説明

多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料および光電気セル

【課題】多孔性を有する半導体膜を形成可能な多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料を提供する。
【解決手段】平均粒子径が5〜300nmの範囲にある金属酸化物微粒子と、水および有機溶媒の混合溶媒とからなり、該混合溶媒がエマルジョンを形成していることを特徴とする多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。前記混合溶媒中の水の含有量が0.5〜6.5重量%の範囲にあるか、あるいは有機溶媒の含有量が0.5〜6.5重量%の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料および該塗料を用いて形成された多孔質金属酸化物半導体膜を有する光電気セルとに関する。
【背景技術】
【0002】
高バンドギャップを有する金属酸化物半導体材料が光電変換材料、光触媒材料等の他光センサーや蓄電材料(バッテリー)等に用いられている。
このうち、光電変換材料は光エネルギーを電気エネルギーとして連続して取り出せる材料であり、電極間の電気化学反応を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する材料である。このような光電変換材料に光を照射すると、一方の電極側で電子が発生し、対電極に移動し、対電極に移動した電子は、電解質中をイオンとして移動して一方の電極に戻る。このエネルギー変換は連続であるため、たとえば、太陽電池などに利用されている。
【0003】
一般的な太陽電池は、先ず透明性導電膜を形成したガラス板などの支持体上に光電変換材料用半導体の膜を形成して電極とし、次に、対電極として別の透明性導電膜を形成したガラス板などの支持体を備え、これらの電極間に電解質を封入して構成されている。
【0004】
光電変換材料用半導体膜に吸着した光増感材に例えば太陽光を照射すると、光増感材は可視領域の光を吸収して励起する。この励起によって発生する電子は半導体に移動し、次いで、透明導電性ガラス電極に移動し、2つの電極を接続する導線を通って対電極に移動し、対電極に移動した電子は電解質中の酸化還元系を還元する。一方、半導体に電子を移動させた光増感材は、酸化体の状態になっているが、この酸化体は電解質中の酸化還元系によって還元され、元の状態に戻る。このようにして電子が連続的に流れ、光電変換材料は太陽電池として機能する。
【0005】
この光電変換材料としては、半導体膜表面に可視光領域に吸収を持つ分光増感色素を吸着させたものが用いられている。たとえば、特開平1−220380号公報(特許文献1)には、金属酸化物半導体膜の表面に、ルテニウム錯体などの遷移金属錯体からなる分光増感色素層を有する太陽電池が記載されている。また、特表平5−504023号公報(特許文献2)には、金属イオンでドープした酸化チタン半導体層の表面に、ルテニウム錯体などの遷移金属錯体からなる分光増感色素層を有する太陽電池が記載されている。
【0006】
このような半導体膜の形成は、チタニアゾル等の微細粒子からなる塗料を電極基板上に塗布し、乾燥し、ついで、焼成する工程を繰り返して行い多孔質の厚膜を形成する方法が一般的である。
【特許文献1】特開平1−220380号公報
【特許文献2】特表平5−504023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光増感材の吸着量の高く、光電変換効率を高めようとすると、比較的微粒の金属酸化物粒子を用いることが望まれるが、しかしながら、微細粒子を用いると、細孔径および細孔容積が小さくなり、さらに焼結しやすくなるため、得られる半導体膜の細孔径および細孔容積が小さくなってしまい、このため電解質の拡散が不充分となるため光電変換効率が不満足なものであった。
【0008】
一方、細孔径、細孔容積を大きくするために粒子径の大きな微粒子を用いると光増感材の吸着量が低下し、光電変換効率が低下する問題があった。また、粒子径が大きすぎると半導体膜の強度が低下したり、クラックが入り易くなる等の問題があった。
【0009】
このため、微細な粒子を使用しても多孔性を有する半導体膜を形成することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点に鑑み本発明者等は鋭意検討した結果、溶媒として水と有機溶媒との混合溶媒を用い、ミクロエマルジョンを形成させた多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料を用いると、ミクロエマルジョンによって、粒子を均一に分散できるだけではなく、膜の細孔径および細孔容積を大きくでき、しかも強度を低下させないことを見出して本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の構成は以下の通りである。
[1] 平均粒子径が5〜300nmの範囲にある金属酸化物微粒子金属酸化物微粒子と、水および有機溶媒の混合溶媒とからなり、
該混合溶媒がエマルジョンを形成している多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。
[2]前記混合溶媒中の水の含有量が0.5〜6.5重量%の範囲にあるか、あるいは有機
溶媒の含有量が0.5〜6.5重量%の範囲にある[1]の多孔質金属酸化物半導体膜形成
用塗料。
[3]前記有機溶媒が水と相溶性のないアルコール類、ケトン類、グリコール類、エーテル
類から選ばれる1種以上である[1]または[2]の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。
[4]エマルジョン安定化剤として界面活性剤を含み、混合溶媒中の該界面活性剤の含有量
が0.5〜5.0重量%の範囲にある[1]〜[3]の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。[5]前記金属酸化物粒子が、酸化チタン、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオビ
ウム、酸化タングステン、酸化ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムからなる群から選ばれる1種以上である[1]〜[4]の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。[6]前記金属酸化物粒子が結晶性酸化チタンである[5]の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。
[7]さらに増粘剤を含み、該増粘剤の含有量が0.1〜15重量%の範囲にある[1]〜[6]
の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。
[8]表面に電極層(1)を有し、かつ該電極層(1)表面に光増感材を吸着した多孔質金属酸化
物半導体膜(1)が形成されてなる基板(1)と、
表面に電極層(2)を有する基板(2)とが、
前記電極層(1)および電極層(2)が対向するように配置してなり、
多孔質金属酸化物半導体膜(1)と電極層(2)との間に電解質層を設けてなる光電気セルにおいて、
多孔質金属酸化物半導体膜(1)が、[1]〜[7]の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料を
用いて形成されてなることを特徴とする光電気セル。
[9]多孔質金属酸化物半導体膜(1)の細孔容積が0.30〜0.60ml/gの範囲にあり、平均細孔径が10〜50nmの範囲にある[8]の光電気セルの製造方法。
[10]前記電極層(1)と多孔質金属酸化物半導体膜(1)との間にペルオキソチタン酸に由来する酸化チタン薄膜(1)を設けてなる[8]または[9]の光電気セル。
[11]前記酸化チタン薄膜(1)の膜厚が10〜70nmの範囲にあり、細孔容積が0.01
〜0.20ml/gの範囲にあり、平均細孔径が0.5〜5.0nmの範囲にある[8]〜[10]の光電気セル。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料中の水および有機溶媒の混合溶
