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多屈曲型四重極飛行時間型質量分析装置
説明

多屈曲型四重極飛行時間型質量分析装置

【課題】本発明は、多屈曲型四重極飛行時間型質量分析装置に関し、四重極型が小型である特長も活かしつつ分解能も改善可能であり、測定1回のデータ取得時間を数ミリ秒或いはそれ以下に短縮できる多屈曲型四重極飛行時間型質量分析装置を提供することを目的としている。
【解決手段】円弧状に曲がった電極4個組の四重極と直線状電極4個組の四重極同士がイオン光学上の光軸が接続部でほぼ一致するように電極部材が接する構造で、一体化乃至は接続された状態の四重極の外形を持つ構成であり、前記四重極部はイオンガイドとして機能させ、飛行するイオンの飛行時間を計測できるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多屈曲型四重極飛行時間型質量分析装置に関し、更に詳しくは飛行時間型質量分析計としても、またマスフィルタとしても機能できるようにした多屈曲型四重極飛行時間型質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
四重極子で構成した質量分析装置(四重極質量分析装置:略称QMS)は、小型の汎用機としての利用が多く、質量分析場である四重極場の連続的な掃引或いは飛び飛びの設定で、個々質量の異なるイオンを選別して検出する方式(マスフィルタと呼ばれる)で使用されている。
【0003】
従来の四重極質量分析装置としては、イオン源と、四重極フィルタを通過したイオンを検出する検出器とを具備する四重極質量分析装置において、前記四重極フィルタを通過するイオンの質量数が順次変化するように該四重極フィルタへの印加電圧を走査する際に、走査速度に応じて、前記イオン源と四重極フィルタとの間に印加する直流電圧を変化させる技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、飛行時間型質量分析装置においては、飛行管を第1の金属で作り、該飛行管の少なくとも一端を構成する壁部を摺動可能な嵌め合い構造にした装置が知られている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−25498号公報(段落0012〜0014、図1〜図2)
【特許文献2】特開2008−135192号公報(段落0026〜0030、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
四重極型質量分析装置は、一般的には質量分解能が1マス差を分ける程度と高くはないが、小型・安価で使い勝手がよいとされる範囲で利用されている。高い質量分解能を必要とする用途では、二重収束型質量分析装置等の他の高性能な質量分析装置が用いられる。また、質量差を分離して異なるイオンを検出するために必要とする時間は、分析場の掃引或いは飛び飛びの制御で、測定1回のデータ取得で速くても100ミリ秒程度を要している。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、四重極型が小型である特長も活かしつつ分解能も改善可能であり、測定1回のデータ取得時間を数ミリ秒或いはそれ以下に短縮できてサンプリングの同時性改善可能な装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1記載の発明は、円弧状に曲がった電極4個組の四重極と直線状電極4個組の四重極同士がイオン光学上の光軸が接続部でほぼ一致するように電極部材が接する構造で、一体化乃至は接続された状態の四重極の外形を持つ構成であり、前記四重極部はイオンガイドとして機能させ、飛行するイオンの飛行時間を計測できる構成にしたことを特徴とする。
【0008】
(2)請求項2記載の発明は、中心軸から斜め45度方向の四方に配置する円弧状に曲がった電極4個組の四重極と直線状電極4個組の四重極同士がイオン光学上の光軸が接続部でほぼ一致するように電極部材が接する構造で、一体化乃至は接続された状態の四重極の外形を持つ構成で、この四重極部はイオンガイドとして機能させて、飛行するイオンの飛行時間を計測できる構成にしたことを特徴とする。
【0009】
(3)請求項3記載の発明は、円弧状に曲がった電極4個組の四重極と直線状電極4個組の四重極の組合せ数、及び接続方向を任意に変えて連結し、少なくとも直線型四重極の部分を2組以上とする接続で、イオンの飛行時間を測定するようにしたことを特徴とする。
