説明

多容積ピペット

【解決手段】多容積ピペット(1)を提供する。例示的実施形態では、多容積ピペットは、ピペット本体(50)と、ピペット本体内に配置されたピストン(3)と、第1のチャンバ(7)と、第2のチャンバ(8)と、弁(13)とを含む。第1のチャンバ及び第2のチャンバは、少なくとも一部がピペット本体の内壁(52)及びピストンによって構成される。弁は、多容積ピペットの第1の容積範囲を提供するために第2のチャンバを外部環境と流体連通させることができる。また、弁は、多容積ピペットの第2の容積範囲を提供するために第2のチャンバを第1のチャンバと流体連通させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、流体を吸い込み且つ分配するための多容積ピペットに関する。より具体的には、本発明は、容積範囲が外部環境と流体連通する一つ又はそれ以上の弁によって制御される多チャンバピペットに関する。
【背景技術】
【0002】
在来のピペットは、一般的に、円筒形本体と、円筒形本体のキャビティ内の円筒形ピストンと、円筒形ピストンを作動するための機械式或いは自動作動機構と、を含む。作動機構により、円筒形ピストンに上方ストロークを行なわせるとき、液体を円筒形本体の端に取り付けられたピペット先端に吸い込む。作動機構により円筒形ピストンに下方行程を行なわせるとき、液体をピペット先端から分配する。キャビティの直径及びピストンの直径は、ピペットの容積範囲を定める。容積範囲は、ピペットが確実に吸い込みかつ分配することができる容積の範囲を指すことがある。一般に、大きい直径が大きい容積範囲に対応し、小さい直径が小さい容積範囲に対応する。例えば、キャビティ及びピストンが比較的小さい直径を有する円筒形ピペットは、1乃至10マイクロリットル(μL)の容積範囲を有する。キャビティ及びピストンが大きい直径を有する円筒形ピペットは、100乃至1000マイクロリットル(μL)の容積範囲を有する。それらの一様な特性により、在来の円筒形ピペットは、単一容積範囲内でだけ吸い込み及び分配することができる。
【0003】
多容積ピペットは、一つ以上の容積範囲にわたって確実に作動することのできるピペットである。米国特許第4,679,446号は、ピペット本体のキャビティが複数の部分で構成され、部分の各々が別々の直径を有する、多容積ピペットを記述している。また、多容積ピペットは、別々の直径を有する部分で構成されるピストンを含む。シールは、各ピントン部分を取り囲んで複数のチャンバをキャビティ内に形成する。各チャンバは、ピペット先端がピペット本体に設置されていない場合に外側環境と流体連通するチャネル開口を含む。そのように、この多容積ピペットは、ピペットの容積範囲を制御する変わる大きさのピペット先端を必要とする。
【0004】
例えば、第1のピペット先端は、一番下のチャネル開口がもはや外側環境と連通しないように一番下のチャネル開口だけを覆う。そのように、一番下のチャンバは、圧力を増すことができ且つ操作上のピペットチャンバである。他のチャンバは、外側環境と依然として流体連通しているので、圧力を増すことができない。かくして、多容積ピペットは、一番下のチャンバに対応する第1の容積範囲内で作動することができる。第2の(さらに大きい)ピペット先端は、最初の二つのチャンバが操作上のチャンバになるように一番下のチャネル開口及び次に続くチャネル開口を覆う。そのように、第2の容積範囲が、第1の容積範囲よりも大きい場合には、第2のピペット先端により、ピペットを第2の容積範囲で作動させる。第3の容積範囲を提供するために第3のピペット先端を用いることができる、等。特別に誂えたピペット先端を必要とすることに加えて、この多容積ピペットは、また、使用者が適正なピペット先端を確実に選択するいかなる機構をも提供しないので、限定される。
【0005】
米国特許第3,640,434号は、ピストン及びキャビティが各々漸増{ぜんぞう}する直径の部分で構成された、別の多容積ピペットを記述する。ピストン及びキャビティによって形成されたチャンバは、ピペット本体内の環状空間と流体連通するチャネル開口を有する。ピペットの使用者は、リング(輪)を回してピペットの容積範囲を制御するためにチャンバを互いに連通させたり、連通させないように楕円形シールを環状空間の内側で移動させることができる。例えば、一番下のチャンバだけが環状空間と連通するように楕円形シールを位置決めすることは、第1の容積範囲に対応する。二つの一番下のチャンバを環状空間と連通するように位置決めすることは、第2の(さらに大きい)容積範囲に対応する、等。