説明

多層フィルムを形成するための連続プロセス及びかかる方法によって調製される多層フィルム

多層フィルムを形成するための連続プロセス及びかかる方法によって調製される多層フィルム少なくとも2つの重畳ポリマー層を備える多層フィルムを形成する連続自己計量プロセスであって、基材を供給する工程と、基材の表面に垂直なギャップを形成するように、基材から、互いに独立してオフセットされる、2つ以上のコーティングナイフを提供する工程と、基材をコーティングナイフに対して下流方向に移動させる工程と、ポリマーの硬化性液体前駆体をコーティングナイフの上流側に供給し、それによって、2つ以上の前駆体を、基材上に重畳層としてそれぞれのギャップを通してコーティングする工程と、任意で、1つ以上の固体フィルムを供給し、これらを隣接した下ポリマー層の形成と本質的に同時に適用し、このようにして得られた多層フィルムの前駆体を、硬化させる工程と、を含み、硬化性液体前駆体の下層が、それぞれに、前記硬化性液体前駆体の下層を本質的に露出することなく、硬化性液体前駆体又はフィルムの隣接した上層によって被覆される、プロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも2つの重畳ポリマー層を備える多層フィルムを形成する連続プロセスに関する。本開示は更に、有利な光学的性質、特に、可視光線に対する高透過率を有する本開示のプロセスによって得ることができる多層フィルムに関する。本開示は更に、上層がポリウレタンポリマーを含み、底層が(メタ)アクリレート系感圧接着剤を含む、多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
多層フィルムの性質は、例えば、層の組成、多層フィルム内での層の順序、又は層のそれぞれの厚さを変えることによって、広く変化させることができる。したがって多層フィルムは、異なる技術分野における幅広い用途のためにあつらえることができる。
【0003】
多層フィルムは、例えば、従来の積層化装置を使用して対応する単一層フィルムを積層化することによって、得ることができる。しかしながら、得られる多層フィルムは、剥離及び/又は剪断力に特に高温でさらされると、積層化された層間の境界面において層間剥離しやすい。
【0004】
米国特許第4,818,610号(Zimmermanら)は、少なくとも1つの外層が感圧接着層である、複数の重畳層を備える感圧接着テープを開示している。米国特許第‘610号の接着テープは、それぞれが少なくとも1つの光重合性モノマーを含む液体組成物を基材上に連続してコーティングすることによって、調製される。ライナーが上層に取り付けられてもよく、複数の重畳層が照射にさらされることによって硬化されて、接着テープを提供する。接着テープを製造する方法は、米国特許第‘610号の図に説明されており、コーティング組成物が、一対のローラーによって形成されるコーティングナイフ又はコーティングニップの前に、それぞれ「回転ビーズ又はバンク」を形成することを示している。米国特許第‘610号の方法によって得られる重畳層の順序は、層間に発生する物理的混合によって曲げられることがある。
【0005】
順次コーティング法は更に、日本特許第2001/187,362−A号(Takashiら)、及び日本特許第2003/001,648−A号(Takashiら)に開示されている。
【0006】
米国特許第4,894,259号(Kuller)は、複数の重畳層が、多数の分岐管を有する共突出ダイによって低接着キャリアの上に同時にコーティングされる、統合感圧接着テープの製造のプロセスを開示している。重畳層は次に、接着テープを提供するために照射を受ける。米国特許第’259号の図1は、照射工程中に最上露出層が紫外線透過性剥離ライナーで被覆されず、そのため照射工程が不活性雰囲気で行われる必要があるような、いわゆる開面光重合プロセスを説明している。同様に、米国特許第‘259号では、光重合型コーティングを、紫外線照射に対して透過性であるプラスチックフィルムで被覆し、その結果、重畳層がかかるフィルムを通して空気中で照射され得ることが開示されている。
【0007】
米国特許第‘259号のダイコーティング法は、米国特許第4,818,610号のナイフコーティング法に比べ、より複雑で高価である。コーティング組成物は、ダイを通してポンプで送り込まれる必要がある。S.F.Kistler and P.M.Schweizer[ed.],Liquid Film Coating,London 1997,Chapmann & Hall、9ページ右欄によると、ダイコーティングは、「1単位面積あたりにウェブに適用される液体の量が、精密ギアポンプなど、上流の流体計量デバイスによって予め決められており、後は、コーティングデバイスがその量をウェブ下方及びウェブ横断方向の両方に可能な限り均一に分布させる」、事前計量コーティングプロセスと呼ばれる。ポンプは、米国特許第‘259号の低接着キャリアの下方ウェブ速度とともに、コーティング層の厚さを主に規定する、本質的に一定の容積流量を提供する。事前計量ダイコーティングプロセスには、種々の欠点が見られる。ポンプは、コーティングされた層の中へ運動エネルギーを導入し、層間又は厚みの変動間に高度な物理的混合をもたらす非層流パターンを生成し得る。使用されるポンプの種類によって、その容積流量は、例えば、厚さの変動又はコーティング層の他の不均一性となる、振動又は他の変異を示すことがある。ダイの分岐管の形状は、特定のダイが、種々のコーティングプロセスに関して柔軟な方法で使用され得ないように、コーティング組成物の流動挙動に対して調整される必要がある。紫外線透過性プラスチックフィルムは、米国特許第‘259号では、ダイコーティング工程の後に上層に取り付けられ(すなわち、ダイの外側)、任意の技術的プロセスに存在する許容誤差に起因して、例えば、多層フィルムの圧縮、又はプラスチックフィルムと上層との間の気泡の含有をもたらす。プラスチックフィルム、又は例えば剥離ライナーなどの任意の他のフィルムを、前駆体層の多層の積み重ね体の上に、かかるフィルムが多層の積み重ね体の上層の露出面にぴったりと取り付けられるように非侵入的な方法で設置することは、可能ではない。多層の積み重ね体を圧縮することは、例えば、厚さ変動又は他の不均一性をその多層の積み重ね体にもたらす。液体前駆体は、例えば、ライナーが積み重ね体を圧縮する下流方向に沿った位置で回転ビーズを形成することがあり、それは多層の積み重ね体に乱流を導入し、最終的に層の混合につながり得る。フィルムと露出した上面との間に空間が残ると、酸素が上層の表面に接近することが可能になり、前駆体の硬化を妨げ得る。また、かかる場合では、フィルムが多層の積み重ね体を圧縮する状況と比較して、上層の表面があまり滑らかでない、すなわちより高い表面粗さRaを示すことも、一般に観察される。また、気泡の形成が上層で観察される。
【0008】
多層フィルムの事前計量ダイコーティングプロセスは同様に、例えば、欧州特許第0,808,220号(Leonard)、米国特許第5,962,075号(Sartorら)、米国特許第5,728,430号(Sartorら)、欧州特許第1,538,262号(Moritaら)、及びドイツ特許第101 30 680号にも開示されている。米国特許第2004/0,022,954号は、コーティング層を、それらが移動するウェブ基材へと一緒に運ばれる前にまず重畳する、事前計量コーティングプロセスを開示している。類似のコーティングプロセスは、米国特許第4,143,190号に開示される。
【0009】
国際特許第01/89,673−A号(Hools)は、2つ以上のポリマー溶液を支持体の上に共鋳造する、多層多孔質膜を形成するプロセスを開示している。重畳層は次に、相分離を生じさせるために凝固槽の中へと浸され、続いて多孔質膜を形成するために乾燥される。凝固は、凝固槽に初めに接触する液体フィルム表面から発生し、その後、多層の液体層の層を通して凝固は拡散する。拡散及び凝固プロセスは、重畳層間の境界面での混合をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、それぞれ、最先端のプロセスの欠点を示さない、又はより低範囲の欠点のみを示す少なくとも2つの重畳ポリマー層を備える多層フィルムを形成する、費用効果があり、安定した連続プロセスを提供する。本開示はまた、多目的で柔軟であり、また少なくとも2つのポリマー層を備える複雑な構造体の容易な生産を可能にする、多層フィルムを形成する方法も提供する。本開示はまた、多層フィルムの硬化性前駆体に固体フィルムとして初めに含まれていた更なる層を任意で含む、多層フィルムも供給する。加えて、本開示は、例えば、多層フィルムを通る可視光線の透過範囲によって評価されるときに有利な光学的性質を伴う、多層フィルムを供給する。
【0011】
本開示の他の目的は、以下に提供される本開示の詳細な説明から、当業者にとって明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、少なくとも2つの重畳ポリマー層を備える多層フィルムを形成する連続自己計量プロセスであって、
(i)基材を供給する工程と、
(ii)基材の表面に垂直なギャップを形成するように、基材から、互いに独立してオフセットされる、2つ以上のコーティングナイフを提供する工程と、
(iii)基材をコーティングナイフに対して下流方向に移動させる工程と、
(iv)ポリマーの硬化性液体前駆体を、コーティングナイフの上流面に供給し、それによって、2つ以上の前駆体を、基材上に重畳層としてそれぞれのギャップを通してコーティングする工程と、
(v)任意に、1つ以上の固体フィルムを供給し、これらを、隣接した下ポリマー層の形成と本質的に同時に適用する工程と、
(vi)このようにして得られた多層フィルムの前駆体を、硬化させる工程と、
を含み、硬化性液体前駆体の下層が、硬化性液体前駆体の下層を本質的に露出することなく、硬化性液体前駆体又は固体フィルムの隣接した上層によってそれぞれ被覆される、プロセスに関する。
【0013】
本開示はまた、剥離ライナーが、前記方法の工程(v)で、多層フィルムの前駆体の上層の露出面に、かかる上層の形成と本質的に同時に取り付けられる、上述の方法によって得ることができる、多層フィルムに関する。これらの多層フィルムは、好ましくは、光透過性であり、それぞれが可視光線に対して少なくとも80%の透過率を有する少なくとも2つの重畳ポリマー層を備え、それによって、かかる多層フィルムの光透過率は、剥離ライナーが多層フィルムの前駆体の上層の形成に対して下流の位置で、上層表面の露出面に取り付けられるという点で、上述の方法とは異なる方法によって得られる比較多層フィルムの透過率より高い。比較多層フィルムの透過率に対する本開示の前記多層フィルムの透過率の比率は、好ましくは少なくとも1.002である。
【0014】
本開示は更に、少なくとも2つの重畳ポリマー層を備える光透過性多層フィルムであって、その外層のうちの一方が少なくとも1つのエチレン性不飽和ウレタン化合物を含む液体前駆体の重合から得ることができるポリウレタンポリマーを含み、もう一方の反対側の外層が接着剤を含み、接着外層の反対側の外層に垂直に衝突し、多層フィルムの、接着性外層の反対側の外層に垂直に衝突しかつ多層フィルムを通って透過するλ=635nmの波長の平面波面から生じる波面の最大波面収差が、透過される波面の最高最低差値として測定したときに、6λ(=3,810nm)未満である、光透過性多層フィルムに関する。少なくとも2つの重畳ポリマー層はそれぞれ、好ましくは、可視光線に対して少なくとも80%の透過率を有する。接着剤は、好ましくは(メタ)アクリレート系感圧接着剤である。
【0015】
本開示は、好ましくは、上述の方法によって得ることができる光透過性多層フィルムと、ガラス基材とを備えるアセンブリであって、多層フィルムが、それぞれが可視光線に対して少なくとも80%の透過率を有する少なくとも2つの重畳ポリマー層を備え、多層フィルムの外層のうちの一方が接着層であり、それを介して多層がガラス基材に取り付けられ、接着外層の屈折率が、多層フィルムの反対側の外層の屈折率より低い、アセンブリに関する。好ましい実施形態では、接着層と反対側の外層の屈折率の差は、0.030未満である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本開示において有用なコーティング装置の概略図。
【図2a】本開示において使用され得るコーティングナイフの概略断面図。
【図2b】本開示において使用され得るコーティングナイフの概略断面図。
【図3】多層フィルムの上面に垂直に衝突し、多層フィルムを通して透過する、平面波面から生じる波面の波面収差を測定する方法の概略図。
【図4】後述の実施例2に従って調製される多層フィルムの断面マイクロ写真。
【図5】後述の実施例5に従って調製される多層フィルムの断面マイクロ写真。
【図6】後述の実施例11に従って調製される多層フィルムの断面マイクロ写真。
【図7a】後述の実施例12に従って調製される多層フィルムの、異なる倍率でとられた断面マイクロ写真。
【図7b】後述の実施例12に従って調製される多層フィルムの、異なる倍率でとられた断面マイクロ写真。
【図8】実施例13に従って調製される多層フィルムの断面マイクロ写真。
【図9a】ガラスプレート基準に関するSiemens Star試験画像。
【図9b】実施例22の多層フィルムに関するSiemens Star試験画像。
【図9c】比較例1aのフィルムに関するSiemens Star試験画像。
【図9d】比較例1bのフィルムに関するSiemens Star試験画像。
【図9e】比較例1cのフィルムに関するSiemens Star試験画像。
【図9f】実施例23の多層フィルムに関するSiemens Star試験画像。
【図9g】実施例24の多層フィルムに関するSiemens Star試験画像。
【図9h】比較例2aのフィルムに関するSiemens Star試験画像。
【図9i】比較例2bのフィルムに関するSiemens Star試験画像。
【図10】実施例24で使用されるコーティング装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の連続自己計量コーティングプロセスでは、ポリマー材料の2つ以上の硬化性液体前駆体が基材上へコーティングされ硬化されて、少なくとも2つの重畳ポリマー層を備える多層フィルムが供給される。
【0018】
上述及び後述で使用されるとき、重畳という用語は、2つ以上の、ポリマーの液体前駆体の層又は多層フィルムのポリマー層が、それぞれ、互いの上に配置されることを意味する。重畳液体前駆体層は、下層の上面が上層の下面に当接するように、互いに直接隣り合って配置されてもよい。別の配置では、重畳液体前駆体層は互いに当接せず、しかし、1つ以上の液体前駆体層、及び/又は1つ以上の固体フィルム若しくはウェブによって、互いから分離している。
【0019】
上述及び後述で使用されるとき、隣接したという用語は、互いに直接隣り合って配置される、すなわち、互いに当接する、前駆体多層フィルム又は硬化多層フィルム内の2つの重畳層を指す。
【0020】
上層及び底層という用語は、上述及び後述において、それぞれ、多層フィルムの形成プロセスにおける、前駆体層を支える基材の表面に対する液体前駆体層の位置を意味するように使用される。基材表面に隣り合って配置される前駆体層は、底層とされ、基材表面に垂直な方向に基材表面から最も離れて配置される前駆体層は、上層とされる。多層フィルムの生産方法の記述と併せて上述及び後述で使用される上層及び底層という用語は、それ自体は多層フィルムに関して明確な意味を持たないということに留意するべきである。底層という用語は、本開示の方法に関して、コーティング装置の基材に隣接した層として明確に定義される。同様に、底層の反対側にあり、またこの方法の中で最後に適用される多層フィルムの前駆体の外層は、上述及び後述において明確に上層とされる。これに反して、硬化多層フィルム自体について述べるときは、その2つの対向する最外層は、明瞭化の理由のため、上述及び後述において外層と称される。
【0021】
同様に、重畳及び隣接したという用語は、それぞれ、硬化ポリマー層及び硬化多層フィルムに対して適用される。
【0022】
上述及び後述で使用されるとき、前駆体という用語は、硬化することによって多層フィルムの対応するポリマー層のポリマーを得ることができる材料を意味する。前駆体という用語はまた、硬化することによって本開示の多層フィルムを得ることができる液体前駆体の少なくとも2つの層を備える、層の積み重ね体を意味するようにも使用される。硬化は、紫外線、γ(ガンマ)線、若しくはeビーム放射線などの化学線で硬化することによって、又は熱硬化によって、達成することができる。
【0023】
本開示のプロセスは、上に液体前駆体の2つ以上の層がコーティングされる基材と、多層フィルムの前駆体を受容する基材の表面から、互いに独立してオフセットされる、2つ以上のコーティングナイフとを採用して、基材の表面に垂直にギャップを形成する。
【0024】
基材が移動していく方向は、上述及び後述において下流方向と称する。上流及び下流という相対的な用語は、基材の延長に沿った位置を説明する。第1のコーティングナイフに対して下流の位置に配置される第2のコーティングナイフは、上述及び後述において省略して、第1の(上流)コーティングナイフに対して、下流コーティングナイフとも称される。
【0025】
本開示において有用なコーティングナイフはそれぞれ、上流側(又は、面)と、下流側(又は、面)と、多層フィルムの前駆体を受容する基材の表面に面する底部とを有する。ギャップは、コーティングナイフの底部と基材の露出面との間の最小距離として測定される。ギャップは、横方向において(すなわち、下流方向に垂直な方向において)本質的に均一であってよく、又は横方向において、それぞれ、継続的に又は非継続的に変化してもよい。
【0026】
長手方向におけるコーティングナイフの底部の断面プロファイルは、前駆体層が形成され、余分な前駆体が除去(doctored off)されるように設計される。かかる断面プロファイルは幅広く異なることができ、例えば、本質的に平面、曲面、凹状、又は凸状であってよい。プロファイルは、尖っていても四角くてもよく、又はいわゆるブルノーズを提供する小さい曲率半径を有してもよい。ナイフ縁部での前駆体層の後縁の引っかかりを回避するため、フック型プロファイルが使用されてもよい。ブルノーズ型、すなわち半径型プロファイルを有するコーティングナイフが、例えば、図2a及び2bに示される。
【0027】
コーティングナイフは、ウェブの表面に本質的に垂直に配置されてもよく、又は傾斜されてもよく、それによりウェブとコーティングナイフの下流面との間の角度は、好ましくは50°〜130°、より好ましくは80°〜100°である。
【0028】
コーティングナイフの底部は、好ましくは、下流方向に本質的に垂直な方向に少なくともコーティングの所望の幅にわたって延在するように、選択される。コーティングナイフは、好ましくは、基材がコーティングナイフの横方向に延在する縁部とローラーとの間を通過するように、ロールの反対側に配置される。したがって、基材は、基材が下流方向に垂直な方向に弛まないよう、ローラーによって支持される。この配置では、コーティングナイフと基材の表面との間のギャップは、正確に調整されることができる。コーティングナイフが支持されない配置で使用される場合、基材はそれ自体の張力によって定位置に保持されるが、下流方向に垂直な方向にいくらか弛む可能性がある。基材の弛みは、コーティングナイフを、隣接したローラー間で、基材の短い範囲にわたって配置することによって、最小化することができる。連続した基材が使用される場合、エンドレスコンベヤーベルトの上にそれを誘導することによって、弛みを更に最小化することができる。弛みを回避/最小化する別の選択肢は、基材を剛体面上で誘導することである。
【0029】
本開示において有用なコーティングナイフは固体であり、それらは剛性であっても可撓性であってもよい。それらは、好ましくは、金属、ポリマー材料、ガラス、又はそれと同様のもので製造される。可撓性コーティングナイフは比較的薄く、好ましくは、下流方向に0.1〜0.75mmの厚さであり、好ましくは、ステンレス鋼又はバネ鋼などの可撓性鋼で製造される。剛性コーティングナイフは、金属材料又はポリマー材料で製造されることができ、通常は少なくとも1mm、好ましくは少なくとも3mmの厚さである。コーティングナイフは、張力をかけられ、また基材に面し横方向に延在するコーティング縁部を提供するようにローラー、バー、ロッド、ビーム、又はそれと同様のものによって適切に屈折される、連続的に供給されるポリマーフィルムによって、提供されてもよい。所望ならば、ポリマーフィルムは、同時に剥離ライナーとして又は多層フィルムの前駆体に組み込まれた固体フィルムとして使用されてもよい。
【0030】
本開示において、硬化性液体前駆体の下層(すなわち、上層とは異なる任意の層)は、それぞれ硬化性液体前駆体又は固体フィルムの隣接した上層で、本質的にその開始からコーティングされる。したがって、下硬化性液体前駆体層は、この下硬化性液体前駆体層を本質的に露出することなく、それぞれ硬化性液体前駆体層の隣接した上層によって又は固体フィルムによって、直接に被覆される。固体フィルムは、好ましくは、同様に硬化性液体前駆体の下層を提供するコーティングナイフの上流側に沿って適用される。このように、フィルムは、下層の上面に本質的にこの層の形成の間に取り付けられ、下層は露出されない。硬化性液体前駆体の上層をこの下層の上面に、下層のかかる上面を露出させることなく直接に付着させることは、2つの層を形成する2つのコーティングナイフを適切に配置することによって達成され得る。一実施形態では、液体前駆体は、下流方向に互いに当接する2つのコーティングステーションを介して適用され、それによってコーティングチャンバの後壁は、それぞれコーティングナイフを備えるか又は形成する。したがって、対応するコーティングナイフによって形成されるとき、下層は対応するコーティングチャンバに含まれる上層の硬化性液体前駆体で、直接に被覆される。通常、上層を形成するコーティングナイフは、下層が、対応するコーティングナイフでのその形成の際に、上層を形成する硬化性液体前駆体で本質的に直接に被覆されるように、配置される必要がある。
【0031】
別の実施形態では、固体フィルム、特に剥離ライナーなどは、上層の露出面に、かかる上層の形成と本質的に同時に、適用される。固体フィルムは、例えば、コーティング装置の最も下流のコーティングナイフ(すなわち、後壁)の上流面に沿って、適用され得る。本実施形態では、固体フィルムは、上層の露出面に滑らかにぴったり取り付けられ、それによって、それぞれ、上層又は多層の積み重ね体の圧縮や、又は固体フィルムと上層の露出面との間の空気の含有を回避する。
【0032】
本発明者は、かかる理論によって束縛されることを望みはしないが、コーティングナイフを用いて、固体フィルム又は隣接した上層を形成する液体前駆体をそれぞれ、下層の形成と本質的に同時に下液体前駆体層上へ上述のように付着させることは、優れた性質によって特徴付けられる多層フィルムをもたらすことが推測される。本開示の多層フィルムは、それぞれ、例えば、隣接した層又はフィルム間の明確に画定された比較的はっきりした境界面、及び隣接した層又はフィルムの強固な固定との両方を示し、その結果、本開示のフィルムは、対応する層の積層化によって得られる対応するフィルムよりも高いT−剥離強度を通常示す。本開示の多層フィルムは更に、高い光透過率、低い色ずれ、及び多層フィルムを通るその透過後に垂直に衝突する平面波面から生じる波面の低い最大収差などの、優れた光学的性質を示す。
【0033】
本開示の一実施形態において、多層フィルムの前駆体は、1つ以上のコーティングステーションを備えるコーティング装置を使用することによって得られる。コーティングステーションは、1つ以上のコーティングチャンバと、所望であれば、最上流のコーティングチャンバに対して上流に回転ビーズとを備えてもよい。コーティングチャンバはそれぞれ、液体前駆体が互いの上に重畳する層として適用されるように、コーティングチャンバの下を移動する基材の方を向いた開口部を有する。回転ビーズの液体前駆体は、例えば、最上流のコーティングナイフの上流面を介して、適用される。
【0034】
コーティングチャンバはそれぞれ、好ましくは下流方向に対して本質的に横方向に延在する、上流壁及び下流壁を有する。それぞれ、コーティング装置の最上流壁は前壁とも称され、また最下流壁はコーティング装置の後壁とも称される。2つ以上のコーティングチャンバが存在する場合、上流コーティングチャンバの下流壁は、好ましくは、隣接する下流コーティングチャンバの上流壁と本質的に当接する配置にある。このことは、上流コーティングチャンバの下流壁とその隣接したコーティングチャンバの上流壁との間の距離が、好ましくは2.5mm未満であり、より好ましくは1mm未満であり、特に好ましくはこれらの壁の間に全く距離がないことを意味する。特定の一実施形態では、上流コーティングチャンバの下流壁と隣接した下流コーティングチャンバの上流壁とは1つの壁に統合され、これは上述及び後述において中間壁と称される。
【0035】
下流壁はそれぞれ、基材に面するコーティングナイフを備える。コーティングナイフは、上に液体前駆体が取り付けられる基材の露出面の上方に配置され、それによって、基材に面するコーティングナイフの底部と、基材の露出面、又は先に取り付けられた液体前駆体(単数又は複数)の露出層との間に、それぞれ隙間を提供する。基材の表面に垂直な方向で測定されるとき、コーティングナイフの底部と基材の表面との間の距離は、上述及び後述においてギャップと称される。液体前駆体は、コーティングチャンバから、それぞれのコーティングナイフの上流側へ供給される。コーティングナイフと基材の表面との間のギャップは、例えば、下流方向の基材の速度、それぞれ既に適用された液体前駆体層又は固体フィルムの基材に垂直な厚さ、それぞれのギャップを介して適用される液体前駆体の粘度、既に適用された液体前駆体の粘度、コーティングナイフの種類、形体、及びプロファイル、コーティングナイフが基材の垂線に対して配向される角度、下流方向のコーティング装置の延長部に沿ったナイフの位置、並びに基材の種類を含む他のパラメータと併せて、対応するコーティングの厚さを調節するように調整される。
【0036】
コーティングナイフはそれぞれ、それぞれの下流壁に取り付けられた別個の要素であってよく、又は下流壁を形成してもよい。また、1つ以上の下流壁が、剥離フィルムなどの固体フィルムとして供給されることも可能である。
【0037】
ナイフプロファイルは、異なるナイフプロファイルを有するいくつかのコーティングナイフを備える回転可能なコーティングナイフデバイスを使用することによって、コーティングチャンバを通して供給される特定の液体前駆体に対して、最適化されることができる。したがって、当業者は、後壁、前壁、又は中間壁として使用されるコーティングナイフを、異なるコーティングチャンバ内で、それぞれに迅速に変更することができ、特定の多層フィルムを生産するために、コーティング装置内のコーティングナイフプロファイルの最適な順序を評価することができる。
【0038】
本開示において有用なコーティング装置が1つのコーティングチャンバしか備えていない場合、コーティングチャンバの上流壁及び下流壁の両方が、それぞれ、コーティングナイフを備えるか、又は形成する。液体前駆体は、例えば、いわゆる回転ビーズによって前壁の上流縁へ供給されてもよく、又は任意の種類のホッパーによって供給されてもよい。
【0039】
本開示のコーティング装置が2つ以上のコーティングチャンバを備える場合、前壁は、コーティングナイフを形成してもしなくてもよい。前壁がコーティングナイフを形成しない場合は、それは基材に面する前壁の底部の横の延長部と基材の露出面との間に本質的にいかなるギャップもないように配置されることができ、その結果、液体前駆体の上流の漏れが低減及び/又は最小化される。前壁がコーティングナイフである場合、その底部のプロファイルは、第1の上流コーティングチャンバ内に収容される液体前駆体の上流の漏れを抑制するように形成され得る。これは、例えば、基材に面する前壁の横方向に延在する縁部の本質的に半径型のプロファイルを使用することによって、達成され得る。
【0040】
コーティングチャンバはそれぞれ、下流壁、上流壁、及び本質的に下流方向に延在する2つ以上の側壁を有し、それによって、上流チャンバの下流壁及び隣接する下流チャンバの上流壁は、1つの中間壁に統合されてもよい。コーティングチャンバの下流方向の断面は幅広く変化してもよく、例えば、正方形、矩形、多角形、又は規則的若しくは不規則な曲面であってもよい。下流壁、上流壁、及び/又は側壁は、別個の要素として存在してもよいが、例えば、コーティングチャンバが1つの部品として形成されるか、又は上流壁及び側壁が、例えば、下流壁コーティングナイフから分離した1つの部品として形成されることも可能である。下流壁であるコーティングナイフが、例えば、回転可能なコーティングナイフデバイスによって容易に交換され得るように、下流壁が別個の要素又は部品であることが一般に好ましい。コーティング装置が2つ以上のコーティングチャンバを備える場合、それらのそれぞれの断面は、好ましくは、隣接したコーティングチャンバが、下流方向に本質的に当接する構成で配置され得るように選択される。コーティングチャンバの上流壁及び下流壁は、好ましくは、下流方向に対して横の方向に本質的に直線である。
【0041】
コーティングチャンバの下流方向の延長、すなわち、コーティングチャンバの前壁と後壁との間の距離は、好ましくは2mm〜500mmであり、より好ましくは5〜100mmである。本発明者は、かかる理論によって束縛されることを望みはしないが、前壁と後壁との間の距離が小さすぎると、ギャップに向かう液体前駆体の流れは不安定になりがちであり、これは例えば、筋又は「刷毛目」などの望ましくないコーティング欠陥をもたらすことが推測される。コーティングチャンバの前壁と後壁との間の距離が大きすぎると、ギャップに向かう液体前駆体の連続的な流れが断絶することがあり、その結果、移動する基材の連続的なコーティングが中断する、及び/又は混合が発生し得る。コーティングチャンバ又はトラフの流量パターンは、米国特許第5,612,092号、4欄、51行〜5欄、56行において、より詳細に議論されている。この一節は、本明細書に参照により援用される。
【0042】
コーティングチャンバの容積は、基材の表面に平行なそのそれぞれの断面、及び基材の表面に垂直なそのそれぞれの高さによって規定される。コーティングチャンバの高さは、好ましくは10〜1,000mmであり、より好ましくは25〜250mmである。コーティングチャンバの容積は、好ましくは、下流方向に対して交差するコーティング幅に応じて選択される。
【0043】
コーティングチャンバは、液体前駆体の粘度が必要に応じて制御及び調整され得るように、加熱又は冷却手段が取り付けられてもよい。
【0044】
液体前駆体は、好ましくは周囲気圧下で適用され、その結果、前駆体の容積流量が、基材の、また任意で前駆体多層フィルムの中へ導入される固体フィルム又はウェブの動きの結果として、前駆体上に作用する剪断力から主に得られるように、る。液体前駆体の容積流量は、それぞれのコーティングチャンバ内に含まれる前駆体の静水圧によって支持される。本開示の方法では、静水圧から得られる力は、抵抗力、又は移動する基材、及び任意に移動する固体フィルムによってかけられる力と比較して、低いことが好ましい。コーティングチャンバ内の液体前駆体の高さは、好ましくは、かかる高さが、コーティングプロセス全体を通して、少なくとも下流方向のコーティングチャンバの幅に一致するように制御される。コーティングチャンバ内の液体前駆体の高さが、下流方向のコーティングチャンバの幅より小さい場合、かかるコーティングチャンバを介して適用される前駆体と隣接した下前駆体層との部分的混合が発生し得る。それぞれのコーティングチャンバ内の液体前駆体の高さは、好ましくは、本質的に一定に保たれる。