媒がエマルジョンを形成している。このエマルジョンが、塗料を塗布した後、乾燥、過熱時に蒸散し、細孔を生じる。このように細孔が形成されていれば、光増感材の吸着量の高い比較的微粒の金属酸化物粒子を用いても電解質の拡散に有効な平均細孔径を有し、且つ細孔容積の大きな多孔質金属酸化物半導体膜を形成することができる。これにより、充分にバックカレントを抑制することができ、光電変換効率に優れた光電気セルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、まず、本発明に係る多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料について説明する。
[多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料]
本発明に係る多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料は、金属酸化物微粒子と水および有機溶媒の混合溶媒とからなり、該混合溶媒がエマルジョンを形成していることを特徴としている。
【0014】
金属酸化物微粒子
本発明に用いる金属酸化物粒子としては、光電気セル用金属酸化物半導体膜に用いることのできる従来公知の金属酸化物粒子を用いることができる。
【0015】
具体的には酸化チタン、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオビウム、酸化タングステン、酸化ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムの1種または2種以上の金属酸化物粒子が好ましい。
【0016】
中でもアナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン等の結晶性の酸化チタンが好ましく、中でもアナタース型酸化チタンは所望の粒子径の粒子が得やすく、光電変換効率も高いので好適に用いることができる。
【0017】
金属酸化物粒子の平均粒子径は、5〜300nm、さらには10〜200nmの範囲にあることが好ましい。
この範囲あれば、膜強度も高く、また、光増感剤の吸着量も大きいので、光電変換効率を高くすることができる。
【0018】
金属酸化物粒子の前記下限未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても塗料中で凝集したり、結晶性が低いために電子移動が困難であったりするため光電変換効率が不充分になったり、半導体膜の強度が不充分となることがある。金属酸化物粒子の平均粒子径が大きすぎると、得られる半導体膜の酸化チタン粒子の結合(接合ともいう)小さくなるとともに、加熱処理時の結合が低く不充分となり、強度が不充分となることがあり、また、光増感材の吸着量が低下するために光電変換効率が低下する傾向がある。
【0019】
溶媒
本発明に係る多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料の溶媒には水および有機溶媒の混合溶媒を用いる。
【0020】
有機溶媒としては水と相溶性のないアルコール類、ケトン類、グリコール類、エーテル類から選ばれる1種以上であることが好ましい。
アルコールとしては沸点がブタノール以上のものが好ましく、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、テルピネオール、ジヒドロターピネオール等のアルコール類;ヘキシレングリコール等のグリコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエ
チルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等のエーテル類;酢酸プルピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールモノアセタート等のエステル類;メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル等のケトン類等が挙げられる。
【0021】
なかでも、テルピネオール、ヒジドロターピネオール、ブチルカルビトール等は蒸気圧が低く、高沸点であるため、スクリーン印刷用の塗料として好ましい。
水と有機溶媒の混合溶媒は塗料中でエマルジョンを形成している。
【0022】
エマルジョンにはオイル中に水滴が分散したW/O型エマルジョンと水中に油滴が分散したO/W型エマルジョンがあり、本発明ではいずれも用いることができる。
W/O型エマルジョンの場合、混合溶媒中の水の含有量は0.5〜6.5重量%、さらには1〜5重量%の範囲にあることが好ましい。この範囲にあると、エマルジョンが安定に存在でき、また、半導体膜の細孔径や細孔容積を大きくすることが可能となる。なお混合溶媒中の水含有量が少なすぎるとエマルジョンの効果が得られにくく、すなわち、金属酸化物微粒子の粒子径が小さくても細孔容積および/または平均細孔径の大きな多孔質金属酸化物半導体膜が得られない場合がある。混合溶媒中の水含有量が大きすぎても(ただし、O/W型エマルジョンの場合を除く)、エマルジョン中の水分量が多く、乾燥時の蒸発に伴い収縮がおこり、多孔質金属酸化物半導体膜の強度が不充分となる場合がある。
【0023】
また、O/W型エマルジョンの場合、混合溶媒中の有機溶媒の含有量は0.5〜6.5重量%、さらには1〜5重量%の範囲にあることが好ましい。この範囲にあると、エマルジョンが安定に存在でき、また、半導体膜の細孔径や細孔容積を大きくすることが可能となる。混合溶媒中の有機溶媒の含有量が少ないとエマルジョンの効果が得られにくく、すなわち、金属酸化物微粒子の粒子径が小さくても細孔容積および/または平均細孔径の大きな多孔質金属酸化物半導体膜が得られない場合がある。有機溶媒の含有量が多すぎると、エマルジョン中の有機溶媒の比率が高いため、乾燥時に急激な蒸発等が起こり、この場合も多孔質金属酸化物半導体膜の強度が不充分となる場合がある。
【0024】
エマルジョンは、その大きさが5〜50nm、さらには8〜30nmの範囲にあるミクロエマルジョンであることが好ましい。この範囲にあると、エマルジョンを使用する効果が高く、多孔質金属酸化物半導体膜の平均細孔径を大きくしたり、細孔容積を大きくでき、電解質の拡散、色素吸着等に有効な細孔を形成できる。エマルジョンの大きさが小さすぎると、本発明のエマルジョンを形成する効果、即ち得られる多孔質金属酸化物半導体膜の平均細孔径を大きくする効果が得られず、電解質の拡散、色素吸着等に有効な細孔径の細孔を形成することができないために、光電変換効率の向上が不充分となる場合がある。エマルジョンの大きさが大きすぎると、得られる多孔質金属酸化物半導体膜の細孔径が大きくなり過ぎ、半導体膜の強度が低下したり、クラックが発生する場合がある。
【0025】
このようなエマルジョンの大きさは動的光散乱法により測定することができる。なお、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料中のエマルジョンの大きさは測定することが困難であるので、通常は、上記金属酸化物粒子と混合する前のエマルジョンの大きさを測定する。
【0026】
本発明では、細孔径を大きくするには、エマルジョンの大きさを大きくすればよく、細孔容積を多くするには、有機溶媒リッチのエマルジョンでは水含有量、水リッチのエマル
ジョンでは有機溶媒含有量を多くすればよい。
【0027】
本発明の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料にはエマルジョン安定化剤として界面活性剤を含むことが好ましい。
この時の界面活性剤としては、親水性基および疎水性基を有する界面活性剤を用いる。
【0028】
例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ポリグリセリンエステル、脂肪酸ショ糖エステル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド等が挙げられる。
【0029】
