説明

多層シートの製造方法および多層フィルムの製造方法

【課題】 多層フィルムの厚み分布をフィルムの幅方向に制御でき、フィルムの幅方向に亘り各層の厚み分布を均一な多層フィルムを生産できる多層フィルムの製造方法および装置を提供する。
【解決手段】 樹脂Aと樹脂Bとを別個に押出機で溶融し、樹脂Aと樹脂Bが交互に5層以上流入するよう多層フィードブロックの中の合流ブロックに導き、合流ブロックに導かれた樹脂Aと樹脂Bとを合流させ、多層フィードブロックに続くダイよりシート状に押出し、樹脂Aと樹脂Bが厚み方向に多層となる向きで交互に5層以上積層された多層シートとする多層シートの製造方法において、合流ブロックには個々の扁平な流路を形成する隔壁で区分された扁平な流路が設けられ、A層およびB層の各層の厚みがフィルムの幅方向で均一になるように個々の扁平な流路の樹脂の流入方向の隔壁の長さLが設定されていることを特徴とする多層シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層フィルムの製造方法および装置に関する。更に詳しくは、5層以上積層された多層フィルムの各層厚み分布を幅方向に均一にできる、または各層の厚み分布を厚み方向にも幅方向にも積極的に制御することができる多層フィルムの製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多層フィルムは、例えば屈折率の高い層と低い層を交互に多数積層すると、これら層間の構造的な光干渉によって特定波長の光を選択的に反射または透過する光学干渉フィルムとなる。このような積層フィルムは選択的に反射または透過する光の波長領域を可視光領域とすることによって、反射型の偏光板や発色フィルム、金属光沢フィルム、反射ミラーフィルムへの用途が広がりつつある。例えば赤色の発色フィルムであれば波長が650nm近辺を選択的に反射するように各層厚みを調整すれば良い。また、プラズマディスプレイ等の映像表示パネル面に使用できる近赤外線反射フィルムでは、周辺機器への誤作動防止のため、ある幅を持った波長領域(820〜980nm)で近赤外線を反射する必要がある。また、日射カット用の窓張り用フィルム等でも近赤外領域をカットすることで日射を和らげられる。
【0003】
共押出フィードブロックを用い多層フィルムを製造するにあたり例えば、米国特許第3557265号公報や米国特許第4627138号公報に製造方法が、また米国特許第3884606号公報に製造装置が開示されている。しかしこれらの装置および方法を用いても、フィルムの幅方向に亘り各層の厚み分布を均一に押し出すことができない。これはダイの中で各層の積層状態に変化が起こるためフィルム幅方向の各ポイントで層厚みの分布に変化が起きていると考えられる。
【0004】
また、米国特許第5389324号公報に、各層の厚みに分布をつける方法及び装置が開示されている。この方法では各層の厚み分布を任意に調整できるが、ダイの中でフィルムの幅方向に意図しない各層厚みの変化があった場合、この変化を調整できない問題がある。
【0005】
【特許文献1】米国特許第3557265号公報
【特許文献2】米国特許第4627138号公報
【特許文献3】米国特許第3884606号公報
【特許文献4】米国特許第5389324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上述の問題を解消し、多層フィルムの厚み分布をフィルムの幅方向に制御でき、フィルムの幅方向に亘り各層の厚み分布を均一な多層フィルムを生産できる多層フィルムの製造方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、本発明によれば、樹脂Aと樹脂Bとを別個に押出機で溶融し、樹脂Aと樹脂Bが交互に5層以上流入するよう多層フィードブロックの中の合流ブロックに導き、合流ブロックに導かれた樹脂Aと樹脂Bとを合流させ、多層フィードブロックに続くダイよりシート状に押出し、樹脂Aと樹脂Bが厚み方向に多層となる向きで交互に5層以上積層された多層シートとする多層シートの製造方法において、合流ブロックには個々の扁平な流路を形成する隔壁で区分された扁平な流路が設けられ、A層およびB層の各層の厚みがフィルムの幅方向で均一になるように個々の扁平な流路の樹脂の流入方向の隔壁の長さLが設定されていることを特徴とする多層シートの製造方法により達成できる。
【0008】
本発明において、各層の厚み分布をより均一にするために、個々の扁平な流路の樹脂の流入方向の隔壁の長さLが実質的に線形に変化して設定されていることが好ましく、個々の扁平な流路のうちとなりあう樹脂Aの流路および/またはとなり合う樹脂Bの流路の体積が徐々に変化していることが好ましい。
