題】吸音特性、遮音特性及び制振特性を焼結した一つの材料で得ることができる多孔質材料を提供する。
【解決手段】多孔質材料10は、異なる粒径のものを含む金属粉体(大粒径金属粉体1及び小粒径金属粉体2)を焼結し、金属粉体の間に空気室Aを形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音特性、遮音特性及び制振特性を備えた多孔質材料、この多孔質材料を用いて振動発生源となる可動体の稼働時に発生する騒音及び振動を効果的に低減する吸遮音構造体、この吸遮音構造体を適用した電気掃除機や電気機器、及び、多孔質材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、吸音性能及び遮音性能を備えるために、金属粉体を焼結させ、内部に複数の空孔(気泡)を形成した焼結多孔質体が知られている。そのようなものとして、「金属類の粉体が焼結されてなる焼結多孔質体であって、空孔率が50体積%以上99.5体積%以下、かつ、連続空孔率が80体積%以上100体積%以下、かつ、空孔径の平均値が0.001μm以上100μm以下に形成されている焼結多孔質体」が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−297334号公報(第7頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の焼結多孔質体は、金属粉体の焼結時に材料が溶けるため内部に連続的な空孔(気泡)が形成されている。しかしながら、形成される空孔は、連続的になっているために、金属材料同士の結合が弱いものとなっていた。その結果、成型後の材料そのものの剛性も弱くなってしまい、簡単に構造が崩れてしまうという問題があった。また、この焼結多孔質体は、連続気泡の大きさ及びサイズが一定化せず、形成される空孔が重要な要件である吸音率の再現性が無いため、確実な吸音特性を得られないという問題も有していた。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、吸音特性、遮音特性及び制振特性を焼結した一つの材料で得ることができる多孔質材料、吸遮音構造体、電気機器、電気掃除機、及び、多孔質材料の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る多孔質材料は、異なる粒径のものが含まれる金属粉体を焼結し、前記金属粉体の間に空気室を形成したことを特徴とする。また、本発明に係る吸遮音構造体は、前述した多孔質材料を所定の寸法及び形状に成型したことを特徴とする。さらに、本発明に係る電気機器は、前述の吸遮音構造体を振動発生源となる可動体の周囲の部材に適用したことを特徴とする。またさらに、本発明に係る電気掃除機は、電動送風機を駆動するブロアモータと、前記ブロアモータを収容するモータケースと、を有し、前記モータケースは、前記請求項5に記載の吸遮音構造体で構成構成していることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る多孔質材料の製造方法は、カルバミン酸エチルあるいはポリウレタンの原材料に、10μm〜50μmの粒径を有する金属粉体を混ぜ合わせ混練材料を作成し、前記混錬材料を、所定の温度、所定の圧力で処理することで前記カルバミン酸エチルあるいはポリウレタンの原材料を溶け出させ、前記金属粉体を焼き固めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る多孔質材料によれば、異なる粒径のものが含まれる金属粉体を焼結した一つの材料で吸音特性、遮音特性及び制振特性を得ることができる。また、本発明に係る吸遮音構造体によれば、前述した多孔質材料で構成されているので、吸音特性、遮音特性及び制振特性を有することになる。さらに、本発明に係る電気掃除機によれば、前述した吸遮音構造体をモータケースとして適用しているので、吸音特性及び遮音特性の両性能を確保及び維持することができるとともに、制振特性も有することになる。またさらに、本発明に係る電気機器によれば、前述した吸遮音構造体を振動発生源となる可動体の周囲の部材に適用しているので、吸音特性及び遮音特性の両性能とともに、制振特性も有することになる。
【0009】