界面活性剤の含有量は、混合溶媒中に5重量%以下、さらには0.5〜4重量%の範囲にあることが好ましい。この範囲で使用すると、エマルジョンが安定化しており、所望の細孔容積や平均細孔径を達成できる上、界面活性剤が細孔形成を阻害することもない。
【0030】
界面活性剤の含有量が少なすぎると、十分なエマルジョンが形成できない場合や、できたとしても不安定で、得られる多孔質金属酸化物半導体膜にクラック等が発生する場合がある。
【0031】
界面活性剤の含有量が5重量%を越えると、界面活性剤の量が多すぎ、エマルジョンによる細孔容積および平均細孔径の制御が困難となる。
さらに、本発明の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料には増粘剤を含むことが好ましい。
【0032】
増粘剤としては、ポリエチレンオキサイド、ポリアセチレン、ポリビニルピロリドン、ポリピロール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ケトン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。このような増粘剤が多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料中に含まれていると、塗料の粘度が高くなり、これにより均一に塗布することができる。
塗料中の増粘剤の含有量は増粘剤の種類によっても異なるが15重量%以下、さらには0.1〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
【0033】
増粘剤が少ないと、前記増粘効果が不充分であり、増粘剤が多すぎると、乾燥―焼成後に増粘剤が半導体膜内に残存し、電子の移動を妨げるなどの理由より、充分な光電変換効率の向上効果が得られないことがある。
【0034】
エマルジョンの作製方法としては、特に制限されないが、所定範囲となるように、水と有機溶媒とを混合し、攪拌(機械的に混合)するなどの方法を採用できる。
塗料の調製
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料は、前記各原料を所定量配合し、機械的に混合することによって調製することができる。
【0035】
粒子とエマルジョンとの混合条件は使用する各原料の種類、配合量、塗料の濃度等によって異なるが、前記エマルジョンを形成し、得られる半導体膜の平均細孔径、細孔容積が前記範囲となるように行う。
【0036】
混合方法としては、ボールミル、ペイントシェイカー、ロールミル、3本ロール、自転公転ミキサー等の装置を用い、混合条件としては塗料中へマイクロエマルジョンを含む溶媒が良く分散できる条件で実施すればよい。
【0037】
なお、本発明では、水と有機溶媒を所定比で混合し、好ましくは界面活性剤を添加し、機械的に混合して予めエマルジョンを調製したもの金属酸化物粒子分散液等と混合し、さらに機械的に混合することが好ましい。この場合、均一な大きさのエマルジョンが形成されるためか、得られる多孔質金属酸化物半導体膜の細孔径分布が均一になり、電解質の拡散に有効で、かつ、色素吸着等に有効な細孔径の細孔が形成される傾向がある。
【0038】
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料中の金属酸化物粒子の濃度は固形分として5〜35重量%、さらには7〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
前記固形分濃度が薄すぎると、所望の厚さの多孔質金属酸化物半導体膜を形成できない場合があり、繰り返し半導体膜形成操作が必要となることがある。固形分濃度が高すぎると、分散液の粘度が高くなりすぎて、得られる多孔質金属酸化物半導体膜の緻密度が低下し、半導体膜の強度、耐摩耗性が不充分となることがある。
【0039】
このような塗料は、光電気セルの多孔質半導体膜形成用に使用される。
つぎに、本発明に係る光電気セルについて説明する。
[光電気セル]
本発明に係る光電気セルは、表面に電極層(1)を有し、かつ該電極層(1)表面に光増感材を吸着した多孔質金属酸化物半導体膜(1)が形成されてなる基板(1)と、
表面に電極層(2)を有する基板(2)とが、
前記電極層(1)および電極層(2)が対向するように配置してなり、
多孔質金属酸化物半導体膜(1)と電極層(2)との間に電解質層を設けてなる光電気セルにおいて、
多孔質金属酸化物半導体膜(1)が、前記多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料を用いて
形成されたことを特徴としている。
【0040】
本発明に係る光電気セルとしては、たとえば、図1に示すものが挙げられる。
図1は、本発明の光電気セルの1例を示す概略断面図であり、表面に電極層(1)を有し
、必用に応じて該電極層(1)上に酸化チタン薄膜(1)を有し、電極層(1)上、あるいは酸化
チタン薄膜(1)上に光増感材を吸着した多孔質金属酸化物半導体膜(1)が形成されてなる基板(1)と、表面に電極層(2)を有する基板(2)とが、前記電極層(1)および電極層(2)が対向
するように配置してなり、多孔質金属酸化物半導体膜(1)と電極層(2)との間に電解質が封入されている。
【0041】
図1中、1は電極層(1)、2は半導体膜(1)、3は電極層(2)、4は電解質層(2)、5は基板(1)、6は基板(2)、7は酸化チタン薄膜(1)を示す。
なお、本発明に係る光電気セルは図示した光電気セルに限定されるものではなく、半導体膜を2層以上有し、この間に別の電極層および電解質層を設けた光電気セルであってもよい。
【0042】
基板
一方の基板としてはガラス基板、PET等の樹脂フィルム基板等の透明でかつ絶縁性を有する基板を用いることができる。
【0043】
他の一方の基板としては使用に耐える強度を有していれば特に制限はなく、ガラス基板、PET等の樹脂フィルム基板等の絶縁性基板の他に、金属チタン、金属アルミニウム、金属銅、金属ニッケルなどの導電性基板を使用することができる。
【0044】
本発明では、電極層(1)を形成する基板として、少なくとも一方の基板に樹脂フィルム
を用いることができる。
基板が樹脂フィルムであると、ガラス基盤を用いる場合より、基材自体が安価であることに加え、連続生産が可能であることから経済性に優れており、さらに、軽量の太陽電池がとなり、持運びが容易となるため、モバイル用等に適している。
【0045】
樹脂フィルムとしては、PENフィルム、PETフィルム等従来公知の樹脂フィルムが挙げられる。また、基板は少なくとも一方が透明であればよい。
電極層
基板(1)表面に形成された電極層(1)としては、酸化錫、Sb、FまたはPがドーピングされた酸化錫、Snおよび/またはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、貴金属等などの従来公知の電極を使用することができる。
【0046】
このような電極層(1)は、熱分解法、CVD法などの従来公知の方法により形成するこ
とができる。
また、他の一方の基板(2)表面に形成された電極層(2)としては、還元触媒能を有するものであれば特に制限されるものでなく、白金、ロジウム、ルテニウム金属、ルテニウム酸化物等の電極材料、酸化錫、Sb、FまたはPがドーピングされた酸化錫、Snおよび/またはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモンなどの導電性材料の表面に前記電極材料をメッキあるいは蒸着した電極、カーボン電極など従来公知の電極を用いることができる。
【0047】
このような電極層(2)は、基板(2)上に前記電極を直接コーティング、メッキあるいは蒸着させて、導電性材料を熱分解法、CDV法等の従来公知の方法により導電層を形成した後、該導電層上に前記電極材料をメッキあるいは蒸着するなど従来公知の方法により形成することができる。
【0048】
なお、基板(2)は、基板(1)と同様に透明基板であってもよく、また電極層(2)は、電極
層(1)と同様に透明電極であってもよい。さらに、基板(2)は基板(1)と同じものであって
もよく、電極層(2)は電極層(1)と同じものであってもよい。
【0049】
透明基板(1)と透明電極層(1)の可視光透過率は高い方が好ましく、具体的には50%以上、特に好ましくは90%以上であることが望ましい。可視光透過率が50%未満の場合は光電変換効率が低くなることがある。
