説明

多孔質複合膜材料及びその適用

本発明は、多孔質複合材料、並びにそれを製造及び使用する方法を提供する。1つの実施形態では、多孔質複合材料は、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維を含む多孔質基材、並びに多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置され、第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維への少なくとも1つの付着点を有する第3のポリマー材料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料、特に、多孔質複合材料に関する。
【0002】
[関連する米国先行出願データ]
本出願は、2006年5月9日出願の米国特許仮出願第60/799,135号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
多孔質材料は、濾過を含む多くの領域で適用されている。精密濾過、限外濾過、ナノ濾過、及び逆浸透は、多孔質膜を含む多孔質材料を使用することができるプロセスの例である。
【0004】
精密濾過プロセスは、一般に、流体流から比較的小さな粒子を除去すべき用途で使用される。精密濾過に適切な用途には、薬学的用途及びマイクロ電子工学的用途のための水及び汚水の処理、集塵、並びに微粒子及び細菌の除去が含まれるが、これらに限定されない。
【0005】
限外濾過は、分子のサイズ及び形状に基づいた流体流中の成分の分離を達成する働きをする圧力駆動型膜プロセスである。加圧下で、溶媒及び流体の小さな溶質種(solute species)は膜を通過する一方で、より大きな溶質種は膜によって保持される。限外濾過に関する典型的な用途には、脱塩プラントにおける海水の前処理、薬学的適用のためのウイルス除去、プロセス水として再利用するための排水の処理、及び油と水との分離が含まれる。
【0006】
逆浸透は、塩等の高レベルの溶解イオンを含む濃縮液の精製で適用されている。逆浸透では、半透膜の一方の面上の濃縮液に加圧する。それにより、膜のもう一方の面に精製透過物が生成される。
【0007】
高圧及び他の厳しい物理的条件により、濾過用途で使用される多孔質材料は、しばしば、多孔質基材及び基材上に配置された多孔質膜を有する複合材料を含む。基材は、厳しい物理的条件に耐えるのに十分な機械的性質を有する多孔質複合体を提供する一方で、膜は濾過プロセスを達成するのに適切な媒介物を提供する。
【0008】
濾過用途のための多孔質複合材料の形成では、膜を基材上に流延する(cast)ことができる。多くの場合、膜はある材料から構成され、基材は異なる材料から作製される。異なる材料から作製された基材上へのある材料を含む膜の流延により、特に膜及び基材材料が流延溶媒で異なる溶解性を有するか、又は異なる熱的性質を示す場合に不十分な機械的性質を有する複合物(composite)を生成し得る。異なる材料の組み合わせから生成した膜表面は、しばしば均一でない。それにより孔サイズ分布が広範になり、多孔質複合物の性質に欠陥を生じる可能性がある。
【0009】
異なる材料の組み合わせは、基材への膜の付着又は接着にさらに影響を及ぼす可能性がある。表面エネルギー及び/又は化学的適合性が調和しない膜及び基材は、一般に、相互の接着が不十分であり、それにより、膜と基材との間の界面に有意な空隙を生じ得る。膜及び基材の熱的性質の相違によってさらに接着が不十分になり、その界面に張力が生じ得る。膜と基材との間の界面張力により、膜剥離及び表面クラッキングを引き起こし得る。
【0010】
膜の剥離及び分解に対する既存の膜−基材複合材料の脆弱性は、多くの濾過プロセスで使用される高圧によってさらに悪化する。膜剥離は、濾過系をバックフラッシュ又は逆洗するのに使用される頻繁な加圧によってさらに沈殿され得る。
【0011】
上記問題を考慮して、分解耐性を示す異なる材料を含む多孔質複合材料を提供することが望ましいであろう。このような多孔質複合材料を生成及び使用する方法を提供することがさらに望ましいであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、分解耐性を示す異なる材料を含む多孔質複合物を提供する。本発明の実施の形態では、多孔質複合材料は、多孔質基材に付着した多孔質膜等の種々の材料を有する多孔質基材を含む。
【課題を解決するための手段】
【0013】
多孔質基材全体に分散した粒子及び/又は繊維との1つ又は複数の付着点の形成によって、本発明の多孔質基材表面に材料を付着させる。多孔質基材全体に分散した粒子及び/又は繊維は、多孔質基材表面上に配置した材料と化学的に同一であるか又は類似している。しかし、付着点を形成する粒子及び/又は繊維は、これらが分散された多孔質基材のマトリクスと化学的に異なる。多孔質基材全体に分散した粒子及び/又は繊維と1つ又は複数の付着点を形成する多孔質膜等の材料は、圧力及び機械的撹拌等の分解力に対する安定性及び耐性の強化が認められ得る。
【0014】
さらに、化学的に異なる多孔質基材のマトリクス中の粒子及び/又は繊維の分散及び粒子及び/又は繊維への化学的に類似する材料の付着により、安価な多孔質基材を高価な膜材料と組み合わせて、種々の濾過装置を製造することができる。
【0015】
多孔質複合材料は、1つの実施の形態では、第1の材料及び第2の材料の少なくとも1つの粒子又は繊維を含む多孔質基材、並びに多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置された第3の材料を含む。本発明の実施の形態では、多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置された第3の材料は、第2の材料の少なくとも1つの粒子又は繊維への少なくとも1つの付着点を有する。いくつかの実施の形態では、多孔質基材は、第2の材料の複数の粒子又は繊維を含むことができる。
【0016】
別の実施の形態では、本発明は、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維を含む多孔質基材、並びに多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置された第3のポリマー材料を含む多孔質複合材料を提供する。本発明の実施の形態では、多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置された第3のポリマー材料は、第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維への少なくとも1つの付着点を有する。いくつかの実施の形態では、多孔質基材は、第2のポリマー材料の複数の粒子又は繊維を含むことができる。さらに、第1のポリマー材料は、いくつかの実施の形態では、複数の粒子又は複数の繊維を含む。
【0017】
さらなる実施の形態では、本発明は、少なくとも1つの二成分繊維を含む多孔質基材であって、二成分繊維は第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料を含む、多孔質基材を含む多孔質複合材料を提供する。第3のポリマー材料は、多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置され、二成分繊維の第1又は第2のポリマー材料への少なくとも1つの付着点を有する。いくつかの実施の形態では、多孔質基材は、複数の二成分繊維を含む。1つの実施の形態では、多孔質基材は、複数の焼結した二成分繊維を含む。
【0018】
本発明の実施の形態では、第3のポリマー材料は、多孔質基材中の第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維への1つ又は複数の付着点を有し得る。いくつかの実施の形態では、第3のポリマー材料は、複数の粒子又は繊維のそれぞれへの少なくとも1つの付着点を有する。付着点は、本発明の実施の形態によれば、付着点を形成する材料の間の界面又は境界が規定されず、付着点を形成する材料が互いに連続するように物理的相互作用及び/又は化学結合(共有結合、イオン結合、又はこれらの組み合わせが含まれる)を含む。物理的相互作用は、本発明のいくつかの実施の形態によれば、二材料間の物理的結合及び/又はもつれ(このような2つ以上のポリマー材料の鎖のもつれ等)を含む。
【0019】
さらに、本発明のいくつかの実施の形態では、第3のポリマー材料は、平均孔サイズが多孔質基材の平均孔サイズ以下である多孔質膜を含む。このような実施の形態では、多孔質膜を含む第3のポリマー材料により、濾過特性が向上する二次的な細孔構造を有する多孔質基材を得ることができる。
【0020】
別の態様では、本発明はまた、多孔質複合材料を作製する方法を提供する。1つの実施の形態では、多孔質複合材料を作製する方法は、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維を含む多孔質基材を準備すること、溶媒中に溶解した第3のポリマー材料を含む溶液を準備すること、多孔質基材に溶液を適用すること、及び第3のポリマー材料と第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維との間に少なくとも1つの付着点を形成することを含む。いくつかの実施の形態では、第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維はまた、溶媒に溶解性であり、溶媒及び第3のポリマー材料を含む溶液の基材への適用によって少なくとも部分的に溶解する。
【0021】
別の実施の形態では、多孔質複合材料を作製する方法は、少なくとも1つの二成分繊維を含む多孔質基材であって、二成分繊維は第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料を含む、多孔質基材を準備すること、溶媒中に溶解した第3のポリマー材料を含む溶液を準備すること、溶液を多孔質基材に適用すること、及び第3のポリマー材料と二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料との間に少なくとも1つの付着点を形成することを含む。いくつかの実施の形態では、少なくとも1つの二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料はまた、溶媒に溶解性であり、溶媒及び第3のポリマー材料を含む溶液の基材への適用によって少なくとも部分的に溶解する。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、流体を濾過する方法を提供する。1つの実施の形態では、流体を濾過する方法は、フィルターであって、フィルターが第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維を含む多孔質基材を含む、フィルターを準備することを含む。第3のポリマー材料は、基材の少なくとも1つの表面上に配置され、第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維への少なくとも1つの付着点を有する。流体は、フィルターを通過する。
【0023】
別の実施の形態では、流体を濾過する方法は、フィルターであって、フィルターは少なくとも1つの二成分繊維を含む多孔質基材を含み、二成分繊維は第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料を含む、フィルターを準備することを含む。第3のポリマー材料は、多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置され、二成分繊維の第1の、又は第2のポリマー材料への少なくとも1つの付着点を有する。流体は、フィルターを通過する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、分解耐性を示す異なる材料を含む多孔質複合物を提供する。本発明の実施形態では、多孔質複合材料は、多孔質基材に付着した多孔質膜等の種々の材料を有する多孔質基材を含む。
【0025】
多孔質基材全体に分散した粒子及び/又は繊維との1つ又は複数の付着点の形成によって、本発明の多孔質基材表面に材料を付着させる。多孔質基材全体に分散した粒子及び/又は繊維は、多孔質基材表面上に配置された材料と化学的に同一であるか又は類似している。しかし、付着点を形成する粒子及び/又は繊維は、これらが分散された多孔質基材のマトリクスと化学的に異なる。多孔質基材全体に分散した粒子及び/又は繊維と1つ又は複数の付着点を形成する多孔質膜等の材料は、圧力及び機械的撹拌等の分解力に対する安定性及び耐性の強化が認められ得る。
【0026】
さらに、化学的に異なる多孔質基材のマトリクス中の粒子及び/又は繊維の分散、並びに粒子及び/又は繊維への化学的に類似する材料の付着により、安価な多孔質基材を高価な膜材料と組み合わせて、種々の濾過装置を製造することができる。
【0027】
1つの実施形態では、本発明の多孔質複合材料は、第1の材料及び第2の材料の少なくとも1つの粒子又は繊維を含む多孔質基材、並びに多孔質基質の少なくとも1つの表面上に配置され、第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維への少なくとも1つの付着点を有する第3の材料を含む。
【0028】