【0045】
コーティングチャンバは、空気、又は窒素若しくはアルゴンなどの不活性ガスで加圧されることも可能である。コーティング装置は、コーティングチャンバが、別々に及び単独に加圧され得るように装備されてもよく、それは、例えば、異なる液体前駆体間の粘度の差、又はコーティングチャンバ内の液体前駆体カラムの高さの差を平衡させるために望ましい場合がある。好ましくは、コーティングチャンバは、液体前駆体が、その液体前駆体の上部に配置されるガス雰囲気を介して加圧されるように、それぞれの液体前駆体で完全には充填されない。それぞれの液体前駆体上にかかる総過剰圧は、プロセスが自己計量方式で進行し続けるように、すなわち、前駆体の湿式コーティング厚と基材のダウンウェブ速度との間にいかなる反比例もないように選択される。それぞれの液体前駆体上にかかる総過剰圧は、好ましくは0.5バール(50kPa)未満であり、より好ましくは0.25バール(25kPa)以下である。特に好ましい実施形態では、ガス過剰圧は印加されず、すなわち、本開示のプロセスは好ましくは周囲条件下で進行する。
【0046】
基材は、下流方向に対して垂直な方向に互いに重畳される、液体前駆体の2つ以上の一連の層を受容するように、コーティングナイフに対して下流方向に移動される。
【0047】
基材は、硬化後にそこから多層フィルムが分離及び除去される、一時的な支持体であってもよい。一時的な支持体として使用されるとき、基材は、好ましくは、硬化多層フィルムを基材からきれいに除去することを可能にするように適合される剥離被覆面を有する。一時的な支持体を提供するとき、基材が、例えば、保管のためにそれを巻き上げるときに、多層フィルムに取り付けられたままであることが望ましい場合がある。これは、例えば、多層フィルムの底層が、感圧接着層などの接着層である場合である。剥離被覆基材は、感圧接着層の表面を、例えば汚染から保護し、多層フィルムがロールに巻き取られることを可能にする。一時的な基材は、その後、例えば多層フィルムを表面に取り付けるときに、最終ユーザーによって多層フィルムから単に除去される。基材に面する多層フィルムの第1の層の表面が保護される必要のない他の実施形態では、一時的な支持体を提供する基材は、前駆体層の硬化の後で、多層フィルムを保管する前に、除去され巻き取られてもよい。別の実施形態では、一時的な支持体を提供する基材は、好ましくは露出した剥離面を有するエンドレスベルトによって供給されてもよい。液体前駆体層の積み重ね体を硬化した後に得られた多層フィルムは、エンドレスベルトから分離され、例えば巻き取られることができる。
【0048】
別の方法としては、基材は、得られる多層フィルムに層として統合され得る。かかる場合では、基材はフィルム又はウェブとして連続して送り込まれ、液体前駆体層の硬化の後に、多層フィルムの一部として収集される。基材の表面は、好ましくは、例えば、硬化ポリマー底層の基材への固定を促進するように、コロナ処理を受けてもよい。下ポリマー層の基材への固定はまた、下液体前駆体層の基材へのコーティングの前に、いわゆる結合層(tie layer)を基材の表面に適用することによっても改善され得る。本開示において好適な結合層には、例えば、3M Co.から市販されているポリアミド系プライマーである、3M Primer 4297、又は活性物質としてアクリルポリマー及び塩素化ポリオレフィンを含有するプライマーであり、3M Co.から市販されている、3M Primer 4298が挙げられる。
【0049】
一時的な基材として、又は多層フィルムへ組み込まれる基材としての両方に好適な基材は、それぞれ、ポリマーフィルム若しくはウェブ、金属フィルム若しくはウェブ、織布ウェブ若しくは不織布ウェブ、ガラス繊維強化ウェブ、炭素繊維ウェブ、ポリマー繊維ウェブ、又はガラス、ポリマー、金属、炭素繊維、及び/若しくは天然繊維のエンドレスフィラメントを含むウェブを含む群から選択され得る。基材上に底層として適用される液体前駆体の性質によって、及び基材が一時的な支持体として使用されるか、又は多層フィルムの一体層として使用されるかによって、当業者は、いかなる発明的情報もなしに、基材表面の処理が必要であるか、又は望ましいかを決定することができる。本発明者は、本開示の方法が、基材の露出面の粗さには比較的反応しにくいことを見出した。表面粗さは、算術平均表面粗さRによって特徴付けることができ、例えば、レーザ形状測定によって測定することができる。不織ウェブが、10〜150μm、より好ましくは15〜100μmのR値を有し得るのに対して、本開示での使用に好適なポリマーフィルムは、例えば、1〜20μm、より好ましくは1〜10μmのR値を有し得る。本開示の方法によって得ることができる多層フィルムは、基材の表面粗さRから本質的に独立した、下流方向のウェブの延長に沿って均質な厚さの下ポリマー層を示す。下流方向に対して垂直な方向の、下ポリマー層の厚さの平均偏差は、好ましくは、任意に選択された10mmの距離にわたって、10%未満、より好ましくは5%未満、特に好ましくは2.5%未満である。
【0050】
基材が一時的な支持体として使用される場合、コーティングナイフに面するその任意で剥離処理される表面は、好ましくは、基材に適用される液体前駆体に関して本質的に不浸透性である。
【0051】
基材が、多層フィルムの前駆体の硬化後に多層フィルムの一体部分を形成する場合は、基材の任意で処理される表面が、下前駆体層に関して本質的に不浸透性であるか、又は下液体前駆体が、硬化前に基材の反対側の表面に少なくとも移動しないことも、それぞれ望ましい。特定の多孔性を有する基材、例えば、不織布基材又は紙などの場合では、第1のポリマー層と基材の表面との間の境界面固定が改善されるように、液体前駆体は、表面領域内へ、また基材のバルク内へ、それぞれ浸透することが望ましい場合がある。所定の基材に対する液体前駆体の浸透又は移動挙動は、例えば、液体前駆体の粘度及び/又は基材の多孔性によって影響され得る。
【0052】
基材に対して垂直な液体前駆体層の厚さは、主に、コーティングナイフの底部と基材の表面との間のギャップ、液体前駆体のそれぞれの粘度、及び基材の下流速度に影響される。
【0053】
液体前駆体層の厚さは、好ましくは、それぞれ独立して25μm〜3,000μm、より好ましくは75μm〜2,000μm、特に好ましくは75μm〜1,500μmである。コーティング層の望ましい厚さは、例えば、液体前駆体及び得られる硬化ポリマー層の性質による。
【0054】
前駆体層の所望の厚さ値を提供するのに必要とされるギャップ幅は、コーティングナイフのプロファイル、基材に対して垂直なコーティングナイフの角度、基材の下流速度、コーティングされる液体前駆体の層の数、液体前駆体の粘度の絶対値、及び隣接する層内に存在する液体前駆体の絶対粘度値に対する特定の前駆体の粘度の絶対値の比率などの、種々の要因による。通常、ギャップ幅は、かかるギャップによって調節される液体前駆体のそれぞれの層の所望の厚さよりも大きい必要がある。例えば、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,4th ed.,ed.by J.Kroschwitz et al.,New York,1993,vol.6,p.610には、経験則として、基材に対して垂直に配置され、また正方形プロファイルが基材に対して平行に配置された横方向に延在する底部を有する、コーティングナイフによって得られる液体前駆体層の厚さは、広範囲の基材速度に関してギャップの約半分の幅であることが開示されている。
【0055】
ギャップ幅は、それぞれの場合において、基材に面するコーティングナイフの底部と基材の露出面との間の最短距離として測定される。ギャップは、好ましくは、50μm〜3,000μm、より好ましくは100μm〜2,500μmの値に調整される。
【0056】
25℃での液体前駆体のブルックフィールド粘度は、好ましくは100〜50,000mPa・sであり、より好ましくは500〜30,000mPa・sであり、特に好ましくは500〜25,000mPa・sである。液体前駆体が、例えば、色素、又は熱伝導性及び/若しくは導電性粒子などの固体粒子を含む場合、液体前駆体の粘度は、好ましくは1,000〜30,000mPa・sであり、より好ましくは3,000〜25,000mPa・sである。
【0057】
本発明者は、より低いブルックフィールド粘度を有する液体前駆体は、より速く、またより薄くコーティングできることを見出した。500μm未満の液体前駆体の層厚が要求される場合、液体前駆体のブルックフィールド粘度は、好ましくは15.000mPa・s未満であり、より好ましくは、500mPa・s〜12.500mPa・sである。
【0058】
液体前駆体の粘度が約100mPa・s未満の場合、コーティングされた層は不安定になりがちであり、前駆体層の厚さは制御することが困難であり得る。液体前駆体の粘度が約50.000mPa・sより高い場合、均質なフィルムのコーティングは、高粘度によって誘発される高剪断力のため、困難になりがちである。液体前駆体が、硬化性モノマー及び/又はオリゴマーを含む場合、前駆体の粘度は、前駆体を部分的に重合して所望の被覆性を提供することによって、上記の範囲内に制御された方法で、増大されてもよい。別の方法としては、液体前駆体の粘度は、ヒュームドシリカなどのチキソトロープ剤、及び/又はブロックコポリマー(SBR、EVA、ポリビニルエーテル、ポリアルファオレフィン)、シリコーン、若しくはアクリルなどのポリマー添加物を添加することによって、増大及び調整されてもよい。液体前駆体の粘度はまた、例えば、硬化性モノマー及び/又はオリゴマーの量を増大することによって、減少されてもよい。
【0059】
液体前駆体層の積み重ね体の中において、25℃での第1のブルックフィールド粘度を有する液体前駆体の第1の上層の絶対及び/又は相対厚さは、通常、第1の層に隣接し、またその前駆体が前記第1の前駆体のものより低い25℃での第2のブルックフィールド粘度を有する液体前駆体の第2の層の絶対及び/又は相対厚さと比較して、基材の下流速度の増大に伴って増大することが見出された。特定の液体前駆体層の相対厚さという用語は、硬化前の液体前駆体層の完成した積み重ね体の厚さ、すなわち、前駆体多層フィルムの厚さに対するこの前駆体層の厚さの比率として定義される。
【0060】
更に、上液体前駆体層の液体前駆体のブルックフィールド粘度と、前駆体層の積み重ね体内の隣接した下液体前駆体層との比率は、好ましくは0.1〜10であり、より好ましくは0.2〜7.5であることも見出された。かかる比率がこれらの好ましい範囲外であると、かかる液体前駆体層の厚さは、下流方向において不均質になり得ることが見出された。
【0061】
基材の下流速度は、好ましくは0.05〜100m/分であり、より好ましくは0.5〜50m/分であり、特に好ましくは1.5〜50m/分である。基材の下流速度が0.05m/分未満の場合、ギャップに向かう液体前駆体の流量は低速及び不安定になり、コーティング欠陥をもたらす。基材の下流速度が100m/分より高い場合、前駆体層間の境界面で乱流が発生することがあり、前駆体の粘度及びレオロジーに応じて、制御されない混合及び/又はコーティング欠陥をもたらし得る。
【0062】
本発明者は、液体前駆体の特定の粘度に対して、基材の下流速度を高すぎて選択すると、コーティングの質が許容できないほど悪化する可能性があることを見出した。質の悪化は、気泡の混入、又は筋状で不均一なコーティングの発生に反映され得る。コーティング速度は、好ましくは、かかる層の積み重ね体中の全ての液体前駆体層が、均一にかつ高品質でコーティングされるように、すなわち、速度に最も敏感な層が全体的な下流速度を決定するように適合される。基材の下流速度が低く選択されすぎると、層厚の低減は、対応するギャップ幅の低減のみによっては達成できなくなることがあり、下流速度の増大も必要となり得る。本発明者は更に、基材の下流速度が、上記で指定される最大値と最小値との間で選択されることが好ましいことを見出した。かかる下流速度間隔では、液体前駆体層の厚さは、下流速度の変動に比較的影響を受けず、その結果、液体前駆体層の厚さは、ギャップ幅によって大きく調節され得る。
【0063】
本開示において好適な液体前駆体は、化学線への、具体的には、紫外線、γ線、及びEビームへの曝露によって、又は熱への曝露によって硬化され得る、広範囲の前駆体を含む。液体前駆体は、好ましくは、可視光線に対して光透過性である。好ましい実施形態では、本開示の多層フィルムに使用される前駆体は、300μmの厚さを有する前駆体の硬化単一フィルムが、後述の試験の項で指定される試験方法に従って測定されるときに、可視光線(D65)に対して少なくとも80%の透過率を示すように選択される。本開示の多層フィルムで使用される前駆体は、単一の300μm厚の硬化フィルムとして存在する場合、より好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%の透過率を示す。
【0064】
重畳ポリマー層の光透過率に起因する、可視光線に対する多層フィルムの光透過率は、好ましくは、少なくとも80%であり、より好ましくは少なくとも85%であり、特に好ましくは少なくとも90%である。
【0065】
露出されない液体前駆体層の縮合分子は通常、多層フィルムから完全には排出され得ないため、その硬化が水若しくはアルコール分子などの低分子量縮合分子の放出を含まない、又はかかる放出を低量しか含まない前駆体が、通例好まれる。
【0066】
本開示の多層フィルムを形成する方法は、高度に多用途であり、目的にかなった性質を有する広範囲の多層フィルムの製造を可能にする。
【0067】
本発明者は、かかる考察によって束縛されることを望みはしないが、本開示の方法は、先行技術の方法では到達し得ない高品質の層流様式を確立することが推測される。
【0068】
先行技術において開示される多層フィルムを製造するための事前計量ダイコーティング方法とは対照的に、本開示のプロセスは、液体硬化性前駆体の流量が主に剪断力に起因する自己計量プロセスである。これらは、下流方向に移動する基材又は既にそれに取り付けられた層によって提供され、それによってそれぞれの液体前駆体上に抵抗流を与える。剪断力はまた、存在する場合は、それぞれ、最初はコーティングナイフの上流側に沿って基材に向かって移動し、次に、コーティングナイフの横方向に延在する縁部において偏向した後、下流方向に基材に対して平行に移動する固体フィルム(単数又は複数)によっても提供される。これらの剪断力から得られる容積流量は、本質的に層流で安定しており、例えば、それぞれのギャップにおいて液体前駆体層を形成するときに発生し得るいかなる乱流も、液体前駆体層及び任意で固体フィルム(単数又は複数)を互いの上に本質的に同時に適用することによって、効果的に軽減されると考えられる。下液体前駆体層上に上方の隣接した液体前駆体を本質的に同時に適用することは、好ましくは、コーティングナイフを適切に配置することによって提供される。仮に存在する場合、隣接した上固体フィルムを本質的に同時に適用することは、好ましくは、下前駆体層を形成するコーティングナイフの上流面に沿ってかかるフィルムを誘導することによって提供される。
【0069】
多層フィルムを製造するための事前計量ダイコーティングプロセスでは、計量ポンプによって提供される容積流量は、ダイから出る流量に等しい。したがって、かかる流量は、基材のダウンウェブ速度とは独立して本質的に一定であり、そのため基材の上にコーティングされた前駆体層又は先行する前駆体層の厚さは、それぞれ、基材のダウンウェブ速度に本質的に反比例する。それと対照的に、本開示の自己計量コーティングプロセスでは、それぞれのコーティングナイフを介してウェブに適用される容積流量は一定ではなく、しかしウェブ速度と共に変化し、コーティングされた前駆体層の湿厚さは、液体前駆体流量と本開示のコーティング装置との相互作用により主に影響を受ける(S.F.Kistler et al.、Liquid Film Coating、loc cit.、p.10、左欄下部並びに第12章及び第13章を参照)。本開示において、容積流量は、湿フィルム厚さと基材のダウンウェブ速度との間に反比例がないように、ウェブ速度の増大に伴って増大する傾向がある。本開示の自己計量プロセスは、更に、コーティングナイフによって、移動するウェブに計量される、それぞれのコーティングチャンバ内の過剰の液体前駆体の存在によって特徴付けられる。対照的に、事前計量ダイコーティングプロセスは一定の容積流量によって特徴付けられ、そのためポンプによって送られるものが、移動するウェブに同様に適用される。したがって、本開示の自己計量プロセスは、先行技術において使用される事前計量ダイコーティングプロセスとは根本的に異なる。
【0070】
本開示の方法によって得ることができる多層フィルムは、好ましくは、例えば、横方向における硬化ポリマー層の本質的に均質な厚さなどの、本質的に均質な性質を示す。本発明者には、本開示の剪断力様式によって確立される安定した流量パターンが、全ての前駆体に関するコーティング幅にわたって本質的に一定な液体前駆体の流量履歴をもたらすことが推測される。下流方向に対して垂直な方向の、多層フィルムの硬化層の厚さの平均偏差は、好ましくは、任意に選択された10mmの距離にわたって5%未満、より好ましくは2.5%未満、特に好ましくは2%未満である。硬化多層フィルムの優れた均一性は、例えば、以下の図4〜8の断面マイクロ写真から見てとれる。
【0071】
本開示の方法において、主に剪断力様式に起因する容積流量は、それぞれのコーティングナイフと基材との間のギャップ、コーティングナイフの互いに対する配置、コーティングナイフの底部の形状、基材の速度、及び硬化性液体前駆体の粘度によって主に制御される。これらのパラメータは容易に制御され、本質的に層流であり横方向に本質的に均質である安定した流量パターンに悪影響を及ぼすことなく、幅広く変化され得る。本開示のプロセスでは、それぞれのコーティングナイフと基材との間のギャップは、コーティングプロセスの進行中に広範囲に変更及び調整され得る。したがって、本開示のプロセスは、現況技術の湿前駆体層の多層の積み重ね体のための事前計量ダイコーティングプロセスと比べ、より多用途で扱い易い。
【0072】
本開示の方法は、特異的な性質を備え、特に、具体的には可視光線に対する高い光透過率などの好ましい光学的性質を備える新規な多層フィルムを提供する。本発明者は、かかる理論によって束縛されることを望みはしないが、これは、隣接した層間の境界面で起こる微量拡散に起因すると推測される。
【0073】
その一方、かかる微量拡散の範囲は、隣接した層の一体性に影響を及ぼさないように十分に小さいと考えられる。これは、例えば、隣接した層間の明確に認識可能でくっきりした境界面を示す、図4〜8のマイクロ写真から見てとれる。これは、例えば、一対の隣接した硬化層のうちの1つに染料を添加し、もう一方の硬化層には染料を添加しないことで、実証することができる。かかる多層フィルムからの断面マイクロ写真は、好ましくは、染められた層から染められていない層へのくっきりとした遷移を示し、境界面は不鮮明ではないのが好ましい。
【0074】
また一方、かかる微量拡散の範囲は、例えば、隣接した層の屈折率間の段階的遷移をもたらし、したがって増大された透過率をもたらす、境界面での微小勾配を提供するのに十分に大きいと考えられる。2つの隣接した液体前駆体層間の境界面の外観、したがって微量拡散の範囲は、2つの隣接した前駆体層の液体前駆体の粘度に主に影響され得る。2つの液体前駆体の粘度が高くなればなるほど、通常、2つの隣接した前駆体層間の境界領域はより鋭縁となる。境界面の微量拡散又は微量混合は、隣接した層の前駆体のうちの少なくとも1つのブルックフィールド粘度を、5,000mPa・s未満に、より好ましくは2,500mPa・s未満に、特に好ましくは500〜1,500mPa・sに減少させることによって促進され得ると考えられる。境界面の微量拡散は、隣接した両方の層の液体前駆体が、互いに独立して、5,000mPa・s未満の、より好ましくは2,500mPa・s未満の、特に好ましくは500〜1,500mPa.sのブルックフィールド粘度を示すときに、更に促進されると考えられる。
【0075】
微量拡散はまた、例えば、増大されたT−剥離強度などの改善された機械的特性に反映される、硬化後の多層フィルムの隣接した層間の接着強度を増大するとも考えられる。
【0076】
多層フィルムの硬化ポリマー上層は、好ましくは、その露出面の優れた仕上げ、すなわち、例えば、表面Rに関して評価される際に、低い表面粗さを示す。
【0077】
本開示の方法の特異的性質は、かかる方法によって得ることができる多層フィルムの性質、及びかかる多層フィルムを備えるアセンブリの性質に、それぞれ反映される。本開示の好ましいアセンブリは、本開示の方法によって得ることができる光透過性多層フィルムとガラス基材とを備える。かかるアセンブリにおいて使用される多層フィルムは、接着外層を介してガラス基材に取り付けられ、多層フィルムの重畳ポリマー層はそれぞれ、可視光線に対して少なくとも80%の透過率を有し、接着層の屈折率は、反対側の外層の屈折率よりも低い。可視光線に対するポリマー層の透過率は、それぞれ300μmの厚さを有する硬化単一前駆体層に対して、後述の試験の項で指定される試験方法に従って測定される。本開示の多層フィルムで使用される前駆体層は、単一の300μm厚の硬化フィルムとして存在する場合に、より好ましくは、少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%の透過率を示す。重畳ポリマー層の光透過率に起因する、可視光線に対する多層フィルムの光透過率は、好ましくは、少なくとも80%であり、より好ましくは少なくとも85%であり、特に好ましくは少なくとも90%である。必要に応じて、多層フィルムは、例えば、光透過性ポリマーフィルム又はウェブなどの光透過性固体フィルムを備えてもよい。可視光線に対する有利な透過率を有するアセンブリは、ガラス基材に取り付けられた接着外層の屈折率が、反対側の外層の屈折率より低い場合に得られることが見出された。この必要条件は直観に反したものであり、上述の境界面微量拡散に基づくと考えられる。ガラス基材は、例えばフロートガラスなどの従来のシリカ系ガラスから選択されることができるが、例えばアクリルガラス、ポリカーボネートガラス、又はポリエチレンテレフタレートガラスなどのポリマーガラスから選択されることもできる。本開示において好適なガラスの屈折率n589nm,23℃は、好ましくは、1.48〜1.52である。
【0078】
上述のアセンブリにおいて有用な多層フィルムを製造するとき、接着層は、好ましくは上層(アセンブリ内でガラス基材の表面に取り付けられ、したがって多層フィルムの非露出外層を形成する)としてコーティングされることができ、例えば、剥離ライナーで被覆されることができるのに対して、その反対側の外層は、好ましくは底層(接着層の反対側でアセンブリの外層を形成する)としてコーティングされる。しかしながら、アセンブリ内で使用される多層フィルムの接着層は、本方法の間に底層としてコーティングされることも可能である。かかる場合では、基材は、好ましくは多層フィルムに統合され、接着層に取り付けられた剥離ライナーを形成する。上述のアセンブリにおいて、2つの外層(つまりそれぞれ、接着層の反対側の外層及び接着層)の屈折率間の差は、好ましくは0.030未満である。より好ましくは、多層フィルムの接着外層は、反対側の外層の屈折率n589n、23℃より、0.0025以下で、より好ましくは0.0020以下で、特に好ましくは0.0015以下で、非常に好ましくは0.0010以下で、最も好ましくは0.0008以下で低い屈折率n589n、23℃を有する。かかるフィルムにおいて、透過率は、それぞれ300μmの厚さを有する単一の前駆体層に対して、後述の試験の項で指定される試験方法に従って測定される。透過率は、各硬化層に対して、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%である。より好ましい実施形態では、2つの外層間に配置される前駆体層の屈折率は、存在する場合、外側の接着層の屈折率より大きく、反対側の外側層の屈折率よりも小さい。屈折率は、後述の試験の項に記載されるように、589nmの波長及び23℃の温度で測定される。
【0079】
本開示の方法は、更に、ポリマーフィルム若しくはウェブ、金属フィルム若しくはウェブ、織布ウェブ若しくは不織布ウェブ、ガラス繊維強化ウェブ、炭素繊維ウェブ、ポリマー繊維ウェブ、又はガラス、ポリマー、金属、炭素繊維、及び/若しくは天然繊維のエンドレスフィラメントを含むウェブなどの、固体フィルムの組み込みを可能にする。1つ以上のコーティングチャンバを含むコーティング装置において、かかる固体フィルムは、前壁、任意の中間壁、及び後壁の上流面に沿って、それぞれ導入され得る。3つのコーティングチャンバ及び最上流コーティングチャンバの上流に配置された回転ビーズの配置を示す図1の概略図において、固体フィルムは、最上流中間壁の上流面を介して誘導され、それによって、固体フィルムを、第1の上流コーティングチャンバによって提供される第2の液体前駆体層の上にぴったりと位置付ける。図1は更に、後壁の上流面に沿った剥離ライナーの挿入を示す。この配置は、4つの前駆体層、下から2番目の前駆体層と下から3番目の前駆体層との間に挿入された固体フィルム、及び上層の露出面に取り付けられた剥離ライナーを備える、多層の前駆体を提供する。これは単なる例示であり、当業者は、所望の特性プロファイルを有する特定の多層フィルムを提供するために好適な固体フィルム(単数又は複数)を選択し、また多層フィルム内のかかるフィルムの配置及び数を変更するであろう。4つより少ない液体層が要求される場合は、対応する数の下流コーティングナイフ及び/又は回転ビーズが除外される。必要に応じて、上剥離ライナーが上層の露出面に、すなわち、例えば、変更されたアセンブリの最下流コーティングナイフの上流面を介して、ぴったりと取り付けられる。
【0080】
固体フィルムが剥離ライナーの場合は、これは、底前駆体層及び上前駆体層の露出面を保護するために、それぞれ底前駆体層の下に又は多層フィルムの上層の上に配置されてもよい。剥離フィルムは、多層フィルム内に底ポリマー層と上ポリマー層との間の中間層として含まれるときは、それぞれ、多層フィルムに所定の破断面を導入する。これは、例えば、多層フィルムの積み重ね体を単一の製造プロセスで調製するために使用されることができ、そこから、剥離面に沿って引きはがすことによって個々の多層フィルムを容易に得ることができる。
【0081】
剥離ライナー以外の固体フィルムは、硬化多層フィルムの一体部分を形成する。固体フィルムはまた、硬化多層フィルムにおいて裏材とも称される。
【0082】
一実施形態では、本開示の多層フィルムは、本開示の方法によって得ることができる少なくとも2つの重畳ポリマー層を備え、剥離ライナーは、かかる層の形成と本質的に同時に前駆体の上層の露出面に適用される。これは好ましくは、剥離ライナーを、最下流コーティングナイフの上流面、すなわち、コーティング装置の後壁の上流面を介して誘導及び適用することによって、達成される。これは、図1に概略的に示されている。代替的な一実施形態では、後壁は、ローラー、ロッド、バー、ビーム、又は同様のものによって、基材に面して横方向に延在する縁部を提供するように適切に伸長及び屈折される剥離ライナーによって、提供され得る。この場合、追加の後壁は除外されてもよい。
【0083】
剥離ライナーは、上液体前駆体層の露出面に、かかる層の形成と本質的に同時に適用されるため、それは、ライナーの適用中に過剰な圧力又は不十分な圧力をそれぞれかけることなく、上層に滑らかにぴったりと取り付けられる。ライナーはぴったりと配置されるため、ライナーと液体層の表面との間の空間の形成は、本質的に回避される。同様に、剥離ライナーは、液体層を形成するコーティングナイフの上流面に沿って適用されるため、ライナーは、本質的に液体層などに乱流を作り出すことなどなく、液体層の表面に滑らかに取り付けられる。したがって、現況技術のダイコーティングプロセスにおいて、液体層の形成の後に、前記液体層の露出面にライナーを取り付けるときに直面する問題は、本開示によるプロセスにおいて、広く回避されるか、又は少なくとも軽減され得る。これは、剥離ライナーが、前駆体の上層の露出面に、前記層の形成及びそれに続く硬化と本質的に同時に取り付けられる本開示の方法によって得ることができる多層フィルムの優れた性質へとつながる、本開示のプロセスの固有の利点である。必要に応じて、剥離ライナーは、後に除去されてもよい。
【0084】
多層フィルムを製造する先行技術の方法では、剥離ライナーは、存在する場合は通常、上前駆体層の露出面に、かかる層の形成後に適用されていた。かかる方法では、剥離ライナーは、例えば、誘導ローラー、バー、ロッド、又はビームを使用して、露出した上層の上に置かれた。かかる方法は、基材の表面と誘導ローラーとの間の距離の正確な位置付けを必要とし、実際条件下では困難であり得る。距離が小さすぎると、上液体前駆体層の上に過剰な圧力がかかり、最上層の歪曲及び流体ビーズの形成をもたらす。流体ビーズは、液体前駆体層の積み重ね体の中に乱流を誘発し、その結果、混合が発生し得る。誘導ローラーと基材との間の距離が大きすぎると、剥離ライナーと上液体前駆体層の露出面との間に、空気の閉じ込めが発生し得る。これは、高いR値によって特徴付けられる、多層フィルムの硬化最上層の不良な表面仕上げをもたらす。同様に、最上面の硬化は、酸素感受性であり得る。上液体前駆体層が、例えば、アクリレート系感圧接着剤の前駆体を含む場合、かかる前駆体の紫外線硬化は酸素の存在によって妨げられ、その結果、不十分な硬化、したがって感圧接着層の極めて低減された性質が発生し得る。
【0085】
剥離ライナーを、上前駆体層の露出面に、後壁の下流面に対して下流に配置された適切なローラー、バー、ロッド、ビーズ、又は同様のものを介して適用するとき、上層の露出面は、後壁とかかる下流コーティングナイフとの間の距離内で周囲の空気にさらされ、上層の劣化をもたらし得る。図10に概略的に示されるこの距離は、上述及び後述において開面距離とも称される。
【0086】
驚くことに、剥離ライナーを、前駆体の上層の露出面に、かかる層の形成と本質的に同時に取り付け、その後に硬化することによって得ることができる、本開示の硬化光透過性多層フィルムは、剥離ライナーを、上前駆体層の形成の後に、コーティング装置の後壁の下流面より下流方向の開面距離内で、例えば適切なローラー又はバーナイフを介して液体前駆体層の積み重ね体に取り付けることによって得られる対応する多層フィルムと比較して、改善された光学的性質、具体的には、より高い透過率などを示すことが見出された。したがって、剥離ライナーを、前駆体の上層の露出面に、かかる層の形成と本質的に同時に取り付け、次に硬化することによって得ることができる本開示の多層フィルムが、好ましい。
【0087】
