説明

多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物及び該化合物を含有する感光性熱硬化性樹脂組成物並びにその硬化物

【課題】
本発明の目的は、優れた硬化皮膜を達成することが可能な多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物及び該多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物を含有する感光性熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】
本発明の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)は、一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物(a)と(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)の反応物にさらに多塩基酸無水物(d)を反応させた下記一般式[化1]:
【化1】


に示すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物及び該化合物を含有する感光性熱硬化性樹脂組成物並びにその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のプリント配線板の製造は、配線(回路)パターン形成後、電子部品をプリント配線板へはんだ付けにて実装する際に、不必要な部分にはんだが付着しないように保護する目的で、ソルダーマスクと呼ばれる保護層を被覆することが行われている。
【0003】
民生用並びに産業用プリント配線板や封止樹脂を用いたBGAやCSP等のICパッケージ用プリント配線板の製造に用いられるソルダーレジストは、紫外線硬化型、又は熱硬化型もしくは紫外線硬化と熱硬化を併用する液状ソルダーレジストインキをプリント配線板上にスクリーン印刷等の印刷法により塗布するタイプや、ポリエステルフィルムやポリエチレンフィルム等を支持体とする有機溶剤を含まないドライフィルムレジストをプリント配線板に貼り付けて支持体を剥がすことにより皮膜を得るタイプなどがあるが、近年は、高精度及び高密度の観点から紫外線硬化と熱硬化を併用するタイプが主流で、紫外線照射による光硬化(仮硬化)後、希アルカリ水溶液で現像することにより画像を形成し、熱で仕上げ硬化することにより皮膜を得ている。
【0004】
上記のICパッケージ用プリント配線板に従来市販のアルカリ現像型ソルダーレジストとして一般的なフェノールノボラック型の酸変性エポキシアクリレート化合物とエポキシ化合物を必須成分とするレジストインキ(例えば、特許文献1,2参照)を施した場合、その硬化皮膜はパッケージ実装時の各種めっき塗布時に変色したり、クラックが生じる問題や、また長期信頼性試験のひとつであるPCT試験(加湿試験)時にも同じく硬化皮膜にクラックが生じるという耐クラック性に問題が生じており改善が求められている。このような問題は、上記実装技術の場合のみに限られるものではなく、一般のプリント配線板のソルダーレジストにおいても望ましくない。
【0005】
このような問題に対し、これまで様々な試みが行われている。例えば、ノボラック型エポキシ化合物にフェノール化合物及び/又はナフトール化合物と不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、さらに多塩基酸無水物を反応させた反応生成物と、エポキシ化合物を必須成分とするレジストインキがある(例えば、特許文献3,4参照)。このレジストインキは形成される硬化皮膜に可撓性が付与され耐クラック性は解決しているものの、アルカリ現像性が十分でなく、レジストパターンの鮮明な画像形成が困難になるという問題が生じている。また、ビスフェノールF型エポキシ化合物或いはゴム変性エポキシから選ばれるエポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、さらに多塩基酸無水物を反応させた反応生成物と、エポキシ化合物を必須成分とするレジストインキ(例えば、特許文献5参照)や、特定構造を有するビスフェノール型多官能エポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、さらに多塩基酸無水物を反応させた反応生成物と、エポキシ化合物を必須成分とするレジストインキがある(例えば、特許文献6参照)。これらのレジストインキは、形成される硬化皮膜に可撓性が付与され耐クラック性は解決しているものの、いずれも紫外線(光)への感度が低いため、形成される画像の解像度が低く、近年さらには次世代で要求される高密度実装には十分に対応できないという問題が懸念されている。
【0006】
さらに、ノボラック型エポキシ化合物及び/又はグリコール系エポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸と飽和モノカルボン酸を反応させ、さらに多塩基酸無水物を反応させた反応生成物と、エポキシ化合物を必須成分とするレジストインキ(例えば、特許文献7参照)、エポキシ化合物と1分子中にアルコール性水酸基1個とカルボキシル基及びアミノ基から選ばれる1個の官能基を有する化合物と不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、さらに多塩基酸無水物を反応させた反応生成物がある(例えば、特許文献8参照)。
【0007】
さらには三塩基酸以上の酸無水物と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応生成物単独又はそれと(メタ)アクリル酸との混合物を、カルボキシル基が未反応で残るようにエポキシ樹脂又はエポキシ(メタ)アクリレートと反応させた反応生成物がある(例えば、特許文献9,10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−243869号公報
【特許文献2】特開平3−253093号公報
【特許文献3】特開平11−288091号公報
【特許文献4】特開平11−315107号公報
【特許文献5】特開平11−242331号公報
【特許文献6】特開2001−278947号公報
【特許文献7】特開2000−321765号公報
【特許文献8】特開2002−90994号公報
【特許文献9】特開平4−170480号公報
【特許文献10】特開平4−170481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献に記載された発明は、いずれも形成される硬化皮膜に可撓性が付与され耐クラック性は解決しているものの、耐クラック性と同様に長期信頼性試験のひとつであるPCT(プレッシャー・クッカーテスト)耐性が十分でなく、皮膜の溶剤乾燥工程時における現像ライフが著しく短く、プリント配線板における配線パターンを形成することが困難であるなどの問題が生じている。さらに上記特許文献7において可撓性の程度を調整するために反応において飽和モノカルボン酸を多量に配合した場合、皮膜の溶剤乾燥工程後の指触乾燥性が著しく低下するという問題が生じており、また前記特許文献9においては、現像ライフを維持するために高価なマイクロカプセル化された熱硬化触媒を必要とする等の問題が生じている。
【0010】
このように、耐クラック性を解決するために形成される硬化皮膜に可撓性を付与した場合、一般にアルカリ現像性、もしくはPCT耐性のいずれかが大きく低下し、さらには溶剤乾燥工程における現像ライフや溶剤乾燥工程後の指触乾燥性が低下するなど、半導体パッケージのプリント配線板の製造に用いられるソルダーレジストインキとしての基本性能である皮膜の指触乾燥性、アルカリ現像性、現像ライフ、さらにはPCT耐性、はんだ耐熱性、基材との密着性、めっき性、電気絶縁性等をバランス良く両立させ、実装時及び長期信頼性試験の冷熱サイクル試験において発生する硬化皮膜のクラック問題を完全に解決することは極めて困難であり、これまで十分に満足するものがないのが現状である。
【0011】
本発明の目的は、優れた硬化皮膜を達成することが可能な多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物及び該多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物を含有する感光性熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記のような課題を解決するために鋭意検討を行った結果、上記の目的を達成するのに好適な新しい構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物を見出し、該エポキシ(メタ)アクリレート化合物に、エポキシ化合物、光重合開始剤、及び希釈剤を必須成分として配合した感光性熱硬化性樹脂組成物が、上記のような多岐に亘る必要特性に対しバランスの良い特性を示し、かつ形成される硬化皮膜のPCT耐性、めっき耐性が著しく優れた硬化物を与えることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)は、一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物(a)と(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)の反応物にさらに多塩基酸無水物(d)を反応させた下記一般式[化1]:
【化1】

に示すことを特徴とする。(式中、Xは二価の芳香族基及び/又はアルキル基及び/又はシクロヘキシル基、Yは二価の芳香族残基、ジカルボン酸残基を表す。Mは少なくとも1つは、(メタ)アクリル酸無水物が反応したカルボン酸残基であり、又少なくとも1つは、カルボキシル基を1個以上含有する多塩基酸無水物の残基であり、残りは水素原子を表す。Qは(メタ)アクリル酸無水物が水酸基と反応して生成する(メタ)アクリル酸の残基、及び不飽和基含有モノカルボン酸の残基を表す。mは、0〜100である。)
【0014】
また、本発明の化合物の好ましい実施態様において、多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)が、酸価60〜110mgKOH/gの範囲であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の化合物の好ましい実施態様において、前記酸価の95%以上が多塩基酸無水物由来のカルボキシル基由来であることを特徴とする請求項2記載の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)。
【0016】
本発明の感光性熱硬化性樹脂組成物は、本発明の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)、光重合開始剤(C)、希釈剤(D)を必須成分として含有することを特徴とする。
【0017】
本発明の硬化物は、本発明の感光性熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物は、一般式[化2]:
【化2】

