説明

多孔質金属粒子及びその製造方法

【課題】比表面積が大きく、且つ粒子径が小さな多孔質金属粒子であって、容易に製造可能な多孔質金属粒子を提供する。
【解決手段】多孔質金属粒子1は、粒子本体10と、めっき膜11とを備えている。めっき膜11は、粒子本体10の表面上に設けられている。めっき膜11には、複数の凹部12が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質金属粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質金属粒子は、化学反応で使用される触媒や、改質触媒等として有用である。例えば下記の特許文献1には、多孔質金属粒子の製造方法として、ポリビニルアルコールのような有機化合物に金属を吸着させた後、有機化合物を加熱焼失させることにより多孔質金属粒子を得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−225704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法では、比表面積が十分に大きく、かつ粒子径が小さな多孔質金属粒子を製造することは困難である。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比表面積が大きく、且つ粒子径が小さな多孔質金属粒子であって、容易に製造可能な多孔質金属粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る多孔質金属粒子は、粒子本体と、めっき膜とを備えている。めっき膜は、粒子本体の表面上に設けられている。めっき膜には、複数の凹部が形成されている。
【0007】
なお、本発明において、「金属」には、「合金」が含まれるものとする。
【0008】
本発明に係る多孔質金属粒子のある特定の局面では、凹部は、円錐状または円錐台状である。
【0009】
本発明に係る多孔質金属粒子の他の特定の局面では、複数の凹部は、粒子本体の表面における直径が異なる複数種類の凹部を含む。
【0010】
本発明に係る多孔質金属粒子の別の特定の局面では、粒子本体は、金属からなる。
【0011】
本発明に係る多孔質金属粒子のさらに他の特定の局面では、粒子本体は、ニッケルまたはニッケル合金からなる。
【0012】
本発明に係る多孔質金属粒子のさらに別の特定の局面では、めっき膜は、ニッケルまたはニッケル合金からなる。
【0013】
本発明に係る多孔質金属粒子のさらにまた他の特定の局面では、多孔質金属粒子は、球状である。
【0014】
本発明に係る多孔質金属粒子のさらにまた別の特定の局面では、めっき膜は、無電解めっき膜または電解めっき膜により構成されている。
【0015】
ここで、「電解めっき膜」とは、電解めっき法により形成されためっき膜をいう。
【0016】
「無電解めっき膜」とは、無電解めっき法により形成されためっき膜をいう。
【0017】
本発明に係る多孔質金属粒子のまたさらに他の特定の局面では、粒子本体とめっき膜とが同じ材料からなり、一体化されている。
【0018】
本発明に係る多孔質金属粒子の製造方法は、上記本発明に係る多孔質金属粒子の製造方法に関する。本発明に係る多孔質金属粒子の製造方法では、無電解めっき法または電解めっき法によって、粒子本体の上にめっき膜を形成する。
【0019】
本発明に係る多孔質金属粒子の製造方法のある特定の局面では、ノニオン系界面活性剤を含むニッケルめっき浴を用いて無電解めっき法または電解めっき法によりめっき膜を形成する。
【0020】
本発明に係る多孔質金属粒子の製造方法の他の特定の局面では、ノニオン系界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルアミンを用いる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、比表面積が大きく、且つ粒子径が小さな多孔質金属粒子であって、容易に製造可能な多孔質金属粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る多孔質金属粒子の模式的平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る多孔質金属粒子の模式的断面図である。
【図3】実験例1において作製された多孔質金属粒子のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0024】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0025】
図1は、本実施形態に係る多孔質金属粒子の模式的平面図である。図2は、本実施形態に係る多孔質金属粒子の模式的断面図である。
【0026】
多孔質金属粒子1は、球状である。図2に示すように、多孔質金属粒子1は、粒子本体10と、めっき膜11とを備えている。粒子本体10は、めっき膜11のシードとなる部材である。粒子本体10の形状は、特に限定されないが、例えば、球状であることが好ましい。球状の粒子本体10を用いることにより、球状の多孔質金属粒子1を得ることができる。
【0027】
粒子本体10の直径は、製造しようとする多孔質金属粒子1の直径に応じて適宜設定することができる。粒子本体10の直径は、例えば、1nm〜10μm程度とすることができる。
【0028】
粒子本体10は、金属からなることが好ましく、ニッケルまたはニッケル合金からなることがより好ましい。もっとも、粒子本体10は、例えば、表面が金属膜によりコーティングされた無機酸化物粒子や有機粒子により構成することもできる。なお、ニッケル合金の具体例としては、例えば、ニッケル−リン合金、ニッケル−タングステン−リン合金、ニッケル−モリブデン−リン合金等が挙げられる。
【0029】
めっき膜11は、粒子本体10の表面上に設けられている。粒子本体10は、めっき膜11により被覆されている。めっき膜11の厚みは、特に限定されないが、例えば、1μm〜10μmとすることができる。
【0030】
めっき膜11は、ニッケルまたはニッケル合金からなることが好ましい。この場合、多孔質金属粒子1にニッケル触媒としての機能を付与することができる。なお、ニッケル合金の具体例としては、例えば、ニッケル−リン合金、ニッケル−タングステン−リン合金、ニッケル−モリブデン−リン合金等が挙げられる。
【0031】
めっき膜11と粒子本体10とは、同じ材料からなるものであってもよく、その場合、めっき膜11と粒子本体10とは一体化されていてもよい。
【0032】
なお、めっき膜11は、無電解めっき膜であってもよいし、電解めっき膜であってもよい。
【0033】
めっき膜11には、複数の凹部12が形成されている。凹部12は、粒子本体10に至らないものであってもよいし、粒子本体10に至る貫通孔であってもよい。