この多容積ピペットは、楕円形シールを手動で配置することに伴なわれる使用者の誤りの高い危険性により、一部分が制限される。更に、楕円形シールは、キャビティに沿って繰返し移動されるときに磨耗及び裂傷を受ける。変形した、さもなければ損傷した楕円形シールは、キャビティを互いに隔絶する機能を損ない且つ不正確な容積変換に導くことがある。更に、この多容積ピペットは、容積変換を行うために使用者による少なくとも二つの操作を必要とする。使用者は、適正な容積範囲を得るために楕円形シールを調節し、且つまた、その容積範囲内で正しい容積を得るためにピストンストロークを設定しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かくして、単一ピペット先端で全ての容積範囲で動作することのできる多容積ピペットの要望がある。また、オペレータの誤りの危険性を最小にする多容積ピペットの要望がある。更に、特定の容積範囲の特定の容積を使用者の単一の動作によって選択することができる多容積ピペットの要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
多容積ピペットを提供する。例示的実施形態では、多容積ピペットは、ピペット本体と、ピペット本体内に配置されたピストンと、第1のチャンバと、第2のチャンバと、弁と、を含む。第1のチャンバ及び第2のチャンバは、ピペット本体の内壁及びピストンによって少なくとも一部分が構成される。弁は、多容積ピペットの第1の容積範囲を提供するために第2のチャンバを外部環境と流体連通させることができる。また、弁は、多容積ピペットの第2の容積範囲を提供するために第2のチャンバを第1のチャンバと流体連通させることができる。
【0008】
他の例示的実施形態では、多容積ピペットは、弁を制御することのできる制御モジュールを含む。制御モジュールは、実施形態に応じて、多容積ピペット内に組み込んでもよいし、又は多容積ピペットが取り付けられるスタンドアロンコントローラであってもよい。制御モジュールは、使用者が所望の容積を選択するために用いることができる容積セレクタを含んでもよい。例示的実施形態では、制御モジュールは、所望の容積に基づいて弁を自動的に制御することができる。また、制御モジュールは、所望の容積に基づいてピストンのストロークを自動的に制御することもできる。また、制御モジュールは、多容積ピペットが第1の容積範囲で作動しているか又は第2の容積範囲で作動しているかを指示する指示器を含むこともできる。一実施形態では、制御モジュールは、使用者が弁を手動で制御することができるようにオーバーライドを更に含む。
【0009】
また、ピペットの容積容量を調整するための方法を提供する。この方法は、使用者から要求容積を受けること、及び、受けた要求容積が入る容積範囲を決定すること、を含む。決定された容積範囲が第1の容積範囲であるならば、弁を用いてピペットの第2のチャンバを外部環境と流体連通させる。第2のチャンバは、少なくとも一部がピペット本体の内壁とピストンとによって構成される。決定された容積範囲が第2の容積範囲であるならば、弁を用いて第2のチャンバをピペットの第1のチャンバと流体連通させる。また、第1のチャンバは、少なくとも一部がピペット本体の内壁とピストンとによって構成される。
【0010】
他の主な特徴及び利点は、以下の図面、詳細な説明、及び添付した特許請求の範囲の再考により当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、同じ参照番号が同じ構成要素を示す添付図面を参照して例示的実施形態を説明する。
【0012】
図1は、例示的実施形態による多容積ピペット1及び制御モジュール2の断面図である。例示的実施形態では、制御モジュール2を多容積ピペット1内に組込むことができる。変形例として、制御モジュール2は、多容積ピペット1が接続される外部コントローラであってもよい。多容積ピペット1は、ピペット本体50内に閉じ込められたピストン3を含む。ピストン3は、実施形態に応じて自動的に或いは使用者によって手動で作動することができる。ピストン3は、第1の部分4と、第2の部分5と、第3の部分6と、を有する。第1の部分4は、直径D1を有し、第2の部分5は、D1よりも大きい直径D2を有し、第3の部分6は、D2よりも大きい直径D3を有する。変形実施形態では、ピストンは、2つ、4つ、5つ、等を含む、いかなる数の部分を有してもよい。別の変形実施形態では、ピストン部分は、いかなる直径のものでもよい。
【0013】
