説明

多層フィルム

本発明は、(a)軸配向ポリアミドフィルムを含む少なくとも1つの基材フィルム層および(b)グラフトポリプロピレンを含み、a)の基材フィルム層上に押出被覆された少なくとも1つの無溶媒高分子フィルム層を上記の順序で含むことを特徴とする多層フィルムに関する。本発明による多層フィルムは医薬品および食品の包装のために特に適する。多層フィルムは十分に高温処理可能であり、無溶媒成分を用いて製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に医薬品および食品のための包装として適する軟質の、高温処理可能な(retortable)多層材料に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の用途に関して、高温処理することが可能である軟質包装を有することが望ましい。これは、例えば包装された商品が滅菌処理を受けることが多い医薬品産業および食品産業の場合である。
【0003】
今まで、高温処理可能な構造をもたらす方法の一つは、ポリエステルまたはポリアミドから製造された外層を例えばポリプロピレンまたはアルミニウムフォイル(foil)から製造された内層と組み合わせる接着積層に限定されている。しかし、こうした高温処理可能な構造の製造は、メチルエチルケトン、トルエンおよびアセトアルデヒドなどの重要な量の溶媒を含有する繋ぎ材料の使用を含む。
【0004】
溶媒を含む繋ぎ材料の使用は2つの主要な問題につながる。多層フィルム構造の製造中に溶媒放出物を捕捉する回収システムを実施することが先ず必要である。こうしたシステムは効率的でないことが多く、比較的複雑であり、よって全体的なフィルム製造プロセスを高価にし、環境を重んじなくさせる。一旦多層フィルムが製造されると繋ぎ材料から溶媒を完全に除去するのが更に難しい。溶媒残留物は構造の内層に移行し、最終的には包装内容物を汚染しかねない。
【0005】
無溶媒繋ぎ材料を用いて製造されたポリアミド多層フィルムは技術上知られている。しかし、こうしたフィルムは、ポリアミドと例えばポリプロピレンおよび無溶媒繋ぎ材料のキャストフィルム共押出またはブローフィルム共押出によって製造される。ポリアミドは、製造プロセスの前に軸配向されえないように溶融物の形態で共押出される。こうして得られた多層フィルム材料は所望の機械的特性およびガスバリア特性を示さない。実際には、軸配向される場合、ポリアミド構造は、一軸配向される場合に1.5倍に至るまで機械的特性とガスバリア能力の両方を高めることが可能であり、二軸配向される場合に3倍に至るまで高めることが可能である。耐引裂性などの優れた機械的特性および酸素と水分に対するバリア特性は、食品および医薬品のような商品の完全性を長期間にわたって保存するために包装材料にとって必須の特徴である。
【0006】
従って、良好な機械的特性およびガスバリア特性を有する高温処理可能な無溶媒多層包装材料がなお必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、軸配向ポリアミドフィルムを無溶媒高分子材料と合わせて押出被覆することにより上述した問題を克服することが可能であることが今見出された。
【0008】
本発明の態様は、
(a)軸配向ポリアミドフィルムを含む少なくとも1つの基材フィルム層および
(b)グラフトポリプロピレンを含み、a)の基材フィルム層上に押出被覆された少なくとも1つの無溶媒高分子フィルム層
を上記の順序で含むことを特徴とする軟質包装のための多層フィルムである。
【0009】
本発明による多層フィルムは無溶媒成分を用いて製造される。従って、多層フィルムは環境に優しく、その製造は溶媒放出物を捕捉するための複雑なシステムの使用を必要としない。本発明による多層構造は良好な官能的特性も示す。
【0010】
本発明による多層フィルムは酸素および水蒸気に対する良好なバリアであり、良好な機械的特性を示す。多層フィルムは良好な耐引裂性および耐穿孔性、良好な剛性および魅力的な光沢を示す。
【0011】
本発明による多層フィルムは、高温処理後でさえ、その優れた機械的特性およびガスバリア特性、ならびに異なる層の間の優れた粘着力を保持する。包装された医薬品および食品は、130℃までの温度で30分以上の時間にわたって高温処理を受けることが多い。従って、こうしたプロセス中に包装材料が物理的特性および/または化学的特性を変えないことが必須である。
【0012】
本発明の追加の態様は、上述した多層フィルムを含む少なくとも1つの構成要素を有する軟質包装である。本発明による軟質包装は医薬品および/または食品の包装として用いることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