【0009】
本発明の製造方法で得られた多層シートはキャスティングドラムで冷却固化して未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムを縦方向及び横方向の少なくとも一方向に延伸して多層フィルムとすることができる。この多層フィルムは、A層の厚みおよびB層の厚みがフィルム幅方向に実質的に均一であり、多層フィルムの各層の厚みは好ましくは0.01〜0.5μmである。
【0010】
本発明はまた多層フィードブロックに関する。すなわち本発明によれば上記の多層シートの製造方法に用いる、個々の扁平な流路を形成するべく隔壁で区分された扁平な流路が設けられ個々の扁平な流路は樹脂の流入方向の隔壁の長さLが変化していることを特徴とする合流ブロックを備えた多層フィードブロックが提供され、さらに個々の扁平な流路の中での樹脂の流入方向の隔壁の長さLが実質的に線形に変化している上記多層フィードブロック、特に個々の扁平な流路を形成するべく隔壁で区分された扁平な流路が設けられ、となりあう樹脂Aの流路および/またはとなり合う樹脂Bの流路の体積が徐々に変化している上記多層フィードブロックが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、合流ブロックの個々の流路の中で流路長さを調整することで、各層の厚みを幅方向に均一化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。説明の便宜上図面を引用する。
図1は、本発明の一つの実施形態を例示した多層フィードブロックの合流ブロックの斜視図である。図2は図1の扁平な流路を例示しており、図2(a)は樹脂Aの流路、図2(b)は樹脂Bの流路を示している。図3、図4(a)、図4(b)は従来の多層フィードブロックの説明の図である。図5は、本発明の一つの実施形態を例示した正面図であり多層フィルムの押出装置のうち押出機からキャスティングドラムまでを示している。
【0013】
多層フィルムの押出装置は、樹脂Bの流れ方向の上流側から順に押出機1、ギアポンプ2、フィルター3、ポリマーパイプ4a、同様に樹脂Aの流れ方向の上流側から順に押出機5、ギアポンプ6、フィルター7、ポリマーパイプ4bとなっており、多層フィードブロック9の内部で2つの溶融樹脂を合流させ単層ダイ10からシート状に溶融樹脂11を多層シートとして押し出し、キャスティングドラム8で冷却する構成となっている。
【0014】
本発明において、A層とB層が交互に重ねられた多層フィルムは次の様に積層できる。すなわち、図5のようにポリマーパイプ4bでフィードブロック9に導かれたA層用の溶融樹脂Aは図示省略したマニホールド内で一旦幅方向に広げられ図1のように一列に並んだ扁平な流路27に対し、22の方向から流入し23の方向へ押出される。一方、B層用の溶融樹脂Bは図5のようにポリマーパイプ4aでフィードブロック9に導かれ図示省略したマニホールド内で一旦幅方向に広げられ、図1のように一列に並んだ扁平かつ90度にターンした流路25に対し、21の方向から流入し23の方向へ押出される。合流ブロック20の内部ではすでに樹脂Aと樹脂Bとが隔壁を介して交互に配置され、合流ブロックの出口で各溶融樹脂が流動状態で接触し交互に積層されダイ10へと導かれる。
【0015】
本発明においては次のように各層の厚みをフィルム幅方向に制御することができる。図9は従来のフィードブロック(図3)を使用したときのフィルム断面の各層厚み分布を示しており、FE側では表層が薄くBE側では比較的各層厚みが均一となる場合を例示している。これは図5のダイ10に示すように、ダイのFE側とBE側で樹脂の流れる経路が異なるためと考えられる。図9の場合、フィルムの光学的な特性がフィルム幅方向に変化してしまうため、図8や図10の様に各層の厚み分布が幅方向に均一であることが好ましく、図1に示すような合流ブロックで解決することができる。すなわち、図1の合流ブロック20においてA層側の樹脂の流路のうち表層側に当たる流路26は図2(a)の様にFE点の流量がBE点の流量より大きくなる様にFEの流路を短くする(L.MIN)。同様に、B層側の樹脂の流路のうち表層側に当たる流路24は図2(b)の様にFE点の流量がBE点の流量より大きくなる様にFEの流路を短くする(L.MIN)。これにより、各層厚みを幅方向に均一にできる。
【0016】
