説明

多孔質管

【課題】 目詰まりしない程度でかつ共鳴しにくくなる程度に通気性がある多孔質管の提供。
【解決手段】 水溶性気孔形成材が含まれる樹脂を押出し成形またはブロー成形によりあらかじめ管状に成形し、その後に水雰囲気下にさらすことにより前記水溶性気孔形成材を溶出させることにより形成した多孔質管であって、水溶性気孔形成材が含まれる樹脂と水溶性気孔形成材の溶融粘度比率が1:30と1:100との間とされている多孔質管10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質管に関する。
【背景技術】
【0002】
動力源を有する通風管は、その動力源自体の音のレベルと管の長さに起因する気柱共鳴音が問題となってくる。気柱共鳴音を消すために、a)図5〜図7に示すように、共鳴型消音器、拡張型消音器などのパッシブ消音器1を設けたり、b)図8に示すように、アクティブノイズコントロール装置2を用いて逆位相の音を発生させ管開口部の音圧レベルを下げたり(アクティブノイズコントロール)、c)管の壁面で音圧レベルを下げるために、管の内壁面に吸音材を貼り管自体に消音効果を持たせたりしている(吸音ダクト)。
【0003】
しかし、a)パッシブ消音器、b)アクティブノイズコントロール、c)吸音ダクトには、つぎの問題がある。
a) パッシブ消音器
低周波数音を低減しようとすると消音器の容量を大きくとらなければならない。
b) アクティブノイズコントロール
センサマイク2a、コントローラ2b、スピーカ2c、エラーマイク2dと構成部品が多く、また、それぞれ、非常に高い精度が要求される。また、通風管が自動車のエンジンの吸気のために設けられる管である場合、高温振動下に耐えうるスピーカでなければならない。
c) 吸音ダクト
管の内壁面に吸音材を貼るため、低周波数音低減のためには、吸音材の厚さが大きい必要がある。そのため、管が太くなるか、または流路径が小さくなる。
【0004】
上記a)〜c)に存在する問題を解決できるものとして、d)実開昭62−84525号公報に開示された多孔質管や、e)特開2000−192865号公報に開示された多孔質管がある。
d) 実開昭62−84525号公報に開示された多孔質管は、管壁を不織布で構成し管の内側と外側を連通にすることにより気柱共鳴音を抑え、消音効果をもたせている。
しかし、管の内側と外側を連通する構造であるため、ほこり、水分が多い場所で使用すると、ほこり、水分を吸い込んでしまい、目詰まりを起こすおそれがある。また、管全体を不織布で作ることが好ましいが、コネクト部を不織布でつくることができないため、他工程で製造されたコネクタ部を取付ける必要がある。また、こうしたコネクタ部で共鳴し、問題となる。さらに、樹脂ダクトに後加工で穴を開け、不織布を貼付しなければならないこと、形状の自由度が小さいことなどの問題点がある。
e) 特開2000−192865号公報に開示された多孔質管は、粒状ペレットを溶融させている。
しかし、気孔径(開孔率)を制御することが困難であり、音圧の調整が困難である。
【特許文献1】実開昭62−84525号公報
【特許文献2】特開2000−192865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする第1の問題点は、多孔質管の場合、気孔径を制御することが困難なことである。
本発明が解決しようとする第2の問題点は、不織布で多孔質管を形成する場合、不織布以外で製造されたコネクト部を要することである。
本発明の第1の目的は、目詰まりしない程度でかつ共鳴しにくくなる程度に通気性がある多孔質管を提供することにある。
本発明の第2の目的は、不織布を用いる場合と異なり別材料で製造されたコネクト部が不要な多孔質管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 水溶性気孔形成材が含まれる樹脂を押出し成形またはブロー成形によりあらかじめ管状に成形し、その後に水雰囲気下にさらすことにより前記水溶性気孔形成材を溶出させることにより形成した多孔質管であって、
