説明

多層クロモニック構造体

1多層クロモニック構造体の製造方法は、(a)(i)最初の連続的水溶液ポリマー相、及び(ii)クロモニック材料を含む最初の非連続的クロモニック相、を含む最初の水性混合物を調製して、クロモニックナノ粒子を形成すること;(b)得られたクロモニックナノ粒子を多価カチオン塩で非共有結合的に架橋すること;(c)得られた架橋クロモニックナノ粒子をクロモニック材料を含む組成物中に分散させて、クロモニックナノ粒子分散体を形成すること;並びに(d)(i)当該クロモニックナノ粒子分散体を含む二番目の非連続的クロモニック相、及び(ii)二番目の連続的水溶性ポリマー相、を含む二番目の水性混合物を調製して、当該クロモニックナノ粒子を封入すること、を含み、ここで、当該第1非連続クロモニック相及び当該第2非連続クロモニック相の少なくとも一方はゲスト化合物を更に含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、封入及び制御放出のために有用である多層クロモニック構造体に関し、又、別の態様では、当該構造体を製造するための方法類に関する。
【背景技術】
【0002】
ある物質又は材料の封入及び制御放出は、多くの方法によって達成されてよい。典型的には、ある物質を包囲するか又はある物質との混合物を形成するいずれかのためにも高分子コーティングが使用されてよい。別の一般的な手法は、ある物質の放出を可能にする開口又は膜を有する巨視的構造体を用いる。封入及び制御放出は広い有用性を見出すが、制御放出薬物送達の分野において特に有用である。
【0003】
PCT国際公開特許WO2005/012488は、ゲスト分子(例えば、薬剤)を後で放出させることができるようにクロモニックマトリックス中に封入することについて記載する。当該クロモニックマトリックスは、薬剤を特定の環境条件から保護し、その後、他の環境条件下で当該薬剤を制御可能に送達することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
簡潔に言えば、本発明は1多層クロモニック構造体の製造方法を提供する。その方法は、(a)(i)最初の連続的水溶性ポリマー相、及び(ii)クロモニック材料を含む最初の非連続的クロモニック相、を含む最初の水性混合物を調製して、クロモニックナノ粒子を形成すること、(b)得られたクロモニックナノ粒子を多価カチオン塩で非共有結合的に架橋すること、(c)得られた架橋クロモニックナノ粒子をクロモニック材料を含む組成物中に分散させて、クロモニックナノ粒子分散体を形成すること、又(d)(i)当該クロモニックナノ粒子分散体を含む二番目の非連続的クロモニック相、及び(ii)二番目の連続的水溶性ポリマー相、を含む、二番目の水性混合物を調製して、当該クロモニックナノ粒子を封入すること、を含む。当該第1非連続的クロモニック相及び当該第2非連続的クロモニック相の少なくとも一方は、ゲスト化合物を更に含む。
【0005】
本明細書で使用するとき、「ナノ粒子」は、約1,000ナノメートル未満の粒子を言う。
【0006】
本明細書で使用するとき、「クロモニック材料」(又は「クロモニック化合物」)は、通常、種々の親水性基によって囲まれた疎水性コアの存在によって特徴付けられる、大きな多環分子を指す(例えば、アトウッドT.K.(Attwood, T.K.)及びライドンJ.E.(Lydon, J.E.)、分子結晶及び液晶(Molec. Crystals Liq. Crystals)、108,349(1984年)を参照のこと)。当該疎水性コアは、芳香族及び/又は非芳香族環を含有し得る。溶液中にある場合、これらのクロモニック材料は、広範囲の秩序によって特徴付けられるネマチック秩序化状態に凝集する傾向がある。
【0007】
本明細書で使用するとき、「分散液」は、液体連続相内に分配又は懸濁された固体のクロモニックナノ粒子を意味し、それは有用な期間、例えば分、時間又は日にわたって分離しない。
【0008】
別の態様では、本発明は、多層クロモニック構造体(例えば、玉葱状様式の1以上のクロモニックシェル層中に封入されたクロモニックナノ粒子)を提供する。
【0009】
本発明は、例えば、クロモニック材料のシェル層中に封入されたクロモニックナノ粒子を含む多層クロモニック構造体を提供し、そこでは、当該クロモニックナノ粒子及びクロモニック材料の当該シェル層の少なくとも一方はゲスト化合物を含む。
【0010】
図1(a)、(b)、及び(c)は、本発明の当該多層クロモニック構造体の実施形態を示す。当該多層クロモニック構造体は、クロモニック材料14のシェル層中に封入されたクロモニックナノ粒子10を含む。図1(a)では、ゲスト化合物「A」12は、当該クロモニックナノ粒子10中に含有される。図1(b)では、ゲスト化合物「A」12は」、クロモニック材料14のシェル層中に含有される。図1(c)では、ゲスト化合物「A」12は、当該クロモニックナノ粒子10中に含有され、又、ゲスト化合物「B」16は、当該クロモニック材料14のシェル層中に含有される。ゲスト化合物「B」は、ゲスト化合物「A」と同じ、あるいは異なる、タイプであり得る。
【0011】
本発明の多層クロモニック構造体類は、クロモニック材料の2以上のシェル層を任意に含み得る。例えば、図2は、クロモニックナノ粒子20が、最初のシェル層であるクロモニック材料24の中に、又二番目のシェル層であるクロモニック材料28の中に、玉葱状様式で封入されている、本発明の実施形態を示す。図示のように、ゲスト化合物「A」22は、クロモニック材料24の当該第1のシェル層中に含有される。
【0012】
本発明はまた、最初のゲスト化合物を含む最初のクロモニックナノ粒子と、二番目のゲスト化合物を含む二番目のクロモニックナノ粒子とを含む、多層クロモニック構造体を提供し、ここでは、当該第1クロモニックナノ粒子及び当該第2クロモニックナノ粒子は、共にクロモニック材料のシェル層中に封入される。図3は、例えば、2つのナノ粒子を含む多層クロモニック構造体を示す。第1のクロモニックナノ粒子30は、最初のゲスト化合物「A」32を含み、また第2のクロモニックナノ粒子31は、二番目のゲスト化合物「B」36を含む。クロモニックナノ粒子30、31の両者は、クロモニック材料34のシェル層中に封入される。
【0013】
多層クロモニック構造体は多くの用途において有用である。それらはゲスト化合物類(例えば、薬剤類)の封入及び制御的放出のために特に有用たり得る。ある薬剤が、当該クロモニックナノ粒子中に、及び/又は、ナノ粒子全体を封入している1以上のクロモニックシェル層中に、封入され得る。当該クロモニック類は、薬剤を特定の環境条件から保護し、又その後、他の環境条件下で当該薬剤を制御可能に送達し得る。本発明により提供される当該多層構造体は、薬剤類の制御放出のための柔軟性を増大させる。
【0014】
例えば、薬剤の即時放出及び持続放出の組み合わせが所望される場合(例えば、ここでは、調剤が、ある特定の症状を急速に緩和するために初期バースト放出を提供し、続いて、当該症状の延長的な処置を提供するために持続された送達を提供する、場合)、素早い放出を提供するために外側のクロモニックシェル層が形成され得、又、持続送達を提供するために当該クロモニックナノ粒子が形成され得る。当該クロモニックシェル層(類)はまた、1クロモニックナノ粒子のみに封入されることにより提供される保護と比較して、環境条件からの増大された保護を提供することができる。クロモニックシェル層は、例えば、当該クロモニックナノ粒子とは異なる環境条件から保護し得、又は当該クロモニックナノ粒子と同じ環境条件に対する追加の保護層を提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
