説明

多孔質酸化チタン構造体の製造方法

【課題】 本発明は、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体を作製できる多孔質酸化チタン構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 酸化チタン粒子、酸化チタン複合有機樹脂粒子、及び、有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程、前記酸化チタンペーストを塗工する工程、及び、前記酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、多孔質酸化チタン構造体を形成する工程を有し、前記酸化チタン複合有機樹脂粒子は、酸化チタンを多孔質有機樹脂粒子の細孔内に有し、前記多孔質有機樹脂粒子は、平均細孔径が200nm以下である多孔質酸化チタン構造体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体を作製できる多孔質酸化チタン構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン等に代表される光触媒は、有害化学物質の分解及び除去、超親水性、水素生成等の優れた機能を有し、環境浄化、省エネルギーや新エネルギー等への用途が期待され、環境、エネルギー及び経済においてバランスの取れた持続可能な社会構築に貢献する素材であると目されている。
酸化チタン薄膜を形成する方法としては、コーティング法、浸漬法、スパッタリング法や酸素ガス雰囲気内に加熱蒸発させた金属蒸気を導入して反応させる熱CVD法等が知られている。コーティング法では、有機系バインダに酸化チタン粉末を少量分散してスラリーとし、このスラリーを膜状に塗布して光触媒を形成する。しかしながら、膜中に有機系バインダが存在すると、光触媒活性が損なわれ、充分な光触媒活性が得られないという問題があった。これは、表層に析出した二酸化チタン粒子のみが光触媒活性に関与するに過ぎないためであると考えられる。
【0003】
これに対して、充分な付着強度を持たせ、かつ、光触媒活性を維持するためには、素材表面に光触媒膜を直接形成する技術が有効である。特許文献1には、気化させたチタンアルコキシドを担体となる不活性ガスとともに、大気圧開放下で加熱された基材表面に吹き付けることで、基材表面に二酸化チタンからなる結晶配向膜を形成する方法が開示されている。
しかしながら、このような方法で得られる酸化チタン結晶配向膜を有する材料は、基材表面に形成された膜の表層が緻密に形成されているため、充分な光触媒活性を得ることができなかった。
【0004】
また、特許文献2には、大気開放型化学気相析出法を用いて所定の膜厚及び気孔率を有する多孔質光触媒膜を作製する方法が開示されている。この方法では、大気開放下にて基材に原料ガスを吹き付けて、金属酸化物等の薄膜を形成することで、多孔質光触媒膜を作製しているが、実際には形成される空孔を所望の形状に制御することは極めて困難であった。また、この方法では、大気開放型CVD装置等の特殊で大型の製造装置を必要とし、製造工程も複雑なものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3455653号公報
【特許文献2】特開2005−279366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体を作製できる多孔質酸化チタン構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、酸化チタン粒子、酸化チタン複合有機樹脂粒子、及び、有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程、前記酸化チタンペーストを塗工する工程、及び、前記酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、酸化チタン構造体を形成する工程を有し、前記酸化チタン複合有機樹脂粒子は、酸化チタンを多孔質有機樹脂粒子の細孔内に有し、前記多孔質有機樹脂粒子は、平均細孔径が200nm以下である多孔質酸化チタン構造体の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、多孔質酸化チタン構造体の作製において、所定の酸化チタン複合有機樹脂粒子を用いることで、光触媒に用いた場合、優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の多孔質酸化チタン構造体の製造方法では、まず、酸化チタン粒子、酸化チタン複合有機樹脂粒子、及び、有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程を行う。
具体的には、上記酸化チタン粒子、酸化チタン複合有機樹脂粒子、及び、有機溶剤を例えば、2本ロールミル、3本ロールミル、ビーズミル、ボールミル、ディスパー、プラネタリーミキサー、自転公転式攪拌装置、ニーダー、押し出し機、ミックスローター、スターラー等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0010】
上記酸化チタン粒子としては、特に限定されず、例えば、通常ルチル型の二酸化チタン粒子、アナターゼ型の二酸化チタン粒子、ブルッカイト型の二酸化チタン粒子及びこれら結晶性二酸化チタンを修飾した二酸化チタン粒子等を用いることができる。
【0011】
上記酸化チタン粒子の粒子径としては、一次粒子の平均粒子径の好ましい下限が4nm、好ましい上限が300nmであり、より好ましい下限は6nm、より好ましい上限は250nmである。上記範囲内とすることで、充分な比表面積を得ることができ、また電子と正孔の再結合を防ぐことができる。また、粒子径分布の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよい。
【0012】
上記酸化チタン複合有機樹脂粒子としては、酸化チタンを多孔質有機樹脂粒子の細孔内に有し、かつ、上記多孔質有機樹脂粒子が平均細孔径200nm以下であるものを用いる。
これにより、非常に均一で微細な酸化チタンを細孔内に作製することができる。
【0013】
上記酸化チタン複合有機樹脂粒子は、酸化チタンを多孔質有機樹脂粒子の細孔内に有する。
上記多孔質有機樹脂粒子の平均細孔径は、上限が200nmである。上記多孔質有機樹脂粒子の平均細孔径が200nmを超えると、得られる酸化チタン複合有機樹脂粒子は、酸化チタンの微分散性が低下し、最終的に作製する酸化チタン焼結体の比表面積が低下してしまう。上記多孔質有機樹脂粒子の平均細孔径は、好ましい上限が150nm、より好ましい上限が100nmである。
