説明

多官能アクリレート化合物を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物

【課題】金属あるいはプラスチック等からなる部品を精度よく固定するための接着剤であり、部材に対する高い初期接着性を有し、高温高湿試験をはじめとする耐久性試験にて、高い保持力を呈し、その熱時の変形、および熱時と荷重に対する変形性が極めて少なく抑えられ、これにより部品の動きを抑えることができる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、下記(A)成分〜(D)成分:(A)(a1)グリセロール誘導体及びエーテル骨格を連結官能基とした直線状又は分岐状のその多量体、(a2)トリメチロールプロパン誘導体及びエーテル骨格を連結官能基とした直線状又は分岐状のその多量体、(a3)ペンタエリスリトール誘導体の単量体及びエーテル骨格を連結官能基とした直線状又は分岐状のその多量体、並びに(a4)エーテル結合又はエステル結合を含み、かつ4以上の末端に(メタ)アクリロイル基が配置された樹木状分子化合物からなる群より選択される、分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能アクリレート化合物、(B)光硬化性プレポリマー、(C)単官能又は2官能の(メタ)アクリロイル基含有モノマー、及び(D)光重合開始剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多官能アクリレート化合物を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、特に金属又はプラスチック部材に対して接着性を有しながらも、耐熱試験をはじめとする耐久性試験にて、高い保持力と熱時の寸法安定性を呈し、UVや可視光などの活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
CDまたはDVD、あるいは近年では、Blue-Rayをはじめとする記録材料の記録・再生に用いられる機材分野では、機器の小型化にともない、各部材は耐熱性・耐衝撃性が大きく求められ、高精度な成形が可能な液晶ポリマー(LCP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、あるいは上記プラスチック材にガラス繊維や炭素繊維を混錬した複合プラスチック材料等が多く用いられるようになった。これらの材料からなる部品を接合・固定するために、これらの材料に対し、高接着性且つ高耐久性を有し、硬化後の樹脂部の熱時の変形が少ない高固定精度の接着剤が求められている。さらに、作業性の観点から、可視光、紫外光など活性エネルギー線の照射により、より迅速に硬化する接着剤であることが要求される。
【0003】
固定精度とは、発光素子や光検出器を上記の部材からなるベース部材であるハウジングに固定する際に、光検出器が所定の位置から動かないことを示す精度である。固定精度が低いと、光ピックアップ装置の製造時や耐久試験後に、発光素子や光検出器が所定の位置から動いてしまい、光検出ができなくなる。したがって、高い固定精度が要求される。
【0004】
固定精度を考慮すると、光硬化型接着剤として、光硬化性アクリル系樹脂接着剤よりもカチオン硬化性エポキシ樹脂のほうが優れており、また、カチオン硬化性エポキシ樹脂組成物は、アクリル系樹脂接着剤のような酸素による硬化阻害がない(非特許文献1)。しかし、カチオン硬化性のエポキシ樹脂は、アクリル樹脂系に対して、速硬化性に劣るという問題があった。
【0005】
特許文献1には、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリカーボネートなどの被着体に対する接着剤として使用することができる硬化性組成物が開示されている。近年、アクリル系の接着剤では、部材を固定した後に、特に熱時に樹脂の熱応力や外部応力に関する樹脂変形に伴う部材の動きが問題となっている。アクリル系の接着剤は、エポキシ系樹脂に比べ、硬化性が良い利点を有する反面、熱が加えられた際の弾性率変化が大きいために、接着剤が変形し部材の動きを許容していた。
【0006】
特許文献2には、偏光子と、接着剤層と、硬化樹脂層とを含む偏光板が記載されている。特許文献2には、多官能アクリルモノマーおよび多官能メタクリルモノマーの少なくとも一方および光硬化性プレポリマーを含む無溶剤型光硬化性組成物から形成された硬化樹脂層は、ハードコート(高硬度)層として用いられることが記載されている。しかし、特許文献2に記載された無溶剤型光硬化性組成物は、接着剤として使用した場合、硬化収縮が大きく、カール(反り)や剥がれがおきやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−101106号公報
【特許文献2】特開2008−20891号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「光応用技術・材料辞典」、160頁、2006年4月26日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などプラスチック材、あるいは金属部材に対して、高い初期接着性を有し、高温高湿試験をはじめとする耐久性試験にて、高い保持力を呈し、その熱時の変形、および熱時と荷重に対する変形性が極めて少なく抑えられ、これにより部品の動きを抑えることができる樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、下記(A)成分〜(D)成分を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物が前記の目的を達成し得ることを見いだし、本発明に至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、下記(A)成分〜(D)成分:
(A)(a1)グリセロール誘導体及びエーテル骨格を連結官能基とした直線状又は分岐状のその多量体、
(a2)トリメチロールプロパン誘導体及びエーテル骨格を連結官能基とした直線状又は分岐状のその多量体、
(a3)ペンタエリスリトール誘導体の単量体及びエーテル骨格を連結官能基とした直線状又は分岐状のその多量体、並びに
(a4)エーテル結合又はエステル結合を含み、かつ4以上の末端に(メタ)アクリロイル基が配置された樹木状分子化合物
からなる群より選択される、分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能アクリレート化合物、