(式中、Xは二価の芳香族基及び/又はアルキル基及び/又はシクロヘキシル基、Yは二価の芳香族残基、ジカルボン酸残基を表す。Mは少なくとも1つは、(メタ)アクリル酸無水物が反応したカルボン酸残基であり、又少なくとも1つは、カルボキシル基を1個以上含有する多塩基酸無水物の残基であり、残りは水素原子を表す。Qは(メタ)アクリル酸無水物が水酸基と反応して生成する(メタ)アクリル酸の残基、及び不飽和基含有モノカルボン酸の残基を表す。mは、0〜100である。)で表されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明における多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)は、分子中にラジカル重合し得る感光性の二重結合とカルボキシル基を有しており、紫外線(光)照射下で光重合開始剤によりラジカル重合して硬化物(仮硬化)を形成し、光照射されない部分は希アルカリ溶液により除去されるアルカリ現像性に優れており、さらに硬化物中に存在するカルボキシル基が、熱硬化工程(仕上げ硬化)において共存するエポキシ化合物(B)と反応して強固な結合を形成し優れた硬化皮膜を得ることができるという有利な効果を奏する。
【0020】
本発明の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物を含有する感光性熱硬化性樹脂組成物は、指触乾燥性、アルカリ現像性、紫外線に対する感度のバランスに優れ、かつレジスト塗膜として必要な密着性、はんだ耐熱性、PCT耐性に高いレベルで優れた硬化塗膜を与えることができるという有利な効果を奏する。そのためプリント配線板の製造、特にBGA(ボールドグリットアレイ)や、CSP(チップスケールパッケージ)などのICパッケージ製造の材料として最適であるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】合成例1で得られた多官能エポキシアクリレート化合物の核磁気共鳴スペクトルを示す。
【図2】合成例1で得られた多官能エポキシアクリレート化合物の赤外線吸収スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一例について以下に説明する。まず、本明細書中において、(メタ)アクリル酸無水物とは、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物又はこれらの混合物を、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの混合物を、エポキシ(メタ)アクリレートとは、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、又はこれらの混合物を意味する。また、感光性熱硬化性樹脂組成物を単に「硬化性樹脂組成物」ということがある。
【0023】
本発明の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物は、一般式[化3]:
【化3】

で表される。
【0024】
式中、Xは二価の芳香族基及び/又はアルキル基及び/又はシクロヘキシル基、Yは二価の芳香族残基、ジカルボン酸残基を表す。Mは少なくとも1つは、(メタ)アクリル酸無水物が反応したカルボン酸残基であり、又少なくとも1つは、カルボキシル基を1個以上含有する多塩基酸無水物の残基であり、残りは水素原子を表す。また、Qは(メタ)アクリル酸無水物が水酸基と反応して生成する(メタ)アクリル酸の残基、及び不飽和基含有モノカルボン酸の残基を表す。nは0〜100とすることができ、また、mは、0〜100とすることができる。
【0025】
また、本発明の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物は、一般式[化4]:
【化4】

で表される。
【0026】
式中、Xは二価の芳香族基及び/又はアルキル基及び/又はシクロヘキシル基、Yは二価の芳香族残基、ジカルボン酸残基を表す。Mは少なくとも1つは、(メタ)アクリル酸無水物が反応したカルボン酸残基であり、又少なくとも1つは、カルボキシル基を1個以上含有する多塩基酸無水物の残基であり、残りは水素原子を表す。また、Qは(メタ)アクリル酸無水物が水酸基と反応して生成する(メタ)アクリル酸の残基、及び不飽和基含有モノカルボン酸の残基を表す。nは0〜100とすることでき、mは、0〜100とすることができる。
【0027】
また、本発明は、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有するエポキシ化合物(a)と(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)を反応させて得られる反応生成物に、さらに多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物、及び該酸変性エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)、光重合開始剤(C)、希釈剤(D)を必須成分として含有する感光性熱硬化性樹脂組成物、並びに該感光性熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる優れた硬化皮膜特性を有する硬化物を提供するものである。
【0028】
まず、本発明における多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)について説明する。本発明の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)は、一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物(a)と(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)の反応物にさらに多塩基酸無水物(d)を反応させた下記一般式[化5]:
【化5】

