説明

多層フィルムの製造方法

【課題】 各層にそれぞれ粒子を含む多層フィルムにおいて、層間における粒子の凝集、およびそれに伴う層間の混合を防ぐことができる多層フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】
所定の搬送速度で走行するウェブWに形成された粒子径1〜100nmの第1の粒子32を含む第1の塗膜30に、粒子径1〜100nmの第2の粒子42を含む第2の塗布液23を供給する。第2の塗布液23の、第1の膜面垂直方向の吐出速度成分V(m/s)を調整し、第1の粒子32と第2の粒子42の凝集力を超える反発力を与え、第1の塗膜30と第2の塗膜40で構成される多層構造を形成する。多層構造を乾燥し、多層膜を有する多層フィルムを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層フィルムの製造方法において、特に、各種ディスプレイの表面に用いられる反射防止フィルムなどに用いられる粒子を含む多層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に平均粒子径が100nm以下のサイズの小さいナノ粒子は、粒子による光散乱がほとんどないため、透明性を損なうことなく屈折率制御を行うことができる。このような粒子は高屈折率レンズや反射防止フィルムなどに用いられており、バインダー中に均一に分散させることで透明性と屈折率制御を両立している。
【0003】
このようなナノ粒子の表面に機能性高分子を配するなどして、他の利用価値の高い用途に展開することも可能である。こうしたナノ粒子を含む積層体については、主に反射防止フィルムとしての用途が知られている。このような積層体の製造方法としては、逐次塗布により各層の界面を分けることが重要であり、バインダー中での粒子の分散が優先されていた。
【0004】
しかしながら、このような逐次で塗布する方法は、特に反射防止フィルムのような多層膜を形成する際には何度も塗布機を通過させる必要があり、生産性が悪いという問題があった。
【0005】
この問題を解決する方法として、例えば特許文献1、特許文献2にはエクストルージョン方式で重層塗布する方法が開示されている。また、特許文献3には相溶性の悪い溶剤、溶質を選択することによって界面の混合を防ぐ方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許328206号公報
【特許文献2】特開2007−164166号公報
【特許文献3】特開2007−293302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、特許文献2で開示されているキャピラリ数の条件では、層間の混合が起きてしまい、多層膜としての性能が出ないという問題があった。
【0008】
また、特許文献3に記載された方法では溶質同士の混合は防ぐことができるが、粒子の凝集に起因する界面の混合を防ぐことはできないという問題があった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、各層にそれぞれ粒子を含む多層フィルムにおいて、層間における粒子の凝集、およびそれに伴う層間の混合を防ぐことができる多層フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の多層フィルムの製造方法は、可撓性支持体を所定速度で搬送する工程と、前記可撓性支持体に粒子径1〜100nmの第1の粒子を含む第1の塗布液を供給する工程と、前記可撓性支持体面垂直方向の成分が所定の速度より速い吐出速度で、前記第1の塗布液の固形分濃度が15%以下のときに前記第1の塗布液上に粒子径1〜100nmの第2の粒子を含む第2の塗布液を供給し、前記第1の粒子と前記第2の粒子同士の凝集力を超える反発力を与えて多層構造を形成する工程と、前記多層構造を乾燥し多層膜を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0011】
少なくとも2層以上の層からなる各層に粒子が含まれる多層フィルムの製造方法において、所定の速度より速い吐出速度で上層の塗布液を下層上に塗布し、粒子の凝集力(静電気力、分子間力)を上回る反発力を与える。したがって、たとえ隣り合う層間の粒子が混合状態において凝集する性状の粒子同士であっても、粒子同士の凝集が抑制される。その結果、凝集起因のヘイズや層間混合を防止することができる。
【0012】
「第1の塗布液の固形分濃度が15%以下のときに」とは、いわゆる「ウェット・オン
・ウェットでの塗布」を意味し、下層の塗布液が湿潤状態にあるうち1つ以上の塗布液を下層に塗り重ねて上層を形成する塗布方法のことを指す。
【0013】
本発明の多層フィルムの製造方法は、前記発明において、前記第1の塗布液の粘度が1
.0mPa・s以下のときに前記第2の塗布液を供給することが好ましい。
【0014】
塗布液の粘度が高くなると固形分濃度が高くなってしまい、上層を下層の塗布位置から離れた位置で塗布する必要がある。一方、設備的な問題から2つの塗布ヘッドは近い方がコスト的に有利であるため、粘度の低い状態で第2の塗布液を供給することが好ましい。
