説明

多層コンポジットコロイド結晶配列フィルム

マトリックス組成物中に保持された、粒子の規則的な周期的配列を備える、多層コンポジット材料が開示されている。このコンポジット材料は、粒子の配列物に注入されたナノサイズの無機粒子をさらに含んでいる。本発明は、第1粒子と第2粒子とが交互に重なった層を備え、上述の第1粒子が、規則的な周期的配列で整列しており、マトリックス組成物中に保持されており、上述の第2粒子が、上述の配列または上述のマトリックス組成物、または両者の中に入っている、多層コンポジット材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府により支援された研究に関する陳述)
本発明は、AFRLにより授与された契約番号FA8650−05−2−5042の下、政府の支援がなされた。政府は本発明に一定の権利を有し得る。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、放射線回折性フィルム材料に関し、さらに特定的には、異なる粒子が交互に重なった層を備えるマトリックス組成物中に保持された、粒子の周期的配列に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
コロイド結晶配列を基本とする放射線回折性材料は、種々の目的で使用されている。コロイド結晶配列(CCA)は、単分散コロイド粒子の三次元に規則的な配列である。この粒子は、典型的には、ポリスチレンのようなポリマーで構成されている。これらの粒子のコロイド分散物は、紫外線、可視光線または赤外線の波長に匹敵する格子間隔を有する規則的な配列(結晶構造)へと自己集合することができる。この結晶構造は、広範囲のスペクトルをもつ入射光線から、この光線に隣接する波長は透過させつつ、狭い範囲の所定の波長帯をフィルタリングするために使用されている。または、CCAは、着色剤、マーカー、光スイッチ、光リミッタ、光センサとして使用する放射線を回折するように加工される。これらのデバイスの多くは、液体媒体中に粒子を分散させることによって作られ、ここで、この粒子が、規則的な配列へと自己集合する。上記配列中の粒子の位置は、粒子を相互に重合させるか、または、粒子を膨潤させ、閉じ込める溶媒を導入することによって固定されてもよい。
【0004】
他のCCAは、キャリア中の、同様の帯電した単分散粒子の分散物から製造される。この分散物を基板に塗布し、キャリアを蒸発させ、粒子の規則的な周期的配列物(array)を得る。この配列物を硬化性ポリマー(例えば、アクリル系ポリマー、ポリウレタン、アルキドポリマー、ポリエステル、シロキサン含有ポリマー、ポリスルフィドまたはエポキシ含有ポリマー)でコーティングすることによって、この配列物は、適所に固定される。このようなCCAを製造する方法は、特許文献1(本明細書に参考として援用する)に開示されている。または、この粒子は、コア−シェル構造を有していてもよく、ここで、コアは、単一粒子について上に記載したのと同じ材料から製造され、シェルは、コア材料と同じポリマーと、特定の配列のコア−シェル粒子のための、コア材料とは異なる粒子シェルのポリマーとから製造される。このようなコア−シェル粒子およびこれを製造する方法は、例えば、特許文献2(本明細書に参考として援用する)に開示されている。
【0005】
単一粒子またはコア−シェル粒子の上述の配列では、この構造は、ブラッグ則にしたがって放射線を回折し、ブラッグ条件を満たす放射線を反射し、ブラッグ条件を満たさない隣接するスペクトル領域は、このデバイスを透過する。反射放射線の波長は、一部が、この配列物の有効屈折率によって決定される一方で、反射放射線の強度は、この配列物内の粒子と、周囲にあるマトリックスとの屈折率の差にも比例する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,894,086号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2007/0100026号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、第1粒子と第2粒子とが交互に重なった層を備え、上述の第1粒子が、規則的な周期的配列で整列しており、かつ、マトリックス組成物中に保持されており、上述の第2粒子が、上述の配列または上述のマトリックス組成物、または両者の中に入っている、多層コンポジット材料に関する。また、マトリックス組成物中に保持された、コンポジット粒子の規則的な周期的配列を備えており、このコンポジット粒子が、ポリマー系有機部分と無機部分とを含む、多層コンポジット材料も含まれる。また、本発明は、マトリックス中に保持された、有機ポリマー粒子の規則的な周期的配列を備える主成分を与える工程と、主成分中に、インサイチュで無機粒子を形成させる工程とを含む、多層コンポジット材料を製造する方法も含む。この様式で、本発明は、マトリックス組成物中に保持された、有機ポリマー粒子の規則的な周期的配列を備える第1成分と、上述の第1成分に注入された無機粒子相を含む第2成分とを備える、コンポジット材料もさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の放射線回折材料の模式的な断面図である。
【図2】図2は、図1の模式図の詳細な図である。
【図3】図3は、本発明によって製造された多層コンポジット材料の透過型電子顕微鏡図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
以下の詳細な記載を進めるために、矛盾するように明確に特定されていない限り、本発明が、種々の代替的な改変例および工程順序を想定していてもよいことが理解されるべきである。さらに、任意の操作例以外、または他に示されている場合に、すべての数表現、例えば、明細書および特許請求の範囲で使用する成分の量は、すべての場合に、用語「約」で修飾されていると理解されるべきである。したがって、矛盾するように示されていない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲で記載される数値パラメータは、本発明によって得られるべき望ましい性質によって変わるであろう概算値である。どう少なく見積もっても、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限するというつもりはなく、各数値パラメータは、報告された有効桁数の観点で、かつ通常の丸め技術を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。広い範囲にわたる本発明を記載する数値範囲およびパラメータは概算値であるが、特定の実施例に記載する数値範囲は、可能な限り正確に報告している。しかし、いずれの数値も、それぞれの試験測定値にみられる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含んでいる。
【0010】
また、本明細書に記載した任意の数値範囲は、その数値範囲に含まれるすべての部分的な範囲を含むことを意図していることを理解すべきである。例えば、「1〜10」という範囲は、記載されている最小値である1と、記載されている最大値である10の間の(これらの値を含む)すべての部分的な範囲、つまり、最小値が1以上、最大値が10以下のすべての部分的な範囲を含むことが意図されている。