【0050】
電極層(1)および電極層(2)の抵抗値は、各々100Ω/cm2以下であることが好まし
い。電極層の抵抗値が100Ω/cm2を超えて高くなると光電変換効率が低くなること
がある。
【0051】
酸化チタン薄膜
本発明において、必要に応じて電極層(1)上に酸化チタン薄膜(1)を形成することができ、この酸化チタン薄膜(1)は増粘剤を含むペルオキシチタン酸水溶液を用いて形成された
ものであり、緻密な膜である。
【0052】
酸化チタン薄膜(1)は膜厚が10〜70nm、さらには20〜40nmの範囲にあるこ
とが好ましい。酸化チタン薄膜(1)の膜厚が薄いと、酸化チタン膜(1)による暗電流の抑制、電子の再結合の抑制が不充分となる。酸化チタン薄膜(1)の膜厚が厚すぎると、エネル
ギー障壁が大きくなりすぎて電子の移動が抑制され、逆に光電変換効率が低下することがある。
【0053】
また、酸化チタン薄膜(1)は細孔容積が0.01〜0.20ml/g、さらには0.0
2〜0.15ml/gの範囲にあることが好ましい。細孔容積が前記上限よりも多いと、
緻密性が低下してしまい、電解液と電極との接触が起こり、電子の逆流、電子の再結合の抑制効果が不充分となることがある。なお、スパッタリングなどの方法でも、緻密な酸化チタン薄膜を得ることは可能であるが、緻密すぎて電子の移動を阻害したり、後に形成する多孔質金属酸化物半導体膜との密着性が不充分となることがある。
【0054】
酸化チタン薄膜(1)は平均細孔径が0.5〜5.0nm、さらには1.0〜3.5nm
の範囲にあることが好ましい。酸化チタン薄膜(1)の平均細孔径が前記上限よりも大きい
ものは、電解液と電極との接触が起こり、電子の逆流、電子の再結合の抑制効果が不充分となることがある。
【0055】
このような酸化チタン薄膜(1)は、電極層(1)上に増粘剤を含むペルオキシチタン酸水溶液を、(A)スピンコート法、(B)ディップコート法、(C)フレキソ印刷法、(D)ロールコーター法、(E)電気泳動法から選ばれる1種以上の方法で塗布し、従来公知の方法で乾燥し、
硬化させることにより形成することができる。
【0056】
酸化チタン薄膜(1)の形成に用いるペルオキシチタン酸水溶液の濃度はTiO2として0
.1〜2.0重量%、さらには0.3〜1.0重量%の範囲にあることが好ましい。ペルオキシチタン酸水溶液の濃度が薄いと、所望の膜厚の酸化チタン薄膜(1)が得られないこ
とがあり、繰返し塗布、乾燥を行う必要が生じる。ペルオキシチタン酸水溶液の濃度が薄いと、乾燥時にクラックが生じたり、緻密な膜を形成できないことがあり、暗電流の抑制、電子の再結合の抑制効果が得られないことがある。
【0057】
ここで、ペルオキシチタン酸とは過酸化水和チタンをいい、たとえば、チタン化合物の水溶液、または水和酸化チタンのゾルまたはゲルに過酸化水素を加えて加熱することによって調製することができる。具体的には、まず、チタン化合物を加水分解してオルソチタン酸のゾルまたはゲルを調製する。
【0058】
オルソチタン酸のゲルは、チタン化合物として塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルなどのチタン塩を使用し、この水溶液にアルカリを加えて中和し、洗浄することによって得ることができる。また、オルソチタン酸のゾルは、チタン塩の水溶液をイオン交換樹脂に通して陰イオンを除去するか、あるいはチタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシドなどのチタンアルコキシドの水および/または有機溶媒に酸またはアルカリを加えて加水分解することによって得ることができる。
【0059】
中和あるいは加水分解する際のチタン化合物の溶液のpHは7〜13の範囲にあることが好ましい。チタン化合物溶液のpHが上記範囲にあるとオルソチタン酸のゲルまたはゾルの微細な粒子が得られ、後述する過酸化水素との反応が容易となる。
【0060】
さらに、中和あるいは加水分解する際の温度は0〜60℃の範囲にあることが好ましく、特に好ましい範囲は0〜50℃の範囲である。中和あるいは加水分解する際の温度が上記範囲にあるとオルソチタン酸のゲルまたはゾルの微細な粒子が得られ、後述する過酸化水素との反応が容易となる。得られたゲルまたはゾル中のオルソチタン酸粒子は、非晶質であることが好ましい。
【0061】
次に、オルソチタン酸のゲルまたはゾルあるいはこれらの混合物に、過酸化水素を添加してオルソチタン酸を溶解してペルオキシチタン酸水溶液を調製する。
ペルオキシチタン酸水溶液を調製するに際しては、オルソチタン酸のゲルまたはゾルあるいはこれらの混合物を、必要に応じて約50℃以上に加熱したり、攪拌したりすることが好ましい。また、この際、オルソチタン酸の濃度が高くなるすぎると、その溶解に長時間を必要とし、さらに未溶解のゲルが沈殿したり、あるいは得られるペルオキシチタン酸
水溶液が粘調になることがある。このため、TiO2濃度としては、約10重量%以下であることが好ましく、さらに約5重量%以下であることが望ましい。
【0062】
添加する過酸化水素の量は、H22/TiO2(オルソチタン酸はTiO2に換算)重量比で1以上であれば、オルソチタン酸を完全に溶解することができる。H22/TiO2重量比が1未満であると、オルソチタン酸が完全には溶解せず、未反応のゲルまたはゾルが残存することがある。また、H22/TiO2重量比は大きいほど、オルソチタン酸の溶解速度は大きく反応時間は短時間で終了するが、あまり過剰に過酸化水素を用いても、未反応の過酸化水素が系内に残存するだけであり、経済的でない。このような量で過酸化水素を用いると、オルソチタン酸は0.5〜20時間程度で溶解する。本発明に用いるペルオキシ
チタン酸水溶液は溶解後、50〜90℃で熟成することが好ましい。この熟成を行うと実質的に非晶質であるがアナターゼ類似のX線回折パターンを示し、平均粒子径が10〜50nmの範囲にある粒子が生成し、前記細孔容積および平均細孔径を有する酸化チタン薄膜を再現性よく得ることができる。
【0063】
熟成時間は熟成温度によっても異なるが、通常1〜25時間である。
また、本発明に用いるペルオキシチタン酸水溶液は増粘剤を含んでいてもよく、増粘剤としてはエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール、ターシャリーブタノール等が含まれていてもよい。このような増粘剤がペルオキシチタン酸水溶液中に含まれていると、塗布液の粘度が高くなり、これにより均一に塗布することができ、クラックのない均一な膜厚の酸化チタン薄膜が得られ、下層の電極層、上層の多孔質金属酸化物半導体膜との密着性の高い酸化チタン薄膜を得ることができる。
【0064】
ペルオキシチタン酸水溶液中の増粘剤の濃度は増粘剤の種類によっても異なるが1.0〜60.0重量%、さらには3.0〜35.0重量%の範囲にあることが好ましい。増粘剤の濃度が低すぎると、前記増粘剤を用いた効果が不充分であり、高すぎても塗布性が低下し、膜厚が厚くなりすぎたり、クラックが生じることがあり、前記酸化チタン薄膜を設ける効果が得られないことがある。
【0065】
ペルオキシチタン酸水溶液の塗布方法が(A)スピンコート法、(B)ディップコート法、(C)フレキソ印刷法、(D)ロールコーター法(E)電気泳動法のいずれかであれば、電極層との
密着性に優れ、膜厚が均一で、クラックがなく、かつ強度に優れた酸化チタン薄膜(1)を
形成することができ、特に工業的にはフレキソ印刷法が好適に採用することができる。
【0066】
乾燥は分散媒である水を除去できる温度であればよく、従来公知の方法を採用することができ、風乾することも可能であるが、通常50〜150℃で0.2〜5時間程度乾燥する。本発明では、乾燥後、後述する多孔質金属酸化物半導体膜を形成することができるが、乾燥後硬化した後多孔質金属酸化物半導体膜を形成してもよい。
【0067】
乾燥処理のみでも硬化するが、さらに必要に応じて紫外線を照射し、ついで加熱処理によってアニーリングする。
紫外線の照射はペルオキソチタン酸が分解して硬化するに必要な量照射すればよい。
加熱処理は、通常、100〜500℃、さらには300〜450℃で概ね1〜48時間処理する。
【0068】
