説明

多官能基を有する含フッ素アダマンタン誘導体及びそれを含有する樹脂組成物

【課題】低屈折率、耐熱性及び耐擦傷性に優れ、特に表面硬度が従来よりも向上した硬化物を与える樹脂組成物、これに含まれる含フッ素アダマンタン誘導体及びその製造方法、並びに上記含フッ素アダマンタン誘導体の製造に有用な反応中間体を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表される含フッ素アダマンタン誘導体及びその製造方法、これを含む樹脂組成物並びに上記含フッ素アダマンタン誘導体の製造に有用な反応中間体である。


[式(I)中、G1は例えば単結合、R1及びR2は例えば特定の有機基、X1は特定の官能基を示す。aは1〜4の整数、bは10〜15の整数、a+b=16である。cは1〜10の整数、dは1〜10の整数である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多官能基を有する含フッ素アダマンタン誘導体及びそれを含有する樹脂組成物に関する。詳しくは、(メタ)アクリロイルオキシ基あるいは環状エーテル基である官能基を3つ以上有する含フッ素アダマンタン誘導体、低屈折率、耐熱性及び耐擦傷性に優れ、特に表面硬度が向上し、反射防止膜、光ファイバー、光導波路、体積ホログラム、ホログラムメモリー材料、コーティング材料、ナノインプリントモノマー、表面改質剤、工業用チューブ材料、シール材料及び固体高分子燃料電池電解質膜等に有用な硬化物を与える上記含フッ素アダマンタン誘導体を含有する樹脂組成物、並びに上記含フッ素アダマンタン誘導体等の製造に有用な反応中間体と、上記含フッ素アダマンタン誘導体を効率良く製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アダマンタンは、シクロヘキサン環が4個、カゴ形に縮合した構造を有し、対称性が高く、安定な化合物であり、その誘導体は、特異な機能を示すことから、医薬品原料や高機能性工業材料の原料等として有用であることが知られている。アダマンタンは、例えば、光学特性や耐熱性等を有することから、光ディスク基板、光ファイバーあるいはレンズ等に用いることが試みられている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、アダマンタンエステル類を、その酸感応性、ドライエッチング耐性、紫外線透過性等を利用して、フォトレジスト用樹脂原料として、使用することが試みられている(例えば、特許文献3参照)。
近年、液晶や有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子等を用いたフラットパネルディスプレイの高精細化、高視野角化、高画質化、電子回路の高周波数化や光を用いた回路・通信等、光学・電子部品の高性能化・改良検討が進められている。
【0003】
その中で、ディスプレイ用反射防止膜の低屈折率層や通信用の光ファイバー、光導波路等にフッ素系有機材料が使用されており、それらフッ素系材料の改良が行われている。一般にフッ素原子を有する化合物は低屈折率を示し、低屈折率の含フッ素樹脂材料を液晶や有機ELディスプレイ用等の反射防止膜、フルネルレンズ、レンチキュラーレンズ、マイクロレンズアレイ等のレンズ類、光ファイバーや光導波路へ適用する検討が行われている。例えば、反射防止膜においては、低屈折率層と高屈折率層を交互に積層して反射を防止しているが、その低屈折率層の樹脂として直鎖状の含フッ素アクリレート類の重合物が使用されている(例えば、特許文献4及び5参照)。しかし、これらは直鎖状であるために十分な表面硬度が得られず、耐擦傷性等に問題がある。また、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート系重合体を含む樹脂組成物をハードコート層に使用することで反射防止層との密着性を改良した反射防止フィルムが開示されており(例えば、特許文献6参照)、出願人は反射防止膜等に有用な耐熱性及び表面硬度が良好で低屈折率の硬化物を与える樹脂組成物として、重合性基を有する含フッ素アダマンタン誘導体を使用することを開示している(例えば、特許文献7参照)。しかし、これら樹脂組成物を用いた硬化物の表面硬度は、十分に満足できるものではなく、改良の余地がある。
また、光ファイバーや光導波路では、有機化合物のC−H結合が光損失の原因となることはよく知られているが、その対策としてC−H結合をC−F結合に置換した材料が使用されている。その1つに直鎖状の含フッ素アクリレート樹脂が用いられているが(例えば、特許文献8参照)、通信時の発熱やはんだリフロー時に耐え得る耐熱性が十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−305044号公報
【特許文献2】特開平9−302077号公報号
【特許文献3】特開平4−39665号公報
【特許文献4】特開平11−2702号公報
【特許文献5】特開2001−48943号公報
【特許文献6】特開2004−212619号公報
【特許文献7】WO2007/020901号パンフレット
【特許文献8】特開2002−182046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような状況から、低屈折率、耐熱性及び耐擦傷性に優れ、特に表面硬度が従来よりも向上した硬化物を与える樹脂組成物に用いられる含フッ素アダマンタン誘導体及びその製造方法、これを含む樹脂組成物、並びに上記含フッ素アダマンタン誘導体の製造に有用な反応中間体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、(メタ)アクリロイルオキシ基あるいは環状エーテル基である官能基を3つ以上有する含フッ素アダマンタン誘導体を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記のとおり、多官能基を有する含フッ素アダマンタン誘導体及びその製造方法、これを含む樹脂組成物、該含フッ素アダマンタン誘導体の製造に有用な反応中間体である。
【0007】
1.下記一般式(I)で表される含フッ素アダマンタン誘導体。
【0008】
【化1】

【0009】
[式(I)中、G1は、単結合、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む2価の基を示し、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子又は水酸基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基;酸素原子を含んでもよい脂肪族炭化水素基;及び下記式(I−1)で表される有機基の中から選ばれる1種を示し、X1は、水酸基及び下記式(I−2)〜(I−4)で表される基の中から選ばれる1種を示す。aは1〜4の整数であり、bは10〜15の整数であり、a+b=16である。cは1〜10の整数であり、dは1〜10の整数である。複数のG1、R1、R2及びX1はそれぞれにおいて同一でも異なっていてもよく、複数のc及びdはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0010】
【化2】

【0011】
〔式(I−1)中、G2は、単結合、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む2価の基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子又は水酸基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基;及び酸素原子を含んでもよい脂肪族炭化水素基の中から選ばれる1種を示し、X1は、前記と同様である。eは0又は1〜10の整数であり、fは0又は1〜10の整数である。複数のG2、R3、R4及びX1はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、複数のe及びfはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕
【0012】
【化3】