【0011】
本明細書で、他の意味であると明確に述べられていない限り、単数形の使用は、複数形を含み、複数形は、単数形を包含する。それに加え、本明細書で、「または」の使用は、他の意味であると明確に述べられていない限り、「および/または」が、特定の場合に明確に使用されている場合であっても、「および/または」を意味する。
【0012】
用語「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、オリゴマーを含むことを意味する。用語「金属」は、金属、金属酸化物、半金属を含む。用語「注入する」および関連する用語(例えば、注入)は、液相から浸透していくことを指す。
【0013】
本発明は、可視光スペクトルおよび/または非可視光スペクトル中の放射線を回折する多層コンポジット材料、およびこれを作製する方法を含む。本明細書で使用される場合、「コンポジット」は、異なる、もしくは別個の部分または成分で構成される特徴を示す。コンポジット材料は、ポリマー系マトリックスに配置されている回折領域の規則的な周期的配列を備えている。回折領域とは、限定されないが、コンポジット粒子および不連続な粒子を含む、周囲のマトリックスの屈折率とは異なる屈折率を有する領域を意味する。配列物は、複数の回折領域の層を含み、以下のブラッグ則を満足する。
【0014】
mλ=2ndsin θ
式中、mは整数であり、nは、この配列物の有効屈折率であり、dは、回折領域の層間距離であり、λは、角θで、回折領域の層面から反射される放射線の波長である。本明細書で使用される場合、回折放射線の「ある」波長は、その波長の周囲の電磁放射スペクトル帯を含む。例えば、600nmの波長を指す場合、595〜605nmを含んでいてもよい。反射放射線は、可視光スペクトルであってもよく、不可視光スペクトル(赤外線または紫外線)であってもよい。
【0015】
コンポジット材料は、一般的に、有機マトリックスに保持された、有機粒子の周期的配列を備える主成分(または第1)の有機成分と、無機粒子を含むマイナー(または第2)の成分とを含む。図1および2を参照すると、主成分およびマイナー成分は、一般的に、第1粒子4を含有する層Aと、第2粒子6を含有する層Bとが交互に重なった層として整列している。第1粒子4は、有機ポリマーを含み、第2粒子6は、無機粒子であり、典型的には、以下に示すようなナノサイズの無機粒子である。本発明の一実施形態では、第1粒子4は、コア12を取り囲んでいるシェル10で構成されるコア−シェル構造を有しており、第2粒子6がシェル10中に注入されている。第1粒子4および第2粒子6は、一般的に、それぞれ、交互に重なった層Aおよび層Bの中に整列しており、図2では、このような各層の片方のみにラベルが付けられている。層Aは、一般的に、第1粒子4の中心線にある領域または面、または中心線に隣接する領域または面を指し、層Bは、一般的に、第2粒子6が配置されている領域または面を指すことが理解されるべきである。典型的には、層Aは、第1粒子4と、第2粒子6をほとんど含まないか、まったく含まない周囲のマトリックス8とを含む。したがって、層Bは、一般的に、第2粒子6と、その周囲にマトリックス8とを含み、さらに、第1粒子4の一部分を含む。層B中の第2粒子6の濃度は、変えることができ、以下に示すように、第1粒子4内への第2粒子6の注入量、または、第1粒子4に隣接する第2粒子6の注入量に関連する。
【0016】
本発明の別の実施形態(示さない)では、第1粒子は、単一構造を有する(コア−シェル構造ではない)。本明細書で使用される場合、「単一構造」は、成分の構造を有しておらず、概ね均一な構造を有するが、その組成は、単一粒子を介して変わり得る(例えば、粒子中に溶媒またはマトリックスが拡散する際に起こり得る)、粒子の特徴を指す。第2粒子は、単一の第1粒子の反対側にあるマトリックス領域中に注入されてもよく、また、そうすることにより、単一の第1粒子および周囲のマトリックスとを含有し、かつ第2粒子をほとんどもしくはまったく含有しない層Aと、マトリックスに入っている第2粒子、および、場合により単一の第1粒子の一部もまた含む層とが、概ね交互に重なった層を表す。
【0017】
(第1粒子)
第1粒子に種々の組成物を使用してもよく、限定されないが、組成物としては、有機ポリマー、例えば、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル系ポリマー、アルキドポリマー、ポリエステル、シロキサン含有ポリマー、ポリスルフィド、エポキシ含有ポリマー、および、無機材料、例えば、金属酸化物(例えば、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛または二酸化チタン)、または半導体(例えば、硫化カドミウム)が挙げられる。第1粒子は、コア−シェル構造を有していてもよく、この粒子シェルのポリマーは、通例、コア材料とは異なっている。コア材料およびシェル材料は、異なる屈折率を有していてもよい。それに加えて、シェルの屈折率は、シェルの厚みの初めから終わりまで屈折率がある勾配を有する形で、シェルの厚みの関数として変化してもよい。
【0018】
シェル材料は、フィルム形成性でなくてもよく、それにより、シェル材料が、シェル材料のフィルムを形成することなく、それぞれの粒子コアを取り囲む位置にとどまり、その結果、コア−シェル粒子が、ポリマー系マトリックス内に別個の粒子としてとどまり、第2粒子が、シェルに注入される。または、シェル材料は、フィルム形成性であってもよく、その結果、コア−シェル粒子のシェルはフィルムを形成し、残ったコアを取り囲むマトリックス材料として機能する。
【0019】
概ね球形の第1粒子の場合、第2粒子を注入する前に、コアの直径は、粒子全体の直径の85〜95%を構成していてもよく、または、粒子全体の直径の90%を構成しており、シェルが、粒子の直径の残りの部分を構成し、半径方向にある大きさの厚みを有していてもよい。
【0020】
一実施形態では、第1粒子のコアは、界面活性剤存在下、コアの前駆体モノマーをエマルション重合させることによって製造され、コアの分散物を得る。有機ポリマー粒子を分散させるのに適切な界面活性剤としては、限定されないが、スチレンスルホン酸ナトリウム、1−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホン酸ナトリウム(Rhodia Corporationから、Sipomer COPS−Iとして市販)、アクリルアミドプロピルスルホネート、およびアリルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。特に有用な界面活性剤は、粒子分散物の分散流体(例えば、水)に最低限度で可溶性のものである。シェルモノマーを、界面活性剤(上述のもの)とともにコア粒子分散物に加えると、シェルモノマーが、コア粒子上で重合する。コア−シェル粒子は、限外濾過、透析またはイオン交換といった技術によって分散物から精製され、未反応モノマー、低分子ポリマー、水、開始剤、界面活性剤、結合していない塩および粒塊(凝集した粒子)のような望ましくない物質が除去され、帯電したコア−シェル粒子の単分散物を得る。限外濾過は、帯電した粒子を精製するのに特に適している。この粒子が、他の物質(例えば、塩または副生成物)と一緒に分散物中に存在すると、帯電粒子の反発力が小さくなることがあり、したがって、粒子分散物は、本質的に、帯電粒子のみを含む状態まで精製され、そうすると、互いに容易に反発し、以下に示すような基板上に規則的な配列を形成する。