別の実施形態では、多孔質複合材料は、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維を含む多孔質基材、並びに基材の少なくとも1つの表面上に配置され、第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維への少なくとも1つの付着点を有する第3のポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、多孔質基材は、第2のポリマー材料の複数の粒子又は繊維を含むことができる。
【0029】
I.結合粒子を含む多孔質複合材料
本明細書中に提供される場合、いくつかの実施形態では、多孔質複合材料は、第1の材料及び第2の材料の少なくとも1つの粒子を含む多孔質基材、並びに多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置され、第2の材料の少なくとも1つの粒子への少なくとも1つの付着点を有する第3の材料を含む。このような実施形態では、第2の材料の少なくとも1つの粒子は、多孔質基材に第3の材料を結合又は接着するように機能する。第3の材料は、本発明のいくつかの実施形態では、多孔質膜を含む。第2の材料の1つ又は複数の粒子との相互作用によって多孔質基材に結合又は接着する場合、多孔質膜を含む第3の材料は、二次的な細孔構造を有する多孔質基材が得られるように働く。第3の材料の膜によって得られる二次的な細孔構造は、多孔質基材の対応する孔構造よりも小さくても大きくてもよい。結果として、膜を含む第3の材料は、濾過能が向上した多孔質基材を提供することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、多孔質基材は、第2の材料の複数の粒子を含む。このような実施形態では、第2の材料の粒子を、多孔質基材の第1の材料全体に分散することができる。
【0031】
多孔質基材の第1の材料は、いくつかの実施形態によれば、ポリマー材料を含む。第1の材料としての使用に適切なポリマー材料は、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ塩化ビニル、又はこれらのコポリマー若しくは組み合わせを含み得る。ポリエチレンは、1つの実施形態では、HDPEを含む。本明細書中で使用する場合、HDPEは、約0.92g/cm3〜約0.97g/cm3の範囲の密度のポリエチレンをいう。いくつかの実施形態では、HDPEは、約50〜約90の範囲の結晶化度(密度に基づく%)を有する。別の実施形態では、ポリエチレンはUHMWPEを含む。本明細書中で使用する場合、UHMWPEは、1000000を超える分子量のポリエチレンをいう。
【0032】
いくつかの実施形態では、多孔質基材の第1の材料は、米国特許出願第10/978,449号に記載のメルトフローインデックスが高いポリマー及び熱伝導性材料を含み得る。
【0033】
多孔質基材の第2の材料の粒子は、いくつかの実施形態によれば、ポリマー材料を含む。第2の材料としての使用に適切なポリマーは、いくつかの実施形態では、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、並びにこれらのコポリマー及び組み合わせを含む。1つの実施形態では、例えば、第2の材料は、PVDFを含む。
【0034】
第2の材料の粒子がポリマー材料を含む実施形態では、粒子は、フレーク、粉砕粒子(ground particles)、マイクロペレット化粒子、粉末、又はこれらの組み合わせの形態であり得る。いくつかの実施形態では、マイクロペレット化粒子は、約0.060インチ以下の直径を有することができ、米国特許第6,030,558号に記載の方法に従って生成することができる。
【0035】
多孔質基材の第1の材料及び第2の材料を、本発明の実施形態では、互いに異なるように選択する。多孔質基材は、1つの実施形態では、例えば、第1の材料としてUHMWPE又はHDPE及び第2の材料としてPVDFの少なくとも1つの粒子を含む。別の実施形態では、多孔質基材は、第1の材料としてHDPE及び第2の材料としてポリアミドの少なくとも1つの粒子を含む。他の実施形態では、多孔質基材は、第1の材料としてHDPE及び第2の材料としてポリスルホンの少なくとも1つの粒子を含む。いくつかの実施形態では、多孔質基材は、第1の材料としてHDPE及び第2の材料としてポリエーテルスルホンの少なくとも1つの粒子を含む。別の実施形態では、多孔質基材は、第1の材料としてポリプロピレン及び第2の材料としてPVDFの少なくとも1つの粒子を含む。本発明の実施形態は、多孔質基材の生成における第1の材料及び第2の材料としての使用に適切なポリマーの任意の組み合わせを意図する。
【0036】
さらなる実施形態では、多孔質基材は、米国特許出願第10/978,449号に記載のメルトフローインデックスが高いポリマー及び熱伝導性材料を含む第1の材料、並びに第2の材料の少なくとも1つの粒子を含む。多孔質基材中の熱伝導性材料は、基材及び多孔質複合材料の静電気を消失させるか又は少なくとも消散させることができる。
【0037】
多孔質基材は、いくつかの実施形態によれば、約95重量%の第1の材料及び約5重量%の第2の材料の粒子を含む。他の実施形態では、多孔質基材は、約5〜約50重量%の第2の材料の粒子を含む。別の実施形態では、多孔質基材は、50重量%を超える第2の材料の粒子を含む。さらなる実施形態では、多孔質基材は、5重量%未満の第2の材料の粒子を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1の材料及び第2の材料の少なくとも1つの粒子を含む多孔質基材は、約1μm〜約200μm、約2μm〜約150μm、約5μm〜約100μm、又は約10μm〜約50μmの範囲の平均孔サイズを有する。多孔質基材は、別の実施形態では、約1μm未満の平均孔サイズを有する。1つの実施形態では、多孔質基材は、約0.1μm〜約1μmの範囲の平均孔サイズを有する。さらなる実施形態では、多孔質基材は、約200μmを超える平均孔サイズを有する。1つの実施形態では、多孔質基材は、約200μm〜約500μmの範囲の平均孔サイズを有する。基材の平均孔サイズを、水銀ポロシメトリー又は走査電子顕微鏡法(SEM)を使用して求めることができる。
【0039】
平均孔サイズに加えて、第1の材料及び第2の材料の少なくとも1つの粒子を含む多孔質基材は、いくつかの実施形態によれば、少なくとも20%の平均空隙率を有する。他の実施形態では、多孔質基材は、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は少なくとも75%の平均空隙率を有する。さらなる実施形態では、多孔質基材は、少なくとも85%の平均空隙率を有する。
【0040】
第1の材料及び第2の材料の少なくとも1つの粒子を含む多孔質基材は、本発明のいくつかの実施形態では、約100μm〜約10cmの範囲の厚さを有する。他の実施形態では、多孔質基材は、約250μm〜約5cm、約400μm〜約1cm、約600μm〜約1mm、又は約700μm〜約900μmの範囲の厚さを有する。別の実施形態では、第1の材料及び第2の材料の少なくとも1つの粒子を含む多孔質基材は、約100μm未満の厚さを有する。さらなる実施形態では、多孔質基材は、約10cmを超える厚さを有する。
【0041】
当業者に既知の種々の方法を使用して、本発明の多孔質基材を作製することができる。いくつかの例には、米国特許第6,030,558号に開示の焼結、発泡剤及び/又は浸出剤(leaching agent)の使用、米国特許第4,473,665号及び同第5,160,674号に開示のマイクロセル形成方法、穴あけ(レーザ穴あけが含まれる)、及び逆相沈殿が含まれる。その生成方法に応じて、多孔質基材は、無作為又は十分に規定された直径のチャネルの規則的な配置及び/又は種々の形状及びサイズの無作為に位置する孔を有することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、第1の材料及び第2の材料の少なくとも1つの粒子を含む多孔質基材を、第1の材料の粒子及び第2の材料の少なくとも1つの粒子の同時焼結によって生成する。1つの実施形態では、例えば、第1の材料の粒子を、第2の材料の粒子と所望の比率(重量%)で混合して、比較的均一な分散液を生成する。第1の材料の粒子と第2の材料の粒子との混合を、いくつかの実施形態では、回転技法、振動技法、又はこれらの組み合わせによって行う。次いで、分散液を焼結して、多孔質基材を生成する。第1の材料及び/又は第2の材料の粒子がポリマー材料を含む実施形態では、粒子は、フレーク、粉砕粒子、マイクロペレット化粒子、粉末、又はこれらの組み合わせの形態であり得る。
【0043】
第1の材料及び第2の材料がポリマー材料を含む実施形態では、焼結の温度及び時間は、選択されるポリマー材料の独自性に依存する。いくつかの実施形態では、第1のポリマー材料の粒子及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子を、約200°F〜約700°Fの範囲の温度で焼結する。さらに、第1のポリマー材料の粒子及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子を、いくつかの実施形態では、約30秒間〜約30分間の範囲で焼結する。他の実施形態では、第1のポリマー材料の粒子及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子を、約1分間〜約15分間又は約5分間〜約10分間の範囲で焼結する。いくつかの実施形態では、焼結プロセスは、加熱、浸漬、及び/又はクッキングのサイクルを含む。
【0044】
多孔質基材を第1の材料の粒子及び第2の材料の少なくとも1つの粒子の同時焼結によって生成するいくつかの実施形態では、第2の材料の少なくとも1つの粒子は、第1の材料の粒子の平均サイズ以上の平均サイズを有することができる。他の実施形態では、第2の材料の少なくとも1つの粒子は、第1の材料の粒子の平均サイズ未満の平均サイズを有することができる。
【0045】
最終生成物の所望のサイズ及び形状(例えば、ブロック、チューブ、コーン、シリンダ
ー、シート、又はフィルム)に応じて、鋳型成形又は当業者に既知の他の技法を使用して焼結することができる。本発明の多孔質基材及び複合材料を、任意の所望の形状(ブロック、チューブ、スター、コーン、シリンダー、シート、フィルム、及びカートリッジ(ラジアルフィルターカートリッジ(米国特許第7,125,490号に開示のもの等)が含まれる))で生成することができる。
【0046】
1つの実施形態では、第1の材料の高分子粒子及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子を含む混合物を、鋳型で焼結する。適切な鋳型は市販されており、当業者に既知である。鋳型の特定の例には、約0.01インチ(254μm)を超える厚さのフラットシート、約1インチ(2.54cm)までの厚さのフラットシート、約0.01インチ(254μm)〜約1インチ(2.54cm)の厚さのフラットシート、並びに種々の高さ及び直径の円柱が含まれるが、これらに限定されない。適切な鋳型材料には、金属及び合金(アルミニウム及びステンレススチール等)並びに高温熱可塑性物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
1つの実施形態では、圧縮成形を使用して、第1のポリマー材料の粒子及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子を含む焼結多孔質基材を得る。このような実施形態では、鋳型を、第1のポリマー材料の焼結温度に加熱し、加圧する。一般に、鋳型に加えた圧力が高いほど、最終生成物の平均孔サイズが小さくなり、機械的強度が高くなる。加圧の持続時間も、最終生成物の所望の空隙率に応じて変化する。
【0048】
一旦多孔質基材が形成されると、鋳型を冷却することができる。鋳型に加圧した場合、加圧したまま又は減圧後に冷却することができる。焼結した多孔質基材を、次いで、鋳型から取り出し、任意選択的に処理する。任意選択的な処理の例には、滅菌、切断、圧延(milling)、研磨、カプセル化(encapsulating)、及び/又はコーティングが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
いくつかの実施形態では、第2の材料の粒子を、焼結プロセス中に第1のポリマー材料によって形成されたマトリクス全体に分散させる。物理的相違及び/又は化学的相違により、第2の材料の粒子は、いくつかの実施形態では、第1の材料のマトリクスとの境界面を形成する。さらに、いくつかの実施形態では、第2の材料の粒子は、第1の材料のマトリクスとの物理的結合及び/又は化学的結合(イオン結合及び/又は共有結合が含まれる)を形成しない。
【0050】
図1は、第1の材料及び第2の材料の少なくとも1つの粒子を含む焼結多孔質基材を例示した本発明の実施形態による複合材料の走査電子顕微鏡(SEM)画像(1000倍)を示す。図1に例示した多孔質基材の第1の材料はHDPEを含み、これに包埋した第2の材料の粒子はPVDFを含む。図1に示すように、PVDF粒子(中央)は、HDPEマトリクス(右上及び右)といかなる付着点も形成しない。PVDF粒子とHDPEマトリクスとの間に連続する境界面が存在する。PVDF粒子がHDPEマトリクスといかなる付着点も形成しないにもかかわらず、PVDFは、HDPE粒子との焼結プロセスによってマトリクスに閉じ込められたままである。対照的に、PVDF粒子は、多孔質基材上に配置された第3の材料としての多孔質PVDF(中央)と複数の付着点を形成する。
【0051】