いかなるクロモニック材料も本発明の方法及び構造体において有用であり得る。クロモニック相を形成する化合物は当該技術分野において公知であり、及びそれらは、例えばキサントース類(xanthoses)(例えば、アゾ染料類及びシアニン染料類)及びペリレン類(例えば、カワサキ(Kawasaki)ら、ラングミュア(Langmuir)16、5409(2000年)、又はライドンJ.(Lydon, J.)、コロイド及び界面科学(Colloid and Interface Science)、8、480(2004年)を参照のこと)が挙げられる。有用なクロモニック材料の代表的な例は、ジ−パラジウムオルガニル類及びモノ−パラジウムオルガニル類、スルファモイル置換銅フタロシアニン類、及びヘキサアリールトリフェニレン(hexaaryltryphenylene)が挙げられる。
【0016】
好ましいクロモニック材料は、以下の一般式の1以上のものから選択されるものが挙げられる:
【0017】
【化1】

【0018】
式中、
各Rは独立に、電子供与性基、電子求引性基、及び電子中性基から成る群から選択され、及び
は、置換及び非置換芳香族複素環並びに置換及び非置換複素環から成る群から選択され、当該環はRの当該環内の窒素原子を通して当該トリアジン基と連結する。
【0019】
上記で示されるごとく、当該クロモニック化合物は中性であるが、双性イオン又はプロトン互変異性体(例えば、ここでは、水素原子がカルボキシル基の1つから解離して、トリアジン環の窒素原子の1つと会合したもの)のような代替形態にて存在し得る。当該クロモニック化合物はまた、例えばカルボキシレート塩のような塩であり得る。
【0020】
上記の一般構造は、当該カルボキシル基が当該化合物の当該トリアジン骨格につながるアミノ連結に対してパラである配向(式I)、又当該カルボキシル基がトリアジン骨格につながるアミノ連結に対してメタである配向(式II)、を示す。カルボキシル基はまた、パラ及びメタ配向の組み合わせ(図示せず)でもあり得る。好ましくは、配向はパラである。
【0021】
好ましくは、各Rは水素又は置換若しくは非置換アルキル基である。より好ましくは、Rは独立に、水素、非置換アルキル基、ヒドロキシ又はハライド官能基で置換されたアルキル基、及びエーテル、エステル、又はスルホニルを含むアルキル基から成る群から選択される。最も好ましくは、Rは水素である。
【0022】
は、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾールチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、キノリン、及びイソキノリンから誘導される芳香族複素環であり得るが、これらに限定されない。好ましくは、Rはピリジン又はイミダゾールから誘導される芳香族複素環を含む。当該芳香族複素環Rの置換基は、置換及び非置換アルキル、カルボキシ、アミノ、アルコキシ、チオ、シアノ、アミド、スルホニル、ヒドロキシ、ハライド、ペルフルオロアルキル、アリール、エーテル、及びエステル基から成る群から選択し得るが、これらに限定されない。好ましくは、Rの当該置換基は、アルキル、スルホニル、カルボキシ、ハライド、ペルフルオロアルキル、アリール、エーテル、及び、ヒドロキシ、スルホニル、カルボキシ、ハライド、ペルフルオロアルキル、アリール、又はエーテルで置換されたアルキルから成る群から選択される。Rが置換ピリジンである場合、当該置換基は好ましくは4位に位置する。Rが置換イミダゾールである場合、当該置換基は好ましくは3位に位置する。
【0023】
の代表例は、以下に示される、4−(ジメチルアミノ)ピリジニウム−1−イル、3−メチルイミダゾリウム−1−イル、4−(ピロリジン−1−イル)ピリジニウム−1−イル、4−イソプロピルピリジニウム−1−イル、4−[(2−ヒドロキシエチル)メチルアミノ]ピリジニウム−1−イル、4−(3−ヒドロキシプロピル)ピリジニウム−1−イル、4−メチルピリジニウム−1−イル、キノリニウム−1−イル、4−t−ブチルピリジニウム−1−イル、及び4−(2−スルホエチル)ピリジニウム−1−イルが挙げられる。
【0024】
【化2】

【0025】
はまた、次の一般構造によって表し得る:
【0026】
【化3】

【0027】
式中、Rは水素又は置換若しくは非置換アルキル基である。より好ましくは、Rは、水素、非置換アルキル基、及び、ヒドロキシ、エーテル、エステル、スルホネート、又はハライド官能基で置換されたアルキル基から成る群から選択される。最も好ましくは、Rは、プロピルスルホン酸、メチル、及びオレイルから成る群から選択される。
【0028】
はまた、例えばモルホリン、ピロリジン、ピペリジン、及びピペラジンのような複素環から選択できる。
【0029】
本発明の方法に使用するために好ましいクロモニック化合物は、次式の1つによって表し得る。
【0030】
【化4】

【0031】
式中、Xは対イオンである。好ましくは、Xは、HSO、Cl、CHCOO、及びCFCOOから成る群から選択される。
【0032】
式IIIは、双性イオン性形態における化合物を示す。よって、当該イミダゾール窒素は正電荷を保有し、及び当該カルボキシ官能基の1つは負電荷(COO)を保有する。
【0033】
当該化合物はまた、他の互変異性形態で存在し得、例えばその場合、両方のカルボキシ官能基は負電荷を保有し、又その場合、当該正電荷は当該トリアジン基の窒素類の一つ、又、当該イミダゾール基上の当該窒素によって、保有される。
【0034】
米国特許第5,948,487号(サホウアニ(Sahouani)ら)に記載されるように、式Iのトリジアン誘導体は、水溶液として調製できる。上記式Iに示される当該トリアジン分子の典型的な合成ルートは、2工程プロセスを伴う。塩化シアヌルは、4−アミノ安息香酸で処理されて4−{[4−(4−カルボキシアニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン−2−イル]アミノ}安息香酸を生じる。当該中間体は置換又は非置換窒素含有複素環で処理される。複素環の窒素原子は、トリアジン上の塩素原子を置換し、対応する塩化物塩を形成する。上記式IIIに示されるような双性イオン性誘導体は、当該塩化物塩を水酸化アンモニウムに溶解させ、又それを陰イオン交換カラムに通過させ、当該塩化物を水酸化物で置換し、続いて溶媒の除去により調製される。上記式IIで示されるような代替構造は、4−アミノ安息香酸の代わりに、3−アミノ安息香酸を用いて得てよい。
【0035】
クロモニック材料は、水溶液(好ましくは、アルカリ性水溶液)中に溶解された場合にクロモニック相又は集合体(assembly)を形成し得る。クロモニック相又は集合体(assemblies)は、当該技術分野において公知であり(例えば、液晶ハンドブック(Handbook of Liquid Crystals),2B巻,XVIII章,クロモニックス(Chromonics),ジョン・ライドン(John Lydon),p.981〜1007,1998年を参照のこと)、平坦な多環芳香族分子の積層体から成る。当該分子は、親水性基により囲まれた疎水性コアから成る。当該積層化は多数のモルホロジーをとり得るが、層類の積層体によって創生された円柱を形成する傾向により典型的に特徴付けられる。濃度の増大に伴って成長する分子の秩序化した積層体が形成される。
【0036】
好ましくは、当該クロモニック材料は、1以上のpH調節化合物、又任意に界面活性剤の存在下で、水溶液中に配置しうる。pH調節化合物の添加は、当該クロモニック材料を、水溶液中に一層溶けやすくする。好適なpH調節化合物は、例えば水酸化アンモニウム又は種々のアミン類のような、いずれか既知の塩基が挙げられる。界面活性剤は、例えば、当該クロモニックナノ粒子のクロモニックマトリックス中への薬剤の組み込みを促進するために、当該水溶液に加え得る。本明細書で使用する時、「クロモニックマトリックス」は、ネマチック秩序化状態に凝集したクロモニック材料を指す。
【0037】
好適な界面活性剤は、イオン性及び非イオン性界面活性剤類(好ましくは非イオン性)が挙げられる。任意の添加剤類、例えば粘度調整剤類(例えば、ポリエチレングリコール)、及び/又は、結合剤類(例えば、低分子量加水分解デンプン類)も添加できる。
【0038】