【0021】
本発明の別の実施形態では、単一構造の第1粒子は、モノマーを、開始剤とともに溶液中に分散させ、コア−シェル粒子のコアを調製することに関して上に記載したように単一粒子を製造することによって製造される。単一第1粒子の分散物を、上述のように精製し、帯電した単一粒子のみの分散物を製造し、次いで、以下に示すような基板上に規則的な配列を形成する。
【0022】
(第1粒子の配列)
過剰な原材料、副生成物、溶媒などを除去する際、帯電した第1粒子の静電反発力によって、第1粒子が、規則的な配列へと自己集合する。第1粒子分散物を精製したものを基板に塗布し、乾燥させる。基板に塗布される第1粒子の分散物は、帯電粒子を10〜70容積%含んでいてもよく、または帯電粒子を30〜65容積%含んでいてもよい。この分散物を、所望の厚みになるまで、浸漬、噴霧、刷毛塗り、ロール塗工、カーテン塗工、フロー塗工、またはダイ塗工することによって基板に塗布することができる。濡れた状態のコーティングの厚みは、4〜50ミクロンであってもよく、例えば、40ミクロンである。乾燥時に、材料は、ブラッグ配列で自己集合した粒子のみを本質的に含有しており、それゆえ、放射線を回折する。
【0023】
(マトリックス)
基板上で、第1粒子(コア−シェルまたは単一のもの)の配列物を乾燥させ、米国特許第6,894,086号(本明細書に参考として援用する)に開示されるように、第1粒子の配列物を、モノマーまたは他のポリマー前駆体材料を含む硬化性マトリックス流体組成物でコーティングすることによってマトリックス中に固定し、第1粒子の配列物を硬化性マトリックス組成物に浸透させる。硬化性マトリックス組成物材料を、浸漬、噴霧、刷毛塗り、ロール塗工、グラビア塗工、カーテン塗工、フロー塗工、スロット−ダイ塗工、またはインクジェット塗工によって、乾燥させた粒子の配列物にコーティングしてもよい。コーティングするとは、硬化性マトリックス組成物が、配列物全体を少なくとも実質的に覆っており、第1粒子間の格子間の空隙を部分的に満たしていることを意味する。
【0024】
マトリックス材料は、有機ポリマー、例えば、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル系ポリマー、アルキドポリマー、ポリエステル、シロキサン含有ポリマー、エポキシ含有ポリマーおよび/またはエポキシ含有ポリマーから誘導されるポリマーであってもよい。一実施形態では、マトリックス材料は、水溶性または親水性のアクリル系ポリマーである。水溶性または親水性のマトリックスを製造し、その後マトリックス組成物を硬化して有機マトリックスを得るのに適切なモノマーとしては、限定されないが、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコール,(600)ジアクリレート、ポリエチレングリコール,(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール,(200)ジアクリレート、およびアクリル酸が挙げられる。水溶性または親水性のポリマーマトリックスを製造するのに適した他のモノマーとしては、ポリエチレングリコール(1000)ジアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(350)モノアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(350)モノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(550)モノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(550)モノアクリレート、エトキシル化30ビスフェノールAジアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート、エトキシル化30ビスフェノールAジメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートを挙げることができる。
【0025】
以下に詳細に記載するように、マトリックスに入れられた第1粒子の配列物を、一時的な支持材として機能する基板上か、またはコンポジット材料の望ましい最終用途である基板上で製造してもよい。一時的な支持材とは、その基板が、本発明のコンポジット材料の製造を助けるために使用され、次いで、自立性形態(例えば、自立性フィルムまたは粉末状の粒子物質)の上記コンポジット材料から除去されることを意味する。次いで、コンポジット材料のフィルムまたはコンポジット材料の粒子を、別の支持材に塗布してもよく、または、末端の最終用途のための組成物(例えば、コーティング組成物)に加えられてもよい。コンポジット材料の最終用途および最終形態は、本明細書に記載されているものに限定されない。
【0026】
(第2粒子)
第2粒子は、主成分である配列物およびマトリックス内に、マイナー成分としてインサイチュで作製される無機粒子である。一実施形態では、無機粒子相は、金属酸化物である。金属酸化物相は、配列物のコア−シェル粒子のシェルを膨潤させるか、または配列物の単一粒子の周囲にあるマトリックスを膨潤させる溶媒に溶解した金属酸化物相の前駆体を用い、主成分中に組み込まれてもよい。適切な前駆体の例としては、オルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラメチル、チタンイソプロポキシドが挙げられる。有機ポリマー系第1粒子の規則的な配列を備える主成分を、前駆体溶液と接触させ、前駆体成分を第1成分に注入する。注入された前駆体を含む主成分を、湿気(例えば、大気中の水分)にさらすか、または、水に浸し、前駆体成分を加水分解させ、それによって、ヒドロキシル官能基(例えば、−Si−OHまたは−Ti−OH)を生成させた後、周囲条件にさらすか、または任意の加熱工程を行い、加水分解生成物を縮合させ、ポリマー相中にて、インサイチュで金属酸化物相を形成させる。
【0027】