【0015】
本発明の多層フィルムの製造方法は、前記発明において、前記可撓性支持体面垂直方向の成分が2m/s以上の吐出速度で前記第1の塗布液上に第2の塗布液を供給することが好ましい。速度を2m/s以上とすることで、粒子の凝集力(静電気力、分子間力)を上回る反発力を与えることができる。
【0016】
本発明の多層フィルムの製造方法は、前記発明において、前記多層膜はヘイズが5.0%以下であることが好ましい。好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下である。
【0017】
ヘイズの値が大きいと層間での粒子の混合が起きてしまっており、界面を分けることができず、多層膜としての所望の性能を得ることができない。また、透明膜として使用する場合には全光線透過率が低下してしまい、透明性が不足してしまうからである。
【0018】
本発明の多層フィルムの製造方法は、前記発明において、前記第2の塗布液が、エクストルージョン型ダイコーターにより前記第1の塗布液へ供給されることが好ましい。エクストルージョン型ダイコーターが、可撓性支持体面垂直方向の成分の速度を2m/s以上付与するのに適しているからである。
【0019】
本発明の多層フィルムの製造方法は、前記発明において、前記第1の粒子及び前記第2の粒子が金属酸化物であることが好ましい。
【0020】
本発明の多層フィルムの製造方法は、前記発明において、前記多層膜が反射防止機能を有することが好ましい。
【0021】
本発明の多層フィルムの製造方法は、前記発明において、前記第1の塗布液を前記可撓性支持体に供給する前に、前記可撓性支持体上にハードコート層用の塗布液を供給する工程をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、層間における粒子の凝集、およびそれに伴う層間の混合を防ぐことができる多層フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】多層フィルムの層構成を示す図。
【図2】多層フィルムの層構成を示す図。
【図3】エクストルージョン型ダイコーターを用いた逐次塗布を示す構成図。
【図4】エクストルージョン型ダイコーターの先端部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。従って、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
【0025】
本発明による多層フィルムの層構成の例を示す。図1に示される多層フィルムは、可撓性支持体1と、可撓性支持体1上に形成されたハードコート層2と、ハードコート層2上に形成された高屈折率層3と、高屈折率層3上に形成された低屈折率層4とを有する。反射防止フィルムとして好適に用いることができる。図2に示される多層フィルムは、可撓性支持体1と、可撓性支持体1上に形成されたハードコート層2と、ハードコート層2上に形成された中屈折率層5と、中屈折率層5上に形成された高屈折率層3と、高屈折率層3上に形成された低屈折率層4とを有する。この順序で層を形成することにより、反射率を1%以下とすることができる。
【0026】
図1、及び図2の層構成において、ハードコート層2は防眩性を有する防眩層とすることができる。防眩性は、例えばマット粒子の分散することにより得ることができる。また、防眩性は、エンボス加工などの方法による表面の賦形によっても得ることができる。マット粒子の分散によって形成される防眩層は、バインダーとバインダー中に分散された透光性粒子とからなる。防眩性を有する防眩層は、好ましくは防眩性とハードコート性を兼ね備えており、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。
【0027】
図3は、エクストルージョン型ダイコーターを用いた逐次塗布の状態を示す構成図である。塗布装置10は、バックアップローラ12と、第1の塗布液17を供給する第1のエクストルージョン型ダイコーター14と、第2の塗布液23を供給する第2のエクストルージョン型ダイコーター20とを有する。バックアップローラ12により可撓性支持体であるウェブWが支持される。
【0028】
第1のエクストルージョン型ダイコーター14は、単一種類の塗布液を塗布するものであり、内部にポケット15、スリット16を有する。ポケット15は、その断面が曲線及び直線で構成されており、略円形でもよいし、あるいは半円形でもよい。ポケット15は、ダイコーター14の幅方向にその断面形状をもって延長された塗布液の液溜め空間である。ポケット15の有効延長の長さは、塗布幅と同等か若干長めに設定される。ポケット15への第1の塗布液17の供給は、ダイコーター14の側面から、あるいはスリット16の開口部とは反対側の面中央から行なわれる。ポケット15には第1の塗布液17が漏れ出ることを防止する栓が設けられる(図示せず)。スリット16は、ポケット15からウェブWに向けて第1の塗布液17を供給するための流路である。ポケット15と同様にダイコーター14の幅方向にその断面形状を持つ。ウェブW側に位置するスリット16の開口部には、一般に、幅規制板(スペーサ)が挿入され、スリット16の開口部の幅が塗布幅と同じ長さになるように調整される。