【0013】
〔式(I−2)中、R5は水素原子、メチル基及びトリフルオロメチル基の中から選ばれる1種を示す。式(I−4)中、R6は炭素数1〜5の炭化水素基を示す。〕
ただし、上記一般式(I)は、下記(1)〜(3)のいずれかを満たす。
(1)a=1のとき、R1及びR2の少なくとも2つ以上が前記式(I−1)で表される有機基であって、X1の3つ以上が前記式(I−2)〜(I−4)で表される基の中から選ばれる1種である。
(2)a=2のとき、複数のR1及びR2の少なくとも1つ以上が前記式(I−1)で表される有機基であって、X1の3つ以上が前記式(I−2)〜(I−4)で表される基の中から選ばれる1種である。
(3)a=3又は4のとき、X1の3つ以上が前記式(I−2)〜(I−4)で表される基の中から選ばれる1種である。]
2.前記一般式(I)中、a=2であることを特徴とする前記1に記載の含フッ素アダマンタン誘導体。
3.前記一般式(I)中、d=1、G1が単結合であることを特徴とする前記1又は2に記載の含フッ素アダマンタン誘導体。
4.前記一般式(I)中、X1の少なくとも1つが前記式(I−2)であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の含フッ素アダマンタン誘導体。
5.前記一般式(I)中、c=3である前記1〜4のいずれかに記載の含フッ素アダマンタン誘導体。
6.下記一般式(II)で表される含フッ素アダマンタン誘導体。
【0014】
【化4】

【0015】
[式(II)中、G1は、単結合、エーテル結合、エステル結合及びアミド結合のいずれかを示し、R7及びR8は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子又は水酸基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基;酸素原子を含んでもよい脂肪族炭化水素基;及び下記式(II−1)で表される有機基の中から選ばれる1種を示す。aは1〜4の整数であり、bは10〜15の整数であり、a+b=16である。cは1〜10の整数であり、dは1〜10の整数である。複数のG1、R7及びR8はそれぞれにおいて同一でも異なっていてもよく、複数のc及びdはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0016】
【化5】

【0017】
〔式(II−1)中、G2は、単結合、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む2価の基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子又は水酸基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基;及び酸素原子を含んでもよい脂肪族炭化水素基の中から選ばれる1種を示す。eは0又は1〜10の整数であり、fは0又は1〜10の整数である。複数のG2、R5及びR6はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、複数のe及びfはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕
ただし、上記一般式(II)は、下記(4)〜(6)のいずれかを満たす。
(4)a=1のとき、R7及びR8の少なくとも2つ以上が前記式(II−1)で表される有機基である。
(5)a=2のとき、複数のR7及びR8の少なくとも1つ以上が前記式(II−1)で表される有機基である。
(6)a=3又は4のとき、R7及びR8は前記式(II−1)で表される有機基でなくてもよい。]
7.前記一般式(II)中、a=2である前記6に記載の含フッ素アダマンタン誘導体。
8.前記一般式(II)中、d=1、G1が単結合である前記6又は7に記載の含フッ素アダマンタン誘導体。
9.前記一般式(II)中、c=3である前記6〜8のいずれかに記載の含フッ素アダマンタン誘導体。
10.前記6〜9のいずれかに記載の含フッ素アダマンタン誘導体(II)と下記式(II−2)〜(II−4)で表される基を有する水酸基反応性化合物とを反応させる前記1に記載の含フッ素アダマンタン誘導体(I)の製造方法。
【0018】
【化6】

【0019】
[式(II−2)中、R5は水素原子、メチル基及びトリフルオロメチル基の中から選ばれる1種を示す。式(II−4)中、R6は炭素数1〜5の炭化水素基を示す。]
11.前記6〜9のいずれかに記載の含フッ素アダマンタン誘導体(II)における水酸基の少なくとも1つに、グリシジル基含有水酸基反応性化合物を反応させた後、(メタ)アクリル酸無水物を反応させ、前記式(I−2)で示される基を導入する前記1に記載の含フッ素アダマンタン誘導体(I)の製造方法。
12.パーフルオロアダマンタンモノオール、パーフルオロアダマンタンジオール、パーフルオロアダマンタントリオール及びパーフルオロアダマンタンテトラオールから選らばれる水酸基を有する含フッ素アダマンタン誘導体とハロゲン含有アルコール化合物とを反応させる前記6〜9のいずれかに記載の含フッ素アダマンタン誘導体(II)の製造方法。
13.前記1に記載の含フッ素アダマンタン誘導体(I)を含有することを特徴とする樹脂組成物。
14.熱重合開始剤及び/又は光重合開始剤を含有することを特徴とする前記13に記載の樹脂組成物。
15.前記13又14に記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
16.前記1に記載の含フッ素アダマンタン誘導体(I)又は前記15に記載の硬化物を用いてなる反射防止膜。
【発明の効果】
【0020】
含フッ素アダマンタン誘導体を含有する樹脂組成物の中には、低屈折率、耐熱性及び表面硬度に良好な硬化物を与えるものがあるが、本発明の含フッ素アダマンタン誘導体は、官能基を3つ以上有することを特徴とするため、本発明は、該含フッ素アダマンタン誘導体を含む樹脂組成物を硬化させることで、低屈折率、耐熱性及び耐擦傷性に優れ、特に表面硬度が飛躍的に向上した硬化物を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[多官能基を有する含フッ素アダマンタン誘導体(I)]
本発明の多官能基を有する含フッ素アダマンタン誘導体は、下記一般式(I)で表される化合物である〔以下、含フッ素アダマンタン誘導体(I)と称すことがある。〕。
【0022】
【化7】

【0023】
上記式(I)中、G1は、単結合、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む2価の基を示し、好ましくは単結合である。本発明において、ヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等であり、このヘテロ原子を含む2価の基としては、カルボニル基、−NH−、−CONH−等が挙げられる。
1及びR2は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子又は水酸基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基;酸素原子を含んでもよい脂肪族炭化水素基;及び下記式(I−1)で表される有機基の中から選ばれる1種を示す。なお、本発明において、脂肪族炭化水素基は鎖式のみならず環式を包含する。
1は、水酸基及び下記式(I−2)〜(I−4)で表される基の中から選ばれる1種を示す。
aは1〜4の整数であり(好ましくは2〜4の整数であり、より好ましくは2である。)、bは10〜15の整数であり、a+b=16である。cは1〜10の整数であり(好ましくは3である。)、dは1〜10の整数である(好ましくは1である)。複数のG1、R1、R2及びX1はそれぞれにおいて同一でも異なっていてもよく、複数のc及びdはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0024】
【化8】