、又は一般式[化6]:
【化6】

に示すことを特徴とする。(式中、Xは二価の芳香族基及び/又はアルキル基及び/又はシクロヘキシル基、Yは二価の芳香族残基、ジカルボン酸残基を表す。Mは少なくとも1つは、(メタ)アクリル酸無水物が反応したカルボン酸残基であり、又少なくとも1つは、カルボキシル基を1個以上含有する多塩基酸無水物の残基であり、残りは水素原子を表す。Qは(メタ)アクリル酸無水物が水酸基と反応して生成する(メタ)アクリル酸の残基、及び不飽和基含有モノカルボン酸の残基を表す。nは0〜100、mは、0〜100である。)
【0029】
上記の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)を、後述の公知の触媒及び重合禁止剤の存在下又は非存在下、不活性ガス気流中又は空気を存在させ、後述の希釈剤の存在下又は非存在下、60〜150℃で反応させて分子中に2級アルコール性水酸基および不飽和基を有する反応生成物を得、更に該反応生成物中に残存するアルコール性水酸基に多塩基酸無水物(d)を30〜150℃で反応させることにより得ることができる。
【0030】
なお、1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)との反応の追跡は、JIS
K6901に記す酸価(mgKOH/g)の測定により確認した。また、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)との反応生成物と多塩基酸無水物(d)との反応は、IR測定から酸無水物特有の吸収波長(1780cm-1)の存在の有無及び酸価測定により追跡確認した。
【0031】
前記エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)を合成する際に使用する1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)としては、特に限定されないが、1分子中に2個以上の活性水素を有するフェノール類、カルボン酸類、グリコール類、又はアミン類を、単独又は2種以上を組み合わせて、公知の方法によりエピクロルヒドリンにてエポキシ化することにより得ることができるエポキシ化合物、1分子中に2個の活性水素を有するフェノール類、カルボン酸類、グリコール類、又はアミン類を、単独又は2種以上を組み合わせて、公知の方法によりエピクロルヒドリンにてエポキシ化し、さらに分子中における2級のアルコール性水酸基を公知の方法によりエピクロルヒドリンにてエポキシ化して得られる1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、フェノール、クレゾール等のフェノール類をホルムアルデヒドで付加縮合して得られる1分子中に3個以上のフェノール性水酸基を有するフェノールノボラック類を公知の方法によりエピクロルヒドリンにてエポキシ化することにより得られる1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と2個の活性水素を有するジカルボン酸類、不飽和基含有ジカルボン酸類、フェノール類のいずれかを反応させて得られるエポキシ化合物が挙げられる。
【0032】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)は、一般的な市販品も使用することができる。市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコート828」、「エピコート834」、「エピコート1001」、「エピコート1004」、大日本インキ化学工業社製の商品名「エピクロン840」、「エピクロン850」、「エピクロン1050」、「エピクロン2055」、東都化成社製の商品名「エポトート128」、ダウケミカル社製の商品名「D.E.R.317」、「D.E.R.331」、「D.E.R.661」、「D.E.R.664」、旭化成工業社製の商品名「アラルダイト250」、「アラルダイト260」、「アラルダイト2600」、住友化学工業社製の商品名「スミエポキシESA−011」、「スミエポキシESA−014」、「スミエポキシELA−128」等のビスフェノールA型エポキシ化合物、大日本インキ化学工業社製の商品名「エピクロン830S」、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコート807」、東都化成社製の商品名エポトートYDF−170」、「エポトートYDF−175」、「エポトートYDF−2004」、旭化成工業社製の「アラルダイトXPY306」等のビスフェノールF型エポキシ化合物、日本化薬製の商品名「EBPS−200」、旭電化工業社製の商品名「EPX−30」、大日本インキ化学工業社製の商品名「エピクロンEXA1514」等のビスフェノールS型エポキシ化合物、大阪ガス社製の商品名「BPFG」等のビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「YL−6056」、「YL−6021」、「YX−4000」、「YX−4000H」等のビキシレノール型、或いはビフェニル型エポキシ化合物、又はそれらの混合物、東都化成社製の商品名「エポトートST−2004」、「ST−2007」、「ST−3000」等の水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコート152」、「エピコート154」、ダウケミカル社製の商品名「D.E.N.431」、「D.E.N.438」、大日本インキ化学工業社製の商品名「エピクロンN−690」、「エピクロンN−695」、「エピクロンN−730」、「エピクロンN−770」、「エピクロンN−865」、東都化成社製の商品名「エポトートYDCN−701」、「エポトートYDCN−704」、旭化成工業社製の商品名「アラルダイトECN1235」、「アラルダイトECN1273」、「アラルダイトECN1299」、「アラルダイトXPY307」、日本化薬社製の商品名「EPPN−201」、「EOCN−1025」、「EOCN−1020」、「EOCN−104S」、「RE−306」、住友化学工業社製の商品名「スミエポキシESCN−195X」、「ESCN−220」等のノボラック型エポキシ化合物、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコートYL−903」、大日本インキ化学工業社製の商品名「エピクロン152」、「エピクロン165」、東都化成社製の商品名「エポトートYDB−400」、「エポトートYDB−500」、ダウケミカル社製の商品名「D.E.R542」、旭化成工業社製の商品名「アラルダイト8018」、住友化学工業社製の商品名「スミエポキシESB−400」、「スミエポキシESB−700」等の臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、新日鉄化学社製の商品名「ESN−190」、「ESN−360」、大日本インキ化学工業社製の商品名「HP−4032」、「EXA−4700」、「EXA−4750」等のナフタレン骨格を有するエポキシ化合物、大日本インキ化学工業社製の商品名「HP−7200」、「HP−7200H」等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ化合物、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「YL−933」、日本化薬社製の商品名「EPPN−501」「EPPN−502」等のトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ化合物、日産化学社製の商品名「TEPIC」、三菱ガス化学社製の商品名「TGI」等の複素環式エポキシ化合物、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコート604」、東都化成社製の商品名「エポトートYH−434」、旭化成工業社製の商品名「アラルダイトMY720」、住友化学工業社製の商品名「スミエポキシELM−120」等のグリシジルアミン型エポキシ化合物、ダイセル化学工業社製の商品名「セロキサイド2011」、旭化成工業社製の商品名「アラルダイトCY175」、「アラルダイトCY179」、新日本理化社製の商品名「HBE−100」等の脂環式エポキシ化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらエポキシ化合物は単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を変性する2個の活性水素を有するフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ナフタレンジオールなどが挙げられ、ジカルボン酸類としては、イソフタル酸、テレフタル酸、ダイマー酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、不飽和基含有ジカルボン酸類としては、無水トリメリット酸と不飽和基含有モノアルコールの反応物、無水ピロメリット酸と不飽和基含有モノアルコールの反応物などが挙げられる。前記の不飽和基含有モノアルコールとは、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルのことであり、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0034】
前記多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)を合成する際に使用する(メタ)アクリル酸無水物(b)とは、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、アクリル酸メタクリル酸無水物のことであり、単独又は2種を組み合わせて使用することができる。
【0035】
前記エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)を合成する際に使用する不飽和基含有モノカルボン酸(c)は、ラジカル重合性を示すモノカルボン酸であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、二塩基酸無水物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの付加物、(メタ)アクリル酸カプロラクトン付加物と二塩基酸無水物の付加物が挙げられる。二塩基酸無水物としては、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで特に好ましいのはアクリル酸、メタクリル酸である。これら不飽和基含有モノカルボン酸(c)は単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
上記の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)の合成配合は、1分子中に2個以上のエポキシ化合物(a)のエポキシ基1当量に対し、(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)のカルボキシル基の合計が0.8〜1.5当量の範囲で、好ましくは1.0〜1.2当量の範囲、さらに好ましくは1.0〜1.05当量の範囲で配合される。カルボキシル基の合計が0.8当量未満の場合は、反応中にゲル化を起こす虞がある。一方、1.5当量を超える場合は、未反応の(メタ)アクリル酸無水物(b)、又は不飽和基含有モノカルボン酸(c)がエポキシ(メタ)アクリレート化合物に残存する虞がある。
【0037】
前記多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)における1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)との反応は、上記の配合で、さらに後述する公知の重合禁止剤を存在させ、後述する希釈剤の存在下又は非存在下で、反応温度60〜150℃、好ましくは80〜130℃に加熱して、好ましくは空気の存在下、反応時間は0.5〜30時間の範囲内で反応させる。反応温度が60℃より低い場合は、長時間反応が必要となり不経済である一方、150℃より高い場合は、反応中にゲル化を起こす虞がある。反応混合物はエポキシ基とカルボキシル基との反応を進め、上記反応混合物の酸価として10mgKOH/g未満、好ましくは5mgKOH/g、より好ましくは1mgKOH/g以下まで反応させ、上記(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)由来のカルボキシル基をできるだけ少なくすることが好ましい。酸価が10mgKOH/gよりも大きい場合はインキの安定性、現像性が低下する虞がある。
【0038】
前記多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)の製造における上記1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物(a)と(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)反応に際して、反応を円滑に進めるために公知の触媒を用いることが好ましい。このような触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン等の3級アミン又は4級アンモニウム塩、イミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、トリフェニルホスフィン等の有機燐化合物、トリフェニルアンチモン等の有機アンチモン化合物を挙げることができる。
【0039】
これらの触媒は、一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物(a)と(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)の合計100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲、好ましくは0.05〜5重量部の範囲で使用することができる。0.01未満の場合は、反応に長時間を要し不経済である一方、10重量部を超える場合は、反応が早すぎるため、温度コントロールが難しく、発熱が高い場合はゲル化を起こす虞がある。
【0040】
上記多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)の製造における1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物(a)と(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)反応は、製造中の安定性と反応生成物の貯蔵安定性を確保するため、公知の重合禁止剤を使用してもよい。
【0041】
このような重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、モノメチルエーテルハイドロキノン、トルハイドロキノン、ジ−tert−4−メチルフェノール、トリモノメチルエーテルハイドロキノン、フェノチアジン、tert−ブチルカテコール等を挙げることができる。これの使用量は、上記一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物(a)と(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)の合計100重量部に対して、それぞれ0.0001〜1重量部の範囲、好ましくは0.001〜0.2重量部の範囲で使用することができる。0.0001重量部未満の場合は、重合禁止効果が小さく、反応途中でゲル化を起こし、目的とする化合物が得られない場合や、反応生成物の貯蔵安定性が著しく低下する場合がある。一方、1重量部を超える場合は、前記多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)とエポキシ化合物(B)を含有する硬化性樹脂組成物の硬化反応を阻害し、未硬化物を含有する硬化物が得られ、各特性の要求性能を満足しない虞がある。
【0042】
本発明の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)は、上記した1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物(a)と(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)の反応によって得られる反応生成物中に残存する2級のアルコール性水酸基に、さらに多塩基酸無水物(d)を反応させ、分子中にカルボキシル基を導入したポリカルボン酸エポキシ(メタ)アクリレート化合物である。
【0043】
上記多塩基酸無水物(d)としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の二塩基酸無水物、無水トリメリット酸等の三塩基酸無水物、無水ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコール−ビス(無水トリメリット酸)エステル、グリセリンα、α−ビス(無水トリメリット酸)エステルβ−モノ酢酸エステル、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等の四塩基酸無水物が挙げられる。
【0044】
これらのうちインキの安定性、現像性から無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の脂肪族或いは脂環式構造を有する多塩基酸無水物を選択することが好ましい。また、上記多塩基酸無水物(d)は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
本発明の好ましい実施態様において、多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)の酸価は60〜110mgKOH/gの範囲内であればよい。多塩基酸無水物(d)の使用量は、上記(a)、(b)および(c)の配合比、これらの反応生成物中の2級アルコール性水酸基含有量並びに所望する酸価等により、適宜上記の酸価を満足するに足る量が使用される。また、酸価の95%以上が多塩基酸無水物(d)由来のカルボキシル基であることがインキの安定性、現像性の面から望ましい。また、酸価が60mgKOH/g未満の場合は、アルカリ水溶液に対する溶解性が悪くなり、形成した硬化皮膜の現像が困難になる虞があり、また、はんだ耐熱性やPCT耐性などが低下する虞がある。一方、110mgKOH/gを超える場合は、光硬化(仮硬化)における露光の条件によらず露光部の表面まで現像されてしまう虞があり、また、耐湿性の低下を招く虞がある。
【0046】
本発明の1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物(a)と(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)の反応によって得られる反応生成物中に残存する2級のアルコール性水酸基と多塩基酸無水物(d)の反応は、後記の希釈剤の存在下又は非存在下で、反応温度30〜150℃、好ましくは70〜130℃に加熱して、好ましくは空気の存在下、反応時間は0.5〜30時間反応させることができる。反応温度が30℃より低い場合は、反応に長時間を要し不経済である一方、150℃より高い場合は、反応中にゲル化を起こす虞がある。また、反応においては、反応を円滑に進める目的や製造中の安定性と反応生成物の貯蔵安定性を確保する目的で、上記の公知の重合禁止剤及び触媒を追加して使用することができる。
【0047】
次に、本発明の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)、光重合開始剤(C)および希釈剤(D)を含有する感光性熱硬化性樹脂組成物について説明する。
【0048】