本発明において、合流ブロック20に加工する扁平な流路24、25、26、27の断面形状のうち幅Wは、狭すぎると幅寸法に対して各層流量が敏感に反応するため高精度の加工を要求され、逆に広すぎると流路内で圧が立たないため僅かな外乱で各層流量がばらつきやすいので、0.2〜3mmが好ましく、0.5〜1.5mmがより好ましい。A層側の流路26、27の長さL、LMIN、LMAXは、ワイヤーによる放電加工の関係から長すぎると加工しにくいため、10〜120mmが好ましく、30〜90mmがより好ましい。B層側の流路24、25の長さL、LMIN、LMAXは放電電極をスタンピングして掘り込むためこれも深いと加工がしにくいため5〜100mmが好ましく、10〜60mmがより好ましい。各層厚みをフィルム幅方向に制御するため、LMINとMAXの長さを調整方法は、例えば図1の掘り込み部28の様に角錐形に掘り込むことで長さを調整する方法を例示できる。図2(a)および図2(b)ではLMINからLMAXに至る流路の長さが線形に変化する場合を例示しているが、この他に線形の組み合わせ、曲線やステップ状、曲線と線形の組み合わせで長さが変化していても良い。また図6の掘り込み部36の様に、掘り込みの深さがブロックの幅方向に変化するように掘り込み、となりあう個々の扁平な流路の体積を徐々に変化させることによって各層の幅方向の厚み分布を独立にかつ精密に修正し、図8や図10に示すフィルムを製造できる。また各層厚みをフィルム幅方向に制御する方法としては、例えば図2(a)において加工に時間を要するが流路幅Wを高さHの方向に徐々に変化させることも可能であり、流路長さを変える方法と組み合わせても良い。
【0017】
以上で判るとおり、フィードブロック9を構成する合流ブロック20、31は高精度で複雑な加工が必要であり材質としては硬めのSUS630やSUS420(J2)が好適である。
【0018】
本発明におけるA層とB層の積層状態は、A層とB層を交互に総数で5層以上、好ましくは31層以上積層したものである。積層数が5層未満だと多重干渉による選択反射が小さく十分な反射率が得られない。尚、積層数の上限はフィードブロックの製作上の観点から301層であることが好ましい。多層積層フィルムの層数に応じて個々に専用フィードブロックを用意しても良いが、必要層数に応じて扁平な流路の樹脂入り口を塞ぐインナーディッケルを挿入し層数をコントロールする方がコストの面で有利である。
また、A層およびB層はそれぞれ1層の厚みは0.01〜0.5μmであることが層間の光干渉によって選択的に光を反射するのに必要である。
【0019】
本発明における多層積層フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主とするA層を形成する樹脂と、B層を形成するイソフタル酸を共重合成分とするポリエチレンテレフタレートを図に例示したフィードブロックで2層を交互に積層し、積層状態を維持したままこれに続くダイに展開される。ダイより押出されたシートはキャスティングドラムで冷却固化され未延伸フィルムとなる。未延伸フィルムは所定の温度で、縦かつまたは横方向に延伸され所定の温度で熱処理され、必要によっては熱弛緩処理され、巻き取られる。
【0020】
ところで、本発明の多層積層フィルムは少なくとも1方向に延伸され、好ましくは2軸延伸されているが、例示したようにA層側に高屈折率のポリマーを選定する場合は、延伸温度はA層の樹脂のガラス転移点(Tg)から(Tg+50)℃の範囲で行うことが好ましい。延伸倍率としては1軸延伸の場合、2〜10倍で延伸方向は縦であっても横でも構わない。2軸延伸の場合は面積倍率として5〜25倍である。延伸倍率が大きいほど、A層およびB層の個々の層における面方向のばらつきが、延伸による薄膜化により絶対的に小さくなり、多層積層フィルムの光干渉が面方向に均一になるので好ましい。延伸方法としては、逐次2軸延伸、同時2軸延伸、チューブラー延伸、インフレーション延伸等の公知の延伸方法が可能であるが、好ましくは逐次2軸延伸が生産性、品質の面で有利である。また、延伸されたフィルムは熱的な安定化のために、熱処理により安定化されるのが好ましい。
また本発明の多層積層フィルムの製造過程、または製造後にフィルムの表面に機能性を持たせる等の目的で、塗液を塗布し乾燥する工程を設けても良い。
【0021】