【0025】
上記式(I−1)中、G2は、単結合、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む2価の基を示し、好ましくは単結合である。
3及びR4は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子又は水酸基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基;及び酸素原子を含んでもよい脂肪族炭化水素基の中から選ばれる1種を示す。
本発明において脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、メチルシクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基及びエチルシクロヘキシル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0026】
1は、前記と同様に水酸基及び下記式(I−2)〜(I−4)で表される基の中から選ばれる1種を示す。
なお、上記一般式(I)において、X1の少なくとも1つが下記式(I−2)で表される基であることが好ましい。
eは0又は1〜10の整数であり、fは0又は1〜10の整数である。複数のG2、R3、R4及びX1はそれぞれについて同一でも異なっていてもよく、複数のe及びfはそれぞれについて同一でも異なっていてもよい。
【0027】
【化9】

【0028】
上記式(I−2)中、R5は水素原子、メチル基及びトリフルオロメチル基の中から選ばれる1種を示す。上記式(I−4)中、R6は炭素数1〜5の炭化水素基を示す。
上記式(I−2)〜(I−4)で表される具体的な基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−トリフルオロメチルアクリロイルオキシ基、α−フルオロアクリロイルオキシ基、グリシジルオキシ基、(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基、(3−プロピルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基及び(3−ブチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、グリシジルオキシ基及び(3−メチルオキセタン−3−イル)メチルオキシ基である。特に好ましくはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基及びグリシジルオキシ基である。
【0029】
ただし、本発明の含フッ素アダマンタン誘導体(I)は、(メタ)アクリロイルオキシ基あるいは環状エーテル基である官能基を3つ以上有する化合物であるため、前記一般式(I)は、下記(1)〜(3)のいずれかを満たすことが重要である。
(1)a=1のとき、R1及びR2の少なくとも2つ以上が前記式(I−1)で表される有機基であって、X1の3つ以上が前記式(I−2)〜(I−4)で表される基の中から選ばれる1種である。
(2)a=2のとき、複数のR1及びR2の少なくとも1つ以上が前記式(I−1)で表される有機基であって、X1の3つ以上が前記式(I−2)〜(I−4)で表される基の中から選ばれる1種である。
(3)a=3又は4のとき、X1の3つ以上が前記式(I−2)〜(I−4)で表される基の中から選ばれる1種である。
【0030】
[多官能基を有する含フッ素アダマンタン誘導体(I)の製造方法]
本発明の前記一般式(I)で表される多官能基を有する含フッ素アダマンタン誘導体は、下記一般式(II)で表される含フッ素アダマンタン誘導体である反応中間体〔以下、反応中間体と称すことがある。〕と、下記式(II−2)〜(II−4)で表される基を有する水酸基反応性化合物とを反応させることにより製造することができる。
【0031】
(反応中間体)
反応中間体は、下記一般式(II)で表される水酸基を有する含フッ素アダマンタン誘導体である。
【0032】
【化10】

【0033】
上記式(II)中、G1、a、b、c及びdは前記と同様である。
7及びR8は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子又は水酸基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基;酸素原子を含んでもよい脂肪族炭化水素基;及び下記式(II−1)で表される有機基の中から選ばれる1種を示す。
【0034】
【化11】

【0035】
上記式(II)中、G2、R3、R4、e及びfは前記と同様である。
ただし、前記一般式(I)で表される含フッ素アダマンタン誘導体が(メタ)アクリロイルオキシ基あるいは環状エーテル基である官能基を3つ以上有するために、反応中間体である上記一般式(II)は、下記(4)〜(6)のいずれかを満たすことが重要である。
(4)a=1のとき、R7及びR8の少なくとも2つ以上が前記式(II−1)で表される有機基である。
(5)a=2のとき、複数のR7及びR8の少なくとも1つ以上が前記式(II−1)で表される有機基である。
(6)a=3又は4のとき、R7及びR8は前記式(II−1)で表される有機基でなくてもよい。
【0036】
(水酸基反応性化合物)
水酸基反応性化合物は、下記式(II−2)〜(II−4)で表される基を有する化合物である。
【0037】
【化12】

