多層フィルムの製造方法およびフィードブロック
【課題】エッジ単層部を有する多層フィルムを、各樹脂間の境界を簡便にシャープにできる製造方法およびそれに用いるフィードブロックの提供。
【解決手段】単層ダイの上流側に樹脂Aを多層部用樹脂Aとエッジ部用樹脂Aとに分岐させる分岐部と、多層部用樹脂Aと樹脂Aとは異なる樹脂Bとを溶融状態で合流させて積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの幅方向の両端部に前記エッジ部用樹脂Aを溶融状態で付加して積層体Dを形成する第2の合流部とを有するフィードブロックを用い、前記第1の合流部における樹脂Bの平均速度と多層部用樹脂Aの平均速度の合流流速比が0.5〜2.0、前記第2の合流部における積層体Cの平均速度と、エッジ部用樹脂Aの平均速度の合流速度比が0.5〜2.0である多層フィルムの製造方法とフィードブロック。
【解決手段】単層ダイの上流側に樹脂Aを多層部用樹脂Aとエッジ部用樹脂Aとに分岐させる分岐部と、多層部用樹脂Aと樹脂Aとは異なる樹脂Bとを溶融状態で合流させて積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの幅方向の両端部に前記エッジ部用樹脂Aを溶融状態で付加して積層体Dを形成する第2の合流部とを有するフィードブロックを用い、前記第1の合流部における樹脂Bの平均速度と多層部用樹脂Aの平均速度の合流流速比が0.5〜2.0、前記第2の合流部における積層体Cの平均速度と、エッジ部用樹脂Aの平均速度の合流速度比が0.5〜2.0である多層フィルムの製造方法とフィードブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの幅方向にエッジ部用樹脂A部を有する多層フィルムの製造方法およびそれに用いるフィードブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多層製品部の両エッジを単層とし、エッジ単層部にフィルムの回収屑を投入してコストダウンすることが行われている。例えばポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる多層フィルムは優れた機械特性を有するが高価であるため、エッジ単層化が有効である。
【0003】
エッジを単層化する装置としては、特許文献1に複数の樹脂を用いて多層とし、そのうちの或る樹脂を合流樹脂流路の両端部へ流量調整可能にして流し込むエッジ単層の多層化装置が開示されている。しかし、単にエッジへの流量を調整してエッジ単層の巾を調整するだけでは例えば図6に示す層構成のように多層部とエッジ単層部との境界22a、22bがシャープにならず丸まってしまい、またその修正方法の開示がないため、エッジをトリミングして回収する際にフィルム屑由来の層以外の部分を余分にトリミングしてエッジ回収に回ってしまい、あるいは多層製品部の巾Wpが狭くなってしまいコストダウンを追及できない課題があった。さらに、多層部はスリット設定部材を移動させる構造で、滞留部に劣化樹脂が溜まり、筋故障に至る課題があった。
【0004】
一方、特許文献2に、多層合流部に溝付きの円柱状部材を用いエッジ単層とする方法と装置が開示されている。円柱状の部材であれば筋等の故障が生じにくいことがこれまでの経験上判っている。しかし、円柱状の部材の溝巾を有限として単層巾を制御する方式では、異樹脂の接合面積が多いエッジ単層の製膜では前述の多層製品部とエッジ単層部との境界がシャープにならず、またその境界の修正もできない課題があった。また、エッジ単層巾を広げる場合は前述の溝巾を狭くするため、製品多層部の各層の厚み分布が崩れる課題があった。また、前述の円柱状の部材を通る樹脂をエッジ単層側の樹脂に設定することができない課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−262224号公報
【特許文献2】特開2005−279986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エッジ単層部を有する多層フィルムを、各樹脂間の境界を簡便にシャープにできる製造方法およびそれに用いるフィードブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決しようと鋭意研究したところ、単層ダイの上流側に樹脂Aを多層部用樹脂Aとエッジ部用樹脂Aとに分岐させる分岐部と、多層部用樹脂Aと樹脂Bとを溶融状態で合流させて積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの幅方向の両端部に前記エッジ部用樹脂Aを溶融状態で付加して積層体Dを形成する第2の合流部とを有するフィードブロックを用いた多層フィルムの製造方法において、
前記第1の合流部における樹脂Bの平均速度(V12)と多層部用樹脂Aの平均速度(V11)の合流流速比(V12/V11)が0.5〜2.0の範囲であって、
前記第2の合流部における積層体Cの平均速度(V22)と、エッジ部用樹脂Aの平均速度(V21)の合流速度比(V22/V21)が0.5〜2.0の範囲である多層フィルムの製造方法が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、本発明の好ましい態様として、前記積層体Dの製膜方向に直交する断面を見たとき、エッジ部用樹脂Aの割合が面積比で0.05〜0.50の範囲にあること、前記樹脂Aおよび樹脂Bの溶融粘度が、いずれも700poise以上であって、各樹脂の溶融粘度の比の最大値が、1.0〜3.0であることの少なくともいずれかを具備する多層フィルムの製造方法も提供される。
【0009】
さらにまた、本発明によれば、単層ダイの上流側に配置される多層フィルムの製造に用いるフィードブロックであって、樹脂Aを多層部用樹脂Aとエッジ部用樹脂Aとに分岐させる分岐部と、積層部用樹脂Aと樹脂Bとを溶融状態で合流させて積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの幅方向の両端部に前記エッジ部用樹脂Aを溶融状態で付加して積層体Dを形成する第2の合流部とを有し、
前記第1の合流部は、多層部用樹脂Aの流路に流路幅を調整するためのピン部材1があり、前記第2の合流部はエッジ部用樹脂Aの流路に流路幅を調整するためのピン部材2があり、そして前記分岐部と前記ピン部材1との間に、流量を調整するためのピン部材3を有する多層フィルム製造用フィードブロックも提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エッジ単層部を有する多層フィルムを、各樹脂間の境界を簡便にシャープにでき、エッジ単層化によるコストダウンを品質の低下を伴わずに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一つの実施形態を例示した多層フィルムの押出装置のうち押出機からキャスティングドラムまでを示している。
【図2】本発明の一つの実施形態を例示したエッジ単層用フィードブロックの概略図で、第2合流部は断面図で示されている。
【図3】本発明の一つの実施形態を例示したエッジ単層用フィードブロックの概略図で、第1合流部は断面図で示されている。
【図4a】本発明の一つの実施形態を例示した図2の第2合流部の拡大説明図である。
【図4b】本発明の一つの実施形態を例示した図2のF−F断面を正面とした斜視図である。
【図5】本発明により得られた2層エッジ単層の未延伸シートの層構成である。
【図6】従来の技術により得られた2層エッジ単層の未延伸シートの層構成である。
【図7】(a)本発明を説明する3層エッジ単層シートの層構成である。(b)本発明を説明する50層エッジ単層シートの層構成である。
【図8】本発明を説明する2層エッジ単層シートの層構成と厚みのイメージとエッジ境界である。
【図9】本発明の一つの実施形態を例示したピン部材11a,11bの溝の斜視図である。
【図10】本発明を説明する未延伸シートの厚みの測定値である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を引用して本発明を説明する。
図1は、本発明の一つの実施形態を例示した製品部が多層積層され両エッジが単層となるシートまたは延伸フィルム用の押出装置のうち押出機からキャスティングドラムまでを示している。以下、多層積層された製品部が2層の積層を主体に説明するがこれに限定されるものではない。
【0013】
2層シートの押出装置は、2層シートの樹脂Aの流れ方向の上流側に押出機1があり図示を省略するが、ギアポンプ、フィルターを配置しポリマーパイプ2となっている。同様に2層シートの樹脂Bの流れ方向の上流側に押出機3、ギアポンプ、フィルター、ポリマーパイプ4となっている。フィードブロック5は、その内部で、多層部用樹脂Aであるa2と、のちに両エッジ単層部に配置される2つのエッジ部用樹脂Aのa1に分岐し、多層部用樹脂Aと樹脂Bとをまず合流させて積層体Cとし、その積層体Cの幅方向の両端部にエッジ部樹脂Aを合流させて積層体Dとし、単層ダイ6からシート状に未延伸溶融シート8を押し出す構成となっている。ポリエチレンテレフタレートの2軸延伸フィルムであれば、この未延伸溶融シートを図示省略した公知のピンニング方法で例えば静電式やエアチャンバー、ニップロールの方法でキャスティングドラム7に密着冷却させ、未延伸シート8とし、図示しない装置によって縦延伸、および/または横延伸を施す。
【0014】
まずは、フィードブロック5と層厚み分布を均一にする方法について説明する。
図2と3は本発明の一つの実施形態を例示した2層エッジ単層フィードブロックの断面を示している。
フィードブロック5は、多層部用樹脂Aと樹脂Bとを2層積層する第1の合流部を含む5aと、その幅方向の両端部にエッジ部用樹脂Aを付加する第2の合流部を含む5bからなる場合を例示している。樹脂Aはポリマーパイプ2より流入し、多層部用樹脂Aであるa2と、のちに両エッジ単層部に配置される2つのエッジ部用樹脂Aのa1に分岐する。また、樹脂Bはポリマーパイプ4より流入し第1の合流部で多層部用樹脂Aであるa2と溶融積層され積層体Cとなる。この際、多層部用樹脂Aは、図3の第1合流部で、ピン部材3である15と、ピン部材1である16を介して、適切な流れに調整され、樹脂Bと合流する。なお、図3では、多層部用樹脂Aが薄い表層を形成し、樹脂Bが厚い層を形成する形で積層体Cを形成している。このようにして形成された積層体Cは、続いて図2の第2合流部で、ピン部材2である11a、11bを介して一旦ピン部材の溝部12a、12bで絞られ適切な流れに調整されたエッジ部用樹脂Aであるa1合流し、積層体Dを形成し、ダイ6へと導かれる。
【0015】