加水分解反応および縮合反応は、酸または塩基によって触媒されてもよい。金属酸化物相を形成する金属酸化物前駆体は、膨潤させる溶媒に可溶性であり、かつ、加水分解および縮合によって無機粒子相を形成可能である、加水分解可能脱離基を有する金属から誘導される。適切な金属の例は、酸の水素が置き換わり、かつ、ヒドロキシル基と塩基を形成することが可能である、陽性の金属である。好ましい金属は、ケイ素、チタン、アルミニウム、およびジルコニウムである。適切な前駆体は、MXおよびMXであり、ここで、Mは金属であり、Xは、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシまたはNR基であり、Rは、水素および/またはアルキルおよび/またはアリールである。また、他の金属を、特に、好ましい金属と組み合わせて用いてもよい。このような金属の例は、ホウ素、インジウム、スズ、タンタル、ランタン、鉄、金、銅、イットリウム、ゲルマニウム、バリウム、マグネシウムである。本発明のコンポジット材料は、従来のCCAでは一般的ではない性質を有していてもよい。例えば、鉄系の無機粒子を配列物に注入すると、この配列物は磁気を帯び、また、コンポジット材料に色が付与され得る。同様に、配列物は、銀のような導電性金属粒子を注入することによって、導電性であってもよい。または、配列物は、銅または金を注入する場合、防汚性を有していてもよい。前駆体の例は、オルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラメチル、アルコキシド基が1〜12個の炭素原子を有する金属(例えば、チタン、ジルコニウム)のアルコキシドである。これらの例としては、チタンテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、およびアルミニウムトリ−sec−ブトキシドを挙げることができる。
【0028】
本発明の方法で使用される溶媒は、配列物のコア−シェル粒子のシェル、または配列物の単一粒子の周囲にあるマトリックスを膨潤させることが可能で、かつ、無機粒子相の前駆体成分を溶解させることが可能な溶媒である。適切な溶媒の例としては、アルコール、特に、1〜4個の炭素原子を含有するもの(例えば、メタノール、エタノール)、酢酸エチル、メチルエチルケトン、およびN−メチルピロリドンが挙げられる。主成分と上述の溶液との接触は、主成分を溶液に浸すことによって達成することができる。膨潤させ、前駆体成分が第1成分に注入されるのを可能にするのに必要な時間に応じて、主成分を迅速に浸漬するか、またはもっと長い時間浸してもよい。必要な時間は、第1成分の材料、溶媒、処理温度によって変わり得る。典型的には、溶液を、0〜100℃の温度に維持し、浸漬時間は、約1分以上である。圧力を高くすることは、注入を促進するために有利な場合もあるが、必須ではない。このプロセスは、典型的に、周囲圧力で行われる。前駆体成分を注入した後、注入された主成分を、大気からの水分か、外部から供給される水分にさらす。一実施形態では、前駆体成分を含んでいる注入された主成分を水に浸すか、もっと好ましくは、加水分解および縮合反応を触媒させるために酸性pHまたは塩基性pHで浸し、それにより無機粒子相を形成させる。適切な塩基の例は、水酸化アンモニウムのような無機塩基、および、アミンのような有機塩基である。無機粒子の大きさは、1ミクロン〜1ナノメートルまでさまざまであってもよい。塩基性条件では、小さな粒子(例えば、1000ナノメートル未満、典型的には、100ナノメートル未満の粒子)が生成しやすくなる。加水分解のための酸性条件では、大きな粒子になりやすく、またはモノリス構造が生成しやすい傾向がある。特定の無機粒子では、主成分中に散在する無機材料のモノリス層を作るのに、酸性条件が望ましい場合がある。望ましいモノリス材料の非限定的な例としては、磁性コンポジット材料を作り出す鉄または鉄含有化合物、導電性コンポジット材料を生じる銀または銀含有化合物が挙げられる。
【0029】
前駆体溶液を、コア−シェル第1粒子の配列物に塗布すると、前駆体溶液の溶媒が、コア−シェル粒子のシェル中に拡散し、シェルを膨潤させる。単一の第1粒子の配列物では、前駆体溶液を塗布すると、単一粒子の周囲にあるマトリックスが膨潤する場合がある。このような膨潤(粒子シェルの膨潤、または周囲にあるマトリックスの膨潤)は、典型的に、規則的な周期的配列中の、第1粒子(コア−シェルまたは単一)の層の中心線間の距離を広げる。この様式で、第1粒子は、図2の模式図に示したように、いくらか細長くなる場合があり、長い方の寸法が、配列物の厚み方向に並ぶ。第1粒子および/または周囲にあるマトリックス組成物の膨潤が、通常、第1粒子の層の間で起こり、それによって、無機粒子相の注入部位が作られると考えられている。結果として、注入された配列物は多層構造を示し、この多層構造は通常、注入された無機粒子相に由来する大部分が無機粒子の層(層B)によって分離される、大部分が有機ポリマー系粒子の層(層A)を含み、上記無機粒子相は、場合により、例えば、マトリックス組成物および/または第1粒子に由来する、有機材料をいくらか含む。この様式で、第2粒子を注入すると、マトリックス材料に保持された、第1粒子の規則的な周期的配列に「層」が生じる。中に第2粒子が注入されたコア−シェル第1粒子の場合、得られた多層材料は、通常、マトリックス材料に保持された、コンポジット粒子の構造(中に第2粒子が注入されたコア−シェル第1粒子)を示す。得られたコンポジット粒子は、(元々は第1粒子の)有機部分と、(元々は注入された第2粒子の)無機部分の両方を含む。図1および図2で模式的に示されているように、無機部分は、少量のコンポジット粒子を含む。
【0030】
処理した配列物を回収し、溶媒、水、および任意の未反応出発物質を、周囲温度で風乾するか、または、例えば、約60℃以上で、ただし、配列物のポリマーが分解する温度より低い高温に加熱するかして、蒸発させることによって除去する。このような加熱によって、通常は、望ましくない物質が除去され、また、縮合反応が進行しやすくなる場合もある。加熱時間は、典型的には、溶媒の温度および蒸気圧に依存して、約1分以上である。場合により、減圧下で加熱を行ってもよい。
【0031】
一実施形態では、本発明のコンポジット材料は、ゲル状ではなく、実質的に個体である。ゲル状ではないとは、コンポジット材料が、流動化させる物質(例えば、水)を含まず、ハイドロゲルでもなく、ハイドロゲルから生成されもしないことを意味する。特定の実施形態では、本発明のコンポジット材料は、第1粒子および第2粒子とマトリックスと、含む可能性のある、少しの残留溶媒とを実質的に含むのみであり、したがって、実質的に固体である。コンポジット材料中の粒子対マトリックスの容積比は、典型的に、約25:75〜約80:20である。
【0032】
本発明の1つの特徴は、無機粒子相を持たない粒子の配列物と比較した場合、コンポジット粒子の配列物からの反射放射線の強度を変えること(大きくするか、または小さくする)ことである。反射放射線の強度変化は、第2粒子が中に注入されていないマトリックスに保持された、有機粒子の配列物間の屈折率の差と比較して、コンポジット粒子とマトリックスとの屈折率の差が変わることによると考えられている。
【0033】
(基板)
基板は、可とう性材料、例えば、金属シートもしくは金属箔(例えば、アルミニウム箔)、紙、またはポリエステルもしくはポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルム(またはシート)であってもよく、あるいは非可とう性材料、例えば、ガラスまたはプラスチックであってもよい。「可とう性」とは、基板が、顕著な不可逆的な変化を起こさずに、機械的応力(例えば、曲げ、伸長、圧縮など)を受けることができることを意味する。1つの適切な基板は、細孔性シートである。細孔性シートのいくつかの例が、米国特許第4,833,172号;第4,861,644号;第6,114,023号に開示されている(本明細書に参考として援用する)。市販の細孔性シートは、PPG Industries,Inc.によって、Teslin(登録商標)の名称で販売されている。適切な他の可とう性基板としては、天然皮革、合成皮革、仕上げ加工された天然皮革、仕上げ加工された合成皮革、スエード、ビニルナイロン、エチレンビニルアセテートフォーム(EVAフォーム)、熱可塑性ウレタン(TPU)、流体を満たした袋(bladder)、ポリオレフィンおよびポリオレフィンブレンド、ポリ酢酸ビニルおよびコポリマー、ポリ塩化ビニルおよびコポリマー、ウレタンエラストマー、合成繊維および天然繊維が挙げられる。