【0038】
上記式(II−2)中、R5については前記と同様であり、上記式(II−4)中、R6については前記と同様であり、
上記式(II−2)で表される(メタ)アクリロイル基を有する水酸基反応性化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、α−フルオロアクリル酸、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、α−トリフルオロメチルアクリル酸クロライド、α−フルオロアクリル酸クロライド、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物及びα-トリフルオロメチルアクリル酸無水物等が挙げられる。
また、上記式(II−3)で表されるグリシジル基を有する水酸基反応性化合物、あるいは上記式(II−4)で表されるオキセタン基を有する水酸基反応性化合物としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、3−クロロメチル−3−メチルオキセタン及び3−クロロメチル−3−エチルオキセタン、3−ブロモメチル−3−メチルオキセタン及び3−ブロモメチル−3−エチルオキセタン等がある。
【0039】
(製造方法)
本発明の含フッ素アダマンタン誘導体(I)の製造方法において、上記反応中間体と上記式(II−2)で表される(メタ)アクリロイル基を有する水酸基反応性化合物との反応としては、通常知られている共沸脱水法、酸クロリド法及び酸無水物法等によるエステル化反応が挙げられる。
【0040】
共沸脱水法としては、反応中間体とアクリル酸、メタクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸及びα−フルオロアクリル酸等を用いることができる。
反応温度としては、50〜200℃程度、望ましくは100〜180℃とする。温度が50℃未満の場合、反応速度が低下し、反応時間が長くなる。温度が200℃を越える場合、副反応が起きたり、着色が激しくなったりする。
反応圧力としては、絶対圧力で0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaとする。圧力が10MPaを越える場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。圧力が0.01MPa未満の場合、反応時間が長くなる。
この反応に使用する触媒としては、通常この方法で使用されている酸触媒であり、例えば、硫酸やp−トルエンスルホン酸等の酸が挙げられ、酸の添加濃度は、その種類にもよるが、反応中間体に対して0.01〜20mol%程度、好ましくは0.05〜10mol%とする。
【0041】
溶媒としては、反応中間体の溶解度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いる。具体的には、ノナン、デカン、ウンデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。溶媒量は反応中間体の濃度が0.5質量%程度以上、望ましくは5質量%以上となる量である。この時、反応中間体が懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。
なお、必要により、重合禁止剤としてヒドロキノン、メトキノン、フェノチアジン、メトキシフェノチアジン等を添加しても良い。添加する場合の添加濃度は、原料アルコールに対して、10〜10000質量ppm程度、好ましくは50〜5000質量ppmとする。
反応時間は、1分〜24時間程度、望ましくは1時間〜10時間とする。
得られた反応生成物は、必要に応じ蒸留、晶析及びカラム分離等の精製をすることができ、反応生成物の性状と不純物の種類により精製方法を選択できる。
【0042】
酸クロリド法としては、上記反応中間体とアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、α−トリフルオロメチルアクリル酸クロライド及びα−フルオロアクリル酸クロライド等を用いることができる。
反応温度としては、−50〜100℃程度、望ましくは0〜50℃とする。温度が−50℃未満の場合、特別な装置が必要となり、産業上有用でない。温度が100℃を越える場合、副反応が起きたり着色が激しくなったりする。
反応圧力としては、絶対圧力で0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaとする。この圧力が10MPaを越える場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。圧力が0.01MPa未満の場合、反応時間が長くなる。
酸クロリド法の場合には、反応により発生する酸の捕捉剤として塩基を添加する。このような塩基として、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の有機アミンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の無機塩基を使用することができる。反応中間体に対する上記塩基の使用割合は、塩基/反応中間体(モル比)が0.5〜20程度となる量であり、好ましくは1〜10となる量である。
【0043】
溶媒としては、反応中間体の溶解度が0.5質量%程度以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いる。具体的には、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられる。
なお、必要により、重合禁止剤としてヒドロキノン、メトキノン、フェノチアジン、メトキシフェノチアジン等を添加してもよい。この場合、重合禁止剤の添加量としては、使用する酸クロリドに対して、10〜10000質量ppm程度、好ましくは50〜5000質量ppmとする。
反応時間は、1分〜24時間程度、望ましくは1時間〜10時間とする。
得られた反応生成物は、必要に応じ蒸留、晶析及びカラム分離等の精製をすることができ、反応生成物の性状と不純物の種類により精製方法を選択できる。
【0044】
酸無水物法としては、上記反応中間体とアクリル酸無水物、メタクリル酸無水物及びα-トリフルオロメチルアクリル酸無水物等を用いることができる。
反応温度としては、−50〜100℃程度、望ましくは0〜50℃とする。温度が−50℃未満の場合、特別な装置が必要となり、産業上有用でない。温度が100℃を越える場合、副反応が起きたり着色が激しくなったりする。
反応圧力としては、絶対圧力で0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaとする。この圧力が10MPaを越える場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。圧力が0.01MPa未満の場合、反応時間が長くなる。
酸無水物法の場合には、反応により発生する酸の捕捉剤として塩基を添加する。このような塩基として、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の有機アミンや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の無機塩基を使用することができる。
反応中間対に対する上記塩基の使用割合は、塩基/反応中間体(モル比)が0.5〜5程度となる量であり、好ましくは1〜3となる量である。
【0045】
溶媒としては、反応中間体の溶解度が0.5質量%程度以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いる。具体的には、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられる。この時、反応中間体が懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。
なお、必要により、重合禁止剤としてヒドロキノン、メトキノン、フェノチアジン、メトキシフェノチアジン等を添加しても良い。この場合、重合禁止剤の添加量としては、使用する酸無水物に対して、10〜10000質量ppm程度、好ましくは50〜5000質量ppmとする。
反応時間は、1分〜24時間程度、望ましくは1時間〜10時間とする。
得られた反応生成物は、必要に応じ蒸留、晶析及びカラム分離等の精製をすることができ、反応生成物の性状と不純物の種類により精製方法を選択できる。
【0046】
また、本発明の含フッ素アダマンタン誘導体(I)の製造方法において、上記反応中間体と上記式(II−3)及び式(II−4)で表される環状エーテル基を有する水酸基反応性化合物との反応は、塩基性触媒存在下で行うことができる。
反応温度としては、0〜200℃程度、望ましくは50〜150℃とする。温度が0℃未満の場合、反応速度が低下し、反応時間が長くなる。温度が200℃を越える場合、副反応が起きたり、着色が激しくなったりする。
反応圧力としては、絶対圧力で0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaとする。圧力が10MPaを越える場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。逆に圧力が0.01MPa未満の場合、反応時間が長くなる。
この反応に使用する塩基性触媒としては、ナトリウムアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化銀、ナトリウムメトキシド及びカリウムt−ブトキシド等が挙げられる。塩基性触媒の使用量は、その種類にもよるが、反応中間体に対して0.01〜20mol%程度、好ましくは0.05〜10mol%とする。
【0047】
溶媒としては、反応中間体の溶解度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いる。具体的には、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)及びこれらの混合溶媒等が挙げられ、前記環状エーテル基を有する化合物を溶媒兼用として用いてもよい。溶媒量は反応中間体の濃度が0.5質量%程度以上、望ましくは5質量%以上となる量である。この時、反応中間体が懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。
反応時間は、1分〜24時間程度、望ましくは1時間〜10時間とする。
得られた反応生成物は、必要に応じ蒸留、晶析及びカラム分離等の精製をすることができ、反応生成物の性状と不純物の種類により精製方法を選択できる。
【0048】
さらに、本発明の含フッ素アダマンタン誘導体(I)の製造方法として、前記一般式(II)で表される反応中間体における水酸基の少なくとも1つに、グリシジル基含有水酸基反応性化合物を反応させた後、(メタ)アクリル酸無水物を反応させることにより、反応中間体の1つの水酸基に同時に2つの前記式(I−2)で示される(メタ)アクリロイルオキシ基を導入することができる。
この場合の製造方法は、下記の反応条件に従い、通常知られているエポキシ基の酸無水物による開環反応を行う。
【0049】
反応温度としては、50〜200℃程度、望ましくは70〜150℃とする。温度が50℃未満の場合、反応速度が低下し、反応時間が長くなる。温度が200℃を越える場合、副反応が起きたり、着色が激しくなったりする。
反応圧力としては、絶対圧力で0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaとする。圧力が10MPaを越える場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。逆に圧力が0.01MPa未満の場合、反応時間が長くなる。
この反応に使用する触媒としては、塩基性触媒が好ましく、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアミノピリジン等の有機アミン、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。塩基性触媒の使用量は、その種類にもよるが、含フッ素アダマンタン誘導体(I)に対して0.01〜20mol%程度、好ましくは0.05〜10mol%とする。
【0050】
無溶媒でもよいが、溶媒を使用することが好ましく、溶媒としては、含フッ素アダマンタン誘導体(I)の溶解度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いる。具体的には、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。溶媒量は含フッ素アダマンタン誘導体(I)の濃度が0.5質量%程度以上、望ましくは5質量%以上となる量である。この時、含フッ素アダマンタン誘導体(I)が懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。
反応時間は、1分〜24時間程度、望ましくは1時間〜10時間とする。
得られた反応生成物は、必要に応じ蒸留、晶析及びカラム分離等の精製をすることができ、反応生成物の性状と不純物の種類により精製方法を選択できる。
【0051】
(反応中間体の製造方法)
前記一般式(II)で表される反応中間体の製造方法は、水酸基を有する反応中間体が製造できればよく、例えば、パーフルオロアダマンタンモノオール、パーフルオロアダマンタンジオール、パーフルオロアダマンタントリオール及びパーフルオロアダマンタンテトラオールから選らばれる水酸基を有する含フッ素アダマンタン誘導体の水酸基と、ハロゲン含有アルコール化合物とを反応させることにより製造することができる。
反応温度としては、0〜200℃程度、望ましくは50〜150℃とする。温度が50℃未満の場合、反応速度が低下し、反応時間が長くなる。温度が200℃を越える場合、副反応が起きたり、着色が激しくなったりする。
反応圧力としては、絶対圧力で0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaとする。圧力が10MPaを越える場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。逆に圧力が0.01MPa未満の場合、反応時間が長くなる。
この反応に使用する触媒としては、反応速度を上げる目的でヨウ化カリウムが特に好ましく、その使用量は、水酸基を有する含フッ素アダマンタン誘導体に対して0.01mol%〜20mol%程度、好ましくは0.05〜10mol%とする。
【0052】
溶媒としては、水酸基を有する含フッ素アダマンタン誘導体の溶解度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いる。具体的には、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジオキサン及びこれらの混合溶媒等が挙げられ、ハロゲン化物を溶媒兼用としてもよい。溶媒量は水酸基を有する含フッ素アダマンタン誘導体の濃度が0.5質量%程度以上、望ましくは5質量%以上となる量である。この時、水酸基を有する含フッ素アダマンタン誘導体が懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。
反応時間は、1分〜24時間程度、望ましくは1時間〜10時間とする。
得られた反応生成物は、必要に応じ蒸留、晶析及びカラム分離等の精製をすることができ、反応生成物の性状と不純物の種類により精製方法を選択できる。
【0053】
前記一般式(II)で表される含フッ素アダマンタン誘導体である反応中間体としては、例えば、パーフルオロ−1,3,5−トリ(2−ヒドロキシエトキシ)アダマンタン、パーフルオロ−1,3,5,7−テトラ(2−ヒドロキシエトキシ)アダマンタン、パーフルオロ−1−(2,2’−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロポキシ)アダマンタン、パーフルオロ−1−(2,2’−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロポキシ)アダマンタン、パーフルオロ−1,3−ビス(2,2’−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロポキシ)アダマンタン、パーフルオロ−1,3,5−トリ(2−ヒドロキシプロポキシ)アダマンタン、パーフルオロ−1,3,5,7−テトラ(2−ヒドロキシプロポキシ)アダマンタン、パーフルオロ−1,3−ビス(2−ヒドロキメチル−3−ヒドロキシプロポキシ)アダマンタン、パーフルオロ−2,4−ビス(2−ヒドロキメチル−3−ヒドロキシプロポキシ)アダマンタン、パーフルオロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキメチル−3−ヒドロキシプロポキシ)アダマンタン、パーフルオロ−2−(2,2’−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロポキシ)アダマンタン、パーフルオロ−4−オキソ−1−(2,2’−ジヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロポキシ)アダマンタン、パーフルオロ−4−オキソ−1−(2,2’−ジヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロポキシ)アダマンタン、パーフルオロ−2,4−ビス[(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)エトキシ]アダマンタン、パーフルオロ−1,3−ビス[(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)エトキシ]アダマンタン、パーフルオロ−1,3,5−トリス[(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)エトキシ]アダマンタン、パーフルオロ−1,3,5−トリ(2−ヒドロキシブトキシ)アダマンタン、パーフルオロ−1,3,5,7−テトラ(2−ヒドロキシブトキシ)アダマンタン、パーフルオロ−1,3,5−トリ(2−ヒドロキシペンチロキシ)アダマンタン、パーフルオロ−1,3,5,7−テトラ(2−ヒドロキシペンチロキシ)アダマンタン、パーフルオロ−1,3,5−トリス[(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]アダマンタン、パーフルオロ−1,3,5,7−テトラ[(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]アダマンタン、パーフルオロ−1,3−ビス(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)アダマンタン、パーフルオロ−2,4−ビス(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)アダマンタン、パーフルオロ−1,3,5−トリ(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)アダマンタン、パーフルオロ−1,3,5,7−テトラ(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)アダマンタン等が挙げられる。
【0054】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、前記含フッ素アダマンタン誘導体(I)を含む。本発明の樹脂組成物においては、前記含フッ素アダマンタン誘導体(I)と、他の重合性モノマー及び/又はエポキシ樹脂との混合樹脂も使用することができる。
他の重合性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオール ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール ジ(メタ)アクリレート、1H,1H−パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H−パーフルオロブチル(メタ)アクリレート、1H,1H−パーフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、1H,1H−パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1H,1H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロ−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,6H,6H−パーフルオロ−1,6−ヘキサンジオール ジ(メタ)アクリレート、1H,1H,8H,8H−パーフルオロ−1,8−オクタンジオール ジ(メタ)アクリレート、1H,1H,10H,10H−パーフルオロ−1,10−デカンジオール ジ(メタ)アクリレート及びパーフルオロ−1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でもフッ素を含有するものが好ましい。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
また、エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールZジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAFジグリシジルエーテル、ビスフェノールCジグリシジルエーテル等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ樹脂等の含窒素環エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、低吸水率硬化体タイプの主流であるビフェニル型エポキシ樹脂及びジシクロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多官能エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂等の含フッ素エポキシ樹脂、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル等が挙げられる。これらの中でもフッ素を含有する、あるいは芳香環を有しないエポキシ樹脂が好ましい。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0056】
上記エポキシ樹脂は、常温で固形でも液状でもよいが、一般に、使用するエポキシ樹脂の平均エポキシ当量が、200〜2000のものが好ましい。エポキシ当量が200以上であると、エポキシ樹脂組成物の硬化物が脆くならず適度の強度が得られる。また、エポキシ当量が2000以下であると、その硬化物のガラス転移温度(Tg)が低くならず適度のものとなる。
前記含フッ素アダマンタン誘導体(I)と、上記他の重合性モノマー及び/又はエポキシ樹脂との混合樹脂中、含フッ素アダマンタン誘導体(I)の含有量は5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上である。この含フッ素アダマンタン誘導体(I)の含有量が5質量%以上であると、本発明の樹脂組成物の光学特性、長期耐熱性及び電気特性が十分なものとなる。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、熱重合開始剤及び/又は光重合開始剤を用いた重合により硬化させることができる。
熱重合開始剤としては、熱により、不飽和結合を有する基、エポキシ基あるいはオキセタニル基と反応するものであればよく、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイト、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド及びt−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物並びにアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
光重合開始剤としては、光により、不飽和結合を有する基、エポキシ基あるいはオキセタニル基と反応するものであればよく、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジケタール類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキサイド類、アシルホスフィン酸エステル類、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ヨードシル塩、芳香族スルホキソニウム塩及びメタロセン化合物等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
熱重合開始剤及び/又は光重合開始剤の使用量は、前記含フッ素アダマンタン誘導体(I)又は上記混合樹脂100質量部(以下、「樹脂成分」と称することがある。)に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜5質量部である。重合開始剤の含有率を上記範囲とすることにより、良好な重合及び光学特性等の物性が発現される。
【0058】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、従来から用いられている、例えば、硬化促進剤、劣化防止剤、変性剤、シランカップリング剤、脱泡剤、無機粉末、溶剤、レベリング剤、離型剤、染料、顔料等の、公知の各種の添加剤を適宜配合してもよい。
上記硬化促進剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリス(2,4,6−ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウムO,O−ジエチルホスホロジチオエート等のリン化合物、4級アンモニウム塩、有機金属塩類及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、あるいは併用してもよい。これら硬化促進剤の中では、3級アミン類、イミダゾール類、リン化合物を用いることが好ましい。
硬化促進剤の含有率は、上記樹脂成分100質量部に対して、0.01〜8.0質量部であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜3.0質量部である。硬化促進剤の含有率を上記範囲とすることにより、十分な硬化促進効果を得られ、また、得られる硬化物に変色が見られない。
【0059】
劣化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、リン系化合物等の、従来から公知の劣化防止剤が挙げられる。
フェノール系化合物としては、イルガノクス1010(Irganox1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガノクス1076(Irganox1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガノクス1330(Irganox1330、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガノクス3114(Irganox3114、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガノクス3125(Irganox3125、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガノクス3790(Irganox3790、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)BHT、シアノクス1790(Cyanox1790、サイアナミド社製、商標)、スミライザーGA−80(SumilizerGA−80、住友化学社製、商標)等の市販品を挙げることができる。
【0060】
アミン系化合物としては、イルガスタブFS042(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、GENOX EP(クロンプトン社製、商標、化合物名;ジアルキル−N−メチルアミンオキサイド)等、さらにはヒンダードアミン系であるADEKA社製のADK STAB LA−52、LA−57、LA−62、LA−63、LA−67、LA−68、LA−77、LA−82、LA−87、LA−94、CSC社製のTinuvin123、144、440、662、Chimassorb2020、119、944、Hoechst 社製のHostavin N30、Cytec社製の Cyasorb UV−3346、UV−3526、GLC社製のUval 299、Clariant社製の SanduvorPR−31等を挙げることができる。
有機硫黄系化合物としては、DSTP(ヨシトミ)(吉富社製、商標)、DLTP(ヨシトミ)(吉富社製、商標)、DLTOIB(吉富社製、商標)、DMTP(ヨシトミ)(吉富社製、商標)、Seenox 412S(シプロ化成社製、商標)、Cyanox 1212(サイアナミド社製、商標)等の市販品を挙げることができる。
【0061】
変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類、アルコール類等の、従来から公知の変性剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、シラン系、チタネート系等の、従来から公知のシランカップリング剤が挙げられる。脱泡剤としては、例えば、シリコーン系等の、従来から公知の脱泡剤が挙げられる。無機粉末としては、用途に応じて粒径が数nm〜10μmのものが使用でき、例えば、ガラス粉末、シリカ粉末、チタニア、酸化亜鉛、アルミナ等の公知の無機粉末が挙げられる。溶剤としては、エポキシ樹脂が粉末の場合や、コーティングの希釈溶剤として、トルエンやキシレン等の芳香族系溶剤やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤等が使用可能である。
【0062】
本発明の樹脂組成物は、上記の樹脂成分、熱重合開始剤及び/又は光重合開始剤と各種添加剤を混合し、成型する金型(樹脂金型)への注入、あるいはコーティングにより所望の形状にした後に、加熱硬化あるいは紫外線等の照射により光硬化する。熱硬化の場合、硬化温度としては、通常30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃である。30℃以上とすることにより硬化不良となることがなく、200℃以下とすることにより着色等を生じることがなくなる。硬化時間は使用する樹脂成分や重合開始剤等によって異なるが、0.5〜6時間が好ましい。
紫外線の照射により光硬化する場合、紫外線の照射強度は、樹脂成分や重合開始剤の種類、硬化物の膜厚等から決められるので任意であるが、通常100〜5000mJ/cm2程度、好ましくは500〜4000mJ/cm2である。紫外線照射後に後加熱を行ってもよく、70〜200℃で0.5〜12時間行うことが好ましい。
成形方法としては射出成形、ブロー成形、プレス成形等、特に限定されるものではないが、好ましくはペレット状の樹脂組成物を射出成形機に用いて、射出成形することにより製造される。
【0063】
本発明の樹脂組成物を硬化してなる硬化物は、低屈折率であり、耐熱性及び耐擦傷性に優れており、特に表面硬度が飛躍的に向上したものである。このように本発明の硬化物は、優れた特性を有するので、反射防止膜、光ファイバー、光導波路、体積ホログラム、ホログラムメモリー材料、コーティング材料、ナノインプリントモノマー、表面改質剤、工業用チューブ材料、シール材料及び固体高分子燃料電池電解質膜等に有用である。
【実施例】
【0064】
実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、得られた硬化物の評価を次のように行った。
(鉛筆硬度)
JIS K5600−5−4に準拠し、傷を付けることができた鉛筆として6B(柔らかい)から6H(硬い)の14段階により評価した。
【0065】
[製造例1]パーフルオロアダマンタン−1,3−ジオールの製造
動力撹拌装置,窒素ガス導入管、フッ素ガス導入管がそれぞれ付いた10L反応器に、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン5Lを入れた。反応器を0〜10℃に保持し、窒素流量を2L/分、フッ素流量を500mL/分にセットした。2分後、予め用意していた二酢酸アダマンタンジ−1,3−オール252g[FW:252.31,1.0mol]の1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン溶液600mLを30mL/時の速度で加えた。
添加完了後(20時間)、窒素流量を1.2L/分、フッ素流量を300mL/分にそれぞれ下げ、さらに1時間継続した後、フッ素を停止した。窒素パージ後、水を加えて加水分解した。反応混合液は定法により処理し、晶析により下記式で表わされるパーフルオロアダマンタン−1,3−ジオールを得た[FW:420.10,315g,0.75mol,単離収率75.0%]。
【0066】
【化13】

