説明

多層フィルム

【課題】耐熱性、密着性、柔軟性、水蒸気バリア性、及び透明性に優れる多層フィルムを提供すること。
【解決手段】内層と、前記内層の表裏両面に配置した表面層と、を有する多層フィルムであって、前記表面層が、ポリ乳酸系樹脂組成物を含む層であり、前記ポリ乳酸系樹脂組成物が、結晶性ポリ乳酸70〜90質量%と、グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル10〜30質量%と、からなる組成物100質量部、柔軟樹脂として、下記(a)及び(b)からなる群から選択される少なくとも1種の柔軟樹脂0.5〜10質量部、及び/又は下記(c)である柔軟樹脂10〜50質量部;(a)脂肪族ヒドロキシカルボン酸と脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸との共重合物、(b)酢酸ビニルの含有量が40〜50質量%であるエチレンと酢酸ビニルとの共重合物、(c)脂肪族ジオールと、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸と、の共重合物、を含有し、前記内層が、ポリプロピレン系樹脂を含む層であり、前記ポリプロピレン系樹脂が、プロピレン65〜90質量%と、α−オレフィン10〜35質量%と、からなるプロピレン−α−オレフィン共重合体を含有し、前記α−オレフィンが、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン及び1−ノネンからなる群から選択される少なくとも1種である、多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂組成物とポリプロピレン系樹脂の積層体を延伸して得られる多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品包装用のラップフィルムは、主として皿などの容器の上から、又は直接食品を包んで冷蔵庫や冷凍庫内で保存したり、電子レンジで再加熱する用途に用いられている。このため、ラップフィルムには透明性、耐熱性、耐冷性、ラップと容器の密着性、ラップ同士の密着性、柔らかくしっとりとした手触りや色あいなどの基本的な性能が求められるほか、食品の乾燥を防ぎ、食感や食味を保持するための水蒸気バリア性や、食品の視認性や見た目の清潔感を高めるための透明性が求められる。
【0003】
一方、近年の環境意識の高まりから、ポリ乳酸を代表とする脂肪族ポリエステル系の植物原料由来樹脂が樹脂材料としての注目を集めており、様々な用途開発が進められている。
ラップフィルムについても同様であり、特許文献1及び特許文献2には、ポリ乳酸系脂肪族ポリエステルを主体としたラップフィルムについての技術が開示されている。
水蒸気バリア性の改善方法としては、特許文献3には、ワックス化合物及び扁平粒子を配合する技術が開示されている。
【0004】
特許文献4には、ポリ乳酸フィルムの表面に低分子量のポリオレフィンをコーティングする技術が開示されている。
また、特許文献5には、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸の積層フィルムをインフレーション法によって製造する技術が開示されている。
さらに、特許文献6には、ポリ乳酸とポリプロピレン系樹脂を組み合わせた積層フィルムに関する技術が開示されている。
またさらに、特許文献7には、ポリ乳酸2軸延伸フィルムに対して2軸延伸ポリプロピレンフィルムを接着熱ラミネートする技術が開示され、特許文献8には、ポリ乳酸2軸延伸フィルムに対してポリプロピレンを押出しラミネートする技術が開示され、特許文献9には、ポリ乳酸の表面にオレフィン系樹脂を積層し、2軸延伸することによって熱収縮フィルムを製造する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−26623号公報
【特許文献2】特許第3861488号公報
【特許文献3】特開2007−16091号公報
【特許文献4】特開2003−276144号公報
【特許文献5】特許第3824846号公報
【特許文献6】特開2007−90858号公報
【特許文献7】特開2001−58372号公報
【特許文献8】特開2005−119125号公報
【特許文献9】特開2007−283531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜9に開示されたフィルムは、多層ラップフィルムとして十分な特性を有するものではなく、さらなる改良が望まれていた。
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、密着性、柔軟性、水蒸気バリア性、及び透明性に優れる多層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のポリ乳酸系樹脂組成物とポリプロピレン系樹脂からなる多層フィルムとすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1]
内層と、前記内層の表裏両面に配置した表面層と、を有する多層フィルムであって、
前記表面層が、ポリ乳酸系樹脂組成物を含む層であり、
前記ポリ乳酸系樹脂組成物が、
結晶性ポリ乳酸70〜90質量%と、グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル10〜30質量%と、からなる組成物100質量部、
柔軟樹脂として、下記(a)及び(b)からなる群から選択される少なくとも1種の柔軟樹脂0.5〜10質量部、及び/又は下記(c)である柔軟樹脂10〜50質量部;