【0034】
凹部12は、円錐状または円錐台状である。自動車、ガスタービンや高温ガス浄化などの用途で使われる触媒として使用した場合、ダストや粒状物質などが触媒細孔の目詰まりを引き起こすことがあるが、凹部12が、円錐状または円錐台状であるため、目詰まりを抑制することができ、触媒能の低下を抑制できる。
【0035】
複数の凹部12には、直径の異なる複数種類の凹部が含まれている。このため、粒子の比表面積を大きくできるため、反応性、触媒活性などが向上する。
【0036】
凹部12の粒子表面における直径は、特に限定されないが、例えば、数十nm〜1μm程度とすることができる。
【0037】
本実施形態の複数の凹部12が形成されており比表面積が大きな多孔質金属粒子1であれば、粒子本体10に、無電解めっき法または電解めっき法によってめっき膜11を形成することにより容易に製造することができる。好適な凹部12を形成する観点からは、ノニオン系界面活性剤を含むニッケルめっき浴を用いてめっき膜11を形成することが好ましい。好ましく用いられるノニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルアミンが挙げられる。
【0038】
多孔質金属粒子1は、ゼオライト、シリカ−アルミナ、アルミナ等からなる担体に担持させることにより、ニッケル触媒として用いることができる。多孔質金属粒子1の比表面積が大きいため、触媒能に優れた触媒を得ることができる。
【0039】
なお、ニッケル触媒は、クロスカップリング反応や、水素改質、水を原料とした水素製造に広く使用されている。
【0040】
多孔質金属粒子1の担持方法としては、例えば以下の方法が例示される。
【0041】
1)含浸担持法:ニッケルあるいはニッケルと添加成分の溶液を担体に含浸させる方法
2)共沈法:ニッケルあるいはニッケルと添加成分の溶液と担体成分を溶解した溶液を混合し、これに、沈殿剤を加え分解する方法
3)沈着法:ニッケルあるいはニッケルと添加成分の溶液に担体を浸漬した後、撹拌しながら沈殿剤を加え、担体上にニッケルと添加成分の沈殿を作る方法
4)混練法:ニッケルあるいはニッケルと添加成分の溶液に沈殿剤を加え沈殿を作った後、これに担体の粉末,ヒドロゲル、ヒドロゾルを加えて混練する方法
【0042】
(実施例1)
粒子径が50nmのニッケル粉末を、アセチレン基含有ジオール化合物を1g/Lと、ノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルアミン)を1g/L添加したニッケルめっき浴(上村工業社製 ニムデンKPR−11、pH:6.5、浴温:80℃)に浸漬することによりニッケル粉末の表面上にニッケルからなるめっき膜を形成し、多孔質ニッケル粒子を作製した。図3に、実験例1において作製された多孔質金属粒子のSEM写真を示す。
【0043】
図3に示すSEM写真から、めっき膜に、直径が相互に異なる複数種類の円錐状または円錐台状の凹部が形成されていることが分かる。
【0044】
(実施例2)
水酸化ナトリウム10g、80%抱水ヒドラジン25g、アセチレン基含有ジオール化合物1g、及びノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルアミン)1gを、純水500mlに溶解して、還元剤溶液を調製した。一方、塩化ニッケル25gを純水500mlに溶解して、金属塩溶液を調製した。
【0045】
次いで、上記双方の溶液の温度を60℃にしながら、還元剤溶液中に、金属塩溶液を投入した。これによって、ニッケル粉末の沈殿を生成させた後、ニッケル粉末を分離・回収し、純水およびアセトンでそれぞれ順次洗浄し、次いで、オーブン中で乾燥した。このようにして得られたニッケル粉末を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、多孔質ニッケル粒子が得られていることが確認された。
【符号の説明】
【0046】
1…多孔質金属粒子
10…粒子本体
11…めっき膜
12…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子本体と、
前記粒子本体の表面上に設けられためっき膜と、
を備え、
前記めっき膜に複数の凹部が形成されている、多孔質金属粒子。
【請求項2】
前記凹部は、円錐状または円錐台状である、請求項1に記載の多孔質金属粒子。
【請求項3】
前記複数の凹部は、前記粒子本体の表面における直径が異なる複数種類の凹部を含む、請求項1または2に記載の多孔質金属粒子。
【請求項4】
前記粒子本体は、金属からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質金属粒子。
【請求項5】
前記粒子本体は、ニッケルまたはニッケル合金からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質金属粒子。
【請求項6】
前記めっき膜は、ニッケルまたはニッケル合金からなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多孔質金属粒子。
【請求項7】
球状である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多孔質金属粒子。
【請求項8】
前記めっき膜は、無電解めっき膜または電解めっき膜により構成されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多孔質金属粒子。
【請求項9】
前記粒子本体と前記めっき膜とが同じ材料からなり、一体化されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多孔質金属粒子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の多孔質金属粒子の製造方法であって、
無電解めっき法または電解めっき法によって、前記粒子本体の上に前記めっき膜を形成する、多孔質金属粒子の製造方法。
【請求項11】
ノニオン系界面活性剤を含むニッケルめっき浴を用いて無電解めっき法または電解めっき法により前記めっき膜を形成する、請求項10に記載の多孔質金属粒子の製造方法。
【請求項12】
前記ノニオン系界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルアミンを用いる、請求項11に記載の多孔質金属粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−14813(P2013−14813A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149897(P2011−149897)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】