ところで、図5は本発明の方法でエッジ単層部を設けた2層の未延伸シートの製膜方向に直交する断面の層構成で、図6は、前述のように従来の方法でエッジ単層部を設けた2層の未延伸シートの製膜方向に直交する断面の層構成である。図6は、図5に比べ、エッジ単層部と多層部との境界22aと22bが湾曲し、結果エッジ単層部としてトリミングで除去しなければならない巾が広がっている。本研究者らは、この現象を研究した結果、第2の合流部の合流速度比が要因であることに気づいた。特に、エッジ部用樹脂Aの合流させるときの流速が積層体Cと比べ速い場合に、図6の現象が健在化する。その原因は定かではないが、エッジ部用樹脂Aの流速が速いと、合流の際に積層体Cが壁となって、エッジ部用樹脂Aが積層体Cの厚み方向の両側へはみ出ようとするためと考えられる。
【0016】
なお、一般にエッジの巾は狭く、未延伸シート全巾に対して片側で数%程度の割合である。これは、エッジの巾が広いと、生産はそもそも巾歩留まりが悪くなるからである。そのため、第2の合流部でのエッジ部用樹脂Aは、積層体Cに対して流量が非常に少なく、流路で受ける熱履歴が大きいことから、エッジ部用樹脂Aの流路全域で断面積を小さくして滞留熱劣化を抑制しようとする。その結果、第2合流部におけるエッジ部用樹脂Aの流速は、積層体Aの流速よりも速くなりやすい。また、この傾向は、比較的に製膜速度の遅い延伸後の厚みが300μm程度の厚いフィルムに比べ、製膜速度の速い延伸後の厚みが1μmの薄いフィルムで、より顕著に現れる。これは、製膜速度が速いと、未延伸シート8が高速回転のキャスティングドラム7に引っ張られシートの巾が狭くなる(ネックイン現象)ためと考えられる。すなわち、薄いフィルムでは、見掛けのエッジ巾以上にエッジ部の締める樹脂の割合が多く設計され、第2合流部におけるエッジ部用樹脂Aの流速が、積層体Aの流速よりもより速くなりやすいためと考えられる。そして、本発明者は、上記エッジ部と多層部との境界のシャープ差が、本質的にエッジ部用樹脂Aと積層体Cの合流速度と深い関係にあることに気づき、本発明に到達したのである。
【0017】
図4aは図2の第2の合流部を拡大した図である。また図4bは図2のF−F断面を正面とした斜視図である。エッジ部用樹脂Aはa1の経路で第2合流部に進入し、中央を流れる2層の積層体Cと合流する。なお、本発明において、V21、V22は通過流量をそれぞれの図4bの流路断面積S21、S22で割った値とする。図4bのように巾W21、W22がz方向に均一な場合は、V22/V21=W22/W21となる。また、本発明において、エッジ部用樹脂Aの合流断面14a、14bは合流点Eを通りz軸に平行な断面であって、エッジ部用樹脂Aの流路12a、12bの流路壁面のうち合流点Eを含む側の面に垂直な断面とし、断面積をS21とする。積層体流の断面14cは、2つの合流点Eを含みz軸に平行な断面とし、その断面積をS22とする。
【0018】
なお、本発明におけるx方向とは、積層体Cや積層体Dの巾方向、のちのダイの巾方向もしくはシート、フィルムの巾方向となる方向であり、単に巾方向と称することがある。また本発明におけるy方向とは、フィードブロックでは積層体Cや積層体Dの流れ方向もしくはのちのシート、フィルムの進行方向であり、製膜方向や流れ方向と称することがある。さらにまた、本発明におけるz方向とは、積層体CやDの多層部の積層方向、のちのシートやフィルムの厚み方向もしくはダイのリップ開度方向となる方向で、厚み方向や積層方向と称することがある。
【0019】
<フィードブロック>
本発明の多層フィルム製造用フィードブロックについて、以下、詳述する。
本発明のフィードブロックは、前述の通り、単層ダイの上流側に配置される多層フィルムの製造に用いるフィードブロックであって、樹脂Aを多層部用樹脂Aとエッジ部用樹脂Aとに分岐させる分岐部と、積層部用樹脂Aと樹脂Aとは異なる樹脂Bとを溶融状態で合流させて積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの幅方向の両端部に前記エッジ部用樹脂Aを溶融状態で付加して積層体Dを形成する第2の合流部とを有する。
そして、前記第1の合流部は、積層部用樹脂Aの流路に流路幅を調整するためのピン部材1(16)があり、前記第2の合流部はエッジ部用樹脂Aの流路に流路幅を調整するためのピン部材2(11a、11b)があり、そして前記分岐部と前記ピン部材1との間に、流量を調整するためのピン部材3(15)を有する。
【0020】
本発明において、積層部用樹脂Aは、図3に示すようにピン部材1(16)を介して流れを適切に調整され、樹脂Bと合流させて積層体Aとする。ピン部材1(16)はディストリビューションピンと呼ばれることもあり、本発明では単純な矩形の溝であっても合流流速を前述の範囲とすることで層厚みを均一化できる。または、均一化にいたる溝形状の適正化の試行錯誤を減らすこともできる。ピン部材1(16)は、チョークバーやスリットを形成する多角形部材に比べ、樹脂の滞留劣化を生じにくい。またピン部材1(16)には溝を設け、積層部用樹脂A(a2)を通過させるが、必要に応じて溝を2箇所以上設け、層分布を適正化する形状を一つのピンで複数試すこともできる。また、必要に応じピンを回転させ流路を絞り、さらに流れを適正化することもできる。一方、本発明のフィードブロックでは、同様に第2の合流部でも、同様な理由から図2に示すように流路溝を設けたピン部材2(11a、11b)を用いることが好ましい。
【0021】
本発明のフィードブロックは、さらに前述のピン部材1(16)とは独立に、エッジ部の巾を可変とする流量調整機構として、ピン部材3(15)を有することを特徴とする。ピン部材1(16)を回転させて積層部用樹脂A(a2)の通過流路幅を絞り、エッジ部用樹脂A(a1)の流量、すなわちエッジの巾を調整することも可能であるが、第1の合流部において合流速度の比をある範囲に調整することとの両立が困難である。そのため、図3に示す流量調整機構である絞りピン部材3(15)を有することが必要である。そして、このピン3(15)を回転させて、ピン部材1(16)とは独立に、a1とa2の流量を調整することができる。このピン部材3(15)と、ピン部材1(16)は同じ流路17の延長上に位置することが好ましい。
【0022】
ピン部材3(15)の絞りの機構は、前述のように勘合部や移動部にクリアランスが必要で樹脂の滞留劣化が懸念されることから、可能な限り小さいことが好ましい。そのため、第1の合流部への積層部用樹脂Aの流路は絞られていることが好ましく、狭い流路巾であれば部材が小さくて済み劣化の心配がない。そのため、例えば薄物フィルムであってエッジ単層巾、すなわちエッジ単層部への流量を極めて大きくしたい場合や積層体Aの積層部用樹脂Aの割合を小さくしたい場合に、図3のように第1の合流部へ至るa2の樹脂経路に流量調整機構を設けることは特に効果的である。もちろん、図4のa1の経路にも流量調整機構としてピン部材3と同様なピン部材があってもよく、単層巾を自由に変更でき、かつ本発明の特徴である、第1と第2の合流部における合流速度比もそれぞれ独立にかつ適切に調整できる。
【0023】
本発明において、ピン部材2(11a、11b)、ピン部材3(15)、ピン部材2(16)の溝形状は公知の形状を使用できる。基本的には、樹脂の進行方向に直交する方向に溝巾がどうのように変化させてもよく、一部分に溝がなく流体を閉塞する部分が存在しても良い。特に、本発明において、ピン部材2(11a、11b)によって形成されるエッジ部用樹脂Aの流路巾W21、W22はz方向に均一という容易な形状であってもエッジ境界をシャープにできる事を特徴とするが、前述の巾流路巾が変化していても、後述の要件V22/V21=0.5〜2.0を満足していれば、流路形状の試行錯誤回数を軽減できており、すなわち流路巾の変化が小さくて済むことになり、産業上のメリットは大きい。
【0024】
本発明において、第1の合流部は、2層あるいは3層の合流部がいくつか直列に並ぶ合流部であってもよい、例えば3層合流部が4つ直列に並ぶ場合は製品多層部が3+2+2+2=9層となる場合を例示できる。また、10層以上で幾つかの樹脂を交互に積層するいわゆる超多層では、隔壁で囲まれた狭いスリットを多数並べて溶融樹脂を通過させそのスリットの出口で超多層に積層する方法を例示できる。超多層の場合、前述のV12の算出では隔壁を除く流路断面積を用い、複数の樹脂が通過していても、スリットを通過する全通過樹脂量と各樹脂の溶融密度を通過重量平均した溶融密度から算出する。
【0025】
<多層フィルムの製造方法>
本発明の多層フィルムの製造方法について、以下、詳述する。
本発明の多層フィルムの製造方法は、単層ダイの上流側に樹脂Aを多層部用樹脂Aとエッジ部用樹脂Aとに分岐させる分岐部と、多層部用樹脂Aと樹脂Aとは異なる樹脂Bとを溶融状態で合流させて積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの幅方向の両端部に前記エッジ部用樹脂Aを溶融状態で付加して積層体Dを形成する第2の合流部とを有するフィードブロックを用いる。
【0026】
本発明の多層フィルムの製造方法は、前記第1の合流部における樹脂Bの平均速度(V12)と積層部用樹脂Aの平均速度(V11)の合流流速比(V12/V11)を0.5〜2.0の範囲に、さらに前記第2の合流部における積層体Cの平均速度(V22)と、エッジ部用樹脂Aの平均速度(V21)の合流速度比(V22/V21)を0.5〜2.0の範囲にしたことを特徴とする。このような合流速度比は、前述のフィードブロックで説明した、ピン部材1、ピン部材2、そしてピン部材3を用いることなどで調整できる。
【0027】
本発明において、合流する際の積層体Aの平均流速V22とエッジ部用樹脂Aの平均流速V21の比(V22/V21)が、下限より小さいとエッジ部用樹脂Aの速度が速くエッジ境界が図6の22a、22bのように丸くなり、コストダウン率が下がったり製品有効巾が減る問題がでる。他方、V22/V21が上限より大きいと、エッジ境界が図6の22a、22bとは逆の方向に丸くなったり、絞り部12a、12bでの圧力勾配不足からz方向に均一な流量でエッジ部用樹脂Aを通過させる事ができなくなりエッジ境界のシャープさに問題がでたり、前述の滞留熱劣化の問題がでたりする。
【0028】
本発明において前述のV21は、図8の未延伸シートの断面図においてエッジ単層境界でエッジ部を切り取ってその重量を測り、エッジの密度、及びエッジ部用樹脂Aの溶融密から例えば算出できる。また、V22の流量については、図8の未延伸シートの厚み、層構成、密度から重量を算出し、各樹脂の溶融密度の重量平均の溶融密度を用いV22を算出できる。
【0029】
本発明において、合流速度V12と合流速度V11の比(V12/V11)を合わせる方向にすることで、図6の2層境界21の巾方向の分布が均一となり、先のエッジ単層部のエッジ境界をシャープにすることと1セットで製品部巾Wpを最大にとれコストダウンも図れる。V12/V11が下限より小さいと層厚みの巾方向の分布が悪くなる。他方V12/V11が上限より大きいと2層の境界部が図6の21とは逆の方向に分布したり、樹脂Aの流路断面積が広くとるため流路巾を広げるために径の大きいピン部材16を使うことになり、ピンと本体との勘合部や、シール部での滞留樹脂劣化が問題となる。本発明においてV11とV12の定義は、前述の第2の合流部での定義と同じとする。a2およびbの樹脂の通過流量は、樹脂の供給量と図8の未延伸シートの厚み、及び層構成、シートの密度、溶融密度から算出可能である。