多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)については、上述した本発明の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)の説明を参照することができる。
【0049】
上記感光性熱硬化性樹脂組成物を構成する1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)は、特に限定されないが、1分子中に2個以上の活性水素を有するフェノール類、カルボン酸類、グリコール類、又はアミン類を、単独又は2種以上を組み合わせて、公知の方法によりエピクロルヒドリンにてエポキシ化することにより得ることができる。また、1分子中に2個の活性水素を有するフェノール類、カルボン酸類、グリコール類、又はアミン類を、単独又は2種以上を組み合わせて、公知の方法によりエピクロルヒドリンにてエポキシ化し、さらに分子中における2級のアルコール性水酸基を公知の方法によりエピクロルヒドリンにてエポキシ化して得られる1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物も使用することができる。さらには、フェノール、クレゾール等のフェノール類をホルムアルデヒドで付加縮合して得られる1分子中に3個以上のフェノール性水酸基を有するフェノールノボラック類を公知の方法によりエピクロルヒドリンにてエポキシ化することにより得られる1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物も使用することができる。
【0050】
上記1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)は、一般的な市販品も使用することができる。市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコート828」、「エピコート834」、「エピコート1001」、「エピコート1004」、大日本インキ化学工業社製の商品名「エピクロン840」、「エピクロン850」、「エピクロン1050」、「エピクロン2055」、東都化成社製の商品名「エポトート128」、ダウケミカル社製の商品名「D.E.R.317」、「D.E.R.331」、「D.E.R.661」、「D.E.R.664」、旭化成工業社製の商品名「アラルダイト250」、「アラルダイト260」、「アラルダイト2600」、住友化学工業社製の商品名「スミエポキシESA−011」、「スミエポキシESA−014」、「スミエポキシELA−128」等のビスフェノールA型エポキシ化合物、大日本インキ化学工業社製の商品名「エピクロン830S」、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコート807」、東都化成社製の商品名エポトートYDF−170」、「エポトートYDF−175」、「エポトートYDF−2004」、旭化成工業社製の「アラルダイトXPY306」等のビスフェノールF型エポキシ化合物、日本化薬製の商品名「EBPS−200」、旭電化工業社製の商品名「EPX−30」、大日本インキ化学工業社製の商品名「エピクロンEXA1514」等のビスフェノールS型エポキシ化合物、大阪ガス社製の商品名「BPFG」等のビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「YL−6056」、「YL−6021」、「YX−4000」、「YX−4000H」等のビキシレノール型、或いはビフェニル型エポキシ化合物、又はそれらの混合物、東都化成社製の商品名「エポトートST−2004」、「ST−2007」、「ST−3000」等の水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコート152」、「エピコート154」、ダウケミカル社製の商品名「D.E.N.431」、「D.E.N.438」、大日本インキ化学工業社製の商品名「エピクロンN−690」、「エピクロンN−695」、「エピクロンN−730」、「エピクロンN−770」、「エピクロンN−865」、東都化成社製の商品名「エポトートYDCN−701」、「エポトートYDCN−704」、旭化成工業社製の商品名「アラルダイトECN1235」、「アラルダイトECN1273」、「アラルダイトECN1299」、「アラルダイトXPY307」、日本化薬社製の商品名「EPPN−201」、「EOCN−1025」、「EOCN−1020」、「EOCN−104S」、「RE−306」、住友化学工業社製の商品名「スミエポキシESCN−195X」、「ESCN−220」等のノボラック型エポキシ化合物、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコートYL−903」、大日本インキ化学工業社製の商品名「エピクロン152」、「エピクロン165」、東都化成社製の商品名「エポトートYDB−400」、「エポトートYDB−500」、ダウケミカル社製の商品名「D.E.R542」、旭化成工業社製の商品名「アラルダイト8018」、住友化学工業社製の商品名「スミエポキシESB−400」、「スミエポキシESB−700」等の臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、新日鉄化学社製の商品名「ESN−190」、「ESN−360」、大日本インキ化学工業社製の商品名「HP−4032」、「EXA−4700」、「EXA−4750」等のナフタレン骨格を有するエポキシ化合物、大日本インキ化学工業社製の商品名「HP−7200」、「HP−7200H」等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ化合物、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「YL−933」、日本化薬社製の商品名「EPPN−501」「EPPN−502」等のトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ化合物、日産化学社製の商品名「TEPIC」、三菱ガス化学社製の商品名「TGI」等の複素環式エポキシ化合物、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコート604」、東都化成社製の商品名「エポトートYH−434」、旭化成工業社製の商品名「アラルダイトMY720」、住友化学工業社製の商品名「スミエポキシELM−120」等のグリシジルアミン型エポキシ化合物、ダイセル化学工業社製の商品名「セロキサイド2011」、旭化成工業社製の商品名「アラルダイトCY175」、「アラルダイトCY179」、新日本理化社製の商品名「HBE−100」等の脂環式エポキシ化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらエポキシ化合物は単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
前記1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)は、レジストパターン形成後、熱により仕上げ硬化を行うことにより、多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)のカルボキシル基との間で反応して強固な結合を形成し、ソルダーレジストの硬化皮膜と基材との密着性、耐熱性等の特性を向上させる。その配合量は、多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)の分子中におけるカルボキシル基1当量に対して、エポキシ基が0.1〜1.5当量、好ましくは0.5〜1.3当量の範囲内で配合される。0.1当量未満の場合は、硬化皮膜の吸湿性が高くなり電気絶縁性が低下する虞がある。一方、1.5当量を超える場合は、光硬化性(仮硬化)やアルカリ現像性が低下し、レジストパターンの画像形成が困難になる虞がある。
【0052】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物における光重合開始剤(C)について詳細に説明する。本発明で用いる光重合開始剤(C)は、該硬化性樹脂組成物を光硬化(仮硬化)させる際に紫外線(光)照射によりラジカルを発生し、ラジカル重合により硬化させる作用を有する。
【0053】
このような光重合開始剤(C)としては公知のものを使用することができ、好ましい光重合開始剤(E)としては、例えば、ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類及びベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアエトフェノン類、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等のアントラキノン類、2,4−ジメチルチオキサントン等のチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール、等のケタール類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、及びキサントン類等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。さらに、このような光重合開始剤(C)は、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート等の安息香酸エステル類、或いはトリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような公知の光増感剤を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
上記の光重合開始剤(C)の使用量は、多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)100重量部に対して、0.1〜30重量部の範囲で使用することが好ましく、さらに1〜20重量部の範囲で使用することが好ましい。0.1重量部未満の場合は、紫外線(光)照射により重合が進まず、形成される皮膜は未硬化になりアルカリ現像性が低下する虞がある一方、30重量部を超える場合は、硬化皮膜の耐熱性、機械的特性が低下する虞があるためである。
【0055】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物における希釈剤(D)について詳細に説明する。本発明の硬化性樹脂組成物に使用する希釈剤(D)は、有機溶剤および(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、上記多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)を溶解し、ソルダーレジストインキとして適切な作業粘度を確保する作用と、(メタ)アクリル酸エステルのような反応性を有する希釈剤はラジカル重合する際にネットワーク中に取り込まれ、光硬化性、耐熱性、耐クラック性の向上、基板との密着性等を向上させる作用効果を奏する。
【0056】
また、希釈剤(D)は、上記多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)の製造において1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物(a)と(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)の反応、さらにはこの反応生成物と多塩基酸無水物(d)の反応において、ゲル化を起こすことのない安定な反応生成物を得る目的で希釈剤(D)にて適切な粘度に調整することもできる。
【0057】
このような希釈剤(D)としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等の有機溶剤を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
また、希釈剤(D)は、上記有機溶剤の一部又は全量を、光硬化性を有する(メタ)アクリル酸エステル類に置き換えて使用することができる。このような(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート類、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシヌレート等の多価アルコール、又は、これらのエチレンオキサイド、もしくはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキサイド或いはプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート類、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート類、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のε−カプロラクトン変性(メタ)アクリレート類、及びメラミン(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
上記希釈剤(D)の使用量は、多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)100重量部に対して1〜300重量部の範囲で配合されることができる。また、上記希釈剤(D)として、(メタ)アクリル酸エステル類を使用する場合は、その使用量は、上記酸変性エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)100重量部に対して、3〜50重量部の範囲で、好ましくは5〜15重量部の範囲で使用することが好ましい。3重量部未満の場合は、光硬化性付与の効果は十分ではない場合があり、50重量部を超える場合は、乾燥皮膜の指触乾燥性が低下する場合があるという観点からである。
【0060】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて熱硬化工程(仕上げ硬化)における前記多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)の分子中におけるカルボキシル基と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)との反応を促進させる目的で、硬化促進剤を添加することができる。硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン、メラミン等のアミン化合物などが挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
このような硬化促進剤の使用量は、上記多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で、好ましくは0.5〜2重量部の範囲で使用することができる。0.1重量部未満の場合は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)の硬化反応を促進する効果が小さくなり、また、10重量部を超える場合は、硬化性樹脂組成物のライフが短くなる虞がある。
【0062】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じてプリント配線板との密着性を向上させることを目的に無機充填剤を添加することができる。例えば、タルク、シリカ、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機充填剤を配合することができる。これら無機充填剤は、硬化性樹脂組成物100重量部に対して最大150重量部の範囲で添加することができる。150重量部を超えると硬化性に悪影響を及ぼし、硬化皮膜の物性が低下する虞がある。
【0063】
本発明の硬化性樹脂組成物には、以上の成分の他に必要に応じて通常のソルダーレジスト樹脂組成物に添加されている種々の着色剤、レベリング剤及び消泡剤などを添加することができる。
【0064】
本発明の硬化性樹脂組成物は、以上述べた(A)、(B)、(C)及び(D)の配合成分、及び必要に応じて添加される配合成分をロールミル、サンドミル等により均一に混合して得ることができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物のプリント配線板上への塗布は、通常スクリーン印刷法、静電塗装法、ロールコーター法、カーテンコーター法等で行われる。塗布後は、60〜90℃の範囲で10〜60分間乾燥し、紫外線等の活性エネルギー線を照射後、0.1〜5重量%の炭酸ナトリウム水溶液などの希アルカリ水溶液で未露光部分を除去し現像することでソルダーパターンの画像を形成する。その後、皮膜を完全に硬化させるために熱風乾燥機又は遠赤外線などを用いて仕上げ硬化として熱処理(100〜180℃で5〜60分間)することにより上記1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)の硬化反応に加えて酸変性エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)及び希釈剤(D)として(メタ)アクリル酸エステル類を用いた場合、(メタ)アクリル酸エステル類の重合が促進され、密着性、耐熱性、機械特性の優れた硬化皮膜を得ることができる。さらに、必要に応じて、例えば、140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、また、さらに多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)及び希釈剤(D)の(メタ)アクリル酸エステル類の重合を促進する目的で、再度、紫外線(光)にて露光することにより、優れた特性を有する硬化皮膜とすることもできる。
【0065】
なお、紫外線(光)硬化させるための照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプ等が使用できる。
【0066】
このようにして得られる本発明の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物及び該多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物を含有する感光性熱硬化性樹脂組成物は、プリント配線板の製造、特にソルダーレジストを施したプリント配線板と封止樹脂を用いたBGA(ボール・グリッド・アレイ)やCSP(チップ・スケール・パッケージ)等のICパッケージの製造に使用される液状ソルダーレジストインキ、ドライフィルムレジストの電子材料分野において、実装時及び長期信頼性試験であるPCT試験(プレッシャークッカーテスト)において形成される硬化皮膜にクラックや剥れを生じることなく、指触乾燥性、感度、アルカリ現像性、現像ライフ、冷熱サイクル試験、さらには、はんだ耐熱性、基材との密着性、めっき性、電気絶縁性に優れた皮膜形成に適するという有利な効果を奏する。
【実施例】
【0067】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0068】
本実施例において「部」は特に断らない限り重量部である。また、本実施例において、多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂とは、多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物を有機溶剤及び/又は(メタ)アクリル酸エステル類の希釈剤に希釈されていることを意味する。
【0069】
<多官能エポキシアクリレート樹脂の合成例>
合成例1
<反応経路>
<反応1-1)>
無水トリメリット酸と2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させることにより、2-ヒドロキシエチルアクリレート・無水トリメリット酸付加物(ジカルボン酸化合物)が生成する。
【化7】