(a)脂肪族ヒドロキシカルボン酸と脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸との共重合物、
(b)酢酸ビニルの含有量が40〜50質量%であるエチレンと酢酸ビニルとの共重合物、
(c)脂肪族ジオールと、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸と、の共重合物、
を含有し、
前記内層が、ポリプロピレン系樹脂を含む層であり、
前記ポリプロピレン系樹脂が、プロピレン65〜90質量%と、α−オレフィン10〜35質量%と、からなるプロピレン−α−オレフィン共重合体を含有し、
前記α−オレフィンが、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン及び1−ノネンからなる群から選択される少なくとも1種である、多層フィルム。
[2]
100℃における熱収縮率が35%以下である、前記[1]に記載の多層フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリ乳酸系樹脂組成物を含む層を表面層とすることにより、特に、耐熱性、密着性を発現し、プロピレン系樹脂を含む層を内層とすることにより、特に、水蒸気バリア性を発現して、耐熱性、密着性、柔軟性、水蒸気バリア性、及び透明性に優れる多層フィルムとすることが可能である。本発明の多層フィルムは、特に、多層ラップフィルムとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
本実施の形態の多層フィルムは、内層と、内層の表裏両面に配置した表面層と、を有する多層フィルムであり、内層としてポリプロピレン系樹脂を含む層を有し、表面層としてポリ乳酸系樹脂組成物を含む層を有する。
前記ポリ乳酸系樹脂組成物は、結晶性ポリ乳酸、グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル、並びに柔軟樹脂を含有する樹脂組成物である。
【0012】
(ポリ乳酸系樹脂組成物)
本実施の形態において用いられる結晶性ポリ乳酸は、L−乳酸単位若しくはD−乳酸単位を主成分とする重合体、又はこれらの共重合体である。結晶性ポリ乳酸としては、L−乳酸単位又はD−乳酸単位を主成分として含有し、乳酸以外のコモノマーとの共重合体であってもよいが、L−乳酸単位及び/又はD−乳酸単位からなる重合体であることが好ましい。結晶性ポリ乳酸が、耐熱性を発揮する観点から、結晶性ポリ乳酸を構成するL−乳酸単位又はD−乳酸単位の光学純度が90%ee以上である重合体であることが好ましい。結晶性ポリ乳酸は単独で用いることができ、複数組み合わせて用いることもできる。
結晶性ポリ乳酸としては、特に限定されるものではないが、具体的には、商品名「NatureWorks4042D」、「NatureWorks4032D」(米国NatureWorks社製、登録商標、以下同じ。)などが挙げられる。
【0013】
本実施の形態において、結晶性ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)は、8万〜40万の範囲であることが好ましく、より好ましくは10万〜30万であり、さらに好ましくは15万〜25万である。ポリ乳酸系重合体の重量平均分子量が8万以上であれば実用可能なレベルの機械強度を発現することができ、重量平均分子量が40万以下であれば、適度な溶融粘度によって成形することができる。
【0014】
本実施の形態において用いられるグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸のエステル又はポリグリセリンと脂肪酸のエステルであって、結晶性ポリ乳酸を柔軟化するとともに、フィルム同士、又は陶器やガラス容器への密着性を高める効果を持つ。
本実施の形態において用いられるグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、グリセリン又はポリグリセリンの水酸基のうち、少なくとも1つの水酸基と脂肪酸がエステル結合した化合物である。
前記脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸などの炭素数が2〜28の直鎖又は分岐の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸などが挙げられる。脂肪酸としては、炭素数6〜18の直鎖の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸が好ましい。1種類の脂肪酸のエステルであってもよく、2種類以上の脂肪酸の混合エステルであってもよい。
前記ポリグリセリンとしては、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリンなどのポリグリセリンが挙げられる。
【0015】
グリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、グリセリントリカプレート、グリセリントリカプリレート、ジグリセリンオレエート、ジグリセリンテトラアセテート、ポリグリセリンモノラウレート、及びポリグリセリンモノオレエートなどが挙げられる。
【0016】
グリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、脂肪酸とエステル化されていないグリセリン又はポリグリセリン由来の水酸基は、結晶性ポリ乳酸などのエステル結合へのエステル交換反応による、結晶性ポリ乳酸などの分解を防ぐために、アセチル化されていることが好ましい。