基材フィルム層は軸配向ポリアミドフィルムから製造され、好ましくは約10〜約40μm、なおより好ましくは約15〜約30μmの範囲の厚さを有する。例えばポリアミド6またはポリアミド6.6のように市場で入手できるいかなる軸配向ポリアミドも本発明の目的のために適する。本発明により用いられるポリアミドフィルムは、好ましくは二軸配向されているが、一軸配向フィルムも用いてよい。基材フィルム層は酸素に対するバリアである。好ましくは、バリア層は、23℃の温度および0%の相対湿度でASTM D−1435−66に準拠して測定した場合、100cm/(m・24時間)未満、好ましくは50cm/(m・24時間)未満の透過率を有する。
【0014】
基材フィルム層は、その物理的特徴および/または化学的特徴の1つまたは複数を更に高めるために多層構造の形態を取った軸配向ポリアミドも含んでよい。例えば、基材フィルム層によって提供された酸素に対するバリアは、軸配向多層構造「ポリアミド//エチレンビニルアルコール(EVOH)//ポリアミド」を軸配向ポリアミド単層の代わりに用いる場合に高めることが可能である。
【0015】
本発明の目的のために適する二軸配向ポリアミドは、例えば「フィルモン(Filmon)」(登録商標)BXという商品名でイタリア国のSNIAテクノポリメリ(SNIA Tecnopolimeri S.p.a.)から得ることができる。
【0016】
本発明による多層フィルムの無溶媒高分子フィルム層は基材フィルム層上に共押出被覆される。無溶媒高分子フィルム層はホモポリマーの形態か、またはプロピレン/エチレンコポリマーの形態をとったポリプロピレンをベースとする共押出可能な接着剤である。プロピレン/エチレンコポリマーを用いる場合、エチレンモノマーはコポリマーの全重量を基準にして好ましくは約2〜約8%の範囲の量でコポリマー中に存在する。本発明の好ましい実施形態によると、無溶媒高分子フィルム層は、無水マレイン酸で変性(グラフト)され、無水マレイン酸は、好ましくは無溶媒高分子フィルム層の全重量の約0.1〜約1.5%の範囲の量で、なおより好ましくは無溶媒高分子フィルム層の全重量の約1%の量で無溶媒高分子フィルム層中に存在する。
【0017】
無溶媒高分子フィルム層はシーラント(sealant)機能を有し、水分に対するバリアとして機能し、包装された商品に接触している。これは、特定の状況に応じて商品に触れるか、触れないかによって無溶媒高分子フィルム層が商品に向けられていることを意味する。
【0018】
無溶媒高分子フィルム層は、約3〜約50μm、なおより好ましくは約5〜約15μmの範囲の厚さを有する。無溶媒高分子フィルム層は、容易なシール性を可能にするのに十分に低いが、高温処理を可能にするのに十分に高い溶融温度をもたなければならない。適する溶融温度は、約130〜約165℃、なおより好ましくは約140〜約155℃の範囲である。適するメルトフローインデックス値は、好ましくは約3〜約50dg/分、なおより好ましくは約5〜約10dg/分の範囲であり、メルトフローインデックスは、230℃および2.16kgでASTM D1238に準拠して測定される。
【0019】
上述した無溶媒高分子フィルム層のために適する無水マレイン酸変性ポリプロピレンは、「バイネル(Bynel)」(登録商標)シリーズ5000という商品名で本願特許出願人から市販されている。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によると、水性押出プライマ層(primer layer)は、基材フィルム層と無溶媒高分子フィルム層との間に被着される。プライマ層は好ましくは1μm未満である厚さを有する。こうしたプライマを用いる場合、基材と無溶媒高分子フィルム層との間の優れた粘着力が提供され、共押出プロセス後の多層フィルムの熱処理がもう必要でないようになる。この場合、基材フィルム層は最初に例えばコロナ処理して、基材フィルム層上に高い活性の接着サイトを提供し、よってプライマ粘着力を促進させる。その後、プライマは、従来の溶液被覆手段によってコロナ処理済み基材フィルム層に被着される。本発明の目的のために適するプライマ材料は技術上周知されており、例えば、チタネートおよびポリ(エチレンイミン)が挙げられる。本明細書において特に効果的なプライマは、溶液の全重量の約5%の濃度でイミンを含む、例えばエタノールの水溶液または有機溶媒溶液のいずれかとして被着されたポリ(エチレンイミン)である。本発明のために適するプライマは「ミカ(MICA)」(登録商標)A−131−Xという商品名で米国コネチカット州ミカ・コーポレーション(Mica Corporation(CT,U.S.A.))から市販されている。
【0021】