前記水溶性気孔形成材が含まれる樹脂と前記水溶性気孔形成材の溶融粘度比率が1:30と1:100との間とされている多孔質管。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)の多孔質管では、樹脂に含まれる水溶性気孔形成材の割合を調整することにより、水溶性気孔形成材を溶出させて形成される孔の大きさを調整できる。したがって、孔の大きさを目詰まりしない程度でかつ管が共鳴しにくくなる程度の大きさにすることにより、ほこりや水分が孔から管の内側に入り込むことを防止でき、気柱共鳴が発生することを防止できる。
また、樹脂製であるため、多孔質管と別に製造されたコネクタ部は不要である。そのため、多孔質管と別に製造されたコネクタ部を要する場合に比べて、低コストであり、コネクタ部で気柱共鳴が発生することを防止できる。
また、樹脂と水溶性気孔形成材の溶融粘度比率が1:30と1:100との間とされているので、管表面に樹脂材によるスキン層が生成することを防止できる。その結果、スキン層ができることによる気柱共鳴の発生を防止できる。
【実施例】
【0008】
本発明実施例の多孔質管を、図1〜図4を参照して説明する。
本発明実施例の多孔質管10は、たとえば、車両のエンジンルーム内に設けられる車両用吸気管、掃除機の吸管、空調ダクト、燃料電池に接続される管、煙突(排煙管)、下水管、洗濯機に接続される管、穀類の搬送管に用いられる(本発明図示例では、多孔質管10が車両用吸気管に用いられる場合を示している)。以下、本発明実施例では、多孔質管10が車両用吸気管に用いられる場合を例にとって説明する。
【0009】
多孔質管10は、車両のエンジンルーム内に設けられる。多孔質管10は、エンジンルーム内に配置された多孔質管10以外の物との干渉を避けるために、限られた空間内に設置される。多孔質管10は、図1に示すように、エアクリーナ20より吸気流れ方向下流側に設けられる吸気管に用いられていてもよく、エアクリーナ20より吸気流れ方向上流側に設けられる吸気管に用いられていてもよい(図示例では、多孔質管10がエアクリーナ20より吸気流れ方向下流側に設けられる吸気管に用いられる場合を示している)。多孔質管10が、エアクリーナ20より吸気流れ方向下流側に設けられる吸気管に用いられる場合、多孔質管10は、エアクリーナ20と図示略のインテークマニホルドとの間に配せられる。
【0010】
多孔質管10は樹脂製である。多孔質管10は、多孔質管10の内側と外側とを連通する孔11を有する。多孔質管10の気孔率は、50%以上である。ここで、気孔率とは、多孔質管10全体の中で孔11が占める割合である。
【0011】
多孔質管10は、少なくとも一種類の水溶性気孔形成材が50%以上含まれる樹脂を用い水溶性気孔形成材が一部溶融する温度で樹脂を押し出し成形またはブロー成形によりあらかじめ管状に成形し、その後に樹脂を水雰囲気下にさらすことにより水溶性気孔形成材を溶出させることにより形成された管である。水溶性気孔形成材が溶出してできた部分が孔11である。
【0012】
多孔質管10の製造方法は、少なくとも1種類の水溶性気孔形成材が50%以上含まれる樹脂を用い水溶性気孔形成材が一部溶融する温度で樹脂を押出し成形またはブロー成形によりあらかじめ管状に成形する工程と、その後に樹脂を水雰囲気下にさらすことにより水溶性気孔形成材を溶出させる工程とを、有する。
【0013】
水溶性気孔形成材が一部溶融する温度で樹脂を成形するのは、水溶性気孔形成材を溶出させたときに連通気泡を生成するためである。
水溶性気孔形成材は、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコール、多価アルコール、糖、水溶性アルカリ金属塩、水溶性高分子のいずれか一種類のみまたは2種類以上からなる。
水溶性気孔形成材が含まれる樹脂は、水溶性気孔形成材が一部溶融する成形温度を有するものであればよく、たとえば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマ、熱硬化性樹脂、ゴムなどである。
【0014】
水溶性気孔形成材が含まれる樹脂と、水溶性気孔形成材との溶融粘度(MFR)比率は、1:30から1:100程度とされており、水溶性気孔形成材が多孔質管10の表面に張出す構造とされている。溶融粘度比率が大きすぎると、成形材料にうまくせん断がかからず成形が困難になるし、溶融粘度比率が小さすぎると、水溶性気孔形成材のみの骨格を形成することができないため、独立気孔状態となり、良好な連通気孔を得ることができないからである。