なお、基板が樹脂フィルムである場合の酸化チタン薄膜(1)の形成方法は、100〜2
00℃、さらには150〜195℃で概ね1〜72時間加熱処理すればよい。
多孔質金属酸化物半導体膜
前記電極層(1)上(酸化チタン薄膜(1)が設けられている場合、該薄膜上)に、前記塗料を用いて多孔質金属酸化物半導体膜(1)が形成されている。
【0069】
この多孔質金属酸化物半導体膜の膜厚は、0.5〜50μmの範囲にあることが好ましい。
前記塗料を用いると細孔容積が0.30〜0.60ml/gの範囲にある多孔質金属酸化物半導体膜(1)が得られる。
【0070】
なお、多孔質金属酸化物半導体膜(1)の細孔容積が低いと、電解質の拡散性が低下して
バックカレントを引き起こすことがあり、変換効率が不充分となることがあり、細孔容積が高すぎると多孔質金属酸化物半導体膜の強度が不充分となることがあるが、本発明の塗料を用いると、前記範囲の細孔容積が得られる。
【0071】
細孔容積は、金属酸化物粒子のW/O型なら水分量、O/W型なら有機溶媒の量によって調製可能となる。
前記塗料を用いると、平均細孔径が10〜50nmの範囲の範囲にある多孔質金属酸化物半導体膜が得られる。
【0072】
多孔質金属酸化物半導体膜の平均細孔径が小さすぎると、色素の吸着に時間を要したり、色素吸着量が不十分となる場合があり、さらに、電解質の浸透・拡散が不十分となったり、電荷の拡散が阻害されることがあったりする。また、平均細孔径が大きすぎると、膜強度が低下したり、クラックが発生したりする場合がある。本発明の塗料を用いると、前記範囲の細孔径のものが得られる。細孔径は、エマルジョンや金属酸化物粒子の大きさ、膜形成時の加熱温度などによって調製可能となる。
【0073】
このような、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料を電極層上または必要に応じて設ける酸化チタン薄膜上に塗布し、必要に応じて乾燥し、ついで、150〜600℃、好ましくは350〜500℃で概ね1〜48時間加熱処理する。形成される多孔質金属酸化物半導体膜の膜厚は、特に制限されないが、効果が顕現できる点で、0.5〜50μmの範囲にあることが好ましい。
【0074】
塗布方法はディップ法、スピナー法、ロールコーター法、フレキソ印刷、スクリーンプリント法等が好適である。
乾燥は分散媒を除去できる温度であればよく、従来公知の方法を採用することができ、通常50〜150℃で0.2〜5時間程度乾燥する。
【0075】
加熱処理温度が低いと、多孔質金属酸化物半導体膜の硬化が不充分となったり、基材との密着性が不十分となり、剥離を引き起こしたり、光電変換効率が不充分となる場合がある。加熱処理温度が高すぎても、多孔質金属酸化物半導体膜の強度はさらに向上するものの焼結により十分な細孔容積を得ることが困難であったり、基材に使用する導電性材料の導電性が低下したりすることにより、光電変換効率が低下する場合がある。
【0076】
なお、基材に軟化温度の低い樹脂フィルムを用いた場合、加熱処理温度は200℃以下(下限は150℃)である。
多孔質金属酸化物半導体膜を電極層上または必要に応じて設ける酸化チタン薄膜上に形成した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セルを作成することができる。
光増感材
本発明に係る光電気セルでは、多孔質金属酸化物半導体膜(1)が光増感材を吸着してい
る。光増感材としては、可視光領域、紫外光領域、赤外光領域の光を吸収して励起するものであれば特に制限はなく、たとえば有機色素、金属錯体などを用いることができる。
【0077】
有機色素としては、分子中にカルボキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、スルホン基、カルボキシアルキル基等の官能基を有する従来公知の有機色素が使用できる。 具体的には、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メタロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素およびウラニン、エオシン、ローズベンガル、ローダミンB、ジブロムフルオレセイン等のキサンテン系色素等が挙げられる。これらの有機色素は金属酸化物半導体膜への吸着速度が早いという特性を有している。
【0078】
また、金属錯体としては、特開平1-220380号公報、特表平5-504023号公報などに記載された銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミン、ルテニウム-トリス(2,2'-ビスピリジル-4,4'-ジカルボキシラート)、シス-(SCN-)-ビス(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシレート)ルテニウム、ルテニウム-シ
ス-ジアクア-ビス(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシラート)などのルテニウム-シス-
ジアクア-ビピリジル錯体、亜鉛-テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィンなどのポルフィリン、鉄-ヘキサシアニド錯体等のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛などの錯体を挙
げることができる。これらの金属錯体は分光増感の効果や耐久性に優れている。
【0079】
上記の光増感材としての有機色素または金属錯体は単独で用いてもよく、有機色素または金属錯体の2種以上を混合して用いてもよく、さらに有機色素と金属錯体とを併用してもよい。
【0080】
多孔質金属酸化物半導体膜の光増感材の吸着量は多孔質金属酸化物半導体膜の比表面積1cm2あたり100μg以上、さらには150μg以上であることが好ましい。
多孔質金属酸化物半導体膜の光増感材の吸着量が100μg未満の場合は光電変換効率が不充分となる。
【0081】
このような光増感材の吸着方法は、特に制限はなく、光増感材を溶媒に溶解した溶液を、ディッピング法、スピナー法、スプレー法等の方法により多孔質金属酸化物半導体膜に吸収させ、次いで乾燥する等の一般的な方法が採用できる。さらに必要に応じて前記吸収工程を繰り返してもよい。また、光増感材溶液を加熱環流しながら前記基板と接触させて光増感材を多孔質金属酸化物半導体膜に吸着させることもできる
光増感材を溶解させる溶媒としては、光増感材を溶解するものであればよく、具体的には、水、アルコール類、トルエン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、エチルセルソルブ、Nーメチルピロリドン、テトラヒドロフラン等を用いることができる。
【0082】
光増感材溶液の光増感材の濃度は多孔質金属酸化物半導体膜の比表面積1cm2あたり
100μg以上、さらには200μg以上となる濃度が好ましい。
本発明では、前記した表面に電極層(1)を有し、該電極層(1)上に必用に応じて酸化チタン薄膜(1)を有し、かつ電極層(1)上または酸化チタン薄膜(1)上に光増感材を吸着した多
孔質金属酸化物半導体膜を有する基板(1)と、表面に電極層(2)を有する基板(2)とを、電
極層(1)および電極層(2)が対向するように配置し、側面を樹脂にてシールし、多孔質金属酸化物半導体膜(1)と電極層(2)との間に電解質を封入し、さらに電極間をリード線で接続することによって光電気セルを製造することができる。
【0083】
電解質層
電解質としては、電気化学的に活性な塩とともに酸化還元系を形成する少なくとも1種の化合物との混合物が使用される。
【0084】
電気化学的に活性な塩としては、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドなどの4級アンモニウム塩が挙げられる。酸化還元系を形成する化合物としては、キノン、ヒドロキノン、沃素(I-/I-3)、沃化カリウム、臭素(Br-/Br-3)、臭化カリウム等が挙げられる。場合によってはこれらを混合して使用することもできる。
【0085】
このような電解質の使用量は、電解質の種類、後述する溶媒の種類によっても異なるが、概ね0.1〜5モル/リットルの範囲にあることが好ましい。