【0029】
第1のエクストルージョン型ダイコーター14と同様に、第2のエクストルージョン型ダイコーター20は、単一種類の塗布液を塗布するものであり、内部にポケット21、スリット22を有する。第2の塗布液23がポケット21からスリット22を経由してウェブWに向けて供給される。
【0030】
図1に示す塗布装置10を利用した塗布方法を説明する。ウェブWが図示しない送り出し機から塗布装置10に所定速度で送り出される。ウェブWはバックアップローラ12に所定のラップ角で支持されて搬送される。第1のエクストルージョン型ダイコーター14からウェブWに向けて粒子径1〜100nmの粒子を含んだ第1の塗布液17が供給される。第1の塗布液17はポケット15からスリット16を介して吐出される。スリット16の開口部と走行するウェブWと間にビードが形成され、ウェブW上に第1の塗膜30が形成される。
【0031】
第1の塗膜30が形成されたウェブWがバックアップローラ12に支持されながら、第2のエクストルージョン型ダイコーター20の位置まで、所定の搬送速度で搬送される。
【0032】
第2のエクストルージョン型ダイコーター20から第1の塗膜30に向けて粒子径1〜100nmの粒子を含んだ第2の塗布液23が逐次的(ウエット・オン・ウエット)に供給される。第1の塗膜30が湿潤状態にある状態で、第2の塗布液23が第1の塗膜30に塗り重ねられる。
【0033】
第2の塗布液23はポケット21からスリット22を介して吐出される。スリット22の開口部と走行するウェブW上の塗膜30と間にビードが形成され、第1の塗膜30上に第2の塗膜40が形成される。このとき、第2の塗布液23は、ウェブW面垂直方向の成分が2m/s以上の吐出速度V(m/s)で第1の塗膜30に供給される。第1の塗膜30と第2の塗膜40が形成されたウェブWは、バックアップローラ12に支持されながら次の工程に搬送される。
【0034】
図4は第2のエクストルージョン型ダイコーター20の先端部の拡大図である。図4に示すように、ウェブW上に粒子径1〜100nmの第1の粒子32を含む第1の塗膜30が形成されている。第1の塗膜30が形成されたウェブWが所定の搬送速度で第2のエクストルージョン型ダイコーター20に近づく。第2のエクストルージョン型ダイコーター20から粒子径1〜100nmの第2の粒子42を含む第2の塗布液23がウェブW面垂直方向の速度成分V(m/s)で吐出される。第1の塗膜30と第2の塗膜40の界面で、粒子径1〜100nmの第1の粒子32と粒子径1〜100nmの第2の粒子42が衝突する。この衝突により、粒子径1〜100nmの第1の粒子32と粒子径1〜100nmの第2の粒子42粒子の間の凝集力(静電気力、分子間力)を上回る反発力が与えられ凝集が抑制される。粒子径が1〜100nmと小さい第1の粒子32と第2の粒子42粒子は、比表面積が大きいため、混合状態において非常に凝集しやすいのだが本発明の方法によって粒子同士の凝集を抑制することができる。
【0035】
本実施の形態では、第1の塗膜30と第2の塗膜40をエクストルージョン型ダイコーター14、20により形成したが、これに限定されない。第1の塗膜30と第2の塗膜40の2層をウェブW上に形成したが、ウェブ上に3層以上を形成することができる。上層を下層上に形成するときに、上層の吐出速度を調整し、下層に対して下層膜面垂直方向の成分がある一定以上の速度で衝突させて、凝集力(静電気力、分子間力)を上回る反発力を与えることが重要である。
【0036】
多層フィルムを構成する好ましい材料等について説明する。
【0037】
(可撓性支持体)
可撓性支持体としてはセルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム(屈折率1.48)、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム等が使用できる。
【0038】
支持体の厚さは通常25μm〜1000μm程度のものを用いることができるが、好ましくは25μm〜250μmであり、30μm〜90μmであることがより好ましい。
【0039】
支持体の巾は任意のものを使うことができるが、ハンドリング、得率、生産性の点から通常は100〜5000mmのものが用いられ、800〜3000mmであることが好ましく、1000〜2000mmであることがさらに好ましい。
【0040】
支持体の表面は平滑であることが好ましく、平均粗さRaの値が1μm以下であることが好ましく、0.0001〜0.5μmであることが好ましく、0.001〜0.1μmであることがさらに好ましい。
【0041】
<セルロースアシレートフィルム>
上記各種フィルムの中でも、透明性が高く、光学的に複屈折が少なく、製造が容易であり、偏光板の保護フィルムとして一般に用いられているセルロースアシレートフィルムが好ましい。
【0042】
セルロースアシレートフィルムについては力学特性、透明性、平面性などを改良する目的のため、種々の改良技術が知られており、公開技報2001−1745に記載された技術は公知のものとして本発明のフィルムに用いることができる。