また、上記多孔質有機樹脂粒子の平均細孔径の下限は特に限定されないが、好ましい下限は0.1nmである。上記多孔質有機樹脂粒子の平均細孔径が0.1nm未満であると、得られる酸化チタン複合有機樹脂粒子は、酸化チタンの含有量が低下することがある。
なお、本明細書中、多孔質有機樹脂粒子の平均細孔径とは、NOVA4200e(Sysmex社製)等のガス吸着式細孔径分布測定装置により測定した平均細孔径を意味する。
【0014】
上記多孔質有機樹脂粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が0.5μm、好ましい上限が50μmである。上記多孔質有機樹脂粒子の平均粒子径が0.5μm未満であると、得られる酸化チタン複合有機樹脂粒子を用いて製造した構造体において、酸化チタンの含有量が低下することがある。上記多孔質有機樹脂粒子の平均粒子径が50μmを超えると、得られる酸化チタン複合有機樹脂粒子は、塗工組成物中での分散性が低下することがあり、このような塗工組成物を用いて製造した構造体は、酸化チタンの分散性が低下することがある。上記多孔質有機樹脂粒子の平均粒子径は、より好ましい下限が1μm、より好ましい上限が30μmである。
なお、本明細書中、多孔質有機樹脂粒子の平均粒子径とは、LA920(HORIBA社製)等の光散乱回折型粒径分布計により測定した体積平均粒子径を意味する。
【0015】
上記多孔質有機樹脂粒子のかさ比重は特に限定されないが、好ましい下限が0.01、好ましい上限が0.60である。上記多孔質有機樹脂粒子のかさ比重が0.01未満であると、多孔質有機樹脂粒子の平均細孔径が増大することがあり、得られる酸化チタン複合有機樹脂粒子は、酸化チタンの微分散性が低下することがある。上記多孔質有機樹脂粒子のかさ比重が0.60を超えると、多孔質有機樹脂粒子の細孔の数が低下することがあり、得られる酸化チタン複合有機樹脂粒子は、酸化チタンの含有量が低下することがある。上記多孔質有機樹脂粒子のかさ比重は、より好ましい下限が0.05、より好ましい上限が0.50である。
なお、本明細書中、多孔質有機樹脂粒子のかさ比重とは、JIS K 7365に準拠して測定したかさ比重を意味する。
【0016】
上記多孔質有機樹脂粒子の比表面積は特に限定されないが、好ましい下限が50m/gである。上記多孔質有機樹脂粒子の比表面積が50m/g未満であると、多孔質有機樹脂粒子の平均細孔径が低下することがあり、得られる酸化チタン複合有機樹脂粒子は、酸化チタンの含有量が低下することがある。上記多孔質有機樹脂粒子の比表面積は、より好ましい下限が100m/gである。また、上記多孔質有機樹脂粒子の比表面積の上限は特に限定されない。
なお、本明細書中、多孔質有機樹脂粒子の比表面積とは、NOVA4200e(Sysmex社製)等のガス吸着式細孔径分布測定装置により測定した比表面積を意味する。
【0017】
上記多孔質有機樹脂粒子の製造方法は特に限定されないが、重合性モノマーと、重合性モノマーとは反応しない有機溶剤とを混合した重合性モノマー溶液を調製した後、分散安定剤を含む極性溶媒に懸濁させる工程と、上記重合性モノマーを重合させ、上記有機溶剤を内包するポリマー粒子を得る工程と、得られたポリマー粒子中の上記有機溶剤を除去する工程とを有する方法(以下、方法(1)ともいう)が好ましい。
以下、上記方法(1)について説明する。
【0018】
上記方法(1)では、まず、重合性モノマーと、重合性モノマーとは反応しない有機溶剤とを混合した重合性モノマー溶液を調製した後、分散安定剤を含む極性溶媒に懸濁させる工程を行う。
【0019】
上記重合性モノマーは特に限定されず、例えば、単官能性モノマー、多官能性モノマーが挙げられる。
上記単官能性モノマーは特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の極性基含有(メタ)アクリル系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等のスチレン系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有モノマー、ビニルピリジン、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、イタコン酸、フマル酸、エチレン、プロピレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでも、重合する際の反応性が良好であることから、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のアクリル系モノマーが好ましい。
【0020】
上記多官能性モノマーは、得られる多孔質有機樹脂粒子の収縮を抑制し、耐圧縮強度を改善する目的で添加される。上記多官能性モノマーは特に限定されず、例えば、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリル化合物、トリアリル化合物、ジビニル化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記ジ(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記トリ(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記テトラ(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ジビニル化合物は特に限定されず、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0022】
上記有機溶剤は、上記重合性モノマーとは反応しなければ特に限定されず、例えば、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン等の脂肪族炭化水素、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。
【0023】
上記重合性モノマー溶液における上記有機溶剤の配合量は特に限定されないが、上記重合性モノマー100重量部に対して、好ましい下限が10重量部、好ましい上限が300重量部である。上記有機溶剤の配合量が10重量部未満であると、得られる多孔質有機樹脂粒子の空隙率が低下することがある。上記有機溶剤の配合量が300重量部を超えると、得られる多孔質有機樹脂粒子の強度が低下することがある。上記重合性モノマー溶液における上記有機溶剤の配合量の配合量は、より好ましい下限が20重量部、より好ましい上限が200重量部である。