多容積ピペット1の第1のチャンバ7は、ピペット本体50の内壁52と、ピストン3と、第1の部分4の一部分を取り囲む第1のシール10と、によって画成される。第2のチャンバ8は、内壁52と、ピストン3と、第1のシール10と、第2の部分5の一部分を取り囲む第2のシール11と、によって画成される。第3のチャンバ9は、内壁52と、ピストン3と、第2のシール11と、第3の部分6の一部分を取り囲む第3のシール12と、によって画成される。例示的実施形態では、吸引及び分配中第1のチャンバ7だけが圧力を確実に増すことができるようにすることによって多容積ピペット1の第1の容積範囲を提供することができる。第1のチャンバ7と第2のチャンバ8の両方内で圧力を増すことができるように第2のチャンバ8を第1のチャンバ7と流体連通させることによって多容積ピペット1について第2の容積範囲を提供することができる。圧力を全ての3つのチャンバ内で増すことができるように、第2のチャンバ8を第1のチャンバ7と流体連通させ、且つ第3のチャンバ9を第2のチャンバ8と流体連通させることによって第3の容積範囲を提供することができる。変形例の実施形態では、多容積ピペットは、いかなる数のチャンバを含んでもよい。
【0014】
第1の弁13と第2の弁14は、第1のチャンバ7、第2のチャンバ8、及び又は第3のチャンバ9が互いに連通するかかどうかを制御するために用いることができる。第1の弁13及び第2の弁14は、どのチャンバが互いに流体連通するかを制御することのできるいかなる弁或いは他のデバイスであってもよい。例示的実施形態では、第1の弁13と第2の弁14は、制御モジュール2によって自動的に制御することができる電気弁であってもよい。別の例示的実施形態では、第1の弁13及び又は第2の弁14は、LEE COMPANYによって市販されているLHDA0531115H弁であってもよい。一実施形態では、第1の弁13及び第2の弁14は、大きさが約1センチメートル×2センチメートルであってもよい。更に、第1の弁13及び第2の弁14は、実施形態によりピペット本体50内に或いはその外側に配置されてもよい。
【0015】
第1の弁13は、第1のチャンバ7と流体連通する第1のチャネル15と、第2のチャンバ8と流体連通する第2のチャネル16と、外部環境と流体連通する第3のチャネル17と、を含む。また、第1の弁13は、チャネルコネクタ18を含み、チャネルコネクタ18は、第1のチャネル15、第2のチャネル16、及び第3のチャネル17の間の連通を制御するために移動することができる。チャネルコネクタ18は、第1のO−リング20及び第2のO−リング21によって取り囲まれた環状凹部19を含む。図1を参照して説明したように、チャネルコネクタ18は、環状凹部19が第2のチャネル16と第3のチャネル17との間を流体流通させるように配置される。そのように、第2のチャネル8は、外部環境と流体流通し、且つ第1のチャンバ7は、第2のチャンバ8から隔絶される。
【0016】
第2の弁14は、実施形態に応じて、第1の弁13と同じであってもよいし或いは異なっていてもよい。第2の弁14は、第2のチャンバ8と連通する第1のチャネル22と、第3のチャンバ9と連通する第2のチャネル23と、外部環境と連通する第3のチャネル24と、を含む。また、第2の弁14は、チャネルコネクタ25を含み、このチャネルコネクタ25を、第1のチャネル22、第2のチャネル23、第3のチャネル24間の連絡を制御するために移動させることができる。チャネルコネクタ25は、第1のO−リング27及び第2のO−リング28によって取り囲まれた環状凹部26を含む。
【0017】
図1を参照して説明したように、チャネルコネクタ25は、環状凹部26が第2のチャネル23と第3のチャネル24との間を流体連通させるように配置される。そのように、第3のチャンバ9は、外部環境と流体連通し、且つ第1のチャンバ7だけが吸引及び分配のために作動する。例示的実施形態では、第1のチャンバ7だけを作動することは、多容積ピペット1の第1の容積範囲を提供することができる。第1のチャンバ7及び第2のチャンバ8を作動することは、多容積ピペット1の第2の容積範囲を提供することができる。同様に、第1のチャンバ7、第2のチャンバ8、第3のチャンバ9を作動することは、多容積ピペット1の第3の容積範囲を提供することができる。例示的実施形態では、第1の容積範囲は、第1のディケードであり、第2の容積範囲は、第2のディケードであり、第3の容積範囲は、第3のディケードであるのがよい。例えば、第1の容積範囲は、約1乃至10マイクロリットル(μL)であり、第2の容積範囲は、約10乃至100マイクロリットル(μL)であり、第3の容積範囲は、約100乃至1000マイクロリットル(μL)であるのがよい。変形例として、容積範囲は、いかなる範囲の容積を網羅してもよく、容積範囲は、不連続であってもよいし、及び又は容積範囲は、互いに重なり合ってもよい。
