説明

多孔質着色粒子の製造法

【目的】多孔質微小球体に強固にして濃度の高い着色を施すこと。
【構成】多孔質微小球体を、着色料を含む造膜成分で処理すること。

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】本発明は多孔質着色粒子の製造法に関し、更に詳しくは多孔質粒子の表面に着色材が1種の膜となって形成された多孔質着色粒子の製造法に関する。
【従来の技術】無機質多孔質微少球体は従来から各分野で広く利用されており、この微少球体の製造法の一つとして溶液などを利用して製造する方法が知られており、たとえば特公昭54−6251号や特公昭57−55454号公報にも開示されている。この従来の方法の基本は水溶性無機化合物の水溶液と有機溶媒とを混合してW/O型乳濁液となし、次いでこの乳濁液中の上記水溶性無機化合物と反応して水不溶性の沈殿を生成しうる水溶液とを混合して多孔質無機質の微少球体を製造するものである。この微少球体に着色する方法として既に特願昭59−70296号の方法も開発されている。この従来の着色方法は多孔質無機質の微少球体の内部空孔に着色料を内包せしめるものであり、上記出願の方法以外の着色方法についても基本はすべて内部空孔内に着色料を内包せしめるものであった。
【発明が解決しようとする課題】本発明者は従来からこの種多孔質無機質微少球体について研究を続けてきたが、これら微少球体の着色方法として従来のごとく着色料をその内部空孔に含有せしめる手段ではなく、直接微少球体の表面に着色しうる方法を開発すべく研究を続けてきた。従って本発明が解決しようとする課題は上記微少球体の表面に直接着色しうる方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】この課題は多孔質微少球体を着色料を含む造膜成分で処理することにより解決される。本発明においては多孔質微少球体としては既に述べた各種溶液反応法で製造される各種の多孔質無機質微少球体が使用されるばかりでなく、広く多孔質微少球体が使用される。更に具体的には上記以外の無機質多孔質微少球体及び有機質多孔質微少球体も使用できる。また内部に空孔を有するものばかりでなく、空孔を有しないものでも構わない。更にこの微少球体としては無色乃至白色のものが好ましいが、若干薄く着色されたものでもよい。具体的な多孔質微少球体としては無機質のものとしてたとえばアルミナ、珪酸、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム等を、また有機質のものとしてはポリアクリル酸系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等からなる微少球体を例示できる。多孔質微少球体の多孔度としては、細孔容積0.01cc/g以上、好ましくは0.1〜2.0cc/g程度のものであり、細孔径が20Å以上、好ましくは20〜2000Å程度のものである。形状としても球形ばかりでなく、粒状でもよく、そのサイズは長径として20mm以下、好ましくは0.1μm〜1mm程度のものである。本発明において使用する着色料は大別して顔料と染料に分けられる。顔料としては無機質及び有機質のものがいずれも使用でき、たとえば具体例としては下記のものを例示できる。
白色顔料…酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、メタホウ酸バリウム、パッチンソン白、マンガン白、タングステン白、酸化マグネシウム等。
黒色顔料…カーボン黒、鉄黒、チタン黒、シリカ黒、黒鉛等。
灰色顔料…亜鉛末、炭化亜鉛等。
赤色顔料…ベンガラ、コバルト赤、モリブデン赤、コバルトマグネシア赤、亜酸化銅、フェロシアン銅、赤群青等。
黄色顔料…黄土、黄酸化鉄、チタン黄、バリウム黄、ストロンチウム黄、クロムチタン黄、オーレオリン(コバルト黄)、タングステン黄、パナジウム黄、ニッケル黄等。
緑色顔料…クロム緑、酸化クロム、水酸化クロム、亜鉛緑、エジプト緑、マンガン緑、ブレーメン緑、ポリー緑、燐酸緑、チタン緑等。
青色顔料…群青、紺青、コバルト青、タングステン青、モリブデン青、エジプト青、ブレーメン青、ホウ酸銅、石灰青、岩群青等。
紫色顔料…マルス紫、マンガン紫、コバルト紫、コバルト紫ノーバ、塩化クロム、銅紫、群青紫等。
金属粉顔料…アルミニウム粉、銅粉、ブロンズ粉、ステンレススチール粉、ニッケル粉、銀粉、金粉等。
茶色顔料…アンバー、酸化鉄粉、バンダイク茶、プロシア茶、マンガン茶、銅茶、コバルト茶、フェロシアン銅茶等。
タール色素…赤色102号−4l、赤色104号−4l、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色219号、赤色226号、赤色228号等の赤色色素。橙色203号、橙色204号、橙色401号等の橙色色素。黄色4号−4l、黄色5号−4l、黄色205号、黄色401号等の黄色色素。青色1号−4l、青色204号、青色401号、青色400号等の青色色素等。
パール色素…雲母チタン、魚鱗白、オキシ塩化なるビスマス、酸化鉄処理雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カーボンブラック処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン等。