【0024】
上記重合性モノマーと、上記有機溶剤とを混合した重合性モノマー溶液は、分散安定剤を含む極性溶媒に懸濁され、懸濁液が得られる。上記極性溶媒は特に限定されないが、水が好ましい。
【0025】
上記分散安定剤は特に限定されず、例えば、シリカ、リン酸三カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン等の無機物、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレン等の水溶性ポリマー、又は、各種アニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤等が挙げられる。
上記分散安定剤の添加量は特に限定されず、分散安定剤の種類等により適宜決定されるが、上記重合性モノマー100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が20重量部である。
【0026】
上記極性溶媒には、更に、分散安定助剤が添加されてもよい。
上記分散安定助剤は特に限定されず、例えば、ドデシルフェニルオキサイドジスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0027】
上記重合性モノマー溶液の添加量は特に限定されないが、上記極性溶媒100重量部に対して、好ましい下限が10重量部、好ましい上限が10000重量部である。上記重合性モノマー添加量が10重量部未満であると、得られる多孔質中空樹脂粒子の強度が低下することがある。上記重合性モノマー溶液の添加量が10000重量部を超えると、得られる多孔質中空樹脂粒子の空隙率が低下することがある。上記重合性モノマーの添加量は、上記極性溶媒100重量部に対するより好ましい下限が25重量部、より好ましい上限が3233重量部である。
【0028】
上記方法(1)では、次いで、上記重合性モノマーを重合させ、上記有機溶剤を内包するポリマー粒子を得る工程を行う。
上記重合の際には、通常、重合開始剤を用いる。上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、上記重合性モノマー溶液と相溶する油溶性のフリーラジカルを発生する化合物、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジブチルパーオキシジカーボネート、αークミルパーオキシネオデカノエート等の有機系過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、レドックス開始剤等が挙げられる。
【0029】
上記方法(1)では、次いで、得られたポリマー粒子中の上記有機溶剤を除去する工程を行う。これにより、上述した範囲の平均細孔径、平均粒子径、かさ比重、比表面積を有する上記多孔質有機樹脂粒子が得られる。このような多孔質有機樹脂粒子を用いることにより、酸化チタンが極めて微細に分散した酸化チタン複合有機樹脂粒子が得られる。
【0030】
上記酸化チタン複合有機樹脂粒子中の酸化チタンの平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が0.1nm、好ましい上限が200nmである。上記酸化チタン複合有機樹脂粒子中の酸化チタンの平均粒子径が0.1nm未満であると、最終的に得られる酸化チタン焼結体の緻密な構造を作るのに強度が不足することがある。上記酸化チタン複合有機樹脂粒子中の酸化チタンの平均粒子径が200nmを超えると、最終的に得られる酸化チタン焼結体の比表面積が低下してしまう。
なお、本明細書中、酸化チタン複合有機樹脂粒子中の酸化チタンの平均粒子径は、例えば、TEM/EDS装置を用いて元素マッピング画像を得た後、個数平均粒子径を算出することにより測定することができる。
【0031】
上記酸化チタン複合有機樹脂粒子は、更に、周期律表2a〜4b族のうちの少なくとも1種の金属、又は、該金属からなる金属酸化物若しくは金属塩を有することが好ましい。
なお、上記周期律表2a〜4b族のうちの少なくとも1種の金属、又は、該金属からなる金属酸化物若しくは金属塩は、酸化チタンとは異なるものである。以下、上記周期律表2a〜4b族のうちの少なくとも1種の金属、又は、該金属からなる金属酸化物若しくは金属塩を「特定金属、特定金属酸化物又は特定金属塩」ともいう。
【0032】
上記周期律表2a〜4b族のうちの少なくとも1種の金属として、具体的には、例えば、白金、金、パラジウム、ニッケル、銅等が挙げられる。
上記周期律表2a〜4b族のうちの少なくとも1種の金属の金属酸化物として、具体的には、例えば、酸化セリウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、ジルコニア、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化銅、酸化コバルト、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫等が挙げられる。
上記周期律表2a〜4b族のうちの少なくとも1種の金属の金属塩として、具体的には、例えば、水酸化セリウム、水酸化チタン、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化(II)鉄、水酸化(III)鉄、水酸化ニッケル、硫酸銅、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0033】
上記酸化チタン複合有機樹脂粒子における酸化チタンの含有量は特に限定されないが、好ましい下限が酸化チタン複合有機樹脂粒子全体の5重量%、好ましい上限が酸化チタン複合有機樹脂粒子全体の90重量%である。上記酸化チタンの含有量が5重量%未満であると、得られる酸化チタン複合有機樹脂粒子を用いて、所望とする緻密な構造体を製造できないことがある。上記酸化チタンの含有量が90重量%を超えると、得られる酸化チタン複合有機樹脂粒子は、酸化チタンの微分散性が低下することがあり、このような酸化チタン複合有機樹脂粒子を用いて製造した構造体は、酸化チタンの微分散性が低下することがある。上記酸化チタンの含有量は、より好ましい下限が酸化チタン複合有機樹脂粒子全体の10重量%、より好ましい上限が酸化チタン複合有機樹脂粒子全体の70重量%である。
【0034】