このようなアセチル化されている化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、グリセリンジアセトモノカプリレート、グリセリンジアセトモノカプレート、グリセリンジアセトモノミリステート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノパルミテート、及びグリセリンジアセトモノステアレートなどが挙げられる。
【0017】
グリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、具体的には、商品名「リケマールPL004」、「リケマールPL012」、「リケマールPL019」、「リケマールPL710」、「ポエムG−002」、「ポエムG−038」(理研ビタミン社製、登録商標、以下同じ。)などが挙げられる。
グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルは単独で用いることができ、複数組み合わせて用いることもできる。
【0018】
本実施の形態において、結晶性ポリ乳酸とグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルからなる組成物における前記グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、結晶性ポリ乳酸70〜90質量%に対し、10〜30質量%である。
グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量を、10質量%以上添加することで適度な可塑化効果を得ることができ、30質量%以下で添加することにより多層フィルムとして十分な強度を確保することができ、ブリードアウトなどの問題を生じにくくすることができる。
本実施の形態において、ポリ乳酸系樹脂組成物が、結晶性ポリ乳酸75〜85質量%、脂肪酸グリセリンエステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル15〜25質量%からなる組成物であることが好ましい。
【0019】
本実施の形態において、ポリ乳酸系樹脂組成物は、食品容器と多層フィルム間での密着性を高めるために、結晶性ポリ乳酸と、グリセリン又はポリグリセリンと脂肪酸のエステルと、からなる組成物100質量部に対し下記(a)及び(b)から選ばれる少なくとも1種の柔軟樹脂を0.5〜10質量部及び/又は(c)の柔軟樹脂を10〜50質量部添加することが必要である。
(a)脂肪族ヒドロキシカルボン酸と脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸との共重合物
(b)酢酸ビニルの含有量が40〜50質量%であるエチレンと酢酸ビニルとの共重合物
(c)脂肪族ジオールと、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸と、の共重合物
上記柔軟樹脂は単独で用いることができ、複数組み合わせて用いることもできる。
【0020】
本実施の形態において用いられる(a)脂肪族ヒドロキシカルボン酸と脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸との共重合物(以下、単に「共重合物(a)」と略称する場合がある。)における脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、特に限定されるものはないが、例えば、乳酸、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、及び6−ヒドロキシカプロン酸などの炭素数2〜20のω−ヒドロキシ飽和脂肪族カルボン酸などが挙げられる。脂肪族ヒドロキシカルボン酸は単独で用いることができ、複数組み合わせて用いることもできる。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、結晶性ポリ乳酸との相溶性を高めるために乳酸であることが好ましい。
共重合物(a)における脂肪族ジオールとしては、特に限定されるものではないが、たとえば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、及び1,5−ヘプタンジオールなどの炭素数2〜20の飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。脂肪族ジオールは単独で用いることができ、複数組み合わせて用いることもできる。
共重合物(a)における脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸などの炭素数3〜20の飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸は単独で用いることができ、複数組み合わせて用いることもできる。
【0021】
脂肪族ヒドロキシカルボン酸と脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを共重合する方法としては、ブロック共重合法を好適に用いることができる。ブロック共重合により得られる共重合物(a)としては、例えば、脂肪族ヒドロキシカルボン酸の繰り返し単位からなるブロックと、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸の繰り返し単位からなるブロックと、を有する共重合物(a)などを挙げることができる。