【0067】
・核磁気共鳴分光法(NMR):(溶媒:クロロホルム−d) 日本電子株式会社製 JNM−ECA500
1H−NMR〕:2.24(s,1H,OH)
19F−NMR〕:−221.02(s,2F),−120.83(s,12F)
・ガスクロマトグラフ−質量分析(GC−MS):EI(株式会社島津製作所製 GCMS−QP2010)
420(M+,10.0%),401(5.6%),381(5.0%),333(13.2%),305(9.3%),131(100%),69(26.0%)
【0068】
[実施例1]パーフルオロ−1,3−ビス(2,3−ジヒドロキシ−1−プロポキシ)アダマンタンの合成(反応中間体の合成)
還流管を取り付けた200mLの三口フラスコに、製造例1で得られたパーフルオロ−1,3−アダマンタンジオール8.4g、3−クロロ−1,2−プロパンジオール22.4g、ジオキサン28mL、炭酸カリウム8.4g、ヨウ化カリウム1.6gを加えた。オイルバスを加熱し、ジオキサン還流下4時間撹拌を行なった。室温まで冷却した後、無機塩を取り除き、ろ液を濃縮した。濃縮物を酢酸エチルで希釈した後、3質量%K3PO4水溶液で3回洗浄し、飽和食塩水で1回洗浄を行なった。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去し、下記式で表わされる目的物を得た(収率75%、8.5g)。
【0069】
【化14】