(B)光硬化性プレポリマー、
(C)単官能又は2官能の(メタ)アクリロイル基含有モノマー、及び
(D)光重合開始剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する。
【0012】
本発明は、(A)成分〜(D)成分の重量に対して、(A)成分が0.01〜25重量%である、前記に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する。
【0013】
本発明は、光学部品を貼り合わせるための接着剤である、前記に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する。
【0014】
本発明は、光ピックアップ装置組み立て用の接着剤である、前記に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する。
【0015】
本発明は、前記に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物で貼り合わせた、接着構造体に関する。
【0016】
本発明は、前記に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて貼り合わせた、光学部品に関する。
【0017】
本発明は、前記に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を使用して組み立てた、光ピックアップ装置に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などプラスチック部材、あるいは金属部材に対して、高い初期接着性を有し、高温高湿試験をはじめとする耐久性試験にて、高い保持力を呈し、その熱時の変形、および熱時と荷重に対する変形性が極めて少なく抑えられ、これにより部品の動きを抑えることができる樹脂組成物が得られる。
本発明により、シリンジ塗布性などの作業性がよく、紫外光を照射した場合、短時間で硬化することが可能である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の硬化性組成物の熱時の接着剤部分の変形を角度変化から測定するための装置である。
【図2】図2は、本発明の硬化性組成物を光硬化後、治具を外して、チルトセンサーにより角度変化を測定するための図である。
【図3】図3は、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物で貼り合わせた接着構造体の押しぬき強度試験の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において、(A)成分は、(a1)グリセロール誘導体及びエーテル骨格を連結官能基とした直線状又は分岐状のその多量体、(a2)トリメチロールプロパン誘導体及びエーテル骨格を連結官能基とした直線状又は分岐状のその多量体、(a3)ペンタエリスリトール誘導体の単量体及びエーテル骨格を連結官能基とした直線又は分岐状のその多量体、及び(a4)エーテル結合又はエステル結合を含み、かつ4以上の末端に(メタ)アクリロイル基が配置された樹木状分子化合物からなる群より選択される、分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能アクリレート化合物である。(A)成分は、それぞれ単独で使用してもよいし、又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの両方を含み、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を含む。
【0021】
本発明において、グリセロール誘導体、トリメチロールプロパン誘導体、ペンタエリスリトール誘導体、及びエーテル骨格を連結官能基とした直線状又は分岐状のそれらの多量体は、分子中にグリセロール単位、トリメチロールプロパン単位及びペンタエリスリトール単位を含み、分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を含む。ここで、グリセロール単位とは、グリセロールから3つのヒドロキシ基を除去した構造であり、トリメチロールプロパン単位とは、トリメチロールプロパンから3つのヒドロキシ基を除去した構造であり、ペンタエリスリトール単位とは、ペンタエリスリトール単位から4つのヒドロキシ基を除去した構造である。
【0022】
本発明において、グリセロール誘導体、トリメチロールプロパン誘導体、及びペンタエリスリトール誘導体は、グリセロール、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールが、4個以上の(メタ)アクリロイル基で置換されている化合物である。
【0023】
本発明において、連結官能基であるエーテル骨格は、グリセロール、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールの分子間における、2つのヒドロキシ基の縮合により形成されるエーテル結合であるか、グリセロール、トリメチロールプロパン、又はペンタエリスリトールと、エチレングリコールなどのジアルコール化合物との縮合により形成されるポリエーテル骨格である。本発明において、連結官能基であるエーテル骨格は、下記一般式(1):
−O−(X−O−)n1− (1)
(式中、
Xは、炭素原子数1〜4のアルキレンであり、
n1は、0又は1〜3の整数である)
で示される。
【0024】
炭素原子数1〜4のアルキレンとしては、メチレン、エチレン、トリメチレンン、及びテトラメチレンが挙げられ、好ましくは、エチレンである。
【0025】
一般式(1)において、n1は、好ましくは0である。すなわち、本発明におけるエーテル骨格は、好ましくはエーテル結合(−O−)である。
【0026】
本発明において、エーテル骨格を連結官能基とした直線状のグリセロール誘導体の多量体は、下記一般式(2):
【化1】


(式中、
n2は、2〜10であり、
は、水素、アクリロイル、又はメタクリロイルであり、
は、水素又はメチルであり、
但し、アクリロイル及びメタクリロイルの合計は4以上である)
で示される化合物が好ましい。
【0027】
本発明において、エーテル骨格を連結官能基とした直線状のトリメチロールプロパン誘導体の多量体としては、下記式(3):
【化2】


(式中、
n2、R及びRは、一般式(2)で定義されたとおりであり、
但し、アクリロイル及びメタクリロイルの合計は4以上である)
で示される化合物が好ましい。