上記酸化チタン複合有機樹脂粒子を製造する方法は特に限定されないが、水を主成分とする媒体中に多孔質有機樹脂粒子と金属イオンとを共存させた分散液を調製する工程と、前記金属イオンを中和、還元若しくは酸化するか、又は、前記金属イオンの溶解度を低下させることにより、前記多孔質有機樹脂粒子の細孔内に酸化チタンや、特定金属、特定金属酸化物又は特定金属塩を析出させる工程とを有する方法(以下、第1の酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造方法ともいう)が好ましい。
また、上記酸化チタン複合有機樹脂粒子を製造する方法として、多孔質有機樹脂粒子と金属アルコキシドとを共存させた分散液を調製する工程と、前記金属アルコキシドを加水分解及び/又は脱水縮合することにより、前記多孔質有機樹脂粒子の細孔内に酸化チタンや、特定金属、特定金属酸化物又は特定金属塩を析出させる工程とを有する方法(以下、第2の酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造方法ともいう)も好ましい。
【0035】
第1の酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造方法では、まず、水を主成分とする媒体中に上述した多孔質有機樹脂粒子と金属イオンとを共存させた分散液を調製する工程を行う。
上記水を主成分とする媒体は、水を主成分としていれば特に限定されず、例えば、水や、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン等と水との混合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記分散液中の上記多孔質有機樹脂粒子の配合量は特に限定されないが、好ましい下限が0.5重量%、好ましい上限が50重量%である。上記多孔質有機樹脂粒子の配合量が0.5重量%未満であると、上記多孔質有機樹脂粒子の細孔外で析出する酸化チタンや、特定金属、特定金属酸化物又は特定金属塩の量が増加し、析出した酸化チタンが酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造に悪影響を及ぼすことがある。上記多孔質有機樹脂粒子の配合量が50重量%を超えると、多孔質有機樹脂粒子が凝集することがある。上記分散液中の上記多孔質有機樹脂粒子の配合量は、より好ましい下限が1重量%、より好ましい上限が30重量%である。
【0037】
上記金属イオンは、酸化チタン複合有機樹脂粒子に含まれる上記酸化チタンや、特定金属、特定金属酸化物又は特定金属塩を形成する金属のイオンであれば特に限定されず、具体的には、チタンイオンのほか、例えば、パラジウムイオン、ニッケルイオン、セリウムイオン、白金イオン、金イオン、セリウムイオン、亜鉛イオン、ジルコニウムイオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、銅イオン、コバルトイオン、アルミニウムイオン、錫イオン等が挙げられる。
【0038】
上記分散液中の上記金属イオンの配合量は特に限定されないが、好ましい下限が0.001モル%、好ましい上限が10モル%である。上記金属イオンの配合量が0.001モル%未満であると、得られる酸化チタン複合有機樹脂粒子は、酸化チタンや、特定金属、特定金属酸化物又は特定金属塩の含有量が低下することがある。上記金属イオンの配合量が10モル%を超えると、上記多孔質有機樹脂粒子の細孔外で析出する酸化チタンや、特定金属、特定金属酸化物又は特定金属塩の量が増加し、得られる酸化チタン複合有機樹脂粒子との分離が困難になることがある。上記分散液中の上記金属イオンの配合量は、より好ましい下限が0.01モル%、より好ましい上限が5モル%である。
【0039】
上記分散液を調製する方法は特に限定されず、例えば、上記多孔質有機樹脂粒子を分散させた分散液と、上記金属イオンを含有する溶液とを混合する方法、上記多孔質有機樹脂粒子の乾燥体と、上記金属イオンを含有する溶液とを混合する方法、上記多孔質有機樹脂粒子を分散させた分散液と、上記金属イオンの乾燥体とを混合する方法等が挙げられる。
なお、上記分散液には、上記多孔質有機樹脂粒子の分散性を向上させるために、界面活性剤等の他の添加剤が添加されてもよい。
【0040】
第1の酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造方法では、次いで、上記金属イオンを中和、還元若しくは酸化するか、又は、上記金属イオンの溶解度を低下させることにより、上記多孔質有機樹脂粒子の細孔内に酸化チタンや、特定金属、特定金属酸化物又は特定金属塩を析出させる工程を行う。これにより、酸化チタンや、特定金属、特定金属酸化物又は特定金属塩が極めて微細に分散した酸化チタン複合有機樹脂粒子が得られる。
上記金属イオンを中和する方法は特に限定されず、例えば、塩化マグネシウム水溶液に水酸化ナトリウムを添加する、硝酸セリウムにアンモニアを添加する、炭酸ナトリウム水溶液に二酸化炭素を添加する、塩化カルシウム水溶液に炭酸ナトリウムを添加する等の酸性物質にアルカリ性物質を添加したり、アルカリ性物質に酸性物質を添加したりする方法等が挙げられる。
上記金属イオンを還元する方法は特に限定されず、例えば、アンモニア等の還元剤を反応させる方法等が挙げられる。
【0041】
第2の酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造方法では、まず、上述した多孔質有機樹脂粒子と金属アルコキシドとを共存させた分散液を調製する工程を行う。
【0042】
上記分散液中の上記多孔質有機樹脂粒子の配合量は特に限定されず、第1の酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造方法で用いられた配合量と同様の配合量を用いることができる。
【0043】
上記金属アルコキシドは、上記酸化チタン複合有機樹脂粒子に含まれる酸化チタンのほか、特定金属、特定金属酸化物又は特定金属塩を形成する金属のアルコキシドであれば特に限定されず、具体的には、例えば、チタンテトライソプロポキシド、オルトテトラケイ酸エチル等が挙げられる。
【0044】
上記分散液中の上記金属アルコキシドの配合量は特に限定されないが、好ましい下限が0.001モル%、好ましい上限が10モル%である。上記金属アルコキシドの配合量が0.001モル%未満であると、得られる酸化チタン複合有機樹脂粒子は、酸化チタンや、特定金属、特定金属酸化物又は特定金属塩の含有量が低下することがある。上記金属アルコキシドの配合量が10モル%を超えると、上記多孔質有機樹脂粒子の細孔外で析出する酸化チタンや、特定金属、特定金属酸化物又は特定金属塩の量が増加し、得られる酸化チタン複合有機樹脂粒子との分離が困難になることがある。上記分散液中の上記金属アルコキシドの配合量は、より好ましい下限が0.01モル%、より好ましい上限が5モル%である。