第1の材料及び第2の材料の少なくとも1つの粒子を含む多孔質基材に加えて、本発明の多孔質複合材料は多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置された第3の材料を含み、第3の材料は、多孔質基材中に第2の材料の少なくとも1つの粒子への少なくとも1つの付着点を有する。いくつかの実施形態では、第3の材料は、多孔質基材の少なくともいくつかの孔に存在し得る。他の実施形態では、第3の材料は、多孔質基材のいくつか又は全ての孔に存在し得る。さらに、いくつかの実施形態では、第3の材料は、多孔質基材の
平均孔サイズ以下の平均孔サイズを有する多孔質膜を含む。このような実施形態では、多孔質膜を含む第3の材料により、濾過特性が向上した二次的な細孔構造を有する多孔質基材を得ることができる。
【0052】
第3の材料は、いくつかの実施形態によれば、ポリマー材料を含む。第3の材料としての使用に適切なポリマー材料は、いくつかの実施形態では、フルオロポリマー(PVDFが含まれる)、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ塩化ビニル、又はこれらのコポリマー若しくは組み合わせを含む。第3の材料は、本発明の実施形態によれば、多孔質基材の第1の材料と異なるように選択する。
【0053】
いくつかの実施形態では、第3の材料は、約0.2nm〜約10μmの範囲の平均サイズを有する孔を含む。他の実施形態では、第3の材料は、約0.01μm〜約5μm、約0.1μm〜約2μm、又は約0.5μm〜約1μmの範囲の平均サイズを有する孔を含む。いくつかの実施形態では、第3の材料の平均孔サイズは、多孔質基材の平均孔サイズより少なくとも一桁小さい。
【0054】
いくつかの実施形態では、第3の材料は、約10μm〜約10mmの範囲の厚さを有する。他の実施形態では、第3の材料は、約25μm〜約1mm、約50〜500μm、約75〜400μm、又は約100μm〜約300μmの範囲の厚さを有する。さらなる実施形態では、第3の材料は、約10μm未満の厚さを有する。いくつかの実施形態では、第3の材料は、第3の材料が配置される多孔質基材の厚さより薄い厚さを有する。
【0055】
本明細書中に提供される場合、第3の材料は、いくつかの実施形態によれば、濾過用途(精密濾過、限外濾過、及びナノ濾過等であるが、これらに限定されない)のために操作可能な膜としての機能を果たすことができる。このような実施形態では、第3の材料は、精密濾過、限外濾過、又はナノ濾過プロセスの実施に十分な必須の孔サイズ及び/又は構造を多孔質基材に与えることができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、第3の材料は、第1の材料及び第2の材料の少なくとも1つの粒子を含む多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置され、少なくとも1つの粒子への少なくとも1つの付着点を有する。いくつかの実施形態では、第3の材料は、第2の材料の少なくとも1つの粒子への複数の付着点を含み得る。他の実施形態では、第3の材料を、第2の材料の少なくとも1つの粒子に連続的に付着することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、多孔質基材は、第2の材料の複数の粒子を含む。このような実施形態では、第3の材料は、複数の粒子の少なくとも1つとの少なくとも1つの付着点を有することができる。他の実施形態では、第3の材料は、複数の粒子の少なくとも1つとの複数の付着点を有することができる。別の実施形態では、第3の材料は、複数の粒子の2つ以上の粒子との少なくとも1つの付着点を有することができる。さらなる実施形態では、第3の材料は、複数の粒子の2つ以上の粒子との複数の付着点を有することができる。第3の材料は、例えば、2つ以上の粒子の各粒子との複数の付着点を有することができる。
【0058】
少なくとも1つの付着点の形成を容易にするために、いくつかの実施形態では、第3の材料及び第2の材料の粒子は、同一の材料を含むことができる。1つの実施形態では、例えば、第3の材料及び第2の材料は、同一のポリマー又はコポリマーを含む。
【0059】
別の実施形態では、少なくとも1つの付着点の形成を容易にするために、第3の材料及
び第2の材料の粒子は、同一ファミリー由来の材料を含む。第3の材料及び第2の材料は、いくつかの実施形態では、同一ファミリー由来のポリマーを含む。同一ファミリー由来のポリマーは、本発明の実施形態では、関連する単量体(例えば、A及びA’)を含むか、又はこれらから形成される。この適用のために、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)及びポリ(エチルメタクリレート)は、その構成単量体が関連し、そのエステル基の炭素原子数のみが異なり、同様に、ポリ(メチルメタクリレート)及びポリメタクリレートは、メチル置換基の有無のみが異なるのでこのように記載される。同一ポリマーファミリー由来のコポリマーに関連して、各コポリマーは、関連単量体から形成される。例えば、単量体A及び単量体A’が構造的に関連するので、単量体A及び単量体Bを含むコポリマーは、単量体A’及び単量体Cを含むコポリマーと同一のポリマーファミリーである。
【0060】
ポリマーファミリーは、当該技術分野で既知である。ポリマーのテキストブックは、しばしば、類似の単量体から形成されたこのような「ポリマーファミリー」を識別している。例えば、F. W. Billmeyer, Jr.,「高分子科学のテキストブック(Textbook of Polymer
Science)」(Wiley-Interscience, New York, 2nd ed. 1971)では、ポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル、ポリ(ビニルエステル)、コリン含有ポリマー(例えば、PVC)、フルオロポリマー、ポリアミド、エーテルポリマー及びアセタールポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、並びにセルロース誘導体を、それぞれ、個別のポリマーファミリーとして開示している。化学百科事典は、しばしば、このような「ポリマーファミリー」を同様に識別している。例えば、Kirk-Othmer Encyc. of Chem. Technol. (4th ed. 1991-1998)は、多くのポリマーファミリー型(フルオロポリマー、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、及びビニルポリマーが含まれるが、これらに限定されない)を個別に列挙している。
【0061】
さらなる実施形態では、第3の材料と第2の材料の少なくとも1つの粒子との間の少なくとも1つの付着点の形成を容易にするために、第3の材料及び第2の材料は、共通の溶媒に溶解性であり得る。1つの実施形態では、第3の材料及び第2の材料は、共通の溶媒に溶解性のポリマーを含むことができる。例えば、ポリマーPが溶媒Xに溶解性であり、且つポリマーQが溶媒Xに溶解性である場合、溶媒XはポリマーP及びポリマーQの共通の溶媒である。共通の溶媒には、いくつかの実施形態では、複数の溶媒を含む混合物が含まれる。1つの実施形態では、例えば、共通の溶媒は、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドを任意の適切な比率で含む混合物である。
【0062】
第3の材料は、1つの実施形態では、多孔質基材の第1の材料とのいかなる付着点も形成しない。第1の材料及び第3の材料の化学的性質及び物理的性質の相違により、第1の材料と第3の材料との間のいかなる付着点の形成も防止することができる。本明細書中に提供した図に示すように、本発明の複合材料中の第1の材料と第3の材料との間に、明確な空間的境界が存在し得る。
【0063】
第3の材料と第1の材料との間の相互作用の欠如を考慮して、第3の材料と多孔質基材中の第2の材料の少なくとも1つの粒子との間の付着点は、多孔質基材への第3の材料の接着に非常に役立ち得る。本明細書中に記載されるように、いくつかの実施形態では、第3の材料は、多孔質基材全体に分散した第2の材料の複数の粒子への付着点を有することができる。第3の材料が濾過用途のために操作可能な多孔質膜を含む実施形態では、第2の材料の粒子は、膜結合粒子として作用し、それにより、多孔質基材に膜を繋留(anchor)することができる。第2の材料の粒子と第3の材料との間の付着点の形成による多孔質基材への第3の材料の繋留により、多孔質基材からの第3の材料の剥離耐性が増加した複合材料(複合フィルター材料が含まれる)を得ることができる。
【0064】
さらに、多孔質基材の表面上に配置した第3の材料と基材中の第2の材料の粒子との間の付着点の形成により、複合材料の生成において異なる材料を組み合わせることが可能である。1つの実施形態では、例えば、PVDF膜を、UHMWPE及び複数のPVDF粒子を含む多孔質基材に付着させる。本明細書中に提供した顕微鏡写真に例示するように、PVDFは、UHMWPEと引力相互作用を形成しない。しかし、PVDF膜は、多孔質基材全体に分散したPVDF粒子との付着点の形成によって、UHMWPEを含む多孔質基材に付着する。本明細書中に記載のように、異なる材料を組み合わせて分解耐性を示す安定な複合材料を生成することができることにより、安価なポリマー(HDPE等)から構築された多孔質基材及びより高価なポリマー(PVDF等)から構築された膜を種々の濾過用途のためのフィルターの設計で使用することが可能である。
【0065】
1つの実施形態では、例えば、本発明の多孔質複合材料は、第1の材料としてUHMWPE及び第2の材料としてPVDFの少なくとも1つの粒子を含む多孔質基材並びに多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置され、少なくとも1つのPVDF粒子への少なくとも1つの付着点を有するポリビニリデンフルオリド膜を含む。
【0066】
図2〜図7は、第1の材料としてUHMWPE又はHDPE、第2の材料としてPVDFの少なくとも1つの粒子、及び第3の材料として多孔質基材の表面上に配置され、少なくとも1つのPVDF粒子への少なくとも1つの付着点を有するPVDF膜を含む、本発明に従って生成した多孔質複合材料の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0067】
図2は、本発明の実施形態による複合材料の断面のSEM画像(5500倍)を示す。図2に示すように、多孔質PVDF膜は、PVDF粒子及びUHMWPEを含む多孔質基材中にPVDF粒子(中央)との複数の付着点を形成する。
【0068】
同様に、図3は、本発明の実施形態による複合材料の断面のSEM画像(8500倍)を示す。図3では、多孔質PVDF膜(右)は、PVDF粒子及びUHMWPEを含む多孔質基材中にPVDF粒子(左)との複数の付着点を形成する。
【0069】
図4は、本発明の実施形態による複合材料の断面のSEM画像(1200倍)を示す。図4に示すように、多孔質PVDF膜は、多孔質基材のUHMWPE成分と付着点を形成しない。PVDF膜とUHMWPEとの間に明確な境界面が存在する。同様に、図5は、多孔質基材のUHMWPEと基材上に配置されたPVDF膜との間の境界形成を示す。
【0070】
図6は、本発明の実施形態による複合材料の断面のSEM画像(3000倍)を示す。図6は、さらに、PVDF膜と多孔質基材のHDPEとの間の相互作用を欠くことを例示する。PVDF膜(中央)と多孔質基材のHDPE(右上)との間に滑らかな境界面が存在する。対照的に、PVDF膜は、多孔質基材中のPVDF粒子と複数の付着点を形成する(左及び左下)。
【0071】
図7は、本発明の実施形態による複合材料の断面のSEM画像(400倍)を示し、この図は、PVDF膜と多孔質基材のHDPEとの間の相互作用を欠くことを例示している。PVDF膜(中央)と多孔質基材のHDPEとの間にいくつかの明確な境界が認められる。さらに、PVDF膜はPVDF粒子(中央)への複数の付着点を形成し、それにより、多孔質基材上に安定性が向上した膜が得られる。
【0072】
II.結合繊維を含む多孔質複合材料
本明細書中に提供されるように、別の実施形態では、多孔質複合材料は、第1の材料及び第2の材料の少なくとも1つの繊維を含む多孔質基材、並びに多孔質基材の少なくとも
1つの表面上に配置され、第2の材料の繊維への少なくとも1つの付着点を有する第3の材料を含む多孔質複合材料を含む。このような実施形態では、第2の材料の少なくとも1つの繊維は、多孔質基材に第3の材料を結合又は接着する働きがある。第3の材料は、本発明のいくつかの実施形態では、多孔質膜を含む。第2の材料の1つ又は複数の繊維との相互作用によって多孔質基材に結合又は接着する場合、多孔質膜を含む第3の材料は、二次的な細孔構造を有する多孔質基材が得られる働きがある。
【0073】