好ましい実施形態によると、本発明の多層フィルムは、基材フィルム層の反対側で無溶媒高分子フィルム層に隣接する少なくとも1つの機能層を更に含む。この好ましい実施形態において、無溶媒高分子フィルム層は基材フィルム層と機能層との間の繋ぎ層の役割を担う。機能層は、多層フィルム構造の化学的特性および/または物理的特性を更に強化する、および/または追加の化学的特性および/または物理的特性を多層フィルム構造に付与することが可能である材料のあらゆる種類から製造することが可能である。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によると、機能層は、好ましくは包装された商品に接触しているシーラント層である。シーラント層を用いることにより、無溶媒高分子層の厚さを薄くすることが可能であり、よって本発明による多層フィルム構造の全体的なコストの減少を可能にする。
【0023】
シーラント層は、好ましくは、ホモポリマーの形態か、またはプロピレン/エチレンコポリマーの形態をとったポリプロピレンをベースとする。プロピレン/エチレンコポリマーを用いる場合、エチレンモノマーは、コポリマーの全重量を基準にして好ましくは約2〜約8%の範囲の量でコポリマー中に存在する。シーラント層のために用いられるポリプロピレン系材料は、上述した無溶媒高分子フィルム層のために用いられる材料と同じであってもよい。このポリプロピレン系材料は、溶融温度および/またはメルトフローインデックスのような異なる特性を有するように例えばエチレン含有率において異なってもよい。シーラント層は水分に対するバリアとしても機能する。
【0024】
シーラント層は、好ましくは約3〜約50μm、なおより好ましくは約10〜約40μmの範囲の厚さを有する。シーラント層は、容易なシール性を可能にするのに十分に低いが、高温処理を可能にするのに十分に高い溶融温度をもたなければならない。適する溶融温度は約140℃〜約155℃の範囲である。シーラント層として使用可能なポリプロピレン系材料のために適するメルトフローインデックス値は、約3〜約50dg/分、より好ましくは約5〜約10dg/分の範囲であり、メルトフローインデックスは、230℃および2.16kgでASTM D1238に準拠して測定される。
【0025】
上述したようにシーラント層を含む本発明による多層フィルムは、その構造中に含まれる種々のポリマーの性質のゆえに高度に透明である。従って、多層フィルムは顧客に見えず、よって全体的な包装へのよりビジュアルなアピールを提供するとともに内容物の品質保証を容易にする。更に、低い摩擦係数のおかげで、こうした多層フィルムは包装機械内で高速で処理することが可能である。
【0026】
本発明のもう1つの好ましい実施形態によると、機能層は金属系フォイルであり、残留油を含まず、押出被覆のために適する。こうしたフォイルは、好ましくは約6〜約100μm、なおより好ましくは約9〜約50μmの範囲の厚さを有する。フォイルは、アルミニウム、銅およびスチールなどの適するあらゆる金属および/または金属合金をベースとすることが可能である。好ましくは、フォイルはアルミニウムから本質的に製造される。
【0027】
上述した層の各々は、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、染料または顔料、充填剤、難燃剤、潤滑剤、ガラス繊維およびガラスフレークなどの強化剤、加工助剤例えば離型剤、および/またはそれらの混合物を含む有用な添加剤を含んでもよい。酸化防止剤は層中で約400〜約500ppmの量で存在してもよい。
【0028】
本発明による多層フィルムの全厚さは、好ましくは約15μm〜約500μm、より好ましくは約30μm〜約100μmの範囲である。
【0029】
本発明のもう1つの態様は、本発明による多層フィルムを含む少なくとも1つの構成要素を有する軟質包装である。好ましい実施形態によると、軟質包装は、本発明の多層フィルムにより製造された1つまたは複数の蓋を含むことが可能である。本発明の多層フィルムの物理的特性のゆえに、多層フィルムから製造された蓋は十分に高温処理可能であり、それは熱処理後の全体的な包装の機械的特性および/または化学的特性を維持するのを助ける。あるいは、軟質包装は本発明の多層フィルムで完全に製造することが可能である。軟質包装の例は蓋付きのトレーおよびパウチである。
【0030】
本発明による多層フィルムは、基材フィルム層を無溶媒高分子フィルムと合わせて押出被覆することにより調製してもよい。
【0031】