【0030】
本発明の多層フィルムの製造方法は、前記積層体Dの製膜方向に直交する断面を見たとき、エッジ部用樹脂Aの割合が面積比で0.05〜0.50の範囲にあることが好ましい。エッジ部用樹脂Aの割合が上限より大きいとエッジ単層部境界において異樹脂の接合部が少なくエッジ境界のシャープ化のニーズが小さい。換言すれば、上記上限以下であるから、製品多層部のうちフィルム屑を回収リサイクルしたエッジ部用樹脂Aの割合が少ないこととなり、エッジ単層化のニーズが産業上生じる。他方下限より小さいと回収フィルム屑を利用するエッジ部用樹脂Aのフィルム全体への投入量が少なくなり、コスト高のフィルムとなり産業上のメリットが少ない。なお、本発明の製造方法では、2種類以上の樹脂を溶融させて多層に積層し、このうちの一つをエッジ部用樹脂Aとするが、コストダウンを目的としたエッジ単層の多層フィルムでは、エッジ部用樹脂Aにはフィルム屑を回収し再生した樹脂をある割合で使用することが好ましく、それによりフィルム全体として、屑の投入割合が増え、逆に言えばフレッシュな原料の投入割合が減り、生産コストを下げることができる。
【0031】
本発明における樹脂Aと樹脂Bは、熱可塑性樹脂であることが好ましくフィルムへの製膜が可能なものであれば、それ自体公知のものを採用でき、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を用いることができ、特にポリエステル系樹脂(以下、単にポリエステルという)が好ましい。ポリエステルの中でも、ヤング率等の力学的特性を高める場合は、ジオール成分と芳香族ジカルボン酸成分との重縮合によって得られる芳香族ポリエステルが好ましく、かかる芳香族ジカルボン酸成分として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸などの6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸が挙げられ、またジオール成分として、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。これらの中でも、寸法安定性を要求される場合は、エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするものが好ましい。樹脂には、公知の滑剤を含むことができる。また、樹脂Aは一種類だが、樹脂Bは、複数の樹脂を用いて、それぞれで層を形成するようにしてもよい。その場合、各層を構成する樹脂Bが、前述の樹脂Aとの合流速度の関係を満足するようにすれば良い。
【0032】
また、本発明における前記樹脂Aおよび樹脂Bの溶融粘度は、いずれも700poise以上であって、各樹脂の溶融粘度の比は、その最大値が1.0以上3.0以下であることが好ましい。なお、溶融粘度の比は、溶融粘度が最小の樹脂の溶融粘度で、溶融粘度が最大の樹脂の溶融粘度を割った値である。溶融粘度が下限より小さかったり、溶融粘度の比が上限より大きいと、フィードブロックの第1合流部以降で、包み込みと呼ばれる現象が起こり、ダイ内で層厚み分布の変化が起こる。一般に粘度差が大きいほど起こりやすく、それぞれの溶融粘度の絶対値が小さく柔らかいと現象がさらに助長される。
【0033】
本発明の製造方法で製造される多層フィルムが、例えば熱可塑性樹脂からなる二軸配向フィルムである場合、上述の熱可塑性樹脂を溶融状態で押出し、二軸方向に延伸することで製造でき、製膜方法などはそれ自体公知のものを採用することができる。例えば、未延伸シート化、延伸、フィルム屑の回収を、以下、順に説明する。
【0034】
まず、原料である数種類のチップは、スクリューフィーダーやブレンダーである一定の重量割合で混合ブレンドされ、そのチップを必要に応じて一定の時間乾燥し、図1の装置で熱可塑性樹脂の融点(Tm)〜(Tm+50)℃の温度で溶融させダイ6からシート状に押出し20〜70℃のキャスティングドラム7で急冷固化し、未延伸シート8を得る。その後、未延伸シートを常法に従い、一軸方向(縦方向または横方向)に(熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)−10)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向とは直角方向(一段目延伸が縦方向の場合には、二段目延伸は横方向となる)に(Tg)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは4.5〜7.5倍の倍率で延伸する。さらに、必要に応じて、縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。すなわち、2段、3段、4段あるいは多段の延伸を行うとよい。全延伸倍率としては、通常9倍以上、好ましくは10〜35倍、さらに好ましくは12〜30倍である。全横延伸倍率としては2.5〜8.0倍が好ましい。延伸前にフィルムへの付加機能膜を塗工し、延伸、乾燥させても良い。
【0035】
さらに、前記二軸配向多層フィルムは(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、180〜250℃で熱固定結晶化することによって、優れた寸法安定性が付与される。その際、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。前述の説明で、TgおよびTmは2種類以上の樹脂のうち、より高いTg、Tmを有する樹脂の値とする。
【0036】
熱固定された延伸フィルムは、エッジ部をトリミングし、エッジは回収再チップ化系統へと移送する。エッジ単層部の遷移域を回収系統に含むようにトリミングすると製品多層部の厚み斑と巻き姿が良好となる。回収系統では従来の公知である方法、装置を用いることができる。例えば、エッジ部を細かく裁断し必要に応じ乾燥し、再生押出機、フィルター、口金を用いて棒状に溶融押出させさらに水冷固化させ裁断機でサイコロ状にカットし、必要に応じ脱水処理し、再生チップとする。製品部のフィルム屑については、通常エッジ部とは組成がことなるため別系統で回収し前述と同様の手法で再生チップ化できる。図1の押出機、及び/または前述の再生押出機が2軸押出機である場合は、材料の乾燥を省略できる。さらにフィルム屑を直接図1の2軸押出機に投入できる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明では、以下の方法により、その特性を測定および評価した。
【0038】
(1)溶融粘度
ペレットを所定の重量比で混合し、0.1〜1mmのフレーク状に粉砕し、実施例と同じ乾燥条件処理した後、測定した。溶融粘度はせん断速度が10(1/s)の値とした。なお、溶融粘度の測定装置は、島津製作所製フローテスターCF−500を用い、溶融押出温度:280℃、予熱時間:1分、ノズル径:1mm、ノズル長:10mmにて実施した。
【0039】
(2)樹脂の溶融密度の測定
メルトインデックサ F−F01 (株)東洋精機製作所でペレットのMFRから280℃での溶融密度を測定した。
【0040】
(3)固有粘度はPEN系の樹脂はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定した。PET系はオルトクロロフェノール、35℃とした。
【0041】
(4)エッジ単層部との境界および多層部の層境界の観察
未延伸シートから小片を切り出しエポキシ樹脂にて固定成形し、ミクロトームにて約60nmの厚みの超薄切片(フィルムの製膜方向および厚み方向に平行に切断する)を作成する。この超薄切片の試料を透過型電子顕微鏡(日立製作所製H−800型)にて観察し、シートの巾方向に沿って適切なピッチで観察を繰り返して層境界を観察した。層構成は図5、図6のように、巾方向及び厚み方向で正規化してグラフ化した。遷移境界部はシートのヘーズ(透過率の差異による曇り)に変化があり、目視で概ね特定できる。本発明においては薄いフィルムの実施例を示しており、2軸延伸後のフィルムの層構成を測定することは、可能ではあるが詳細な層厚み分布を調べるため厚い未延伸シートでの測定とした。
【0042】
(5)未延伸シートの巾方向の厚み測定
未延伸シートをシートの巾方向全巾に渡り短冊状に切り出した。製膜方向には約10mmの巾とした。その表面をアルコールで拭きゴミ採りをしたのち、アンリツ製の接触式厚み計で、短冊を10mm/sで走行させシート巾方向1mmピッチで厚みを測定し図10のようなグラフにした。
【0043】
(6)多層部の層厚み分布の形と偏差
形は図6の21の形状を凹、その逆を凸とした。偏差は、図6のdを「多層部のエッジ部用樹脂Aの割合(目標値)」で割った%とした。なお、dは最大値を採用した。
図6では、d=0.45−0.281=0.169、偏差=d/0.33×100=51.2%とする。
【0044】
(7)エッジ境界の分布の形と偏差
形は図6の22a、22bの形状を凹、その逆を凸とした。偏差は、図6のeを「エッジ単層巾(目標値)」で割った%とした。eは最大値を採用。
図6では、e=0.151−0.086=0.065、偏差=e/0.1×1000=65.0%。
【0045】
(8)層厚み分布の総合評価
○ ・・・ 「多層部の層厚み分布の偏差」と「エッジ境界の分布の偏差」がともに50%未満である。
× ・・・ 「多層部の層厚み分布の偏差」と「エッジ境界の分布の偏差」の一方が50%以上である。
尚、実施例、比較例で用いた樹脂は以下の通りである。
【0046】
(9)使用樹脂
[樹脂T1]
固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)。溶融密度は1.20g/cm3、溶融粘度923poiseであった。
[樹脂T2]
固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.64dl/gのイソフタル酸成分を全酸成分に対して12モル%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(Co−PET)。溶融密度は1.20g/cm3、溶融粘度は1307poiseであった。
[樹脂P1]
以下の(A)と(B)とを重量比50:50でブレンドしたポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(ブレンドPEN)。重量平均の溶融密度は(1.20×50+1.20×50)/(50+50)=1.20g/cm3で、溶融粘度は4210poiseであった。