いくつかの実施形態では、第1の材料は、上記のポリマー材料を含む。さらに、いくつかの実施形態では、第2のポリマー材料の繊維はポリマー材料を含む。第2のポリマー材料の繊維は、いくつかの実施形態では、結合繊維を含む。いくつかの実施形態では、結合繊維は、一成分繊維、二成分繊維、又はこれらの組み合わせを含む。本発明の実施形態での使用に適切な一成分繊維は、いくつかの実施形態では、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン12、コポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(TBP)、co−PET、又はこれらの組み合わせを含む。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態での使用に適切な二成分繊維は、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン/PET、ポリプロピレン/ナイロン−6、ナイロン−6/PET、コポリエステル/PET、コポリエステル/ナイロン−6、コポリエステル/ナイロン−6,6、ポリ−4−メチル−1−ペンテン/PET、ポリ−4−メチル−1−ペンテン/ナイロン−6、ポリ−4−メチル−1−ペンテン/ナイロン−6,6、PET/ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン−6,6/ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチル(PCT)、ポリプロピレン/ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン−6/コポリアミド、ポリ乳酸/ポリスチレン、ポリウレタン/アセタール、及び可溶性コポリエステル/ポリエチレンを含む。二成分繊維は、いくつかの実施形態では、米国特許第4,795,668号、同第4,830,094号、同第5,284,704号、同第5,509,430号、同第5,607,766号、同第5,620,641号、同第5,633,032号、及び同第5,948,529号に開示のものを含む。
【0075】
二成分繊維は、本発明のいくつかの実施形態によれば、コア/シース断面構造又は並列(side by side)断面構造を有する。他の実施形態では、二成分繊維は、アイランド・イン・ザ・シー(islands-in-the-sea)構造、マトリクスフィブリル(matrix fibril)構造、シトラスフィブリル(citrus fibril)構造、又はセグメント化パイ断面構造(segmented pie cross-sectional structure)を有する。コア/シース断面構造を含み、本発明の実施形態での使用に適切な二成分繊維を、表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
いくつかの実施形態では、第2のポリマー材料の繊維は、連続繊維を含む。他の実施形態では、第2のポリマー材料の繊維は、短繊維を含む。1つの実施形態では、例えば、第2のポリマー材料の繊維は、短繊維である二成分繊維(staple bicomponent fiber)を含む。短繊維は、いくつかの実施形態によれば、約0.5インチ〜約20インチ、約1インチ〜約19インチ、約3インチ〜約15インチ、又は約5インチ〜約12インチの範囲の長さを有する。いくつかの実施形態では、短繊維は、約7インチ〜約10インチ又は約15インチ〜約20インチの範囲の長さを有する。別の実施形態では、短繊維は、約0.5インチ未満又は約20インチを超える長さを有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、第2のポリマー材料の繊維(連続繊維及び短繊維が含まれる)は、約1μm〜約1mmの範囲の直径を有する。他の実施形態では、第2のポリマー材料の繊維は、約10μm〜約800μm、約50μm〜約500μm、約100μm〜約400μm、又は約150μm〜約300μmの範囲の直径を有する。別の実施形態では、第2のポリマー材料の繊維は、約1μm未満又は約1mmを超える直径を有する。
【0079】
いくつかの実施形態では、多孔質基材の第1のポリマー材料は、第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維と焼結して多孔質基材を生成する働きがある複数の高分子粒子を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリマー材料の粒子は、フレーク、粉砕粒子、マイクロペレット化粒子、粉末、又はこれらの組み合わせの形態である。第1のポリマー材料の高分子粒子は、いくつかの実施形態では、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、又はこれらのコポリマー及び組み合わせを含む。1つの実施形態では、第1のポリマー材料の高分子粒子はHDPEを含む。別
の実施形態では、第1のポリマー材料の粒子はUHMWPEを含む。
【0080】
第1のポリマー材料は、他の実施形態では、複数の高分子繊維を含む。第1のポリマー材料としての使用に適切な高分子繊維は、いくつかの実施形態では、第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維について上で与えられるものと一致する一成分繊維及び/又は二成分繊維を含む。
【0081】
第1のポリマー材料及び少なくとも1つの繊維の第2のポリマー材料を、本発明の実施形態では、互いに異なるように選択する。1つの実施形態では、例えば、第1のポリマー材料は、複数の粒子又は複数の繊維であることにかかわらず、ポリエチレンを含む一方で、少なくとも1つの繊維の第2のポリマー材料はポリアミドを含む。別の実施形態では、例えば、第1のポリマー材料は、複数の粒子又は複数の繊維であることにかかわらず、ポリプロピレンを含む一方で、少なくとも1つの繊維の第2のポリマー材料は、繊維が二成分繊維である場合、PET及びPCTを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料を含む少なくとも1つの繊維を含む多孔質基材を、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料を含む少なくとも1つの繊維の同時焼結によって生成する。1つの実施形態では、第1のポリマー材料の複数の粒子を、第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維と同時焼結する。別の実施形態では、第1のポリマー材料の複数の繊維を、第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維と同時焼結する。
【0083】
焼結の温度及び時間は、本発明の実施形態では、選択されるポリマー材料の独自性に依存する。いくつかの実施形態では、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維を、約200°F〜約700°Fの範囲の温度で焼結する。さらに、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維を、いくつかの実施形態では、約30秒間〜約30分間の範囲で焼結する。他の実施形態では、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維を、約1分間〜約15分間又は約5分間〜約10分間の範囲で焼結する。いくつかの実施形態では、焼結プロセスは、加熱、浸漬、及び/又はクッキングのサイクルを含む。
【0084】
最終生成物の所望のサイズ及び形状(例えば、ブロック、チューブ、コーン、シリンダー、シート、又はフィルム)に応じて、鋳型成形又は当業者に既知の他の技法を使用して焼結することができる。本発明の多孔質基材及び複合材料を、任意の所望の形状(ブロック、チューブ、スター、コーン、シリンダー、シート、フィルム、及びカートリッジ(ラジアルフィルターカートリッジ(米国特許第7,125,490号に開示のもの等)が含まれる))で生成することができる。第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維の焼結に適切な鋳型は、上記の鋳型と一致する。
【0085】
一旦多孔質基材が形成されると、鋳型を冷却することができる。鋳型に加圧した場合、加圧したまま又は減圧後に冷却することができる。焼結した多孔質基材を、次いで、鋳型から取り出し、任意選択的に処理する。任意選択的な処理の例には、滅菌、切断、圧延、研磨、カプセル化、及び/又はコーティングが含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
いくつかの実施形態では、第2のポリマー材料の繊維を、焼結プロセス中の第1のポリマー材料によって形成されたマトリクス全体に分散させる。第1のポリマー材料によって形成されたマトリクスは、本発明の実施形態によれば、複数の焼結粒子又は複数の焼結繊維を含むことができる。物理的及び/又は化学的な相違により、第2のポリマー材料の繊維は、いくつかの実施形態では、第1のポリマー材料によって形成されたマトリクスへのいかなる付着点も形成しない。第2のポリマー材料の繊維が第1のポリマー材料のマトリ
クスへのいかなる付着点も形成しないにもかかわらず、第2のポリマー材料の繊維は、焼結プロセスによってマトリクスに閉じ込められたままである。
【0087】
いくつかの実施形態では、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維を含む多孔質基材は、約1μm〜約200μm、約2μm〜約150μm、約5μm〜約100μm、又は約10μm〜約50μmの範囲の平均孔サイズを有する。第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維を含む多孔質基材は、別の実施形態では、約1μm未満の平均孔サイズを有する。1つの実施形態では、多孔質基材は、約0.1μm〜約1μmの範囲の平均孔サイズを有する。さらなる実施形態では、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維を含む多孔質基材は、約200μmを超える平均孔サイズを有する。1つの実施形態では、多孔質基材は、約200μm〜約500μmの範囲の平均孔サイズを有することができる。基材の平均孔サイズを、水銀ポロシメトリー又は走査電子顕微鏡法(SEM)を使用して求めることができる。
【0088】
平均孔サイズに加えて、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維を含む多孔質基材は、いくつかの実施形態によれば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%の平均空隙率を有する。別の実施形態では、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維を含む多孔質基材は、少なくとも60%又は少なくとも75%の平均空隙率を有する。さらなる実施形態では、多孔質基材は、少なくとも85%の平均空隙率を有する。
【0089】
第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維を含む多孔質基材は、本発明のいくつかの実施形態では、約100μm〜約10cmの範囲の厚さを有する。他の実施形態では、多孔質基材は、約250μm〜約5cm、約400μm〜約1cm、約600μm〜約1mm、又は約700μm〜約900μmの範囲の厚さを有する。別の実施形態では、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維を含む多孔質基材は、約100μm未満の厚さを有する。さらなる実施形態では、多孔質基材は、約10cmを超える厚さを有することができる。
【0090】
第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維を含む多孔質基材に加えて、本発明の複合材料は、多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置された第3のポリマー材料を含み、第3のポリマー材料は、多孔質基材中に第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子への少なくとも1つの付着点を有する。いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料は、多孔質基材の少なくともいくつかの孔に存在する。他の実施形態では、第3のポリマー材料は、多孔質基材のいくつか又は全ての孔に存在する。さらに、いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料は、多孔質基材の平均孔サイズ以下の平均孔サイズを有する多孔質膜を含む。このような実施形態では、多孔質膜を含む第3のポリマー材料により、濾過特性が向上した二次的な細孔構造を有する多孔質基材を得ることができる。
【0091】
第3の材料としての使用に適切なポリマー材料は、フルオロポリマー(PVDFが含まれる)、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ塩化ビニル、並びにこれらのコポリマー及び組み合わせを含むことができる。第3のポリマー材料を、本発明の実施形態によれば、第1の材料と異なるように選択する。
【0092】
いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料は、約0.2nm〜約10μmの範囲の平均サイズを有する孔を含む。他の実施形態では、第3のポリマー材料は、約0.01μ
m〜約5μm又は約0.1μm〜約2μmの範囲の平均サイズを有する孔を含む。さらなる実施形態では、第3のポリマー材料は、約0.5μm〜約1μmの範囲の平均サイズを有する孔を含む。いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料の平均孔サイズは、多孔質基材の平均孔サイズより少なくとも一桁小さい。
【0093】
いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料は、約10μm〜約10mmの範囲の厚さを有する。他の実施形態では、第3のポリマー材料は、約25μm〜約1mm、約50〜500μm、約75〜400μm、又は約100μm〜約300μmの範囲の厚さを有する。さらなる実施形態では、第3のポリマー材料は、約10μm未満の厚さを有する。いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料は、第3のポリマー材料が配置される多孔質基材の厚さより薄い厚さを有する。
【0094】
本明細書中に提供される場合、第3のポリマー材料は、いくつかの実施形態によれば、濾過用途(精密濾過、限外濾過、及びナノ濾過等であるが、これらに限定されない)のために操作可能な膜としての機能を果たすことができる。このような実施形態では、第3のポリマー材料により、精密濾過、限外濾過、又はナノ濾過プロセスの実施に十分な必須の孔サイズ及び/又は構造を多孔質基材に与えることができる。
【0095】
本発明の実施形態では、第3のポリマー材料は、第1のポリマー材料及び第2の材料の少なくとも1つの粒子を含む多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置し、少なくとも1つの繊維への少なくとも1つの付着点を有する。いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料は、第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維への複数の付着点を有する。他の実施形態では、第3のポリマー材料を、第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維に連続的に付着する。
【0096】
いくつかの実施形態では、多孔質基材は、第2のポリマー材料の複数の繊維を含む。このような実施形態では、第3のポリマー材料は、第2のポリマー材料の複数の繊維の少なくとも1つとの少なくとも1つの付着点を有する。他の実施形態では、第3のポリマー材料は、第2のポリマー材料の複数の繊維の少なくとも1つとの複数の付着点を有する。別の実施形態では、第3のポリマー材料は、第2のポリマー材料の複数の繊維の2つ以上の繊維との少なくとも1つの付着点を有する。さらなる実施形態では、第3のポリマー材料は、第2のポリマー材料の複数の繊維の2つ以上の繊維との複数の付着点を有する。第3のポリマー材料は、例えば、第2のポリマー材料の2つ以上の繊維の各繊維との複数の付着点を有する。
【0097】
少なくとも1つの付着点の形成を容易にするために、いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料及び第2のポリマー材料の繊維は、同一の材料を含む。1つの実施形態では、例えば、第3のポリマー材料及び第2のポリマー材料は、同一のポリマー又はコポリマーを含む。
【0098】
別の実施形態では、少なくとも1つの付着点の形成を容易にするために、第3のポリマー材料及び第2のポリマー材料の繊維は、同一ファミリー由来のポリマー材料を含む。第3のポリマー材料及び第2のポリマー材料は、いくつかの実施形態では、上記の同一ファミリー由来のポリマーを含む。
【0099】
さらなる実施形態では、第3のポリマー材料と第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維との間の少なくとも1つの付着点の形成を容易にするために、上記で定義したように、第3のポリマー材料及び第2のポリマー材料は、共通の溶媒に溶解性であり得る。1つの実施形態では、第3のポリマー材料及び第2のポリマー材料は、同一又は共通の溶媒に溶解性であるポリマーを含む。
【0100】
第3のポリマー材料は、1つの実施形態では、多孔質基材の第1のポリマー材料とのいかなる付着点も形成しない。第1のポリマー材料と第3のポリマー材料の化学的性質及び物理的性質の相違により、第1のポリマー材料と第3のポリマー材料との間のいかなる付着点の形成も防止することができる。本発明の複合材料中の第1のポリマー材料と第3のポリマー材料との間に、明確な空間的境界が存在し得る。
【0101】
第3のポリマー材料と第1のポリマー材料との間の相互作用の欠如を考慮して、第3のポリマー材料と多孔質基材中の第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維との間の付着点は、多孔質基材への第3のポリマー材料の接着に非常に役立ち得る。本明細書中に記載されるように、いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料は、多孔質基材全体に分散した第2のポリマー材料の複数の繊維への付着点を有することができる。第3のポリマー材料が濾過用途のために操作可能な多孔質膜を含む実施形態では、第2のポリマー材料の繊維は、膜結合繊維として作用し、それにより、多孔質基材に膜を繋留することができる。第2のポリマー材料の繊維と第3のポリマー材料との間の付着点の形成による多孔質基材への第3のポリマー材料の繋留により、多孔質基材からの第3のポリマー材料の剥離耐性が増加した複合材料(複合フィルター材料が含まれる)を得ることができる。
【0102】
さらに、多孔質基材の表面上に配置した第3の材料と基材中の第2のポリマー材料の繊維との間の付着点の形成により、複合材料の生成において異なる材料を組み合わせることが可能である。
【0103】
III.二成分繊維を含む多孔質基材
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの二成分繊維を含む多孔質基材を含む多孔質複合材料であって、二成分繊維が第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料を含む、多孔質複合材料を提供する。第3のポリマー材料は、多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置され、二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料への少なくとも1つの付着点を有する。いくつかの実施形態では、多孔質基材は、複数の二成分繊維を含む。本発明のいくつかの実施形態での使用に適切な二成分繊維を、上記の表1に示す。他の実施形態では、適切な二成分繊維は、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン/PET、ポリプロピレン/ナイロン−6、ナイロン−6/PET、コポリエステル/PET、コポリエステル/ナイロン−6、コポリエステル/ナイロン−6,6、ポリ−4−メチル−1−ペンテン/PET、ポリ−4−メチル−1−ペンテン/ナイロン−6、ポリ−4−メチル−1−ペンテン/ナイロン−6,6、PET/ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン−6,6/ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチル(PCT)、ポリプロピレン/ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン−6/コポリアミド、ポリ乳酸/ポリスチレン、ポリウレタン/アセタール、及び可溶性コポリエステル/ポリエチレンを含む。
【0104】
本明細書中に提供されるように、二成分繊維は、本発明のいくつかの実施形態によれば、コア/シース断面構造又は並列断面構造を有する。他の実施形態では、二成分繊維は、マトリクスフィブリル構造、アイランド・イン・ザ・シー構造、シトラスフィブリル構造、又はセグメント化パイ断面構造を有する。いくつかの実施形態では、二成分繊維は、連続繊維又は短繊維である。
【0105】
短繊維である二成分繊維は、いくつかの実施形態によれば、約0.5インチ〜約20インチ、約1インチ〜約19インチ、約3インチ〜約15インチ、又は約5インチ〜約12インチの範囲の長さを有する。いくつかの実施形態では、短繊維である二成分繊維は、約7インチ〜約10インチ又は約15インチ〜約20インチの範囲の長さを有する。別の実施形態では、短繊維である二成分繊維は、約0.5インチ未満又は約20インチを超える
長さを有する。
【0106】
いくつかの実施形態では、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料を含む二成分繊維(連続繊維及び短繊維が含まれる)は、約1μm〜約1mmの範囲の直径を有する。他の実施形態では、二成分繊維は、約10μm〜約800μm、約50μm〜約500μm、約100μm〜約400μm、又は約150μm〜約300μmの範囲の直径を有する。さらなる実施形態では、第2の材料の繊維は、約1μm未満又は約1mmを超える直径を有する。
【0107】
いくつかの実施形態では、多孔質基材を、複数の二成分繊維の焼結によって生成する。当業者に理解されるように、焼結の温度及び時間は、二成分繊維を構成する第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の特定の独自性に依存する。さらに、最終生成物の所望のサイズ及び形状(例えば、ブロック、チューブ、コーン、シリンダー、シート、又はフィルム)に応じて、引き抜き成形プロセス又は当業者に既知の他の技法を使用して焼結することができる。本発明の多孔質基材及び複合材料を、任意の所望の形状(ブロック、チューブ、スター、コーン、シリンダー、シート、フィルム、及びカートリッジ(ラジアルフィルターカートリッジ(米国特許出願第7,125,490号に開示のもの等)が含まれる))で生成することができる。引き抜き成形プロセスの金型を、例えば、複数の焼結二成分繊維を含む多孔質基材の生成のための任意の所望の断面形状を有するように選択することができる。
【0108】
一旦多孔質基材が形成されると、基材を冷却することができる。焼結した多孔質基材を、次いで、任意選択的に処理することができる。任意選択的な処理の例には、滅菌、切断、圧延、研磨、カプセル化、及び/又はコーティングが含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
いくつかの実施形態では、複数の二成分繊維を含む多孔質基材は、約1μm〜約200μm、約2μm〜約150μm、約5μm〜約100μm、又は約10μm〜約50μmの範囲の平均孔サイズを有する。複数の二成分繊維を含む多孔質基材は、別の実施形態では、約1μm未満の平均孔サイズを有する。1つの実施形態では、多孔質基材は、約0.1μm〜約1μmの範囲の平均孔サイズを有する。さらなる実施形態では、複数の二成分繊維を含む多孔質基材は、約200μmを超える平均孔サイズを有する。1つの実施形態では、多孔質基材は、約200μm〜約500μmの範囲の平均孔サイズを有することができる。基材の平均孔サイズを、水銀ポロシメトリー又は走査電子顕微鏡法(SEM)を使用して求めることができる。
【0110】
平均孔サイズに加えて、複数の二成分繊維を含む多孔質基材は、いくつかの実施形態によれば、少なくとも20%の平均空隙率を有する。他の実施形態では、多孔質基材は、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は少なくとも75%の平均空隙率を有する。さらなる実施形態では、多孔質基材は、少なくとも85%の平均空隙率を有する。
【0111】
複数の二成分繊維を含む多孔質基材は、本発明のいくつかの実施形態では、約100μm〜約10cmの範囲の厚さを有する。他の実施形態では、多孔質基材は、約250μm〜約5cm、約400μm〜約1cm、約600μm〜約1mm、又は約700μm〜約900μmの範囲の厚さを有する。別の実施形態では、複数の二成分繊維を含む多孔質基材は、約100μm未満の厚さを有する。さらなる実施形態では、多孔質基材は、約10cmを超える厚さを有する。
【0112】
少なくとも1つの二成分繊維(第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料を含む二成
分繊維)を含む多孔質基材に加えて、本発明の多孔質複合材料は、多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置された第3のポリマー材料を含み、第3のポリマー材料は、二成分繊維の第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料への少なくとも1つの付着点を有する。いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料は、多孔質基材の少なくともいくつかの孔に存在する。他の実施形態では、第3のポリマー材料は、多孔質基材のいくつか又は全ての孔に存在する。さらに、いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料は、多孔質基材の平均孔サイズ以下の平均孔サイズを有する多孔質膜を含む。このような実施形態では、多孔質膜を含む第3のポリマー材料により、濾過特性が向上した二次的な細孔構造を多孔質基材に与えることができる。
【0113】
