説明

多孔質物質を含む酸素吸収原末の外装包装体

【課題】多孔質物質を含む酸素吸収原末を包装時よりも気温が上昇する環境下で保存した際においても良好な脱気状態を維持できる、新たな外装包装体を提供する。
【解決手段】多孔質物質を含む酸素吸収原末を20kPa以下の圧力にてガスバリア性包装材料を用いて脱気包装することを特徴とする酸素吸収原末の外装包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸収原末をガスバリア性包装材料で脱気包装してなる外装包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素吸収原末は、金属粉および金属粉に無機塩を被覆させたもの、カテコール、アスコルビン酸、不飽和脂肪酸等を主成分としたものが知られており、食品、医薬品、金属部品、文化財等の保存に使用されている。このような酸素吸収原末は、空気中の酸素と容易に反応し、大気中に放置すれば酸素吸収原末としての効果を失うことから、製造後、酸素吸収原末を輸送・保管する際は、空気に接触しない包装形態が求められる。例えば、酸素バリヤー性、水蒸気バリヤー性及び耐ピンホール性に優れ、しかも保存、物流に適した脱酸素剤用の外装包装体が知られている(特許文献1〜4参照)。
【0003】
酸素吸収原末の一般的な包装方法としては、酸素吸収原末が入ったガスバリア袋にノズルを挿入して袋内部の空気を可能な限り吸引して脱気し、ノズルを速やかに袋から引き抜き、ヒートシール等により封函する方法が採られる。これにより、酸素吸収原末の酸化劣化を出来うる限り抑制し、酸素吸収原末の長期間の保存を可能とするほか、脱気状態としておくことにより、体積を取らずに運送・保管が可能、且つガスバリア袋にピンホールが生じた場合は袋が膨らみ袋内の内容物が動く空間が生じ、袋内の内容物が動く空間がない正常な脱気状態と見分けがつきやすい、という利点もある。
【0004】
しかし、赤道付近を通る海上輸送時のように包装時よりも気温が上昇する環境下で酸素吸収原末を輸送・保管すると、ガスバリア袋にピンホール等の破損が無い状態でも、温度上昇に伴ってガスバリア袋が膨らみ、良好な脱気状態が維持できない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−292812号公報
【特許文献2】特開2002−293372号公報
【特許文献3】特開2002−293382号公報
【特許文献4】特開2002−293383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、多孔質物質を含む酸素吸収原末を包装時よりも気温が上昇する環境下で保存した際においても良好な脱気状態を維持できる、新たな外装包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは今般、以下のことを見出した。上記課題を解決するために本発明者らは脱気状態が維持できない原因を鋭意、調査し検討したところ、温度が上昇した際に酸素吸収原末に含まれる多孔質物質に吸着していたガス分子が脱離することが原因であり、外装ガスバリア袋の脱気包装時の真空度を高めることで解決できることを見出した。さらに本発明者らは、調査および検討を進めた結果、ノズルから袋内のガスを吸引する脱気包装機とは別構造であるチャンバー式の脱気包装機を使用することにより、気温が上昇しても脱気包装状態が維持できる程度にガスバリア袋内の真空度を高めることができることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、多孔質物質を含む酸素吸収原末を20kPa以下の圧力にてガスバリア性包装材料を用いて脱気包装することを特徴とする酸素吸収原末の外装包装体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、多孔質物質を含む酸素吸収原末を、20kPa以下にて脱気包装することにより、包装時よりも気温が上昇する25℃以上の環境で長期間保存しても良好な脱気状態を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いられる酸素吸収原末の主成分としては、酸素を吸収するものであれば何ら限定されないが、次のものが好ましく用いられる。金属を主成分とするものとしては、鉄・銅・マンガン・ニッケル・コバルト・クロム・セリウム等の金属単体又は金属酸化物が挙げられ、これらの金属単体又は金属酸化物を金属ハロゲン化物にて被覆したものも好ましく用いられる。また、有機化合物を主成分とするものとしては、カテコール、グリセリン、エチレングリコール、アスコルビン酸、エリソルビン酸、不飽和脂肪酸化合物類およびこれらの金属塩、が挙げられる。これら酸素吸収原末の主成分は、必ずしも単一物質である必要はなく、二種以上の混合物であってもよい。
【0011】
本発明に用いられる多孔質物質としては、空気及び種々のガスを吸着するものであって、具体的には、水素・一酸化炭素・二酸化炭素・炭化水素類・アルデヒド類・ケトン類・カルボン酸類・硫化水素・アンモニア・アミン類等を物理的、化学的に吸収するものであり、この目的を達成するものであれば特に限定されるものではない。多孔質物質としては、酸化アルミニウム・モレキュラーシーブスに代表される合成ゼオライト、モルデナイト・エリオナイト・クリノプチロライト等の天然ゼオライト、パーライト・酸性白土や活性白土等の粘土鉱物、シリカゲル等の多孔質ガラス、活性炭、珪藻土等の天然二酸化ケイ素等が挙げられる。また、本発明の多孔質物質は、酸素吸収原末の主成分の担体として用いる事が出来る。さらに、これら多孔質物質は、必ずしも単一物質である必要はなく、二種以上の混合物であってもよい。