本発明に係る多孔質材料の製造方法によれば、金属粉体と金属粉体とが結合していない複数の空気室が強制的に形成されることになり、焼結した一つの材料として多孔質材料が形成でき、この多孔質材料だけで吸音特性、遮音特性及び制振特性を全て有することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る多孔質材料10を説明するための模式図である。図1に基づいて、多孔質材料10の構成について説明する。この多孔質材料10は、焼結した一つの材料で構成されており、この多孔質材料10だけで吸音特性、遮音特性及び制振特性を全て有するものである。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
図1に示すように、多孔質材料10は、異なる粒径のものが含まれる金属粉体が焼き固められて構成されている。金属粉体は、10μm(マイクロメートル)〜50μmの粒径を有する導電材料(たとえば、SUS(ステンレス鋼)やアルミニウム、金、銀等)である。ここでは、多孔質材料10が、大粒径金属粉体1と、小粒径金属粉体2と、で構成されている場合を例に示している。また、多孔質材料10の構成比は、小粒径金属粉体2の含有率の方が、大粒径金属粉体1の含有率よりも多くなっているものとする。このような比率で大粒径金属粉体1と小粒径金属粉体2とを混練することで、多数の空気室(空間)Aを形成し、多孔質材料10を構成しているのである。
【0012】
図2は、実施の形態1に係る多孔質材料10の製造方法を説明するための模式図である。図2に基づいて、多孔質材料10の製造方法について説明する。多孔質材料10は、上述したように、吸音、遮音及び制振を焼結した一つの材料で提供できるものである。この多孔質材料10は、異なる粒径のものが含まれる金属粉体(大粒径金属粉体1及び小粒径金属粉体2)をウレタン樹脂等に混練し、焼結することで形成される。したがって、多孔質材料10は、吸音に必要な空気室Aを確保でき、遮音に必要な比重を確保でき、振動及び音響エネルギーを電気エネルギーに変換することができ、吸音特性、遮音特性及び制振特性を有することになる。
【0013】
まず、カルバミン酸エチルあるいはポリウレタン(ウレタン樹脂)等の原材料に、10μm〜50μmの粒状粉体にした金属粉体を混ぜ合せる(図2(a))。この混錬材料を、たとえば300度以上の温度、所定の圧力(たとえば、3気圧又は4気圧等)で焼結処理する。こうすることで、カルバミン酸エチルやポリウレタン等は溶け出し、金属粉体が焼き固められることになる。この焼結処理での焼結温度は、金属粉体が溶解を開始する前の加熱温度であり、金属材料に応じて調整するとよい。このような温度で焼結処理をするので、金属粉体同士の接触部分が一部溶解して、部分的な焼き固め(焼結)が起こるのである(図2(b))。金属粉体同士の部分的な焼き固めにより、金属粉体と金属粉体とが結合していない複数の空気室Aが強制的に形成されることになる。
【0014】
したがって、多孔質材料10は、焼結した一つの材料として形成され、多孔質材料10だけで吸音特性、遮音特性及び制振特性を全て有することになる。すなわち、吸音特性は、空気室Aが吸音に必要な消音空間としての役目を果たすことにより実現でき、遮音特性は、金属粉体の焼結構造により、材料としての面密度が向上し、遮音に必要な比重を確保することにより実現でき、制振特性は、導電材料が振動及び音響エネルギーを電気エネルギーに変換することにより実現できるのである。
【0015】
消音空間として機能する空気室Aは、ファン等の送風手段で発生する流体成分(風)を通過させることも可能であるため、音の低減を実現できるとともに、流体成分の流路確保を必要とする製品(たとえば、実施の形態4で詳細に説明するような電気掃除機等)の内外部に設けることが可能となる。また、発泡前のカルバミン酸エチルやポリウレタン等の原材料に金属粉体を混錬してから焼結するので、多孔質材料10の用途に応じた様々な形状に容易に成型することが可能である。さらに、多孔質材料10には多数の空気室Aが形成されているので、柔軟性があり、軽量化を実現することもできる。
【0016】
なお、この実施の形態1では、異なる粒径の2つの金属粉体(大粒径金属粉体1及び小粒径金属粉体2)で多孔質材料10を構成している場合を例に示しているが、粒径の異なる3つ以上の金属粉体で多孔質材料10を構成してもよい。また、全部の金属粉体の粒径を異なるものとしてもよい。さらに、多孔質材料10を同一種類の金属粉体で構成してもよく、異なる種類の金属粉体で構成してもよい。そして、異なる種類の金属粉体で多孔質材料10を構成する場合には、たとえば粒径毎に種類を分けておくようにしてもよい。
【0017】
実施の形態2.