【0028】
本発明において、エーテル骨格を連結官能基とした直線状のペンタエリスリトール誘導体の多量体としては、下記式(4):
【化3】


(式中、
n3は、1〜10であり、
は、一般式(2)で定義されたとおりであり、
但し、アクリロイル及びメタクリロイルの合計は4以上である)
で示される化合物が好ましい。
【0029】
本発明において、エーテル骨格を連結官能基とした直線状又は分岐状の多量体は、一般式(5):
【化4】


(式中、
は、水素又はメチルであり、
n4は、1〜5であり、
但し、アクリロイル及びメタクリロイルの合計は4以上である)
で示される化合物が特に好ましい。
【0030】
一般式(5)で示される化合物において、n4は、3〜4であるのがより好ましい。このような化合物を用いることにより、熱時の変形、および熱時と加重に対する変形性を極めて少なく抑えられた樹脂組成物を与えることができる。
【0031】
一般式(5)で示される化合物は、市販品としてV#802(一般式(5)においてn4=3.45)(大阪有機化学社製)、DPE−6A(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、及びPE−4A(共栄社化学社製)が挙げられる。
【0032】
本発明において、連結官能基により分岐状構造が存在する分岐状に多量体化した多官能アクリレート化合物は、グリセロール誘導体、トリメチロールプロパン誘導体、及びペンタエリスリトール誘導体が、エーテル骨格を連結官能基として、分岐状に多量体化した化合物である。このような多量体は、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールからヒドロキシ基を除去した構造同士が、エーテル骨格である連結官能基を介して多量体化した化合物であり、(メタ)アクリロイル基を4以上有する化合物である。例えば、ペンタエリスリトール誘導体が連結官能基を介して分岐状に多量体化した多官能アクリレート化合物に含まれる、ペンタエリスリトールの構造は、下記式(6a)〜(6d):
【化5】


(式中、Rは上記に定義したとおりである)
で示される。
【0033】
本発明において、ペンタエリスリトール誘導体の分岐状の多量体である化合物は、式(6a)〜(6d)で示される構造同士が、エーテル骨格を介してランダムに結合している構造である(しかし、式(6b)で示される構造のみで直線状に結合し、末端に式(6a)で示される構造が結合する直線状に分岐した多量体は除く)。本発明において、ランダムに結合したペンタエリスリトール誘導体の分岐状の多量体である化合物は、どのような構造であってもよく、例えば環状であることも、網目状構造であることもできる。
【0034】
ペンタエリスリトール誘導体の分岐状の多量体として、例えば、一般式(7):
【化6】


(式中、
n5は、1〜10であり、
n6は、0〜10であり、
は、一般式(2)で定義されたとおりであり、
は、一般式(8)又は一般式(9):
【化7】


(式中、
n7は、1〜10であり、
は、一般式(2)で定義されたとおりである)
【化8】


(式中、
は、一般式(2)で定義されたとおりであり、
n8は、1〜10であり、
n9は、0〜10であり、
は、一般式(8)で示される基である)
であり、
但し、1分子中、アクリロイル基及びメタクリロイル基の合計は4以上である)
で示される化合物が挙げられる。このような、エーテル結合を連結官能基としたペンタエリスリトールの分岐状の多量体として、V#Star−501(大阪有機化学社製)が挙げられる。
【0035】
本発明において、エーテル結合又はエステル結合を含み、かつ4以上末端に(メタ)アクリロイル基が配置された樹木状分子化合物である、分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能アクリレート化合物は、コアと、枝分かれユニットを含む樹枝構造とから構成される化学構造を有する化合物である。このような化合物として、デンドリマー型アクリレート化合物が挙げられる。本発明の樹木状分子化合物において、コアから最初の樹枝構造及びその末端部分までを第1世代と定義する。第1世代の樹枝構造の外側に次の樹枝構造を有する場合に、該次の樹枝構造からその末端までを第2世代と定義する。第3世代以降も同様に次の樹枝構造からその末端までを次の世代と定義する。本発明のデンドリマーにおいて好ましい世代数としては、1〜5の範囲であり、更に好ましくは1〜3である。
【0036】
本発明において、樹木状分子化合物のコアとしては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールが挙げられる。
【0037】
本発明において、樹木状分子化合物の枝分かれユニットを含む樹枝構造として、下記式(10):
【化9】


(式中、
は、一般式(2)で定義されたとおりであり、
sは、1〜5の整数である)
で示される構造が挙げられる。ここで、一般式(10)におけるRは、本発明の樹木状化合物の末端に相当する。
【0038】
一般式(10)における繰り返し数sは、デンドリマー化合物の世代数に相当するものである。例えば、一般式(10)における繰り返し数sが2である場合は、下記(10a):
【化10】


(式中、
は、一般式(2)で定義されたとおりである)
で示される。
【0039】
本発明において、エーテル結合又はエステル結合を含み末端に(メタ)アクリロイル基が配置された樹木状分子化合物は、下記式(11):
【化11】


{式中、
n10は、互いに独立して、1〜3の整数であり、
は、互いに独立して、水素、アクリロイル、メタクリロイル、又は一般式(10):
【化12】


(式中、
及びsは、上記で定義されたとおりである)
であり、
但し、アクリロイル及びメタクリロイルの合計は4以上である}
で示される化合物が好ましい。
【0040】
本発明において、エーテル結合又はエステル結合を含み末端に(メタ)アクリロイル基が配置された樹木状分子化合物である、分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能アクリレート化合物は、市販品として、V#1000(分子量が2800である一般式(11)の化合物、大阪有機化学社製)が挙げられる。なお、本発明において分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出した数平均分子量である。
【0041】