【0043】
セルロースアシレートフィルムの中でもセルローストリアセテートフィルムが特に好ましく、セルロースアシレートフィルムに酢化度が59.0〜61.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
【0044】
セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。
【0045】
また、セルロースアシレートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の値が1.0に近いこと、換言すれば分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることがさらに好ましく、1.4〜1.6であることが最も好ましい。
【0046】
一般に、セルロースアシレートの2,3,6の水酸基は全体の置換度の1/3ずつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。セルロースアシレートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて多いほうが好ましい。
【0047】
全体の置換度に対して6位の水酸基が32%以上アシル基で置換されていることが好ましく、更には33%以上、特に34%以上であることが好ましい。さらにセルロースアシレートの6位アシル基の置換度が0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求めることができる。
【0048】
セルロースアシレートとして、特開平11−5851号公報の段落「0043」〜「0044」[実施例][合成例1]、段落「0048」〜「0049」[合成例2]、段落「0051」〜「0052」[合成例3]に記載の方法で得られたセルロースアセテートを用いることができる。
【0049】
<ポリエチレンテレフタレートフィルム>
ポリエチレンテレフタレートフィルムも、透明性、機械的強度、平面性、耐薬品性および耐湿性共に優れており、その上安価であり好ましく用いられる。
【0050】
透明プラスチックフィルムとその上に設けられるハードコート層との密着強度をより向上させるため、透明プラスチックフィルムは易接着処理が施されたされたものであることが更に好ましい。
【0051】
市販されている光学用易接着層付きPETフィルムとしては東洋紡績社製コスモシャインA4100、A4300等が挙げられる。
【0052】
(ハードコート層)
フィルムの物理的強度を付与するために、好ましくは透明支持体の一方の面にハードコート層が設けられる。
【0053】
好ましくは、その上に低屈折率層が設けられ、更に好ましくはハードコート層と低屈折率層の間に中屈折率層、高屈折率層が設けられ、反射防止フィルムを構成する。ハードコート層は、二層以上の積層から構成されてもよい。
【0054】
ハードコート層の屈折率は、反射防止性のフィルムを得るための光学設計から、屈折率が1.48〜2.00の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.52〜1.90であり、更に好ましくは1.55〜1.80である。
【0055】
ハードコート層の膜厚は、フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、ハードコート層の厚さは通常0.5μm〜50μm程度とし、好ましくは1μm〜20μm、さらに好ましくは2μm〜10μm、最も好ましくは3μm〜7μmである。
【0056】
また、ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。さらに、JISK5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0057】
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
【0058】
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0059】
ハードコート層には、内部散乱性付与の目的で、平均粒径が1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子を含有してもよい。
【0060】
ハードコート層のバインダーには、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、高屈折率モノマーまたは無機粒子、或いは両者を加えることができる。無機粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。本発明では、ハードコート層形成後において、前記多官能モノマーおよび/又は高屈折率モノマー等が重合して生成した重合体、その中に分散された無機粒子を含んでバインダーと称する。
【0061】
ハードコート層のヘイズは、反射防止フィルムに付与させる機能によって異なる。画像の鮮明性を維持し、表面の反射率を抑えて、ハードコート層の内部及び表面にて光散乱機能を付与しない場合は、ヘイズ値は低い程良く、具体的には10%以下が好ましく、更に好ましくは5%以下であり、最も好ましくは2%以下である。