剥離ライナーを、前駆体の上層の露出面に、かかる層の形成と本質的に同時に、すなわち、例えば、最も下流のコーティングナイフの内面に沿って取り付けることによって得ることができる多層フィルムの透過率の、上層が形成される場所に対して下流方向にある開面距離内で、剥離層を後に適用することによって得られる対応する多層フィルムの透過率に対する比率は、少なくとも1.002、より好ましくは少なくとも1.003、特に好ましくは少なくとも1.005である。
【0088】
かかる多層フィルムでは、前駆体材料は、好ましくは、後述の試験の項で指定される試験方法に従って測定されるとき、対応する単一の硬化前駆体層が、300μmの厚さで測定されたときに可視光線に対して少なくとも80%の透過率をそれぞれが示すように、選択される。本開示の多層フィルムで使用される前駆体層は、より好ましくは、単一の300μm厚の硬化フィルムとして存在する場合に、少なくとも90%、特に好ましくは、少なくとも95%の透過率を示す。重畳ポリマー層の光透過率に起因する、可視光線に対する多層フィルムの光透過率は、好ましくは、少なくとも80%であり、より好ましくは少なくとも85%であり、特に好ましくは少なくとも90%である。必要に応じて、多層フィルムは、例えば、光透過性ポリマーフィルム又はウェブなどの光透過性固体フィルムを備えてもよい。
【0089】
より具体的には、剥離ライナーが、前駆体の上層の露出面に、かかる上層の形成と本質的に同時に適用され、その後に硬化される、前駆体の硬化によって得ることができる本開示の多層フィルムは、以下のものとの比較において有利な性質を示すことが、本発明者によって見出された:
(i)対応する硬化前駆体層を互いの上に積層化することによって得られる、積層多層フィルム
(ii)剥離ライナーが、上層面の露出面に最下流コーティングナイフに対して下流の位置で、すなわち、開面距離内で取り付けられる、先行技術のダイコーティング方法(例えば、米国特許第4,894,259号/Kullerに開示)によって得られる、多層フィルム
(iii)剥離ライナーが、上層面の露出面に最下流コーティングナイフに対して下流の位置で、すなわち、開面距離内で取り付けられる場合に得られる、多層フィルム、及び
(iv)剥離ライナーが(適用される場合)、後壁の上流面か、追加の下流コーティングナイフを介して取り付けられるかに関係なく、1つ以上の液体前駆体層を、1つ以上の硬化前駆体フィルム又は1つ以上のかかる前駆体フィルムの積層体に適用し、その後に硬化することによって得られる、多層フィルム。
【0090】
例えば、上前駆体層に剥離ライナーがその形成と本質的に同時に適用された、本開示の多層の可視光線に対する光透過率は、(i)〜(iv)で定義される対応する多層フィルムの可視光線に対する光透過率よりも高いことが見出された。更に、例えば、剥離ライナーが後壁の上流面を介して適用された本開示の多層フィルムは、上述の(i)及び(iv)で定義される対応する多層フィルムよりも高い機械的安定性、特により高いT−剥離強度とを示すことも見出された。
【0091】
本開示において好適な液体前駆体は、好ましくは、放射線硬化性エチレン基を有する少なくとも1つの化合物を含む。好ましい一実施形態では、放射線硬化性エチレン基は、(メタ)アクリレート基である。別の好ましい実施形態では、放射線硬化性エチレン基は、少なくとも1つのウレタン結合を含む、モノ−及び又はポリ(メタ)アクリレート官能性オリゴマー化合物である。上述及び後述で使用されるとき、用語「オリゴマー」は、比較的低分子量のポリマー化合物を指す。少なくとも1つのウレタン結合を含むポリ(メタ)アクリレート官能性オリゴマー化合物は、好ましくは、500〜35,000、より好ましくは1,000〜30,000の重量平均分子量Mを有する。かかるオリゴマー化合物は、通常、室温及び周囲気圧で液体であり、したがって、ブルックフィールド粘度は好ましくは、25℃で、500Pa・s未満、より好ましくは200Pa・s未満である。
【0092】
本開示の液体前駆体は、好ましくは、本質的に溶媒を含まず、すなわち、例えば、メタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、又はトルエンなどの、いかなる非反応性溶媒も本質的に含まない。しかしながら、好ましくはないが、前駆体が、液体前駆体の粘度を低下させるために、前駆体の質量に対して、好ましくは2pph未満の、より好ましくは1pph未満のかかる非反応性溶媒のうちの1つ以上を少量含むことは可能である。
【0093】
本開示において好適な好ましい液体前駆体は、感圧接着剤に硬化性である。特に好ましいのは、(メタ)アクリレート系感圧接着剤である。
【0094】
(メタ)アクリレート系感圧接着剤の液体前駆体は、1つ以上のアルキル(メタ)アクリレート、すなわち、1つ以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含む。有用なアルキル(メタ)アクリレートとしては、そのアルキル基が4〜14個、とりわけ4〜12個の炭素原子を有する、非三級アルキルアルコールの直鎖若しくは分枝状一官能性不飽和(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリレート系接着剤の液体前駆体において有用なこれらの低級アルキルアクリレートの例としては、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、イソヘプチル、n−ノニル、n−デシル、イソヘキシル、イソボルニル、2−エチルオクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、テトラヒドロフルフリル、エトキシエトキシエチル、フェノキシエチル、環状トリメチルプロパンホルマール、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、t−ブチルアクリレート、及びメタクリレートが挙げられる。好ましいアルキルアクリレートには、アクリル酸イソオクチル、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アクリル酸イソボルニル、エトキシエトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、及びシクロヘキシルアクリレートが挙げられる。特に好ましいアルキルアクリレートには、アクリル酸イソオクチル及びテトラヒドロフルフリルアクリレートが挙げられる。特に好ましいアルキルメタクリレートには、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、及びイソボルニルメタクリレートが挙げられる。
【0095】
(メタ)アクリレート系感圧接着剤の液体前駆体は、好ましくは5つまでの、特に1〜4つの(メタ)アルキルアクリレートを含む。(メタ)アクリレート官能化モノマー、オリゴマー、及び/又はポリマーの総質量に対するアルキルアクリレート化合物の量は、架橋剤を除いて、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、また特に好ましくは85〜99重量%である。
【0096】
(メタ)アクリレート系感圧接着剤の液体前駆体は、1つ以上の、適度に極性の及び/又は強い極性のモノマーを更に含んでもよい。極性(すなわち、水素結合能力)は、「強い」「適度に」及び「弱い」などの用語を使用して説明されることが多い。これら及び他の溶解度特性の用語を説明する参考文献には、「Solvents」、Paint Testing Manual,3rd ed.,G.G.Seward,Ed.,American Society for Testing and Materials,Philadelphia,Pennsylvania、及び「A Three−Dimensional Approach to Solubility」、Journal of Paint Technology,Vol.38,No.496,pp.269〜280が挙げられる。強い極性のモノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、ヒドロキシアルキルアクリレート、アクリルアミド、及び置換アクリルアミドであり、一方、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロニトリル、塩化ビニル、フタル酸ジアリル、及びN,N−ジアルキルアミノ(メタ)アクリレートは、適度に極性のモノマーの典型的な例である。極性モノマーの更なる例には、シアノアクリレート、フマル酸、クロトン酸、シトロン酸(citronic acid)、マレイン酸、β−カルボキシエチルアクリレート、又はスルホエチルメタクリレートが挙げられる。上記に列挙したアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、比較的弱い極性のモノマーの典型的な例である。より適度に極性の及び/又は強い極性のモノマーの量は、好ましくはあまり高すぎず、具体的には、(メタ)アクリレート官能化モノマー、オリゴマー、及び/又はポリマーの総質量に対して、架橋剤を除いて、25重量%を超えない。
【0097】
(メタ)アクリレート系感圧接着剤の液体前駆体は、モノ−又は多官能性シリコーン(メタ)アクリレートなどの、1つ以上のモノマーを更に含んでもよい。代表的なシリコーンアクリレートは、ドイツ、Evonik companyのTego Rad製品、メタクリルイルオキシ尿素シロキサン(methacryyloxyurea siloxane)、又はアクリルアミドアミドシロキサンである。
【0098】
エチレン性不飽和で、部分的又は全体にフッ素化されたモノ−又はオリゴマーもまた、液体前駆体の製剤の一部となり得る。例としては、Sartomer Company Incから入手可能なパーフルオロポリエーテルアクリレートSartomer CN 4001、又は後述の「使用された材料のリスト」に詳述されるように合成された、F−オリゴマーIIである。
【0099】
(メタ)アクリレート系感圧性の液体前駆体は、好ましくは、硬化感圧接着剤の貼着性又は内側強度を最適化するのに有効な量の、1つ以上の架橋剤を含む。(メタ)アクリレート系感圧性の液体前駆体での使用に有用な架橋剤には、例えば、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、アントラキノン、種々のベンゾフェノン型及びビニル−ハロメチル−s−トリアジン型化合物、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−s−トリアジンが挙げられる。例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,2−エチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、又は1,12−ドデカンジオールジアクリレートなどの、ポリアクリル−官能性モノマーが好ましい。上記に列挙した化合物は、置換されても置換されなくてもよく、説明を意図するものであり、制限的なものではない。使用され得る他の有用な架橋剤は、熱架橋剤である。代表的な熱架橋剤には、メラミン、多官能性アジリジエン、多官能性イソシアネート、ジカルボン酸/炭素酸無水物(anhydides)、オキサゾール、金属キレート、アミン、カルボジイミド、オキサゾリドン、及びエポキシ化合物が挙げられる。4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート又はヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの、ヒドロキシ官能性アクリレートは、例えば、イソシアネート又はアミン化合物で架橋され得る。
【0100】
これらに限定されないが、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシランなどを含む、モノエチレン性不飽和モノ−、ジ−及びトリアルコキシシラン化合物のような加水分解可能なフリーラジカル共重合性架橋剤も有用な架橋剤である。
【0101】
熱架橋剤、水分架橋剤、又は感光性架橋剤に加えて、架橋は、γ又はeビーム放射線などの、高エネルギーの電磁放射線を使用して達成されてもよい。
【0102】
架橋化合物は、好ましくは、0.01〜10pph、特に0.01〜5pph、また非常に厳密には0.01〜3pphの量で存在する。
【0103】
(メタ)アクリレート系感圧性の液体前駆体は、好ましくは、1つ以上の、例えば、ベンゾインエーテル(例えば、ベンゾンメチルエーテル、ベンゾンイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどの置換ベンゾインエーテル)、アセトフェノン(例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン)、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノン、及び1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノンなどの置換アセトフェノン、置換α−ケトール(例えば、2−メチル−2−ヒドロキシ−プロピオフェノン)、芳香族塩化スルホニル、及び1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシムなどの、光活性化可能重合開始剤、並びに/あるいは、例えば、有機過酸化物(例えば、ベンゾイル過酸化物及びラウリル過酸化物)及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)などの、熱活性化可能開始剤を含む。液体前駆体は、好ましくは1〜3つ、特に1〜2つの光開始剤化合物を含み、特に好ましいのは、1つの光開始剤のみを含む液体前駆体である。光開始剤化合物は、好ましくは、0.01〜2.00pph、特に0.05〜1.00pph、また非常に厳密に言えば0.1〜0.5pphの量で存在する。
【0104】
(メタ)アクリレート系感圧性の液体前駆体は、粘着付与剤、可塑剤、強化剤、染料、色素、光安定化添加剤、酸化防止剤、繊維、導電性及び/又は熱伝導性粒子、防火剤、表面添加剤(流動添加剤)、レオロジー添加剤、ナノ粒子、脱ガス添加剤、ガラス泡、ポリマー泡、ビーズ、疎水性又は親水性シリカ、炭酸カルシウム、発泡剤、強化及び強靭化剤など、その他の構成成分及び補助剤を含んでもよい。
【0105】
(メタ)アクリレート系感圧性の液体前駆体は、好ましくは、光開始剤化合物の一部を、アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、適度に極性及び/又は強い極性のモノマーとを含むモノマー混合物に添加し、かかる混合物を、例えば、300〜35,000mPa・s(ブルックフィールド、25℃)のコーティング可能な粘度のシロップ剤に部分的に重合することによって、調製される。得られる前駆体の粘度は、使用することが可能であるときは、架橋剤化合物、光開始剤化合物の残り、シリコーン(メタ)アクリレート、並びに任意の添加剤及び補助剤など、その他の化合物を添加することによって、更に調整される。得られる前駆体の粘度は、通常5pph未満の、例えば、反応性光重合性ポリアクリレートなどの少量のポリマー添加剤を添加することによっても調整され得る。好ましくはモノマー混合物の部分重合は、好ましくは約0.1〜約25mW/cmの強度で、351nmで最大であり、300〜400nmの波長を有する適切な紫外線ランプで実行される。曝露は、好ましくは900〜1,500mJ/cmである。重合は、紫外線の除去によって、及び/又は、例えば、ラジカル捕捉酸素の導入によって、停止され得る。好適な紫外線硬化ステーションの例は、後述の実施例で説明されるコーティング装置に関連して記載される。
【0106】
本開示において好適な別の好ましい液体前駆体は、紫外線硬化性であり、少なくとも1つのウレタン結合を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物を含む。かかる化合物は、好ましくは、モノマー又はオリゴマーであり、及び/又はエチレン性不飽和基のうちの少なくとも1つは、好ましくは(メタ)アクリレート基である。かかる前駆体は、ポリウレタンアクリレートポリマーに、すなわち、ウレタン結合を含むポリマーに重合され得る。特に好ましいのは、少なくとも1つのウレタン結合を含む1つ以上のモノ−及び/又は多(メタ)アクリレート官能性モノマー又はオリゴマー化合物と、1つ以上のエチレン性不飽和基を含むがウレタン結合を含まない1つ以上のモノマー化合物と、1つ以上の光開始剤とを含む、液体前駆体である。
【0107】
少なくとも1つのウレタン結合を含むモノ及び多(メタ)アクリレート官能性オリゴマーは、例えば、スイス、ZurichのRahn AGから、GENOMERの商品名で市販されている。GENOMER 4188は、少なくとも1つのウレタン結合と20重量%の2−エチルヘキシルアクリレートとを含む80重量%のモノアクリレート−官能性ポリエステル系オリゴマーから成る混合物であり、GENOMER 4188に含まれるオリゴマーは、約8,000の重量平均分子量Mを有し、平均アクリレート官能性は1±0.1である。GENOMER 4316は、25℃で58,000mPa・sの粘度、及びガラス転移温度T 4℃によって特徴付けられる、三官能性脂肪族ポリウレタンアクリレートである。GENOMER 4312は、25℃で50,000〜70,000mPa・sの粘度によって特徴付けられる、三官能性脂肪族ポリエステルウレタンアクリレートである。
【0108】
モノ又は多(メタ)アクリレート官能性オリゴマー化合物はそれぞれ、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの、より好ましくは少なくとも4つのウレタン結合を有する。
【0109】
モノ及び多(メタ)アクリレート官能性オリゴマー及びそれらの調製物は、その節が参照により本明細書に援用される国際特許第2004/000,961号の、4ページ24行目〜12ページ15行目に開示される。
【0110】
(メタ)アクリレート官能化モノマー、オリゴマー、及び/又はポリマーの総質量に対する、少なくとも1つのウレタン結合を含む1つ以上のモノ−又は多(メタ)アクリレート官能性オリゴマーの量は、架橋剤を除いて、好ましくは30〜97.5重量%、より好ましくは45〜95重量%である。
【0111】
本開示において好適なポリウレタンポリマーの液体前駆体は、好ましくは、1つ以上のエチレン性不飽和基を含むがウレタン結合を含まない1つ以上のモノマー化合物を更に含む。好適なエチレン性不飽和基の例には、ビニル、ビニレン、アリル、特に(メタ)アクリル基が挙げられる。(メタ)アクリレート官能化モノマー、オリゴマー、及び/又はポリマーの総質量に対する、1つ以上のエチレン性不飽和基を含むかかる化合物の量は、架橋剤を除いて、好ましくは2.5〜70重量%、またより好ましくは5〜55重量%である。
【0112】
1つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物は、好ましくは、アクリレート系感圧接着剤の液体前駆体と関連して上述に開示される、弱い極性のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、適度に極性及び/又は強い極性のモノマー、並びに2又はそれより高いアクリル基官能性架橋剤から選択され得る。
【0113】
ポリウレタンポリマーの液体前駆体は、好ましくは、10℃未満の対応するホモポリマーのガラス転移温度を有する1つ以上の(メタ)アクリレート一官能性化合物を含む。かかるモノマーの好ましい例には、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸イソオクチル、カプロラクトンアクリレート、アクリル酸イソデシル、アクリル酸トリデシル、ラウリルメタクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコール−モノメタクリレート、ラウリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、及びエトキシ化ノニルアクリレートが挙げられる。特に好ましいのは、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸イソオクチル、及びテトラヒドロフルフリルアクリレートである。
【0114】
ウレタンポリマーの液体前駆体は、好ましくは、50℃以上の対応するホモポリマーのガラス転移温度を有する1つ以上の(メタ)アクリレート一官能性化合物を含む。かかるモノマーの好ましい例には、アクリル酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリル酸イソボルニル、アクリロイルモルホリン、イソボルニルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、及びアクリルアミドが挙げられる。特に好ましいのは、アクリル酸、アクリル酸イソボルニル、及びN−ビニルカプロラクタムである。
【0115】
本開示の多層フィルムの層の中に含まれるポリマーの硬化性液体前駆体において好適な2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物の例には、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートなどのC〜C12炭化水素ジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジビニルエーテルなどのC〜C14炭化水素ジビニルエーテル、及びトリメチロールプロパントリアクリレートなどのC〜C12炭化水素トリオールトリアクリレートが挙げられる。2又はそれより高いアクリレート官能性モノマー、具体的には、2又は3アクリレート官能性モノマーが好ましい。
【0116】
上述の液体前駆体は、本開示を限定することなく例示するためのものである。
【0117】
別の好ましい実施形態において、本開示による光透過性多層フィルムは、多層フィルムの外層のうちの一方がウレタンポリマーを含み、多層フィルムの反対側の外層が、接着剤を、より好ましくは(メタ)アクリレート系感圧接着剤を含む、少なくとも2つの重畳ポリマー層を備える。かかる多層フィルムは、上層上に垂直に衝突しかつ多層フィルムを通って透過するλ=635nmの波長の平面波面から生じる波面の最大波面収差が、透過される波面の最高最低差値として測定したときに、6λ(=3,810nm)未満である。
【0118】
本開示の多層フィルムを通って透過した後に測定される平面波面の最大収差値は、多層フィルムとの相互作用の結果として経験される波面の歪曲を特徴付ける。最大波面収差値が低くなればなるほど、フィルムの光学的品質はより高くなる(例えば、フィルムを通して投影される画像の歪曲がより少なくなる)。
【0119】
重畳ポリマー層はそれぞれ、好ましくは、可視光線に対して少なくとも80%の透過率を有する。ポリマー層の透過率は、それぞれ300μmの厚さを有する硬化単一前駆体層に対して、後述の試験の項で指定される試験方法に従って測定される。本開示の多層フィルムで使用される前駆体層は、300μm厚の単一の硬化フィルムとして存在する場合に、より好ましくは少なくとも90%の、特に好ましくは少なくとも95%の透過率を示す。重畳ポリマー層の光透過率に起因する、可視光線に対する多層フィルムの光透過率は、好ましくは少なくとも80%であり、より好ましくは少なくとも85%であり、特に好ましくは少なくとも90%である。必要に応じて、多層フィルムは、例えば、光透過性ポリマーフィルム又はウェブなどの光透過性固体フィルムを備えてもよい。
【0120】
上液体前駆体層は、ポリウレタンポリマーによって提供される。上述及び後述で使用されるとき、ポリウレタンポリマーという用語は、イソシアネート官能性モノマーとヒドロキシ官能性モノマーとの反応によって通常形成される、少なくとも1つのウレタン結合を含む硬化ポリマーに関する。本開示においてポリウレタンポリマーという用語は、好ましくは、少なくとも1つのウレタン結合を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物を含む液体前駆体の重合によって得ることができる、ポリマーに関する。
【0121】
本開示において、ウレタンポリマーは、好ましくは、少なくとも1つのウレタン結合を含む1つ以上のモノ−及び/又はポリ(メタ)アクリレート官能性オリゴマー化合物と、1つ以上のエチレン性不飽和基を含むがウレタン結合を含まない1つ以上のモノマー化合物と、1つ以上の光開始剤とを含む、液体前駆体の硬化によって得られる。かかる好ましいポリウレタンポリマーの液体前駆体は、上記に詳細に説明される。
【0122】
これらの好ましい多層フィルムの外ポリウレタン層の反対側の外層は、上記に開示される対応する感圧接着剤の好ましい液体前駆体を硬化することによって好ましくは得られる、硬化(メタ)アクリレート系感圧接着剤を含むことが好ましい。
【0123】
ウレタンポリマーを含む外層と、接着剤、具体的には(メタ)アクリレート系感圧接着剤層を含む反対側の外層とを備える、本開示の多層フィルムは、好ましい光学的性質、具体的には、後述の試験の項に記載される方法によって評価され得るように、硬化多層フィルムを通るその透過後の平面波面の低い最大収差、高い透過率、低いヘイズ、及び/又は低い色ずれなどを示すことが、本発明者によって見出された。
【0124】
ウレタンポリマーを備える多層フィルムの外層は、後述の試験の項における方法によって評価され得るように、高い耐引っかき性などの有利な機械的特性を多層フィルムに更に付与する。
【0125】
(図面の詳細な説明)
図1は、本開示において有用なコーティング装置1を示す。コーティング装置1は、3つのコーティングチャンバ16(ローマ数字II〜IVによって参照される)を形成する、前壁11、2つの中間壁13、及び後壁12を備える。回転ビーズ17(同様に、ローマ数字Iによって参照される)は、前壁11の上流に配置される。壁11、12、13は、下流方向3に移動する基材2に対して垂直に配置されたコーティングナイフによって形成され、その結果、コーティングナイフ11、12、13の底部と基材との間にギャップ100が形成される。コーティングチャンバはそれぞれ、幅101を有し、液体前駆体で充填される。固体フィルム14は、上流中間壁13の上流面を介して適用され、第2の液体前駆体層と第3の液体前駆体層との間に導入される。剥離フィルム又はライナー15は、後壁12の上流面を介して適用され、上前駆体層の上に取り付けられる。回転ビーズ及び3つの下流コーティングチャンバによって形成されるコーティングステーションには、参照ローマ数字I、II、III、及びIVが付けられている。
【0126】
図2aは、図1のコーティング装置で前壁11、中間壁13、及び後壁12として使用されるコーティングナイフの拡大図である。コーティングナイフは、横方向に延在するコーティング縁部18を提供するブルノーズ又は半径型のプロファイルを有する。図2bは、図2aのコーティングナイフの底部の拡大断面図であり、ブルノーズプロファイルをより詳細に示す。ブルノーズは、半径Rを有する四分円の外周によって表される。
【0127】
図3は、ガラスプレート205上に装着された硬化多層フィルム20を通して透過される平面波面204の最大波面収差を測定するための、好適な測定装置の概略図である。光は、繊維結合レーザーダイオード201によって供給され、球面波面202へと拡大され、非球面コリメータレンズ203によって平行化される。平行化された光の平面波面204は、試料20及びガラスプレート205を通過し、ケプラー式望遠鏡207によってShack−Hartmannセンサ210上に結像される。Shack−Hartmannセンサは、マイクロレンズアレイ及びCCDカメラチップを使用して、光学波面の局所的傾斜を決定する。次に、変形波面が、Shack−Hartmann測定デバイスのソフトウェアを用いて数値積分によって再構築される。多層フィルム単独から得られる平面波面の最大波面収差は、ガラスプレート単独に対して測定された平面波面の最大波面収差の値を差し引くことによって得られる。
【0128】
図4〜8は、それぞれ、実施例2、5、11、12、及び13において調製された硬化多層フィルムの断面マイクロ写真である。図は、対応する実施例の項で詳細に説明される。
【0129】
図9a〜9iは、実施例22(図9b)、23(図9f)、及び24(図9g)の多層フィルムに関して、3Mから市販されているポリウレタン又はポリエチレンの上層と感圧接着剤の底層とを備える比較の可撓性で適合可能な2層フィルム(図9c〜9e)に関して、並びに比較例2a及び2b(図9h及び9i)に関しての、Siemens Star試験画像である。図9aは、基準として使用されたガラスプレートに関するSiemens Star試験画像である。図は、後述の実施例の項でより詳細に説明される。
【0130】
図10は、比較例2aで使用されたコーティング装置の概略図である。
【実施例】
【0131】
本開示は、後に記載される実施例によって説明される。これに先立ち、液体前駆体及び/又は硬化多層フィルムを特徴付けるために使用される、実施例において使用されるコーティング装置及び試験方法を説明する。上述及び後述において、濃度は、重量%又はpph(樹脂百分率)として与えられる。重量%という用語は、(メタ)アクリレート官能化モノマー、オリゴマー、及びポリマーの架橋剤を除く総質量に対する、かかる(メタ)アクリレート官能化モノマー、オリゴマー、又はポリマーそれぞれの、架橋剤化合物を除く質量を示し、それによってかかる総質量は100重量%として設定される。架橋剤、反応開始剤、又は充填剤、ポリマー添加物、粘着付与剤、若しくは可塑剤などの添加剤などの、その他の化合物の量は、かかる総質量100重量%に対して、pph(樹脂百分率)として指定される重量部で与えられる。
【0132】
コーティング装置
実施例において使用されたコーティング装置は、図1に概略的に示される。実施例において使用されたコーティング装置は、コーティング装置の下を下流方向に移動する基材に対して垂直に配置された最大4つまでのコーティングナイフを備え、その結果、回転ビーズ及び最大3つまでのコーティングチャンバ、すなわち、第1のコーティングナイフに対して上流に回転ビーズを含む最大4つまでのコーティングステーションが使用され得、これらも参照番号Iが付けられた前記上流回転ビーズから始まる連続した参照ローマ数字I、II、III、及びIVによって図1に示される。4つ未満のコーティングチャンバ又はコーティングステーションが使用された場合、使用されない対応する数の下流コーティングナイフは除去された。例えば、2層フィルムの場合では、回転ビーズI及び第1のコーティングチャンバIIのみが存在するように、最下流の2つのコーティングナイフは除去された。剥離ライナー15が上層の露出面に取り付けられる場合は、それは、かかる場合では最下流コーティングナイフ、すなわちチャンバIIの下流コーティングナイフの上流面を介して送り込まれた。コーティングナイフは、下流方向に延在する2つの長手方向キャリア要素に強固に装着された横方向キャリア要素によって保持された。横方向キャリア要素は、下流方向に対して垂直に延在していた。
【0133】
3つのコーティングチャンバII〜IVの下流方向の幅は、以下のように変更されることができた。
【0134】
【表1】