本発明による多層フィルムは、次の通り押出被覆することにより調製してもよい。ペレット状の無溶媒高分子材料を押出機のホッパー内に搬送する。押出機は無溶媒高分子材料を溶かし、無溶媒高分子材料をフラットダイに押し進めるために特定の圧力を生じさせる。ダイを出る溶融物カーテンは、ニップを形成する2つのロール、チルロールおよびゴム被覆ロールによって引き出される。ニップ内で、無溶媒高分子材料をロールから巻き出されている基材フィルム層上にプレスして、粘着力を発現させる。その後、それをチルロールによって冷却し、固化させる。基材フィルムを溶融物カーテンによって被覆するニップに入る前に、基材フィルム層を火炎処理するか、コロナ処理するか、または下塗りすることが可能である。典型的なライン速度は約100〜約300m/分の間である。シーラント層などの追加の高分子層を機能層として追加する場合、追加の高分子層は、同じダイを通して基材フィルム層に無溶媒高分子材料と合わせて共押出することが可能である。アルミニウムフォイルなどの金属系フォイルを機能層として用いる場合、金属系フォイルを第2のロールから巻き出すことが可能であり、基材フィルム層に無溶媒高分子フィルム層と合わせて押出積層することが可能である。こうした金属系フォイルを必要ならば前もって火炎処理またはコロナ処理することが可能である。
【0032】
押出被覆、共押出被覆または積層被覆を通して、本発明の多層フィルムを高速度且つ低コストで1つの単一操作で製造することが可能である。
【0033】
本発明を以下の実施例において更に記載する。ここで、基材フィルム層を常に最初に示し、//によって共押出層から分離する。
【実施例】
【0034】
(原料の説明)
以下で記載した実施例で用いられた材料は次の通りであり、それぞれの商標および商品名によって特定されている。
【0035】
(本発明によるサンプルのための材料)
基材フィルム層−1(boPA):二軸配向ポリアミドフィルム。厚さ25μm。「フィルモン(Filmon)」(登録商標)BXという商品名でSNIAテクノポリメリ(SNIA Tecnopolimeri S.p.A.)から市販されている。
プライマ−1:「ミカ(MICA)」(登録商標)A−131−X。水1:1で希釈されたもの。ミカ・コーポレーション(Mica Corporation)から市販されている。
プライマ−2:「ミカ(MICA)」(登録商標)H−760。水1:3.5で希釈されたもの。ミカ・コーポレーション(Mica Corporation)から市販されている。
無溶媒高分子フィルム層−1(Tie−1):「バイネル(Bynel)」(登録商標)50E739。本願特許出願人から市販されている。
無溶媒高分子フィルム層−2(Tie−2):85重量%「バイネル(Bynel)」(登録商標)50E739+15重量%「フサボンド(Fusabond)」(登録商標)MD353D。「フサボンド(Fusabond)」(登録商標)MD353Dは本願特許出願人から市販されている。
無溶媒高分子フィルム層−3(Tie−3):「バイネル(Bynel)」(登録商標)XB604−5。本願特許出願人から市販されている。
シーラント層(PPx):ポリプロピレングレードRD204CF。ボリアリスOY(Borealis OY)から市販されている。
Al−Foil:ローソン・マードン・シンゲン(Lawson Mardon Singen GmbH)から市販されているブリスターのための45μmアルミニウム。
【0036】
(比較サンプルのための材料)
基材フィルム層−2(boPET):二軸配向ポリエステルフィルム。厚さ23μm。「マイラー(Mylar)」(登録商標)23Aという商品名で本願特許出願人から市販されている。
【0037】
本発明による以下の多層サンプルを調製した(プライマ層の厚さは常に1μm未満であった)。
サンプル1:boPA(25μm)//プライマ−1//Tie−1(5μm)/PPx(35μm)
サンプル2:boPA(25μm)//プライマ−1//Tie−2(5μm)/PPx(35μm)
サンプル3:boPA(25μm)//プライマ−2//Tie−1(5μm)/PPx(35μm)
サンプル4:boPA(25μm)//プライマ−2//Tie−2(5μm)/PPx(35μm)
サンプル5:boPA(25μm)//プライマ−1//Tie−3(12μm)/Al−Foil(45μm)
サンプル6:boPA(25μm)//Tie−3(10μm)/Al−Foil(45μm)
【0038】
以下の比較多層フィルムサンプルを調製した(比較)。
サンプル7:boPET(25μm)//プライマ−1//Tie−1(5μm)/PPx(35μm)
サンプル8:boPET(25μm)//プライマ−1//Tie−2(5μm)/PPx(35μm)
サンプル9:boPET(25μm)//プライマ−2//Tie−1(5μm)/PPx(35μm)
サンプル10:boPET(25μm)//プライマ−2//Tie−2(5μm)/PPx(35μm)
【0039】
(サンプルの調製(サンプル1〜4および7〜10))
サンプルを共押出被覆によって次の通り調製した。
サンプルごとに、基材フィルム層をメインロールから巻き出し、44ダイン/cmの表面張力にコロナ処理し、0.8g/mウェットの被膜厚さで下塗りし、110℃および80m/分のライン速度で長さ4mのオーブン内で乾燥させた。無溶媒高分子フィルム層(Tie−1またはTie−2)のための材料を押出機A(直径64mm、長さ/直径(L/D)=30)内に導入した。シーラント層のための材料を押出機B(直径89mm、L/D=30)内に導入した。押出機ごとに、温度(℃)を以下の温度分布により等しい長さの5ゾーンのために設定した。