【0045】
上記分散液を調製する方法は特に限定されず、例えば、上記多孔質有機樹脂粒子を分散させた分散液と、上記金属アルコキシドを含有する溶液とを混合する方法、上記多孔質有機樹脂粒子の乾燥粉体と、上記金属アルコキシドを含有する溶液とを混合する方法、上記多孔質有機樹脂粒子の乾燥粉体をエタノール等の水と容易に分散する水以外の溶媒に分散させた多孔質有機樹脂粒子分散液と、上記金属アルコキシドを含有する溶液とを混合する方法等が挙げられる。
なお、上記分散液には、上記多孔質有機樹脂粒子の分散性を向上させるために、界面活性剤等の他の添加剤が添加されてもよい。
【0046】
第2の酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造方法では、次いで、上記金属アルコキシドを加水分解及び/又は脱水縮合することにより、上記多孔質有機樹脂粒子の細孔内に酸化チタンや、特定金属、特定金属酸化物又は特定金属塩を析出させる工程を行う。これにより、酸化チタンや、特定金属、特定金属酸化物又は特定金属塩が極めて微細に分散した酸化チタン複合有機樹脂粒子が得られる。
上記加水分解及び/又は脱水縮合する方法は特に限定されず、例えば、アンモニアを反応させる方法、硝酸を反応させる方法等が挙げられる。
【0047】
第1及び第2の酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造方法では、上述のようにして酸化チタン複合有機樹脂粒子を得た後、更に、得られた酸化チタン複合有機樹脂粒子に対して各工程を繰り返して行ってもよい。
より具体的には、例えば、第1の酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造方法により得られた酸化チタン複合有機樹脂粒子と、新たな金属イオンとを、水を主成分とする媒体中に共存させた分散液を調製する工程を行い、次いで、上記新たな金属イオンを中和、還元又は酸化することにより、多孔質有機樹脂粒子の細孔内に新たな酸化チタンや、特定金属、特定金属酸化物又は特定金属塩を析出させる工程を行ってもよい。
【0048】
また、第1及び第2の酸化チタン複合有機樹脂粒子では、上述のようにして酸化チタン複合有機樹脂粒子を得た後、析出した特定金属、特定金属酸化物又は特定金属塩を、更に酸化してもよい。
上記酸化する方法は特に限定されず、例えば、酸化チタン複合有機樹脂粒子を空気中で加熱する方法等が挙げられる。
【0049】
上記有機溶剤としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、テルピネオール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トルエン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアミン、ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0050】
上記酸化チタンペーストは、バインダ樹脂を含有することが好ましい。上記バインダ樹脂として、例えば、エチルセルロース等のセルロース系化合物、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエチレングリコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリ乳酸等が挙げられる。
【0051】
本発明の多孔質酸化チタン構造体の製造方法は、上記酸化チタンペーストを塗工する工程を有する。
上記酸化チタンペーストを塗工する方法としては特に限定されないが、上記酸化チタン複合有機樹脂粒子の形状を維持したまま塗工できることから、スクリーン印刷法を用いることが好ましい。
【0052】
上記スクリーン印刷工程におけるスクリーン版の目開きの大きさ、スキージアタック角、スキージ速度、スキージ押圧力等については、適宜設定することが好ましい。
【0053】
本発明の多孔質酸化チタン構造体の製造方法は、酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、多孔質酸化チタン構造体を形成する工程を有する。
【0054】
上酸化チタンペーストの乾燥及び焼成は、塗工する基板の種類等により、温度、時間、雰囲気等を適宜調整することができる。例えば、大気下又は不活性ガス雰囲気下、50〜800℃程度の範囲内で、10秒〜12時間程度行うことが好ましい。また、乾燥及び焼成は、単一の温度で1回又は温度を変化させて2回以上行ってもよい。
【0055】
本発明で得られる多孔質酸化チタン構造体を用いて光触媒を作製することができる。このようにして得られた光触媒は、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することができる。
また、本発明で得られる多孔質酸化チタン構造体は、酸化チタンが極めて微細に分散していことから、広い表面積、高い平滑性、緻密性等を有し、高い電極効率、触媒効率、透明性等を得ることができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体を作製できる多孔質酸化チタン構造体の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
(多孔質有機樹脂粒子の製造)
ジビニルベンゼン100重量部、ノルマルヘプタン30重量部、過酸化ベンゾイル1重量部を溶解させて油系溶液とし、イオン交換水900重量部、ポリビニルアルコール5重量部を溶解させた水系溶液に添加し、超音波ホモジナイザーにより10分間乳化させた後、セパラブルフラスコに乳化液を投入し、75℃で12時間反応させ、多孔質有機樹脂粒子スラリーを得た。吸引濾過により水系溶液を概略除去し、さらにイオン交換水を加え、吸引濾過を繰り返し、イオン交換水で洗浄されたウエットケーキ状の多孔質有機樹脂粒子を得た。得られたウエットケーキを70℃の熱風オーブンにて24時間乾燥させ、多孔質有機樹脂粒子を作製した。
【0059】
得られた多孔質有機樹脂粒子について、光散乱回折型粒径分布計(LA920、HORIBA社製)により測定した体積平均粒子径は、3μmであった。また、JIS K 7365に準拠して算出したかさ比重は、0.25であった。また、BET式比表面積計(Sysmex社製)により測定した比表面積は、250m/gであり、平均細孔径は、4nmであった。
【0060】
(酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造)