これらの着色顔料は、単独で又は2種以上を混合して使用され、また体質顔料も1種又は2種以上の混合物として使用される。本発明に於いて使用される染料としては各種の染料が使用される。更に詳しくは分散染料、カチオン染料、塩基性染料、酸性染料(含金属染料)、反応染料、直接染料、硫化染料、硫化建染染料、建染染料(可溶性建染染料)、アゾイック染料、媒染染料、酸性媒染染料、蛍光増白染料、複合染料、有機溶剤溶解染料、ピグメントレジンカラー等を具体例として挙げることが出来る。特に本発明微小球体を食品、医薬品、化粧品等に使用する場合の染料としては以下のものが好ましい。即ち食品、医薬品および化粧品に使用できる着色剤で、■食用色素、■医薬品、医薬部外品および化粧品用色素、■外用医薬品、外用医薬部外品および化粧品用色素、■粘膜に使用されることがない外用医薬品および外用医薬部外品ならびに化粧品用色素、のように分類される。これらの色素は食品や医薬品とともに体内に摂取され、また外用医薬品や化粧品に使用されて皮膚や粘膜に直接に接触するものであるから、色素の毒性を考慮し、公衆衛生の見地から規制されている。■の色素としては食用色素(C,I,Food Yellow 3,4;Red 7,9,14,94;Violet 2;Blue 1,2;Green2,3)など、■の色素としては酸性染料(C.I.AcidYellow 3,73;Orange 7,11,24;Red33,95;Blue 5;Green 25)、塩基性染料(C.I.Basic violet 10)、油溶性染料(C.I. Solvent Yellow23;Red 23,43,48,49;Violet 13;Green 8,7)、パット染料(C.I.Vat Red 1;Blue 1,6)、顔料(C.I.Pigment Yellow 64,73,100)など、■の色素としては食用色素(C.I. Food Red 1,6)、酸性染料(C.I.Acid Yellow 11,36,40;Orange 20;Red26,88;Violet 9,43;Green 1,3;Blanck1)、油溶性染料(C.I. Solvent Yellow 5;Orange2,7;Red 24)、顔料(C.I.Pigment Yellow 1;Orange ;Red 22,48;Blue 15)などがある。本発明においては上記着色料は造膜成分と共に使用される。この造膜成分は多孔質微少球体の表面に着色被膜を形成する。特に重要なことは、多孔質微少球体の表面全面に一枚の表面層が形成されるのではなく、多孔質を形成する細孔内に着色料を含む造膜成分が侵入して細孔内の表面を被覆することである。このため形成された着色膜は容易に剥がれることがなく、しかも極めて濃色に着色されることとなる。このような作用を発揮する本発明の造膜成分は大別して3つに分類出来る。即ち(a)水溶性有機質高分子成分、(b)水不溶性有機高分子成分、及び(c)無機質コーティング成分である。これ等の具体例を示せば以下の通りである。
(a)水溶性有機質高分子成分(イ)水溶性合成高分子成分ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルスルホン、マレイン酸共重体、ポリエチレンオキサイド、ポリジアリルアミン、ポリエチレンイミン(ロ)水溶性セルロース誘導体カルボニルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、その他混合エーテル、セルロース硫酸エステルナトリウム(ハ)水溶性天然高分子成分アラビヤガム、トラガカントガム、カラヤガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カラギーナン、ファーセルラン、寒天、ハイメトキシペクチン、ローメトキシペクチン、キチン、キトサン(b)水不溶性有機質高分子成分ポリメチルペンテン、石油樹脂、アイオノマー、酪酢酸セルロース、ポリスチレン、不飽和ポリエステル樹脂、水架橋ポリエチレン、SAN樹脂、EVA変性樹脂、エチルセルロース、ACS樹脂(耐熱用)、メタクリルースチレン共重合体、酢酸セルロース、メタクリル樹脂、低密度ポリエチレン(LDPE)、耐候性三元共重合樹脂、AAS樹脂、アクリルニトリルグラフトコポリマー、ポリウレタン、透明ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、硬質ポリ塩化ビニル、耐熱性ポリスチレン、ブタジェン−スチレン樹脂、難燃性ABS樹脂、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−塩化ビニル共重合体、ポリブチレンテレフタレート、酢酸ビニル系樹脂、ABS樹脂、塩素化ポリエチレン、オキシベンゾイルポリエステル、ポリアリルスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド(射出用)、シリコーン(シリコーン RTV)、熱硬化性ポリブタジェン、フッ素樹脂(ポリ四フッ化エチレン)、強化ポリアミド、エポキシ樹脂、塩素化ポリエーテル、ポリフェニレンスルホン、ポリエーテルスルホン、アリル樹脂(ガラス入り)、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリスルホン、ポリアクリレート、ポリフェニレンオキシド、フラン樹脂、ポリアミド、オレフィンビニルアルコール共重合体、熱可塑性エラストマー/ポリエステル、ポリカーボネート、高密度ポリエチレン(LDPE)、ポリアセタール、含油ポリアセタール、ポリプロピレン、ユリア樹脂、耐衝撃性樹脂(C)無機質コーティング成分下記一般式(1)〜(3)で表される各化合物