通常、当該クロモニック材料は、約40℃未満の温度(より典型的には、室温)にて当該水溶液中に溶解され、及び塩基の添加によってpH6〜8に中和される。当該の中和されたクロモニック材料は、次いで水溶性ポリマーの溶液と組み合わせてよい。しかし、当業者は、得られるナノ粒子の形状及び大きさが、温度を変更することによってある程度制御され得ることを認識するであろう。
【0039】
クロモニック材料を含む当該水性組成物は、水溶性ポリマーを含む連続相と混合されて第1水性混合物を形成し得る。
【0040】
好ましくは、当該水溶性ポリマーは、約20,000未満の分子量を有する。有用な水溶性ポリマーは、例えば、ビニルアルコールポリマー類、アスパラギン酸ポリマー類、アクリル酸ポリマー類、メタクリル酸ポリマー類、アクリルアミドポリマー類、ビニルピロリドンポリマー類、ポリ(アルキレンオキシド)類、ビニルメチルエーテルポリマー類、スルホン化ポリエステル類、複合炭化水素類、グアーガム、アラビアゴム、トラガカントゴム、カラマツゴム、カラヤゴム、イナゴマメゴム、寒天、アルギネート類、カラギーナン、ペクチン類、セルロース及びセルロース誘導体類、デンプン類及び変性デンプン類、及びこれらの組み合わせが挙げられる。コポリマー類、例えばブロック又はランダムコポリマー類も有用であり得る。好ましい水溶性ポリマー類は、例えばセルロース化合物類、デンプン類(変性デンプン類、例えばホスホン化又はスルホン化デンプン類を包含する)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール)−co−(プロピレングリコール)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0041】
特定の水溶性ポリマーは、当該ナノ粒子の形状に影響する場合がある。大抵の場合、球状のナノ粒子が得られる。別の実施形態では、針状(ニードル様)金属性ナノ粒子が、変性デンプンの使用から得られている。ナノ粒子のアスペクト比は、典型的に1:4〜1:10の範囲であり、又約300ナノメートル〜約10ミクロンの一次寸法(primary dimensions)を有する。さらに別の実施形態において、偏球又はトロイダル形状が得られる場合がある。
【0042】
第1水性混合物中の各構成成分の相対濃度は、得られるナノ粒子の所望の大きさ、及びそれらの意図する用途、によって変動するであろう。しかし一般には、当該クロモニック材料は、当該クロモニック相が不連続であり、又当該水溶性ポリマー相が連続となるように、十分な量で水溶性ポリマーの溶液に添加されるであろう。水溶性ポリマー及びクロモニック材料の、量は、一般に、その比が乾燥重量基準にて少なくとも約5:1及び約99:1未満、及び好ましくは3:1〜15:1の、比率となるように選択される。一般に、当該水溶性ポリマーは、当該水性混合物の約15〜約25重量%を構成する。一般に、クロモニック材料の濃度は、第1水性混合物の約0.25〜約7重量%である。
【0043】
表面張力を増大させる、又はコーティングを促進する、界面活性剤類及びその他の添加剤類(例えば、エタノールのような短鎖アルコール類)は、任意に、添加し得る。
【0044】
第1水性混合物から形成されたクロモニックナノ粒子は、多価カチオン類によって非共有結合的に架橋される。この架橋は、当該ナノ粒子を非水溶性にする。非共有結合的とは、架橋が、永久的に形成される共有的(又は化学的)結合を伴わないことを意味する。すなわち、当該架橋は、新規でより大きい分子を導く化学反応から生ぜず、むしろ、当該ホスト分子と当該カチオンとの、化学反応を経ずにそれらを共に保持するのに十分に強い、静電気的会合及び/又は配位的会合から生じる。これらの相互作用は、通常性質としてイオン性であり、又、ホスト分子上の負の形式電荷と、多価カチオンの正の形式電荷との、相互作用から生じ得る。当該多価カチオンは、少なくとも2正電荷を有するので、2以上のクロモニック分子とのイオン結合を形成し得る、すなわち、2以上のクロモニック分子間に架橋を形成し得る。二価及び/又は三価カチオンが好ましい。大多数の多価カチオンは、二価がより好ましい。好適なカチオンは、任意の二価又は三価カチオンが挙げられ、バリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、及び鉄が特に好ましい。
【0045】
一般に、当該クロモニック材料は、水溶性ポリマーの連続相及びクロモニック材料の不連続相を含む、分散液の形成後に架橋される。通常、当該分散液は、過剰の多価カチオン塩の溶液に添加される。
【0046】
非共有結合的架橋の後、ナノ粒子表面は、表面改質剤により改質され、当該粒子をより親水性、疎水性、生体適合性、又は生物活性にし得る。当該表面基は、連続相中に凝集せず後に分散し得る表面改質クロモニックナノ粒子を提供するのに十分な量で、粒子の表面上に存在する。当該表面基は好ましくは、当該クロモニックナノ粒子の表面上に、単一層好ましくは連続単一層を形成するのに十分な量で、存在する。一般に、当該の架橋されたクロモニックナノ粒子は、まず当該水溶性ポリマー分散液から単離され、次いで表面改質剤の溶液に再懸濁される。
【0047】
当該表面改質基は、表面改質剤から誘導されてもよい。概略的に、表面改質剤類は、式A−Bによって表し得、ここでは、当該A基はクロモニックナノ粒子の表面に結合し得、また当該B基は所望の親水性、疎水性、又は生体適合性を与える適合化基である。適合化基類は、当該粒子を比較的より極性に、比較的低極性又は比較的非極性に、するように選択され得る。
【0048】
表面改質剤の好適な部類は、炭素、硫黄及びリンの有機オキシ酸類、例えばアルキルカルボキシレート類、アルキルサルフェート類、アルキルスルホネート類、アルキルホスフェート類及びアルキルホスホネート類、グリコシドホスホネート類、並びにこれらの組み合わせが挙げられ得る。商標名トウィーンズ(Tweens(商標))及びスパンズ(Spans(商標))の元で入手可能な表面改質剤類もまた有用であり得る。
【0049】
カルボン酸官能性を有する極性表面改質剤の代表的な例は、酸及び塩形態のいずれかの、化学構造CHO(CHCHO)CHCOOH(n=2〜50)を有するポリ(エチレングリコール)モノカルボン酸及び化学構造CHOCHCHOCHCOOHを有する2−(2−メトキシエトキシ)酢酸が挙げられ得る。
【0050】
カルボン酸官能性を有する非極性表面改質剤類の代表的な例は、酸及び塩形態のいずれかの、オクタン酸、ドデカン酸、及びオレイン酸が挙げられ得る。オレフィン性不飽和を含有するカルボン酸、例えばオレイン酸の場合、炭素−炭素二重結合は、Z若しくはE立体異性体、又はこれらの混合物、のいずれか、として存在し得る。
【0051】
好適なリン含有酸類の例は、例えば、酸又は塩形態のいずれかの、オクチルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、オレイルホスホン酸を包含するアルキルホスホン酸類、及び化学構造CHO(CHCHO)CHCHPO(n=2〜50)を有するポリ(エチレングリコール)モノホスホン酸が挙げられ得る。オレフィン性不飽和を含有するホスホン酸、例えばオレイルホスホン酸の場合、炭素−炭素二重結合は、Z若しくはE立体異性体、又はこれらの混合物のいずれか、として存在してもよい。
【0052】
好適なリン含有酸類の追加の例は、例えばオクチルホスフェート、ドデシルホスフェート、オレイルホスフェート、ジオレイルホスフェート、オレイルメチルホスフェートを包含するリン酸のモノ−及びジエステル類のようなアルキルホスフェート類、及び化学構造CHO(CHCHO)CHCHOPO(n=2〜50)を有するポリ(エチレングリコール)モノリン酸が挙げられ得る。
【0053】
一部の変形形態において、当該表面改質剤A−Bの当該B基はまた、当該クロモニックナノ粒子の親水性、疎水性、又は生体適合性をさらに調節するために、追加の特定官能基(類)を含有し得る。好適な官能基は、ヒドロキシル、カルボニル、エステル、アミド、エーテル、アミノ、及び四級アンモニウム官能基が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0054】