(A)ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)を主成分とする2軸延伸フィルムの多層製品部から再生したチップで固有粘度が0.545dl/gで溶融密度は1.20g/cm3のもの
(B)ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)を主成分とする2軸延伸フィルムのエッジ単層製膜のエッジから再生したチップで固有粘度が0.525dl/gのもので溶融密度は1.20g/cm3のもの。
[樹脂P2]
固有粘度0.620dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)。溶融密度は1.20g/cm3で溶融粘度は6180poiseであった。
[樹脂Q]
以下の(D)と(E)と(F)とを重量比40:30:30でブレンドした6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を11モル%共重合したポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(Co−PEN)。重量平均の溶融密度は(1.20×40+1.20×30+1.20×30)/(40+30+30)=1.20g/cm3で、溶融粘度は3880poise。
(D)6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を、全酸成分に対して、15モル%共重合した固有粘度が0.620dl/g、溶融密度が1.20g/cm3である共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート。
(E)上記樹脂(D)と樹脂P2とを33:67の重量比でブレンドして、2軸延伸フィルムとし、それを回収して再生したチップで、固有粘度が0.550dl/g、溶融密度が1.20g/cm3であるもの。
(F)上記樹脂(D)と樹脂P2とを80:20の重量比でブレンドを、2軸延伸フィルムとし、それを回収して再生したチップで、固有粘度が0.530dl/g、溶融密度が1.20g/cm3であるもの。
【0047】
[実施例1−1〜1−5]
図1、図2、図3および図9の装置を用い未延伸シートを連続的に作成し、さらに延伸して2層フィルムを製膜した。具体的には、樹脂Aとして前述の樹脂P1を、樹脂Bとして前述の樹脂P2を用意し、170℃で6時間乾燥後、押出し機1および3にそれぞれ供給し、295℃まで加熱して溶融状態とし、ギアポンプで吐出量を一定とし、ポリマーフィルターで10分の滞留時間で濾過し、ポリマーパイプを通してフィードブロック5へ導いた。フィードブロックの2層合流部5aで、樹脂P1をa1とa2の2つに分岐し、一方のa2を、溝巾4mmのピン部材3(15)を回転させ絞り、エッジ単層巾が未延伸シート8の巾の10%になるよう調整し、さらに溝巾W11=10.0mmの調整ピン部材1(16)で流れを調整し、一方樹脂P2は巾W12=20.0mmを通過させ第1の合流部で2層積層体流とした。他方のa1を第2の合流部5bに導き、溝巾W21が表1に示すのピン11a、11bで流れを調整し、巾W22=32.0mmを通過した2層の積層体Cと速度比V22/V21が表1に示す速度比で合流させた。ついでダイ6へ導きシート状に吐出させ、図示省略した静電ピンニングワイヤーで60℃に温調されたキャスティングドラム7にシートを密着冷却させ、約790mm巾で2層部の樹脂Aの層厚みの割合が0.33の未延伸シート8を連続的に作成した。吐出量は樹脂P1が166kg/h、樹脂P2が168kg/hで、エッジ部の樹脂量は82kg/hであった。
得られた未延伸シートの評価結果を表1に示す。エッジ境界部の層厚み偏差は良好であった。なお、実施例1−3の未延伸シートの層厚み分布を図5に示す。
【0048】
[比較例1−1]
ピン部材2(11a、11b)の溝巾W21を変更し、合流速度V22/V21=0.3とした以外は実施例1と同様に未延伸シートを得た。エッジ境界の分布が悪い結果となった。
【0049】
[実施例2−1〜2−5]
樹脂Aを樹脂T1、樹脂Bを樹脂T2に変更し、乾燥は160℃で3時間に変更し、溶融押出温度は285℃に変更し、ピン部材2(11a、11b)の溝巾W21を9.0mmに固定し、ピン部材1(16)の溝巾を振って、V12/V11を表1に示すとおり変更し、多層部の樹脂Aの層厚みの割合を0.17と薄くし、エッジ部の巾が16%となるようピン部材3(15)を回転させ、未延伸シートを採取した。吐出量は樹脂T1が156kg/h、樹脂T2が178kg/hで、エッジ部用樹脂T1の樹脂量は120kg/hであった。
結果を表1に示す。2層部の層厚みは良好であった。
【0050】
[比較例2−1]
ピン部材1(16)の溝巾W11を変更し、合流速度V12/V11=0.3とした以外は実施例2−1と同様に未延伸シートを得た。2層部の層厚みの分布が悪い結果となった。
【0051】
[比較例2−2]
ピン部材1(16)の溝巾W11を変更し、合流速度V12/V11=0.3に変更した以外は比較例1−1と同様に未延伸シートを採取した。エッジ境界の分布、及び2層部の層厚みの分布ともに悪い結果となった。
【0052】
[実施例3]
3層合流部を用い、樹脂Bの両側に樹脂Aが配置される積層構成に変更し、W11の溝巾を変更した以外は実施例1−3と同様の条件で図7(a)のような3層未延伸シートを採取した。各表層の厚みは0.165で、両者の合計は0.33の割合であった。層分布は良好であった。
【0053】
[実施例4]
樹脂Aとして、樹脂Qを用い、樹脂Bとして前述の樹脂P2を用意し、170℃で6時間乾燥後、押出し機1および3にそれぞれ供給し、295℃まで加熱して溶融状態とし、ギアポンプで吐出量を一定とし、ポリマーフィルターで10分の滞留時間で濾過し、ポリマーパイプを通してフィードブロック5へ導いた。フィードブロックの2層合流部5aで、樹脂Qをa1とa2の2つに分岐し、さらにa2をa2−1とa2−2の2つに分岐し、分岐されたa2−2のさらに24層に分岐した。また、樹脂P2からなるbを25層に分岐した。そして、24層に分岐されたa2−2と25層に分岐されたbとを交互に積層し、その一方の面に最初に分岐されたa2−1を図7(b)の最外層fとして積層し50層の超多層フィルムとした。超多層部は特開2003−251675の図1の装置を用いた。なお、多層積層部で合流された樹脂Aの割合は33%(a2−1は16.5%、a2−2は16.5%)であり、多層製品部にある樹脂Aの厚みの割合は、表面にあるa2−1の層は16.5%、内層にあるa2−2の層は、1層あたり0.7%であった。このように変更したほかは、実施例1と同様の方法で未延伸フィルムを採取した。
結果を表1に示す。超多層部の最外層f、及びエッジ境界の層厚みは良好であった。
【0054】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、エッジ単層部の境界をシャープにすることで、トリミングしたエッジ部への中央多樹脂の混入を最小限にしてリサイクル性が向上することから、生産性に優れた多層フィルムの製造方法およびそれに用いるフィードブロックとして、極めて有益である。
【符号の説明】
【0056】
1:樹脂A側の押出機
2:樹脂B側のポリマーパイプ
3:樹脂B側の押出機
4:樹脂B側のポリマーパイプ
5:フィードブロック
5a:フィードブロックの第1の合流部
5b:フィードブロックの第2の合流部
6:ダイ
7:キャスティングドラム
8:溶融未延伸シートまたは未延伸シート
11a、11b:ピン部材2
12a、12b:第2合流部における、ピン部材の溝またはエッジ部用樹脂Aの流路
13:積層体Cの流路
14a、14b:図2のF−F断面におけるエッジ部用樹脂Aの流路12a、12bの断面
14c:図2のF−F断面における多層部の流路の断面
15:ピン部材3
16:ピン部材1
17:第1合流部における多層部用樹脂Aの流路
21:未延伸シート断面の2層の層境界
22a、22b:未延伸シート断面の製品部とエッジ単層部の境界
23:トリミングする位置
24:エッジ境界
A:樹脂A
B:樹脂B
E:エッジ合流点
F−F:エッジ合流部、または第2の合流部の分割線
G−G:図2の分割線
V21:断面14a、14bにおけるエッジ部用樹脂Aの平均流速および進行方向
V22:断面14cにおける積層体Cの平均流速および進行方向
W21:エッジ部用樹脂Aの流路断面における溝巾
W22:断面14cの巾
S21:断面14a、14bの断面積
S22:断面14cの断面積
a:樹脂Aの流れ方向
a1:エッジ部用樹脂Aの流れ方向
a2:多層部用樹脂Aの流れ方向
b:樹脂Bの流れ方向
d:多層部における層厚み比(正規化)の差の最大値
e:エッジ境界におけるシート巾方向の位置(正規化)の差の最大値
f:多層フィルムの多層部における樹脂Aからなる最外層
x:積層体CもしくはDの巾方向、のちのダイの巾方向もしくはシートやフィルムの巾方向となる方向
y:フィードブロックでは積層体Cや積層体Dの流れ方向もしくはのちのシートやフィルムの進行方向
z:積層体CやDの多層部の積層方向、のちのシートやフィルムの厚み方向もしくはダイのリップ開度方向となる方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの幅方向にエッジ部用樹脂A部を有する多層フィルムの製造方法およびそれに用いるフィードブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多層製品部の両エッジを単層とし、エッジ単層部にフィルムの回収屑を投入してコストダウンすることが行われている。例えばポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる多層フィルムは優れた機械特性を有するが高価であるため、エッジ単層化が有効である。
【0003】
エッジを単層化する装置としては、特許文献1に複数の樹脂を用いて多層とし、そのうちの或る樹脂を合流樹脂流路の両端部へ流量調整可能にして流し込むエッジ単層の多層化装置が開示されている。しかし、単にエッジへの流量を調整してエッジ単層の巾を調整するだけでは例えば図6に示す層構成のように多層部とエッジ単層部との境界22a、22bがシャープにならず丸まってしまい、またその修正方法の開示がないため、エッジをトリミングして回収する際にフィルム屑由来の層以外の部分を余分にトリミングしてエッジ回収に回ってしまい、あるいは多層製品部の巾Wpが狭くなってしまいコストダウンを追及できない課題があった。さらに、多層部はスリット設定部材を移動させる構造で、滞留部に劣化樹脂が溜まり、筋故障に至る課題があった。
【0004】