図3は、本発明の実施の形態2に係る多孔質材料10aを説明するための模式図である。図3に基づいて、多孔質材料10aの構成について説明する。この多孔質材料10aは、焼結した一つの材料で構成されており、この多孔質材料10aだけで吸音特性、遮音特性及び制振特性を全て有するものである。この多孔質材料10aは、圧電性能を発現する圧電性粉体材料(以下、圧電材料3と称する)を混練している点で、実施の形態1に係る多孔質材料10と相違している。なお、実施の形態2では、実施の形態1と同一部分には同一符号を付し、実施の形態1との相違点を中心に説明するものとする。
【0018】
図3に示すように、多孔質材料10aは、異なる粒径のものが含まれる金属粉体及び圧電材料3(たとえば、カーボンやチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、雲母等の圧電性を発現する材料であればよい)が焼き固められて構成されている。圧電材料3は、金属粉体と同様に10μm〜50μmの粒径を有する粉体材料である。ここでは、多孔質材料10aが、大粒径金属粉体1と、小粒径金属粉体2と、圧電材料3と、で構成されている場合を例に示している。また、多孔質材料10aの構成比は、小粒径金属粉体2の含有率の方が、大粒径金属粉体1及び圧電材料3の含有率よりも多くなっているものとする。このような比率で大粒径金属粉体1、小粒径金属粉体2及び圧電材料3を混練することで、多数の空気室A1 を形成し、多孔質材料10aを構成しているのである。
【0019】
図4は、実施の形態2に係る多孔質材料10aの製造方法を説明するための模式図である。図4に基づいて、多孔質材料10aの製造方法について説明する。多孔質材料10aは、上述したように、吸音、遮音及び制振を焼結した一つの材料で提供できるものである。この多孔質材料10aは、異なる粒径の金属粉体(大粒径金属粉体1及び小粒径金属粉体2)及び圧電材料3をウレタン樹脂等に混練し、焼結することで形成される。したがって、多孔質材料10aは、吸音に必要な空気室A1 を確保でき、遮音に必要な比重を確保でき、圧電材料3によって振動を熱エネルギーに変換することができ、吸音特性、遮音特性及び制振特性を有することになる。すなわち、多孔質材料10aは、多孔質材料10に比べて制振特性を更に向上させたものとなっているのである。
【0020】
まず、カルバミン酸エチルあるいはポリウレタン等の原材料に、10μm〜50μmの粒状粉体にした金属粉体、更には圧電材料3を混ぜ合せる(図4(a))。この混錬材料を、所定の温度、たとえば300度以上の温度、所定の圧力(たとえば、3気圧又は4気圧等)で焼結処理する。こうすることで、カルバミン酸エチルやポリウレタン等は溶け出し、金属粉体及び圧電材料3が焼き固められることになる。この焼結処理での焼結温度は、金属粉体及び圧電材料3が溶解を開始する前の加熱温度であり、金属材料及び圧電材料3に応じて調整するとよい。このような温度で焼結処理をするので、金属粉体同士、金属粉体と圧電材料3、及び、圧電材料3同士の接触部分が一部溶解して、部分的な焼き固め(焼結)が起こるのである(図4(b))。
【0021】
金属粉体同士、金属粉体と圧電材料3、及び、圧電材料3同士の部分的な焼き固めにより、金属粉体同士、金属粉体と圧電材料3、圧電材料3同士が結合していない複数の空気室A1 が強制的に形成されることになる。したがって、多孔質材料10aは、焼結した一つの材料として形成され、多孔質材料10aだけで吸音特性、遮音特性及び制振特性を全て有することになる。すなわち、吸音特性は、空気室A1 が吸音に必要な消音空間としての役目を果たすことにより実現でき、遮音特性は、金属粉体及び圧電材料3の焼結構造により、材料としての面密度が向上し、遮音に必要な比重を確保することにより実現でき、制振特性は、導電材料が振動を電気エネルギーに変換するとともに圧電材料3が振動を熱エネルギーに変換することにより実現できるのである。