得られた多孔質有機樹脂粒子の乾燥粉体30重量部と、別途作製したチタンテトライソプロポキシドの80重量%エタノール溶液120重量部と混合して、分散液を調製した。この分散液に対して、アンモニアを添加することにより加水分解を行い、酸化チタンが多孔質有機樹脂粒子の細孔内に析出した酸化チタン複合有機樹脂粒子を作製した。
【0061】
(酸化チタンペーストの作製)
二酸化チタン粉末(平均粒子径15nm)の20重量%エタノール分散液25重量部、エチルセルロース(関東化学社製、EC−10)の10重量%テルピネオール分散液25重量部、テルピネオール25重量部及び得られた酸化チタン複合有機樹脂粒子0.25重量部を添加した後、3本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【0062】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストを、スクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、150℃で30分間乾燥した後、500℃で30分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した(膜厚:12μm)。
【0063】
(実施例2)
(多孔質有機樹脂粒子の製造)
トリメチロールプロパントリメタクリレート70重量部、メタクリル酸メチル30重量部、シクロヘキサン30重量部、過酸化ベンゾイル1重量部を溶解させて油系溶液とし、イオン交換水400重量部、ポリビニルアルコール1重量部を溶解させた水系溶液に添加し、ホモジナイザーにより5000回転3分間乳化させたのち、セパラブルフラスコに乳化液を投入し、75℃で8時間反応させ、多孔質有機樹脂粒子スラリーを得た。吸引濾過により、水系溶液を概略除去し、さらにイオン交換水を加え、吸引濾過を繰り返し、イオン交換水で洗浄されたウエットケーキ状の多孔質有機樹脂粒子を得た。得られたウエットケーキを70℃の熱風オーブンにて24時間乾燥させ、多孔質有機樹脂粒子を作製した。
【0064】
得られた多孔質有機樹脂粒子について、光散乱回折型粒径分布計(LA920、HORIBA社製)により測定した体積平均粒子径は、10.2μmであった。また、JIS K 7365に準拠して算出したかさ比重は、0.45であった。また、BET式比表面積計(Sysmex社製)により測定した比表面積は、128m/gであった。更に平均細孔径は、20nmであった。
【0065】
(酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造)
得られた多孔質有機樹脂粒子の乾燥粉体30重量部と、別途作製したチタンテトライソプロポキシドの80重量%エタノール溶液120重量部と混合して、分散液を調製した。この分散液に対して、アンモニアを添加することにより加水分解を行い、酸化チタンが多孔質有機樹脂粒子の細孔内に析出した酸化チタン複合有機樹脂粒子を作製した。
【0066】
(酸化チタンペーストの作製)
二酸化チタン粉末(平均粒子径40nm)の20重量%エタノール分散液25重量部、エチルセルロース(関東化学社製、EC−10)の10重量%テルピネオール分散液25重量部、テルピネオール25重量部及び得られた造孔樹脂粒子0.8重量部を添加した後、3本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【0067】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストを、スクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、150℃で30分間乾燥した後、500℃で30分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した(膜厚:20μm)。
【0068】
(実施例3)
(酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造)
実施例1で得られた酸化チタン複合有機樹脂粒子30重量部をエタノール100重量部に分散させ、硫酸パラジウム50重量部と2−アミノピリジン水溶液を加えて12時間浸漬し、硫酸パラジウム溶液を細孔内に吸収した多孔質有機樹脂粒子を作製した。得られた分散液に、ジメチルアミンボランを添加することにより還元を行い、酸化チタンとパラジウムが多孔質有機樹脂粒子の細孔内に析出した酸化チタン/パラジウム複合粒子を作製した。
【0069】
(酸化チタンペーストの作製)
二酸化チタン粉末(平均粒子径15nm)の20重量%エタノール分散液25重量部、エチルセルロース(関東化学社製、EC−10)の10重量%テルピネオール分散液25重量部、テルピネオール25重量部及び得られた造孔樹脂粒子0.3重量部を添加した後、3本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【0070】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストを、スクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、150℃で30分間乾燥した後、500℃で30分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した(膜厚:12μm)。
【0071】
(実施例4)
(多孔質有機樹脂粒子の製造)
トリメチロールプロパントリメタクリレート70重量部、メタクリル酸メチル30重量部、シクロヘキサン100重量部、過酸化ベンゾイル1重量部を溶解させて油系溶液とし、イオン交換水400重量部、ポリビニルアルコール1重量部を溶解させた水系溶液に添加し、ホモジナイザーにより5000回転3分間乳化させたのち、セパラブルフラスコに乳化液を投入し、75℃で8時間反応させ、多孔質有機樹脂粒子スラリーを得た。吸引濾過により、水系溶液を概略除去し、さらにイオン交換水を加え、吸引濾過を繰り返し、イオン交換水で洗浄されたウエットケーキ状の多孔質有機樹脂粒子を得た。得られたウエットケーキを70℃の熱風オーブンにて24時間乾燥させ、多孔質有機樹脂粒子を作製した。
【0072】
得られた多孔質有機樹脂粒子について、光散乱回折型粒径分布計(LA920、HORIBA社製)により測定した体積平均粒子径は、1.7μmであった。また、JIS K 7365に準拠して算出したかさ比重は、0.22であった。また、BET式比表面積計(Sysmex社製)により測定した比表面積は、80m/gであった。更に平均細孔径は、180nmであった。