【0070】
・核磁気共鳴スペクトル(溶媒:アセトニトリルーd)日本電子株式会社製 JNM−ECA500
1H−NMR(500MHz)〕:2.84−2.90(m,1H)、3.27−3.34(m,1H)、3.48−3.58(m,2H)、3.79−3.84(m,1H)、4.16−4.20(m,1H)、4.25−4.30(m,1H)
13C−NMR(125MHz)〕:63.11、71.45、73.69
19F−NMR(465MHz、内標BTF:−64ppm)〕:−114.58、−118.86、−122.58、−222.48
【0071】
[実施例2]パーフルオロ−1,3−ビス(2,3−ジアクリロイルオキシ−1−プロポキシ)アダマンタンの合成
200mLの3口フラスコに、実施例2で得られたパーフルオロ−1,3−ビス(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)アダマンタン5.9gをクロロホルム50mLとトリエチルアミン7mLに溶解させ、0℃まで冷却した。次いで、アクリル酸クロライドを4mL滴下し、0℃で30分間攪拌させた。さらに、トリエチルアミン7mLアクリル酸クロライドを4mL追加し、0℃で30分間攪拌させた。
反応混合液に、飽和食塩水とクロロホルムを加え、生成物をクロロホルムで3回抽出した。集めた有機層を2Nの塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水でそれぞれ1回洗浄を行なった。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去し、下記式で表わされる目的物を得た(収率99%、7.8g)。
【0072】
【化15】