コーティングチャンバは、前壁と第1の中間壁とによって(コーティングステーションII)、第1の中間壁と第2の中間壁とによって(コーティングステーションIII)、及び、第2の中間壁と後壁とによって(コーティングステーションIV)、下流方向に対して垂直な方向に境された。コーティングチャンバは、コーティングナイフに対して垂直に配置されたPTFEバーから成る2つの横スクレーパによって、下流方向に境された。基材の表面から横方向キャリア要素の露出した上面までを測定したコーティングチャンバの高さは、上述の表に列挙されたコーティングチャンバの容積を提供する3つのコーティングチャンバのそれぞれに関して、約40mmであった。
【0135】
コーティングナイフはそれぞれ、図2a及び2bに示されるブルノーズ型プロファイルを有する8mm厚の剛性アルミニウムプレートで製造された。4つのコーティングナイフ全てのプロファイルは、同一であった。ブルノーズは、5mmの半径を有する四分円の外周によって表された。基材の表面に対するそれぞれのコーティングナイフのギャップ幅は、横方向のキャリア要素によって支持される予め設置されたネジによって、隙間なく調整され得た。
【0136】
それぞれのコーティングナイフの横方向に延在する縁部と表面の基材との間のギャップ幅は、以下のように変更されることができた。
【0137】
【表2】