【0073】
(酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造)
得られた多孔質有機樹脂粒子の乾燥粉体30重量部と、別途作製したチタンテトライソプロポキシドの80重量%エタノール溶液120重量部と混合して、分散液を調製した。この分散液に対して、アンモニアを添加することにより加水分解を行い、酸化チタンが多孔質有機樹脂粒子の細孔内に析出した酸化チタン複合有機樹脂粒子を作製した。
【0074】
(酸化チタンペーストの作製)
二酸化チタン粉末(平均粒子径200nm)の20重量%エタノール分散液25重量部、エチルセルロース(関東化学社製、EC−10)の10重量%テルピネオール分散液25重量部、テルピネオール25重量部及び得られた造孔樹脂粒子0.8重量部を添加した後、3本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【0075】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストを、スクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、150℃で30分間乾燥した後、500℃で30分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した(膜厚:18μm)。
【0076】
(比較例1)
(酸化チタンペーストの作製)
二酸化チタン粉末(平均粒子径15nm)の20重量%エタノール分散液25重量部、エチルセルロース(関東化学社製、EC−10)の10重量%テルピネオール分散液25重量部、テルピネオール25重量部を添加した後、3本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【0077】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストを、スクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、150℃で30分間乾燥した後、500℃で30分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した(膜厚:15μm)。
【0078】
(比較例2)
(多孔質有機樹脂粒子の製造)
トリメチロールプロパントリメタクリレート30重量部、アクリロニトリル70重量部、ノルマルヘプタン30重量部、過酸化ベンゾイル1重量部を溶解させて油系溶液とし、イオン交換水400重量部、ポリビニルアルコール1重量部を溶解させた水系溶液に添加し、ホモジナイザーにより5000回転3分間乳化させたのち、セパラブルフラスコに乳化液を投入し、75℃で12時間反応させ、多孔質有機樹脂粒子スラリーを得た。吸引濾過により、水系溶液を概略除去し、さらにイオン交換水を加え、吸引濾過を繰り返し、イオン交換水で洗浄されたウエットケーキ状の多孔質有機樹脂粒子を得た。得られたウエットケーキを70℃の熱風オーブンにて24時間乾燥させ、多孔質有機樹脂粒子を作製した。
【0079】
得られた多孔質有機樹脂粒子について、光散乱回折型粒径分布計(LA920、HORIBA社製)により測定した体積平均粒子径は、15μmであった。また、JIS K 7365に準拠して算出したかさ比重は、0.43であった。また、BET式比表面積計(Sysmex社製)により測定した比表面積は、0.8m/gであった。更に平均細孔径は、8500nmであった。
【0080】
(酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造)
得られた多孔質有機樹脂粒子を用いたこと以外は実施例2と同様にして、酸化チタンが多孔質有機樹脂粒子の細孔内に析出した酸化チタン複合有機樹脂粒子を作製した。
【0081】
(酸化チタンペーストの作製)
二酸化チタン粉末(平均粒子径40nm)の20重量%エタノール分散液25重量部、エチルセルロース(関東化学社製、EC−10)の10重量%テルピネオール分散液25重量部、テルピネオール25重量部及び得られた造孔樹脂粒子0.75重量部を添加した後、3本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【0082】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストを、スクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、150℃で30分間乾燥した後、500℃で30分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した(膜厚:12μm)。
【0083】
(比較例3)
(多孔質有機樹脂粒子の製造)
トリメチロールプロパントリメタクリレート50重量部、メタクリル酸メチル50重量部、シクロヘキサン120重量部、過酸化ベンゾイル1重量部を溶解させて油系溶液とし、イオン交換水400重量部、ポリビニルアルコール1重量部を溶解させた水系溶液に添加し、ホモジナイザーにより5000回転3分間乳化させたのち、セパラブルフラスコに乳化液を投入し、75℃で8時間反応させ、多孔質有機樹脂粒子スラリーを得た。吸引濾過により、水系溶液を概略除去し、さらにイオン交換水を加え、吸引濾過を繰り返し、イオン交換水で洗浄されたウエットケーキ状の多孔質有機樹脂粒子を得た。得られたウエットケーキを70℃の熱風オーブンにて24時間乾燥させ、多孔質有機樹脂粒子を作製した。
【0084】
得られた多孔質有機樹脂粒子について、光散乱回折型粒径分布計(LA920、HORIBA社製)により測定した体積平均粒子径は、1.9μmであった。また、JIS K 7365に準拠して算出したかさ比重は、0.28であった。また、BET式比表面積計(Sysmex社製)により測定した比表面積は、43m/gであった。更に平均細孔径は、275nmであった。
【0085】
(酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造)
得られた多孔質有機樹脂粒子の乾燥粉体30重量部と、別途作製したチタンテトライソプロポキシドの80重量%エタノール溶液120重量部と混合して、分散液を調製した。この分散液に対して、アンモニアを添加することにより加水分解を行い、酸化チタンが多孔質有機樹脂粒子の細孔内に析出した酸化チタン複合有機樹脂粒子を作製した。
【0086】
(酸化チタンペーストの作製)