【0034】
特定の実施形態では、可とう性基板は、圧縮性基板である。「圧縮性基板」などの用語は、圧縮変形を受け、その圧縮変形がなくなれば、実質的に同じ形状へと戻ることが可能な基板を指す。用語「圧縮変形」は、基板の容積を少なくとも1つの方向に、少なくとも一時的に小さくするような機械的応力を意味する。上に記載しているように、本発明のコンポジット材料は、圧縮性基板に塗布されてもよい。「圧縮性基板」などの用語は、圧縮変形を受け、その圧縮変形がなくなれば、実質的に同じ形状へと戻ることが可能な基板を指す。用語「圧縮変形」などの用語は、基板の容積を少なくとも1つの方向に、少なくとも一時的に小さくする機械的応力を意味する。圧縮性基板は、例えば、圧縮歪みが50%以上、例えば、70%以上、75%以上、または80%以上の基板である。圧縮性基板の特定の例としては、空気、液体および/または血漿で満たされた、フォームおよびポリマー系の袋を含む基板が挙げられる。「フォーム」は、連続気泡フォームおよび/または独立気泡フォームを含む、ポリマー系材料であってもよく、天然材料であってもよい。「連続気泡フォーム」は、フォームが、複数の互いにつながった空気室を含むことを意味し、「独立気泡フォーム」は、フォームが、別個の閉じた孔を含むことを意味する。フォームの例としては、限定されないが、ポリスチレンフォーム、ポリ酢酸ビニルおよび/またはコポリマー、ポリ塩化ビニルおよび/またはコポリマー、ポリ(メタ)アクリルイミドフォーム、ポリ塩化ビニルフォーム、ポリウレタンフォーム、熱可塑性ウレタンフォーム、ならびにポリオレフィン系フォームおよびポリオレフィンブレンドが挙げられる。ポリオレフィン系フォームとしては、限定されないが、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム、エチレンビニルアセテート(「EVA」)フォームが挙げられる。「EVAフォーム」は、連続気泡フォームおよび/または独立気泡フォームを含み得る。EVAフォームとしては、平坦なシートまたは厚板または成形したEVAフォーム(例えば、靴の中底)を挙げることができる。異なる種類のEVAフォームは、異なる種類の表面空隙率を有していてもよい。成形したEVAフォームは、高密度の表面、すなわち、「スキン(skin)」を有していてもよく、一方、平坦なシートまたは厚板は、多孔性表面を示していてもよい。
【0035】
本発明のポリウレタン基板としては、芳香族、脂肪族およびハイブリッド(ハイブリッドの例は、シリコーンポリエーテルウレタンまたはシリコーンポリエステルウレタンおよびシリコーンカーボネートウレタンである)ポリエステルまたはポリエーテル系熱可塑性ウレタンである。「可塑性」とは、任意の一般的な熱可塑性合成材料または熱硬化性合成材料を意味し、これらの合成材料としては、熱可塑性オレフィン(「TPO」)、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびこれらのブレンド、熱可塑性ウレタン、ポリカーボネート、シート成形化合物、反応−射出成形化合物、アクリロニトリル系材料、ナイロンなどが挙げられる。特定のプラスチックは、ポリプロピレンおよびEPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)を含むTPOである。
【0036】
コンポジット材料を、種々の様式で物品に塗布してもよい。一実施形態では、コンポジット材料を基板上で製造し、次いで、基板からはずし、特定の形態(例えば、フレークの形態)に粉砕する。粉砕したコンポジット材料を、物品に塗布するためのコーティング組成物に添加剤として組み込んでもよい。これは、粉砕したコンポジット材料を含有するコーティング組成物中の濁りを最小限にするのに有益な場合がある。濁りを減らすことは、コンポジット材料のマトリックスと粒子との屈折率の差を減らすことによって達成可能な場合がある。しかし、屈折率の差を減らすことは、通常、反射放射線の強度を下げる。したがって、濁りを最小にすることが望ましく、屈折率を下げる場合には、強度は、マトリックスおよび粒子の屈折率が互いに全く異なる材料と比較して、コンポジット材料の厚みを大きくする(すなわち、配列物中の粒子層の量を増やす)ことによって維持されてもよい。
【0037】
一実施形態では、コーティング組成物は、アルコキシドのような「ハードコート」を含む。アルコキシドを、当該技術分野で公知である他の化合物および/またはポリマーとさらに混合し、および/または反応させてもよい。特に適しているのは、上式の範囲内のもののような、有機アルコキシシランを少なくとも部分的に加水分解して形成されるシロキサンを含む組成物である。適切なアルコキシド含有化合物およびこれを製造する方法の例は、米国特許第6,355,189号;同第6,264,859号;同第6,469,119号;同第6,180,248号;同第5,916,686号;同第5,401,579号;同第4,799,963号;同第5,344,712号;同第4,731,264号;同第4,753,827号;同第4,754,012号;同第4,814,017号;同第5,115,023号;同第5,035,745号;同第5,231,156号;同第5,199,979号;同第6,106,605号に記載されている(これらを、本明細書で参考として援用する)。
【0038】
特定の実施形態では、アルコキシドは、グリシドキシ[(C〜C)アルキル]トリ(C〜C)アルコキシシランモノマーおよびテトラ(C〜C)アルコキシシランモノマーの組み合わせを含む。本発明のコーティング組成物で使用するのに適したグリシドキシ[(C〜C)アルキル]トリ(C〜C)アルコキシシランモノマーとしては、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチル−トリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシ−プロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピル−トリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、これらの加水分解物、および/またはこのようなシランモノマーの混合物が挙げられる。本発明のコーティング組成物でグリシドキシ[(C〜C)アルキル]トリ(C〜C)アルコキシシランと組み合わせて使用可能である、適切なテトラ(C〜C)アルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テトラヘキシルオキシシラン、およびこれらの混合物のような材料が挙げられる。
【0039】