【0022】
消音空間として機能する空気室A1 は、ファン等の送風手段で発生する流体成分(風)を通過させることも可能であるため、音の低減を実現できるとともに、流体成分の流路確保を必要とする製品(たとえば、実施の形態4で詳細に説明するような電気掃除機等)の内外部に設けることが可能となる。また、発泡前のカルバミン酸エチルやポリウレタン等の原材料に金属粉体を混錬してから焼結するので、多孔質材料10aの用途に応じた様々な形状に容易に成型することが可能である。
【0023】
さらに、多孔質材料10aには圧電材料3が混練しているため、焼結後、振動及び音響エネルギーが焼結した多孔質材料10aそのものを振動させることで、圧電材料3同士が接触振動し、圧電効果を発現することになる。この圧電効果は、振動及び音響エネルギーの振動を熱エネルギーに変換する振動一熱変換によるものである。つまり、多孔質材料10aは、発生した振動及び音響エネルギーを熱エネルギーに変換し、振動及び音響エネルギーを消耗することができる。したがって、多孔質材料10aは、多孔質材料10に比べて制振特性を更に効果的に向上させたものとなる。また、多孔質材料10aには多数の空気室A1 が形成されているので、柔軟性があり、軽量化を実現することもできる。
【0024】
なお、この実施の形態2では、異なる粒径の2つの金属粉体(大粒径金属粉体1及び小粒径金属粉体2)、及び同一粒径の圧電材料3で多孔質材料10aを構成している場合を例に示しているが、異なる粒径の3つ以上の金属粉体及び粒径の異なる2つ以上の圧電材料3で多孔質材料10aを構成してもよい。また、全部の金属粉体及び圧電材料3の粒径を異なるものとしてもよい。さらに、多孔質材料10aを同一種類の金属粉体及び同一種類の圧電材料3で構成してもよく、異なる種類の金属粉体及び異なる種類の圧電材料3で構成してもよい。そして、異なる種類の金属粉体及び異なる種類の圧電材料3で多孔質材料10aを構成する場合には、たとえば粒径毎に種類を分けておくようにしてもよい。
【0025】
実施の形態3.
図5は、本発明の実施の形態3に係る吸遮音構造体20の概略構成を示す斜視図である。図5に基づいて、吸遮音構造体20の構成について説明する。この吸遮音構造体20は、実施の形態1に係る多孔質材料10あるいは実施の形態2に係る多孔質材料10aを所定の寸法及び形状に成型して構成されており、吸音特性、遮音特性及び制振特性を有するものである。このような特性を有している多孔質材料10及び多孔質材料10aは、振動を発生する機器(たとえば、電気掃除機や圧縮機、洗濯乾燥機等の機器)のケースの板材や底面の板材として使用するのに適している。
【0026】
ここでは、多孔質材料10あるいは多孔質材料10aをケース状に組み立てて吸遮音構造体20を構成している場合を例に示している。多孔質材料10あるいは多孔質材料10aをこのように組み立てることで、吸遮音構造体20をモータケースとして利用することができる。吸遮音構造体20をモータケースとして利用すれば、吸遮音構造体20が防音壁として機能し、モータから発生する音放射を、吸遮音構造体20の外部に放射する前に音響減衰させることが可能となる。また、吸遮音構造体20は、制振特性を有しているので、音響とともに振動を減衰することも可能となる。
【0027】
実施の形態4.