【化1】
【化1】
【化1】本発明においては更に必要に応じて溶剤を使用することもできる。この溶剤は着色料を含む造膜成分の処理を容易にするために使用されるものであり、たとえば下記のものを例示できる。
(イ)芳香族炭化水素ベンゼン、トルエン、キシレン、エチナルベンゼン、イソブロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルエタン(ロ)環状炭化水素シクロヘヤセン、シクロヘキサン、メチルクロロヘキサン、デカリン、テトラリン(ハ)脂肪族ナフサペトロベンゼン、トールオイル、ベンゾソル、トルゾル(ニ)塩素化脂肪族炭化水素クロロホルム、四塩化炭素、二塩化エチレン、三塩化エチレン、二塩化プロピレン、トリクロロエタン、パークロロエチレン、テトラクロロエチレン(ホ)塩素化芳香族炭族化水素モノクロロベンゼン、ロージクロロベンゼン、トリクロロベンゼン(ヘ)1価脂肪族炭化水素無水メタノール、無水エタノール、エタノール型2B、イソプロパノール91%、イソプロパノール99%、BCC−ブタノール、イソブタノール、n−ブタノール、オクチルアルコール(ト)1価環状アルコールシクロヘキサノール、フルフリルアルコール、メチルシクロヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、ピンオイル(チ)多価アルコールエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン(リ)エーテルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、ジエチルセロソルプ、モルホリン、n−ブチルエーテル、フェニルエーテル、ベンジルエーテル本発明法実施に際しては、多孔質微少球体を着色料を含む造膜成分に微少球体を浸漬し、乾燥すればよい。本発明の着色された微少球体はその着色膜が容易に剥離しないため極めて強固に着色されており、しかも極めて濃色に着色でき、加えて内部まで着色されている特徴を有する。このために特に化粧料、医薬品、フィルム、コピー用トナー、紫外線変色インキ、塗料、繊維用添加剤という用途に極めて好適である。
【実施例1】
ポリエチレングリコール #6000 100g 及びエチルセルロース 100g をメチレニクロライド 1000gに溶解させておく。
これにフタロシアニンブルー10gを加えて超音波分解機によりよく分散させる。このように作っておいた青色着色造膜成分に平均粒子径1mmの多孔質球形ケイ酸カルシウム300g加え、よく分散させておき、スプレードライヤーにて80℃で噴霧乾燥させ青色着色多孔質ケイ酸カルシウム約505gを得た。
【実施例2】ポリエーテルスルフォン樹脂(I.C.I.ジャパン製#4100P)50gを、ピリジン1000gに溶解させておく。これにR−226(ヘリンドンピンク)を10g加え、ホモディスパーによりR−226を解砕、分散させる。撹伴乾燥機内に平均粒子径3μm多孔質球形シリカ500g加え、80℃で10mmHgの減圧で撹拌しながら10g/分の添加速度でR−226分散、ポリエーテルフルフォン樹脂溶液を加え、赤色着色球形シリカを約600g得た。尚、原料(未着色)シリカ粒子の表面の走査型電子顕微鏡写真を図1に、またこの例で得られた着色シリカの同写真を図2に示す。
【実施例3】アルギン酸ナトリウム10gを水1000gに溶解させておく。これにベンガラ(平均粒子径0.1μm)を50g加えホモディスパーにてよく分散させておく。これを実施例2と同様にして、多孔質球形シリカ500gにコートして赤色着色球形シリカを約540g得た。得られた着色シリカの走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。
【実施例4】テトライソプロピルオキシドシラン100gにハニサエロー5g加え、これにイソプロピルアルコール500gを添加して超音波分散機によりよく分散させる。これを、実施例2と同様に多孔質球形アクリル樹脂(平均粒子径10μm)500gにコートし黄色着色アクリルビーズを約515g得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例2で使用したシリカ粒子の構造で示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】図2は実施例2で得た着色シリカ粒子の構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は実施例3で得られた着色シリカ粒子の構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】多孔性微少粒子を着色料を含む造膜成分で処理したことを特徴とする多孔質着色粒子の製造法。
【請求項2】上記造膜成分が水溶性または水不溶性有機質高分子成分、または無機質コーティング成分である請求項1の製造法。
【請求項3】多孔質微少球体が無機質多孔質微少球体である請求項1の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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