二酸化チタン粉末(平均粒子径200nm)の20重量%エタノール分散液25重量部、エチルセルロース(関東化学社製、EC−10)の10重量%テルピネオール分散液25重量部、テルピネオール25重量部及び得られた造孔樹脂粒子0.7重量部を添加した後、3本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【0087】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストを、スクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、150℃で30分間乾燥した後、500℃で30分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した(膜厚:20μm)。
【0088】
(比較例4)
(有機樹脂粒子の製造)
トリメチロールプロパントリメタクリレート25重量部、メタクリル酸メチル75重量部、過酸化ベンゾイル2重量部を溶解させて油系溶液とし、イオン交換水400重量部、ポリビニルアルコール1重量部を溶解させた水系溶液に添加し、ホモジナイザーにより5000回転3分間乳化させたのち、セパラブルフラスコに乳化液を投入し、75℃で8時間反応させ、有機樹脂粒子スラリーを得た。吸引濾過により、水系溶液を概略除去し、さらにイオン交換水を加え、吸引濾過を繰り返し、イオン交換水で洗浄されたウエットケーキ状の有機樹脂粒子を得た。得られたウエットケーキを70℃の熱風オーブンにて24時間乾燥させ、有機樹脂粒子を作製した。
【0089】
得られた有機樹脂粒子について、光散乱回折型粒径分布計(LA920、HORIBA社製)により測定した体積平均粒子径は、3μmであった。また、JIS K 7365に準拠して算出したかさ比重は、0.72であった。また、BET式比表面積計(Sysmex社製)により測定した比表面積は、10m/gであった。
【0090】
(酸化チタン複合有機樹脂粒子の製造)
得られた有機樹脂粒子の乾燥粉体30重量部と、別途作製したチタンテトライソプロポキシドの80重量%エタノール溶液120重量部と混合して、分散液を調製した。この分散液に対して、アンモニアを添加することにより加水分解を行い、酸化チタンが有機樹脂粒子の表面に析出した酸化チタン複合有機樹脂粒子を作製した。
【0091】
(酸化チタンペーストの作製)
二酸化チタン粉末(平均粒子径100nm)の20重量%エタノール分散液25重量部、エチルセルロース(関東化学社製、EC−10)の10重量%テルピネオール分散液25重量部、テルピネオール25重量部及び得られた造孔樹脂粒子0.3重量部を添加した後、3本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【0092】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストを、スクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、150℃で30分間乾燥した後、500℃で30分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した(膜厚:13μm)。
【0093】
(評価)
実施例、比較例で得られた多孔質有機樹脂粒子、多孔質酸化チタン構造体について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
(1)酸化チタン及びその他の金属の粒子径
得られた酸化チタン複合有機樹脂粒子をエポキシ樹脂に包埋し、ウルトラミクロトームで断面切片を採取し、TEM/EDS装置にて元素マッピング画像を得た。得られた元素マッピング画像10点について酸化チタン及びその他の金属の個数平均粒子径を算出することにより、酸化チタン及びその他の金属の粒子径を評価した。
【0095】
(2)多孔質酸化チタン構造体の比表面積測定
得られた多孔質酸化チタン構造体の比表面積を、BET式比表面積計(Sysmex社製 AUTOSORBシリーズ)を用いて測定した。
【0096】
(3)光触媒性能
得られた多孔質酸化チタン構造体について、光触媒性能評価試験法IIaガスバックA法(光触媒製品技術協議会)に準拠した方法によって光触媒性能を求めた。なお、この方法では、アセトアルデヒドの分解活性を指標とする。
【0097】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明によれば、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体を作製できる多孔質酸化チタン構造体の製造方法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン粒子、酸化チタン複合有機樹脂粒子、及び、有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程、
前記酸化チタンペーストを塗工する工程、及び、
前記酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、多孔質酸化チタン構造体を形成する工程を有し、
前記酸化チタン複合有機樹脂粒子は、酸化チタンを多孔質有機樹脂粒子の細孔内に有し、前記多孔質有機樹脂粒子は、平均細孔径が200nm以下である
ことを特徴とする多孔質酸化チタン構造体の製造方法。
【請求項2】
酸化チタン複合有機樹脂粒子における酸化チタンの含有量は、酸化チタン複合有機樹脂粒子全体の5〜90重量%であることを特徴とする請求項1記載の多孔質酸化チタン構造体の製造方法。
【請求項3】
酸化チタン複合有機樹脂粒子は、更に、周期律表2a〜4b族のうちの少なくとも1種の金属、又は、該金属からなる金属酸化物若しくは金属塩を有することを特徴とする請求項1又は2記載の多孔質酸化チタン構造体の製造方法。
【請求項4】
多孔質有機樹脂粒子は、平均粒子径が0.5〜50μmであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の多孔質酸化チタン構造体の製造方法。
【請求項5】
多孔質有機樹脂粒子は、かさ比重が0.01〜0.60であり、かつ、比表面積が100m/g以上であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の多孔質酸化チタン構造体の製造方法。

【公開番号】特開2012−66988(P2012−66988A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215771(P2010−215771)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】