図6は、本発明の実施の形態4に係る電気機器の一例である電気掃除機30の概略構成を示す縦断面図である。図6に基づいて、電気機器の一例としての電気掃除機30について説明する。この電気掃除機30は、実施の形態3に係る吸遮音構造体20を利用することで、吸音特性、遮音特性及び制振特性を有するようになっている。つまり、電気掃除機30は、内部に設置するブロアモータ33を吸遮音構造体20に収容することで、ブロアモータ33から発生する音響及び振動を低減することが可能になっているのである。
【0028】
この電気掃除機30は、ごみを集塵する集塵袋が収容される集塵室31と、集塵室31の後方(下流側)に設けられ、ごみを吸引するための空気流を生成する電動送風機32と、この電動送風機32を駆動するブロアモータ33とが筐体35内に収容されて構成されている。そして、電動送風機32及びブロアモータ33を筐体35内で更に吸遮音構造体20内に収容するようになっている。また、筐体35の背面には、空気流を排出する排気口34が形成されている。なお、図示していないが、電気掃除機30は、筐体35の前側下部に前輪が、後側下部に後輪が、筐体35の内部にブロアモータ33の駆動を制御する制御手段やコードリール室等が設けられており、蛇腹状の吸気パイプ、吸い込みパイプ及び吸い込みブラシを備えているものである。
【0029】
次に、電気掃除機30の作用について説明する。
電気掃除機30の図示省略の電源スイッチがONされると、ブロアモータ33が駆動し電動送風機32が回転され、床面等の塵埃が吸い込みブラシにより空気とともに吸引され、集塵室31に吸い込まれる。このブロアモータ33は、高速回転しており、回転に伴って振動が発生する。このブロアモータ33は、筐体35内で吸遮音構造体20によって支持されている。したがって、ブロアモータ33から発生した振動は、吸遮音構造体20に直接伝播することになる。また、この振動に伴って振動音も発生する。
【0030】
そこで、この振動エネルギー及び音響エネルギーを低減するために、ブロアモータ33を吸遮音構造体20内に収容している。この吸遮音構造体20は、実施の形態3で説明したような特性を有しているので、ブロアモータ33の回転によって発生する振動及び振動に伴って発生する振動音を効果的に低減することが可能になる。つまり、吸遮音構造体20がブロアモータ33の周囲の防音壁として機能するのである。したがって、ブロアモータ33から放射される振動音の吸音と遮音とが同時に行なわれ、ブロアモータ33からの音放射を、電気掃除機30の外部に放射する前に音響減衰させることが可能となる。
【0031】
吸遮音構造体20は、実施の形態1に係る多孔質材料10あるいは実施の形態2に係る多孔質材料10aで構成されており、多数の空気室Aあるいは空気室A1 が形成されている。そのため、吸遮音構造体20は、空気を通過させることが可能になっている。電気掃除機30では、吸遮音構造体20が空気を通過させることが可能であるため、筐体35内を流れる空気の風路を別途形成することなく、空気の流路の確保も同時に行なわれることになる。したがって、電気掃除機30によれば、ブロアモータ33によって吸引される空気の流路確保、及び、電気掃除機30の吸込仕事率の確保が同時に実現できることになる。
【0032】
以上説明したように、多孔質材料10あるいは多孔質材料10aで構成された吸遮音構造体20をブロアモータ33のモータケースとして利用すれば、吸音特性及び遮音特性の両性能を確保及び維持することができ、ブロアモータ33の騒音対策を効果的に実現できる。また、吸遮音構造体20は、制振特性も有しているので、騒音対策だけでなく、電気掃除機30の振動対策も効果的に実現することができる。さらに、吸遮音構造体20は、軽量であるため、電気掃除機30自体の重量の増加を抑制することもできる。
【0033】
なお、吸遮音構造体20の表面にゴミやホコリが付着し、蓄積することで、空気室Aあるいは空気室A1 が閉塞してしまい、吸音に必要な消音空間が保持できなくなってしまうことがある。このように消音空間の確保が不可能になった場合、ブロアモータ33の温度が異常に上昇してしまうおそれがある。そこで、ブロアモータ33の温度を検知する温度センサを設け、温度センサが異常温度上昇を検出した際に、吸遮音構造体20内の空間が塞がれたことによる異常状態と判断して、ブロアモータ33の回転等を強制的に停止させたり、警告を報知(たとえば、音声や表示等)したりするなどの対策を施しておくことが望ましい。