一方、特許文献2に、多層合流部に溝付きの円柱状部材を用いエッジ単層とする方法と装置が開示されている。円柱状の部材であれば筋等の故障が生じにくいことがこれまでの経験上判っている。しかし、円柱状の部材の溝巾を有限として単層巾を制御する方式では、異樹脂の接合面積が多いエッジ単層の製膜では前述の多層製品部とエッジ単層部との境界がシャープにならず、またその境界の修正もできない課題があった。また、エッジ単層巾を広げる場合は前述の溝巾を狭くするため、製品多層部の各層の厚み分布が崩れる課題があった。また、前述の円柱状の部材を通る樹脂をエッジ単層側の樹脂に設定することができない課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−262224号公報
【特許文献2】特開2005−279986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エッジ単層部を有する多層フィルムを、各樹脂間の境界を簡便にシャープにできる製造方法およびそれに用いるフィードブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決しようと鋭意研究したところ、単層ダイの上流側に樹脂Aを多層部用樹脂Aとエッジ部用樹脂Aとに分岐させる分岐部と、多層部用樹脂Aと樹脂Bとを溶融状態で合流させて積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの幅方向の両端部に前記エッジ部用樹脂Aを溶融状態で付加して積層体Dを形成する第2の合流部とを有するフィードブロックを用いた多層フィルムの製造方法において、
前記第1の合流部における樹脂Bの平均速度(V12)と多層部用樹脂Aの平均速度(V11)の合流流速比(V12/V11)が0.5〜2.0の範囲であって、
前記第2の合流部における積層体Cの平均速度(V22)と、エッジ部用樹脂Aの平均速度(V21)の合流速度比(V22/V21)が0.5〜2.0の範囲である多層フィルムの製造方法が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、本発明の好ましい態様として、前記積層体Dの製膜方向に直交する断面を見たとき、エッジ部用樹脂Aの割合が面積比で0.05〜0.50の範囲にあること、前記樹脂Aおよび樹脂Bの溶融粘度が、いずれも700poise以上であって、各樹脂の溶融粘度の比の最大値が、1.0〜3.0であることの少なくともいずれかを具備する多層フィルムの製造方法も提供される。
【0009】
さらにまた、本発明によれば、単層ダイの上流側に配置される多層フィルムの製造に用いるフィードブロックであって、樹脂Aを多層部用樹脂Aとエッジ部用樹脂Aとに分岐させる分岐部と、積層部用樹脂Aと樹脂Bとを溶融状態で合流させて積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの幅方向の両端部に前記エッジ部用樹脂Aを溶融状態で付加して積層体Dを形成する第2の合流部とを有し、
前記第1の合流部は、多層部用樹脂Aの流路に流路幅を調整するためのピン部材1があり、前記第2の合流部はエッジ部用樹脂Aの流路に流路幅を調整するためのピン部材2があり、そして前記分岐部と前記ピン部材1との間に、流量を調整するためのピン部材3を有する多層フィルム製造用フィードブロックも提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エッジ単層部を有する多層フィルムを、各樹脂間の境界を簡便にシャープにでき、エッジ単層化によるコストダウンを品質の低下を伴わずに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一つの実施形態を例示した多層フィルムの押出装置のうち押出機からキャスティングドラムまでを示している。
【図2】本発明の一つの実施形態を例示したエッジ単層用フィードブロックの概略図で、第2合流部は断面図で示されている。
【図3】本発明の一つの実施形態を例示したエッジ単層用フィードブロックの概略図で、第1合流部は断面図で示されている。
【図4a】本発明の一つの実施形態を例示した図2の第2合流部の拡大説明図である。
【図4b】本発明の一つの実施形態を例示した図2のF−F断面を正面とした斜視図である。
【図5】本発明により得られた2層エッジ単層の未延伸シートの層構成である。
【図6】従来の技術により得られた2層エッジ単層の未延伸シートの層構成である。
【図7】(a)本発明を説明する3層エッジ単層シートの層構成である。(b)本発明を説明する50層エッジ単層シートの層構成である。
【図8】本発明を説明する2層エッジ単層シートの層構成と厚みのイメージとエッジ境界である。
【図9】本発明の一つの実施形態を例示したピン部材11a,11bの溝の斜視図である。
【図10】本発明を説明する未延伸シートの厚みの測定値である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を引用して本発明を説明する。
図1は、本発明の一つの実施形態を例示した製品部が多層積層され両エッジが単層となるシートまたは延伸フィルム用の押出装置のうち押出機からキャスティングドラムまでを示している。以下、多層積層された製品部が2層の積層を主体に説明するがこれに限定されるものではない。
【0013】
2層シートの押出装置は、2層シートの樹脂Aの流れ方向の上流側に押出機1があり図示を省略するが、ギアポンプ、フィルターを配置しポリマーパイプ2となっている。同様に2層シートの樹脂Bの流れ方向の上流側に押出機3、ギアポンプ、フィルター、ポリマーパイプ4となっている。フィードブロック5は、その内部で、多層部用樹脂Aであるa2と、のちに両エッジ単層部に配置される2つのエッジ部用樹脂Aのa1に分岐し、多層部用樹脂Aと樹脂Bとをまず合流させて積層体Cとし、その積層体Cの幅方向の両端部にエッジ部樹脂Aを合流させて積層体Dとし、単層ダイ6からシート状に未延伸溶融シート8を押し出す構成となっている。ポリエチレンテレフタレートの2軸延伸フィルムであれば、この未延伸溶融シートを図示省略した公知のピンニング方法で例えば静電式やエアチャンバー、ニップロールの方法でキャスティングドラム7に密着冷却させ、未延伸シート8とし、図示しない装置によって縦延伸、および/または横延伸を施す。
【0014】
まずは、フィードブロック5と層厚み分布を均一にする方法について説明する。
図2と3は本発明の一つの実施形態を例示した2層エッジ単層フィードブロックの断面を示している。
フィードブロック5は、多層部用樹脂Aと樹脂Bとを2層積層する第1の合流部を含む5aと、その幅方向の両端部にエッジ部用樹脂Aを付加する第2の合流部を含む5bからなる場合を例示している。樹脂Aはポリマーパイプ2より流入し、多層部用樹脂Aであるa2と、のちに両エッジ単層部に配置される2つのエッジ部用樹脂Aのa1に分岐する。また、樹脂Bはポリマーパイプ4より流入し第1の合流部で多層部用樹脂Aであるa2と溶融積層され積層体Cとなる。この際、多層部用樹脂Aは、図3の第1合流部で、ピン部材3である15と、ピン部材1である16を介して、適切な流れに調整され、樹脂Bと合流する。なお、図3では、多層部用樹脂Aが薄い表層を形成し、樹脂Bが厚い層を形成する形で積層体Cを形成している。このようにして形成された積層体Cは、続いて図2の第2合流部で、ピン部材2である11a、11bを介して一旦ピン部材の溝部12a、12bで絞られ適切な流れに調整されたエッジ部用樹脂Aであるa1合流し、積層体Dを形成し、ダイ6へと導かれる。
【0015】
ところで、図5は本発明の方法でエッジ単層部を設けた2層の未延伸シートの製膜方向に直交する断面の層構成で、図6は、前述のように従来の方法でエッジ単層部を設けた2層の未延伸シートの製膜方向に直交する断面の層構成である。図6は、図5に比べ、エッジ単層部と多層部との境界22aと22bが湾曲し、結果エッジ単層部としてトリミングで除去しなければならない巾が広がっている。本研究者らは、この現象を研究した結果、第2の合流部の合流速度比が要因であることに気づいた。特に、エッジ部用樹脂Aの合流させるときの流速が積層体Cと比べ速い場合に、図6の現象が健在化する。その原因は定かではないが、エッジ部用樹脂Aの流速が速いと、合流の際に積層体Cが壁となって、エッジ部用樹脂Aが積層体Cの厚み方向の両側へはみ出ようとするためと考えられる。
【0016】
なお、一般にエッジの巾は狭く、未延伸シート全巾に対して片側で数%程度の割合である。これは、エッジの巾が広いと、生産はそもそも巾歩留まりが悪くなるからである。そのため、第2の合流部でのエッジ部用樹脂Aは、積層体Cに対して流量が非常に少なく、流路で受ける熱履歴が大きいことから、エッジ部用樹脂Aの流路全域で断面積を小さくして滞留熱劣化を抑制しようとする。その結果、第2合流部におけるエッジ部用樹脂Aの流速は、積層体Aの流速よりも速くなりやすい。また、この傾向は、比較的に製膜速度の遅い延伸後の厚みが300μm程度の厚いフィルムに比べ、製膜速度の速い延伸後の厚みが1μmの薄いフィルムで、より顕著に現れる。これは、製膜速度が速いと、未延伸シート8が高速回転のキャスティングドラム7に引っ張られシートの巾が狭くなる(ネックイン現象)ためと考えられる。すなわち、薄いフィルムでは、見掛けのエッジ巾以上にエッジ部の締める樹脂の割合が多く設計され、第2合流部におけるエッジ部用樹脂Aの流速が、積層体Aの流速よりもより速くなりやすいためと考えられる。そして、本発明者は、上記エッジ部と多層部との境界のシャープ差が、本質的にエッジ部用樹脂Aと積層体Cの合流速度と深い関係にあることに気づき、本発明に到達したのである。
【0017】
図4aは図2の第2の合流部を拡大した図である。また図4bは図2のF−F断面を正面とした斜視図である。エッジ部用樹脂Aはa1の経路で第2合流部に進入し、中央を流れる2層の積層体Cと合流する。なお、本発明において、V21、V22は通過流量をそれぞれの図4bの流路断面積S21、S22で割った値とする。図4bのように巾W21、W22がz方向に均一な場合は、V22/V21=W22/W21となる。また、本発明において、エッジ部用樹脂Aの合流断面14a、14bは合流点Eを通りz軸に平行な断面であって、エッジ部用樹脂Aの流路12a、12bの流路壁面のうち合流点Eを含む側の面に垂直な断面とし、断面積をS21とする。積層体流の断面14cは、2つの合流点Eを含みz軸に平行な断面とし、その断面積をS22とする。
【0018】
なお、本発明におけるx方向とは、積層体Cや積層体Dの巾方向、のちのダイの巾方向もしくはシート、フィルムの巾方向となる方向であり、単に巾方向と称することがある。また本発明におけるy方向とは、フィードブロックでは積層体Cや積層体Dの流れ方向もしくはのちのシート、フィルムの進行方向であり、製膜方向や流れ方向と称することがある。さらにまた、本発明におけるz方向とは、積層体CやDの多層部の積層方向、のちのシートやフィルムの厚み方向もしくはダイのリップ開度方向となる方向で、厚み方向や積層方向と称することがある。
【0019】
<フィードブロック>
本発明の多層フィルム製造用フィードブロックについて、以下、詳述する。