本願発明において、デンドリマー構造を有する樹木状化合物の合成方法として、中心のコアから外側に向かって合成を進めるダイバージェント法と、外側からコアに向けて合成を進めるコンバージェント法が挙げられ、これらの合成方法は当業者に公知であり、例えば特開平11−60540号に記載されている。具体的には、ジペンタエリスリトールを2,2−ジメチロールプロピオン酸と反応させることにより得られるポリエステルポリオール化合物を、(メタ)アクリル酸と反応させることにより第1世代の樹木状化合物を製造することができる。また、前記ポリエステルポリオール化合物をさらに、2,2−ジメチロールプロピオン酸と反応させて、次いで(メタ)アクリル酸と反応させることにより第2世代の樹木状化合物を製造することができる。
【0042】
本発明において、(A)成分〜(D)成分の重量に対して、(A)成分は、0.01〜25重量%が好ましく、好ましくは0.5〜10重量%である。
【0043】
本発明において、(B)成分である光硬化性プレポリマーは、接着組成物のベース樹脂(ベースオリゴマー)であり、紫外線などの活性エネルギー線の照射により、反応基である(メタ)アクリロイル基が重合する感光性樹脂である。(B)成分は、透明な低吸湿性樹脂であり、極めて低い極性及び分子構造を有することから、接合面外周より侵入しようとする油や水を遮断する成分である。
【0044】
本発明の(B)光硬化性プレポリマーとして、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエン又はポリイソプレンの水素添加物、ポリブタジエン又はポリイソプレンのカルボキシル変性の変性物、ウレタン結合を介したポリエステル骨格からなる群から選ばれる1種以上の主鎖骨格を有し、前記主鎖骨格の末端又は側鎖に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する、(メタ)アクリロイル基含有オリゴマーが挙げられる。本発明において、(B)光硬化性プレポリマーは、好ましくは、ポリブタジエン、またはポリブタジエンの水素添加物からなる群から選択される主鎖骨格を有し、特に好ましくはポリブタジエンの水素添加物を主鎖骨格として有する。また、本発明において、(B)光硬化性プレポリマーは、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましく、主鎖骨格の両末端に(メタ)アクリロイル基を有するものが特に好ましい。本発明において、(B)成分は、それぞれ単独で使用してもよいし、又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
本発明において、(B)成分の光硬化性プレポリマーの分子量は、通常400〜200,000であり、800〜100,000が好ましく、1,000〜30,000がより好ましい。このような分子量であれば、粘度が適切な範囲となりシリンジの塗布性が良好であり、接着後の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物の硬化収縮が大きくならない。
【0046】
(B)成分の光硬化性プレポリマーは、市販品として、日本曹達社製「NISSO−PB TEAI−1000」(両末端アクリレート変性水素添加ブタジエン系オリゴマー)、日本曹達社製「NISSO−PB TE−2000」(両末端メタクリレート変性ブタジエン系オリゴマー)、クラレ社製「UC−203」(イソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物オリゴマー)、香川ケミカル社製「UA−1」(末端ウレタンアクリレート変性ポリブタジエン水素添加物)等が挙げられる。
【0047】
本発明において、(A)成分〜(D)成分の重量に対して、(B)成分は、25〜60重量%が好ましく、30〜50重量%であるのがより好ましい。
【0048】
本発明において、(C)成分である、単官能又は2官能の(メタ)アクリロイル基含有モノマー((メタ)アクリレートモノマー)は、反応性希釈剤であり、硬化時にベース樹脂を固化させ、被着体との優れた接着性を発揮する成分でもある。
【0049】
(C)成分としては、極性基を有する(メタ)アクリレート、例えば水酸基を含有する(メタ)アクリレート、カルボキシル基を含有する(メタ)アクリレート、及びアミノ基を含有するアクリレート;低極性の分子構造を有する(メタ)アクリレートモノマー、例えば脂肪族(メタ)アクリレートモノマー、脂環式(メタ)アクリレートモノマー、及び芳香族(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0050】
これらの(メタ)アクリレートモノマーは、単官能の(メタ)アクリレートモノマーであっても、2官能性の(メタ)アクリレートモノマーであっても良く、それぞれ単独で使用してもよいし、又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
水酸基を含有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0052】
カルボキシル基を含有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。
【0053】
アミノ基を含有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0054】
脂肪族(メタ)アクリレートは、例えばラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオール(メタ)アクリレートが挙げられる。
芳香族(メタ)アクリレートは、例えばベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0055】
脂環式(メタ)アクリレートは、炭素原子数3〜20の単環又は多環の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートであり、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
これらの単官能又は2官能の(メタ)アクリロイル基含有モノマーは、「SA−1002」(三菱化学社製)、「カヤラッド R−684」(日本化薬製)、「ライトエステルBZ」、「ライトエステルIB−X」、「ライトエステルHO」、「ライトエステルHO−MS」(「ライトエステル」はいずれも共栄社化学社製である)等が市販品として挙げられる。
【0057】
本発明において、(A)成分〜(D)成分の重量に対して、(C)成分は、25〜70重量%が好ましく、40〜60重量%であるのがより好ましい。
【0058】