第3の材料としての使用に適切なポリマー材料は、フルオロポリマー(PVDFが含まれる)、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ塩化ビニル、並びにこれらのコポリマー及び組み合わせを含むことができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料は、約0.2nm〜約10μmの範囲の平均サイズを有する孔を含む。他の実施形態では、第3のポリマー材料は、約0.01μm〜約5μm又は約0.1μm〜約2μmの範囲の平均サイズを有する孔を含む。さらなる実施形態では、第3のポリマー材料は、約0.5μm〜約1μmの範囲の平均サイズを有する孔を含み得る。いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料の平均孔サイズは、多孔質基材の平均孔サイズより少なくとも一桁小さい。
【0115】
いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料は、約10μm〜約10mmの範囲の厚さを有する。他の実施形態では、第3のポリマー材料は、約25μm〜約1mm、約50〜500μm、約75〜400μm、又は約100μm〜約300μmの範囲の厚さを有する。さらなる実施形態では、第3のポリマー材料は、約10μm未満の厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料は、第3のポリマー材料が配置される多孔質基材の厚さ未満の厚さを含むことができる。
【0116】
本明細書中に提供される場合、第3のポリマー材料は、いくつかの実施形態によれば、濾過用途(精密濾過、限外濾過、及びナノ濾過等であるが、これらに限定されない)のために操作可能な膜としての機能を果たすことができる。このような実施形態では、第3のポリマー材料により、精密濾過、限外濾過、又はナノ濾過プロセスの実施に十分な必須の孔サイズ及び/又は構造を、二成分繊維を含む多孔質基材に与えることができる。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態では、第3のポリマー材料を、少なくとも1つの二成分繊維(第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料を含む二成分繊維)を含む多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置する。第3のポリマー材料は、二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料への少なくとも1つの付着点を有する。いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料は、二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料への複数の付着点を有する。他の実施形態では、第3の材料を、二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料に連続的に付着することができる。
【0118】
本明細書中に提供されるように、いくつかの実施形態では、多孔質基材は、複数の二成分繊維を含む。このような実施形態では、第3のポリマー材料は、複数の二成分繊維の少なくとも1つの第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料との少なくとも1つの付着点を有することができる。他の実施形態では、第3のポリマー材料は、複数の二成分繊維の少なくとも1つの第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料との複数の付着点を有することができる。別の実施形態では、第3のポリマー材料は、複数の二成分繊維の1つを超
える第1又は第2のポリマー材料との少なくとも1つの付着点を有することができる。さらなる実施形態では、第3のポリマー材料は、複数の二成分繊維の1つを超える第1又は第2のポリマー材料との複数の付着点を有する。第3のポリマー材料は、例えば、2つ以上の二成分繊維の第1又は第2のポリマー材料との複数の付着点を有することができる。
【0119】
少なくとも1つの付着点の形成を容易にするために、いくつかの実施形態では、第3のポリマー材料及び二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料は、同一の材料を含む。1つの実施形態では、例えば、第3のポリマー材料及び二成分繊維の第1のポリマー材料は、同一のポリマー又はコポリマーを含む。別の実施形態では、第3のポリマー材料及び二成分繊維の第2のポリマー材料は、同一のポリマー又はコポリマーを含む。
【0120】
別の実施形態では、少なくとも1つの付着点の形成を容易にするために、第3のポリマー材料及び二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料は、同一ファミリー由来のポリマー材料を含む。第3のポリマー材料及び二成分繊維の第1又は第2のポリマー材料は、いくつかの実施形態では、上記の同一ファミリー由来のポリマーを含む。
【0121】
さらなる実施形態では、第3のポリマー材料と二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料との間の少なくとも1つの付着点の形成を容易にするために、上記定義のように、第3のポリマー材料及び第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料は、共通の溶媒に溶解することができる。
【0122】
第3のポリマー材料が二成分繊維の第1のポリマー材料と少なくとも1つの付着点を形成するいくつかの実施形態では、第3のポリマー材料は、二成分繊維の第2のポリマー材料とのいかなる付着点も形成しない。二成分繊維の第2のポリマー材料及び第3のポリマー材料の化学的性質及び物理的性質の相違により、第2のポリマー材料と第3のポリマー材料との間のいかなる付着点の形成も防止することができる。結果として、いくつかの実施形態では、二成分繊維の第2のポリマー材料と第3のポリマー材料との間に、空間的境界が存在する。
【0123】
第3のポリマー材料が二成分繊維の第2のポリマー材料と少なくとも1つの付着点を形成する他の実施形態では、第3の材料は、二成分繊維の第1のポリマー材料とのいかなる付着点も形成しない。二成分繊維の第1のポリマー材料及び第3のポリマー材料の化学的性質及び物理的性質の相違により、第1のポリマー材料と第3のポリマー材料との間のいかなる付着点の形成も防止することができる。結果として、いくつかの実施形態では、二成分繊維の第1のポリマー材料と第3のポリマー材料との間に、空間的境界が存在する。
【0124】
III.多孔質複合材料の生成方法
多孔質複合材料に加えて、本発明は、多孔質複合材料の生成方法を提供する。1つの実施形態では、多孔質複合材料の生成方法は、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子を含む多孔質基材を準備すること、溶媒に溶解した第3のポリマー材料を含む溶液を準備すること、多孔質基材に溶液を塗付すること、及び第3のポリマー材料と少なくとも1つの粒子との間に少なくとも1つの付着点を形成することを含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、第2のポリマー材料の粒子は、第3のポリマー材料を溶解するのに使用した溶媒に溶解することができる。このような実施形態では、溶媒を溶液の一部として多孔質基材に塗付する場合、溶媒は、第2のポリマー材料の粒子を少なくとも部分的に溶解することができる。第2のポリマー材料の粒子の溶解又は少なくとも部分的な溶解により、第3のポリマー材料との付着点の形成を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、第2のポリマー材料及び第3のポリマー材料は、同一のポリマー又はコポリマーを含む。他の実施形態では、第2のポリマー材料及び第3のポリマー材料は、同
一ファミリー由来のポリマーを含む。
【0126】
別の実施形態では、多孔質複合材料の作製方法は、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維を含む多孔質基材を準備すること、溶媒中に溶解した第3のポリマー材料を含む溶液を準備すること、多孔質基材に溶液を塗付すること、第3のポリマー材料と第2のポリマー材料の少なくとも1つの繊維との間に少なくとも1つの付着点を形成することを含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの繊維の第2のポリマー材料は、第3のポリマー材料を溶解するのに使用した溶媒に溶解することができる。このような実施形態では、溶媒を溶液の一部として多孔質基材に塗付する場合、溶媒は、少なくとも1つの繊維の第2のポリマー材料を少なくとも部分的に溶解することができる。第2のポリマー材料の溶解又は少なくとも部分的な溶解により、少なくとも1つの繊維の第2のポリマー材料と第3のポリマー材料との間の付着点の形成を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、第2のポリマー材料及び第3のポリマー材料は、同一のポリマー又はコポリマーを含む。他の実施形態では、第2のポリマー材料及び第3のポリマー材料は、同一ファミリー由来のポリマーを含む。
【0128】
別の実施形態では、多孔質複合材料の作製方法は、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料を含む少なくとも1つの二成分繊維を含む多孔質基材を準備すること、溶媒中に溶解した第3のポリマー材料を含む溶液を準備すること、多孔質基材に溶液を塗付すること、及び第3のポリマー材料と二成分繊維の第1又は第2のポリマー材料との間に少なくとも1つの付着点を形成することを含む。いくつかの実施形態では、多孔質基材は、複数の二成分繊維を含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料は、第3のポリマー材料を溶解するのに使用した溶媒に溶解することができる。このような実施形態では、溶媒を溶液の一部として多孔質基材に塗付する場合、溶媒は、少なくとも1つの二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料を少なくとも部分的に溶解することができる。少なくとも1つの二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料の溶解又は少なくとも部分的な溶解により、第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料と第3のポリマー材料との間の付着点の形成を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料は、第3のポリマー材料と同一のポリマー又はコポリマーを含む。他の実施形態では、第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料は、第3のポリマー材料と同一ファミリー由来のポリマーを含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、溶液中に溶解した第3のポリマー材料を含む溶液は、約5重量%の第3のポリマー材料を含む。他の実施形態では、溶液は、約20重量%までの第3のポリマー材料を含む。別の実施形態では、溶液は、約5重量%〜約20重量%の第3のポリマー材料を含む。さらなる実施形態では、溶液は、20重量%を超える第3のポリマー材料を含む。1つの実施形態では、例えば、溶液は、約5重量%〜約20重量%のPVDFを含む。
【0131】
第3のポリマー材料を含む溶液での使用に適切な溶媒は、第3のポリマー材料の個性に依存する。いくつかの実施形態では、溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、トリエチレングリコール、鉱物油、及びこれらの組み合わせを含み得る。
【0132】
多孔質基材に塗付するための溶媒中に溶解した第3のポリマー材料を含む本発明の溶液を、第3のポリマー材料の適切な溶媒との組み合わせによって調製する。いくつかの実施形態では、機械的撹拌(撹拌及び/又は超音波処理等)を使用して、溶媒中の第3のポリマー材料の完全な溶解を確実にする。さらに、いくつかの実施形態では、溶媒中に溶解した第3のポリマー材料を含む溶液を、発明の名称が「多孔質複合材料及びその作製及び使用方法(Composite Porous Materials and Methods of Making and Using the Same)」である米国特許出願第10/982,392号に記載の溶液に従い調製する。
【0133】
種々の方法によって、溶媒中に溶解した第3のポリマー材料を含む溶液を、本発明の多孔質基材に塗付することができる。1つの実施形態では、例えば、溶媒中に溶解した第3のポリマー材料を含む溶液を、溶液を多孔質基材と接触させながら、拡散/レベリング装置又は溶液押し出し装置(solution-pushing device)を用いて多孔質基材に塗付する。
【0134】
本発明の1つの実施形態では、溶液押し出し装置を、管状部材の内側への材料溶液の均一なコーティングの塗付のために成形する。例えば、溶液押し出し装置を、伸長することができる(例えば、ロッド様又は円筒形)。特に、溶液押し出し装置の形状を、いくつかの実施形態では、管状部材に適合する接触表面を含むように選択する。管状部材の内面に材料溶液を塗付するための溶液押し出し装置は、いくつかの実施形態では、管状部材の円筒形の内部に適合する円筒形接触領域を含む。溶液押し出し装置の寸法を、沈積する材料溶液の量及び/又は厚さ及び/又は均一性が調節されるように選択することができる。また、第3のポリマー材料を含む溶液の沈積を、いくつかの実施形態では、溶液を塗付すべき部材への材料溶液の接触中又は接触後に適切な装置を使用することによって容易にする。