【0062】
一方、表面の反射率を抑える機能に加えて、ハードコート層の表面散乱にて、防眩機能を付与する場合は、表面ヘイズが5%〜15%であることが好ましく、5%〜10%であることがより好ましい。
【0063】
また、ハードコート層の内部散乱により液晶パネルの模様や色ムラ、輝度ムラ、ギラツキなどを見難くしたり、散乱により視野角を拡大する機能を付与する場合は、内部ヘイズ値(全ヘイズ値から表面ヘイズ値を引いた値)は10%〜90%であることが好ましく、更に好ましくは15%〜80%であり、最も好ましくは20%〜70%である。フィルムの目的に応じて、表面ヘイズ及び内部ヘイズを自由に設定可能である。
【0064】
また、ハードコート層の表面凹凸形状については、画像の鮮明性を維持する目的で、クリアな表面を得る為には、表面粗さを示す特性のうち、例えば中心線平均粗さ(Ra)を0.10μm以下とすることが好ましい。Raは、より好ましくは0.09μm以下であり、更に好ましくは0.08μm以下である。本発明のフィルムにおいては、フィルムの表面凹凸にはハードコート層の表面凹凸が支配的であり、ハードコート層の中心線平均粗さを調節することにより、反射防止フィルムの中心線平均粗さを上記範囲とすることができる。
【0065】
画像の鮮明性を維持する目的では、表面の凹凸形状を調整することに加えて、透過画像鮮明度を調整することが好ましい。クリアな反射防止フィルムの透過画像鮮明度は60%以上が好ましい。透過画像鮮明度は、一般にフィルムを透過して映す画像の呆け具合を示す指標であり、この値が大きい程、フィルムを通して見る画像が鮮明で良好であることを示す。透過画像鮮明度は好ましくは70%以上であり、更に好ましくは80%以上である。
【0066】
(高屈折率層、中屈折率層)
本実施の形態の多層フィルムに高屈折率層、中屈折率層を設け、反射防止性を高めることができる。
【0067】
以下の本明細書では、この高屈折率層と中屈折率層を高屈折率層と総称して呼ぶことがある。なお、本実施の形態において、高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層の「高」、「中」、「低」とは層相互の相対的な屈折率の大小関係を表す。また、透明支持体との関係で言えば屈性率は、透明支持体>低屈折率層、高屈折率層>透明支持体の関係を満たすことが好ましい。また、本明細書では高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層を総称して反射防止層と総称して呼ぶことがある。
【0068】
高屈折率層の上に低屈折率層を構築して、反射防止フィルムを作製するためには、高屈折率層の屈折率は1.55〜2.40であることが好ましく、より好ましくは1.60〜2.20、更に好ましくは、1.65〜2.10、最も好ましくは1.80〜2.00である。
【0069】
支持体から近い順に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を塗設し、反射防止フィルムを作成する場合、高屈折率層の屈折率は、1.65乃至2.40であることが好ましく、1.70乃至2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.55乃至1.80であることが好ましい。
【0070】
高屈折率層および中屈折率層に用いるTiO2を主成分とする無機粒子は、分散物の状態で高屈折率層および中屈折率層の形成に使用する。
無機粒子の分散において、分散剤の存在下で分散媒体中に分散する。
【0071】
本実施の形態に用いる高屈折率層および中屈折率層は、分散媒体中に無機粒子を分散した分散液に、好ましくは、さらにマトリックス形成に必要なバインダー前駆体(例えば、後述する電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)、光重合開始剤等を加えて高屈折率層および中屈折率層形成用の塗布組成物とし、透明支持体上に高屈折率層および中屈折率層形成用の塗布組成物を塗布して、電離放射線硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応により硬化させて形成することが好ましい。
【0072】
さらに、高屈折率層および中屈折率層のバインダーを層の塗布と同時または塗布後に、分散剤と架橋反応又は重合反応させることが好ましい。このようにして作製した高屈折率層および中屈折率層のバインダーは、例えば、上記の好ましい分散剤と電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。さらに高屈折率層および中屈折率層のバインダーは、アニオン性基が無機粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、無機粒子を含有する高屈折率層および中屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良する。
【0073】