本発明において、(D)成分は、光重合開始剤である。光重合開始剤は、紫外線重合開始剤や可視光重合開始剤等が挙げられるが、どちらも制限無く用いられる。紫外線重合開始剤としては、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、及びアセトフェノン系等が挙げられ、可視光重合開始剤にはアシルホスフィンオキサイド系、チオキサントン系、メタロセン系、及びキノン系等が挙げられる。
【0059】
紫外線重合開始剤としては、具体的には、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、及びビスジエチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系重合開始剤;2,2−ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン系重合開始剤;ベンジル、ベンゾイン、及びベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン系重合開始剤;ベンジルジメチルケタールなどのアルキルフェノン系重合開始剤;チオキサントンなどのチオキサントン系重合開始剤;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1―プロパン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどのヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤が挙げられる。
【0060】
可視光重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド系光開始剤;カンファーキノン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン−1などのケトン系重合開始剤等が挙げられる。
【0061】
本発明において、(D)光重合開始剤として、好ましくは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE184、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE819、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)である。
【0062】
本発明において、(A)成分〜(D)成分の重量に対して、(D)成分は、0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜5重量%であるのがより好ましい。
【0063】
本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、無機フィラー、酸化防止剤、重合禁止剤、可塑剤、有機フィラー、アクリルゴム、ウレタンゴムなどの各種エラストマー、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体やアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体などのグラフト共重合体、溶剤、増量材、補強材、増粘剤、染料、顔料、難燃剤及び界面活性剤、並びに熱重合開始剤等の添加剤を使用することができる。
【0064】
本発明の硬化性組成物は、高硬度、樹脂剛性及び低硬化収縮性をさらに付与することを目的に、(E)成分として、無機フィラーをさらに含有することができる。
【0065】
無機フィラーとしては、石英、石英ガラス、溶融シリカ、球状シリカ等のシリカ粉等や、球状アルミナ、破砕アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等の酸化物類、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物類、炭化ケイ素等の炭化物類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物類、銅、銀、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属類や合金類、ダイヤモンド、カーボン等の炭素系充填材、複合酸化物からなるガラスフィラーなどが挙げられる。これら無機フィラーは、1種または2種以上を使用することができる。無機フィラーについては、容易に入手可能であり、市販品としては、ガラスフィラー(日本フリット社製「CF0023−05C」)、アモルファスシリカ(日本触媒社製「シーホスターKE−P250」)、フュームドシリカ(チキソ付与剤)(キャボット・スペシャリティーケミカルズ社製「TG308F」)、球状シリカ(日本フリット社製「CF0018−WB15C」)が挙げられる。本発明において、アクリル樹脂への充填性を考慮すると、屈折率が調整された複合酸化物からなる調光ガラスフィラーが好ましく、その際、粘度を上がり過ぎないようにするために球状形状が好ましい。
【0066】
本発明において、(A)成分〜(D)成分の合計100重量部に対して、(E)成分は、70〜300重量部が好ましく、100〜250重量部がより好ましい。
【0067】
本発明の硬化性組成物は、組成物の安定性を目的として、(F)成分として、酸化防止剤をさらに含有することができる。
【0068】
酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤、ハイドロキノン系酸化防止剤、及びその他の酸化防止剤が挙げられ、好ましくはフェノール系酸化防止剤である。
【0069】
フェノール系酸化防止剤としては、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、カテコール、ピクリン酸、ターシャリーブチルカテコール、2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール、及び4,4’−チオビス[エチレン(オキシ)(カルボニル)(エチレン)]ビス[2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノール]が挙げられる。
【0070】
ハイドロキノン系酸化防止剤としては、β―ナフトキノン、2−メトキシー1,4−ナフトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、及び2,5−ジターシャリーブチル−p−ベンゾキノンが挙げられる。
【0071】