【0010】
(4)請求項4記載の発明は、円弧状に曲がった電極4個組の四重極と直線状電極4個組の四重極同士がイオン光学上の光軸が接続部でほぼ一致するようにし、間に電気的に絶縁するための空隙を設けて連結した四重極の外形を持つ構成で、直線状電極4個組の四重極部分だけは、電気系回路の切り替えにより円弧状部分とは異なる電圧印加を可能とし、マスフィルタとしても使用しうるようにしておいて、四重極部全体をイオンガイドとして機能させてイオンの飛行時間を計測できる状態とマスフィルタとして質量分析できる状態の何れかのモードを必要に応じて切り替えるようにしたことを特徴とする。
【0011】
(5)請求項5記載の発明は、前記円弧状電極組部分の光軸線の回転半径が、前記電極の直径の10倍以内であることを特徴とする。
(6)請求項6記載の発明は、前記電極は棒状又はパイプ状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
(1)請求項1記載の発明によれば、前記四重極部はイオンガイドとして機能させ、飛行する飛行時間を計測できるようにすることができる。
(2)請求項2記載の発明によれば、前記四重極部を中心軸から斜め45度方向の四方に配置したイオンガイドとすることができ、中性粒子成分による電極表面への付着・汚染を低減することができる。
【0013】
(3)請求項3記載の発明によれば、直線型四重極の部分を2個以上とする接続で、イオンの飛行時間を分解能よく計測することができる。
(4)請求項4記載の発明によれば、装置をマスフィルタとしても、飛行時間型質量分析装置としても利用することができる。
【0014】
(5)請求項5記載の発明によれば、円弧状電極部分の光軸線の回転半径が電極の直径の10倍以内になるようにして小型化に適した質量分析装置を提供することができる。
(6)請求項6記載の発明によれば、前記電極を棒状のものを用いても、またパイプ状のものを用いても、多屈曲型四重極飛行時間型質量分析装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の装置構成概要を示す図である。1はイオン源又は系外からのイオンを中継するイオン供給部、2はイオンを一時的に溜め込みパルス的に射出するか、イオン流をパルス的に入り/切りするイオン溜め又はイオンパケット化部、3はイオンを質量分散させる質量分析場、4は最終的にイオンを検出するイオン検出部である。本発明の特徴となる部分以外の、例えば電源制御系、真空排気系、データ処理システム等は省略している。
【0016】
このように構成された装置で、イオン供給部1から出射されたイオンは、イオン溜め又はイオンパケット部2に貯留され、イオンを一時的に溜め込みパルス的に射出される。質量分析場3は出射されてきたイオンを質量毎に質量分散させる。質量分散されたイオンは、イオン検出部4に到達し、質量が検出される。
【0017】
図2は多数回屈曲の構成例を示す図である。同図は、図1の中の質量分析場3をなす基本的なイオン光学系としての四重極子配置並びに構成を全体図として立体的に示したもので、イオン軌道の計算のためにモデル化して用いたものの図である。シミュレーションモデルのため、電極子を支持する絶縁材はここには示されていないが、これらの電極子は絶縁支持体で保持され、真空排気装置で維持された真空室内に格納される。
【0018】
電極子は直線型四重極として直線状棒電極構成四重極の部分(以下直線型四重極という)6と、円弧型四重極として円弧状に曲がった棒電極構成四重極の部分(以下円弧型四重極という)7とが連結された図2に示すような外形的構造になっている。図2は多数回屈曲四重極の構成例を示す図である。図に示すように3次元的にジグザグな折り曲げがされ、長い光軸が短く折り畳まれたものになっている。
【0019】
8はイオン入口側スリット、9はイオン出口側スリットである。イオン入口側スリット8とイオン出口側スリット9は、この系でのイオンの出入り口になる細孔を持つ電極である。直線型四重極6と円弧型四重極7の四重極には直流電圧と高周波電圧が供給され、そのための電源や制御系が図示されていないが、構成として含まれる。
【0020】