基材は、巻き取り機から解かれ、0.01m/分〜6m/分の間で変更され得る下流速度で、コーティング装置の下を移動した。基材は、張力制御巻き戻しローラーと、硬化ステーションが硬化フィルムを移送した後に配置される2つのローラーとによって引っ張られた。
【0138】
コーティング装置は更に、剥離ライナーが、巻き取り機から解かれた後に、後壁コーティングナイフの上流面によって誘導され、またコーティングナイフのブルノーズプロファイルを介して、層の積み重ね体の最も上の液体前駆体層の露出面の上に直接に取り付けられ得るように、装備された。これは、図1に概略的に示される。
【0139】
コーティング装置は更に、裏材が、巻き取り機から解かれた後に、前壁、又は第1の中間壁若しくは第2の中間壁の上流面によってそれぞれ誘導され、またコーティングナイフの対応するブルノーズプロファイル縁部を介して、かかる中間壁コーティングナイフを介して適用されたそれぞれの液体前駆体層の上に直接に取り付けられ得るように、装備された。裏材は、硬化後に、多層フィルムの一体部分を形成した。
【0140】
このように調製された液体前駆体層の積み重ね体は、次に、3mの長さを有する紫外線硬化ステーションを通過した。硬化は、上部から、すなわち、任意に剥離ライナーで被覆された露出した液体前駆体層に向かう方向へ、及び底部から、すなわち、基材に向かう方向への両方から起こり、それによって、両方向に供給される強度は等しいレベルに設定された。放射線が、351nmで最大となる300〜400nmの波長で、蛍光ランプによって供給された。上部及び底部から累積的に照射された総放射線強度、並びに2つのコーティングゾーンのそれぞれの長さは、以下の通りであった。
【0141】
【表3】