【0018】
制御モジュール2は、電源29を含み、電源29は、スイッチ30が閉位置にあるときに第1の弁13に電力を供給することができ、スイッチ31が閉位置にあるときに第2の弁14に電力を供給することができる。また、制御モジュールは、容積セレクタ32を含み、容積セレクタ32は、使用者がピペットすることを望む容積を使用者が選択するために用いることができる。例示的実施形態では、容積セレクタ32は、使用者が軸33を中心に回転させる回し式円形板(サムホイール)であるのがよい。変形例として、容積セレクタは、使用者が所望の容積を選択するために用いることができる、いかなるボタン、スイッチ、又は他の機構であってもよい。容積セレクタ32は、容積コントローラ34と連通するのがよい。容積コントローラ34は、スイッチ30及びスイッチ31を制御するために容積セレクタ32からの入力を用いることができる。例示的実施形態では、容積コントローラ34は、第1の弁13及び第2の弁14が選択された容積のために正しく配置されるようにスイッチ30及びスイッチ31を自動的に制御することができる。また、容積コントローラ34は、選択された容積を吸引及び分配することができるようにピストン3のストロークを制御することができる。そのように、使用者は、単一の操作を実行することによって所望の容積を移送するために多容積ピペット1を用いることができる。また、容積コントローラ34は、選択された容積を表示器36に示すための指針35を制御するために容積セレクタ32からの入力を用いることができる。変形例の実施形態では、選択された容積を、デジタル表示器に、或いは当業者に知られたいかなる他の方法によって指示することができる。図1を参照して説明したように、指針35及び表示器36は、選択された容積が約3マイクロリットル(μL)であることを示す。
【0019】
また、制御モジュール2は、第1の指示器37、第2の指示器38、第3の指示器39を含む。例示的実施形態では、第1の指示器37は、選択された容積が第1の容積範囲内にあるときを指示することができ、第2の指示器38は、選択された容積が第2の容積範囲内にあるときを指示することができ、第3の指示器39は、選択された容積が第3の容積範囲内にあるときを指示することができる。
図1を参照して説明したように、第1の指示器37は、選択された容積が第1の容積範囲内にあることを指示するために点灯される。例示的実施形態では、第1の指示器37、第2の指示器38、及び第3の指示器39は、使用者の誤りを防止するのを助けるために異なる色であるのがよい。異なる色は、いろいろな容積範囲に用いることができるピペットの色(或いはピペット先端パッケージング)に対応してもよい。例えば、第1の指示器37と、第2の容積範囲内でピペットするために用いるピペット先端とは、両方ともに緑色であってもよい、等。変形例の実施形態では、第1の指示器、第2の指示器、第3の指示器は、同じ色であってもよい。変形例として、多色LEDのような単一の指示器が、容積範囲を指示するために用いることができる。変形例として、デジタル表示器或いは当業者に知られたいかなる他の機構が、容積範囲を指示するために用いることができる。他の変形例の実施形態では、指示器が含まれないかもしれないし、且つ同じピペット先端が、多容積ピペット1で実行された全ての操作に用いられる。
【0020】
図2は、例示的実施形態に従って選択された容積範囲内でピペットするように構成された多容積ピペット1の断面図である。容積セレクタ32を用いて、指針35及び表示器36によって指示されるように、約60マイクロリットル(μL)の容積を選択した。更に、第2の指示器38は、選択された容積が第2の容積範囲内にあることを指示するために点灯される。容積コントローラ34は、スイッチ30を開いて第1の弁13のチャネルコネクタ18を制御した。チャネルコネクタ18は、環状凹部19が第1のチャネル15と第2のチャネル16との間を流体連通させるように配置される。そのように、第1のチャンバ7は、第2のチャンバ8と流体連通する。スイッチ31が閉位置にあるので、第3のチャンバ9は、依然として外部環境と流体連通している。そのように、第1のチャンバ7と第2のチャンバ8は、第2の容積範囲を提供するように動作される。
【0021】