四重極子部の電極電圧供給の事例として、その基本的なものを図3に示す。図3は四重極電極断面と基本的な配線例を示す図である。図中の式の記号は、Voが高周波振幅電圧値、ωが角周波数、tが時間、θが位相、U1が直流電圧値(軸電圧設定用)を示している。図3において、K1〜K4は電極子である。電極子K1とK4にはVo・cos(ωt+θ)+U1が印加され、電極子K2とK3には
−Vo・cos(ωt+θ)+U1が印加されている。
【0021】
詳述しないが、図1のイオン検出部4は、イオンを電気信号に変換し、到達イオン量の観測値とイオン溜又はイオンパケット化部2から射出された時点から検出部到達時点までの時間も計測する機能を備えている。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0022】
図2に示した例では、直線型四重極6と円弧型四重極7とに
高周波電圧Vrf(=±Vo・cos(ωt+θ))と直流電圧Vdc(=U1)とが重畳される。イオン入口側スリット8とイオン出口側スリット9にも入口電圧Vdc_inと出口電圧Vdc_outがそれぞれ印加される。
【0023】
この条件の下でイオンがイオン入口側スリット8の細孔からこの四重極場の系に導入されると、イオンは高周波電圧で動径方向(光軸に垂直な方向)に振動しながら進行し、イオン出口側スリット9に至り、この系外へと進む。イオンはパケット(時間的に短時間の一塊)として射出され、射出時間から信号としてイオンが検出されるまでの飛行経過時間が計測される。
【0024】
イオンがパケット状に射出される時は、同じ運動エネルギーがほぼ全てのイオンに付与されるので、射出から検出までの飛行経過時間は、質量に依存した所用時間になるため、質量分析計として用いることができる。イオンの飛行時間を長くする方が質量差による時間差を得やすいので飛行時間を長くする、即ち接合の繰り返し回数は多くなる構成の方が有利である。但し、距離を長く延ばしても系には時間収差が存在するので、長さには限度がある。
【0025】
収差の分が拡大すると、質量の違いでの差と収差に起因する差とが区別できなくなった時点でそれ以上の質量分別ができないからである。また、イオンの一塊とした集団が収差の原因で拡散すると、信号検出時に時間的に到達するために感度的な限界も関わってくる。図4は四重極の分析場を直線型四重極6と、円弧型四重極7の部分全てをイオンガイドとして機能させ飛行時間型とした場合でのイオン軌道の飛行軌跡をシミュレーションしたものである。即ち、イオン軌跡例を示す図である。
【0026】
図5はイオンの飛行時間を記録した例を示す図である。図は異なる質量のイオンを同一時刻に射出した飛行時間を計測記録したものである。図中、TOFの表記の後に続く数値が飛行時間、Massの後が質量を表すが、質量の違いで飛行時間にも違いが生じているのが確認できる。
【0027】
第1の実施の形態によれば、前記四重極部はイオンガイドとして機能させ、飛行する飛行時間を計測できるようにすることができる。また、直線型四重極の部分を2個以上とする接続で、イオンの飛行時間を分解能よく計測することができる。
(実施の形態2)
ここでは、四重極連結部分の円弧型四重極の曲げ方向等についての変形例を示す。図2に記載の例は図6に示す屈曲の基本部分を示すように3次元即ち立体的に屈曲させた場合である。図6は3次元屈曲型と軌道重畳図を示す図である。細い実線で軌道が示されている。図7に示す例は、同一の平面に屈曲させたものである。即ち、図7は平面屈曲型と軌道重畳図を示す図である。細い実線で軌道が示されている。
【0028】
このように屈曲方向を組み合わせると、必要に応じた形状に変更可能である。ここでは例示していないが、同一平面上での周回や渦巻きなどの構造、その渦巻く方向に垂直な方向へ角度が少しずれていく要素も取り入れたヘリカル構造も可能である。なお、取り上げた事例の円弧状四重極の部分回転角は何れも同じで、180度にイオンの進行する向きが変わる接続例を示しているが、必ずしもこの180度の角度が必須ではないので、必要に応じてイオンのガイドが可能で光軸に垂直な断面の電極径と内接径との比率関係が保てる角度で偏向してもよい。
【0029】
円弧型四重極の部分での曲げの程度としては、図8に示すように小さな回転半径にしてもイオンはガイドできるので、その部分の回転半径は大きくなりすぎない程度で製作の都合に合わせて変更できる。この場合において、円弧状電極部分の光軸線の回転半径が電極の直径の10倍以内になるようにして小型化に適した質量分析装置を提供することができる。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0030】