特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物で使用するグリシドキシ[(C〜C)アルキル]トリ(C〜C)アルコキシシランおよびテトラ(C〜C)アルコキシシランモノマーは、グリシドキシ[(C〜C)アルキル]トリ(C〜C)アルコキシシランと、テトラ(C〜C)アルコキシシランとの重量比が、0.5:1〜100:1、例えば、0.75:1〜50:1、ある場合には、1:1〜5:1で存在する。特定の実施形態では、アルコキシドは、コーティング組成物の他の成分(例えば、ポリマーに封入された色を付与する粒子)と混合する前に、少なくとも部分的に加水分解される。このような加水分解反応は、米国特許第6,355,189号の第3欄第7〜28行に記載されており、この引用部分を、本明細書に参考として援用する。特定の実施形態では、加水分解性アルコキシドを加水分解させるのに必要な量の水が与えられる。例えば、特定の実施形態では、加水分解性アルコキシド1モルあたり、水が、少なくとも1.5モルの量で存在する。特定の実施形態では、十分な量が存在する場合、大気中の水分で十分な場合もある。
【0040】
特定の実施形態では、加水分解反応および縮合反応を触媒するために、触媒が与えられる。特定の実施形態では、触媒は、酸性材料および/または、酸性材料とは異なっており、化学線をあてると酸を生成する材料である。特定の実施形態では、酸性材料は、有機酸、無機酸、またはこれらの混合物から選択される。このような材料の非限定的な例としては、酢酸、ギ酸、グルタル酸、マレイン酸、硝酸、塩酸、リン酸、フッ化水素酸、硫酸またはこれらの混合物が挙げられる。
【0041】
化学線をあてると酸を生成する任意の材料を、本発明のコーティング組成物の加水分解触媒および縮合触媒として使用してもよい(例えば、ルイス酸および/またはブレンステッド酸)。酸を生成する化合物の非限定的な例としては、オニウム塩およびヨードシル塩、芳香族ジアゾニウム塩、メタロセニウム塩(metallocenium salt)、o−ニトロベンズアルデヒド、米国特許第3,991,033号に記載されているポリオキシメチレンポリマー、米国特許第3,849,137号に記載されているo−ニトロカルビノールエステル、米国特許第4,086,210号に記載されているo−ニトロフェニルアセタール、これらのポリエステルおよびエンドキャップされた誘導体、スルホン酸エステル、またはスルホン酸エステル基に対してα位またはβ位にカルボニル基を有する芳香族アルコール、芳香族アミドまたはイミドのN−スルホニルオキシ誘導体、芳香族オキシムスルホネート、キノンジアジド、および鎖にベンゾイン基を有する樹脂、例えば、米国特許第4,368,253号に記載されているものが挙げられる。これらの放射線によって活性化する酸触媒の例は、米国特許第5,451,345号にも開示されている。
【0042】
特定の実施形態では、酸を生成する化合物は、カチオン性光開始剤である(例えば、オニウム塩)。このような材料の非限定的な例としては、ジアリールヨードニウム塩、およびトリアリールスルホニウム塩が挙げられ、Sartomer CompanyからSarCat(登録商標)CD−1012、CD−1011として市販されている。他の適切なオニウム塩は、米国特許第5,639,802号の第8欄第59行〜第10欄第46行に記載されている。このようなオニウム塩の例としては、4,4’−ジメチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、フェニル−4−オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ドデシルジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、[4−[(2−テトラデカノール)オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
本発明のコーティング組成物で使用する触媒の量は、広範囲に様々な量であってもよく、使用する特定の材料によってもよい。加水分解反応および縮合反応を開始し、かつ/または、触媒するのに必要な量だけが必要である(例えば、触媒量)。特定の実施形態では、酸性材料および/または酸を生成する材料を、組成物の合計重量を基準として、0.01〜5重量%の量で使用してもよい。
【0044】
本発明によって製造されるコンポジット材料を、価値の高い文書、製造物品およびそれらの包装物品、および証明証を含む、標示デバイスで使用してもよい。価値の高い文書の例としては、通貨、クレジットカード、適法証明書、収集用物品、トレーディングカード、証書、権利書または登録証(例えば、車両用)、適法なステッカー、券(例えば、旅行、イベントまたは駐車)、納税印紙、硬貨、郵便切手、小切手および郵便為替、文具(stationary)、くじ券、チップおよび/またはトークン、統制品(例えば、証拠)、カードキー、鍵、バーコードの一部分としての読み取り物品および解明物品が挙げられる。製造物品または製造物品の包装としては、飛行機の部品、車両の部品(例えば、車両の識別番号)、医薬品およびパーソナルケア製品、記録媒体、衣類および履物、電子デバイス、電池、眼用デバイス、アルコール、食品、印刷インクおよび印刷用消費財、筆記用具、鞄およびハンドバッグのような高級品、スポーツ用品、ソフトウエアおよびソフトウェアパッケージ、不正防止シール、芸術作品(独創的な芸術作品を含む)、建築材料、軍需品、玩具、燃料、産業用装置、生体材料および生活用品、宝石、本、骨董品、安全用物品(例えば、消化器および濾過デバイス)、じゅうたんおよび他の調度品、化学薬品、医療用デバイス、塗料およびコーティング、窓および透明物品を挙げることができる。本発明で製造されるコンポジット材料を担持可能な証明証の例としては、免許証、IDカード(政府、会社、教育用)、パスポート、ビザ、結婚証明書、病院用ブレスレットおよび卒業証書が挙げられる。これらの例は、限定することを意味しておらず、本発明のコンポジット材料を担持可能なデバイスの単なるサンプルを抽出したものである。このような用途は、限定することを意味していない。
【0045】
それに加え、コンポジット材料は、フィルムまたはシートの形態で製造されてもよく、このフィルムまたはシートを、次いで接着剤などを介して物品に塗布する。
【0046】
または、粒子の配列物を、物品の筐体(例えば、電子デバイスの筐体)に直接塗布するか、または、競技用装置、アクセサリー、光学レンズ、光学フレーム、衣類(靴類を含む)などのような商品に直接塗布することによって、物品自体が基板としての役割を果たしてもよい。
【0047】