【0070】
([化7]:無水トリメリット酸+2-ヒドロキシエチルアクリレート
→ ジカルボン酸化合物[中間物1-1])
【0071】
<反応1-2)>
次いでビスフェノールA型エポキシ化合物、アクリル酸、メタクリル酸無水物を仕込み反応させると、次の二つの反応(反応1-2-1, 反応1-2-2)が同時に起こる。
【0072】
まず同時に起こる二つの反応のうち一つ目の反応1-2-1について説明する。
一つ目の反応1-2-1は、上記反応1-1で生成したジカルボン酸化合物[中間物1-1]とビスフェノールA型エポキシ化合物が反応し中間物として[中間物1-2-1a]が生成する。
【化8】

【0073】
([化8]:ビスフェノールA型エポキシ化合物+ジカルボン酸化合物[中間物1-1]→[中間物1-2-1a])
【0074】
ここで、[中間物1-2-1a]のM1は水素原子(−H)である。
【0075】
その後、この[中間物1-2-1a]の分子末端のエポキシ基の一部とアクリル酸が反応し(反応[化9])、[中間物1-2-1b、中間物1-2-1b’]が生成する。
【化9】

【0076】
[中間物1-2-1b、中間物1-2-1b’]、は、上記分子式のように、左末端にアクリル酸が反応する場合と、右末端にアクリル酸が反応する場合の二通りがある。ここで、Q1はアクリル酸の残基、M1は水素原子である。
【0077】
次いで、この二通りの[中間物1-2-1b、中間物1-2-1b’]とメタクリル酸無水物の反応が起こる(反応[化12])。
【0078】
メタクリル酸無水物は、[中間物1-2-1b、中間物1-2-1b’]の−OM1(M1: −H)の位置で反応を起こしメタクリル基
【化10】

が付加されると同時に、メタクリル酸
【化11】

を遊離する。この遊離したメタクリル酸は[中間物1-2-1b、中間物1-2-1b’]の残りのエポキシ基と反応し、分子末端がQ(Qはアクリル酸の残基、またはメタクリル酸の残基)となり、[中間物1-2-1c]を生成する(反応[化12])。
【化12】

【0079】
ここで、(反応[化9])と(反応[化12])は、反応の順番が逆の場合、つまり[中間物1-2-1a]が生成後、この[中間物1-2-1a]とメタクリル酸無水物が先に反応し(反応[化12])、後からアクリル酸が反応する(反応[化9])場合も確率的に起こるが、最終生成物は常に[中間物1-2-1c]で同じものとなる。
【0080】
次に二つ目の反応である反応1-2-2について説明すると以下の通りである。
二つ目の反応1-2-2は、上記の反応1-2)で仕込んだビスフェノールA型エポキシ化合物、アクリル酸が反応し(反応[化13)、[中間物1-2-2a]が得られる。次いで、メタクリル酸無水物が反応し(反応[化14])、[中間物1-2-2b]を生成する。具体的には、はじめにビスフェノールA型エポキシ化合物の末端エポキシ基のどちらか一方のエポキシ基とアクリル酸が反応し[中間物1-2-2a]を生成し、同時に水酸基(-OM1, M1:−H)が生じる(反応[化13])。次いでこの水酸基にメタクリル酸無水物が反応しメタクリル基が付加されると同時に、メタクリル酸が遊離され、このメタクリル酸は[中間物1-2-2a]の残りのエポキシ基と反応し、[中間物1-2-2b]を生成する(反応[化14])。
【化13】

【化14】

【0081】
つまり、反応1-2では、[中間物1-2-1c]と[中間物1-2-2b]の二つが生成し混合されて得られる。
【0082】
その後、この[中間物1-2-1c]と[中間物1-2-2b]の混合物に、テトラヒドロ無水フタル酸を仕込み反応させる。このテトラヒドロ無水フタル酸は、[中間物1-2-1c]と[中間物1-2-2b]の−OM2の位置でM2が水素原子(−H)の場合の水酸基(−OH)の一部に対して反応し(反応1-3-1[化15]、反応1-3-2[化16])、生成物としてそれぞれ[生成物1-3-1]と[生成物1-3-2]が生成する。
(反応1-3-1)
【化15】

【0083】
この[生成物1-3-1]は、本明細書の[化3]に対応し、[化3]におけるXがビスフェノールAの残基、Yがジカルボン酸(2-ヒドロキシエチルメタクリレートと無水トリメリット酸の付加物)の残基に相当する。
(反応1-3-2)
【化16】