電解質層には、従来公知の溶媒を用いることができる。具体的には水、アルコール類、オリゴエーテル類、プロピオンカーボネート等のカーボネート類、燐酸エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、スルホラン66の硫黄化合物、炭酸エチレン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0086】
多孔質金属酸化物半導体膜を電極層上または必要に応じて設ける酸化チタン薄膜上に形成した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セルを作成することができる。
【0087】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(1)の調製
有機溶媒としてテルピネオールを50gに界面活性剤(シグマ-アルドリッチ製:To
riton−X 100)25gを溶解し、この混合溶液に水25gを混合し、エマルジョン溶液(1)を得た。この時のエマルジョンの大きさを表に示す。
【0088】
酸化チタンゾル(日揮触媒化成(株)製:HPW−18NR、平均粒子径20nm、TiO2濃度20重量%、分散媒:水)100gに、エタノール200ml加えてよく攪拌した後、エチルセルロース8gを10重量%濃度となるようにエタノールで溶解した溶液を加えよく混合し、ついで、スクリーン印刷用の溶媒としてテルピネオールを72g加えてよく混合し後、50℃に加温しながらロータリーエバポレータにて水およびアルコールを除去しながらTiO2濃度20重量%となるように濃縮した。その後、エマルジョン溶液(1)を15g加え、ロールミルで30min混合を行い、多孔質金属酸化物半導体膜形成用
塗料(1)を得た。
【0089】
ペルオキシチタン酸コーティング液の調製
18.3gの4塩化チタンを純水で希釈してTiO2として1.0重量%含有する水溶
液を得た。これを撹拌しながら、濃度15重量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄し、TiO2として濃度10.2重量%の
水和酸化チタンゲルのケーキを得た。このケーキと濃度5%過酸化水素液400gを混合し、ついで80℃で2時間加熱して溶解し、TiO2として濃度1.0重量%のペルオキ
ソチタン酸水溶液(1)を得た。さらに、TiO2濃度0.5%、エチレングリコール濃度20%となるように水およびペルオキソチタン酸水溶液にエチレングリコールを加えペルオキソチタン酸コーティング液を得た。
【0090】
酸化チタン薄膜(1)の形成
ペルオキソチタン酸コーティング溶液(1)をフッ素ドープした酸化スズを電極として形
成した透明ガラス基板にフレキソ印刷法で塗布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6000mJ/cm2の紫外線を照射してペルオキソ酸を分解させ、膜を硬化さ
せた。さらに、450℃で30分間加熱して硬化およびアニーリングを行って酸化チタン薄膜(1)を形成した。
【0091】
得られた酸化チタン薄膜(1)の膜厚は40nm、窒素吸着法によって求めた細孔容積は
0.12ml/g、平均細孔径は2nmであった。
多孔質金属酸化物半導体膜(1)の形成
酸化チタン薄膜(1)を形成した透明ガラス基板上に多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗
料(1)をスクリーン印刷および乾燥を膜厚が15μmになるまで繰り返し形成し、その後
450℃での焼成アニーリングを行って多孔質金属酸化物半導体膜(1)を形成した。
【0092】
得られた多孔質金属酸化物半導体膜(1)の膜厚および窒素吸着法によって求めた細孔容
積と平均細孔径を表に示した。また、多孔質金属酸化物半導体膜(1)の密着性を評価し、
結果を表1に示した。
【0093】
密着性
多孔質金属酸化物半導体膜(1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷
を付け100個の升目を作り、これにセロハンテ−プを接着し、ついで、セロハンテ−プを剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することにより密着性を評価した。結果を表に示す。
【0094】
残存升目の数100個 :◎
残存升目の数90〜99個 :○
残存升目の数85〜89個 :△
残存升目の数84個以下 :×
光増感材の吸着
光増感材としてDYESOL社製B2色素を濃度0.1%となるようにエタノール溶液を調製した。この溶液に多孔質金属酸化物半導体膜(1)を形成したガラスを5時間漬込み
、取り出した後エタノール水溶液で洗浄し、色素を吸着させた。光増感材の吸着量を表に示した。
【0095】
光電気セル(1)の作成
先ず、溶媒としてアセトニトリルと炭酸エチレンの体積比が1:4の比で混合した溶媒にテトラプロピルアンモニウムアイオダイドとヨウ素とを、それぞれの濃度が0.46モ
ル/L、0.06モル/Lとなるように溶解して電解質溶液を調製した。
【0096】
前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セル(1)を作成した。
【0097】
光電気セル(1)は、ソーラーシュミレーターで100W/m2の強度の光を入射角90°(セル面と90°)で照射して、Voc(開回路状態の電圧)、Joc(回路を短絡したときに流れる電流の密度)、FF(曲線因子)およびη(変換効率)を測定し結果を表1に示した。
[実施例2]
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(2)の調製
有機溶媒としてテルピネオールを50gに界面活性剤(シグマ-アルドリッチ製:To
riton−X 100)35gを溶解し、この混合溶液に水15gを混合し、エマルジ
ョン溶液(2)を得た。この時のエマルジョンの大きさを表に示す。
【0098】
酸化チタンゾル(日揮触媒化成(株)製:HPW−18NR、平均粒子径20nm、TiO2濃度20重量%、分散媒:水)100gに、エタノール200ml加えてよく攪拌した後、エチルセルロース8gを10重量%濃度となるようにエタノールで溶解した溶液を加えよく混合し、ついで、スクリーン印刷用の溶媒としてテルピネオールを76g加えてよく混合し後、50℃に加温しながらロータリーエバポレータにて水およびアルコールを除去しながらTiO2濃度20重量%となるように濃縮した。その後、エマルジョン溶液(2)を10g加え、ロールミルで30min混合を行い、多孔質金属酸化物半導体膜形成用
塗料(2)を得た。
【0099】
多孔質金属酸化物半導体膜(2)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(2)を用いた以外は同様にし
て多孔質金属酸化物半導体膜(2)を形成した。
【0100】
得られた多孔質金属酸化物半導体膜(2)の膜厚、細孔容積、平均細孔径および密着性を
評価し、結果を表1に示した。
光増感材の吸着
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜(2)を形成した透明ガラス基板を用いた以外は同様にして色素を吸着させた。
【0101】
光電気セル(2)の作成
実施例1において、色素を吸着させた多孔質金属酸化物半導体膜(2)を用いた以外は同
様にして光電気セル(2)を作成した。
【0102】
光電気セル(2)について、Voc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示した

[実施例3]
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(3)の調製
酸化チタンゾル(日揮触媒化成(株)製:HPW−18NR、平均粒子径20nm、TiO2濃度20重量%、分散媒:水)100gに、エタノール200ml加えてよく攪拌した後、エチルセルロース8gを10重量%濃度となるようにエタノールで溶解した溶液を加えよく混合し、ついで、スクリーン印刷用の溶媒としてテルピネオールを67g加えてよく混合し後、50℃に加温しながらロータリーエバポレータにて水およびアルコールを除去しながらTiO2濃度20重量%となるように濃縮した。その後、実施例1で調製したエマルジョン溶液(1)を20g加え、ロールミルで30min混合を行い、多孔質金属酸