他の好適な表面改質剤は、ポリマーの性質の界面活性剤類である。
【0055】
生体適合性が所望される場合、当該クロモニックナノ粒子は、グリコシド類ホスホネート類、例えば、ホスホン酸のグルコシド類、マンノシド類、及びガラクトシド類で、表面改質されてもよい。
【0056】
一部の実施形態では、第1水性組成物は、溶液中で貴金属塩と混合されて金属クロモニックナノ粒子を生成し得る。続いて、当該混合物は、多価カチオン塩と接触させて当該クロモニック材料を非共有結合的に架橋し、又当該貴金属塩を組み込むことができる。
【0057】
好ましい貴金属塩は、銀塩類(例えば、硝酸銀、酢酸銀及びその同類)、金塩類(例えば、金チオリンゴ酸ナトリウム、塩化金及びその同類)、白金塩類(例えば、硝酸白金、塩化白金及びその同類)、及びこれらの混合物が挙げられ得る。他の遷移金属類も使用し得る。特に、一価の遷移金属カチオンの塩類を使用し得る。
【0058】
当該金属塩は、当該架橋クロモニックナノ粒子中に含有される元素貴金属ナノ粒子の懸濁液を生成するために、還元し得る。これは当該技術分野で既知の還元法により達成し得る。例えば、当該還元は、還元剤(例えば、トリス(ジメチルアミノ)ボラン、ホウ化水素ナトリウム、ホウ化水素カリウム、又はホウ化水素アンモニウム)、電子ビーム(eビーム)処理、若しくは紫外線(UV)光を用いて達成し得る。
【0059】
当該金属ナノ粒子は、例えば、タグとして機能することができる。それらは、医学画像、光スイッチ装置、光通信システム、赤外線検出器、赤外線クローキング装置、化学センサー、受動的太陽放射収集又は偏向装置などのような多数の用途において有用であり得る。
【0060】
第1水性混合物から形成される当該架橋クロモニックナノ粒子は、クロモニック材料を含む組成物中に分散し得る。当該分散液及び連続水溶性ポリマー相を含む二番目の水性混合物が、次いで調製され得る。
【0061】
上述した当該クロモニック材料のあらゆるものが、クロモニック材料を含む当該組成物中において、使用し得る。クロモニック材料を含む当該組成物中で使用されるクロモニック材料は、第1水性混合物中で利用されるものと、同じクロモニック材料又は異なるクロモニック材料でもあり得る。例えば、一部の用途では、異なる吸収性又は、低pH条件での異なる安定性を有する2つの異なるクロモニック材料を使用すると有利であり得る。
【0062】
上述した水溶性ポリマー類のあらゆるものが、第2水性混合物の連続的水溶性ポリマー相のために、使用し得る。第2水性混合物中で使用される水溶性ポリマーは、第1水性混合物中で使用されるものと同じ水溶性ポリマー又は異なる水溶性ポリマーでもあり得る。
【0063】
第2水性混合物は、当該構成成分の濃度が変わることを除いて、第1水性混合物を製造するために記載したものと本質的に同じ手順を用いて製造し得る。
【0064】
第2水性混合物のために、当該クロモニック材料は、水溶液中に溶解させ得る。一般に、当該クロモニック材料は、当該溶液の約0.1〜約30(好ましくは約2〜約20)重量%の範囲の濃度を得るために、溶液に添加されよう。架橋クロモニックナノ粒子は、クロモニック材料を含むこの水溶液中に分散し得る。この分散液は、次に第2の連続的水溶性ポリマー相と混合されて、第2水性混合物を作り得る。典型的には、水溶性ポリマー及びクロモニック材料の量は、当該比率が乾燥重量基準で少なくとも約1:1、及び約10:1未満となるように選択される。
【0065】
任意に、pH調節化合物類、界面活性剤類、及び/又は貴金属塩類が、上述したように使用し得る。
【0066】
クロモニックナノ粒子は、第2非連続的クロモニック相の当該クロモニック材料中に封入されよう。この「シェル」すなわち当該クロモニックナノ粒子の周りのクロモニック材料の層の厚さは典型的に、約2、3分子厚(例えば単層)〜約200ナノメートルである。
【0067】
任意で、このクロモニックシェル層は、多価カチオン類によって非共有結合的に架橋され得る。一般に、当該クロモニック材料は、第2水性分散液の形成後に架橋される。通常、当該分散液が、過剰の多価カチオン塩の溶液に添加される。
【0068】
非共有結合的架橋に続いて、上述したように、第2非連続的クロモニック層は、表面改質剤と接触させられ得て、当該クロモニックナノ粒子の周りのクロモニック材料の当該シェル層を、より親水性、疎水性、生体適合性、又は生物活性にし得る。
【0069】
クロモニック材料の1以上の追加のシェル層が所望される場合、上述の手順を繰り返し得る。
【0070】
本発明は、1以上のゲスト化合物の封入及び制御放出のために使用し得る。本発明は、クロモニック材料の1以上のシェル層中に封入されたクロモニックナノ粒子を提供する。ゲスト化合物類は、クロモニックナノ粒子内に及び/又はクロモニックシェル層(類)内に封入され得る。ゲスト化合物類が当該クロモニックナノ粒子中及び当該クロモニックシェル層(類)中の両方に封入される場合、それらは同じゲスト化合物あるいは異なるゲスト化合物類でもあり得る。2種類以上のゲスト化合物がまた、当該クロモニックナノ粒子内及び/又は当該クロモニックシェル層(類)内に封入され得る。さらに、異なるゲスト化合物類を含有するクロモニックナノ粒子は、1クロモニックシェル層中に封入し得る(すなわち、最初の封入されたゲスト化合物を含有するクロモニックナノ粒子、及び二番目の封入されたゲスト化合物を含むクロモニックナノ粒子が、同じクロモニックシェル内に含有され得る)。
【0071】
例えば、通常水中に可溶性であるゲスト分子は、それが非水溶性クロモニックナノ粒子又はクロモニックシェル層内に封入されているので、水中に溶解するのを防止してもよい。同様に、当該クロモニックナノ粒子又はクロモニックシェル層は、酸の存在下で不安定であるゲスト分子を効果的に隔離してもよい。従って、それらは、当該ナノ粒子又はシェル層内に封入されている間は、分解しない。当該クロモニックナノ粒子又はシェル層はまた、反応物質を分離して、それらが反応するのを防ぐために使用し得る。
【0072】
有用なゲスト化合物の例は、染料類、化粧剤類、芳香剤類、着香料類、並びに生物活性化合物類、例えば薬剤類、除草剤類、殺虫剤類、フェロモン類、及び抗菌剤類(例えば、抗細菌剤類、抗真菌剤類、及び同類のもの)が挙げられる。生物活性化合物は本明細書では、疾患の診断、治療、緩和、処置、又は予防に使用することを意図した化合物、又は生体の構造若しくは機能に影響する化合物として定義される。生物に対して治療効果を有することを意図する薬剤類(すなわち、薬学的に活性な成分)は、特に有用なゲスト化合物である。或いは、除草剤類及び殺虫剤類は、生体、例えば植物又は害虫に対して、負の効果を有することを意図する生物活性化合物の例である。あらゆる種類の薬剤が本発明において使用され得るが、特に好適な薬剤は、固体剤形として処方される場合に相対的に不安定なもの、又胃の低いpH条件によって悪影響を受けるもの、又胃腸管中の酵素に曝されて悪影響を受けるもの、並びに、持続性の又は制御された放出を介して患者に提供されることが望ましいもの、が挙げら得る。
【0073】
当該クロモニックシェル層及び当該クロモニックナノ粒子は、特定の環境条件から薬剤を選択的に保護し、又その後、他の環境条件下にある薬剤を制御可能に送達しよう。例えば、クロモニック材料は、胃の酸性環境において安定であり得、又腸の非酸性環境に移行するとき、pHの変化の結果として動物に投与される場合、溶解しよう。クロモニック材料はまた、薬剤を酵素分解から保護し得る。
【0074】
本発明はまた、粒子中で薬剤分子を有効に隔離するために使用し得て、例えば、混合剤形における異なる薬剤間での好ましくない相互作用(例えば、化学反応)、単一薬剤構成成分中での好ましくない変化(例えば、オストワルド熟成又は粒子成長、結晶形態の変化)、及び/又は薬剤と1以上の賦形剤との間の好ましくない相互作用を回避し得る。例えば、本発明は、通常それぞれもう一方の存在下で不安定である2つの薬剤(又は化学反応物質)を、それらを共にクロモニックナノ粒子中に封入することにより、或いは、一方をクロモニックナノ粒子中に又他方をクロモニックシェル層中に封入することにより、安定な剤形へと配合し得るようにする。