【0135】
別の実施形態では、第3のポリマー材料を含む溶液を、溶液を多孔質管の穴を通して移動させるように溶液を分配することができる中空アプリケータによって多孔質基材(管状多孔質基材)に塗付する。アプリケータは、いくつかの実施形態では、内腔及びアプリケータの内腔から外部までの1つ又は複数の通路を有することができる。本明細書中に記載の第3のポリマーを含む溶液を、アプリケータ内の内腔に供給し、通路を介して中空アプリケータの内腔から外側に通過させることができる。結果として、アプリケータへの溶液の供給と連動した管状部材及び管状部材内に配置したアプリケータの相対的に軸方向の移動の際に、溶液は、管状部材の内面に沿って分配及び塗付される。そのようなものとして、定量分配によって溶液の塗付条件及び沈積が制御され、その結果、管状部材上の材料の均一性及び/又は滑らかさが促進される。さらに、アプリケータの使用により、より少ない溶液を使用可能であり、それにより、より経済的な方法が提供される。溶液をアプリケータに供給する速さ及び/又は圧力を、管状部材の内面に塗付した溶液の所望の厚さ及び/又は均一性及び/又は滑らかさが得られるように選択することができる。
【0136】
さらに、溶媒中に溶解した第3のポリマー材料を含む溶液を、いくつかの実施形態では、米国特許出願第10/982,392号に従って、多孔質基材に塗付することができる。
【0137】
多孔質複合材料の生成方法は、いくつかの実施形態によれば、さらに、多孔質基材及び多孔質基材に塗付した溶液を第3のポリマー材料を溶解するのに使用した溶媒と混和性を示す流体と接触させることであって、流体が第3のポリマー材料の溶媒ではない、接触させることを含む。多孔質基材及び多孔質基材に塗付した溶液を混和性流体と接触させることにより、多孔質構造を第3の材料に提供することができる。いくつかの実施形態では、接触は、多孔質基材及び多孔質基材に塗付した溶液を混和性流体に浸漬することを含み得る。1つの実施形態では、多孔質基材及び多孔質基材に塗付した溶液を、混和性流体(複
数可)の連続浴中で浸漬することができる。
【0138】
多孔質の第3のポリマー材料を、溶液からのポリマー材料の沈殿の際に形成することができる。第3のポリマー材料は、いくつかの実施形態では、溶媒型、無機塩付加物の量、コーティングの厚さ、浸漬浴の組成、及び浸漬浴の温度等のパラメータの制御によって変化させることができる。いくつかの実施形態では、混和性流体は、水を含むことができる。他の実施形態では、混和性流体は、水−アルコール溶液を含むことができる。
【0139】
無機塩は当該技術分野で既知であり、使用される特定のポリマー及び得られた多孔質の第2の材料の所望の性質に応じて変化することができる。無機塩の例には、塩化リチウム、塩化亜鉛、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化亜鉛、臭化ナトリウム、臭化カリウム、及びこれらの任意の混合物が含まれるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、無機塩は、塩化リチウム、塩化亜鉛、又はこれらの混合物である。別の実施形態では、無機塩は塩化リチウムである。
【0140】
任意選択的に、任意/全ての混和性流体との接触後、多孔質複合材料を洗浄することができる。任意選択的に、任意/全ての混和性流体との接触後、多孔質複合材料を乾燥させることができる。任意選択的に、任意/全ての混和性流体との接触後、多孔質複合材料を洗浄し、その後に乾燥させることができる。当該技術分野で既知の任意の適切な液体(例えば、水)を使用して洗浄することができる。さらに、当該技術分野で既知の任意の適切な方法(例えば、洗浄流体浴中への多孔質複合材料の浸漬)によって洗浄することができる。当該技術分野で既知の任意の適切な方法(例えば、約25℃の空気中での多孔質複合材料の乾燥又は約25℃又は高温での従来のベルト乾燥機又は据え付け乾燥機の使用)によって乾燥させることができる。
【0141】
1つの実施形態では、例えば、本発明の多孔質複合材料を、溶媒(例えば、DMAc又は50/50の体積比のDMAcとNMPとの混合物)中に少なくとも約5重量%の濃度の第3の高分子(例えば、PVDF)及び無機塩(例えば、LiCl)を含む溶液をHDPEマトリクス全体に分散させたPVDFの粒子を含む焼結多孔質基材に沈積することによって調製する。別の実施形態では、多孔質複合材料を、溶媒(例えば、DMAc又は50/50の体積比のDMAcとNMPとの混合物)中に約20重量%までの濃度の第3の高分子(例えば、PVDF)及び無機塩(例えば、LiCl)を含む溶液をHDPEマトリクス全体に分散させたPVDFの粒子を含む焼結多孔質基材に沈積することによって調製する。さらなる実施形態では、多孔質複合材料を、溶媒(例えば、DMAc又は50/50の体積比のDMAcとNMPとの混合物)中に約5重量%〜約20重量%の濃度の第3のポリマー材料(例えば、PVDF)及び無機塩(例えば、LiCl)を含む溶液をHDPEマトリクス全体に分散させたPVDFの粒子を含む焼結多孔質基材に沈積することによって調製する。この段落の上記の各実施形態では、得られたコーティング基材を、その後に水を含む混和性流体と接触させる。
【0142】
IV.流体の濾過方法
多孔質複合材料及びその作製方法の提供に加えて、本発明は、多孔質複合材料の使用方法(多孔質複合材料を含む流体の濾過方法が含まれる)を提供する。1つの実施形態では、流体の濾過方法は、第1の材料及び第2の材料の少なくとも1つの粒子を含む多孔質基材及び基材の少なくとも1つの表面上に配置した第3の多孔質材料を含むフィルターを準備すること並びにフィルターに流体を通過させることを含む。濾過方法のいくつかの実施形態では、多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置した第3の材料は、第2の材料の少なくとも1つの粒子への少なくとも1つの付着点を有する。
【0143】
別の実施形態では、流体の濾過方法は、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の
少なくとも1つの繊維を含む多孔質基材及び基材の少なくとも1つの表面上に配置し、少なくとも1つの繊維への少なくとも1つの付着点を有する第3のポリマー材料を含むフィルターを準備すること並びにフィルターに流体を通過させることを含む。
【0144】
さらなる実施形態では、流体の濾過方法は、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料を含む少なくとも1つの二成分繊維を含む多孔質基材並びに多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置され、二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料への少なくとも1つの付着点を有する第3のポリマー材料を含むフィルターを準備すること並びにフィルターに流体を通過させることを含む。
【0145】
本発明の実施形態における流体は、液体及びガスを含む。1つの実施形態では、例えば、流体は水を含む。別の実施形態では、流体は空気を含む。
【0146】
本発明の多孔質複合材料を使用した濾過方法は、いくつかの実施形態によれば、精密濾過プロセス、限外濾過プロセス、及びナノ濾過プロセスを含むことができる。精密濾過が適切である用途の非限定的な例には、集塵、飲料及び医薬品の冷滅菌、細胞の採取、果汁、ビール、及びワインの明澄化、排水処理、並びに連続発酵が含まれる。限外濾過が適切である用途の非限定的な例には、海水脱塩プラントでの海水の前処理、ミルクからの乳漿タンパク質の回収、水−油分離、及びプロセス水としての再利用のための排水処理が含まれる。ナノ濾過が適切である用途の例には、色素の改善及びミルクからのラクトースの濾過が含まれる。
【0147】
本発明の実施形態を、以下の非限定的な実施例にさらに例示する。
【0148】
(実施例1)
第3のポリマー材料を含む溶液の生成
多孔質基材に塗付するための第3のポリマー材料を含む溶液の生成では、本発明の1つの実施形態によれば、2つの個別の溶液(中間溶液A及び中間溶液B)を調製した。調製後、中間溶液Aを中間溶液Bと合わせて、多孔質基材への塗付のための第3のポリマー材料溶液を生成した。
【0149】
中間溶液Aの調製
1ガロン(3.8リットル)のHDPEミルジャー/カーボイに、100グラムの塩化リチウム(LiCl)及び2,500グラムのDMAcを添加した。ダクトテープでカーボイ上へ蓋を固定し、カーボイをローラーミル上に配置して20rpmで2時間操作後、LiClが完全に溶解したようであった。カーボイを開き、520グラムのPVDF(Arkema,
Inc.のKYNAR 2800)を添加した。PVDFをゆっくり溶液と合わせ、気泡を回避するためにガラス棒で撹拌した。次いで、ダクトテープでカーボイ上へ蓋を固定し、溶液が均一になるまで(約4〜10時間後)、カーボイを20rpmのローラーミルに移した。中間溶液Aを、色(例えば、帯黄色の外観)、気泡、及び/又は溶解していないPVDFのゲル塊について試験した。これらの条件がいずれも明白でなかったので、テープでカーボイ上に蓋を固定し、さらなる使用のためにカーボイを恒温室(約25℃に維持)に入れた。
【0150】
中間溶液Bの調製
900グラムのNMPを含む別の1ガロンのHDPEミルジャー/カーボイに、100グラムのPVP(ISP Technology Inc. (Wayne, N. J.)から入手したグレードK−90)を添加した。ガラス棒を使用して、組み合わせ物を静かに撹拌した。ダクトテープでカーボイ上へ蓋を固定し、外観上均一な中間溶液Bが形成されるまで(約4〜10時間後)、カーボイを20rpmで操作したローラーミルに配置した。中間溶液Bを、色(例えば、帯黄色の外観)、気泡、及び/又は溶解していないPVDFのゲル塊について試験した。
これらの条件がいずれも明白でなかったので、テープでカーボイ上に蓋を固定し、さらなる使用のためにカーボイを恒温室(約25℃に維持)に入れた。
【0151】
中間溶液Aと中間溶液Bとの組み合わせ
約25℃で、中間溶液Aを中間溶液Bのカーボイに添加して、第3のポリマー材料溶液を形成した。中間溶液Bカーボイの蓋をテープでカーボイ上に固定し、得られた第3のポリマー材料溶液が均一になるまで(約6時間後)、カーボイを20rpmのローラーミル上に配置した。カーボイをミルから取り出し、色及び固体ポリマー粒子について試験した。これらの条件がいずれも明白でなかったので、テープでカーボイ上に蓋を固定し、さらなる使用のためにカーボイを恒温室(約25℃に維持)に入れた。
【0152】
(実施例2)
多孔質基材への第3のポリマー材料溶液の塗付
内部にPVDFの粒子を分散させたHDPEマトリクスを含む焼結多孔質基材の8インチ×8インチ(20.3cm×20.3cm)の平面シートを準備した。焼結多孔質基材は、バランスHDPEと共に約5重量%のPVDF粒子を含んでいた。焼結多孔質基材の空隙率は約40%であり、平均孔サイズは約30μmであった。多孔質基材を、テーブルの清潔で平らな、滑らかな水平ガラス上に置いた。シートの各コーナーを、絶縁テープでテーブルの表面に固定した。0.75インチ(1.9cm)幅の3層の絶縁テープを、シートの各縁越しにテーブルの表面上に置いた。約0.015インチ(0.038cm)の3層のテープの厚さは、第3のポリマー材料の所望の湿潤厚さ(wet thickness)に相当した。
【0153】
実施例1にしたがって調製した第3のポリマー材料溶液のアリコートを、カーボイから100mLガラスビーカーに注いだ。ビーカーから、約20mLの第3のポリマー材料溶液を、シートの縁から約2インチ(5.1cm)離れたラインに沿って焼結多孔質基材シート上に注いでビーズを形成した。直径が2インチ(5.1cm)で長さが8インチ(20.3cm)のガラス棒をスキジーとして使用して、溶液のビーズを均一に広げて、シートから過剰な溶液を除去した。ビーズと平行に縦軸に上から下にゆっくり(約30秒にわたり)、下方圧力によりテープの最上部片の外側縁からテープの低部片の外側縁を過ぎるまで確実に焼結多孔質基材シート全体で棒を引き寄せることによって行った。過剰な第3のポリマー材料溶液の除去の完了次第、タイマーを開始させた。
【0154】
過剰な第3のポリマー材料溶液の除去の完了から3分後、絶縁テープを4つの全てのコーナーで切断し、テーブルからコーティングした焼結多孔質基材シートを剥した。シートを、平らな位置でコーティング面を上にして3分間吊り下げて保持し、次いで、約4インチ(10cm)の水を充填した長さ12インチ×幅12インチ×深さ6インチ(30.5cm×30.5cm×15.2cm)のガラストレイに注意深く移した。コーティング面を上にして、シートを水浴中に約10秒間にわたって確実に浸漬し、その後、約3分間吊り下げた。その後、シートを取り外して、トレイの低部で約24時間平坦な状態にした。
【0155】
トレイから取り出した後、焼結多孔質基材シートを、5重量%のグリセリン水溶液を含む別のトレイに30分間入れた。グリセリン/水溶液から取り出した後、シートを24時間風乾した。得られた多孔質複合材料は、平均孔サイズが約30μmの焼結多孔質高分子基材及び平均孔サイズが約0.1μmの第3のポリマー材料の多孔質膜(PVDF)を有していた。
【0156】
図6及び図7に例示するように、第3のポリマー材料溶液によって沈積されたPVDF膜は、焼結HDPEマトリクス中に分散されたPVDF粒子との複数の付着点を形成した。さらに、PVDF膜と焼結HDPEマトリクスとの間に境界面が存在した。結果として