図3は、例示的実施形態に従って第3の容積範囲内でピペットするように構成された多容積ピペット1の断面図である。容積セレクタ32を用いて、指針35及び表示器36によって指示されるように、約700マイクロリットル(μL)の容積を選択した。更に、第3の指示器39は、選択された容積が第3の容積範囲内にあるということを指示するために点灯される。容積コントローラ34は、スイッチ30を開いて第1の弁13のチャネルコネクタ18を制御した。チャネルコネクタ18は、環状凹部19が第1のチャネル15と第2のチャネル16との間を流体連通させるように配置される。そのように、第1のチャンバ7は、第2のチャンバ8と流体連通である。また、容積コントローラ34は、スイッチ31を開いて第2の弁14のチャネルコネクタ25を制御した。チャネルコネクタ25は、環状凹部26が第1のチャネル22と第2のチャネル23との間を流体連通させるように配置される。そのように、第2のチャンバ8は、第3のチャンバ9と流体連通する。かくして、第1のチャンバ7、第2のチャンバ8、第3のチャンバ9が全て第3の容積範囲が提供するように動作される。
【0022】
例示的実施形態では、選択された容積が、隣接した容積範囲間の限度に対応するならば、多容積ピペット1は、精度を最大にするために小さい容積範囲を自動的に利用する。例えば、第2の容積範囲は、10乃至100マイクロリットル(μL)であり、第3の容積範囲は、100乃至1000マイクロリットル(μL)であることがある。使用者は、100マイクロリットル(μL)の容積を選択するために容積セレクタ32を用いることができる。かかる場合には、容積コントローラ34は、多容積ピペット1が、第3の容積範囲ではなく、(図2を参照して説明したように)第2の容積範囲で動作するように第1の弁13及び第2の弁14を自動的に制御することができる。
【0023】
一連の容積移送中、同じ容積範囲内で各容積移動を実行することによって精度を増すことができる。例えば、第1の実験が70マイクロリットル(μL)から110マイクロリットル(μL)までの範囲の一連の容積移動を要求することがあり、第2の実験が90マイクロリットル(μL)から150マイクロリットル(μL)までの範囲の一連の容積移動を要求することがある、等。一実施形態では、使用者は、第1の弁13及び又は第2の弁14を制御するために容積コントローラ34を手動でオーバーライド(解除)可能にさせることがある。また、隣接した容積範囲は、互いに重ね合わせることができる。例えば、第1の容積範囲は、約1乃至11マイクロリットル(μL)であり、第2の容積範囲は、約9乃至110マイクロリットル(μL)であり、第3の容積範囲は、約90乃至1000マイクロリットル(μL)であってもよい。そのように、使用者は、第1の実験中各容積移動が第2の容積範囲内で実行されるように多容積ピペット1を手動で制御することができる。同様に、使用者は、第2の実験中各容積移動が第3の容積範囲内で実行されるように多容積ピペット1を手動で制御することができる。変形例の実施形態では、使用者は、容積コントローラ34をオーバーライドし且つ容積範囲をいつでも手動で制御することができる。変形例では、多容積ピペット1は、制御機構34を含んでいないで、第1の弁13及び第2の弁14を使用者によって手動で制御することができる。
【0024】
図1乃至図3を参照して記述した例示的実施形態は、非限定的な例であるということを意図する。変形例の実施形態では、多容積ピペットは、あらゆる数の容積範囲を提供することができる。例えば、多容積ピペットは、4つのピストン部分、4つのシール、4つのチャンバ、4つの容積範囲を提供することができるような3つの弁を含むことができる。変形例として、多容積ピペットは、nの容積範囲を提供し且つn−1の弁を含むことができる。更に、弁を、チャンバ間の連通を制御することができるいかなる他の弁又はデバイスで置き換えることができる。
【0025】
例示的実施形態の前述の記述は、説明及び記述の目的で提供された。開示された厳密な形に関して網羅的或いは限定的であることを意図しないし、変更及び変形が上記教示に照らし合わせて可能であり或いは開示された実施形態の実践から得られてもよい。本願発明の範囲は、添付された特許請求の範囲及びそれらの均等物によって構成されることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、例示的実施形態による第1の容積範囲内でピペットで取るように構成された多容積ピペットの断面図である。
【図2】図2は、例示的実施形態による第2の容積範囲内でピペットで取るように構成された多容積ピペットの断面図である。