【0075】
ゲスト化合物類は、ゲスト化合物類をクロモニック材料の第1水溶液中に加えることにより、クロモニックナノ粒子中に含有され又は挿入され得る。或いは、ゲスト化合物は、当該クロモニック材料類又は多価カチオン溶液類と混合される前に、油又は噴射剤のような別な一つの賦形剤又はビヒクル中に分散され又は溶解され得る。ナノ粒子は、例えば、ろ過、噴霧、又は他の手段によって収集され、及び乾燥されて、水性キャリアを除去し得る。
【0076】
薬剤のようなゲスト化合物は、当該クロモニック材料を導入する前に水性分散剤含有溶液中に溶解され得る。好適な分散剤は、アルキルホスフェート類、ホスホネート類、スルホネート類、スルフェート類、又はカルボキシレート類が挙げられ、それらには長鎖飽和脂肪酸類又はアルコール類、若しくは、モノ又はポリ不飽和脂肪酸類、又はアルコール類が、包含され得る。オレイルホスホン酸は、好適な分散剤の例である。いずれの特定理論にも束縛されないが、当該分散剤は、当該ゲスト化合物がより良好に封入され得るように、それを分散させることを助けると考えられる。
【0077】
当該クロモニック材料を導入する前に、1アルカリ性化合物は、当該ゲスト化合物溶液に添加し得る。或いは、1アルカリ性化合物は、当該ゲスト化合物とクロモニック材料溶液類とを混合する前に、1クロモニック材料溶液に添加することができる。好適なアルカリ性化合物類の例は、エタノールアミン、水酸化ナトリウム又はリチウム、若しくは、例えばモノ、ジ、トリアミン類又はポリアミン類のような、アミン類、が挙げられる。理論に束縛さるべきではないが、アルカリ性化合物類は、特に、当該ホスト化合物が、上記の式I及びIIに記載されるもののようなトリアジン化合物である場合は、当該ホスト化合物を溶解させることを助けるものと考えられる。
【0078】
大きい粒子(例えば、直径が数ミリメートル程度)が調製されてもよいが、本発明の、粒子の質量メジアン径(mass median diameter)は、典型的には大きさが1000ナノメートル未満、通常は大きさが500ナノメートル未満、及び幾つかの場合には大きさが100ナノメートル未満である。ある場合には、大きさが1μmを超える粒子を有することが所望される場合もある。特に、これらの粒径は、特定酵素の存在のため腸内では不安定な薬剤を、経口送達するのに望ましい場合がある。こうした薬剤の例としては、タンパク質類、ペプチド類、抗体類、及び体内の酵素プロセスに特に感応性である場合があるその他の生物学的分子、が挙げられる。このような場合、これらの小さい粒子は、腸壁に直接取り込まれる場合があり、その結果、当該粒子は主に腸障壁を通過後に溶解してしまい、腸環境に曝される感応性薬剤の量が最小限になされるようになる。
【0079】
ゲスト化合物類は、ゲスト化合物類をクロモニック材料の第2水溶液に加えることにより、或いは、当該非連続的のクロモニック相が非共有結合的に架橋される場合には、沈殿する前に当該多価カチオン溶液に加えることにより、クロモニックシェル層中に含有され又は挿入され得る。上述したように、ゲスト化合物は、当該クロモニック材料類又は多価カチオン溶液類と混合される前に、油又は噴射剤のような、別の賦形剤又はビヒクル中に分散され又は溶解され得る。
【0080】
当該クロモニックナノ粒子及びクロモニックシェル層(類)は、一価のカチオン類、又は、例えば界面活性剤類のような他の非イオン性化合物類、の水溶液中に溶解可能である。典型的な一価カチオンは、ナトリウム及びカリウムが挙げられる。当該クロモニックナノ粒子及びクロモニックシェル層(類)を溶解するのに必要な一価のカチオン類の濃度は、当該ナノ粒子及びシェル層(類)内の当該クロモニック分子類の種類及び量に依存しよう。故に、異なるクロモニック材料が、当該ナノ粒子及当該びシェル層(類)のために選択され得、それにより、それらが異なる濃度で溶解するようにし得る。しかし一般に、完全な溶解のためには、マトリックス中のカルボキシル基のモル量と当量の、少なくとも1モル量の一価カチオン類が、存在すべきである。このようにして、各カルボキシル基と会合するために、少なくとも1一価カチオンが存在しよう。
クロモニックナノ粒子又はクロモニックシェル層が溶解する速度は、架橋に用いられる多価カチオンの種類及び量を調節することによって調節し得る。最も外部のシェル層内にあるゲスト化合物の素早い放出が所望される場合には、当該連続的クロモニック層は架橋されなくてよい。
【0081】
二価カチオン類は当該クロモニックナノ粒子及び当該クロモニックシェル層(類)を架橋するために十分であろうが、より大きい価数のカチオン類は、追加の架橋を提供し、又より緩やかな溶解速度をもたらそう。価数に加えて、溶解速度もまた特定のカチオンの種類に依存する。故に、異なる価数及び/又はカチオンの種類は、当該ナノ粒子及び当該シェル層(類)のために選択され得、それによりそれらが異なる速度で溶解するようになる。例えば、マグネシウムのような弱く配位する二価のカチオンは、一般に、遊離の電子対と配位結合を形成し得る空の電子軌道を有する、カルシウム又は亜鉛のような強く配位する二価のカチオン、よりも速い溶解をもたらそう。
【0082】
異なるカチオンの種類は、整数ではない平均カチオン価数を与えるように混合し得る。特に、二価のカチオン及び三価のカチオンの混合は一般に、すべてのカチオンが二価である場合よりも緩慢な溶解速度をもたらそう。1つの態様では、当該ゲスト化合物のすべてが時間とともに放出されようが、特定の用途においては当該ゲスト化合物の一部のみを放出させることが所望される場合もある。例えば、クロモニック材料及び多価カチオンの種類及び量は調節し得、それで、放出されるゲスト化合物の総量が、それらが置かれる環境に依存して変わるようになる。一実施形態では、当該クロモニックナノ粒子(又はクロモニックシェル層(類))は、酸性溶液中に溶解せず、それ故に、酸の影響を受け易いゲスト化合物類を分解から保護しよう。別の実施形態では、当該クロモニックナノ粒子(又はクロモニックシェル層(類))は、一価のカチオン類を含有する酸性溶液中に溶解せず、それ故に、酸の影響を受け易いゲスト化合物類を分解から保護しよう。
【0083】
当該ゲスト化合物が薬剤である特定の場合には、所望される全般的放出特性の2つの一般的なタイプは、即時性又は持続性である。即時放出用途のためには、薬剤の大部分は、約4時間未満、一般に約1時間未満、しばしば約30分未満、又ある場合には約10分未満、の期間で放出されることが典型的に所望されよう。場合によっては、薬剤放出は、ほぼ瞬間的なもので、すなわち数秒で起こることが所望されよう。持続的な(又は制御された)放出用途のためには、当該薬剤の大部分が、約4時間以上の期間をかけて放出されることが典型的に所望されよう。例えば種々の埋め込み可能用途においては、1ヶ月以上の期間が所望される場合もあろう。経口持続性放出調剤は、一般に約4時間〜約14日、場合によっては約12時間〜約7日の期間をかけて、当該薬剤の大部分を放出しよう。態様の1つでは、当該薬剤の大部分が、約24〜約48時間の期間をかけて放出することが所望される場合もある。
【0084】
即時性及び持続性の組み合わせが所望される場合もあり、例えば、そのような場合とは、ある特定の調湿を急速に緩和するために、ある調剤が放出の初期バーストを提供し、次いで、当該調湿の長期的処置を提供するために、持続性送達が続く場合である。ある場合には、当該クロモニックシェル層が素早い放出を提供するために、又、クロモニックナノ粒子が持続された送達を提供するために、処方され得る。
【0085】
場合によっては、放出速度が時間の経過により変化し、例えば生物の概日リズムに合わせて増大及び減少するように、薬剤の拍動性又は多峰性の放出が望ましい場合もある。同様に、調剤が都合の良い時間、例えば就寝直前に投与されるように、薬剤の遅延放出を提供するのが望ましい場合もあるが、しかし、起床直前のように薬剤がより有効となり得る後の時間まで当該薬剤の放出を防ぐように提供するのが望ましい場合もある。拍動性、多峰性、又は遅延放出特性を達成するための1つの手法は、異なる薬剤放出特性を有する2種類以上のナノ粒子を混合することでもよい。或いは、異なる薬剤放出特性を有する粒子及びクロモニックシェル層(類)を形成してもよい。