本発明のフィードブロックは、前述の通り、単層ダイの上流側に配置される多層フィルムの製造に用いるフィードブロックであって、樹脂Aを多層部用樹脂Aとエッジ部用樹脂Aとに分岐させる分岐部と、積層部用樹脂Aと樹脂Aとは異なる樹脂Bとを溶融状態で合流させて積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの幅方向の両端部に前記エッジ部用樹脂Aを溶融状態で付加して積層体Dを形成する第2の合流部とを有する。
そして、前記第1の合流部は、積層部用樹脂Aの流路に流路幅を調整するためのピン部材1(16)があり、前記第2の合流部はエッジ部用樹脂Aの流路に流路幅を調整するためのピン部材2(11a、11b)があり、そして前記分岐部と前記ピン部材1との間に、流量を調整するためのピン部材3(15)を有する。
【0020】
本発明において、積層部用樹脂Aは、図3に示すようにピン部材1(16)を介して流れを適切に調整され、樹脂Bと合流させて積層体Aとする。ピン部材1(16)はディストリビューションピンと呼ばれることもあり、本発明では単純な矩形の溝であっても合流流速を前述の範囲とすることで層厚みを均一化できる。または、均一化にいたる溝形状の適正化の試行錯誤を減らすこともできる。ピン部材1(16)は、チョークバーやスリットを形成する多角形部材に比べ、樹脂の滞留劣化を生じにくい。またピン部材1(16)には溝を設け、積層部用樹脂A(a2)を通過させるが、必要に応じて溝を2箇所以上設け、層分布を適正化する形状を一つのピンで複数試すこともできる。また、必要に応じピンを回転させ流路を絞り、さらに流れを適正化することもできる。一方、本発明のフィードブロックでは、同様に第2の合流部でも、同様な理由から図2に示すように流路溝を設けたピン部材2(11a、11b)を用いることが好ましい。
【0021】
本発明のフィードブロックは、さらに前述のピン部材1(16)とは独立に、エッジ部の巾を可変とする流量調整機構として、ピン部材3(15)を有することを特徴とする。ピン部材1(16)を回転させて積層部用樹脂A(a2)の通過流路幅を絞り、エッジ部用樹脂A(a1)の流量、すなわちエッジの巾を調整することも可能であるが、第1の合流部において合流速度の比をある範囲に調整することとの両立が困難である。そのため、図3に示す流量調整機構である絞りピン部材3(15)を有することが必要である。そして、このピン3(15)を回転させて、ピン部材1(16)とは独立に、a1とa2の流量を調整することができる。このピン部材3(15)と、ピン部材1(16)は同じ流路17の延長上に位置することが好ましい。
【0022】
ピン部材3(15)の絞りの機構は、前述のように勘合部や移動部にクリアランスが必要で樹脂の滞留劣化が懸念されることから、可能な限り小さいことが好ましい。そのため、第1の合流部への積層部用樹脂Aの流路は絞られていることが好ましく、狭い流路巾であれば部材が小さくて済み劣化の心配がない。そのため、例えば薄物フィルムであってエッジ単層巾、すなわちエッジ単層部への流量を極めて大きくしたい場合や積層体Aの積層部用樹脂Aの割合を小さくしたい場合に、図3のように第1の合流部へ至るa2の樹脂経路に流量調整機構を設けることは特に効果的である。もちろん、図4のa1の経路にも流量調整機構としてピン部材3と同様なピン部材があってもよく、単層巾を自由に変更でき、かつ本発明の特徴である、第1と第2の合流部における合流速度比もそれぞれ独立にかつ適切に調整できる。
【0023】
本発明において、ピン部材2(11a、11b)、ピン部材3(15)、ピン部材2(16)の溝形状は公知の形状を使用できる。基本的には、樹脂の進行方向に直交する方向に溝巾がどうのように変化させてもよく、一部分に溝がなく流体を閉塞する部分が存在しても良い。特に、本発明において、ピン部材2(11a、11b)によって形成されるエッジ部用樹脂Aの流路巾W21、W22はz方向に均一という容易な形状であってもエッジ境界をシャープにできる事を特徴とするが、前述の巾流路巾が変化していても、後述の要件V22/V21=0.5〜2.0を満足していれば、流路形状の試行錯誤回数を軽減できており、すなわち流路巾の変化が小さくて済むことになり、産業上のメリットは大きい。
【0024】
本発明において、第1の合流部は、2層あるいは3層の合流部がいくつか直列に並ぶ合流部であってもよい、例えば3層合流部が4つ直列に並ぶ場合は製品多層部が3+2+2+2=9層となる場合を例示できる。また、10層以上で幾つかの樹脂を交互に積層するいわゆる超多層では、隔壁で囲まれた狭いスリットを多数並べて溶融樹脂を通過させそのスリットの出口で超多層に積層する方法を例示できる。超多層の場合、前述のV12の算出では隔壁を除く流路断面積を用い、複数の樹脂が通過していても、スリットを通過する全通過樹脂量と各樹脂の溶融密度を通過重量平均した溶融密度から算出する。
【0025】
<多層フィルムの製造方法>
本発明の多層フィルムの製造方法について、以下、詳述する。
本発明の多層フィルムの製造方法は、単層ダイの上流側に樹脂Aを多層部用樹脂Aとエッジ部用樹脂Aとに分岐させる分岐部と、多層部用樹脂Aと樹脂Aとは異なる樹脂Bとを溶融状態で合流させて積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの幅方向の両端部に前記エッジ部用樹脂Aを溶融状態で付加して積層体Dを形成する第2の合流部とを有するフィードブロックを用いる。
【0026】
本発明の多層フィルムの製造方法は、前記第1の合流部における樹脂Bの平均速度(V12)と積層部用樹脂Aの平均速度(V11)の合流流速比(V12/V11)を0.5〜2.0の範囲に、さらに前記第2の合流部における積層体Cの平均速度(V22)と、エッジ部用樹脂Aの平均速度(V21)の合流速度比(V22/V21)を0.5〜2.0の範囲にしたことを特徴とする。このような合流速度比は、前述のフィードブロックで説明した、ピン部材1、ピン部材2、そしてピン部材3を用いることなどで調整できる。
【0027】
本発明において、合流する際の積層体Aの平均流速V22とエッジ部用樹脂Aの平均流速V21の比(V22/V21)が、下限より小さいとエッジ部用樹脂Aの速度が速くエッジ境界が図6の22a、22bのように丸くなり、コストダウン率が下がったり製品有効巾が減る問題がでる。他方、V22/V21が上限より大きいと、エッジ境界が図6の22a、22bとは逆の方向に丸くなったり、絞り部12a、12bでの圧力勾配不足からz方向に均一な流量でエッジ部用樹脂Aを通過させる事ができなくなりエッジ境界のシャープさに問題がでたり、前述の滞留熱劣化の問題がでたりする。
【0028】
本発明において前述のV21は、図8の未延伸シートの断面図においてエッジ単層境界でエッジ部を切り取ってその重量を測り、エッジの密度、及びエッジ部用樹脂Aの溶融密から例えば算出できる。また、V22の流量については、図8の未延伸シートの厚み、層構成、密度から重量を算出し、各樹脂の溶融密度の重量平均の溶融密度を用いV22を算出できる。
【0029】
本発明において、合流速度V12と合流速度V11の比(V12/V11)を合わせる方向にすることで、図6の2層境界21の巾方向の分布が均一となり、先のエッジ単層部のエッジ境界をシャープにすることと1セットで製品部巾Wpを最大にとれコストダウンも図れる。V12/V11が下限より小さいと層厚みの巾方向の分布が悪くなる。他方V12/V11が上限より大きいと2層の境界部が図6の21とは逆の方向に分布したり、樹脂Aの流路断面積が広くとるため流路巾を広げるために径の大きいピン部材16を使うことになり、ピンと本体との勘合部や、シール部での滞留樹脂劣化が問題となる。本発明においてV11とV12の定義は、前述の第2の合流部での定義と同じとする。a2およびbの樹脂の通過流量は、樹脂の供給量と図8の未延伸シートの厚み、及び層構成、シートの密度、溶融密度から算出可能である。
【0030】
本発明の多層フィルムの製造方法は、前記積層体Dの製膜方向に直交する断面を見たとき、エッジ部用樹脂Aの割合が面積比で0.05〜0.50の範囲にあることが好ましい。エッジ部用樹脂Aの割合が上限より大きいとエッジ単層部境界において異樹脂の接合部が少なくエッジ境界のシャープ化のニーズが小さい。換言すれば、上記上限以下であるから、製品多層部のうちフィルム屑を回収リサイクルしたエッジ部用樹脂Aの割合が少ないこととなり、エッジ単層化のニーズが産業上生じる。他方下限より小さいと回収フィルム屑を利用するエッジ部用樹脂Aのフィルム全体への投入量が少なくなり、コスト高のフィルムとなり産業上のメリットが少ない。なお、本発明の製造方法では、2種類以上の樹脂を溶融させて多層に積層し、このうちの一つをエッジ部用樹脂Aとするが、コストダウンを目的としたエッジ単層の多層フィルムでは、エッジ部用樹脂Aにはフィルム屑を回収し再生した樹脂をある割合で使用することが好ましく、それによりフィルム全体として、屑の投入割合が増え、逆に言えばフレッシュな原料の投入割合が減り、生産コストを下げることができる。
【0031】
本発明における樹脂Aと樹脂Bは、熱可塑性樹脂であることが好ましくフィルムへの製膜が可能なものであれば、それ自体公知のものを採用でき、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を用いることができ、特にポリエステル系樹脂(以下、単にポリエステルという)が好ましい。ポリエステルの中でも、ヤング率等の力学的特性を高める場合は、ジオール成分と芳香族ジカルボン酸成分との重縮合によって得られる芳香族ポリエステルが好ましく、かかる芳香族ジカルボン酸成分として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸などの6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸が挙げられ、またジオール成分として、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。これらの中でも、寸法安定性を要求される場合は、エチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる繰り返し単位とするものが好ましい。樹脂には、公知の滑剤を含むことができる。また、樹脂Aは一種類だが、樹脂Bは、複数の樹脂を用いて、それぞれで層を形成するようにしてもよい。その場合、各層を構成する樹脂Bが、前述の樹脂Aとの合流速度の関係を満足するようにすれば良い。
【0032】
また、本発明における前記樹脂Aおよび樹脂Bの溶融粘度は、いずれも700poise以上であって、各樹脂の溶融粘度の比は、その最大値が1.0以上3.0以下であることが好ましい。なお、溶融粘度の比は、溶融粘度が最小の樹脂の溶融粘度で、溶融粘度が最大の樹脂の溶融粘度を割った値である。溶融粘度が下限より小さかったり、溶融粘度の比が上限より大きいと、フィードブロックの第1合流部以降で、包み込みと呼ばれる現象が起こり、ダイ内で層厚み分布の変化が起こる。一般に粘度差が大きいほど起こりやすく、それぞれの溶融粘度の絶対値が小さく柔らかいと現象がさらに助長される。