本発明においてA層またはB層を構成する樹脂はさらに以下を例示することができる。延伸可能なポリマーを主成分とする熱可塑性樹脂であり、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのような芳香族ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリスチレンのようなポリビニル、ナイロン6(ポリカプロラクタム)、ナイロン66(ポリ(ヘキサメチレンジアミン−co−アジピン酸))のようなポリアミド、ビスフェノールAポリカーボネートのような芳香族ポリカーボネート、ポリスルフォン等の単独重合体或いはこれらの共重合体を主成分とする樹脂を挙げることができる。また例示した樹脂の混合体であってもよい。共重合体を使用する場合、その共重合成分はジカルボン酸成分であってもグリコール成分であっても良く、ジカルボン酸成分としては例えばイソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の如き芳香族ジカルンボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等を挙げることができ、グリコール成分としては例えばブタンジオール、ヘキサンジオール等の如き脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等を挙げることができる。
【0022】
本発明において、A層またはB層を構成する樹脂の少なくとも一方は、フィルムの巻き取り性を向上させるため、平均粒径が好ましくは0.01〜2μm、より好ましくは0.05〜1μm、最も好ましくは0.1〜0.3μmの範囲にある不活性粒子を好ましくは0.001〜0.5重量%、より好ましくは0.005〜0.2重量%の割合で含有する。不活性粒子の平均粒径が0.01μm未満または含有量が0.001重量%未満ではフィルムの巻き取り性向上が不十分になりやすく、他方、不活性粒子の平均粒径が2μmを超えるまたは含有量が0.5重量%を越えると粒子による光学特性の悪化が顕著になりやすく、フィルム全体の光線透過率が減少する場合がある。このような不活性粒子としては例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、カオリン、タルクのような無機不活性粒子、シリコーン、架橋ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のような有機不活性粒子をあげることができる。
【0023】
本発明では、樹脂Aと樹脂Bの2種類の組み合わせを例示しているが、各層厚みの分布をフィルム幅方向に制御する観点では、さらに樹脂Cや樹脂Dを組み合わせても問題なく適用できる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例によって本発明を更に説明する。尚、例中の性能は下記の方法で測定した。
(1)各層の厚み
多層フィルムサンプルを三角形に切り出し、包理カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包理する。そして、包理されたサンプルをミクロト−ム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚みの薄膜切片にしたあと、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電子100kvにて観察・投影し、写真から各層の厚みを測定した。
(2)幅方向の厚み分布の評価
測定点は2軸延伸フィルムの両エッジから約50mmの位置をそれぞれ、FE、BEとした。厚み方向には、最表層から5層目を表層、中央を芯層とし、FEとBEの厚みの差を評価した。
○:厚みの差(FE−BE)の絶対値が10nm以下である
×:厚みの差(FE−BE)の絶対値が10nmを超えている
【0025】
[実施例1]
まず図1と図2(a)、図2(b)、図5に示す装置を用い、合流ブロック20のうちA層の流路を101個、B層の流路を100個とし201層の多層フィルムを製膜した。A層の流路26は15個ずつ合計30個とし、幅W=2mm、長さLMIN=55mm、長さLMAX=63mm、A層の流路27は個数が71個、幅W=2mm、長さLが65mmとした。B層の流路24は、15個ずつ合計30個とし、幅W=1.5mm、長さLMIN=18mm、長さLMAX=28mm、B層の流路25は個数が70個、幅W=1.5mm、長さLが30mmとした。
【0026】
また、樹脂は固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)と固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)を準備した。そして、PENに真球状シリカ粒子(平均粒径:0.12μm、長径と短径の比:1.02、粒径の平均偏差:0.1)を0.11wt%添加したものをA層用の樹脂とし、不活性粒子を含まないPENとPETを30:70の重量比で混合したものをB層用の樹脂として調整した。