【0015】
ここで、図4に示す測定方法により、多孔質管10でない通常の管で構成されたダミーダクト31と、多孔質管10で構成されたダミーダクト32との、スピーカ加振音響特性結果を、図3に示す。
多孔質管10で構成されたダミーダクト32では気柱共鳴音が立たないため、通常の管で構成されたダミーダクト31に比べ、フラットな特性になる。
【0016】
本発明実施例の作用、効果を説明する。
樹脂に含まれる水溶性気孔形成材の割合を調整することにより、水溶性気孔形成材を溶出させて形成される孔11の大きさを調整できる。したがって、孔11の大きさを目詰まりしない程度でかつ多孔質管10が共鳴しにくくなる程度の大きさにすることにより、ほこりや水分が孔11から多孔質管10の内側に入り込むことを防止でき、気柱共鳴が発生することを防止できる。
また、多孔質管10は樹脂製であるため、多孔質管10と別に製造されたコネクタ部は不要である。そのため、コネクタ部を要する場合に比べて、低コストであり、コネクタ部で気柱共鳴が発生することを防止できる。
また、樹脂と水溶性気孔形成材の溶融粘度比率が1:30と1:100との間とされているので、管表面に樹脂材によるスキン層が生成することを防止できる。その結果、スキン層ができることによる気柱共鳴の発生を防止できる。
【0017】
孔11の大きさを調整できるので、孔11の大きさをエアクリーナ20の図示略のフィルタエレメントよりも細かい孔にすることにより、多孔質管10をエアクリーナ20よりも吸気流れ方向下流側(クリーンサイドであるエアクリーナホース)に用いることができる。
孔11は多孔質管10の内側と外側とを連通しているので、多孔質管10の内側の音圧が孔11を通して多孔質管10の外側にもれる。そのため、気柱共鳴が発生しにくい。そのため、共鳴型消音器や拡張型消音器は不要である。
【0018】
本発明実施例では、多孔質管10が車両用吸気管に用いられる場合を例にとって説明したが、多孔質管10が穀類の搬送管に用いられる場合、中実材料で成形した管に比べて、穀類が管壁に衝突した際の打音を抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明実施例の多孔質管が車両用吸気管に用いられる場合の、多孔質管とその近傍を示す概略斜視図である。
【図2】本発明実施例の多孔質管の、拡大断面図である。
【図3】多孔質管で構成されたダミーダクトと多孔質管で構成されないダミーダクトとのスピーカ加振音響特性結果を示すグラフである。
【図4】図3の測定方法を示す概略図である。
【図5】従来の通風管にサイドブランチ消音器を設けた場合の、消音器とその近傍を示す平面図である。
【図6】従来の通風管にヘルムホルツレゾネータを設けた場合の、レゾネータとその近傍を示す平面図である。
【図7】従来の通風管に拡張型消音器を設けた場合の、消音器とその近傍を示す平面図である。
【図8】従来の通風管にアクティブノイズコントロール装置を設けた場合の、装置とその近傍を示す平面図である。
【符号の説明】
【0020】
10 多孔質管
11 孔
20 エアクリーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性気孔形成材が含まれる樹脂を押出し成形またはブロー成形によりあらかじめ管状に成形し、その後に水雰囲気下にさらすことにより前記水溶性気孔形成材を溶出させることにより形成した多孔質管であって、
前記水溶性気孔形成材が含まれる樹脂と前記水溶性気孔形成材の溶融粘度比率が1:30と1:100との間とされている多孔質管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−17793(P2006−17793A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192773(P2004−192773)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】