【0034】
なお、実施の形態4では、吸遮音構造体20をモータケースのような形状として利用した場合を例に説明したが、吸遮音構造体20の形状と特に限定するものではない。たとえば、吸遮音構造体20を板状として、その上にブロアモータ33を載置するような利用形態でもよい。また、実施の形態4では、電気掃除機30を電気機器の一例として説明したが、これに限定するものではなく、振動が発生するような電気機器(たとえば、圧縮機や洗濯乾燥機等)であればよい。吸遮音構造体20を圧縮機に適用する場合、圧縮機の下に敷いたり、周囲を囲むように吸遮音構造体20を設けるとよい。また、吸遮音構造体20を洗濯乾燥機に適用する場合、モータの周囲を吸遮音構造体20で囲むように設けるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施の形態1に係る多孔質材料を説明するための模式図である。
【図2】実施の形態1に係る多孔質材料の製造方法を説明するための模式図である。
【図3】実施の形態2に係る多孔質材料を説明するための模式図である。
【図4】実施の形態2に係る多孔質材料の製造方法を説明するための模式図である。
【図5】実施の形態3に係る吸遮音構造体の概略構成を示す斜視図である。
【図6】実施の形態4に係る電気機器の一例である電気掃除機の概略構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 大粒径金属粉体、2 小粒径金属粉体、3 圧電材料、10 多孔質材料、10a 多孔質材料、20 吸遮音構造体、30 電気掃除機、31 集塵室、32 電動送風機、33 ブロアモータ、34 排気口、35 筐体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる粒径のものが含まれる金属粉体を焼結し、前記金属粉体の間に空気室を形成した
ことを特徴とする多孔質材料。
【請求項2】
前記金属粉体の粒径を10〜50μmの範囲としている
ことを特徴とする請求項1に記載の多孔質材料。
【請求項3】
前記金属粉体とともに圧電性能を発現する圧電性粉体材料を焼結した
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔質材料。
【請求項4】
前記圧電性粉体材料の粒径を10〜50μmの範囲としている
ことを特徴とする請求項3に記載の多孔質材料。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質材料を所定の寸法及び形状に成型した
ことを特徴とする吸遮音構造体。
【請求項6】
前記請求項5に記載の吸遮音構造体を振動発生源となる可動体の周囲の部材に適用した
ことを特徴とする電気機器。
【請求項7】
電動送風機を駆動するブロアモータと、
前記ブロアモータを収容するモータケースと、を有し、
前記モータケースは、
前記請求項5に記載の吸遮音構造体で構成構成している
ことを特徴とする電気掃除機。
【請求項8】
カルバミン酸エチルあるいはポリウレタンの原材料に、10μm〜50μmの粒径を有する金属粉体を混ぜ合わせ混練材料を作成し、
前記混錬材料を、所定の温度、所定の圧力で処理することで前記カルバミン酸エチルあるいはポリウレタンの原材料を溶け出させ、前記金属粉体を焼き固める
ことを特徴とする多孔質材料の製造方法。
【請求項9】
前記金属粉体とともに圧電性能を発現する圧電性粉体材料を前記カルバミン酸エチルあるいはポリウレタンの原材料に混ぜ合わせる
ことを特徴とする請求項8に記載の多孔質材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−53414(P2010−53414A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220824(P2008−220824)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】