化物半導体膜形成用塗料(3)を得た。
【0103】
多孔質金属酸化物半導体膜(3)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(3)を用いた以外は同様にし
て多孔質金属酸化物半導体膜(3)を形成した。得られた多孔質金属酸化物半導体膜(3)の膜厚、細孔容積、平均細孔径および密着性を評価し、結果を表1に示した。
【0104】
光増感材の吸着
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜(3)を形成した透明ガラス基板を用いた
以外は同様にして色素を吸着させた。
【0105】
光電気セル(3)の作成
実施例1において、色素を吸着させた多孔質金属酸化物半導体膜(3)を用いた以外は同
様にして光電気セル(3)を作成した。
【0106】
光電気セル(3)について、Voc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示した

[実施例4]
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(4)の調製
水50gに界面活性剤(シグマ-アルドリッチ製:Toriton−X 100)25
gを溶解し、この混合溶液に、有機溶剤としてn-ブタノールを25g加え攪拌しエマル
ジョン溶液(4)を得た。
【0107】
酸化チタンゾル(日揮触媒化成(株)製:HPW−18NR、平均粒子径20nm、TiO2濃度20重量%、分散媒:水)100gに、10%濃度のポリエチレングリコール水溶液8gを加えよく混合した後、エマルジョン溶液(4)を20g加え、自公転式ミキサー
で15min混合を行い、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(4)を得た。
【0108】
多孔質金属酸化物半導体膜(4)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(4)を用いた以外は同様にし
て多孔質金属酸化物半導体膜(4)を形成した。得られた多孔質金属酸化物半導体膜(4)の膜厚、細孔容積、平均細孔径および密着性を評価し、結果を表1に示した。
【0109】
光増感材の吸着
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜(4)を形成した透明ガラス基板を用いた
以外は同様にして色素を吸着させた。
【0110】
光電気セル(4)の作成
実施例1において、色素を吸着させた多孔質金属酸化物半導体膜(4)を用いた以外は同
様にして光電気セル(4)を作成した。
【0111】
光電気セル(4)について、Voc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示した

[実施例5]
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(5)の調製
水50gに界面活性剤(シグマ-アルドリッチ製:Toriton−X 100)35
gを溶解し、この混合溶液に、有機溶剤としてn-ブタノールを25g加え攪拌しエマル
ジョン溶液(5)を得た。
【0112】
酸化チタンゾル(日揮触媒化成(株)製:HPW−18NR、平均粒子径20nm、TiO2濃度20重量%、分散媒:水)100gに、10%濃度のポリエチレングリコール水溶液8gを加えよく混合した後、エマルジョン溶液(5)を30g加え、自公転式ミキサー
で15min混合を行い、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(5)を得た。
【0113】
多孔質金属酸化物半導体膜(5)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(5)を用いた以外は同様にし
て多孔質金属酸化物半導体膜(5)を形成した。
【0114】
得られた多孔質金属酸化物半導体膜(5)の膜厚、細孔容積、平均細孔径および密着性を
評価し、結果を表1に示した。
光増感材の吸着
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜(5)を形成した透明ガラス基板を用いた
以外は同様にして色素を吸着させた。
【0115】
光電気セル(5)の作成
実施例1において、色素を吸着させた多孔質金属酸化物半導体膜(5)を用いた以外は同
様にして光電気セル(5)を作成した。
【0116】
光電気セル(5)について、Voc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示した

[実施例6]
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(6)の調製
水50gに界面活性剤(シグマ-アルドリッチ製:Toriton−X 100)25
gを溶解し、この混合溶液に、有機溶剤としてn-ブタノールを25g加え攪拌しエマル
ジョン溶液(6)を得た。
【0117】
酸化チタンゾル(日揮触媒化成(株)製:HPW−18NR、平均粒子径20nm、TiO2濃度20重量%、分散媒:水)100gに、10%濃度のポリエチレングリコール水溶液8gを加えよく混合した後、エマルジョン溶液(6)を30g加え、自公転式ミキサー
で15min混合を行い、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(6)を得た。
【0118】
多孔質金属酸化物半導体膜(6)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(6)を用いた以外は同様にし
て多孔質金属酸化物半導体膜(6)を形成した。
【0119】
得られた多孔質金属酸化物半導体膜(6)の膜厚、細孔容積、平均細孔径および密着性を
評価し、結果を表1に示した。
光増感材の吸着
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜(6)を形成した透明ガラス基板を用いた
以外は同様にして色素を吸着させた。
【0120】
光電気セル(6)の作成
実施例1において、色素を吸着させた多孔質金属酸化物半導体膜(6)を用いた以外は同
様にして光電気セル(6)を作成した。
【0121】
光電気セル(6)について、Voc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示した

[実施例7]
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(7)の調製
実施例1において、酸化チタンゾルを日揮触媒化成(株)製:HPW−30NRD(平均粒子径30nm、TiO2濃度20重量%、分散媒:水)を用いた以外は同様にして調製した。
【0122】
多孔質金属酸化物半導体膜(7)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(7)を用いた以外は同様にし
て多孔質金属酸化物半導体膜(7)を形成した。
【0123】
得られた多孔質金属酸化物半導体膜(7)の膜厚、細孔容積、平均細孔径および密着性を
評価し、結果を表1に示した。
光増感材の吸着
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜(7)を形成した透明ガラス基板を用いた
以外は同様にして色素を吸着させた。
【0124】
光電気セル(7)の作成
実施例1において、色素を吸着させた多孔質金属酸化物半導体膜(7)を用いた以外は同
様にして光電気セル(7)を作成した。
【0125】
光電気セル(7)について、Voc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示した

[比較例1]
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(R1)の調製
実施例1において、エマルジョン溶液(1)を添加せずに、テルピネオールを用いてTiO2濃度17.4%となるように調整し、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(R1)を調製