【0086】
本発明は、経口剤の送達に使用するための薬剤類を封入するために特に有用である。典型的な経口剤形は、錠剤及びカプセルのような固体調剤が挙げられるが、他の経口で投与される調剤、例えば懸濁液及びシロップもまた包含し得る。本発明の当該クロモニックシェル層(類)及び/又はクロモニックナノ粒子は、胃の酸性環境において安定であることができ、又、動物に投与された場合、腸の非酸性環境に移行するときに溶解されよう。当該クロモニックシェル層(類)及び/又はナノ粒子が酸性溶液中で安定である場合、当該粒子は一般に1時間、時には12時間を超える期間安定であり得、若しくは、7.0未満(例えば約5.0未満)、又ある場合には約3.0未満のpHを有する酸性環境中に存在した場合に、24時間超えて安定であり得る。
【実施例】
【0087】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を不当に制限するものと解釈すべきではない。
【0088】
当該クロモニック混合物(クロモニック混合物)の調製
精製水中に式IVの当該クロモニック化合物(30重量%)を含有する混合物が、フラスコ中でおよそ45分間磁気攪拌されて白色のペーストを作製した。水酸化ナトリウムの新しく調製された溶液(精製水中50重量%)が、当該白色ペーストを含有するフラスコにその外観がクリーム状の液晶溶液に変わるまで、滴加された。この混合物のpHは、この添加工程の間、水酸化ナトリウム溶液の添加を制御することにより7.5以下に維持された。得られたクリーム状の液晶溶液は、必要に応じて使用された。
【0089】
蛍光ウシ血清アルブミン溶液(fBSA)の調製
精製水(5mL)が、蛍光イソチオシアネート複合(conjugate)アルブミン(fBSA、250mg)に加えられ、次に15分間磁攪拌されて、溶液1mlあたりfBSA50mgの溶液を作製した。この溶液は、必要に応じて使用された。
【0090】
インスリン溶液の調製
ヒトインスリン(300mg)が、精製水(3mL)に加えられ、又磁気攪拌されて、濁った白色溶液を形成した。塩酸(1N)が、磁気攪拌しながら溶液が透明に変わるまで滴加された。オレインホスホン酸(Oleic Phosphonic acid)(10滴、精製水中1%)が、この溶液に加えられ、溶液をわずかに濁った状態に変えた。精製水中水酸化ナトリウム(5質量%)が、そのインスリン溶液が透明に変わるまで、一方溶液のpHが確実に8未満に維持されるように、緩慢に磁気攪拌されながら滴加された。このインスリン溶液はそれから、必要に応じて使用された。
【0091】
fBSAを含有するクロモニック混合物(クロモニック混合物−fBSA)の調製
この溶液は、fBSA(3mL)とクロモニック混合物(10mL)とを15分間混合することにより調製され、約23%のクロモニック混合物及び式IVのクロモニック化合物1g当たり50mgのfBSAを含有するクロモニック混合物−fBSAの溶液(13mL)を提供した。この溶液が、必要に応じて使用された。
【0092】
インスリンを含有する当該クロモニック混合物(クロモニック混合物−インスリン)の調製
この溶液が、当該インスリン溶液(3mL)と当該クロモニック混合物(10mL)とを15分間混合することにより調製され、約23%クロモニック混合物及び式IVのクロモニック化合物1g当たり100mgのインスリンを含有するクロモニック混合物−インスリンの溶液(13mL)を提供した。この溶液は、必要に応じて使用された。
【0093】
ホスフェート緩衝食塩水溶液(PBS)の調製
この溶液が、原液A(200mL)と原液B(60mL)とを磁性攪拌器を用いて15分間混合し、又必要に応じて原液Bを用いてpHを7.5に調節することにより作製された。原液Aは、精製水(200mL)中にリン酸一水素二ナトリウム(1g)及び塩化ナトリウム(1.7g)を含有していた。原液Bは、精製水(200mL)中にリン酸一水素二ナトリウム(0.56g)及び塩化ナトリウム(1.7g)を含有していた。
【0094】
模擬胃液(SGF)の調製
塩化ナトリウム(2.0g)が、塩酸(7.0mL;37%)中に溶解され、又精製水で希釈されて、1000mLのSGF溶液を作製した。
【0095】
模擬腸液(SIF)の調製
精製水(250mL)中の一塩基性リン酸カリウム(6.8g)の溶液に、水酸化ナトリウム(77mL;0.2N)及び追加の水(500mL)が、15分間混合されるまで、加えられた。得られた溶液のpHは、次に、水酸化ナトリウム(0.2N)又は塩酸(0.2N)を用いて6.8±0.1のpHに調節された。この溶液は、次いで水で希釈されて、1000mLのSIF溶液を提供した。
【0096】
(実施例1)
当該クロモニック混合物−fBSAの一部が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、精製水中25%;クロモニック混合物対HMPC溶液の比率は重量基準で1:20だった)を含有する溶液中に、室温で30分間攪拌させることにより分散させられた。
【0097】
このエマルション(0.6g)は、次いで塩化カルシウム及び塩化亜鉛(各5%)を含有する水溶液(10mL)に加えられた。この溶液は、次いで室温で30分間振盪され、又3500rpmで20分間遠心分離された。得られた上澄みは、その時廃棄された。残った残留物は、精製水(10mL)で洗浄され、又3500rpmで20分間再び遠心分離された。得られた残留物のサンプルは、光学顕微鏡下で見ると緑色に蛍光を発し、又動的光散乱技術を用いた測定は、それが500nmの範囲の粒子を含有していることを示した。
【0098】
この残留物の一部(0.6g)は、精製水(1mL)中の当該クロモニック混合物(1g)中に分散された。この混合物は、次に30秒間超音波処理され、次いで20分間攪拌することにより混合された。この溶液は、次にHPMC(精製水中25%;クロモニック混合物対HMPC溶液の比率は重量基準で1:5)中で、室温で30分間攪拌することにより分散された。このエマルション(0.6g)は、次いで塩化カルシウム及び塩化亜鉛(各5%)を含有する水溶液(10mL)に加えられた。この溶液は、室温で30分間振盪され、又3500rpmで20分間遠心分離された。得られた上澄みは、その時廃棄された。残った残留物は、精製水(10mL)で洗浄され、又3500rpmで20分間再び遠心分離された。得られた残留物のサンプルは、光学顕微鏡下で見たときにfBSAによる黄色の蛍光を示さず、又動的光散乱技術を用いた測定は、それが1.2〜1.5μmの範囲にある粒子を含有していることを示した。さらに、fBSAは、黄色蛍光の不在により示されたように、残りの洗浄溶液のいずれにおいても検出されなかった。
【0099】
(実施例2)
20%のクロモニック混合物サンプルが、当該クロモニック混合物をトリプシン(精製水中5%)で希釈することによって調製された。このサンプルは、次にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、精製水中25%;クロモニック混合物対HMPC溶液の比率は重量基準で1:15)を含有する溶液中に、室温で30分間攪拌することにより分散させられた。
【0100】
このエマルション(0.5g)は、塩化カルシウム及び塩化亜鉛(各5%)を含有する水溶液(10mL)に加えられた。この溶液は、室温で30分間振盪され、又3500rpmで20分間遠心分離された。得られた上澄みは、その時廃棄された。残った残留物は、精製水(10mL)で洗浄され、又3500rpmで20分間再び遠心分離された。得られた残留物のサンプルは、光学顕微鏡下で見たときに青色蛍光を発し、又動的光散乱技術を用いる測定は、それが700nmの範囲にある粒子を含有していることを示した。いかなる実質的な量のトリプシンも、ベンゾイルアルギニンニトロアニリン(Benzoyl Arginine Nitroanline)(BANA、2質量%)を加えたときに黄色不在によって示されたように、上澄み又は洗浄溶液中のいずれにおいても検出されなかった。