使用する試験方法
ブルックフィールド(Brookfield)粘度
液体前駆体の粘度は、DIN EN ISO 2555:1999に従って、Brookfield Engineering Laboratories,Inc.から市販されているBrookfield Digital Viscosimeter DV−IIを使用して、25℃で測定された。
【0142】
90°剥離粘着力
2つの層を備え、200mm長で12.7mm幅の寸法を有する、硬化多層フィルムの試料が供給された。層のうちの1つは、剥離ライナーで被覆された感圧接着層であり、もう一方の層は非付着性ポリウレタンポリマー層であった。本開示の方法に従って調製された多層フィルムと、個々の層の積層化によって得られた比較多層フィルムとの両方が試験された。
【0143】
剥離ライナーが感圧接着層から除去され、多層フィルムが、その露出した接着剤表面を介して、清潔なガラスプレート上に軽い指圧で取り付けられた。多層フィルムを適用する前に、ガラスプレートは、メチルエチルケトンで3回、またヘプタンで1回、払拭された。多層フィルムは、標準FINAT試験ローラー(6.8kg)を用いて、約10mm/秒の速度で各方向に2回ずつ回転された。多層をガラス面に適用した後、得られたアセンブリは、試験前に、周囲条件で24時間の期間保持された。次に、剥離粘着力が、引張試験装置(ドイツ、UlmのZwick GmbH製のModel Z020)を用いて、300mm/分の剥離速度で測定された。試験プレートは、引張試験機の90°剥離試験の間、1つの可動式瓶の中に把持された。多層フィルム試料は90°の角度で折り返され、その自由端は、90°測定に一般的に利用される構成で、引張試験機の上側のつめに把持された。3つの試料が測定され、結果の平均値が求められた。結果は、N/12.7mmで報告されている。
【0144】
T−剥離強度
2つの層を備え、200mm長で12.7mm幅の寸法を有する、多層フィルムの試料が供給された。層のうちの1つは、剥離ライナーで被覆された感圧接着層であり、もう一方の層は非付着性ポリウレタンポリマー層であった。本開示の方法に従って調製された多層フィルムと、個々の層の積層化によって得られた比較多層フィルムとの両方が試験された。
【0145】
3Mの両面感圧接着テープ444が、多層フィルムのポリウレタン系ポリマー層の非付着性面に取り付けられた。剥離ライナーが多層フィルムの感圧接着層から除去され、得られた組み立てられた積層フィルムが、2つの陽極酸化アルミニウム片の間に、軽い指圧を用いて、また各アルミニウム片の末端部に2つの25mm長の自由アルミニウムタブを残して、設置された。得られた組み立てられた積層フィルムは、標準FINAT試験ローラー(6.8kg)を用いて、約300mm/分の速度で各方向に2回ずつ回転された。試料は、試験の前に、周囲条件で24時間保持された。自由アルミニウムタブは、反対の方向に90°で屈曲され、引張試験装置(ドイツ、UlmのZwick GmbH製のModel Z020)の上側及び下側のつめにそれぞれ固定され、300mm/分の剥離速度で分離された。3つの試料が測定され、結果の平均値が求められた。結果は、N/12.7mmで報告されている。
【0146】
多層フィルムの光学的性質
試料の調製:
2つの層を備え、6cm長で6cm幅の寸法を有する、多層フィルムの試料が供給された。層のうちの1つは、剥離ライナーで被覆された感圧接着層であり、もう一方の層は非付着性ポリウレタンポリマー層であった。本開示の方法に従って調製された多層フィルムと、後述に示される3Mから市販されている比較物との両方が試験された。
【0147】
剥離ライナーは、多層フィルムの感圧接着層から除去された。初期接着性を低減するために、また、その接着剤面を介して、ドイツのSaint−Gobain Glass Deutschland GmbHから入手可能である清潔な2mm厚の透明フロートガラスプレートへ、フィルムを欠陥なく確実に積層化するために、多層フィルムの露出した感圧接着面は水ですすがれた。湿式積層化の後、残留する水は毛羽立ちのない布で慎重に除去され、試料は、完全に乾燥させるために室温で少なくとも16時間保管された。
【0148】
a)多層フィルムの透過率、透過損失、吸収率、ヘイズ、透明度、明度及び色ずれ、並びに多層フィルムの露出した最上硬化層の表面からの反射。
【0149】
ガラス上に積層化された多層フィルム試料が、米国、Reston,VAのHunter Associates Laboratory,Inc.から市販されているHunterLab UltraScan XE測定システムのサンプルホルダー上に設置された。試料は、積分球(「Ulbricht−Kugel」)によって、D65光源及び2°の観察角を使用して評価された。上述に指定される2mm厚のガラスプレートが、多層フィルムなしで基準として使用された。
【0150】
多層フィルムの色座標が、試験方法CIE 1931に従って測定され、Y、x、y値に関して報告された。Y値は、フィルムの明度と相関する。基準ガラスプレートに対する色ずれが、それぞれプレーンガラスプレートのx及びy値に対する多層フィルムのx及びy値の差を表す、dx及びdy値に関して評価された。
【0151】
透過率は、衝突する光の強度に対する、多層フィルムから出る光の強度の比率として定義される。透過率は、正透過と拡散透過との組み合わせである総透過率として測定された。測定は、ASTM E 1438に従って行われた。透過損失は、衝突する光の強度と、多層フィルムから出る光の強度の差として定義される。透過率及び透過損失は、%で報告されている。
【0152】
吸収率は、入射強度と、入射強度に対する透過された強度の差の比率である。吸収率及び透過率は、合計で1となる。吸収率は、%で報告されている。
【0153】
反射は、拡散反射と正反射との組み合わせである総反射として測定された。測定は、DIN 5036、第3部に記載される通りに行われた。
【0154】
ヘイズは、ASTM D−1003−95に従って透過モードで測定された。ヘイズは、総透過に対する拡散透過の比率として定義される。
【0155】
透明度は、ASTM D−1003及びD−1044に従って透過モードで測定された。
【0156】
b)硬化多層フィルム及び硬化単一前駆体層の屈折率
硬化単一前駆体層の屈折率は、ISO 489に従って、アッベ屈折計を使用して589nmの波長及び23°の温度で測定された。
【0157】
c)多層フィルムの光学的品質
(i)Siemens Star試験
36個の黒色扇形及び36個の白色扇形を有し、直径144mmの、印刷されたSiemens Starが、垂直壁に固着された。ドイツ、KrefeldのCanon Deutschland GmbH製のデジタルカメラCanon EOS 450 Dが、レンズとSiemens Starとの間に1000mmの距離をおいてSiemens Starの前に設置された。次に、ガラス上に積層化された多層フィルム試料が、カメラとSiemens Starとの間に、それぞれSiemens Starまで750mm及びカメラレンズまで250mmの距離で、設置された。Siemens Star及び試料は、カメラの光軸に対して垂直に、また中心に配向された。
【0158】
カメラの焦点距離は、5,6の開口を伴って55mmに設定された。カメラは、ISO 100の感度で、最高解像度モードに設定された。照明条件は、十分に露出されたデジタル画像を可能にするように適宜調整された。
【0159】
撮像デバイスは、Siemens Starの交互の白黒扇形を伴うパターンを完全には反映しないことがある。パターンの中央から始まり、いわゆる灰色環と呼ばれる不鮮明なゾーンが発生し、そこでは黒色及び白色の扇形が識別できないことがある。フィルムの光学的品質を決定するために、灰色環の寸法が使用された。
【0160】
デジタル画像は、画像編集プログラム又はMicrosoft PowerPointなどのプレゼンテーションプログラムで修正された。ここで、画像のコントラストは100%に設定され、黒白画像となった。中心に、均一の黒色又は白色の円形領域が発生した。デジタル画像の定性的評価は、この円の直径が大きいほど解像度は悪いという事実に基づく。
【0161】
定量的評価のためには、画像内に薄い円形線を位置付けて、得られた黒色又は白色の円(灰色環)を測定する必要がある。次いで、(線を解像しない)白色又は黒色の円の直径が最小になるように、輝度水準が調整される。その領域が正確に円でない場合は、線は、Siemens Starの大部分の扇形の平均を表すように位置付けられなければならない。この円形線は、灰色環(Siemens Starの内側の円)を表す。小円の直径がソフトウェアで調べられ、「d」として記録された。第2の円形線が、Siemens Starの外周に沿って位置付けられた。この円の直径が測定され、「D」として記録された。印刷されたSiemens Starの144mmの直径が、基準値「D_real」として使用された。
【0162】
所与の光学システムの解像力は、依然解像され得る被写体の細部の空間周波数によって、特徴付けられることができた。通常、空間周波数は、光学システムによって識別され得た1mmあたりの黒色線と白色線との対の数(lp/mm)として記載される。黒色扇形と白色扇形の対n=36で使用されるSiemens Starの空間周波数は、外周において0.08lp/mmであり、中心における無限大のlp/mmに向かって増大する。
【0163】
試料の測定のための、lp/mmにおける解像力rは、以下のように算出され得た。
【0164】
r=(nD)/(dD_realπ)
解像力rに関して評価される空間周波数が高くなればなるほど、被写体はより詳細に解像され、また試験される試料の性能はより良くなる。
【0165】
(ii)波面変形の測定
本開示の方法によって得られる多層フィルムによって、又は比較多層フィルムによって引き起こされる光学波面の変形が、それぞれ、Shack−Hartmannセンサ(SHS)を備える光学的分析システムで測定された。ガラス上に積層化された多層フィルム試料が、上述の試料の調製の項に記載された通りに調製され、ドイツ、Erlangenのoptocraft GmbHから市販されているSHSInspect−TL−SHR−2”光学試験システムのサンプルホルダー上に設置された。試料は、繊維結合レーザーダイオードによって提供され、また高精度非球面コリメータレンズによって視準された、635nm波長の光で照明された。視準された光の平面波面は、試料を通過し、ケプラー式望遠鏡によってShack−Hartmannセンサ上に結像される。試料は、試料によって誘発された光学波面の変形が、Shack−Hartmannセンサ上に結像されるように、ケプラー式望遠鏡の焦点面内に位置する。Shack−Hartmannセンサは、マイクロレンズアレイ及びCCDカメラチップを使用して、光学波面の局所的傾斜を決定する。次に、測定システムのソフトウェアが、積分によって変形波面を再構築した。試料の光学的品質は、波面の最大変形によって特徴付けられ、評価された30mmの直径に対する変形波面の「最高最低差値」として記録され、また使用された波長の倍数で測定された。最大波面収差が低くなればなるほど、フィルムの光学的品質はより高くなる(例えば、フィルムを通して投影される画像の歪曲がより少なくなる)。
【0166】
波面センサシステムは、以下の条件下で操作された。
【0167】
【表4】

d)多層フィルムの最上硬化層の露出面の機械的品質
試料の作製
2つの層を備え、15cm長で4cm幅の寸法を有する、多層フィルムの試料が供給された。層のうちの1つは、剥離ライナーで被覆された感圧接着層であり、もう一方の層は非付着性ポリウレタンポリマー層であった。接着層の表面に適用された剥離ライナーが除去され、試料は、3mm厚のガラス基材に取り付けられた。
【0168】
(i)磨耗耐性の測定
hutproducts.comから「113−Magic Sand」の商品名で入手可能な等級#0000の、2.54cm×2.54cm大のスチールウールパッドが、2.54cm×2.54cm幅の正方形断面と6cmの高さとを有する300gの鋼ブロックの上に積層化された。ブロックは、いかなる追加の垂直の力もかけることなく、手で試験試料の上を水平方向に移動された。1回の前後移動が、1サイクルとして数えられた。何サイクル後に、試験試料の露出面上に、最初の軽い不可逆的擦過傷が現れたかが測定された。
【0169】
(ii)鉛筆硬度(Ericson試験)
異なる硬度の鉛筆が削られ、標準の手圧で、試験試料の露出面上に書かれる。6B(最も柔らかい)から9H(最も硬い)までの硬度を有する鉛筆が採用され、最も柔らかいものから開始した。
【0170】
試験は、最上硬化層の露出面上に不可逆的痕跡を残さない最も硬い鉛筆を決めるものである。
【0171】
使用される材料のリスト
GENOMER 4316、三官能性脂肪族ポリウレタンアクリレートであり、25℃において粘度(mPas)58,000、Tg 4℃、スイス、ZurichのRahn AGから市販されている。
【0172】
GENOMER 4312、三官能性脂肪族ポリエステルウレタンアクリレートであり、25℃において粘度(mPas)50,000〜70,000、スイス、ZurichのRahn AGから市販されている。
【0173】
MAUSオリゴマー、α、ω−ジメタクリルオキシ尿素−ポリジメチルシロキサンであり、M〜14.000、国際特許第92/16,593号、p.26(そこでは、35K MAUSと呼ばれている)に記載される通りに調製された。
【0174】
SR 285、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THF−アクリレート)であり、フランス、ParisのCray Valleyから市販されている。
【0175】
アクリル酸イソオクチル(IOA)、イソオクチルアルコール及びアクリル酸のエステルであり、フランスのSartomer Company(CRAY VALLEY)から市販されている。
【0176】
アクリル酸(AA)、ドイツのBASF AGから市販されている。
【0177】
2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)、ドイツのBASF AGから市販されている。
【0178】
SR506D、アクリル酸イソボルニル(IBA)、66℃の高いTを有する一官能性アクリルモノマーであり、フランスのSartomer Company(CRAY VALLEY)から市販されている。
【0179】
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、速硬化性ジアクリレートモノマーであり、フランスのSartomer(CRAY VALLEY)から市販されている。
【0180】
Sartomer SR399LV、低粘度ジペンタエリスリトールペンタアクリレートであり、フランスのSartomer Company(CRAY VALLEY)から市販されている。
【0181】
SR306、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)であり、フランスのSartomer Company(CRAY VALLEY)から市販されている。
【0182】
F−オリゴマーIIは、オリゴマーを含有するヘプタフルオロプロピレンオキシド(HFPO)である。調製のために、(HFPO)−alc[国際特許第2007/124,263号、pp.19〜21、「2.Synthesis of Intermediates」の手順に従って合成された(F(CF(CF)CFO)6,85−CF(CF)CF(O)NH CHCHOH]を0,075当量と、Rhodiaから入手可能なHMDIビウレットであるTolonate HDBを0,5当量と、Sartomer Companyから入手可能なペンタエリスリトールトリアクリレートである、Sartomer SR344を0,425当量とを、国際特許第2007/124,263号、p.23、実施例19に記載される手順に従って反応させる。
【0183】
DAROCUR 1173、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノンであり、スイス、BaselのCiba Specialty Chemicalsから市販されている。
【0184】
Omnirad BDK、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(紫外線反応開始剤)であり、オランダ、WaalwijkのiGm resinsから市販されている。
【0185】
Tego Rad 2100、シリコーンアクリレートであり、ドイツのEvonik Tego Chemie GmbHから市販されている。
【0186】
Irgacure 500、50%の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンと50%のベンゾフェノンとの重量1:1の混合物の液体光開始剤であり、スイス、BaselのCiba Specialty Chemicalsから市販されている。
【0187】
VAZPIA、アクリルアミドアセチル光開始剤であり、米国特許第5,506,279号、14欄、実施例1に記載される通りに調製された。
【0188】
ORASOL RED 2B赤色、スイス、BaselのCiba Specialty Chemicalsから市販されている。
【0189】
EPODYE YELLOW、粉末蛍光色素であり、ドイツのStruersから市販されている。
【0190】
使用される硬化性液体前駆体のリスト
液体前駆体I
94.95重量%のGENOMER 4316、及び5.05%重量%のTHF−アクリレートが、ガラス容器の中で合わせられ30分間混合された。次に、1pphのDAROCUR 1173、及び0.05pphのOrasol Red B2が添加され、得られた混合物は1時間攪拌され、液体前駆体Iが供給された。
【0191】
液体前駆体Iの組成、及び上述される試験方法によって決定されるそのブルックフィールド粘度が、表1にまとめられている。
【0192】
液体前駆体II
94.95重量%のGENOMER 4312、及び5.05%重量%のTHF−アクリレートが、ガラス容器の中で合わせられ30分間混合された。次に、1pphのDAROCUR 1173が添加され、得られた混合物は1時間攪拌され、液体前駆体IIが供給された。
【0193】
液体前駆体IIの組成、及び上述される試験方法によって決定されるそのブルックフィールド粘度が、表1にまとめられている。
【0194】
液体前駆体III
69.7重量%のGENOMER 4316、及び30.3重量%のTHF−アクリレートが、ガラス容器の中で合わせられ30分間混合された。次に、1pphのDAROCUR 1173、及び0.05pphのEpody Yellowが添加され、得られた混合物は1時間攪拌され、液体前駆体IIIが供給された。
【0195】
液体前駆体IIIの組成、及び上述される試験方法によって決定されるそのブルックフィールド粘度が、表1にまとめられている。
【0196】
液体前駆体IV
90重量%のアクリル酸イソオクチル、及び10重量%のアクリル酸が、光開始剤としての0.04pphのOmnirad BDKと共にガラス容器の中で合わせられ、30分間攪拌された。混合物は、約8%の重合度、及び25℃で3,200mPa・sのブルックフィールド粘度まで、窒素に富む大気下で紫外線によって部分的に重合された。硬化後、架橋剤としての0.12pphの1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、及び光開始剤としての0.16pphのOmnirad BDKが添加され、得られた混合物は30分間満遍なく攪拌され、液体前駆体IVが供給された。
【0197】
液体前駆体IVの組成、及び上述される試験方法によって決定されるそのブルックフィールド粘度が、表1にまとめられている。
【0198】
液体前駆体V
84重量%のアクリル酸イソオクチル、15重量%のアクリル酸イソボルニル、及び1重量%のアクリル酸が、光開始剤としての0.02pphのVAZPIAと共にガラス容器の中で合わせられ、30分間攪拌された。混合物は、約8%の重合度、及び25℃で4,720mPa・sのブルックフィールド粘度まで、窒素に富む大気下で紫外線によって部分的に重合された。硬化後、架橋剤としての0.05pphの1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、及び光開始剤としての0.1pphのOmnirad BDKが添加され、得られた混合物は30分間満遍なく攪拌され、液体前駆体Vが供給された。
【0199】
液体前駆体Vの組成、及び上述される試験方法によって決定されるそのブルックフィールド粘度が、表1にまとめられている。
【0200】
液体前駆体VI
89.3重量%の液体前駆体Vが、10.7重量%のMAUSオリゴマー、及び架橋剤としての0.25pphのHDDAと共にガラス容器の中で合わせられ、30分間攪拌され、液体前駆体VIが供給された。
【0201】
液体前駆体VIの組成、及び上述される試験方法によって決定されるそのブルックフィールド粘度が、表1にまとめられている。
【0202】
液体前駆体VII
76,1重量%のSR 399LV、19,1重量%のTPGDA、1,9重量%のF−オリゴマーII、及び2,9重量%のIrgacure 500が、ガラス容器の中で合わせられ、30分間攪拌され、液体前駆体VIIが供給された。
【0203】
液体前駆体VIIの組成、及び上述される試験方法によって決定されるそのブルックフィールド粘度が、表1にまとめられている。
【0204】
液体前駆体VIII
84重量%のIOA、15重量%のIBA、及び1重量%のAAが、光開始剤としての0.2pphのVAZPIAと共にガラス容器の中で合わせられ、30分間攪拌された。混合物は、約8%の重合度、及び25℃で12,020mPa.sのブルックフィールド粘度まで、紫外線によって重合された。硬化後、架橋剤としての0.05pphの1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、及び光開始剤としての0.1pphのOmnirad BDKが添加され、得られた混合物は30分間満遍なく攪拌され、液体前駆体VIIIが供給された。
【0205】
液体前駆体VIIIの組成、及び上述される試験方法によって決定されるそのブルックフィールド粘度が、表1にまとめられている。
【0206】
液体前駆体IX
89.3重量%の液体前駆体VIIが、10.7重量%のMAUSオリゴマー、及び架橋剤としての0.25pphのHDDAと共にガラス容器の中で合わせられ、30分間攪拌され、液体前駆体IXが供給された。
【0207】
液体前駆体IXの組成、及び上述される試験方法によって決定されるそのブルックフィールド粘度が、表1にまとめられている。
【0208】
液体前駆体X
94.24重量%のGENOMER 4316、及び5.76重量%のTHF−アクリレートが、ガラス容器の中で合わせられ、30分間混合された。次に、0.25pphのDAROCUR 1173が添加され、得られた混合物は1時間攪拌され、液体前駆体Xが供給された。
【0209】
液体前駆体Xの組成、及び上述される試験方法によって決定されるそのブルックフィールド粘度が、表1にまとめられている。
【0210】
液体前駆体XI
94.57重量%のGENOMER 4316、及び5.43重量%のTHF−アクリレートが、ガラス容器の中で合わせられ、30分間混合された。次に、0.6pphのDAROCUR 1173が添加され、得られた混合物は1時間攪拌され、液体前駆体XIが供給された。
【0211】
液体前駆体XIの組成、及び上述される試験方法によって決定されるそのブルックフィールド粘度が、表1にまとめられている。
【0212】
液体前駆体XII
87.5重量%のIOA、及び12.5重量%のAAが、光開始剤としての0.04pphのOmnirad BDKと共にガラス容器の中で合わせられ、30分間攪拌された。混合物は、約8%の重合度、及び25℃で4,120mPa・sのブルックフィールド粘度まで、窒素に富む大気下で紫外線によって部分的に重合された。硬化後、架橋剤としての0.12pphのHDDA、光開始剤としての0.16pphのOmnirad BDK、及び5pphのTego Rad 2100が添加され、得られた混合物は30分間満遍なく攪拌され、液体前駆体XIIが供給された。
【0213】
液体前駆体XIIの組成、及び上述される試験方法によって決定されるそのブルックフィールド粘度が、表1にまとめられている。
【0214】
液体前駆体XIII
87.5重量%のアクリル酸イソオクチル、及び12.5重量%のアクリル酸が、光開始剤としての0.04pphのOmnirad BDKと共にガラス容器の中で合わせられ、30分間攪拌された。混合物は、約8%の重合度、及び25℃で4,100mPa・sのブルックフィールド粘度まで、窒素に富む大気下で紫外線によって部分的に重合された。硬化後、架橋剤としての0.1pphの1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、及び光開始剤としての0.16pphのOmnirad BDKが添加され、得られた混合物は30分間満遍なく攪拌され、液体前駆体XIIIが供給された。
【0215】
液体前駆体XIIIの組成、及び上述される試験方法によって決定されるそのブルックフィールド粘度が、表1にまとめられている。
【0216】
【表5】