、PVDF膜は、HDPEマトリクス中に分散したPVDF粒子との複数の付着点を介して焼結多孔質基材に付着した。
【0157】
(実施例3)
二成分繊維を含む多孔質複合材料
複数の焼結した短繊維である二成分繊維を含む多孔質基材を提供する。短繊維である二成分繊維は、ポリエステル/ポリオレフィン構築物を含む。本実施例では、ポリエステル/ポリオレフィン構築物を含む短繊維である二成分繊維は、KoSA Incorporatedから市販されているKoSA T−256である。ポリエステル/ポリオレフィンの短繊維である二成分繊維を含む銀をカーディングプロセスによって生成し、銀をオーブン又は他の加熱装置から抜き出し、オーブンの温度を2つの繊維成分の少なくとも1つの溶融温度又は溶融温度付近に設定する。次いで、短繊維である二成分繊維の銀を、加熱した金型から抜き出し、短繊維である二成分繊維を互いに接触させ、互いに接着させる。金型は、任意の所望の形状(シート又はチューブ等)を有することができる。オーブン及び金型を、本実施例では、約140℃〜約170℃の範囲の温度に加熱する。次いで、短繊維である二成分繊維を冷却して焼結多孔質基材を生成する。複数のポリエステル/ポリオレフィンの短繊維である二成分繊維を含む多孔質基材は、約50%〜約90%の範囲の空隙率及び約0.5μm〜約20μmの範囲の平均孔サイズを有する。本実施例では、焼結多孔質基材は、平面シートの形態である。
【0158】
複数のポリエステル/ポリオレフィンの短繊維である二成分繊維を含む焼結多孔質基材の平面シートを、テーブルの清潔で平らな、滑らかな水平ガラス上に置いた。シートの各コーナーを、絶縁テープでテーブルの表面に固定した。0.75インチ(1.9cm)幅の3層の絶縁テープを、シートの各縁越しにテーブルの表面上に置いた。約0.015インチ(0.038cm)の3層のテープの厚さは、第3のポリマー材料の所望の湿潤厚さに相当する。
【0159】
実施例1に従って調製した第3のポリマー材料溶液のアリコートを、カーボイから100mLガラスビーカーに注いだ。ビーカーから、約20mLの第3のポリマー材料溶液を、シートの縁から約2インチ(5.1cm)離れたラインに沿って焼結多孔質基材シート上に注いでビーズを形成した。直径が2インチ(5.1cm)で長さが8インチ(20.3cm)のガラス棒をスキジーとして使用して、溶液のビーズを均一に広げて、シートから過剰な溶液を除去した。ビーズと平行に縦軸に上から下にゆっくり(約30秒にわたり)、下方圧力によりテープの最上部片の外側縁からテープの低部片の外側縁を過ぎるまで確実に焼結多孔質基材シート全体で棒を引き寄せることによってこれを行った。過剰な第3のポリマー材料溶液の除去の完了次第、タイマーを開始させた。
【0160】
過剰な第3のポリマー材料溶液の除去の完了から3分後、絶縁テープを4つの全てのコーナーで切断し、テーブルからコーティングした焼結多孔質基材シートを剥した。シートを、平らな位置でコーティング面を上にして3分間吊り下げて保持し、次いで、約4インチ(10cm)の水を充填した長さ12インチ×幅12インチ×深さ6インチ(30.5cm×30.5cm×15.2cm)のガラストレイに注意深く移した。コーティング面を上にして、シートを水浴中に約10秒間にわたって確実に浸漬し、その後、約3分間吊り下げた。その後、シートを取り外して、トレイの低部で約24時間平坦な状態にした。
【0161】
トレイから取り出した後、焼結多孔質基材シートを、5重量%のグリセリン水溶液を含む別のトレイに30分間入れた。グリセリン/水溶液から取り出した後、シートを24時間風乾した。得られた多孔質複合材料は、平均孔サイズが約20μmの焼結多孔質高分子基材及び平均孔サイズが約0.1μmの第3のポリマー材料の多孔質膜(PVDF)を有していた。
【0162】
本実施例では、短繊維である二成分繊維のポリエステル成分及び第3のポリマー材料であるPVDFは、同一溶媒に溶解可能である。結果として、第3の高分子多孔質材料であるPVDFは、短繊維である二成分繊維のポリエステル成分と複数の付着点を形成する。したがって、PVDF膜は、短繊維である二成分繊維のポリエステル成分との複数の付着点を介して、焼結多孔質基材に付着する。
【0163】
上記で引用したすべての特許、刊行物、及び抄録は、その全体が参照によって援用される。上記は本発明の好ましい実施形態にのみ関連し、添付の特許請求の範囲に規定した本発明の精神及び範囲を逸脱することなく多数の修正形態又は変更形態を実施することができると理解すべきである。
【0164】
本発明の種々の実施形態は、本発明の種々の目的の達成のために記載されている。これらの実施形態は単に本発明の原理を例示するに過ぎないことを認識すべきである。その多数の修正形態及び適応は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく当業者に容易に明らかなものであろう。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明の実施形態による多孔質複合材料の断面の走査電子顕微鏡画像(1000倍)である。
【図2】本発明の実施形態による多孔質複合材料の断面の走査電子顕微鏡画像(5500倍)である。
【図3】本発明の実施形態による多孔質基材中の粒子に結合する多孔質膜の走査電子顕微鏡画像(8500倍)である。
【図4】本発明の実施形態による多孔質複合材料の断面の走査電子顕微鏡画像(1200倍)である。
【図5】本発明の実施形態による多孔質複合材料の断面の走査電子顕微鏡画像(500倍)である。
【図6】本発明の実施形態による多孔質複合材料の断面の走査電子顕微鏡画像(3000倍)である。
【図7】本発明の実施形態による多孔質複合材料の断面の走査電子顕微鏡画像(400倍)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質複合材料であって、
第1のポリマー材料と第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維とを含む多孔質基材、及び
前記多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置され、前記第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維への少なくとも1つの付着点を有する第3のポリマー材料
を含む、多孔質複合材料。
【請求項2】
前記第1のポリマー材料及び前記第2のポリマー材料が異なる、請求項1に記載の多孔質複合材料。
【請求項3】
前記第1のポリマー材料及び前記第2のポリマー材料は、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ塩化ビニル、又はこれらのコポリマー若しくは組み合わせからなる群から独立して選択される、請求項2に記載の多孔質複合材料。
【請求項4】
前記第1のポリマー材料は複数のポリエチレン粒子を含む、請求項1に記載の多孔質複合材料。
【請求項5】
前記第2のポリマー材料はポリビニリデンフルオリドを含む、請求項4に記載の多孔質複合材料。
【請求項6】
前記第3のポリマー材料は、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ塩化ビニル、又はこれらのコポリマー若しくは組み合わせを含む、請求項1に記載の多孔質複合材料。
【請求項7】
前記第2のポリマー材料及び前記第3のポリマー材料は同一のポリマーを含む、請求項1に記載の多孔質複合材料。
【請求項8】
前記第2のポリマー材料及び前記第3のポリマー材料は同一ファミリー由来のポリマーを含む、請求項1に記載の多孔質複合材料。
【請求項9】
前記第2のポリマー材料及び前記第3のポリマー材料は共通の溶剤に溶解性である、請求項1に記載の多孔質複合材料。
【請求項10】
前記少なくとも1つの繊維は長繊維又は短繊維を含む、請求項1に記載の多孔質複合材料。
【請求項11】
前記少なくとも1つの繊維は一成分繊維又は二成分繊維を含む、請求項1に記載の多孔質複合材料。
【請求項12】
前記第1のポリマー材料は複数の粒子、繊維、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の多孔質複合材料。
【請求項13】
前記多孔質基材が焼結された、請求項1に記載の多孔質複合材料。
【請求項14】
前記第3のポリマー材料は多孔質膜を含む、請求項1に記載の多孔質複合材料。
【請求項15】
前記多孔質複合材料はフィルターである、請求項14に記載の多孔質複合材料。
【請求項16】
多孔質複合材料であって、
第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料を含む、少なくとも1つの二成分繊維を含む多孔質基材、並びに
前記多孔質基材の少なくとも1つの表面上に配置され、前記二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料への少なくとも1つの付着点を有する第3のポリマー材料を含む、多孔質複合材料。
【請求項17】
前記二成分繊維は、ポリプロピレン/PET、ポリエチレン/PET、ポリプロピレン/ナイロン−6、ナイロン−6/PET、コポリエステル/PET、コポリエステル/ナイロン−6、コポリエステル/ナイロン−6,6、ポリ−4−メチル−1−ペンテン/PET、ポリ−4−メチル−1−ペンテン/ナイロン−6、ポリ−4−メチル−1−ペンテン/ナイロン−6,6、PET/ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン−6,6/ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチル(PCT)、ポリプロピレン/ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン−6/コポリアミド、ポリ乳酸/ポリスチレン、ポリウレタン/アセタール、又は可溶性コポリエステル/ポリエチレンを含む、請求項16に記載の多孔質基材。
【請求項18】
前記第3のポリマー材料は、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ塩化ビニル、又はこれらのコポリマー若しくは組み合わせを含む、請求項16に記載の多孔質複合材料。
【請求項19】
前記第3のポリマー材料及び前記二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料は同一のポリマーを含む、請求項16に記載の多孔質複合材料。
【請求項20】
前記第3のポリマー材料及び前記二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料は同一ファミリー由来のポリマーを含む、請求項16に記載の多孔質複合材料。
【請求項21】
前記第3のポリマー材料及び前記二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料は共通の溶剤に溶解性である、請求項16に記載の多孔質複合材料。
【請求項22】
前記多孔質基材が焼結された、請求項16に記載の多孔質複合材料。
【請求項23】
前記第3のポリマー材料は多孔質膜を含む、請求項16に記載の多孔質複合材料。
【請求項24】
前記多孔質複合材料はフィルターである、請求項23に記載の多孔質複合材料。
【請求項25】
請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載の多孔質複合材料の作製方法であって、
第1のポリマー材料と第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維とを含む多孔質基材を準備すること、
溶剤に溶解した第3のポリマー材料を含む溶液を準備すること、
前記多孔質基材に前記溶液を適用すること、及び
前記第3のポリマー材料と前記第2のポリマー材料の少なくとも1つの粒子又は繊維との間に少なくとも1つの付着点を形成すること
を含む、多孔質複合材料の作製方法。
【請求項26】
請求項16〜請求項24のいずれか1項に記載の多孔質複合材料の作製方法であって、
第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料を含む、少なくとも1つの二成分繊維を含む多孔質基材を準備すること、
溶剤に溶解した第3のポリマー材料を含む溶液を準備すること、
前記多孔質基材に前記溶液を適用すること、及び
前記第3のポリマー材料と前記少なくとも1つの二成分繊維の第1のポリマー材料又は第2のポリマー材料との間に少なくとも1つの付着点を形成すること
を含む、多孔質複合材料の作製方法。
【請求項27】
請求項1〜請求項24のいずれか1項に記載のフィルターを準備すること、及び
前記フィルターに流体を通過させること
を含む、流体を濾過する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−536573(P2009−536573A)
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509845(P2009−509845)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/011252
【国際公開番号】WO2007/133609
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(505440686)ポーレックス コーポレイション (9)
【Fターム(参考)】