その他の酸化防止剤として、クエン酸、フェノチアジン、及び2−ブチル−4−ヒドロキシアニソール等が例示できる。
【0072】
酸化防止剤は市販品として、IRGANOX1010、及びIRGANOX1035FF(いずれもチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)が挙げられる。
【0073】
本発明において、(A)成分〜(D)成分の合計100重量部に対して、(F)成分は、0.01〜5重量部が好ましく、0.1〜2重量部がより好ましい。
【0074】
本発明の硬化性組成物は、(G)成分として、重合禁止剤をさらに含有することができる。
【0075】
重合禁止剤としては、フェノール系重合禁止剤及びフェノチアジン系重合禁止剤が挙げられる。
【0076】
フェノール系重合禁止剤としては、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)(BHT)、カテコール、ピクリン酸、ターシャリーブチルカテコール、2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール、及び4,4’−チオビス[エチレン(オキシ)(カルボニル)(エチレン)]ビス[2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノール]が挙げられる。
【0077】
フェノチアジン系重合禁止剤としては、フェノチアジン、ビス(α−メチルベンジル)フェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、及びビス(α、α−ジメチルベンジル)フェノチアジンが挙げられる。
【0078】
なお、BHT等のフェノール系重合禁止剤は、酸化防止剤としても使用することができる。
【0079】
本発明において、(A)成分〜(D)成分の合計100重量部に対して、(G)成分は、0.01〜3重量部が好ましく、0.05〜1重量部がより好ましい。
【0080】
本発明の硬化性組成物は、接着性、接着耐久性を一層向上させるとともに硬化体の耐熱性を向上させることを目的として、(H)可塑剤を含むことができる。このような可塑剤として、ポリブタジエンの不飽和結合をエポキシ化して得られるオリゴマーが望ましく、市販品として、BF−1000(ADEKA社製)又はPB−3600(ダイセル工業化学社製)などが挙げられる。
【0081】
本発明の硬化性組成物において、(A)成分〜(D)成分の合計100重量部に対して、(H)成分は、0.01〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。
【0082】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、硬化収縮率をさらに下げることを目的として、(I)有機フィラーを含むことができる。有機フィラーとして、アクリル系フィラー、スチレン系フィラー、アクリル/スチレン共重合系フィラー、フッ素系樹脂フィラー、ポリエチレン系フィラー及びポリプロピレン系フィラーが挙げられ、市販品として「PPW−5」(ポリプロピレンフィラー、セイシン企業社製)、及び「プロピルマット31」(ポリプロピレンフィラー、MICROPOWDERS,INC.社製)が挙げられる。それぞれ単独で使用しても、又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。好ましい有機フィラーは、膨潤の少ないポリプロピレンフィラーである。
【0083】
本発明の硬化性組成物において、(A)成分〜(D)成分の合計100重量部に対して、(I)成分は、0.01〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。
【0084】
本発明の硬化性組成物は、ガラス面への密着性を一層向上させることを目的に、シランカップリング剤をさらに含有することができる。
【0085】
シランカップリング剤としては、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、好ましくはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランである。これらのシランカップリング剤は、単独でも2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0086】
本発明の硬化性組成物において、シランカップリング剤の含有量は、(A)成分〜(D)成分の合計100重量部に対して、0〜10重量部が好ましい。但し、シランカップリング剤は、硬化性組成物の硬化後における耐熱試験時にアウトガス成分として出易いため、シランカップリング剤を含まない硬化性組成物、すなわち、(A)成分〜(D)成分の総重量に対して、シランカップリング剤の含有量が0重量部であるものが望ましい。
【0087】
本発明において、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物は、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られる。本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる方法は、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に、活性エネルギー線を照射する工程を含む。
【0088】
本発明において、活性エネルギー線の波長は、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化する波長であれば特に限定されず、100〜420nm、より好ましくは300〜420nmである。
【0089】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は接着性組成物であり、接着剤、特に光学部品接着用の接着剤として有用である。
【0090】
本発明の接着剤を用いて貼り合わせる部材として、金属、あるいは金属鍍金された部材あるいはプラスチック等からなる小部品が挙げられる。小部品を構成する金属として、Mg、Zn、Ni、及びAlなどが挙げられ、プラスチックとして、液晶ポリマー(LCP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、あるいは上記プラスチック材にガラス繊維や炭素繊維を混錬した複合プラスチック材料等が挙げられる。プラスチック材料は市販品として入手可能であり、PPSとしては、出光社製「出光PPS」、及び東レ社製「トレリナ」が挙げられ、液晶ポリマーとしては、東レ社製「シベラス」、ポリプラスチック社製「ベクトラ」が挙げられ、ポリアリレートとしてはユニチカ社製「Uポリマー」が挙げられ、シクロオレフィンポリマーとしては、日本ゼオン社製「ゼオネクス」、三井化学社製「アペル」、及びJSR社製「アートン」が挙げられ、ポリカーボネートとしては帝人社製「パンライト」等が挙げられるが、これらに限らない。