【0012】
本発明に用いられる多孔質物質の使用量としては、各物質のガス吸着性能により必要な量が異なることから、酸素吸収原末と多孔質物質はいかなる比率であっても構わない。
【0013】
本発明の酸素吸収原末は、酸素を吸収する主成分及び多孔質物質を含むが、この他に脱酸素剤として公知のいかなる物質を含んでも良い。
【0014】
本発明の酸素吸収原末の形態としては、酸素吸収原末そのものに加え、酸素吸収原末を通気性の包装材料で包装した小袋状の脱酸素剤や、酸素吸収原末を熱可塑性樹脂に配合したシート状またはフィルム状の脱酸素剤など、あらゆる形態が含まれる。
【0015】
本発明の外装包装体は、ピンホールが生じた場合に袋が膨らみ袋内の内容物が動くことで正常な脱気状態と見分けをつけやすくする為に、軟包装とする事が好ましい。
【0016】
本発明に用いられるガスバリア性材料としては、ガスバリア性の高いフィルムが望ましく、25℃・60%RHにおける酸素透過率が20mL/(m・24h・atm)以下が好ましい。具体的には、アルミニウム等の金属箔をラミネートした積層フィルム、酸化ケイ素又は酸化アルミニウム等を蒸着したラミネートフィルム等が挙げられる。
【0017】
本発明に用いられる酸素吸収原末の外装包装体内の圧力は、20kPa以下が好ましく、15kPa以下がより好ましく、10kPa以下が更に好ましい。圧力が20kPa以上の場合、外装包装体を25℃よりも高い温度で長時間保管すると脱気不良状態になる為好ましくない。
【0018】
本発明に用いられる脱気包装装置としては、外装包装体内の圧力を20kPa以下、より好ましくは10kPa以下まで減圧可能であれば、どのような装置でも用いる事が出来る。中でも、真空チャンバーを具備した真空包装装置であって、チャンバー内で減圧および封函可能な装置が好ましく用いられる。真空チャンバーは、上記性能を有するものであればどのような大きさ・形状であっても問題ない。
【実施例】
【0019】
以下に本発明の実施例を示し、さらに具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0020】
(実施例1)
30wt%アスコルビン酸Na水溶液0.5kgを活性炭4.5kgに含浸させた酸素吸収原末5kgをアルミニウム箔ラミネートプラスチックフィルム袋(総厚み230μm、袋の大きさ:口480mm×長さ750mm)に入れ、15℃下、チャンバー式真空脱気包装機(株式会社西原製作所製「TVS−9600HC」)を用い到達圧力10kPaで脱気包装を行った。得られた酸素吸収原末の外装包装体を25℃又は60℃環境で放置し、外装包装体の膨らみ・脱気状態を観察した。
【0021】
(実施例2)
脱気包装時の到達圧力を20kPaにした以外は実施例1と同様にして得られた酸素吸収原末の外装包装体を実施例1と同様に放置し、外装包装体の膨らみ・脱気状態を観察した。
【0022】
(比較例1)
脱気包装時の到達圧力を30kPaにした以外は実施例1と同様にして得られた酸素吸収原末の外装包装体を実施例1と同様に放置し、外装包装体の膨らみ・脱気状態を観察した。
【0023】
(比較例2)
脱気包装時の到達圧力を40kPaとした以外は実施例1と同様にして得られた酸素吸収原末の外装包装体を実施例1と同様に放置し、外装包装体の膨らみ・脱気状態を観察した。
【0024】
(比較例3)
脱気包装時の到達圧力を50kPaとした以外は実施例1と同様にして得られた酸素吸収原末の外装包装体を実施例1と同様に放置し、外装包装体の膨らみ・脱気状態を観察した。
【0025】
(実施例3)
実施例1の活性炭をモレキュラーシーブス13Xに変えた以外は実施例1と同様にして得られた酸素吸収原末の外装包装体を実施例1と同様に放置し、外装包装体の膨らみ・脱気状態を観察した。
【0026】
【表1】

【0027】
実施例1及び実施例3で作製した脱気包装体は、全ての条件で良好な脱気状態を維持した。実施例2で作製した脱気包装体は、60℃で2ヶ月放置後には脱気包装体の端部が柔らかいため指で押すとへこみ形状が崩れたが、脱気不良状態には至らなかった。一方、脱気包装時の圧力が20kPaを超過した比較例1〜3の脱気包装体では、何れも60℃で1日放置後に脱気不良状態になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質物質を含む酸素吸収原末を20kPa以下の圧力にてガスバリア性包装材料を用いて脱気包装することを特徴とする酸素吸収原末の外装包装体。
【請求項2】
多孔質物質が活性炭、ゼオライト、珪藻土及びシリカゲルから選ばれる一種又はそれ以上の物質からなる請求項1記載の酸素吸収原末の外装包装体。
【請求項3】
脱気包装にチャンバーを有する脱気包装機を用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の酸素吸収原末の外装包装体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の酸素吸収原末の外装包装体を用いた酸素吸収原末の包装方法。

【公開番号】特開2012−218795(P2012−218795A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89075(P2011−89075)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】