【図3】図3は、例示的実施形態による第3の容積範囲内でピペットで取るように構成された多容積ピペットの断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 多容積ピペット
2 制御モジュール
3 ピストン
4 第1の部分
5 第2の部分
6 第3の部分
7 第1のチャンバ
8 第2のチャンバ
9 第3のチャンバ
10 第1の座
11 第2の座
12 第3の座
13 第1の弁
14 第2の弁
15 第1のチャネル
16 第2のチャネル
17 第3のチャネル
18 チャネルコネクタ
19、26 環状凹部
20、27 第1のO−リング
21、28 第2のO−リング
22 第1のチャネル
23 第2のチャネル
24 第3のチャネル
25 チャネルコネクタ
29 電源
30、31 スイッチ
32 容積セレクタ
33 軸
34 容積コントローラ
35 指針
36 表示器
37 第1の指示器
38 第2の指示器
39 第3の指示器
50 ピペット本体
52 内側壁
D1、D2、D3 直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁を含むピペット本体と、
ピペット本体内に配置されたピストンと、
少なくとも一部が内壁及びピストンによって構成された第1のチャンバと、
少なくとも一部が内壁及びピストンによって構成された第2のチャンバと、
吸い込む第1の容積範囲を提供するために第2のチャンバを外部環境と流体連通させることができ、且つ吸い込む第2の容積範囲を提供するために第2のチャンバを第1のチャンバと流体連通させることのできる電気制御式弁と、
を含むことを特徴とする多容積ピペット。
【請求項2】
ピストンは、第1の直径を有する第1の部分と、第2の直径を有する第2の部分とを含み、更に、第1の直径は、第2の直径より小さいことを特徴とする、請求項1に記載の多容積ピペット。
【請求項3】
ピストンは、第1の直径を有する第1の部分と、第2の直径を有する第2の部分とを含み、更に、第1の直径は、第2の直径より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の多容積ピペット。
【請求項4】
ピストンは、第1の直径を有する第1の部分と、第2の直径を有する第2の部分とを含み、更に、第1の直径は、第2の直径と概ね等しいことを特徴とする、請求項1に記載の多容積ピペット。
【請求項5】
少なくとも一部が内壁及びピストンによって構成された第3のチャンバを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の多容積ピペット。
【請求項6】
第3の容積範囲を提供するために第3のチャンバを第2のチャンバと流体連通させることのできる第2の弁を更に含むことを特徴とする、請求項5に記載の多容積ピペット。
【請求項7】
第1の容積範囲及び第2の容積範囲は、互いに重なり合うことを特徴とする、請求項1に記載の多容積ピペット。
【請求項8】
弁は、第1のチャンバと流体連通する第1のチャネルと、第2のチャンバと流体連通する第2のチャネルと、外部環境と流体連通する第3のチャネルと、を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の多容積ピペット。
【請求項9】
弁は、チャネルコネクタを更に含み、且つ更に、第1の位置のチャネルコネクタは、第2のチャネルを第3のチャネルと流体連通させることによって第2のチャンバを外部環境と流体流通させることを特徴とする、請求項8に記載の多容積ピペット。
【請求項10】
第2の位置のチャネルコネクタは、第2のチャネルを第1のチャネルと流体連通させることによって第2のチャンバを第1のチャンバと流体連通させることを特徴とする、請求項9に記載の多容積ピペット。
【請求項11】
第1のチャンバは、ピストンの第1の部分の少なくとも一部分を取り囲む第1のシールによって更に構成され、更に第1のチャネルは、第1のシールの第1の側の第1の位置で第1のチャンバと連通することを特徴とする、請求項8に記載の多容積ピペット。
【請求項12】
第2のチャンバは、第1のシールと、ピストンの第2の部分の少なくとも一部分を取り囲む第2のシールとによって更に構成される、ことを特徴とする請求項11に記載の多容積ピペット。
【請求項13】
第2のチャネルは、第1のシールの第2の側の第2の位置で第2のチャンバと連通し、第2の側は、第1の側と反対側である、ことを特徴とする請求項8に記載の多容積ピペット。
【請求項14】