押出機A:180、210、240、270、300
押出機B:200、230、260、290、315
【0040】
アダプター、接続配管、フィードブロックの温度を310℃に設定し、ダイ温度を無溶媒高分子フィルム層の側で300℃に、シーラント層の側で315℃に設定した。ダイギャップは0.7mmであり、ダイ幅は800mmであった。エアギャップを15cmに設定した。ニップ内の圧力は、ゴム(ショアA80)を約2cmにわたって変形させる40Kg/cmであった。チルロールの温度は10℃であった。
【0041】
(試験)
(粘着強度)
粘着強度は、ドイツ国のツイック(Zwick AG)によって製造された引張試験器内で幅15mmの細片上で180度の引張角および100mm/分の引張速度で測定した。
【0042】
表Iで報告された粘着力は、製造後直接的にサンプルで(直接)、および1週間の間水に前もって浸けたサンプルで(HO浸漬)測定した。
【0043】
(ヒートシール強度)
多層フィルムを幅15mmの細片に切断する。幅25mm、長さ200mmの金属製で加熱された2つのシールジョーを有するコップ(Kopp)(ドイツ国)によって製造されたヒートシーラー内でシーラー層フィルム上でシーラー層フィルムにより2つの細片をシールする。実施例で用いられたシール条件は、1秒の間シールエリア上に加えられた0.3MPaの圧力、シールジョーの温度200℃である。
【0044】
シール力は、ドイツ国のツイック(Zwick AG)によって製造された引張試験器内で幅15mmの細片上で180度の引張角および100mm/分の引張速度で測定する。
【0045】
(高温処理)
多層フィルムを細片に切断した。金属製で加熱された2つのシールジョーを有するコップ(Kopp)(ドイツ国)によって製造されたヒートシーラー内でシーラント層フィルム上にシーラント層フィルムをシールすることにより、10×10cmの正方形パウチをこれらの細片から調製した。実施例で用いられたシール条件は、1秒の間シールエリア上に加えられた0.3MPaの圧力、シールジョーの温度200℃であった。その後、3つの側で前もってシールされたパウチに油中に詰められた約20グラムの「バンブルビー(Bumble Bee)」(登録商標)固体白色ビンナガマグロを充填した。その後、パウチの第4の側を上述したのと同じ条件でシールした。
【0046】
その後、充填したパウチを0.13MPaおよび130℃で30分にわたり滅菌した。その後、サンプルごとに、多層フィルム構造の離層(D)、部分離層(PD)または離層なし(ND)が起きたかどうかサンプルを評価した。
【0047】
試験結果を表Iに示している。
【0048】
【表1】

【0049】
(サンプルの調製(サンプル5および6))
サンプル5を押出積層によって次の通り調製した。基材フィルム層をメインロールから巻き出し、44ダイン/cmの表面張力にコロナ処理し、0.8g/mウェットの被膜厚さで下塗りし、110℃および100m/分のライン速度で長さ4mのオーブン内で乾燥させた。無溶媒高分子フィルム層(Tie−3)のための材料を押出機A(直径64mm、L/D=30)内に導入した。
【0050】
押出機温度(℃)を以下の温度分布により等しい長さの5ゾーンのために設定した。
190、220、250、280、310
【0051】
アダプター、接続配管、フィードブロックおよびダイの温度を310℃に設定した。ダイギャップは0.7mmであり、ダイ幅は800mmであった。エアギャップを15cmに設定した。ニップ内の圧力は、ゴム(ショアA80)を約2cmにわたって変形させる40Kg/cmであった。チルロールの温度は18℃であった。アルミニウムフォイルを第2のロールから巻き出し、100m/分のライン速度でニップ内に導入した。
【0052】
サンプル6を次の通り調製した。基材フィルム層をメインロールから巻き出し、100m/分のライン速度で44ダイン/cmの表面張力にコロナ処理した。無溶媒高分子フィルム層(Tie−3)のための材料を押出機B(直径89mm、L/D=30)内に導入した。押出機温度(℃)を以下の温度分布により等しい長さの5ゾーンのために設定した。
180、200、230、260、280
【0053】
アダプター、接続配管、フィードブロックおよびダイの温度を280℃に設定した。ダイギャップは0.7mmであり、ダイ幅は800mmであった。エアギャップを15cmに設定した。ニップ内の圧力は、ゴム(ショアA80)を約2cmにわたって変形させる40Kg/cmであった。チルロールの温度は18℃であった。アルミニウムフォイルを第2のロールから巻き出し、100m/分のライン速度でニップ内に導入した。
【0054】
(試験)
(粘着強度)