(実施例1〜4)
上述に記載され、また図1に概略的に示される、2つのコーティングステーションI及びIIを備えるコーティング装置が使用された。Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmが基材として使用され、下流速度は、後述の表2に示される通りに変更された。前壁及び後壁はそれぞれ、ブルノーズプロファイル型の底部と上述される寸法とをそれぞれが有するコーティングナイフによって、形成された。コーティングチャンバ(コーティングステーションII)の下流方向の幅、及び横方向に延在するコーティングナイフの縁部と基材の表面との間のギャップは、表2に示される。
【0217】
液体前駆体Iが、回転ビーズIとして、前壁の上流側の前で計量され、また液体前駆体IIIが、コーティングチャンバ内に充填された。2つの液体前駆体層の積み重ね体の形成後、Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmが、後壁コーティングナイフの上流面を介して、液体前駆体IIIの層の露出面上に適用された。基材として使用された剥離ライナーは、底層に取り付けられたままであった。
【0218】
2つの剥離ライナー間の2つの液体前駆体層の積み重ね体は、上述のコーティング装置において記載された紫外線硬化ステーションに沿って通過させることによって硬化されて、2つのポリウレタン層を備える多層フィルムが供給された。
【0219】
硬化後、多層フィルムの露出面に取り付けられた2つの剥離ライナーは除去され、硬化ポリウレタン層の厚さが、多層フィルムの断面図のマイクロ写真を撮影することによって評価された。断面図は、試料を液体窒素内で凍らせ、それらを破断(低温破壊)することによって得られ、またマイクロ写真は、Reichert Jung製の光学顕微鏡(LM)、Polyvar METを使用して撮影された。機器の設定:
【0220】
【表6】

実施例2の多層フィルムの断面図のマイクロ写真が、図4に示される。マイクロ写真は、サンプルホルダーに取り付けられた2つの層を備える多層フィルムを示す。サンプルホルダーに取り付けられた底層は、液体前駆体Iから得られた赤色ポリウレタン層であり、また上方の層は、硬化液体前駆体IIIである。多層フィルムの下の暗い領域は、サンプルホルダーによって引き起こされている。図2から、2つの層は明確にまたはっきりと互いに分離されていることが分かり、2つのポリウレタン層間の境界面で本質的にいかなる混合も発生していないことを示している。硬化ポリウレタン層の厚さ値は、後述の表2に報告されている。写真の一番上の透明な層は、赤色層を通過する光の反射のため、いくつかの領域で僅かに赤く見える。照明の方向を変化させることにより、この影響は写真内の異なる場所へ移動する。
【0221】
【表7】

(実施例5〜11)
上述に記載され、また図1に概略的に示される、2つのコーティングステーションI及びIIを備えるコーティング装置が使用された。Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmが基材として使用され、下流速度は、後述の表3に示される通りに変更された。前壁及び後壁はそれぞれ、ブルノーズプロファイル型の底部と上述される寸法とをそれぞれが有するコーティングナイフによって、形成された。コーティングチャンバ(コーティングステーションII)の下流方向の幅、及びコーティングナイフの底部と基材の表面との間のギャップは、後述の表3に示される。
【0222】
液体前駆体I又はIIIが、それぞれ、回転ビーズ(コーティングステーションI)として、前壁の上流側の前で計量され、また液体前駆体IVが、コーティングステーションII内に充填された。2つの液体前駆体層の積み重ね体の形成後、Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmが、後壁コーティングナイフの上流壁を介して、液体前駆体IVの層の露出面上に適用された。基材として使用された剥離ライナーは、底層に取り付けられたままであった。
【0223】
2つの剥離ライナー間の2つの液体前駆体層の積み重ね体は、上述のコーティング装置において記載された紫外線硬化ステーションに沿って通過させることによって硬化されて、底部のポリウレタン層と上部の感圧接着層とを備える多層フィルムが供給された。
【0224】
硬化後、上部の露出されたウレタン層及び底部の感圧接着層に取り付けられた2つの剥離ライナーは除去され、硬化ポリウレタン層及び感圧接着層の厚さが、それぞれ、多層フィルムの断面図のマイクロ写真を撮影することによって評価された。断面図は、試料を液体窒素内で凍らせ、それらを破断(低温破壊)することによって得られ、またマイクロ写真は、Reichert Jung製の光学顕微鏡(LM)、Polyvar METを使用して撮影された。機器の設定:
【0225】
【表8】

実施例5及び11の多層フィルムの断面マイクロ写真が、図5及び6に示される。実施例5及び11の多層フィルムはそれぞれ2つの層を備え、そのため、それぞれの場合において、下層がサンプルホルダーに取り付けられている。
【0226】
図5(実施例5)のマイクロ写真において、多層フィルムの底層は硬化感圧接着層であり、一方、露出した上層は硬化ポリウレタン層である。感圧接着剤の透明な層は、着色ポリウレタン層を通過する光の反射のため、いくつかの領域で僅かに赤又は黄色く見える。照明の方向を変化させることにより、この影響は写真内の異なる場所へ移動する。図5から、多層フィルムの2つの層は明確にまたはっきりと互いに分離されていることが分かり、ポリウレタン層と感圧接着層との間の境界面において前駆体多層フィルム内に本質的にいかなる混合も発生していないことを示している。
【0227】
図6(実施例11)のマイクロ写真において、多層フィルムの底層は硬化感圧接着層であり、一方、上層は硬化ポリウレタン層である。感圧接着剤の透明な層は、断面の表面にガラス破壊パターンをもたらす低温破壊中のポリマーの脆性挙動のため、僅かに曇って見える。上部のポリウレタン層は、それに添加された黄色染料のため、該層の上部に小さく濃い縞を伴って、僅かに黄色がかって見える。かかる縞は、多層試料の、断面平面の後方に延在する部分から生じる。かかる部分は、多層フィルムが、CDに僅かに屈曲されるために見られる。
【0228】
図6から、多層フィルムの2つの層は明確にまたはっきりと互いに分離されていることが分かり、ポリウレタン層と感圧接着層との間の境界面において前駆体多層フィルム内に本質的にいかなる混合も発生していないことを示している。
【0229】
多層フィルムの硬化ポリマー層の厚さ値は、後述の表3に報告されている。
【0230】
【表9】

(実施例12〜13)
上述に記載され、また図1に概略的に示される、3つのコーティングステーションI、II、及びIIIをそれぞれ備えるコーティング装置が使用された。Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmが基材として使用され、下流速度は、後述の表4に示される通りに変更された。前壁、中間壁、及び後壁はそれぞれ、ブルノーズプロファイル型の底部と上述される寸法とをそれぞれが有するコーティングナイフによって、形成された。コーティングチャンバの下流方向の幅、及び横方向に延在するコーティングナイフの縁部と基材の表面との間のギャップは、後述の表4に示される。
【0231】
液体前駆体II又はVIIが、それぞれ、回転ビーズ(コーティングステーションI)として、前壁の上流側の前で計量され、また液体前駆体I又はIIIが、それぞれ、コーティングステーションII(下流方向の第1のコーティングチャンバ)内に充填された。液体前駆体IVが、コーティングステーションIII(下流方向の第2のコーティングチャンバ)内に充填された。3つの液体前駆体層の積み重ね体の形成後、Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmが、後壁コーティングナイフの上流壁を介して、液体前駆体IVの層の露出面上に適用された。基材として使用された剥離ライナーは、底層に取り付けられたままであった。
【0232】
2つの剥離ライナー間の3つの液体前駆体層の積み重ね体は、上述のコーティング装置において記載された紫外線硬化ステーションに沿って通過させることによって硬化されて、底部の非粘着性ポリウレタン層、中間の非粘着性ポリウレタン層、及び上部の感圧接着層を備える、3層の多層フィルムが供給された。
【0233】
硬化後、多層フィルムの外層に適用された剥離ライナーは除去され、硬化された個々の層の厚さが、多層フィルムの断面のマイクロ写真を撮影することによって評価された。断面図は、試料を液体窒素内で凍らせ、それらを破断(低温破壊)することによって得られ、またマイクロ写真は、Reichert Jung製の光学顕微鏡(LM)、Polyvar METを使用して撮影された。機器の設定:
【0234】
【表10】

実施例12の多層フィルムの断面のマイクロ写真が、図7aに示される。マイクロ写真は、硬化多層フィルムの3つの層と、サンプルホルダーによって引き起こされるフィルムの下の暗い領域とを示す。サンプルホルダーに取り付けられた多層フィルムの底層は、硬化感圧接着層であり、一方、中間層及び露出した上層は、硬化ポリウレタン層である。透明な感圧接着剤底層は、赤色の中間層を通過する光の反射のため、いくつかの領域で筋状に、また僅かに赤く見える。上部の透明なポリウレタン層は、該層の上部に濃い縞を伴って、僅かに緑色/黄色く見える。かかる縞は、多層試料の、断面平面の後方に延在する部分から生じる。かかる部分は、多層フィルムが、CDに僅かに屈曲されるために見られる。
【0235】
約30xの倍率で撮影された実施例12の多層フィルムの断面のマクロ写真が、光沢のある黒色の曲面上に周辺光下で、図7bに示される。これらの条件下において、多層フィルムの上層及び底層は、上述のように透明に見え、また赤色の中間層からはっきりと分離して見える。マクロ写真の僅かに不鮮明な見掛けは、ドイツ、KrefeldのCanon Deutschland GmbH製の、Canon Poweshot SX 100ISによって、焦点距離6mm、またレンズと被写体との間の距離が約5mmで撮影された写真の、制限されたピクセル数に起因する。
【0236】
図7aから、3つの層は明確にまたはっきりと互いに分離されていることが分かり、2つのポリウレタン層間の境界面において、またポリウレタン層と感圧接着層との間の境界面において、本質的にいかなる混合も発生していないことを示している。硬化層の厚さ値は、後述の表4に報告されている。
【0237】
実施例13の多層フィルムの断面のマイクロ写真が、図8に示される。マイクロ写真は、硬化多層フィルムの3つの層と、サンプルホルダーによって引き起こされるフィルムの下の暗い領域とを示す。多層フィルムの底層及び中間層は、硬化非粘着性ポリウレタン層であり、一方、上層は感圧接着層である。多層フィルムの上部の感圧接着剤及び底部のポリウレタン層は、透明であるが、黄色の中間層を通過する光の反射のため、僅かに黄色く見える。照明の方向を変化させることにより、この影響は写真内の異なる場所へ移動する。図8から、3つの層は明確にまたはっきりと互いに分離されていることが分かり、層間の境界面で本質的にいかなる混合も発生していないことを示している。硬化層の厚さ値は、後述の表4に報告されている。
【0238】
(実施例14〜18)
Mitsubishi製Hostaphan 2SLK、75μmが基材として使用され、下流速度は、後述の表4に示される通りに変更された。前壁、各中間壁、及び後壁はそれぞれ、ブルノーズプロファイル型の底部と上述される寸法とをそれぞれが有するコーティングナイフによって、形成された。コーティングチャンバの下流方向の幅、及び横方向に延在するコーティングナイフの縁部と基材の表面との間のギャップは、後述の表4に示される。実施例14〜17では2層の多層フィルムが得られ、また、実施例18の多層フィルムは3つの層を有した。
【0239】
液体前駆体Iが、上流コーティングステーションI(回転ビーズ)で適用され、また液体前駆体V、VI、又はVIIIがそれぞれ、コーティングステーションII又はIII内に、それぞれに充填された(コーティングチャンバ)。2つの液体前駆体層の積み重ね体の形成後、Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmが、後壁コーティングナイフの上流壁を介して、液体前駆体IIIの層の露出面上に適用された。基材として使用された剥離ライナーは、底層に取り付けられたままであった。
【0240】
2つの剥離ライナー間の2つ又は3つの液体前駆体層の積み重ね体は、それぞれ、上述のコーティング装置において記載された紫外線硬化ステーションに沿って通過させることによって硬化されて、対応する2層又は3層の多層フィルムが、それぞれ供給された。
【0241】
前駆体多層フィルムの組成、及び硬化多層フィルムのポリマー層の総厚は、後述の表4にまとめられている。
【0242】
上述に指定される試験方法に従って測定された多層フィルムの光学的性質は、後述の表5及び6にまとめられている。
【0243】
【表11】

【0244】
【表12】

【0245】
【表13】

(実施例19〜21)
上述に記載され、また図1に概略的に示される、2つのコーティングステーションI及びIIを備えるコーティング装置が使用された。Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmが基材として使用され、下流速度は、後述の表7に示される通りに設定された。前壁及び後壁はそれぞれ、ブルノーズプロファイル型の底部と上述される寸法とをそれぞれが有するコーティングナイフによって、形成された。コーティングチャンバの下流方向の幅、及びコーティングナイフの底部と基材の表面との間のギャップは、後述の表7に示される。
【0246】
液体前駆体I、X、又はXIが、それぞれ、回転ビーズ(コーティングステーションI)として、前壁の上流側の前で計量され、また液体前駆体IV又はIXがそれぞれ、コーティングステーションII(コーティングチャンバ)内に充填された。2つの液体前駆体層の積み重ね体の形成後、Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmが、後壁コーティングナイフの上流壁を介して、液体前駆体IV又はIXの上層の露出面上にそれぞれ適用された。基材として使用された剥離ライナーは、底層に取り付けられたままであった。
【0247】
2つの剥離ライナー間の2つの液体前駆体層の積み重ね体は、上述のコーティング装置において記載された紫外線硬化ステーションに沿って通過させることによって硬化されて、露出した底部のポリウレタン層と、Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmによって形成された基材に取り付けられた上部の感圧接着層とを備える、多層フィルムが供給された。
【0248】
硬化後に、2つの剥離ライナーは除去され、硬化ポリウレタン層と感圧接着層との2重層フィルム構成体の総厚が測定された。
【0249】
多層フィルムの上部のポリウレタン層の機械的強度が、上述の試験の項に記載される通り、耐磨耗性及び耐引っかき性を測定することによって評価された。記載される2つの試験の結果は、表8にまとめられている。
【0250】
【表14】