【0033】
本発明の製造方法で製造される多層フィルムが、例えば熱可塑性樹脂からなる二軸配向フィルムである場合、上述の熱可塑性樹脂を溶融状態で押出し、二軸方向に延伸することで製造でき、製膜方法などはそれ自体公知のものを採用することができる。例えば、未延伸シート化、延伸、フィルム屑の回収を、以下、順に説明する。
【0034】
まず、原料である数種類のチップは、スクリューフィーダーやブレンダーである一定の重量割合で混合ブレンドされ、そのチップを必要に応じて一定の時間乾燥し、図1の装置で熱可塑性樹脂の融点(Tm)〜(Tm+50)℃の温度で溶融させダイ6からシート状に押出し20〜70℃のキャスティングドラム7で急冷固化し、未延伸シート8を得る。その後、未延伸シートを常法に従い、一軸方向(縦方向または横方向)に(熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)−10)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向とは直角方向(一段目延伸が縦方向の場合には、二段目延伸は横方向となる)に(Tg)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは4.5〜7.5倍の倍率で延伸する。さらに、必要に応じて、縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。すなわち、2段、3段、4段あるいは多段の延伸を行うとよい。全延伸倍率としては、通常9倍以上、好ましくは10〜35倍、さらに好ましくは12〜30倍である。全横延伸倍率としては2.5〜8.0倍が好ましい。延伸前にフィルムへの付加機能膜を塗工し、延伸、乾燥させても良い。
【0035】
さらに、前記二軸配向多層フィルムは(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、180〜250℃で熱固定結晶化することによって、優れた寸法安定性が付与される。その際、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。前述の説明で、TgおよびTmは2種類以上の樹脂のうち、より高いTg、Tmを有する樹脂の値とする。
【0036】
熱固定された延伸フィルムは、エッジ部をトリミングし、エッジは回収再チップ化系統へと移送する。エッジ単層部の遷移域を回収系統に含むようにトリミングすると製品多層部の厚み斑と巻き姿が良好となる。回収系統では従来の公知である方法、装置を用いることができる。例えば、エッジ部を細かく裁断し必要に応じ乾燥し、再生押出機、フィルター、口金を用いて棒状に溶融押出させさらに水冷固化させ裁断機でサイコロ状にカットし、必要に応じ脱水処理し、再生チップとする。製品部のフィルム屑については、通常エッジ部とは組成がことなるため別系統で回収し前述と同様の手法で再生チップ化できる。図1の押出機、及び/または前述の再生押出機が2軸押出機である場合は、材料の乾燥を省略できる。さらにフィルム屑を直接図1の2軸押出機に投入できる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明では、以下の方法により、その特性を測定および評価した。
【0038】
(1)溶融粘度
ペレットを所定の重量比で混合し、0.1〜1mmのフレーク状に粉砕し、実施例と同じ乾燥条件処理した後、測定した。溶融粘度はせん断速度が10(1/s)の値とした。なお、溶融粘度の測定装置は、島津製作所製フローテスターCF−500を用い、溶融押出温度:280℃、予熱時間:1分、ノズル径:1mm、ノズル長:10mmにて実施した。
【0039】
(2)樹脂の溶融密度の測定
メルトインデックサ F−F01 (株)東洋精機製作所でペレットのMFRから280℃での溶融密度を測定した。
【0040】
(3)固有粘度はPEN系の樹脂はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定した。PET系はオルトクロロフェノール、35℃とした。
【0041】
(4)エッジ単層部との境界および多層部の層境界の観察
未延伸シートから小片を切り出しエポキシ樹脂にて固定成形し、ミクロトームにて約60nmの厚みの超薄切片(フィルムの製膜方向および厚み方向に平行に切断する)を作成する。この超薄切片の試料を透過型電子顕微鏡(日立製作所製H−800型)にて観察し、シートの巾方向に沿って適切なピッチで観察を繰り返して層境界を観察した。層構成は図5、図6のように、巾方向及び厚み方向で正規化してグラフ化した。遷移境界部はシートのヘーズ(透過率の差異による曇り)に変化があり、目視で概ね特定できる。本発明においては薄いフィルムの実施例を示しており、2軸延伸後のフィルムの層構成を測定することは、可能ではあるが詳細な層厚み分布を調べるため厚い未延伸シートでの測定とした。
【0042】
(5)未延伸シートの巾方向の厚み測定
未延伸シートをシートの巾方向全巾に渡り短冊状に切り出した。製膜方向には約10mmの巾とした。その表面をアルコールで拭きゴミ採りをしたのち、アンリツ製の接触式厚み計で、短冊を10mm/sで走行させシート巾方向1mmピッチで厚みを測定し図10のようなグラフにした。
【0043】
(6)多層部の層厚み分布の形と偏差
形は図6の21の形状を凹、その逆を凸とした。偏差は、図6のdを「多層部のエッジ部用樹脂Aの割合(目標値)」で割った%とした。なお、dは最大値を採用した。
図6では、d=0.45−0.281=0.169、偏差=d/0.33×100=51.2%とする。
【0044】
(7)エッジ境界の分布の形と偏差
形は図6の22a、22bの形状を凹、その逆を凸とした。偏差は、図6のeを「エッジ単層巾(目標値)」で割った%とした。eは最大値を採用。
図6では、e=0.151−0.086=0.065、偏差=e/0.1×1000=65.0%。
【0045】
(8)層厚み分布の総合評価
○ ・・・ 「多層部の層厚み分布の偏差」と「エッジ境界の分布の偏差」がともに50%未満である。
× ・・・ 「多層部の層厚み分布の偏差」と「エッジ境界の分布の偏差」の一方が50%以上である。
尚、実施例、比較例で用いた樹脂は以下の通りである。
【0046】
(9)使用樹脂
[樹脂T1]
固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)。溶融密度は1.20g/cm3、溶融粘度923poiseであった。
[樹脂T2]
固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.64dl/gのイソフタル酸成分を全酸成分に対して12モル%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(Co−PET)。溶融密度は1.20g/cm3、溶融粘度は1307poiseであった。
[樹脂P1]
以下の(A)と(B)とを重量比50:50でブレンドしたポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(ブレンドPEN)。重量平均の溶融密度は(1.20×50+1.20×50)/(50+50)=1.20g/cm3で、溶融粘度は4210poiseであった。
(A)ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)を主成分とする2軸延伸フィルムの多層製品部から再生したチップで固有粘度が0.545dl/gで溶融密度は1.20g/cm3のもの
(B)ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)を主成分とする2軸延伸フィルムのエッジ単層製膜のエッジから再生したチップで固有粘度が0.525dl/gのもので溶融密度は1.20g/cm3のもの。
[樹脂P2]
固有粘度0.620dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)。溶融密度は1.20g/cm3で溶融粘度は6180poiseであった。
[樹脂Q]
以下の(D)と(E)と(F)とを重量比40:30:30でブレンドした6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を11モル%共重合したポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(Co−PEN)。重量平均の溶融密度は(1.20×40+1.20×30+1.20×30)/(40+30+30)=1.20g/cm3で、溶融粘度は3880poise。
(D)6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を、全酸成分に対して、15モル%共重合した固有粘度が0.620dl/g、溶融密度が1.20g/cm3である共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート。
(E)上記樹脂(D)と樹脂P2とを33:67の重量比でブレンドして、2軸延伸フィルムとし、それを回収して再生したチップで、固有粘度が0.550dl/g、溶融密度が1.20g/cm3であるもの。
(F)上記樹脂(D)と樹脂P2とを80:20の重量比でブレンドを、2軸延伸フィルムとし、それを回収して再生したチップで、固有粘度が0.530dl/g、溶融密度が1.20g/cm3であるもの。
【0047】
[実施例1−1〜1−5]
図1、図2、図3および図9の装置を用い未延伸シートを連続的に作成し、さらに延伸して2層フィルムを製膜した。具体的には、樹脂Aとして前述の樹脂P1を、樹脂Bとして前述の樹脂P2を用意し、170℃で6時間乾燥後、押出し機1および3にそれぞれ供給し、295℃まで加熱して溶融状態とし、ギアポンプで吐出量を一定とし、ポリマーフィルターで10分の滞留時間で濾過し、ポリマーパイプを通してフィードブロック5へ導いた。フィードブロックの2層合流部5aで、樹脂P1をa1とa2の2つに分岐し、一方のa2を、溝巾4mmのピン部材3(15)を回転させ絞り、エッジ単層巾が未延伸シート8の巾の10%になるよう調整し、さらに溝巾W11=10.0mmの調整ピン部材1(16)で流れを調整し、一方樹脂P2は巾W12=20.0mmを通過させ第1の合流部で2層積層体流とした。他方のa1を第2の合流部5bに導き、溝巾W21が表1に示すのピン11a、11bで流れを調整し、巾W22=32.0mmを通過した2層の積層体Cと速度比V22/V21が表1に示す速度比で合流させた。ついでダイ6へ導きシート状に吐出させ、図示省略した静電ピンニングワイヤーで60℃に温調されたキャスティングドラム7にシートを密着冷却させ、約790mm巾で2層部の樹脂Aの層厚みの割合が0.33の未延伸シート8を連続的に作成した。吐出量は樹脂P1が166kg/h、樹脂P2が168kg/hで、エッジ部の樹脂量は82kg/hであった。