本発明のコンポジット材料を、物品を証明するため、例えば、書類またはデバイスを証明するため、または、製造品の供給源を特定するために使用してもよい。本発明のコンポジット材料を担持した書類(例えば、セキュリティカード)は、コンポジット材料を担持している物品が、そのコンポジット材料の性質を示す(例えば、特定の波長の放射線を特定の強度で回折するという性質のみを単独で示すか、または、これとともに電磁性(例えば、磁性または導電性である)のようなさらなる性質も示す)場合には、本物であると考えられる。「セキュリティカード」は、保有者の身元を証明するか、または設備に入ることを許す書類またはデバイスを含む(例えば、バッジの形態)。セキュリティカードは、カード(例えば、写真付きIDカードまたはパスポート)の所有者を特定してもよく、所有者が、セキュリティ施設に入ることを許されるべきであることをを示す書類またはデバイスとして機能してもよい。例えば、本物であると思われるセキュリティカードを、放射線を回折する性質および電磁気の性質を有するかについて調べてもよい。偽造セキュリティカードは、これらの性質を示すことができない。同様に、本発明のセンサを担持する包装の中に提供された物品(例えば、医薬品)の消費者が、その包装について、回折性および電磁気性を試験することによって信ぴょう性を試験することができる。適切に応答しない包装は、偽物であろうと考えられ、この性質を示す包装は、本物であると考えられる。他の消費財は、例えば、製造品(例えば、電子デバイス)の筐体または衣類物品(例えば、靴)の表面に本発明のコンポジット材料を備えていてもよい。
【0048】
コンポジット材料は、さらに、多層構造のコーティング組成物で少なくとも部分的に覆われていてもよい。一実施形態では、コンポジット材料を、上述の「ハードコート」用コーティング組成物でコーティングする。別の実施形態では、コンポジット材料を反射防止性コーティング(例えば、多層反射防止性積層体)で覆う。反射防止性コーティングは、誘電性材料、例えば、金属酸化物(例えば、スパッタリングで蒸着させたZnSnO、InSO、SnO、TiO、In、ZnO、Siおよび/またはBi)で作られていてもよい。
【0049】
以下の例は、本発明の一般的な原理を示すために提示される。本発明は、提示されている特定の実施例に限定されるものではないと考えるべきである。すべての部は、他の意味であると示されていない限り、重量部である。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
ポリスチレン−ジビニルベンゼンコア/スチレン−メタクリル酸メチル−エチレングリコールジメタクリレート−ジビニルベンゼンシェル粒子の水分散物を、以下の手順によって調製した。Aldrich Chemical Company製の炭酸水素ナトリウム3.0グラムを、脱イオン水4100gと混合し、熱電対、加熱マントル、撹拌器、環流コンデンサ、窒素注入口を取り付けた12Lフラスコに入れた。この混合物を撹拌しながら窒素を40分間流し、次いで、窒素で覆った。界面活性剤エアロゾルMA80−I(19g(Cytec Industries,Inc.製)、スチレンスルホン酸ナトリウム塩水和物2.5g、Brij(登録商標)35溶液8.0g(どちらもAldrich Chemical Company,Inc.製)、脱イオン水410g中)を、撹拌しつつ上述の混合物に加え、次いで、脱イオン水48gで洗浄した。その後、Aldrich Chemical Company,Inc.製のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート8.0gを加えた。加熱マントルを用い、この混合物を約50℃まで加熱した。Aldrich Chemical Company,Inc.から入手可能なスチレンモノマー(720g)、ジビニルベンゼン(20.0g)を撹拌しつつ加えた。この混合物を60℃まで加熱した。Aldrich Chemical Company,Inc.製の過硫酸ナトリウム(脱イオン水144g中、12.0g)を、上述の混合物に撹拌しつつ加えた。混合物の温度を40分間一定に保った。撹拌しつつ、別個の容器に、ジビニルベンゼン200.0g、Brij(登録商標)35 1.0g、スチレン100.0g、スチレンスルホン酸ナトリウム塩水和物1.0gを、脱イオン水300.0gと混合し、加熱した。この混合物に、脱イオン水(1000g)、スチレンスルホン酸ナトリウム塩水和物(4.5g)、Brij(登録商標)35(6.0g)、過硫酸ナトリウム(3.0g)、スチレン(150.0g)、メタクリル酸メチル(200.0g)、エチレングリコールジメタクリレート(35.0g)(すべてAldrich Chemical Company,Inc.から入手可能)を加え、500rpmで40分間撹拌した。上述のフラスコに、これを加え、脱イオン水100.0gですすぎ入れた。温度を約60℃に4.0時間維持した。得られたポリマー分散物を5ミクロンフィルターバッグで濾過した。次いで、このポリマー分散物を、2.41インチのポリフッ化ビニリデン膜を有する4インチ限外濾過ハウジング(両方とも、PTI Advanced Filtration,Inc.、Oxnard、CAから入手可能)で限外濾過し、蠕動ポンプを用いて流速約170ml/秒で押し出した。限外濾液3000gを除去した後、分散物に脱イオン水(3000g)を加えた。限外濾液8686.0gが脱イオン水8683.0gに置き換わるまで、上述の置き換えを数回繰り返した。次いで、混合物の固形分が40.7重量%になるまで、さらに限外濾液を除去した。この物質をFrontier industrial Technology,Inc.(Towanda、PA)製のスロット−ダイ塗工機でポリエチレンテレフタレート基板に塗布し、180°Fで30分間乾燥させ、乾燥時の厚みが約10ミクロンの多孔性物質とした。
【0051】
配列物の格子間の空隙を、Sigma−Aldrich Corporation(Milwaukee、WI)製の3%ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンの50/50ブレンド、Sartomer Company,Inc.(Exton、PA)製の97%の親水性モノマーであるエトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレートの混合物で満たした。得られたフィルムは、可視光を474nmで反射率25.3%で回折した。
【0052】
(実施例2)
75容積%のオルトケイ酸テトラメチル(TMOS)(Gelest,Inc.、Morrisville,PAから入手可能)および25容積%のメタノール(Honeywell Burdick and Jackson製のHPLCグレード品)を含む溶液をビーカー内で調製した。実施例1で得たフィルムの一部分を、TMOS/メタノール溶液を含む上述のビーカーに入れ、約1分間浸した。次いで、このフィルムをTMOS/メタノール溶液から取り出し、NHOHの15%水溶液(30%NHOH、Sigma−Aldrich Corporation(Milwaukee、WI)から入手可能)に約30秒間入れた。このフィルムを上述の塩基性溶液からとりだし、脱イオン水に2分間浸し、取り出して乾燥させた。得られたフィルムは、可視光を483nmで反射率29.2%で回折した。
【0053】
(比較例3)
実施例1で調製したフィルムの一部分を、Sigma−Aldrich Corporation(Milwaukee、WI)製の3%ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンの50/50ブレンド、48.5%の1,4−ブタンジオールジアクリレートおよび48.5%のエトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート(両方とも、Sartomer Company,Inc.、Exton、PAから入手可能)の混合物で処理した。次いで、UV硬化させた。得られたフィルムは、500nmの光を反射率32.1%で回折した。