【0101】
洗浄工程後に単離された当該残留サンプル(0.6g)は、クロモニック混合物(2mL)中BANA(2%)に加えられ、又当該内容物は、更に10分間混合された。得られたエマルションの粒子は、光学顕微鏡下で見たときに青色蛍光を発し、又黄色は観測されなかった。
【0102】
当該青色蛍光粒子を有するクロモニック混合物は、次いでHPMC(精製水中25%;クロモニック混合物対HMPC溶液の比率は重量基準で1:4)中に、室温で30分間攪拌されることにより分散された。このエマルション(0.5g)は、次に塩化カルシウム及び塩化亜鉛(各5%)を含有する水溶液(10mL)に加えられた。この溶液は、室温で30分間振盪され、又3500rpmで20分間遠心分離された。得られた上澄みは、この時廃棄した。残った残留物は、精製水(10mL)で洗浄され、又3500rpmで20分間再び遠心分離された。動的光散乱技術を用いる測定は、それが2.5μmよりも大きな粒子を含有することを示した。
【0103】
2.5μmよりも大きな粒子は、含有する残った残留物は、ホスフェート緩衝食塩水(Phosphate Buffer Saline solution)(10mL;PBS)中に20時間入れられた。残留物は、実施例1に記載したように遠心分離によって単離され、又動的光散乱技術を用いた測定は、それが900nmの範囲にある粒子を含有していることを示した。当該の上澄み溶液は、透明なまま留まった。当該残留物(reside)がPBS中に48時間保持されたとき、残留物中の粒子の大きさは、約400nmであることが示され、又PBS溶液は黄色に変化してそのPBS溶液中にトリプシンの存在を示した。
【0104】
(実施例3)
当該クロモニック混合物−fBSAの一部は、デンプン(精製水中10%:クロモニック混合物対デンプン溶液の比率は重量基準で1:10)を含有する溶液中に、室温で30分間攪拌することによって分散させられた。
【0105】
このエマルション(0.5g)は、次に塩化カルシウム及び塩化亜鉛(各5%)を含有する水溶液(10mL)に加えられた。この溶液は、室温で30分間振盪され、又3500rpmで20分間遠心分離された。得られた上澄みは、その時廃棄された。残った残留物は、精製水(10mL)で洗浄され、また3500rpmで20分間再び遠心分離された。得られた残留物のサンプルは、光学顕微鏡下で見たときに緑色蛍光を発し、又動的光散乱技術を用いた測定は、それが300nmの範囲にある粒子を含有していることを示した。
【0106】
洗浄工程後に単離された当該残留サンプル(0.6g)は、1mLのクロモニック混合物及び1mLの精製水中に加えられ、又当該内容物は、30秒間超音波処理され、又その後更に30分間攪拌することにより混合された。得られた残留物のサンプルは、光学顕微鏡下で見たときに青色蛍光を発した。
【0107】
当該残留サンプルを有するクロモニック混合物は、次いでHPMC(精製水中25%;クロモニック混合物対HMPC溶液の比率は重量基準で1:5)中に、室温で30分間攪拌することにより分散させられた。このエマルション(0.6g)は、次いで塩化カルシウム及び塩化亜鉛(各5%)を含有する水溶液(10mL)に加えられた。この溶液は、室温で30分間振盪され、又3500rpmで20分間遠心分離された。得られた上澄みは、その時廃棄された。残った残留物は、精製水(10mL)で洗浄され、又3500rpmで20分間再び遠心分離された。得られた残留物のサンプルは、光学顕微鏡下で見たとき青色蛍光を発さず、又動的光散乱技術を用いた測定は、それが1μmよりも大きな粒子を含有することを示した。関連の上澄み及び洗浄溶液は、透明なまま留まった。
【0108】
比較例1
クロモニック混合物−インスリンの一部は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、精製水中25%;クロモニック混合物対HMPC溶液の比率は重量基準で1:20)を含有する溶液中に、室温で30分間攪拌することにより分散させられた。
【0109】
このエマルション(0.6g)、次いで塩化カルシウム及び塩化亜鉛(各5重量%)を含有する水溶液(10mL)に加えられた。この溶液は、室温で30分間振盪され、又3500rpmで20分間遠心分離された。得られた上澄みは、その時廃棄された。残った残留物は、精製水(10mL)で洗浄され、又3500rpmで20分間再び遠心分離された。得られた残留物のサンプルは、光学顕微鏡下で見ると青色蛍光を発し、又動的光散乱技術を用いた測定は、それが500nmの範囲にある粒子を含有していることを示した。
【0110】
比較例2
クロモニック混合物−インスリンの一部は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、精製水中25%;クロモニック混合物対HMPC溶液の比率は重量基準で1:20)を含有する溶液中に、室温で30分間攪拌することにより分散させられた。
【0111】
このエマルション(0.6g)は、次いで塩化亜鉛(10%)を含有する水溶液(10mL)に加えられた。この溶液は、室温で30分間振盪され、3500rpmで20分間遠心分離された。得られた上澄みは、その時廃棄された。残った残留物は、精製水(10mL)で洗浄され、又3500rpmで20分間再び遠心分離された。得られた残留物のサンプルは、光学顕微鏡下で見ると青色蛍光を発し、又動的光散乱技術を用いた測定は、それが500nmの範囲にある粒子を含有していることを示した。
【0112】
(実施例4)
比較例2から得られた残留物の一部(0.6g)は、精製水(1mL)中の当該クロモニック混合物(1g)中に分散させられた。この混合物は、次いで30秒間超音波処理され、又続いて20分間攪拌することにより混合された。この溶液は、次いでHPMCの溶液(精製水中25%;クロモニック混合物対HMPC溶液の比率は重量基準で1:5)に加えられ、又室温で20分間攪拌することにより混合された。このエマルション(0.6g)は、次いで塩化カルシウム及び塩化亜鉛(各5%)を含有する水溶液(10mL)に加えられた。この溶液は、室温で30分間振盪され、又3500rpmで20分間遠心分離された。得られた上澄みは、その時廃棄された。残った残留物は、精製水(10mL)で洗浄され、また3500rpmで再び20分間遠心分離された。動的光散乱技術を用いる測定は、それが1.2〜1.5μmの範囲にある粒子を含有していることを示した。
【0113】
比較例1〜2及び実施例4の模擬試験
実施例4、5、及び6からのサンプル(各0.5g)を含有するインスリンは、記載されたように調製された模擬胃液及び模擬腸液中に入れられ、又1時間緩慢に振盪させられた。次いで当該流体サンプルは遠心分離され、又当該上澄みは、カラムプロントSIL(ProntoSIL)C−18(150mm×2.0mm、3μm300Å)を含有するHPLC(アジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies)(カリフォルニア州、パロアルト(Palo Alto))から入手可能なアジレント(Agilent)1100HPLC)を用いて、インスリンの量について分析された。当該溶出液は、水(0.1%トリフルオロ酢酸を有する)及びアセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸を有する)であり、20%アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸を有する)で出発し10分間で50%まで上昇される勾配条件下で溶出した。210nm及び280nmにおけるUV検出が使用された。結果は表1に列挙される。
【0114】
【表1】

【0115】