【0027】
A層用の樹脂を170℃で3時間、B層用の混合樹脂を160℃で3時間乾燥後、A層用押出機5とB層用押出機1に夫々供給して溶融し、溶融した樹脂Aと樹脂Bを多層フィードブロック9内に導き、多層フィードブロック内の合流ブロック20でA層の樹脂を101層、B層の樹脂を100層に分岐させた後、合流部ブロックの出口でA層とB層を交互に積層させ、その積層状態を維持したままダイ10ヘと導き、キャスティングドラム上にキャストしてA層とB層が交互に積層された201層の積層未延伸フィルムを作成した。
【0028】
この未延伸積層シートを縦方向に3.5倍、次いで横方向に4.0倍延伸し、さらに熱固定処理を行った後、フィルムの両エッジをトリミングし、幅が約1000mm、厚み約18μmの2軸延伸フィルムを作成した。得られた多層フィルムの各層厚みを表1に示す。尚、得られたフィルムは波長620nmを選択的に反射でき、目視で赤色に見えるものであった。
【0029】
[実施例2]
まず図6と図7(a)〜図7(d)、図5に示す装置を用い、合流ブロック31のうちA層の流路を101個、B層の流路を100個とし201層の多層フィルムを製膜した。A層の流路は両端の流路34の2個が、幅W=2mm、長さLMIN=56mm、長さLMAX=60mm、中央の流路35の1個が、幅W=2mm、長さLMIN=60mm、長さLMAX=64mm、B層の流路は両端の流路32の2個が、幅W=1.5mm、長さLMIN=24mm、長さLMAX=28mm、中央の流路33の2個が、幅W=1.5mm、長さLMIN=26mm、長さLMAX=28mmとし、A層とB層の流路は両端から中央へは徐々に長さが変化するよう掘り込み分36を掘り込んだ。
【0030】
また、真球状シリカ粒子を添加したPETをA層用、不活性粒子を含まないイソフタル酸を12mol%共重合したPET共重合体をB層用樹脂とした以外は実施例1と同様に多層フィルムを得た。得られた多層フィルムの各層厚みを表1に示す。
【0031】
[実施例3]
実施例2で用いたフィードブロックでA層の流路は両端の流路34の2個が、幅W=2mm、長さLMIN=46mm、長さLMAX=50mm、中央の流路35の1個が、幅W=2mm、長さLMIN=60mm、長さLMAX=64mm、B層の流路は両端の流路32の2個が、幅W=1.5mm、長さLMIN=14mm、長さLMAX=18mm、中央の流路33の2個が、幅W=1.5mm、長さLMIN=26mm、長さLMAX=28mmとし、A層とB層の流路のうち両端から中央へは徐々に長さが変化するよう掘り込み分36を掘り込んだ。これら以外は実施例2と同様に多層フィルムを得た。得られた多層フィルムの各層厚みを表1に示す。
【0032】
[比較例1、2]
図3、図4(a)、図4(b)、図5に示す装置で、A層の流路27としては、個数が101個、幅Wが2mm、長さLが60mm、B層の流路25としては、個数が100個、幅Wが1.5mm、長さLが30mmとした。これら以外は実施例1、2と同様に多層フィルムを得た。得られた多層フィルムの各層厚みを表1に示す。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は多数の層が積層された多層フィルム、特に超多層フィルムの製造に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一つの実施形態を示す多層フィードブロックの合流ブロックの斜視図である。
【図2】(a)は本発明の一つの実施形態を示す合流ブロック20のA層樹脂が通る扁平な流路の斜視図であり、(b)は本発明の一つの実施形態を示す合流ブロック20のB層樹脂が通る扁平な流路の斜視図である。
【図3】従来のフィードブロックの合流ブロックの斜視図である。
【図4】(a)は従来の合流ブロック30のA層樹脂が通る扁平な流路の斜視図である。(b)は従来の合流ブロック30のB層樹脂が通る扁平な流路の斜視図である。
【図5】本発明の一つの実施形態において、押出機、多層フィードブロック、ダイ、冷却ドラム等の配置を示す正面図である。
【図6】本発明の一つの実施形態を示す多層フィードブロックの合流ブロックの斜視図である。
【図7】(a)は本発明の一つの実施形態を示す合流ブロック31の表層に対応するA層樹脂が通る扁平な流路の斜視図である。(b)は本発明の一つの実施形態を示す合流ブロック31の芯層に対応するA層樹脂が通る扁平な流路の斜視図である。(c)は本発明の一つの実施形態を示す合流ブロック31の表層に対応するB層樹脂が通る扁平な流路の斜視図である。(d)は本発明の一つの実施形態を示す合流ブロック31の芯層に対応するB層樹脂が通る扁平な流路の斜視図である。