実施の形態1と基本的には変わりはない。単にイオンが進行する際の偏向方向や量が異なる。但し、イオンの初期条件の違いでイオンそれぞれは異なる軌道を取るので、この偏向・接続の形態・径の長さ等でも取り得るイオンの飛行軌道は変わってくる。よって、全く同じ結果ということにはならないが、そのことが重要な要素ではないので、軌道の曲げ方等は製作上の都合に合わせて変更することが可能である。
(実施の形態3)
図9は、本発明の中の図1の質量分析場で最も基本的な構造のイオン光学系の例を示す図であり、四重極の光学系全体を示す図である。四重極子配置並びに構成を全体図として立体的に示したもので、特徴を捉えるために最小単位での連結回数で、イオン軌道の計算のためにモデル化して用いたものの図である。
【0031】
また、見易くするために、図10に四重極の光学系全体の投影を示した。図10では、平面図と正面図と側面図を示している。図2と同一のものは、同一の符号を付して示す。6は直線型四重極、7は円弧型四重極、8はイオン入口側スリット、9はイオン出口側スリットである。
【0032】
シミュレーションモデルのため、図2と同様、電極子を指示する絶縁材はここには示していないが、これらの電極子は、絶縁支持体で保持され、真空排気装置で維持された真空領域に格納される。電極子は、直線型四重極6の部分と両端に一部直線部分を含んだ円弧型四重極の部分とが空隙を置いて連結された構造になっている。
【0033】
この例では、3組の直線型四重極6と2組の円弧型四重極7で構成され、図9に示すように3次元的にジグザグな折り曲げがされて、長い光軸が小さく折り畳まれたものになっている。イオン入口側スリット8とイオン出口側スリット9は、この系でのイオンの出入り口になる細孔を持った電極板である。
【0034】
通常、四重極型質量分析装置の四重極子には、直流電圧と高周波電圧が供給されるが、この場合も同様で、そのための電源や制御系が図示されていないが、構成として含まれる。四重極部の電極電圧供給の事例としては、この基本的なものを図11に示す。図3と同一のものは、同一の符号を付して示す。
【0035】
電極K1とK4は共通接続され、Vo・cos(ωt+θ)+U1+U2が供給され、電極K2とK3は共通接続され、−Vo・cos(ωt+θ)+U1−U2が供給される。ここで、Voは高周波振幅電圧値、ωは角周波数、tは時間、θは位相、U1は軸電位設定用の直流電圧値、U2はマスフルタ機能用の直流電圧値である。U2の電圧を供給回路切断で供給しないか、その値を0にすれば、イオンガイドとして使用できるので、マスフィルタモードとイオンガイドモードとの切り替えができる構成乃至は制御系が組み込まれる。直線型四重極6への電圧供給は、この切り替えがされるような構成となる。なお、直線型四重極部分のイオン入口側スリット8は特にイオンガイドとして機能させるような使用もある。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0036】
図9で示した例では、直線型四重極6に高周波電圧
Vrf1(=±Vo・cos(ωt+θ))と直流電圧Vdc1(=±U2)が一定の電圧比で印加・走査されるマスフィルタ(質量分析器)として駆動し、更に電位調整用の軸電圧Vdc3(=U1)も重畳される。
【0037】
円弧型四重極7には、主として軸電圧Vd2と高周波電圧Vrf2が印加される。高周波電圧Vrf1と高周波電圧Vrf2とは同じにされる場合が多いので、高周波の電源を同一にすることもできるし、異なる設定でも使用し得るので別々の電源の場合もある。イオン入口側スリット8とイオン出口側スリット9にも入口電圧Vdc_inと出口電圧Vdc_outがそれぞれ印加される。
【0038】
この条件下で、イオンがイオン入口側スリット8から系に導入されると、高周波電圧で動径方向に振動しながら進行し、イオン出口側スリット9に到り、検出器へと進む。直線型四重極6の部分では、モードを切り替えてイオンガイドではなく、マスフィルタとして使用されると、四重極場に設定された条件に応じた質量選別作用で、特定の質量のイオンだけが系を通過でき、それ以外は動径方向の振動振幅が大きくなって光軸から外れ、この系を通過できなくなり排除される。
【0039】