【0251】
【表15】

実施例22及び比較例1a〜1c
上述に記載され、また図1に概略的に示される、2つのコーティングステーションI及びIIを備えるコーティング装置が使用された。Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmが基材として使用され、下流速度は、後述の表9に示される通りに設定された。前壁及び後壁はそれぞれ、ブルノーズプロファイル型の底部と上述される寸法とをそれぞれが有するコーティングナイフによって、形成された。コーティングチャンバの下流方向の幅、及び横方向に延在するコーティングナイフの縁部と基材の表面との間のギャップは、後述の表9に示される。
【0252】
液体前駆体Xが、回転ビーズ(コーティングステーションI)として、前壁の上流側の前で計量され、また液体前駆体XIIが、コーティングステーションII(コーティングチャンバ)内に充填された。2つの液体前駆体層の積み重ね体の形成後、Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmが、後壁コーティングナイフの上流壁を介して、液体前駆体XIIの上層の露出面上に適用された。基材として使用された剥離ライナーは、底層に取り付けられたままであった。
【0253】
2つの剥離ライナー間の2つの液体前駆体層の積み重ね体は、上述のコーティング装置において記載された紫外線硬化ステーションに沿って通過させることによって硬化されて、ポリウレタン層と感圧接着層とを備える多層フィルムが供給された。
【0254】
硬化後、剥離ライナーは除去され、硬化ポリウレタン層及び感圧接着層の厚さがそれぞれ、多層フィルムの断面の顕微鏡的評価によって評価された。断面は、試料を鋭利なかみそりの刃で切断することによって得られ、また表9に列挙される厚さの測定は、Reichert Jung製の光学顕微鏡(LM)、Polyvar METを使用することによって実現された。機器の設定:
【0255】
【表16】

【0256】
【表17】

実施例22の多層フィルムの光学的品質が、ポリウレタン層又はポリエチレン層と、反対側の感圧接着層とを備える、以下の可撓性かつ適合性のある2層フィルムと比較された。比較フィルムは、以下の通り市販されている。
【0257】
・PUL 2006 3M(商標)、高性能保護ポリウレタンフィルム、3Mから市販されている(比較例1a)
・PU 5892 GA7 3M(商標)、高性能保護ポリウレタンフィルム、3Mから市販されている(比較例1b)
・P−450 3M(商標)、高性能保護ポリエチレンフィルム、3Mから市販されている(比較例1c)
フィルムの光学的品質は、上述される通り、Shack−Hartmann波面センサシステム、及びSiemens Starに基づいた試験方法を使用して決定された。表10に列挙される結果から、実施例22の可撓性フィルムの優れた光学的品質及び低い画像歪曲が分かるであろう。波面変形の最高最低差値は、保護フィルムによって誘発される波面の変形と、フィルムが積層化されたガラスによって誘発される変形とをまとめている。保護フィルムなしのガラスの基準測定は、波面の変形に及ぼすガラスプレートの影響は、保護フィルムの影響と比較して非常に小さいことを示している。フロートガラスプレートに対して測定された波面変形の最高最低差値が、ガラス基準プレートに適用された多層フィルムに対して測定された波面変形の最高最低値から引かれて、多層フィルム単独に関する波面変形の最高最低差値がもたらされる。
【0258】
図9b〜9eは、個々のフィルムに関するSiemens Star試験の絵を示す。ガラス基準に関するSiemens Star試験は、図9aに示される。ガラス基準は、約1.52の屈折率n589nm,23℃を有する、2mm厚の透明フロートガラスプレート(炭酸カルシウムソーダ石ケイ酸塩フロートガラス)であった。
【0259】
【表18】

(実施例23)
上述に記載され、また図1に概略的に示される、2つのコーティングステーションI及びIIを備えるコーティング装置が使用された。Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmが基材として使用され、下流速度は、後述の表11に示される通りに設定された。前壁及び後壁はそれぞれ、ブルノーズプロファイル型の底部と上述される寸法とをそれぞれが有するコーティングナイフによって、形成された。コーティングチャンバの下流方向の幅、及びコーティングナイフの底部と基材の表面との間のギャップは、後述の表11に示される。
【0260】
液体前駆体Xが、回転ビーズ(コーティングステーションI)として、前壁の上流側の前で計量され、また液体前駆体XIIIが、コーティングステーションII(コーティングチャンバ)内に充填された。2つの液体前駆体層の積み重ね体の形成後、Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmが、後壁コーティングナイフの上流壁を介して、液体前駆体XIIIの上層の露出面上に適用された。基材として使用された剥離ライナーは、底層に取り付けられたままであった。
【0261】
2つの剥離ライナー間の2つの液体前駆体層の積み重ね体は、上述のコーティング装置において記載された紫外線硬化ステーションに沿って通過させることによって硬化されて、ポリウレタン層と反対側の感圧接着層とを備える多層フィルムが供給された。
【0262】
(実施例24)
剥離ライナー15が、直径45mmのコンマ形状を有する下流バー30を介して、コーティング装置1の下流に適用されるという修正が加えられた、上述に記載され、また図1に概略的に示される2つのコーティングステーションI及びIIを備えるコーティング装置が使用された。後壁12の下流面とコンマバー30との間の開面距離31は、200mmであった。比較例2aで使用された修正されたコーティング装置は、図10に示される。
【0263】
Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmが基材2として使用され、下流方向3への下流速度は、後述の表11に示される通りに設定された。前壁11及び後壁12はそれぞれ、ブルノーズプロファイル型の底部と上述される寸法とをそれぞれ有するコーティングナイフによって、形成された。コーティングステーションII(コーティングチャンバ)の下流方向の幅、及びコーティングナイフの底部と基材の表面との間のギャップは、後述の表11に示される。
【0264】
液体前駆体Xが、回転ビーズIとして、前壁の上流側の前で計量され、また液体前駆体XIIIが、コーティングチャンバ(コーティングステーションII)内に充填された。
【0265】
2つの液体前駆体層の積み重ね体の形成に続いて、またこの層の積み重ね体がコーティング装置から出た後に、Mitsubishi製の剥離ライナー、Hostaphan 2SLK、75μmが、バー30を介して、液体前駆体XIIIの上層の露出面上に適用された。横方向に延在するバーの縁部と層XIIIの露出面との間のギャップは、初め、回転ビーズがバーの上流に形成されるように設定された。ギャップ幅は次に、回転ビーズがちょうど消失する値まで、ギャップ幅を増大させることによって調整された。このギャップ幅を使用して、剥離ライナーが適用された。基材として使用された剥離ライナーは、底層に取り付けられたままであった。
【0266】
2つの剥離ライナー間の2つの液体前駆体層の積み重ね体は、上述のコーティング装置において記載された紫外線硬化ステーションに沿って通過させることによって硬化されて、ポリウレタン層と感圧接着層とを備える多層フィルムが供給された。
【0267】
比較例2a
260μm厚の単一非付着性ポリウレタン層が、この場合では1つのコーティングナイフのみを備える図1のコーティング装置を使用することによって、得られた。液体前駆体Xが、回転ビーズ(コーティングステーションI)として、かかる単一のコーティングナイフの上流側の前で計量された。Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2 SLK、75μmが、基材として使用された。下流方向3への下流速度、及び横方向に延在するコーティングナイフの縁部と基材の表面との間のギャップは、後述の表12に示されるように設定された。
【0268】
前駆体層Xの形成後、Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2 SLK、75μmが、コーティングナイフの上流面を介して、該層の露出面上に適用された。基材として使用された剥離ライナーは、前駆体層Xに取り付けられたままであった。前駆体層Xは次に、上述のコーティング装置において記載された紫外線硬化ステーションに沿って通過させることによって硬化されて、2つのHostaphan剥離ライナー間に、硬化された260μm厚の単一非付着性ポリウレタン層Xが供給された。前駆体層Xの屈折率は、n589nm,23℃=1.5030であった。
【0269】
次に、剥離ライナーのうちの1つが除去された。前駆体Xの硬化層は、残った剥離ライナーを介してコーティング装置の底部ライナーへ取り付けられて、第2の通過で、前駆体Xの硬化層を前駆体XIIIの感圧接着層でコーティングした。液体前駆体XIIIが、回転ビーズとして、かかる単一のコーティングナイフの上流側の前で計量された。下流方向3への下流速度、及び横方向に延在するコーティングナイフのギャップと硬化層Xの露出面との間のギャップは、後述の表12に示されるように設定された。
【0270】
前駆体層XIIIの形成後、Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2 SLK、75μmが、コーティングナイフの上流面を介して、前駆体層XIIIの露出面上に適用された。前駆体層XIIIを支える硬化層Xを備える、2つの剥離ライナー間の層の積み重ね体は、上述される紫外線硬化ステーションに沿って通過された。
【0271】
比較例2b
上述の比較例2(b)に記載されるコーティング装置を使用して、単一の硬化感圧接着層XIIIが得られた。コーティングギャップ、及び硬化単一層フィルムXIIIの厚さは、後述の表12にまとめられている。前駆体層XIIIの屈折率は、n589nm,23℃=1.4734であった。
【0272】
1つの剥離ライナーが硬化単一層感圧接着フィルムXIIIから除去され、上述の比較例2(b)で得られた非付着性の硬化単一層ポリウレタンフィルムXが、幅200mmで質量2kgのハードローラーを用いて、約10mm/秒の速度で前後方向にそれぞれ1回ずつ層の積み重ね体を通過させることによって、互いに接して積層化された。
【0273】
実施例23及び24、並びに比較例2a及び2bの多層フィルムの光学的性質が、上記に開示される測定方法を使用して評価された。結果は、表13a及び13bに列挙されている。Siemens Star写真が、図9f〜9iとして示される。実施例24の多層フィルムの硬化された上層面は、巨視的なコーティング欠陥(直径約1mmの気泡)を示し、一方で実施例23の多層フィルムの硬化された上層面は、巨視的コーティング欠陥を本質的に有さなかった。
【0274】
【表19】

【0275】
【表20】

【0276】
【表21】

【0277】
【表22】

実施例25及び比較例3
上述に記載され、また図1に概略的に示される、2つのコーティングステーションI及びIIを備えるコーティング装置が使用された。Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmが基材として使用され、下流速度は、後述の表14に示される通りに設定された。前壁及び後壁はそれぞれ、ブルノーズプロファイル型の底部と上述される寸法とをそれぞれが有するコーティングナイフによって、形成された。コーティングチャンバの下流方向の幅、及びコーティングナイフの底部と基材の表面との間のギャップは、後述の表14に示される。
【0278】
液体前駆体Xが、回転ビーズ(コーティングステーションI)として、前壁の上流側の前で計量され、また液体前駆体XIIIが、コーティングステーションII(コーティングチャンバ)内に充填された。2つの液体前駆体層の積み重ね体の形成後、Mitsubishi製の剥離ライナーHostaphan 2SLK、75μmが、後壁コーティングナイフの上流壁を介して、液体前駆体XIIIの上層の露出面上に適用された。基材として使用された剥離ライナーは、底層に取り付けられたままであった。
【0279】
2つのライナー間の2つの液体前駆体層の積み重ね体は、上述のコーティング装置において記載された紫外線硬化ステーションに沿って通過させることによって硬化されて、ポリウレタン層と感圧接着層とを備える、対応する多層フィルムが供給された。
【0280】
硬化後、底部のウレタン層に適用された剥離ライナーが除去され、硬化ポリウレタン層及び感圧接着層の厚さがそれぞれ、多層フィルムの断面の顕微鏡検査によって評価された。断面は、試料を鋭利なかみそりの刃で切断することによって得られ、また表14に列挙される厚さの測定は、Reichert Jung製の光学顕微鏡(LM)、Polyvar METを使用することによって実現された。機器の設定:
【0281】
【表23】

T−剥離強度、及びガラスに対する90°剥離粘着力が、上述される試験方法に従って評価され、結果は後述の表16に報告されている。
【0282】
比較例3
270μm厚の単一非付着性ポリウレタン層、及び70μm厚の単一感圧接着層が、それぞれ、上述の「コーティング装置」の項に開示される硬化条件を使用して、2つのライナー間に、前駆体X及びXIIIをそれぞれ硬化させることによって得られた。
【0283】
単一層接着フィルムの厚さは、後述の表15にまとめられている通りであった。
【0284】
1つの剥離ライナーが、単一層感圧接着フィルム及び非付着性ポリウレタンフィルムからそれぞれ除去され、これらは次に、幅200mmで質量2kgのハードローラーを用いて、約10mm/秒の速度で前後方向にそれぞれ1回ずつ層の積み重ね体を通過させることによって、互いに接して積層化された。
【0285】
T−剥離強度、及びガラスに対する90°剥離粘着力が、上述される試験方法に従って評価され、結果は後述の表16に報告されている。
【0286】
【表24】

【0287】
【表25】

【0288】
【表26】

【0289】
【表27】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの重畳ポリマー層を備える多層フィルムを形成する連続自己計量プロセスであって、
(i)基材を供給する工程と、
(ii)前記基材の表面に垂直なギャップを形成するように、前記基材から、互いに独立してオフセットされる、2つ以上のコーティングナイフを提供する工程と、
(iii)前記基材を前記コーティングナイフに対して下流方向に移動させる工程と、
(iv)前記ポリマーの硬化性液体前駆体を、前記コーティングナイフの上流側に供給し、それによって、前記2つ以上の前駆体を、前記基材上に重畳層として前記それぞれのギャップを通してコーティングする工程と、
(v)任意に、1つ以上の固体フィルムを供給し、これらを、隣接した下ポリマー層の前記形成と本質的に同時に適用する工程と、
(vi)このようにして得られた前記多層フィルムの前駆体を、硬化させる工程と、
を含み、
硬化性液体前駆体の下層が、前記硬化性液体前駆体の前記下層を本質的に露出することなく、硬化性液体前駆体又はフィルムの隣接した上層によってそれぞれ被覆される、プロセス。
【請求項2】
剥離ライナーが、工程(v)で、前記多層フィルムの前記前駆体の前記上層の露出面に、かかる上層の形成と本質的に同時に取り付けられる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記コーティングナイフが、上流面と、下流面と、前記ギャップの距離内で前記基材に面する底部とを有する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記コーティングナイフが、金属、ポリマー材料、セラミックス、及びガラスを含む材料の群から選択される材料で形成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記コーティングナイフがウェブに面するその横方向に延在する縁部において示す断面プロファイルが、本質的に、平面、曲面、凹状、又は凸状である、請求項3〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記液体前駆体が、周囲気圧下又は過剰圧下で適用される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ポリマー材料の前記液体前駆体が、本質的に互いに当接し、かつ、前壁と、任意に1つ以上の中間壁及び後壁とによって、並びに任意に、前記前壁に対して上方ウェブに位置付けられる回転ビーズとによって、下流方向で境される、1つ以上のコーティングチャンバの中に供給される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記上流中間壁と、前記後壁と、回転ビーズが前記前壁に対して上流に存在する場合は前記前壁とが、コーティングナイフによって形成される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記固体フィルムが、前記多層フィルムの前記前駆体の前記最下層、前記最上層、又は中間層を形成するように取り付けられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記基材及び/又は前記固体フィルムが、ポリマーフィルム若しくはウェブ、金属フィルム若しくはウェブ、織布ウェブ若しくは不織ウェブ、ガラス繊維強化ウェブ、炭素繊維ウェブ、ポリマー繊維ウェブ、又はガラス、ポリマー、金属、炭素繊維、及び/若しくは天然繊維のエンドレスフィラメントを含むウェブを含む材料の群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
少なくとも前記基材の前記露出面及び/又は前記多層フィルムの前記前駆体に面する固体フィルムの少なくとも1つの表面が、剥離面である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記基材が、前記硬化工程の後に前記多層フィルムの一体部分を形成する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記コーティング装置に対する縦方向の基材の速度が、0.05〜100m/分である、請求項1〜12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記前駆体層が、それらが前記コーティング装置の前記後壁を通過した後に、熱的に、及び/又はそれらを化学線に曝露することよって、硬化される、請求項1〜13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記前駆体のうちの少なくとも1つが、放射線硬化性エチレン基を有する少なくとも1つの化合物を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記液体前駆体が、25℃で少なくとも1,000mPa・sのブルックフィールド粘度を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
剥離ライナーが、請求項1に記載の方法の工程(v)において、前記多層フィルムの前記前駆体の前記上層の前記露出面に、かかる上層の形成と本質的に同時に取り付けられる、請求項1に記載の方法によって得ることができる多層フィルム。
【請求項18】
それぞれが可視光線に対して少なくとも80%の透過率を有する少なくとも2つの重畳ポリマー層を備える、光透過性多層フィルムであって、前記多層フィルムが、前記剥離ライナーが前記多層フィルムの前記前駆体の前記上層の形成に対して下流の位置で、前記上層表面の前記露出面に取り付けられるという点で、上述の方法とは異なる方法によって得られる比較多層フィルムの透過率より高い、可視光線に対する透過率を示す、請求項17に記載の光透過性多層フィルム。
【請求項19】
前記比較多層フィルムの前記透過率に対する前記多層フィルムの前記透過率の比率が、少なくとも1.002である、請求項18に記載の多層フィルム。
【請求項20】
少なくとも2つの重畳ポリマー層を備える光透過性多層フィルムであって、外層のうちの一方が少なくとも1つのエチレン性不飽和ウレタン化合物を含む液体前駆体の重合から得ることができるポリウレタンポリマーを含み、もう一方の反対側の外層が接着剤を含み、前記多層フィルムの、前記接着性外層の反対側の外層に垂直に衝突しかつ前記多層フィルムを通って透過するλ=635nmの波長の平面波面から生じる波面の最大波面収差が、透過される波面の最高最低差値として測定したときに、6λ(=3,810nm)未満である、光透過性多層フィルム。
【請求項21】
前記エチレン性不飽和ポリウレタン化合物が、(メタ)アクリル酸ウレタン化合物である、請求項21に記載の多層フィルム。
【請求項22】
請求項1に記載の方法によって得ることができる光透過性多層フィルムと、ガラス基材とを備えるアセンブリであって、前記多層フィルムが、それぞれが可視光線に対して少なくとも80%の透過率を有する少なくとも2つの重畳ポリマー層を備え、前記多層フィルムの前記外層のうちの一方が接着層であり、それを介して前記多層が前記ガラス基材に取り付けられ、前記接着外層の屈折率が、前記多層フィルムの前記反対側の外層の屈折率より低い、アセンブリ。
【請求項23】
前記接着層の前記屈折率と前記反対側の外層の前記屈折率の差が、0.030未満である、請求項22に記載のアセンブリ。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図9e】
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【図9f】
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【図9g】
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【図9h】
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【図9i】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−517942(P2013−517942A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551280(P2012−551280)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2011/022685
【国際公開番号】WO2011/094385
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】