高屈折率層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して、5〜80質量%添加する。
【0074】
高屈折率層における無機粒子の含有量は、高屈折率層の質量に対し10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜80質量%、特に好ましくは15〜75質量%である。無機粒子は高屈折率層内で二種類以上を併用してもよい。
【0075】
高屈折率層の上に低屈折率層を有する場合、高屈折率層の屈折率は透明支持体の屈折率より高いことが好ましい。
【0076】
高屈折率層に、芳香環を含む電離放射線硬化性化合物、フッ素以外のハロゲン化元素(例えば、Br,I,Cl等)を含む電離放射線硬化性化合物、S,N,P等の原子を含む電離放射線硬化性化合物などの架橋又は重合反応で得られるバインダーも好ましく用いることができる。
【0077】
高屈折率層の膜厚は用途により適切に設計することができる。高屈折率層を後述する光学干渉層として用いる場合、30〜200nmが好ましく、より好ましくは50〜170nm、特に好ましくは60〜150nmである。
【0078】
高屈折率層のヘイズは、防眩機能を付与する粒子を含有しない場合、低いほど好ましい。3%以下であることが好ましく、特に好ましくは1%以下である。高屈折率層は、前記透明支持体上に直接、又は、他の層を介して構築することが好ましい。
【0079】
(低屈折率層)
本実施の形態の多層フィルムの反射率を低減するため、低屈折率層を用いるのが好ましい。
【0080】
低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.46であることが好ましく、1.25〜1.46であることがより好ましく、1.30〜1.46であることが特に好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜200nmであることが好ましく、70〜100nmであることがさらに好ましい。低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な低屈折率層の強度は、500g荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0081】
また、光学フィルムの防汚性能を改良するために、表面の水に対する接触角が90度以上であることが好ましい。更に好ましくは95度以上であり、特に好ましくは100度以上である。
【0082】
低屈折率層を形成するための硬化性組成物は、(A)前記含フッ素ポリマー、(B)無機粒子、(C)オルガノシラン化合物を含有してなるのが好ましい。
【0083】
低屈折率層には、本発明の微粒子を分散・固定するためにバインダーが用いられる。バインダーとしては、前記ハードコート層で述べたバインダーを用いることが出来るが、バインダー自身の屈折率の低い含フッ素ポリマー、あるいは含フッ素ゾルゲル素材などを用いることが好ましい。含フッ素ポリマーあるいは含フッ素ゾルゲルとしては、熱または電離放射線により架橋し、形成される低屈折率層表面の動摩擦係数0.03〜0.30であり、水に対する接触角85〜120°となる素材が好ましい。
【0084】
以上、本発明の多層フィルムの製造方法について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよい。
【0085】
[実施例1]
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明を、より詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
【0086】
(ハードコート層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液とした。
トリメチロールプロパントリアクリレート(ビスコート#295(大阪有機化学(株)製)750.0質量部に、質量平均分子量15000のポリ(グリシジルメタクリレート)270.0質量部、メチルエチルケトン730.0質量部、シクロヘキサノン500.0質量部及び光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)50.0質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
【0087】
(中屈折率層用塗布液の調製)
ZrO微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分
濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶剤組成:MIBK/MEK=9/1、JSR(株)製])5.1質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)1.5質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.05質量部、メチルエチルケトン66.6質量部、メチルイソブチルケトン7.7質量部及びシクロヘキサノン19.1質量部を添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液を調製した。