【0091】
また、本発明の接着剤を用いて貼り合わせる光学部品として、記録材料の記録・再生に用いられる機器分野において用いられる機器の部材、例えばフォトディテクター(PD)、レーザーダイオード(LD)、レンズ、プリズムなどの光学部品やレンズ等の光学部品が乗っている光学モジュールが挙げられる。また光学ピックアップ部品は、部品に応じて求められる固定精度の要求が異なり、具体的には、フォトディテクター(PD)、レーザーダイオード(LD)、集光レンズ(NAL)などの高精度要求が高い部品、ハーフミラー(ビームスプリッター)(HM(PBS))、スキューなどの高精度要求がやや高い部品、反射ミラー(RM)などの高精度要求が中程度の部品、対物レンズ(OBL)、コリメーターレンズなどの高精度要求がやや低い部品が挙げられる。
【0092】
本発明の硬化性組成物は、多官能アクリレート化合物、ジエン系あるいは水素添加されたジエン系の(メタ)アクリレートである光硬化性プレポリマー、各種官能基を有する反応希釈性の(メタ)アクリレート、及び光重合開始剤を含有する特定の組成を有するので、活性エネルギー線を照射することにより、短時間で硬化することが可能であり、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などプラスチック部材、あるいは金属部材に対して、高い初期接着性を有し、高温高湿試験をはじめとする耐久性試験にて、高い保持力を呈するという特徴を有している。その熱時の変形、および熱時と荷重に対する変形性は極めて少なく抑えられる。このため本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物により接着された硬化後の部品の動きを最大限に抑えることができる。
【実施例】
【0093】
以下に、実施例及び比較例をあげて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例に記載の配合組成物中の各成分には以下の化合物を選択した。
(A)多官能アクリレート化合物
(A−1)V#802(大阪有機化学社製)
(A−2)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学社製「DPE−6A」)
(A−3)V#1000(大阪有機化学社製)
(A−4)V#Star−501(大阪有機化学社製)
(B)光硬化性プレポリマー
(B−1)末端ウレタンアクリレート変性ポリブタジエン(日本曹達社製「TE−2000」)
(B−2)末端ウレタンアクリレート変性ポリブタジエン水素添加物(香川ケミカル社製「UA−24」)
(C)単官能又は2官能の(メタ)アクリロイル基含有モノマー(アクリレートモノマー)
(C−1)トリシクロデカンジメタノールアクリレート(三菱化学社製「SA−1002」)
(C−2)ベンジルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルBZ」)
(C−3)イソボルニルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルIB−X」)
(C−4)2−ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルHO」)、
(C−5)2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸(共栄社化学社製「ライトエステルHO−MS」)
(D)光重合開始剤
(D−1)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製「IRGACURE184」)
(D−2)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製「IRGACURE819」)
(E)無機フィラー
(E−1)ガラスフィラー(日本フリット社製「CF0023−05C」)
(E−2)フュームドシリカ(キャボット・スペシャリティーケミカルズ社製「TG308F」)
(F)酸化防止剤
(F−1)(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製「IRGANOX1010」)
(F−2)(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製「IRGANOX1035」)
(G)重合禁止剤
(G−1)2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)(関東化学社製「BHT」)
(H)可塑剤
(H−1)ポリブタジエンの不飽和結合をエポキシ化して得られるオリゴマー(ADEKA社製「BF−1000」)
(I)成分:有機フィラー
(I−1)ポリプロピレンフィラー(セイシン企業社製「PPW−5」)
【0094】
活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物の各種物性は、次のように測定した。
【0095】
〔光硬化条件〕
活性エネルギー線源として、スポット照射機(浜松ホトニクス社製「LC−8」)を使用し、USHIO社製紫外線照度計「UIT−101」を用い、照射強度250mW/cmの条件で12秒間照射し硬化させた。
【0096】
〔角度変化測定〕
(1)角度変化測定用試料の作製
図1に示すように、アルミ板2を垂直に固定し、300μmの隙間を空けて、10(固定辺)×1.0(厚み)×20(長さ)mmのSUS板4(SUS304、1.5g)を、アルミ板に対しておおよそ90度になるように台座5の上に載せて配置した。アルミ板とSUS板をとめるように固定辺の中央部に本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物1(0.0025cc)を、ディスペンサー調整器(武蔵エンジニアリング製 ML−606)を用いて塗布した。塗布後すぐに斜め45度、20mmの距離からUV照射器3を用いて、250mW/cmのUV光を12秒間照射して固定した。次いで、台座5をはずして評価用試料とした。
(2)角度変化の測定