第1の容積範囲は、約1マイクロリットル(μL)ないし約10マイクロリットル(μL)である、ことを特徴とする請求項1に記載の多容積ピペット。
【請求項15】
弁は、使用者によって手動で制御することができる、ことを特徴とする1に記載の多容積ピペット。
【請求項16】
内壁を含むピペット本体と、
ピペット本体内に配置されたピストンと、
少なくとも一部が内壁及びピストンによって構成された第1のチャンバと、
少なくとも一部が内壁及びピストンによって構成された第2のチャンバと、
吸い込む第1の容積範囲を提供するために第2のチャンバを外部環境と流体連通させ且つ吸い込む第2の容積範囲を提供するために第2のチャンバを第1のチャンバと流体連通させることのできる電気制御式弁と、
選択された容積に基づいて弁を制御することのできる制御モジュールと、
を含むことを特徴とする多容積ピペット。
【請求項17】
制御モジュールは、使用者が選択された容積を選択するために用いることのできる容積セレクタを含むことを特徴とする、請求項16に記載の多容積ピペット。
【請求項18】
制御モジュールは、選択された容積に基づいてピストンのストロークを制御することを特徴とする、請求項16に記載の多容積ピペット。
【請求項19】
制御モジュールは、多容積ピペットが第1の容積範囲で作動しているか又は第2の容積範囲で作動しているかを指示するための指示器を含む、請求項16に記載の多容積ピペット。
【請求項20】
制御モジュールは、ピペット本体に取付けられることを特徴とする、請求項16に記載の多容積ピペット。
【請求項21】
制御モジュールは、使用者が弁を手動で制御することができるようにオーバーライドを更に含むことを特徴とする、請求項16に記載の多容積ピペット。
【請求項22】
弁は、第1のチャンバと流体連通する第1のチャネルと、第2のチャネルと流体連通する第2のチャネルと、外部環境と流体連通する第3のチャネルと、を含むことを特徴とする、請求項16に記載の多容積ピペット。
【請求項23】
弁は、チャネルコネクタを更に含み、更に、制御モジュールは、チャネルコネクタを第1の位置に移動させることによって弁を制御し、第1の位置では第2のチャンバが第3のチャネルと流体連通することを特徴とする、請求項22に記載の多容積ピペット。
【請求項24】
弁は、チャネルコネクタを更に含み、更に、制御モジュールは、チャネルコネクタを第2の位置に移動させることによって弁を制御し、第2の位置では第2のチャンバが第1のチャネルと流体連通することを特徴とする、請求項22に記載の多容積ピペット。
【請求項25】
ピペットの容積容量を調節する方法であって、
使用者から要求容積を受け、
受けた要求容積が入る容積範囲を決定し、
決定された容積範囲が第1の容積範囲内にあるならば第2のチャンバを外部環境と流体連通させ且つ決定された容積範囲が第2の容積範囲内にあるならば、第2のチャンバを第1のチャンバと流体連通させるために弁を電気的に制御し、第2のチャンバは、少なくとも一部がピペット本体の内壁及びピストンによって構成され、更に、第1のチャンバは、少なくとも一部がピペット本体の内壁及びピストンによって構成される、ことを特徴とする上記方法。
【請求項26】
弁は、チャネルコネクタと、第2のチャンバと流体連通する第2のチャネルと、外部環境と流体連通する第3のチャネルと、を含み、更に、第2のチャンバを外部環境と流体流通させることは、第2のチャネルが第3のチャネルと流体連通するようにチャネルコネクタを移動させることを含むことを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
弁は、第1のチャンバと流体連通する第1のチャネルを更に含み、更に、第2のチャンバを第1のチャンバと流体連通させることは、第2のチャネルが第1のチャネルと流体連通するようにチャネルコネクタを移動させることを含む、ことを特徴とする請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−531160(P2009−531160A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549079(P2008−549079)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000021
【国際公開番号】WO2007/077527
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(503285760)
【Fターム(参考)】