した。
【0126】
多孔質金属酸化物半導体膜(R1)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(R1)を用いた以外は同様にして多孔質金属酸化物半導体膜(R1)を形成した。
【0127】
得られた多孔質金属酸化物半導体膜(R1)の膜厚、細孔容積、平均細孔径および密着性を評価し、結果を表1に示した。
光増感材の吸着
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜(R1)を形成した透明ガラス基板を用いた以外は同様にして色素を吸着させた。
【0128】
光電気セル(R1)の作成
実施例1において、色素を吸着させた多孔質金属酸化物半導体膜(R1)を用いた以外は同様にして光電気セル(R1)を作成した。
【0129】
光電気セル(R1)について、Voc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示した。
[比較例2]
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(R2)の調製
実施例7において、エマルジョン溶液(1)を添加せずに、テルピネオールを用いてTi
2濃度17.4%となるように調整し、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(R2)を調
製した。
【0130】
多孔質金属酸化物半導体膜(R2)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(R2)を用いた以外は同様にして多孔質金属酸化物半導体膜(R2)を形成した。
【0131】
得られた多孔質金属酸化物半導体膜(R2)の膜厚、細孔容積、平均細孔径および密着性を評価し、結果を表1に示した。
光増感材の吸着
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜(R2)を形成した透明ガラス基板を用いた以外は同様にして色素を吸着させた。
【0132】
光電気セル(R2)の作成
実施例1において、色素を吸着させた多孔質金属酸化物半導体膜(R2)を用いた以外は同様にして光電気セル(R2)を作成した。
【0133】
光電気セル(R2)について、Voc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示した。
[比較例3]
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(R3)の調製
実施例1において、金属酸化物微粒子として酸化チタンゾル(日揮触媒化成(株)製:HPW―400C、平均粒子径400nm、TiO2濃度20重量%、分散媒:水)を用いた以外は同様にして多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(R3)を調製した。
【0134】
多孔質金属酸化物半導体膜(R3)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(R3)を用いた以外は同様にして多孔質金属酸化物半導体膜(R3)を形成した。
【0135】
得られた多孔質金属酸化物半導体膜(R3)の膜厚、細孔容積、平均細孔径および密着性を評価し、結果を表1に示した。
光増感材の吸着
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜(R3)を形成した透明ガラス基板を用いた以外は同様にして色素を吸着させた。
【0136】
光電気セル(R3)の作成
実施例1において、色素を吸着させた多孔質金属酸化物半導体膜(R3)を用いた以外は同様にして光電気セル(R3)を作成した。
【0137】
光電気セル(R3)について、Voc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示した。
【0138】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の光電気セルの1例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0140】
1・・・・・電極層(1)
2・・・・・半導体膜(1)
3・・・・・電極層(2)
4・・・・・電解質層(2)
5・・・・・基板(1)
6・・・・・基板(2)
7・・・・・酸化チタン薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が5〜300nmの範囲にある金属酸化物微粒子と、水および有機溶媒の混合溶媒とからなり、
該混合溶媒がエマルジョンを形成していることを特徴とする多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。
【請求項2】
前記混合溶媒中の水の含有量が0.5〜6.5重量%の範囲にあるか、あるいは有機溶媒の含有量が0.5〜6.5重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。
【請求項3】
前記有機溶媒が水と相溶性のないアルコール類、ケトン類、グリコール類、エーテル類から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。
【請求項4】
エマルジョン安定化剤として界面活性剤を含み、混合溶媒中の該界面活性剤の含有量が0.5〜5.0重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。
【請求項5】
前記金属酸化物粒子が、酸化チタン、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオビウム、酸化タングステン、酸化ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。
【請求項6】
前記金属酸化物粒子が結晶性酸化チタンであることを特徴とする請求項5に記載の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。
【請求項7】
さらに増粘剤を含み、該増粘剤の含有量が0.1〜15重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。
【請求項8】
表面に電極層(1)を有し、かつ該電極層(1)表面に光増感材を吸着した多孔質金属酸化物半導体膜(1)が形成されてなる基板(1)と、
表面に電極層(2)を有する基板(2)とが、
前記電極層(1)および電極層(2)が対向するように配置してなり、
多孔質金属酸化物半導体膜(1)と電極層(2)との間に電解質層を設けてなる光電気セルにおいて、
多孔質金属酸化物半導体膜(1)が、請求項1〜7のいずれかに記載の多孔質金属酸化物
半導体膜形成用塗料を用いて形成されてなることを特徴とする光電気セル。
【請求項9】
多孔質金属酸化物半導体膜(1)の細孔容積が0.30〜0.60ml/gの範囲にあり
、平均細孔径が10〜50nmの範囲にあることを特徴とする請求項8に記載の光電気セルの製造方法。
【請求項10】
前記電極層(1)と多孔質金属酸化物半導体膜(1)との間にペルオキソチタン酸に由来する酸化チタン薄膜(1)を設けてなることを特徴とする請求項8または9に記載の光電気セル

【請求項11】
前記酸化チタン薄膜(1)の膜厚が10〜70nmの範囲にあり、細孔容積が0.01〜
0.20ml/gの範囲にあり、平均細孔径が0.5〜5.0nmの範囲にあることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の光電気セル。

【図1】
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【公開番号】特開2010−153231(P2010−153231A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330818(P2008−330818)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】