図12にシミュレーションモデルとイオン軌道とを重ねて示す。イオン軌道は細い実線で示している。動作を見易くするために、図13と図14にイオン軌道だけを取り出して示す。図13は、同一質量のイオンの入射初期条件を変化させ、図14では質量の異なるイオンも含めて初期条件を変えたシミュレーションを示してある。
【0040】
図13では、マスフィルタとして機能させている直線型四重極の部分になる区域の最初の直線部分は通過できたイオンでも、後段の直線部分のマスフィルタ、この場合は3回目に通過する直線の領域部分でも振動振幅が大きくなりすぎて系の途中で電極面に衝突しているのが分かる。つまり、質量選別の条件がより厳しくなっていることを示している。
【0041】
図14では、通過できる条件に合致しない質量のイオンも射出した場合を示している。従って、最初の直線領域だけでなく、2回目、3回目に通過する直線領域でも途中で振動振幅が大きくなって電極面に衝突して通過できなくなっている様子が見てとれる。やはり、この例でも、質量選別の条件がより厳しくなっていることのあらわれである。
【0042】
四重極型質量分析装置の質量分解能は、一つにはイオンの振動数に依存するとされている点から、印加する高周波電圧の周波数を高くするか、直線型四重極の部分を長くすることがその方法でもあるが、実際的には、周波数を高くするとそれにつれて印加する高周波電圧も高くする必要があり、四重極を長くする場合も直線的に単に引き延ばすだけだと装置全体も長くなってしまうので実用的ではない。
【0043】
しかしながら、本発明によれば、直線型四重極6の部分を長くしても畳み込みができるので、装置が極端に長くなる欠点は低減されて、質量分解能が改善される。よって、折り返しで畳み込む回数を多くして、実施の形態1の図2に示したような構造にまで拡張すると、装置を大きくすることなく、飛行距離を長くすることができる。
【0044】
実施の形態3によれば、装置をマスフィルタとしても、飛行時間型質量分析装置としても利用することができる。また、四重極の電極は棒状としているが、中空のパイプ状のものでもよく、電極断面形状は必ずしも円形に留まらない。即ち、四重極場が形成できればよく、双曲、四角等と変形可能である。
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態は、外観構成は、図9,図10と同じである。違うのは、図11に対する図15の配線である。図15において、SWは、電極K1〜K4に印加する電圧を切り替えるスイッチである。スイッチSWの一方の接点には、+U2が印加され、他方の接点には−U2が印加されている。スイッチSWの接点が閉じた状態でマスフィルタとして動作し、スイッチSWの接点が開いた状態でイオンガイドとして動作する。図11はマスフィルタとして動作させた場合を示している。
(第5の実施の形態)
イオンガイド機能の円弧型四重極部において、棒状電極を斜め45度方向の四方に配置した場合は、軌道が屈曲する部分での中性粒子の軌道が電極の間隙を抜けるような形になり、中性粒子成分による電極表面への付着・汚染が低減される。電場での偏向作用を受けない中性粒子は、軌道が曲がったイオンとは分離されるので、余計な衝突を防ぐことができ、検出器へのノイズの原因としても低減できる。また、通常の上下左右の四方に配置した場合は、円弧状四重極の電極棒の曲げ部分では基本形として3種類の電極棒が必要であるが、45度方向の四方に配置したものでは、向きが回転する内側と外側の2種類で構成することができる。
【0045】
以上、説明した本発明の効果を列挙すると以下の通りである。
1.イオンガイド機能の円弧型四重極部を間に介して、直線型四重極マスフィルタ或いはイオンガイドを交互に複数組連続的に畳み込むような形で繋ぐことにより、直線的に繋ぐ形式よりも直線的に長くなりすぎない小型の質量分析装置が製作でき、イオンガイド・直線型四重極マスフィルタの機能部分を組み合わせた構成の装置でも小型化することができる。
2.直線型四重極マスフィルタを複数繋ぐことで、その内部を飛行するイオン軌道長さをその分長くとれるようになり、振動回数が多ければ質量分解能も向上するので、装置性能を向上させることができる。
3.直線型四重極を複数繋ぐことで、その内部を飛行するイオン軌道長さをその分長くととれるようになり、イオンガイドモードで使用すると、四重極の場を飛行するイオンの検出器までの到達時間を長くすることができるので、飛行時間型質量分析装置として使用でき、またモードの切り替えでマスフィルタとしても動作する複合型で利用することができる。