【0073】
・核磁気共鳴スペクトル(溶媒:アセトニトリルーd)日本電子株式会社製 JNM−ECA500
1H−NMR(500MHz)〕:4.60−4.67(m,1H)、4.70−4.75(m,1H)、4.76−4.83(m,2H)、5.70−5.80(m,1H)、6.20−6.28(m,2H)、6.39−6.50(m,2H)、6.62−6.73(m,2H)
13C−NMR(125MHz)〕:61.01、62.43、70.48、128.72、128.76、132.35、132.73、165.92、166.33
19F−NMR(465MHz、内標BTF:−64ppm)〕:−114.97、−118.93、−122.51、−222.42、
【0074】
・ガスクロマトグラフ−質量分析(GC−MS):EI(株式会社島津製作所製 GCMS−QP2010)
784(M+、0.01%)、756(0.14%)、713(0.21%)、586(1.54%)、169(4.5%)、55(100%)
【0075】
[実施例3]
実施例2で得られたパーフルオロ−1,3−ビス(2,3−ジアクリロイルオキシ−1−プロポキシ)アダマンタンに光重合開始剤としてベンゾインイソブチルエーテル2質量%を加え、よく混合し真空脱気した。この樹脂組成物をガラス製のセルに流し込み水銀灯を1000mJ/cm2で照射し、厚さ1mmの硬化物を得た。
得られた硬化物の物性値を表1に示した。
【0076】
[比較例1]
上記実施例3のパーフルオロ−1,3−ビス(2,3−ジアクリロイルオキシ−1−プロポキシ)アダマンタンを、下記式で表わされるパーフルオロ−1,3−ビス(アクリロイルオキシエトキシ)アダマンタンに変更した以外は同様に硬化反応を行った。
得られた硬化物の物性値を表1に示した。
【0077】
【化16】