粘着強度は、ドイツ国のツイック(Zwick AG)によって製造された引張試験器内で幅15mmの細片上で180度の引張角および100mm/分の引張速度で測定した。
【0055】
表IIで報告された粘着力は、所定の温度で1分の間オーブン内で前もって加熱されたサンプル上で測定した。
【0056】
【表2】

【0057】
表の結果は、本発明による多層フィルム構造が粘着力(表IおよびII)およびヒートシール強度(表I)において優れていることを明確に示している。更に、本発明による多層フィルム構造は高温処理を受けた後でさえ所望の特性を変えずに維持する(表I)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)軸配向ポリアミドフィルムを含む少なくとも1つの基材フィルム層および
(b)グラフトポリプロピレンを含み、a)の基材フィルム層上に押出被覆された少なくとも1つの無溶媒高分子フィルム層
を上記の順序で含むことを特徴とする軟質包装のための多層フィルム。
【請求項2】
a)の少なくとも1つの基材フィルム層とb)の少なくとも1つの無溶媒高分子フィルム層との間に水性押出プライマ層(primer layer)を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記水性押出プライマ層がポリ(エチレンイミン)をベースとすることを特徴とする請求項2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
a)の基材フィルム層の反対側でb)の少なくとも1つの無溶媒高分子フィルム層に隣接する少なくとも1つの機能層を更に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの機能層がポリプロピレンを含むシーラント層(sealant layer)であり、前記シーラント層がa)の基材フィルム層上にb)の少なくとも1つの無溶媒高分子フィルム層と合わせて共押出被覆されていることを特徴とする請求項4に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの機能層が本質的にアルミニウムから製造されたフォイル(foil)であり、前記機能層がa)の基材フィルム層上にb)の少なくとも1つの無溶媒高分子フィルム層と合わせて押出積層されていることを特徴とする請求項4に記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記軸配向ポリアミドが一軸配向されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項8】
前記軸配向ポリアミドが二軸配向されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの基材フィルム層が約10〜約40μmの範囲の厚さを有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの無溶媒高分子フィルム層が230℃および2.16kgでASTM D1238に準拠して測定した場合、約3〜約50dg/分の範囲のメルトフローインデックスを有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの無溶媒高分子フィルム層が無水マレイン酸でグラフトされ、前記無水マレイン酸が前記少なくとも1つの無溶媒高分子フィルム層の全重量の約0.1〜約1.5%の範囲の量で存在することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの無溶媒高分子フィルム層が約3〜約50μmの範囲の厚さを有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の多層フィルムを含む少なくとも1つの構成要素を有することを特徴とする軟質包装。
【請求項14】
前記少なくとも1つの構成要素が高温処理可能な蓋(retortable lid)であることを特徴とする請求項13に記載の軟質包装。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の多層フィルムを含む材料で完全に製造されている請求項13に記載の軟質包装。

【公表番号】特表2007−502230(P2007−502230A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533048(P2006−533048)
【出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/015068
【国際公開番号】WO2004/101275
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】