4.直線型四重極の多段接続に使用する円弧状四重極部の回転角度を変えて設定できることから、畳み込みの形にも自由度を設けることができ、装置作製の上からも都合がよい。
【0046】
以上説明したように、本発明によれば四重極型が小型である特長も活かしつつ分解能も改善可能であり、測定1回のデータ取得時間を数ミリ秒或いはそれ以下に短縮できてサンプリングの同時性改善可能な装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の装置構成概要を示す図である。
【図2】多数回屈曲四重極の構成例を示す図である。
【図3】四重極電極断面と基本的な配線例を示す図である。
【図4】イオン軌跡例を示す図である。
【図5】イオンの飛行時間を記録した例を示す図である。
【図6】3次元屈曲型と軌道重畳図を示す図である。
【図7】平面屈曲型と軌道重畳図を示す図である。
【図8】円弧状四重極部回転半径と軌道重畳図を示す図である。
【図9】四重極の光学系全体を示す図である。
【図10】四重極の光学系全体の投影を示す図である。
【図11】直線型四重極部断面と基本的な配線例を示す図である。
【図12】四重極の光学系とイオン軌道重畳図を示す図である。
【図13】イオン軌道図1を示す図である。
【図14】イオン軌道図2を示す図である。
【図15】直線型四重極部断面の基本的な配線の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 イオン供給部
2 イオン溜め又はイオンパケット化部
3 質量分析場
4 イオン検出部
6 直線型四重極
7 円弧型四重極
8 イオン入口側電極
9 イオン出口側電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状に曲がった電極4個組の四重極と直線状電極4個組の四重極同士がイオン光学上の光軸が接続部でほぼ一致するように電極部材が接する構造で、一体化乃至は接続された状態の四重極の外形を持つ構成であり、
前記四重極部はイオンガイドとして機能させ、飛行するイオンの飛行時間を計測できる構成にしたことを特徴とする多屈曲型四重極飛行時間型質量分析装置。
【請求項2】
中心軸から斜め45度方向の四方に配置する円弧状に曲がった電極4個組の四重極と直線状電極4個組の四重極同士がイオン光学上の光軸が接続部でほぼ一致するように電極部材が接する構造で、一体化乃至は接続された状態の四重極の外形を持つ構成で、この四重極部はイオンガイドとして機能させて、飛行するイオンの飛行時間を計測できる構成にしたことを特徴とする多屈曲型四重極飛行時間型質量分析装置。
【請求項3】
円弧状に曲がった電極4個組の四重極と直線状電極4個組の四重極の組合せ数、及び接続方向を任意に変えて連結し、少なくとも直線型四重極の部分を2組以上とする接続で、イオンの飛行時間を測定するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の多屈曲型四重極飛行時間型質量分析装置。
【請求項4】
円弧状に曲がった電極4個組の四重極と直線状電極4個組の四重極同士がイオン光学上の光軸が接続部でほぼ一致するようにし、間に電気的に絶縁するための空隙を設けて連結した四重極の外形を持つ構成で、直線状電極4個組の四重極部分だけは、電気系回路の切り替えにより円弧状部分とは異なる電圧印加を可能とし、マスフィルタとしても使用しうるようにしておいて、四重極部全体をイオンガイドとして機能させてイオンの飛行時間を計測できる状態とマスフィルタとして質量分析できる状態の何れかのモードを必要に応じて切り替えるようにしたことを特徴とする請求項3記載の多屈曲型四重極飛行時間型質量分析装置。
【請求項5】
前記円弧状電極組部分の光軸線の回転半径が、前記電極の直径の10倍以内であることを特徴とする請求項4記載の多屈曲型四重極飛行時間型質量分析装置。
【請求項6】
前記電極は、棒状又はパイプ状であることを特徴とする請求項5記載の多屈曲型四重極飛行時間型質量分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−146876(P2010−146876A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323560(P2008−323560)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】