チルトセンサー(NISSHO ELECTRONICS社製 MTS−T20)を用いて熱時の接着剤部分の変形を角度変化からモニターした。図2に示すように、前記に記載した角度変化測定用試料を恒温槽(ESPEC社製 MC−711T)内に固定して、チルトセンサーのビームをSUS板に反射させモニターできるようにチルトセンサーの位置を調整した。恒温槽内の温度は、25℃で30分間保持することで調温した。調温後の角度変化量を測定して0とした。温度サイクルは、25℃で1時間保持し、次いで、30分で25℃から60℃に温度を上昇させて、60℃に達した後60℃で1時間保持し、さらに、30分で60℃から80℃に温度を上昇させて、80℃に達した後80℃で1時間保持し、30分で80℃から25℃に温度を下降させて、1サイクルとした。この温度サイクルで、恒温槽内の温度を25℃、60℃、80℃と変えた。初回のサイクルにおいて、60℃及び80℃で1時間保持した後、並びに1サイクル後の25℃で1時間保持した後における角度変化量を求めた。なお、表における角度変化量は、分による。
【0097】
〔接着性試験〕
接着性試験は、押し抜き接着強度により測定した。図3に示すとおりに、PPS(ポリフェニレンサルファイド、出光PPS NT7790(出光社製))に、端面研磨したアルミニウムチップ(エンジニアリングテストサービス社製、A5052P、縦10mm×横10mm×高さ2mm)に、ディスペンサー調整器(武蔵エンジニアリング製 ML−606)を用いて0.0025ccの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をシリンジを用いて塗布し、次いで20mmの距離からUV照射器(浜松ホトニクス社製、LC6)を用いて、UV照度計(ウシオ電機社製、UIT−101)を用いて250mW/cmのUV光を12秒間照射して固定した。このようにして、接着性試験片を作製した。押し抜き試験機(島津製作所製AGS−500D)を用いて、チップを固定していない側から、直径4mmの領域について、押し抜き速度10mm/分で押しぬき強度を測定した。40N以上の強度で、浮き剥がれなしの状態を示したものを、○とした。同様の試験をPPSチップ(縦10mm×横10mm×高さ2mm)とPPS板とで、及び端面研磨したアルミニウムチップとアルミ板(エンジニアリングテストサービス社製、A5052P)で行った。
【0098】
(実施例1〜7および比較例1〜2)
表1及び表2に示す種類の原材料を表1及び表2に示す組成で混合して樹脂組成物を調製した。得られた組成物について、接着強度の測定及び耐湿性、耐熱性、耐ヒートショック評価試験を行った。それらの結果を表1及び表2に示す。なお、含有量は重量部である。
耐湿性試験は、LH21−21M(ナガノサイエンス社製)を用いて、65℃/95%RH−336時間の条件で行った。浮き剥がれ、あるいは割れ、端部のクラックが観察されず、接着強度が40N以上であったものを○とした。
耐熱性は、LC−112(Espec社製)を用いて、80℃−336時間の条件で行った。浮き剥がれ、あるいは割れ、端部のクラックが観察されず、接着強度が40N以上であったものを○とした。
耐ヒートショック評価試験は、TSA-41L(Espec社製)を用いて、−40℃(30分)/85℃(30分)の100サイクルの条件で行った。浮き剥がれ、あるいは割れ、端部のクラックが観察されず、接着強度が40N以上であったものを○とした。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
本発明の硬化性組成物は、例えば、LD、光検出器、レンズ、プリズムなどの光学部品や、レンズ等の光学部品が乗っている光学モジュール等を、高い固定精度で固定できるので、光学装置組み立て用の接着剤として有用である。
【符号の説明】
【0102】
1 活性エネルギー線硬化性樹脂組物
2 アルミ板
3 UV照射器
4 SUS板
5 台座
6 チルトセンサー
7 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
8 アルミニウム板
9 PPS板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、下記(A)成分〜(D)成分:
(A)(a1)グリセロール誘導体及びエーテル骨格を連結官能基とした直線状又は分岐状のその多量体、
(a2)トリメチロールプロパン誘導体及びエーテル骨格を連結官能基とした直線状又は分岐状のその多量体、
(a3)ペンタエリスリトール誘導体の単量体及びエーテル骨格を連結官能基とした直線状又は分岐状のその多量体、並びに
(a4)エーテル結合又はエステル結合を含み、かつ4以上の末端に(メタ)アクリロイル基が配置された樹木状分子化合物
からなる群より選択される、分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能アクリレート化合物、
(B)光硬化性プレポリマー、
(C)単官能又は2官能の(メタ)アクリロイル基含有モノマー、及び
(D)光重合開始剤
を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分〜(D)成分の重量に対して、(A)成分が0.01〜25重量%である、請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
光学部品を貼り合わせるための接着剤である、請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
光ピックアップ装置組み立て用の接着剤である、請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物で貼り合わせた、接着構造体。
【請求項6】
請求項3記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて貼り合わせた、光学部品。
【請求項7】
請求項4記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を使用して組み立てた、光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−144641(P2012−144641A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4174(P2011−4174)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000162434)協立化学産業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】