前記ブロック共重合により得られる共重合物(a)における共重合比としては、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸のポリエステルブロックの比率が20〜80質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましい。脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸のポリエステルブロックを20質量%以上含有することにより、多層フィルムの密着性を向上させる効果が得られ、80質量%以下であればポリ乳酸との相溶性を良好に保つことができる。共重合物(a)は単独で用いることができ、複数組み合わせて用いることもできる。
このような共重合物(a)としては、特に限定されるものではないが、具体的には、商品名「プラメートPD150」、「プラメートPD350」(大日本インキ社製、登録商標、以下同じ。)などが挙げられる。
【0022】
本実施の形態におけるポリ乳酸系樹脂組成物において、結晶性ポリ乳酸と、グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルと、からなる組成物100質量部に対する共重合物(a)の添加量としては0.5〜10質量部であり、2〜8質量部であることが好ましい。0.5質量部以上の添加により、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸の繰り返し単位からなる柔軟成分による多層フィルム表面の密着性補助効果を得ることができ、10質量部以下で添加することにより、好適な密着力を有する多層フィルムを得ることができる。
【0023】
本実施の形態において用いられる(b)酢酸ビニルの含有量が40〜50質量%であるエチレンと酢酸ビニルとの共重合物(以下、単に「共重合物(b)と略称する場合がある。)は、ポリ乳酸系樹脂組成物の柔軟性を高める役割を有するが、結晶性ポリ乳酸と良好に相溶させるためには酢酸ビニル単位が共重合物(b)中で40〜50質量%である。酢酸ビニル単位の含有量が40質量%以上であることによって、柔軟性の高い酢酸ビニル単位が多層フィルム表面に存在しやすくなり、表面における密着性が得られる。酢酸ビニル単位の含有量が50質量%以下であることによって、多層フィルムの良好な機械強度、耐熱性を維持することができる。酢酸ビニル単位が共重合物(b)中で40〜50質量%である共重合物(b)であれば、単独で用いることができ、複数組み合わせて用いることもできる。
このような共重合物(b)としては、特に限定されるものではないが、具体的には、商品名「エバフレックスEV45LX」、「エバフレックスEV40LX」(三井・デュポンポリケミカル社製、登録商標、以下同じ。)などが挙げられる。
【0024】
本実施の形態におけるポリ乳酸系樹脂組成物において、結晶性ポリ乳酸と、グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルと、からなる組成物100質量部に対する共重合物(b)の添加量としては0.5〜10質量部であり、1〜7質量部であることが好ましく、2〜5質量部であることがより好ましい。0.5質量部以上の添加により、多層フィルム表面における密着性補助効果を得ることでき、10質量部以下で添加することにより、好適な密着力を有する多層フィルムを得ることができる。
【0025】
本実施の形態において用いられる(c)脂肪族ジオールと、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸と、の共重合物(以下、単に「共重合物(c)」と略称する場合がある。)は、ポリ乳酸系樹脂組成物の柔軟性を制御するために好適に用いることができる。
【0026】
共重合物(c)における脂肪族ジオールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ヘプタンジオール、及び1、6−ヘキサンジオールなどの炭素数2〜20の飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。脂肪族ジオールは単独で用いてもよく、複数の脂肪族ジオールを組み合わせて用いてもよい。
共重合物(c)における脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸などの炭素数3〜20の飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸は単独で用いることができ、複数組み合わせて用いることもできる。
共重合物(c)における芳香族ジカルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸は単独で用いることができ、複数組み合わせて用いることもできる。
共重合物(c)は単独で用いることができ、複数組み合わせて用いることもできる。
このような共重合物(c)としては、特に限定されるものではないが、具体的には、商品名「エコフレックス」(BASF社製)などが挙げられる。
【0027】
本実施の形態におけるポリ乳酸系樹脂組成物において、結晶性ポリ乳酸と、グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルと、からなる組成物100質量部に対する共重合物(c)の添加量としては10〜50質量部であり、20〜40質量部であることが好ましい。10質量部以上の添加により、多層フィルム表面の密着性補助効果を得ることができ、50質量部以下で添加することにより、好適な密着力を有する多層フィルムを得ることができる。