【0088】
(高屈折率層用塗布液の調製)
ZrO微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶剤組成:MIBK/MEK=9/1、JSR(株)製])15.7質量部に、メチルエチルケトン61.9質量部、メチルイソブチルケトン3.4質量部、シクロヘキサノン1.1質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用塗布液を調製した。
【0089】
(低屈折率層用塗布液の調製)
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
【0090】
【化1】

【0091】
上記構造式中、50:50はモル比を表す。
【0092】
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7gおよび過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は、0.53MPa(5.4kg/cm)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.422であった。
【0093】
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート(商品名:ケロープEP−12、ホープ製薬(株)製)3部を加え混合したのち、イオン交換水31部を加え、61℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1620であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0094】
(中空シリカ粒子分散液の調製)
中空シリカ粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シエル厚み10nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子の屈折率1.31)500部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30.5部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51部加え混合した後に、イオン交換水9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8部を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2%の分散液を得た。得られた分散液のIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5%以下であった。
【0095】
得られた中空シリカ粒子分散液やゾル液を用いて、下記組成の組成物を混合し、得られた溶液を攪拌後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液A〜Dを調製した。
【0096】
(低屈折率層用塗布液の組成)
DPHA 14.5g
P−1 24.5g
中空シリカ粒子分散液(18.2%) 302.2g
RMS−033 5.0g
イルガキュア907 1.0g
MEK 1750g
シクロヘキサノン 223.0g
(ハードコート層の作製)
層厚80μmの透明支持体としてのトリアセチルセルロースフィルム(TD80UF、富士フィルム(株)製、屈折率1.48)上に、前記組成のハードコート層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量150mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ12μmのハードコート層を形成した。
【0097】
以上のハードコート層の上に、それぞれ所望の屈折率となるように調整した、中屈折率層用塗布液を、グラビアコーターを用いて塗布した。
【0098】
中屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm、照射量240mJ/cmの照射量とした。
【0099】
(高屈折率層、低屈折率層の作製)
以上のハードコート層、中屈折率層の上に、2つのスロットダイを用いてウェット・オン・ウェットにて重層塗布した。膜厚については単層で塗布した場合の流量に従って設定した。
【0100】
(第1スロットダイ;高屈折率層)
前記中屈折率層上に高屈折率層塗布液を、第1のスロットダイを用いて塗布した。塗布液の流量は乾燥硬化後の膜厚が110nmになるように調整した。
【0101】
(第2スロットダイ;低屈折率層)
前記高屈折率層上に低屈折率層塗布液を、第2のスロットダイを用いて塗布した。塗布液の流量は乾燥硬化後の膜厚が90nmになるように調整した。
【0102】
乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグ
ラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量400mJ/cmの照射量とした。
【0103】
なお、各層の屈折率の測定は、各層の塗布液を約4μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、各層の屈折率の測定は、各層の塗布液を3〜5μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、多波長アッベ屈折計DR−M2(アタゴ(株)製)にて測定した。「DR−M2,M4用干渉フィルター546(e)nm部品番号:RE−3523」のフィルターを使用して測定した屈折率を波長550nmにおける屈折率として採用した。
【0104】
各層の膜厚は、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を積層後に反射分光膜厚計“FE−3000”(大塚電子(株)製)を用いて算出した。
【0105】
(比較例1)
上記方法にて、透明支持体を搬送速度5m/分で搬送させながら、高屈折率層、低屈折率層をウェット・オン・ウェットにより重層塗布した。
【0106】
(実施例1)
搬送速度が10m/分であること以外は、比較例1と同じ作製方法により、高屈折率層、低屈折率層をウェット・オン・ウェットにより重層塗布した。
【0107】
(実施例2)
搬送速度が15m/分であること以外は、比較例1と同じ作製方法により、高屈折率層、低屈折率層をウェット・オン・ウェットにより重層塗布した。
【0108】
(実施例3)
搬送速度が20m/分であること以外は、比較例1と同じ作製方法により、高屈折率層、低屈折率層をウェット・オン・ウェットにより重層塗布した。
【0109】
(積層フィルムの評価)
得られたフィルムのヘイズをヘイズメーターMODEL 1001DP(日本電色工業
(株)製)を用いて測定した。評価結果を表1に示した。
【0110】
【表1】

【0111】
実施例1-3で示した積層フィルムはウェット・オン・ウェットで重層塗布により一度の塗布工程で形成することができ、粒子の凝集が抑制された低ヘイズのフィルムとすることができた。
【符号の説明】
【0112】
1…可撓性支持体、2…ハードコート層、3…高屈折率層、4…低屈折率層、5…中屈折率層、10…塗布装置、12…バックアップローラ、14、20…エクストルージョン型ダイコーター、15,21…ポケット、16,22…スリット、30…第1の塗膜、40…第2の塗膜、W…ウェブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性支持体を所定速度で搬送する工程と、
前記可撓性支持体に粒子径1〜100nmの第1の粒子を含む第1の塗布液を供給する工程と、
前記可撓性支持体面垂直方向の成分が所定の速度より速い吐出速度で、前記第1の塗布
液の固形分濃度が15%以下のときに前記第1の塗布液上に粒子径1〜100nmの第2の粒子を含む第2の塗布液を供給し、前記第1の粒子と前記第2の粒子同士の凝集力を超える反発力を与えて多層構造を形成する工程と、
前記多層構造を乾燥し多層膜を形成する工程を含む多層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1の塗布液の粘度が1.0mPa・s以下のときに前記第2の塗布液を供給する請求項1記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記可撓性支持体面垂直方向の成分が2m/s以上の吐出速度で前記第1の塗布液上に第2の塗布液を供給する請求項1又は2記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記多層膜はヘイズが5.0%以下である請求項1乃至3の何れか記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第2の塗布液が、エクストルージョン型ダイコーターにより前記第1の塗布液へ供給される請求項1乃至4の何れか記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記第1の粒子及び前記第2の粒子が金属酸化物である請求項1乃至5の何れか記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記多層膜が反射防止機能を有する請求項1乃至6の何れか記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記第1の塗布液を前記可撓性支持体に供給する前に、前記可撓性支持体上にハードコート層用の塗布液を供給する工程をさらに有する請求項1乃至7の何れか記載の多層フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−213110(P2011−213110A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56949(P2011−56949)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】