【0084】
この[生成物1-3-2]は、本明細書の[化1]のm=0(すなわち、明細書の[化3]のn=0の場合)に対応し、[化1]又は[化3]におけるXがビスフェノールAの残基に相当する(m=0、又はn=0の場合、Yは存在しない)。
以上、合成例1では、[化1]と[化3](m=0、又はn=0)が同時に合成される例を示した。
【0085】
具体的には、下記のように合成を行った。
【0086】
ガス導入管、攪拌装置、冷却管、温度計を備えた反応容器に無水トリメリット酸74.2部と2−ヒドロキシエチルアクリレート54.6部を仕込み、空気を吹き込みながら、撹拌下、加熱して温度を85〜95℃に保持し反応させた。反応はIRにて追跡し、未反応の無水トリメリット酸の吸収(1780cm-1)が消失するまで継続した。反応には4時間を要した。次いで、ビスフェノールA型エポキシ化合物(旭化成工業社製の商品名「AER260」)275.6部、アクリル酸26.4部、メタクリル酸無水物55.4部、トリフェニルホスフィン1.4部、モノメチルエーテルハイドロキノン0.6部を仕込み、攪拌下、加熱して温度を110〜120℃に保持しながら10時間反応させ酸価4mgKOH/gの反応生成物を得た。その後、テトラヒドロ無水フタル酸161.5部を加え、攪拌下、温度を100〜110℃に保持しながら、さらに5時間反応させ、酸価95mgKOH/gの多官能エポキシアクリレート化合物を得た。この酸価の96.8%は、テトラヒドロ無水フタル酸が反応して生成したカルボキシル基由来である。この多官能エポキシアクリレート化合物をカルビトールアセテート433.1部に希釈して不揮発分60%の多官能エポキシアクリレート樹脂(a−1)を得た。図1は、合成例1で得られた多官能エポキシアクリレート化合物の核磁気共鳴スペクトルを示す。また、図2は、合成例1で得られた多官能エポキシアクリレート化合物の赤外線吸収スペクトルを示す。
【0087】
合成例2
<反応経路>
<反応2-1)>
無水ピロメリット酸と2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させることにより、2-ヒドロキシエチルアクリレート・無水ピロメリット酸付加物(ジカルボン酸化合物)が生成する。
【化17】

【0088】
([化17]:無水ピロメリット酸+2-ヒドロキシエチルアクリレート
→ジカルボン酸化合物[中間物2-1])
【0089】
<反応2-2)>
次いでビスフェノールF型エポキシ化合物、アクリル酸、アクリル酸無水物を仕込み反応させると、次の二つの反応(反応2-2-1, 反応2-2-2)が同時に起こる。
【0090】
まず同時に起こる二つの反応のうち一つ目の反応2-2-1について説明する。
一つ目の反応2-2-1は、反応2-1で生成したジカルボン酸化合物[中間物2-1]とビスフェノールF型エポキシ化合物が反応し中間物として[中間物2-2-1a]が生成する。
【化18】

【0091】
ここで[中間物2-2-1a]のM1は水素原子(H)である。その後、この[中間物2-2-1a]の分子末端のエポキシ基の一部とアクリル酸が反応し(反応[化19])、[中間物2-2-1b]が生成する。
【化19】

【0092】
[中間物2-2-1b、中間物2-2-1b’]は、上記分子式のように、左末端にアクリル酸が反応する場合と、右末端にアクリル酸が反応する場合の二通りがある。ここで、Qはアクリル酸の残基、M1は水素原子である。
【0093】
次いで、この二通りの[中間物2-2-1b、中間物2-2-1b’]とアクリル酸無水物の反応が起こる(反応[化20])。アクリル酸無水物は、[中間物2-2-1b、中間物2-2-1b’]の−OM1(M1: −H)の位置で反応を起こしアクリル基が付加されると同時に、アクリル酸を遊離する。このアクリル酸は、[中間物2-2-1b、中間物2-2-1b’]の残りのエポキシ基と反応し、分子の両末端がQ(アクリル酸の残基)となり、[中間物2-2-1c]を生成する。
【化20】

【0094】
ここで、(反応[化19])と(反応[化20])は、反応の順番が逆の場合、つまり[中間物2-2-1a]が生成後、この[中間物2-2-1a]とアクリル酸無水物が先に反応し(反応[化20])、後からアクリル酸が反応する(反応[化19])場合も確立的に起こるが、最終生成物は常に[中間物2-2-1c]で同じものとなる。
【0095】
次に二つ目の反応である反応2-2-2について説明する。
二つ目の反応2-2-2は、上記反応2-2)で仕込んだビスフェノールF型エポキシ化合物、アクリル酸が反応し(反応[化21])、[中間物2-2-2a]が得られる。次いで、アクリル酸無水物が反応し(反応[化22])、[中間物2-2-2b]を生成する。具体的には、はじめにビスフェノールF型エポキシ化合物の末端エポキシ基のどちらか一方のエポキシ基とアクリル酸が反応し[中間物2-2-2a]を生成し、同時に水酸基(−OM1, M1:−H)が生じる(反応[化21])。次いでこの水酸基にアクリル酸無水物が反応しアクリル基が付加させると同時に、アクリル酸が遊離され、このアクリル酸は[中間物2-2-2a]の残りのエポキシ基と反応し、[中間物2-2-2b]を生成する(反応[化22])。
【化21】

([化21]:ビスフェノールF型エポキシ化合物+アクリル酸→[中間物2-2-2a])
【化22】

【0096】
つまり、反応2-2では、[中間物2-2-1c]と[中間物2-2-2b]が生成し混合されて得られる。その後、この[中間物2-2-1c]と[中間物2-2-2b]の−OM2の位置でM2が水素原子(−H)の場合の水酸基(−OH)の一部に対して反応し(反応2-3-1[化23]、反応2-3-2[化24])、生成物としてそれぞれ[生成物2-3-1]と[生成物2-3-2]が生成される。
(反応2-3-1)
【化23】

(反応2-3-2)
【化24】

【0097】
このように合成例2では、多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物は上記に示したとおりの2つの構造物が得られる。繰り返すと以下の2つが得られることになる。
(式2-1)
【化25】

(式2-2)
【化26】

【0098】
この構造物のうち、(式2-1)[化25]は、 [化3]、(式2-2)[化26]は [化1]のm=0のものに対応する。また、nは0〜100の範囲の混合物が同時に得られる。
つまりXはビスフェノールFの残基、
【化27】

Yは無水ピロメリット酸が2-ヒドロキシエチルメタクリレートと反応して得られるジカルボン酸の残基となる。
【化28】

【0099】
また、Qは
【化29】

アクリル酸が反応したアクリル酸の残基、及びアクリル酸無水物がMの位置に反応して生成するアクリル酸が反応したアクリル酸の残基となり、いずれもアクリル酸の残基である。
【0100】
また、Mは
【化30】

水素原子、アクリル酸無水物が反応したカルボン酸残基、テトラヒドロ無水フタル酸が反応した残基となる。
【0101】
具体的には、下記のように合成を行った。
【0102】
合成例1に使用したものと同様の反応容器に無水ピロメリット酸158.9部と2−ヒドロキシエチルアクリレート202.75部を仕込み、空気を吹き込みながら、撹拌下、加熱して温度を85〜95℃に保持し反応させた。反応はIRにて追跡し、未反応の無水トリメリット酸の吸収(1780cm-1)が消失するまで継続した。反応には4時間を要した。次いで、ビスフェノールF型エポキシ化合物(大日本インキ化学工業社製の商品名「エピクロン830S」)247.4部、アクリル酸36.0部、アクリル酸無水物63.0部、トリフェニルホスフィン1.4部、モノメチルエーテルハイドロキノン0.6部を仕込み、攪拌下、加熱して温度を110〜120℃に保持しながら10時間反応させ酸価1mgKOH/gの反応生成物を得た。その後、テトラヒドロ無水フタル酸235.2部を加え、攪拌下、温度を100〜110℃に保持しながら、さらに5時間反応させ、酸価95mgKOH/gの多官能エポキシアクリレート化合物を得た。この酸価の99.1%は、テトラヒドロ無水フタル酸が反応して生成したカルボキシル基由来である。この多官能エポキシアクリレート化合物をカルビトールアセテート628.6部に希釈して不揮発分60%の多官能エポキシアクリレート樹脂(a−2)を得た。
【0103】
合成例3
<反応経路>
まず、ビスフェノールA型エポキシ化合物、アクリル酸、アクリル酸無水物を仕込み反応させる。ここでは、次の3つの反応(反応3-1, 反応3-2、反応3-3)が起こる。[化1]で示すとX、YともにビスフェノールA残基。
(反応3-1)
【化31】