【0054】
(比較例4)
本実施例は、実施例2で製造したフィルムの一部分を使用した以外は、比較例3と同じ様式で調製した。得られたフィルムは、511nmの光を反射率38.3%で回折した。
【0055】
実施例の結果を表1に列挙している。
【0056】
【表1】

実施例2で、上述の材料の透過型電子顕微鏡図を図3に複写している。注入されたシリカ粒子は、有機粒子の層の間に見られる。実施例1および2のデータの比較は、反射率が増加していること、および反射放射線が赤色側にシフトしていることは、注入されたシリカの存在によるものであることを実証している。さらに、実施例1および2の有機粒子の膨潤は、比較例3および4で、波長がさらにシフトし、反射率が上がっていることから実証されるように、アクリレートモノマーを加え、次いで硬化することによって達成することができる。
【0057】
本発明の好ましい実施形態を上に記載したが、本発明の明らかな改変および変形は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、なされてもよい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物で定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1粒子と第2粒子とが交互に重なった層を備え、該第1粒子が、規則的な周期的配列で整列しており、かつ、マトリックス組成物中に保持されており、該第2粒子が、該配列または該マトリックス組成物、または両者の中に入っている、多層コンポジット材料。
【請求項2】
前記第1粒子が有機ポリマー粒子を含み、前記第2粒子が無機粒子を含む、請求項1に記載の多層コンポジット材料。
【請求項3】
前記有機ポリマー粒子が、ポリスチレン、アクリル系ポリマー、ポリウレタン、アルキドポリマー、ポリエステル、シロキサン含有ポリマー、ポリスルフィドおよび/またはエポキシ含有ポリマーを含む、請求項2に記載の多層コンポジット材料。
【請求項4】
前記有機ポリマー粒子が、コアを備えており、該コアが、該コアとは異なる組成を有するシェルで取り囲まれている、請求項2に記載の多層コンポジット材料。
【請求項5】
前記無機粒子が、前記有機ポリマー粒子のシェル中に配置されている、請求項4に記載の多層コンポジット材料。
【請求項6】
前記有機材料ポリマー粒子が単一構造を有する、請求項2に記載の多層コンポジット材料。
【請求項7】
前記無機粒子が、前記マトリックス組成物中に配置されている、請求項6に記載の多層コンポジット材料。
【請求項8】
前記無機粒子が金属を含む、請求項2に記載の多層コンポジット材料。
【請求項9】
前記金属が金属酸化物である、請求項8に記載の多層コンポジット材料。
【請求項10】
前記金属が、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄および/または銀である、請求項9に記載の多層コンポジット材料。
【請求項11】
マトリックス組成物中に保持された、コンポジット粒子の規則的な周期的配列を備えており、該コンポジット粒子が、ポリマー系有機部分と無機部分とを含む、多層コンポジット材料。
【請求項12】
前記無機部分が、前記コンポジット粒子の有機部分の反対側に配置されている、請求項11に記載の多層コンポジット材料。
【請求項13】
前記コンポジット粒子が、主成分であるポリマー系有機部分と、マイナー成分である無機部分とを含む、請求項11に記載の多層コンポジット材料。
【請求項14】
前記有機部分が、ポリスチレン、アクリル系ポリマー、ポリウレタン、アルキドポリマー、ポリエステル、シロキサン含有ポリマー、ポリスルフィドおよび/またはエポキシ含有ポリマーを含む、請求項11に記載の多層コンポジット材料。
【請求項15】
前記無機粒子が金属を含む、請求項11に記載の多層コンポジット材料。
【請求項16】
前記金属が、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄および/または銀である、請求項15に記載の多層コンポジット材料。
【請求項17】
マトリックス中に保持された、有機コンポジット粒子の規則的な周期的配列を備える主成分を与える工程と;
該主成分中に、インサイチュで無機粒子を形成させる工程とを包含する、多層コンポジット材料を製造する方法。
【請求項18】
インサイチュで前記無機粒子を形成させる工程が、前記主成分の少なくとも一部を、前記無機粒子に対する前駆体成分を用いて膨潤させる工程と、前記主成分に対して反応性の成分を加え、それによって、該前駆体成分が該無機粒子を形成する工程を包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記無機粒子が金属を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記前駆体成分がアルコキシシランを含み、前記無機粒子がシリカを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記有機ポリマー粒子が、ポリスチレン、アクリル系ポリマー、ポリウレタン、アルキドポリマー、ポリエステル、シロキサン含有ポリマー、ポリスルフィドおよび/またはエポキシ含有ポリマーを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(a)マトリックス組成物中に保持された、有機ポリマー粒子の規則的な配列を備える第1成分と;
(b)該第1成分中に注入された無機粒子相を含む第2成分とを含む、コンポジット材料。
【請求項23】
前記無機粒子相の粒径が1000ナノメートル未満である、請求項22に記載のコンポジット材料。
【請求項24】
前記無機粒子相が金属を含む、請求項22に記載のコンポジット材料。
【請求項25】
前記金属が、ケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、鉄および/または銀である、請求項24に記載のコンポジット材料。
【請求項26】
前記金属が金属酸化物である、請求項24に記載のコンポジット材料。
【請求項27】
前記有機ポリマー粒子が、ポリスチレン、アクリル系ポリマー、ポリウレタン、アルキドポリマー、ポリエステル、シロキサン含有ポリマー、ポリスルフィドおよび/またはエポキシ含有ポリマーを含む、請求項22に記載のコンポジット材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−524936(P2011−524936A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514642(P2011−514642)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/040753
【国際公開番号】WO2009/154857
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】