【0078】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の官能基を3つ以上有するフッ素アダマンタン誘導体を含む樹脂組成物は、低屈折率、耐熱性及び耐擦傷性に優れており、特に表面硬度が向上した硬化物を与える。このように本発明の硬化物は、優れた特性を有するので、反射防止膜、光ファイバー、光導波路、体積ホログラム、ホログラムメモリー材料、コーティング材料、ナノインプリントモノマー、表面改質剤、工業用チューブ材料、シール材料及び固体高分子燃料電池電解質膜等に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される含フッ素アダマンタン誘導体。
【化1】

[式(I)中、G1は、単結合、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む2価の基を示し、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子又は水酸基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基;酸素原子を含んでもよい脂肪族炭化水素基;及び下記式(I−1)で表される有機基の中から選ばれる1種を示し、X1は、水酸基及び下記式(I−2)〜(I−4)で表される基の中から選ばれる1種を示す。aは1〜4の整数であり、bは10〜15の整数であり、a+b=16である。cは1〜10の整数であり、dは1〜10の整数である。複数のG1、R1、R2及びX1はそれぞれにおいて同一でも異なっていてもよく、複数のc及びdはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【化2】

〔式(I−1)中、G2は、単結合、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む2価の基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子又は水酸基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基;及び酸素原子を含んでもよい脂肪族炭化水素基の中から選ばれる1種を示し、X1は、前記と同様である。eは0又は1〜10の整数であり、fは0又は1〜10の整数である。複数のG2、R3、R4及びX1はそれぞれにおいて同一でも異なっていてもよく、複数のe及びfはそれぞれにおいて同一でも異なっていてもよい。〕
【化3】

〔式(I−2)中、R5は水素原子、メチル基及びトリフルオロメチル基の中から選ばれる1種を示す。式(I−4)中、R6は炭素数1〜5の炭化水素基を示す。〕
ただし、上記一般式(I)は、下記(1)〜(3)のいずれかを満たす。
(1)a=1のとき、R1及びR2の少なくとも2つ以上が前記式(I−1)で表される有機基であって、X1の3つ以上が前記式(I−2)〜(I−4)で表される基の中から選ばれる1種である。
(2)a=2のとき、複数のR1及びR2の少なくとも1つ以上が前記式(I−1)で表される有機基であって、X1の3つ以上が前記式(I−2)〜(I−4)で表される基の中から選ばれる1種である。
(3)a=3又は4のとき、X1の3つ以上が前記式(I−2)〜(I−4)で表される基の中から選ばれる1種である。]
【請求項2】
前記一般式(I)中、a=2であることを特徴とする請求項1に記載の含フッ素アダマンタン誘導体。
【請求項3】
前記一般式(I)中、d=1、G1が単結合であることを特徴とする請求項1又は2に記載の含フッ素アダマンタン誘導体。
【請求項4】
前記一般式(I)中、X1の少なくとも1つが前記式(I−2)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の含フッ素アダマンタン誘導体。
【請求項5】
前記一般式(I)中、c=3である請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素アダマンタン誘導体。
【請求項6】
下記一般式(II)で表される含フッ素アダマンタン誘導体。
【化4】

[式(II)中、G1は、単結合、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む2価の基を示し、R7及びR8は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子又は水酸基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基;酸素原子を含んでもよい脂肪族炭化水素基;及び下記式(II−1)で表される有機基の中から選ばれる1種を示す。aは1〜4の整数であり、bは10〜15の整数であり、a+b=16である。cは1〜10の整数であり、dは1〜10の整数である。複数のG1、R7及びR8はそれぞれにおいて同一でも異なっていてもよく、複数のc及びdはそれぞれにおいて同一でも異なっていてもよい。
【化5】

〔式(II−1)中、G2は、単結合、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む2価の基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子又は水酸基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基;及び酸素原子を含んでもよい脂肪族炭化水素基の中から選ばれる1種を示す。eは0又は1〜10の整数であり、fは0又は1〜10の整数である。複数のG2、R5及びR6はそれぞれにおいて同一でも異なっていてもよく、複数のe及びfはそれぞれにおいて同一でも異なっていてもよい。〕
ただし、上記一般式(II)は、下記(4)〜(6)のいずれかを満たす。
(4)a=1のとき、R7及びR8の少なくとも2つ以上が前記式(II−1)で表される有機基である。
(5)a=2のとき、複数のR7及びR8の少なくとも1つ以上が前記式(II−1)で表される有機基である。
(6)a=3又は4のとき、R7及びR8は前記式(II−1)で表される有機基でなくてもよい。]
【請求項7】
前記一般式(II)中、a=2である請求項6に記載の含フッ素アダマンタン誘導体。
【請求項8】
前記一般式(II)中、d=1、G1が単結合である請求項6又は7に記載の含フッ素アダマンタン誘導体。
【請求項9】
前記一般式(II)中、c=3である請求項6〜8のいずれかに記載の含フッ素アダマンタン誘導体。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれかに記載の含フッ素アダマンタン誘導体(II)と下記式(II−2)〜(II−4)で表される基を有する水酸基反応性化合物とを反応させる請求項1に記載の含フッ素アダマンタン誘導体(I)の製造方法。
【化6】

[式(II−2)中、R5は水素原子、メチル基及びトリフルオロメチル基の中から選ばれる1種を示す。式(II−4)中、R6は炭素数1〜5の炭化水素基を示す。]
【請求項11】
請求項6〜9のいずれかに記載の含フッ素アダマンタン誘導体(II)における水酸基の少なくとも1つに、グリシジル基含有水酸基反応性化合物を反応させた後、(メタ)アクリル酸無水物を反応させ、前記式(I−2)で示される基を導入する請求項1に記載の含フッ素アダマンタン誘導体(I)の製造方法。
【請求項12】
パーフルオロアダマンタンモノオール、パーフルオロアダマンタンジオール、パーフルオロアダマンタントリオール及びパーフルオロアダマンタンテトラオールから選らばれる水酸基を有する含フッ素アダマンタン誘導体とハロゲン含有アルコール化合物とを反応させる請求項6〜9のいずれかに記載の含フッ素アダマンタン誘導体(II)の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の含フッ素アダマンタン誘導体(I)を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項14】
熱重合開始剤及び/又は光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項13に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
請求項13又14に記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項16】
請求項1に記載の含フッ素アダマンタン誘導体(I)又は請求項15に記載の硬化物を用いてなる反射防止膜。

【公開番号】特開2011−12023(P2011−12023A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157927(P2009−157927)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】