上記分子式のようにQはアクリル酸の残基、M1は水素原子である。
【0104】
(反応3-2)
上記反応と同時にアクリル酸無水物とエポキシ樹脂中の水酸基の反応が起こる(反応3-2)。アクリル酸無水物はエポキシ樹脂の−OM1(M1: −H)の位置で反応を起こしアクリル基が付加されると同時に、アクリル酸を遊離する。
【化32】

【0105】
(反応3-3)
生成したばかりの[中間物3-1]へのアクリル酸無水物の付加も起こる。
【化33】

【0106】
反応3-2,3-3で遊離したアクリル酸は[中間物3-1、3-2、3-3]の残りのエポキシ基と反応し、分子の両末端がQ(アクリル酸の残基)となり、この段階で[中間物3-4][化34]を生成する。
[中間物3-4]
【化34】

【0107】
ついで、中間物3-4[化34]のM2が水素の部分にテトラヒドロ無水フタル酸を反応させる。
【化35】

【0108】
この構造物は、(式3-1)は[化1]のものに対応する。また、mは0〜100の範囲の混合物が同時に得られる。つまりXとYは同じビスフェノールAの残基、
【化36】

【0109】
アクリル酸が反応したアクリル酸の残基、及びアクリル酸無水物がMの位置に反応して生成するアクリル酸が反応したアクリル酸の残基となり、いずれもアクリル酸の残基となる。
【0110】
また、Mは、
【化37】

水素原子、アクリル酸無水物が反応したカルボン酸残基、テトラヒドロ無水フタル酸が反応した残基となる。
【0111】
具体的には、下記のように合成を行った。
【0112】
合成例1に使用したものと同様の反応容器にビスフェノールA型エポキシ化合物(ジャパンエポキシレジン社製「jER#1001」)400.0部仕込み、溶解させた後、攪拌下、アクリル酸43.2部、アクリル酸無水物176.4部、トリフェニルホスフィン1.4部、モノメチルエーテルハイドロキノン0.6部を仕込み、空気を吹き込みながら、加熱して温度を110〜120℃に保持しながら10時間反応させ酸価1mgKOH/gの反応生成物を得た。その後、テトラヒドロ無水フタル酸398.0部を加え、攪拌下、温度を100〜110℃に保持しながら、さらに5時間反応させ、酸価95mgKOH/gの多官能エポキシアクリレート化合物を得た。この酸価の99%は、テトラヒドロ無水フタル酸が反応して生成したカルボキシル基由来である。この多官能エポキシアクリレート化合物をカルビトールアセテート441.9部に希釈して不揮発分60%の多官能エポキシアクリレート樹脂(a−3)を得た。
【0113】
合成例4
<反応経路>
合成例4で得られる多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物は、構造的には合成例1で得られる化合物と同じである。異なる点は、反応の最後に付加するテトラヒドロ無水フタル酸が合成例1よりも少なく、最終化合物の酸価40mgKOH/gの化合物となる。つまり、構造中Mを構成するテトラヒドロ無水フタル酸の残基の割合が少なくなり、水素原子の割合が多くなっているものである。したがって、上述の反応式を参照すれば、X, Y, Q, M, n, mは以下の通りである。
【化38】

【0114】
具体的には、下記のように合成を行った。
【0115】
合成例1に使用したと同様の反応容器に、無水トリメリット酸74.2部と2−ヒドロキシエチルアクリレート54.6部を仕込み、空気を吹き込みながら、撹拌下、加熱して温度を85〜95℃に保持し反応させた。反応はIRにて追跡し、未反応の無水トリメリット酸の吸収(1780cm-1)が消失するまで継続した。反応には4時間を要した。次いで、ビスフェノールA型エポキシ化合物(旭化成工業社製の商品名「AER260」)275.6部、アクリル酸26.4部、メタクリル酸無水物55.4部、トリフェニルホスフィン1.4部、モノメチルエーテルハイドロキノン0.6部を仕込み、攪拌下、加熱して温度を110〜120℃に保持しながら10時間反応させ酸価4mgKOH/gの反応生成物を得た。その後、テトラヒドロ無水フタル酸53.2部を加え、攪拌下、温度を100〜110℃に保持しながら、さらに5時間反応させ、酸価40mgKOH/gの多官能エポキシアクリレート化合物を得た。この酸価の90.7%は、テトラヒドロ無水フタル酸が反応して生成したカルボキシル基由来である。この多官能エポキシアクリレート化合物をカルビトールアセテート360.9部に希釈して不揮発分60%の多官能エポキシアクリレート樹脂(a−4)を得た。
【0116】
合成例5
<反応経路>
合成例5で得られる多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物も合成例1と同様、構造的には合成例1で得られる化合物と同様である。異なる点は、合成例1と合成例5でアクリル酸とメタアクリル酸無水物の配合比率が異なりアクリル酸の配合量は多く、メタアクリル酸無水物の配合量は少なくなっている点である。つまり、構造中Qを構成するアクリル酸の残基とメタクアクリル酸がMの位置に反応することにより生成するメタクリル酸がQの位置に反応するメタアクリル酸の残基の割合が異なり、アクリル酸の残基の割合が多く、代わりにメタアクリル酸の残基の割合が少なくなっている点である。また、合成例1は酸価100mgKOH/g、合成例5は酸価122mgKOH/gの化合物が得られている。つまり、構造中Mを構成するテトラヒドロ無水フタル酸の残基の割合が多くなり、代わりに水素原子の割合が少なくなっている。したがって、上述の反応式を参照して、合成例5において、X, Y, Q, M, n, mは以下の通りである。
【化39】