得られた未延伸シートの評価結果を表1に示す。エッジ境界部の層厚み偏差は良好であった。なお、実施例1−3の未延伸シートの層厚み分布を図5に示す。
【0048】
[比較例1−1]
ピン部材2(11a、11b)の溝巾W21を変更し、合流速度V22/V21=0.3とした以外は実施例1と同様に未延伸シートを得た。エッジ境界の分布が悪い結果となった。
【0049】
[実施例2−1〜2−5]
樹脂Aを樹脂T1、樹脂Bを樹脂T2に変更し、乾燥は160℃で3時間に変更し、溶融押出温度は285℃に変更し、ピン部材2(11a、11b)の溝巾W21を9.0mmに固定し、ピン部材1(16)の溝巾を振って、V12/V11を表1に示すとおり変更し、多層部の樹脂Aの層厚みの割合を0.17と薄くし、エッジ部の巾が16%となるようピン部材3(15)を回転させ、未延伸シートを採取した。吐出量は樹脂T1が156kg/h、樹脂T2が178kg/hで、エッジ部用樹脂T1の樹脂量は120kg/hであった。
結果を表1に示す。2層部の層厚みは良好であった。
【0050】
[比較例2−1]
ピン部材1(16)の溝巾W11を変更し、合流速度V12/V11=0.3とした以外は実施例2−1と同様に未延伸シートを得た。2層部の層厚みの分布が悪い結果となった。
【0051】
[比較例2−2]
ピン部材1(16)の溝巾W11を変更し、合流速度V12/V11=0.3に変更した以外は比較例1−1と同様に未延伸シートを採取した。エッジ境界の分布、及び2層部の層厚みの分布ともに悪い結果となった。
【0052】
[実施例3]
3層合流部を用い、樹脂Bの両側に樹脂Aが配置される積層構成に変更し、W11の溝巾を変更した以外は実施例1−3と同様の条件で図7(a)のような3層未延伸シートを採取した。各表層の厚みは0.165で、両者の合計は0.33の割合であった。層分布は良好であった。
【0053】
[実施例4]
樹脂Aとして、樹脂Qを用い、樹脂Bとして前述の樹脂P2を用意し、170℃で6時間乾燥後、押出し機1および3にそれぞれ供給し、295℃まで加熱して溶融状態とし、ギアポンプで吐出量を一定とし、ポリマーフィルターで10分の滞留時間で濾過し、ポリマーパイプを通してフィードブロック5へ導いた。フィードブロックの2層合流部5aで、樹脂Qをa1とa2の2つに分岐し、さらにa2をa2−1とa2−2の2つに分岐し、分岐されたa2−2のさらに24層に分岐した。また、樹脂P2からなるbを25層に分岐した。そして、24層に分岐されたa2−2と25層に分岐されたbとを交互に積層し、その一方の面に最初に分岐されたa2−1を図7(b)の最外層fとして積層し50層の超多層フィルムとした。超多層部は特開2003−251675の図1の装置を用いた。なお、多層積層部で合流された樹脂Aの割合は33%(a2−1は16.5%、a2−2は16.5%)であり、多層製品部にある樹脂Aの厚みの割合は、表面にあるa2−1の層は16.5%、内層にあるa2−2の層は、1層あたり0.7%であった。このように変更したほかは、実施例1と同様の方法で未延伸フィルムを採取した。
結果を表1に示す。超多層部の最外層f、及びエッジ境界の層厚みは良好であった。
【0054】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、エッジ単層部の境界をシャープにすることで、トリミングしたエッジ部への中央多樹脂の混入を最小限にしてリサイクル性が向上することから、生産性に優れた多層フィルムの製造方法およびそれに用いるフィードブロックとして、極めて有益である。
【符号の説明】
【0056】
1:樹脂A側の押出機
2:樹脂B側のポリマーパイプ
3:樹脂B側の押出機
4:樹脂B側のポリマーパイプ
5:フィードブロック
5a:フィードブロックの第1の合流部
5b:フィードブロックの第2の合流部
6:ダイ
7:キャスティングドラム
8:溶融未延伸シートまたは未延伸シート
11a、11b:ピン部材2
12a、12b:第2合流部における、ピン部材の溝またはエッジ部用樹脂Aの流路
13:積層体Cの流路
14a、14b:図2のF−F断面におけるエッジ部用樹脂Aの流路12a、12bの断面
14c:図2のF−F断面における多層部の流路の断面
15:ピン部材3
16:ピン部材1
17:第1合流部における多層部用樹脂Aの流路
21:未延伸シート断面の2層の層境界
22a、22b:未延伸シート断面の製品部とエッジ単層部の境界
23:トリミングする位置
24:エッジ境界
A:樹脂A
B:樹脂B
E:エッジ合流点
F−F:エッジ合流部、または第2の合流部の分割線
G−G:図2の分割線
V21:断面14a、14bにおけるエッジ部用樹脂Aの平均流速および進行方向
V22:断面14cにおける積層体Cの平均流速および進行方向
W21:エッジ部用樹脂Aの流路断面における溝巾
W22:断面14cの巾
S21:断面14a、14bの断面積
S22:断面14cの断面積
a:樹脂Aの流れ方向
a1:エッジ部用樹脂Aの流れ方向
a2:多層部用樹脂Aの流れ方向
b:樹脂Bの流れ方向
d:多層部における層厚み比(正規化)の差の最大値
e:エッジ境界におけるシート巾方向の位置(正規化)の差の最大値
f:多層フィルムの多層部における樹脂Aからなる最外層
x:積層体CもしくはDの巾方向、のちのダイの巾方向もしくはシートやフィルムの巾方向となる方向
y:フィードブロックでは積層体Cや積層体Dの流れ方向もしくはのちのシートやフィルムの進行方向
z:積層体CやDの多層部の積層方向、のちのシートやフィルムの厚み方向もしくはダイのリップ開度方向となる方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層ダイの上流側に、樹脂Aを多層部用樹脂Aとエッジ部用樹脂Aとに分岐させる分岐部と、多層部用樹脂Aと樹脂Bとを溶融状態で合流させて積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの幅方向の両端部に前記エッジ部用樹脂Aを溶融状態で付加して積層体Dを形成する第2の合流部とを有するフィードブロックを用いた多層フィルムの製造方法において、
前記第1の合流部における樹脂Bの平均速度(V12)と多層部用樹脂Aの平均速度(V11)の合流流速比(V12/V11)が0.5〜2.0の範囲であって、
前記第2の合流部における積層体Cの平均速度(V22)と、エッジ部用樹脂Aの平均速度(V21)の合流速度比(V22/V21)が0.5〜2.0の範囲であることを特徴とする多層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記積層体Dの製膜方向に直交する断面を見たとき、エッジ部用樹脂Aの割合が面積比で0.05〜0.50の範囲にある請求項1に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂Aおよび樹脂Bの溶融粘度が、いずれも700poise以上であって、各樹脂の溶融粘度の比の最大値が、1.0〜3.0である請求項1または2のいずれかに記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項4】
単層ダイの上流側に配置される多層フィルムの製造に用いるフィードブロックであって、樹脂Aを多層部用樹脂Aとエッジ部用樹脂Aとに分岐させる分岐部と、多層部用樹脂Aと樹脂Bとを溶融状態で合流させて積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの幅方向の両端部に前記エッジ部用樹脂Aを溶融状態で付加して積層体Dを形成する第2の合流部とを有し、
前記第1の合流部は、多層部用樹脂Aの流路に流路幅を調整するためのピン部材1があり、前記第2の合流部はエッジ部用樹脂Aの流路に流路幅を調整するためのピン部材2があり、そして前記分岐部と前記ピン部材1との間に、流量を調整するためのピン部材3を有することを特徴とする多層フィルム製造用フィードブロック。
【請求項1】
単層ダイの上流側に、樹脂Aを多層部用樹脂Aとエッジ部用樹脂Aとに分岐させる分岐部と、多層部用樹脂Aと樹脂Bとを溶融状態で合流させて積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの幅方向の両端部に前記エッジ部用樹脂Aを溶融状態で付加して積層体Dを形成する第2の合流部とを有するフィードブロックを用いた多層フィルムの製造方法において、
前記第1の合流部における樹脂Bの平均速度(V12)と多層部用樹脂Aの平均速度(V11)の合流流速比(V12/V11)が0.5〜2.0の範囲であって、
前記第2の合流部における積層体Cの平均速度(V22)と、エッジ部用樹脂Aの平均速度(V21)の合流速度比(V22/V21)が0.5〜2.0の範囲であることを特徴とする多層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記積層体Dの製膜方向に直交する断面を見たとき、エッジ部用樹脂Aの割合が面積比で0.05〜0.50の範囲にある請求項1に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂Aおよび樹脂Bの溶融粘度が、いずれも700poise以上であって、各樹脂の溶融粘度の比の最大値が、1.0〜3.0である請求項1または2のいずれかに記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項4】
単層ダイの上流側に配置される多層フィルムの製造に用いるフィードブロックであって、樹脂Aを多層部用樹脂Aとエッジ部用樹脂Aとに分岐させる分岐部と、多層部用樹脂Aと樹脂Bとを溶融状態で合流させて積層体Cを形成させる第1の合流部と、前記積層体Cの幅方向の両端部に前記エッジ部用樹脂Aを溶融状態で付加して積層体Dを形成する第2の合流部とを有し、
前記第1の合流部は、多層部用樹脂Aの流路に流路幅を調整するためのピン部材1があり、前記第2の合流部はエッジ部用樹脂Aの流路に流路幅を調整するためのピン部材2があり、そして前記分岐部と前記ピン部材1との間に、流量を調整するためのピン部材3を有することを特徴とする多層フィルム製造用フィードブロック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−91171(P2013−91171A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232994(P2011−232994)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】
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