本発明の様々な変更や改変は、本発明の範囲及び趣旨を逸脱せずに、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で示される例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるべく意図されていないこと、並びに、かような実施例及び実施形態は、以下に示されるように、本明細書に示す請求項によってのみ限定されるべく意図意図されている、本発明の範囲に沿った例示として提示されること、を理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1a】本発明の多層クロモニック構造体の概略的断面図。
【図1b】本発明の多層クロモニック構造体の概略的断面図。
【図1c】本発明の多層クロモニック構造体の概略的断面図。
【図2】2つのクロモニックシェル層を含む本発明の1多層クロモニック構造体の概略的断面図。
【図3】2つのクロモニックナノ粒子を含む本発明の1多層クロモニック構造体の概略的断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1多層クロモニック構造体を製造する方法であって:
(a)
(i)最初の連続的水溶性ポリマー相、及び
(ii)クロモニック材料を含む最初の非連続的クロモニック相、
を含む最初の水溶性混合物を調製して、クロモニックナノ粒子を形成し;
(b)得られた当該クロモニックナノ粒子を多価カチオン塩で非共有結合的に架橋し;
(c)クロモニック材料を含む1組成物中に、得られた当該架橋クロモニックナノ粒子を分散させて、クロモニックナノ粒子分散体を形成し;又、
(d)
(i)当該クロモニックナノ粒子分散体を含む二番目の非連続的クロモニック相、及び
(ii)二番目の連続的水溶性ポリマー相、
を含む二番目の水性混合物を調製して、当該クロモニックナノ粒子を封入し;
そこでは、当該第1の非連続的クロモニック相、及び当該第2の非連続的クロモニック相の、少なくとも一つがゲスト化合物を更に含む、方法。
【請求項2】
当該ゲスト化合物が生物活性化合物である請求項1の方法。
【請求項3】
当該生物活性化合物が、薬剤類、除草剤類、殺虫剤類、フェロモン類、及び抗菌剤類から成る群から選択される請求項2の方法。
【請求項4】
当該生物活性化合物が薬剤である、請求項3の方法。
【請求項5】
当該第1の非連続的クロモニック相及び当該第2の非連続的クロモニック相が、独立的に選択されたゲスト化合物をそれぞれ含む、請求項1の方法。
【請求項6】
当該第1の非連続的クロモニック相のゲスト化合物が、当該第2の非連続的クロモニック相のゲスト化合物と反応的である、請求項5の方法。
【請求項7】
当該ゲスト化合物類の少なくとも一つが生物活性化合物である、請求項6の方法。
【請求項8】
当該ゲスト化合物類の少なくとも一つが、薬剤類、除草剤類、殺虫剤類、フェロモン類、及び抗菌剤類から成る群から選択される、請求項7の方法。
【請求項9】
当該ゲスト化合物類の少なくとも一つが薬剤である、請求項8の方法。
【請求項10】
当該第1の非連続的クロモニック相がゲスト化合物を含む、請求項1の方法。
【請求項11】
当該第2の非連続的クロモニック相がゲスト化合物を含む、請求項1の方法。
【請求項12】
得られた封入ナノ粒子を非共有結合的に架橋することを更に含む、請求項1の方法。
【請求項13】
得られた当該架橋封入ナノ粒子を、1クロモニック材料を含む第2の組成物中に分散させて、第2のクロモニックナノ粒子分散体を形成し、;又、
(i)第3の非連続的水溶性ポリマー相、及び
(ii)当該第2のクロモニックナノ粒子分散を含む、第3の連続的クロモニック相、
を含む第3の水性混合物を調製する、ことを更に含む請求項12の方法。
【請求項14】
当該第3の連続的クロモニック相がゲスト化合物を更に含む、請求項13の方法。
【請求項15】
(i)三番目の連続的水溶性ポリマー相、及び
(ii)クロモニック材料及び三番目のゲスト化合物を含む、三番目の非連続的クロモニック相、
を含む三番目の水性混合物を調製して、当該第3のゲスト化合物を含むクロモニックナノ粒子を形成し;
当該第3のゲスト化合物を含む得られた当該ナノ粒子を、多価カチオン塩で非共有結合的に架橋し;並びに
当該第3のゲスト化合物を含む、得られた架橋クロモニックナノ粒子を、工程(c)の1クロモニック材料を含む当該組成物中に分散させることを更に含む、請求項1の方法。
【請求項16】
当該多価カチオン塩の当該多価カチオンが、Ba2+、Ca2+、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Mg2+、及びAl3+から成る群から選択される、請求項1の方法。
【請求項17】
当該第1の水性混合物の当該水溶性ポリマー、及び当該第2の水性混合物の当該水溶性ポリマーが、ビニルアルコールポリマー類、アスパラギン酸ポリマー類、アクリル酸ポリマー類、メタクリル酸ポリマー類、アクリルアミドポリマー類、ビニルピロリドンポリマー類、ポリ(アルキレンオキシド)類、ビニルメチルエーテルポリマー類、スルホン化ポリエステル類、複合炭水化物類、グアーガム、アラビアゴム、トラガカントゴム、カラマツゴム、カラヤゴム、イナゴマメゴム、寒天、アルギネート類、カラギーナン、ペクチン類、セルロース及びセルロース誘導体類、デンプン類及び変性デンプン類、並びにこれらの組み合わせから成る群から、独立的に選択される請求項1の方法。
【請求項18】
当該第1の水性混合物の当該クロモニック材料、及びクロモニック材料を含む当該組成物の当該クロモニック材料が、以下の1以上の一般式から独立的に選択される、請求項1の方法:
【化1】

式中、
各Rが、電子供与性基、電子求引性基、及び電子中性基から成る群から独立に選択され、又、
が、置換及び非置換芳香族複素環、置換及び非置換複素環、ここで、前記した環がRの当該環内の窒素原子を介してトリアジン基に連結され、並びに両性イオン類、プロトン互変異性体類及びそれらの塩類、から成る群から選択される。
【請求項19】
当該第1の水性混合物の当該クロモニック材料、及びクロモニック材料を含む当該組成物の当該クロモニック材料が、以下の1以上の一般式から独立的に選択される、請求項18の方法:
【化2】

式中、Xは対イオンである。
【請求項20】
当該第1の水性組成物が貴金属塩を更に含む、請求項1の方法。
【請求項21】
当該貴金属塩を還元させて当該架橋クロモニックナノ粒子中に含有された元素貴金属ナノ粒子の懸濁液を生成することを更に含む、請求項20の方法。
【請求項22】
クロモニック材料のシェル層中に封入されたクロモニックナノ粒子を含む、多層クロモニック構造体であって:当該クロモニックナノ粒子及びクロモニック材料のシェル層の少なくとも一つがゲスト化合物を含む、構造体。
【請求項23】
当該クロモニックナノ粒子及び当該クロモニック材料のシェル層が、独立的に選択されたゲスト化合物をそれぞれ含有する、請求項22の多層クロモニック構造体。
【請求項24】
当該クロモニックナノ粒子がゲスト化合物を含有する、請求項22の多層クロモニック構造体。
【請求項25】
クロモニック材料の当該シェル層がゲスト化合物を含有する、請求項22の多層クロモニック構造体。
【請求項26】
クロモニック材料の二番目のシェル層を更に含む、請求項22の多層クロモニック構造体。
【請求項27】
最初のゲスト化合物を含む最初のクロモニックナノ粒子、及び二番目のゲスト化合物を含む二番目のクロモニックナノ粒子を含む、多層クロモニック構造体であって:当該第1のクロモニックナノ粒子及び当該第2のクロモニックナノ粒子がクロモニック材料のシェル層中にともに封入されている、構造体。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−520102(P2009−520102A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547250(P2008−547250)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/045589
【国際公開番号】WO2007/075252
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】