【0117】
具体的には、下記のように合成を行った。
【0118】
合成例1に使用したと同様の反応容器に、無水トリメリット酸74.2部と2−ヒドロキシエチルアクリレート54.6部を仕込み、空気を吹き込みながら、撹拌下、加熱して温度を85〜95℃に保持し反応させた。反応はIRにて追跡し、未反応の無水トリメリット酸の吸収(1780cm-1)が消失するまで継続した。反応には4時間を要した。次いで、ビスフェノールA型エポキシ化合物(旭化成工業社製の商品名「AER260」)275.6部、アクリル酸39.4部、メタクリル酸無水物27.7部、トリフェニルホスフィン1.4部、モノメチルエーテルハイドロキノン0.6部を仕込み、攪拌下、加熱して温度を110〜120℃に保持しながら10時間反応させ酸価4mgKOH/gの反応生成物を得た。その後、テトラヒドロ無水フタル酸225.0部を加え、攪拌下、温度を100〜110℃に保持しながら、さらに5時間反応させ、酸価122mgKOH/gの多官能エポキシアクリレート化合物を得た。この酸価の97.4%は、テトラヒドロ無水フタル酸が反応して生成したカルボキシル基由来である。この多官能エポキシアクリレート化合物をカルビトールアセテート465.7部に希釈して不揮発分60%の多官能エポキシアクリレート樹脂(a−5)を得た。
【0119】
合成例6(比較用)
合成例1に使用したものと同様の反応容器に、クレゾールノボラック型エポキシ化合物(大日本インキ化学工業社製の商品名「エピクロンN―690」)345部、アクリル酸117部、トリフェニルホスフィン1.4部、モノメチルエーテルハイドロキノン0.6部を仕込み、空気を吹き込みながら、攪拌下、加熱して温度を110〜120℃に保持し、10時間反応させ酸価1mgKOH/gの反応生成物を得た。次いで、テトラヒドロ無水フタル酸137部を加え、攪拌下、温度を100〜110℃に保持し、さらに5時間反応させることにより、酸価85mgKOH/gの多官能エポキシアクリレート化合物を得た。この酸価の99.1%は、テトラヒドロ無水フタル酸が反応したカルボキシル基由来である。この多官能エポキシアクリレート化合物をカルビトールアセテート401部にて希釈して不揮発分60%の多官能エポキシアクリレート樹脂(b−1)を得た。
【0120】
合成例7(比較用)
合成例1に使用したものと同様の反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ化合物(ジャパンエポキシレジン製商品名「jER#1004」)500部、アクリル酸76.7部、トリフェニルホスフィン1.2部、モノメチルエーテルハイドロキノン0.8部を仕込み、空気を吹き込みながら、攪拌下、加熱して温度を110〜120℃に保持し、10時間反応させ酸価1mgKOH/gの反応生成物を得た。次いで、テトラヒドロ無水フタル酸186部を加え、攪拌下、温度を100〜110℃に保持し、さらに5時間反応させることにより、酸価90mgKOH/gのエポキシアクリレート化合物を得た。この酸価の99.3%は、テトラヒドロ無水フタル酸が反応して生成したカルボキシル基由来である。このエポキシアクリレート化合物をカルビトールアセテート508.3部にて希釈して不揮発分60%のエポキシアクリレート樹脂(b−2)を得た。
【0121】
<感光性熱硬化性樹脂組成物の調製>
実施例1〜5および比較例6、7
上記の合成例1〜7にて得られた多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)を希釈剤(D)に希釈した多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a−1〜a−3、b−1〜b−5)は、表1の組成で配合し感光性熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0122】
上記、硬化性樹脂組成物中の1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)は、ビスフェノールA型エポキシ化合物(旭化成工業社製の商品名「アラルダイト260」)、光重合開始剤(C)は、チバスペシャリティケミカルズ社製の商品名「イルガキュア907」を使用した。また、その他消泡剤として、ビッグケミー・ジャパン社製の商品名の「BYK−A555」、顔料として、大日精化工業社製の商品名「フタロシアニングリーン」を使用した。
【0123】
表1には、感光性熱硬化性樹脂組成物の組成と下記記載の評価の結果を示した。
【0124】
<評価項目>なお、評価項目は、以下の(1)〜(9)に示す事項である。
(1)指触乾燥性
表1の感光性熱硬化性樹脂組成物を銅箔付き基板上にスクリーン印刷法にて全面塗布し、80℃の熱風乾燥炉にて30分間乾燥させた。その後、基板を乾燥炉より取り出し、室温まで放冷し、塗膜の指触乾燥性を調べた。判定基準は以下の通りである。
○:タックが無い、△:タックは無いが、指紋が薄くつく、×:タックがある
【0125】
(2)アルカリ現像性
表1記載の樹脂組成物を銅箔付き基板上にスクリーン印刷法にて全面塗布し、80℃の熱風乾燥炉にて20,40,60分間乾燥した。その後、基板を乾燥炉より取り出し、室温まで放冷し、30℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行い、乾燥塗膜の現像残りの有無を目視で確認した。判定基準は以下の通りである。
○:完全に現像されている、△:一部塗膜が残っている、×:塗膜が完全に残っている
【0126】
(3)感度
表1記載の樹脂組成物を銅箔付き基板上にスクリーン印刷法にて全面塗布し、80℃の熱風乾燥炉にて30分乾燥した。その後、基板を乾燥炉より取り出し、室温まで放冷し、塗膜上にステップタブレット(コダックNo.2、全21段)をのせ、減圧下、メタルハライドランプ(350nm)を光源として、紫外線積算光量600mJ/cm2の条件で露光し、ステップタブレットを外した後、30℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPa の条件で60秒間現像を行い、残存塗膜の段数を目視で数えることにより紫外線への感度を評価した。大きい段数のもの程、紫外線への感度が高いことを意味する。
【0127】
(4)密着性
表1記載の樹脂組成物を銅箔付き基板上にスクリーン印刷法にて全面塗布し、80℃の熱風乾燥炉にて30分間乾燥させた。その後、基板を乾燥炉より取り出し、室温まで放冷し、減圧下、メタルハライドランプ(350nm)を光源として、紫外線積算光量600mJ/cm2の条件で露光し、さらに150℃の熱風乾燥炉にて60分間熱硬化させた。その後、基板を乾燥炉より取り出し、室温まで放冷した。得られた硬化塗膜の密着性は、JIS
D0202に従い評価した。判定基準は以下の通りである。
○:碁盤目の数が100個完全に残るもの、△:碁盤目の数が100個未満60個以上残るもの、×:碁盤目の数が60個未満のしか残らなかったもの
【0128】
(5)はんだ耐熱性
評価項目(4)と同じ条件で各基板を作製した。得られた硬化塗膜は、260℃のはんだ浴に10秒間浸漬して塗膜状態を評価する試験を1回とし、合計5回の試験を繰り返した。判定基準は以下の通りである。
○:膨れ、剥がれ、変色の無いもの、△:若干膨れ、剥がれ、変色が発生するもの、×:大部分で膨れ、剥がれ、変色が発生するもの
【0129】
(6)耐溶剤性
評価項目(4)と同じ条件で作製した各基板を室温(23℃)にて、イソプロピルアルコールに30分漬浸し、外観の観察とピーリング試験(JIS Z1522)を行った。判定基準は以下の通りである。
○:膨れ、剥がれ、変色の無いもの、△:若干膨れ、剥がれ、変色が発生するもの、×:大部分で膨れ、剥がれ、変色が発生するもの
【0130】
(7)耐酸性
評価項目(4)と同じ条件で作製した各基板を室温(23℃)にて、10%塩酸水溶液に30分漬浸し、外観の観察とピーリング試験(JIS Z1522)を行った。判定基準は以下の通りである。
○:膨れ、剥がれ、変色の無いもの、△:若干膨れ、剥がれ、変色が発生するもの、×:大部分で膨れ、剥がれ、変色が発生するもの
【0131】
(8)耐湿性(PCT:プレッシャー・クッカーテスト)
評価項目(4)と同じ条件で作製した各基板の耐湿性(PCT耐性)は、121℃、100%RH、2気圧の条件下に塗膜を連続50時間さらした後の塗膜状態を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:膨れ、剥がれ、変色の無いもの、△:若干膨れ、剥がれ、変色のあるもの、×:膨れ、剥がれ、変色のあるもの
【0132】
(9)冷熱サイクル試験
評価項目(4)と同じ条件で作製した各基板の冷熱サイクル試験は、得られた硬化塗膜を−65℃の条件下に30分間、次いで125℃の条件下に30分間続けてさらす試験を1サイクルし、合計100サイクルの試験を連続して行い、塗膜へのクラック発生の有無を評価した。
○:クラック発生、剥がれが共に無いもの、×:クラック発生、又は剥がれのいずれか、或いは共にあるもの
【0133】
【表1】

【0134】
表1の結果から明らかなように、本発明の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物を含有する感光性熱硬化性樹脂組成物は、指触乾燥性、アルカリ現像性、感度のバランスがとれ、さらにレジスト塗膜として必要な密着性、はんだ耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性、耐湿性(PCT耐性)、冷熱サイクル性に優れた硬化塗膜を与えることができる。これに対し、比較例の樹脂組成物は、各評価をバランスよく満たすことができないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0135】
民生用並びに産業用プリント配線板の分野、及びソルダーレジストを施したプリント配線板と封止樹脂を用いたBGA(ボール・グリッド・アレイ)やCSP(チップ・スケール・パッケージ)等のICパッケージ用プリント配線板の製造に用いられる希アルカリ現像液にて画像形成が可能な液状ソルダーレジストインキ、ドライフィルム型ソルダーレジストに有用な多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物及び該多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物を含有する感光性熱硬化性樹脂組成物並びにその硬化物に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物(a)と(メタ)アクリル酸無水物(b)及び不飽和基含有モノカルボン酸(c)の反応物にさらに多塩基酸無水物(d)を反応させた下記一般式[化1]:
【化1】

(式中、Xは二価の芳香族基及び/又はアルキル基及び/又はシクロヘキシル基、Yは二価の芳香族残基、ジカルボン酸残基を表す。Mは少なくとも1つは、(メタ)アクリル酸無水物が反応したカルボン酸残基であり、又少なくとも1つは、カルボキシル基を1個以上含有する多塩基酸無水物の残基であり、残りは水素原子を表す。Qは(メタ)アクリル酸無水物が水酸基と反応して生成する(メタ)アクリル酸の残基、及び不飽和基含有モノカルボン酸の残基を表す。mは、0〜100である。)に示す多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)。
【請求項2】
多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)が、酸価60〜110mgKOH/gの範囲であることを特徴とする請求項1記載の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)。
【請求項3】
前記酸価の95%以上が多塩基酸無水物由来のカルボキシル基由来であることを特徴とする請求項2記載の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)。
【請求項4】
請求項1〜3項のいずれか1項に記載の多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)、光重合開始剤(C)、希釈剤(D)を必須成分として含有することを特徴とする感光性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4記載の感光性熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項6】
一般式[化2]:
【化2】

(式中、Xは二価の芳香族基及び/又はアルキル基及び/又はシクロヘキシル基、Yは二価の芳香族残基、ジカルボン酸残基を表す。Mは少なくとも1つは、(メタ)アクリル酸無水物が反応したカルボン酸残基であり、又少なくとも1つは、カルボキシル基を1個以上含有する多塩基酸無水物の残基であり、残りは水素原子を表す。Qは(メタ)アクリル酸無水物が水酸基と反応して生成する(メタ)アクリル酸の残基、及び不飽和基含有モノカルボン酸の残基を表す。mは、0〜100である。)で表される多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−144230(P2011−144230A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4538(P2010−4538)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000230364)日本ユピカ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】