【図8】多層フィルム断面の各層厚みの分布が幅方向に均一な場合の図である。
【図9】多層フィルム断面の各層厚みの分布が幅方向に不均一な場合の図である。
【図10】多層フィルム断面の各層厚みの分布が厚み方向には分布しているが、幅方向に均一な場合の図である。
【図11】多層フィルム断面の各層厚みの分布が幅方向に不均一な場合の図である。
【図12】図3の矢視Cの図であり、合流ブロックの出口の図である。
【符号の説明】
【0036】
1:B層用の押出し機
2:B層用のギアポンプ
3:B層用のフィルター
4a、4b:ポリマーパイプ
5:A層用の押出し機
6:A層用のギアポンプ
7:A層用のフィルター
8:キャスティングドラム
9:多層フィードブロック
10:ダイ
11:未延伸フィルム
20:合流ブロック
21:B層樹脂の流れ方向
22:A層樹脂の流れ方向
23:合流後の樹脂の流れ方向
24:B層樹脂が通る扁平な流路(長さ変化)
25:B層樹脂が通る扁平な流路(長さ一定)
26:A層樹脂が通る扁平な流路(長さ変化)
27:A層樹脂が通る扁平な流路(長さ一定)
28:掘り込み部
31:合流ブロック
32:最表層に対応するB層樹脂が通る扁平な流路
33:芯層に対応するB層樹脂が通る扁平な流路
34:最表層に対応するA層樹脂が通る扁平な流路
35:芯層に対応するA層樹脂が通る扁平な流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂Aと樹脂Bとを別個に押出機で溶融し、樹脂Aと樹脂Bが交互に5層以上流入するよう多層フィードブロックの中の合流ブロックに導き、合流ブロックに導かれた樹脂Aと樹脂Bとを合流させ、多層フィードブロックに続くダイよりシート状に押出し、樹脂Aと樹脂Bが厚み方向に多層となる向きで交互に5層以上積層された多層シートとする多層シートの製造方法において、合流ブロックには個々の扁平な流路を形成する隔壁で区分された扁平な流路が設けられ、A層およびB層の各層の厚みがフィルムの幅方向で均一になるように個々の扁平な流路の樹脂の流入方向の隔壁の長さLが設定されていることを特徴とする多層シートの製造方法。
【請求項2】
個々の扁平な流路の樹脂の流入方向の隔壁の長さLが実質的に線形に変化するように設定されている、請求項1記載の多層シートの製造方法。
【請求項3】
個々の扁平な流路のうちとなりあう樹脂Aの流路および/またはとなり合う樹脂Bの流路の体積が徐々に変化している、請求項1記載の多層シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1で得られた多層シートをキャスティングドラムで冷却固化して未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムを縦方向及び横方向の少なくとも一方向に延伸して多層フィルムとする多層フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法で得られた多層フィルムであって、A層の厚みおよびB層の厚みがフィルム幅方向に実質的に均一である多層フィルム。
【請求項6】
多層フィルムの各層の厚みが0.01〜0.5μmである請求項5記載の多層フィルム。
【請求項7】
請求項1記載の多層シートの製造方法に用いる、個々の扁平な流路を形成するべく隔壁で区分された扁平な流路が設けられ、個々の扁平な流路は樹脂の流入方向の隔壁の長さLが変化していることを特徴とする合流ブロックを備えた多層フィードブロック。
【請求項8】
個々の扁平な流路の中での樹脂の流入方向の隔壁の長さLが実質的に線形に変化している、請求項7記載の多層フィードブロック。
【請求項9】
請求項1記載の多層シートの製造方法に用いる、個々の扁平な流路を形成するべく隔壁で区分された扁平な流路が設けられ、となりあう樹脂Aの流路および/またはとなり合う樹脂Bの流路の体積が徐々に変化している、請求項7または8記載の多層フィードブロック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−159537(P2006−159537A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352552(P2004−352552)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】