【0028】
本実施の形態において、柔軟樹脂が多層フィルムの密着性を補助する機構は、前記各共重合物中の脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールの繰り返し単位、あるいは酢酸ビニルとエチレンの繰り返し単位が多層フィルム表面において局所的に室温よりもガラス転移温度の低いドメインを形成することで密着力を高めるものと考えられる。
【0029】
本実施の形態において、多層フィルム表面の触感や色調を調節するため、本実施の形態の目的とする物性を損なわない範囲において、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ化植物油を添加することができる。エポキシ化植物油としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化桐油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化サフラワー油などが挙げられる。これらのエポキシ化植物油は単独で用いてもよく、目的に応じて複数組み合わせて用いてもよい。
本実施の形態におけるポリ乳酸系樹脂組成物において、結晶性ポリ乳酸と、グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルと、からなる組成物100質量部に対し、前記エポキシ化植物油の添加量としては、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.5〜4質量部であることがより好ましい。0.1〜5質量部の範囲で添加することにより、触感、色調の調節が可能であり、好適な触感と色調を有する多層フィルムを得ることができる。
【0030】
本実施の形態において、柔軟性、溶融粘度の調整のために、ポリ乳酸系樹脂組成物に、脂肪族モノアルコール、脂肪族ジオール及びその重縮合物から選ばれる少なくとも1種のアルコール成分と、脂肪族カルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸とのエステル並びにそのエポキシ化物などの可塑剤を添加することができる。より具体的には、アセチル化クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、ステアリン酸イソブチル、アジピン酸ジイソノニル、ポリ(プロピレングリコール・アジピン酸,ラウリル酸)エステル、エポキシ化ステアリン酸(2−エチルヘキシル)などがあげられる。
【0031】
本実施の形態において、ポリ乳酸系樹脂組成物には、本実施の形態の目的とする物性を損なわない範囲において、公知の熱安定剤、光安定剤、及び滑剤などを添加することができる。
【0032】
(ポリプロピレン系樹脂)
本実施の形態において用いられる内層としてのポリプロピレン系樹脂は、プロピレンを65〜90質量%、プロピレン以外のα−オレフィンをコモノマーとして10〜35質量%含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体を含む。
α−オレフィンをコモノマーとして10〜35質量%含有することにより、表面層を延伸するのに適正な温度領域で表面層のポリ乳酸系樹脂組成物と同時に延伸加工して多層フィルムを製造することが可能となり、また、表面に粘着性があるラップフィルムを製造する場合であっても層間の剥がれやシワに左右されることない多層ラップフィルムを製造することができる。また、共押出し、共延伸プロセスにより、生産性高く連続的に製造することが可能となる。
本実施の形態におけるα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネンからなる群から選択される少なくとも1種である。コモノマーとして使用されるα−オレフィンは、1種類であってもよく、複数種であってもよいが、エチレン、1−ブテンが好ましく用いられる。
【0033】
ポリプロピレン系樹脂中のプロピレンの繰り返し単位は結晶性を確保するためにアイソタクチック、又はシンジオタクチック構造を有することが好ましい。コモノマーの含有量を10質量%以上とすることにより、ポリプロピレン系樹脂の結晶性が一部損なわれ、融点が低くなるためにポリ乳酸系樹脂組成物の延伸温度域での延伸が可能となる。また、コモノマーの含有量を35質量%以下とすることにより、ポリプロピレン系樹脂の適度な結晶化度によって多層フィルムの強度を保持することができる。
【0034】
プロピレン−α−オレフィン共重合体の共重合法としては、ブロック共重合、ランダム共重合、グラフト重合、あるいはこれらの組合せなど任意の方法を用いることができる。
プロピレン−α−オレフィン共重合体の融点は、50〜100℃であることが好ましく、60〜90℃であることがより好ましい。融点が50℃以上であれば輸送や保管など実用温度における物性の変化がなく、融点が100℃以下であればポリ乳酸系樹脂組成物との同時延伸加工性に優れるため好ましい。
【0035】
本実施の形態におけるプロピレン−α−オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)は5万〜40万の範囲であることが好ましい。重量平均分子量が5万以上であれば実用可能なレベルの機械強度を発現することができ、重量平均分子量が40万以下であれば、適度な溶融粘度によって成形することができる。プロピレン−α−オレフィン共重合体は単独で用いることができ、複数組み合わせて用いることもできる。
ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、具体的には、商品名「Versify2300」、「Versify2400」、「Versify3300」、「Versify3401.01」(米国DowChemicals社製、登録商標、以下同じ。)や、商品名「タフマーXM7070」、「タフマーXM7080」(三井化学社製、登録商標、以下同じ。)などが挙げられる。
本実施の形態において、内層をポリプロピレン系樹脂を用いて製造する際に、本実施の形態の目的とする物性を損なわない範囲において、公知の熱安定剤、光安定剤、滑剤、及び可塑剤などを添加して製造することができる。例えば、溶融時の粘度や延伸加工特性を制御する目的で流動パラフィン、合成パラフィンなどの脂肪族炭化水素類化合物を用いることができる。
【0036】
(多層フィルム)
本実施の形態の多層フィルムは、内層と、前記内層の表裏両面に配置した表面層と、を有する多層フィルムであり、表面層が、前記ポリ乳酸系樹脂組成物を含む層であり、内層が、前記ポリプロピレン系樹脂を含む層である。
【0037】
本実施の形態において、表面層と内層の配置については、表面層が内層の表裏に相当する面に配置される必要がある。すなわち、表面層/内層/表面層という積層配列による多層フィルムとする必要がある。
内層の表裏面に表面層を組み合わせた多層フィルムの厚みとしては、5〜15μm以下であることが好ましく、7〜13μmであることがより好ましい。多層フィルムの厚みが5μm以上であれば、巻きほどいたフィルムの操作が容易であり、多層フィルム同士が絡まりにくい。15μm以下であれば多層フィルムの手触りが固くなりすぎず、食品や食品容器の表面に密着させる作業を容易に行うことができる。
【0038】
各層の厚みは、多層フィルムの厚みの好ましい範囲において調節が可能である。
表面層の厚みとしては表裏各層につき1〜6μmであることが好ましく、2〜5μmであることがより好ましい。
表面層の厚みが1μm以上であれば十分な耐熱性が得られ、6μm以下であれば多層フィルムとして使用する場合に適度な剛性によって食品又は容器を包み込む操作がより容易になり、取扱性に優れる。
内層の厚みは2〜13μm以下であることが好ましく、2.5〜11μm以下であることがより好ましい。内層の厚みが2μm以上であれば良好な水蒸気バリア性を確保することができ、13μm以下であれば多層フィルムのカット性を損なうことがない。
【0039】
本実施の形態において、本実施の形態の目的を損なわない範囲において、表面層と、内層の接着補助層として中間層を設けてもよい。中間層を備えた多層フィルムとしては、表面層/中間層/内層/中間層/内層のような層構成を例示することができる。
【0040】
本実施の形態における中間層としては、結晶性ポリ乳酸などを含む乳酸系樹脂組成物かポリプロピレン系樹脂の双方に親和性のある材料を用いることが好ましく、特に限定されるものではないが、例えば、α−オレフィンと極性ビニル化合物の共重合体などが挙げられる。
前記α−オレフィンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどが挙げられる。
前記極性ビニル化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、及びメチルメタクリレートなどのアクリル系化合物や、グリシジルメタクリレート及びグリシジルアクリレートなどのエポキシ系化合物、マレイン酸、無水マレイン酸、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、及びステアリン酸ビニルなどのカルボン酸ビニル化合物などが挙げられる。これらの極性ビニル化合物はコモノマーとして単独で用いてもよく、複数組み合わせて共重合してもよい。
極性ビニル化合物の含有量としては、前記α−オレフィンと極性ビニル化合物の共重合体中で30〜60質量%であることが好ましく、40〜50質量%であることがより好ましい。また、前記α−オレフィンと極性ビニル化合物の共重合体の、JIS−K7210に基づき、190℃、2.16kg荷重によって測定されたメルトフローレートは、1〜300であることが好ましく、2〜200であることがより好ましい。
このようなα−オレフィンと極性ビニル化合物の共重合体の例としては、特に限定されるものではないが、具体的には、商品名「エバフレックスEV45LX」、「エバフレックスEV40LX」、「エバフレックスEV45X」、「エバフレックスEV40W」(三井・デュポンポリケミカル社製)などが挙げられる。
【0041】
中間層としては、上記のようなα−オレフィンと極性ビニル化合物の共重合体に加えて、例えば表面層と内層に用いられるそれぞれの組成物の混合物をリサイクル樹脂として用いることができる。
【0042】
本実施の形態における多層フィルムの引張弾性率は、柔軟性の指標であり、数値の低いものほど多層フィルムは柔らかくなる。引張弾性率は、400〜1500MPaであることが好ましく、500〜1000MPaであることがより好ましい。400MPa以上であることにより、適度な柔軟性を有する多層フィルムとすることができ、取扱時にフィルム同士が絡みやすくなり、1500MPa以下とすることにより、柔軟性、容器や食品を包む密着性に優れる多層フィルムとすることができる。
【0043】
本実施の形態における多層フィルムの100℃における熱収縮率は、包装した食品を加熱した時の寸法安定性の指標であり、包装した食品が圧迫されないために、35%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。
【0044】
本実施の形態における多層フィルムの密着仕事量は、密着性の指標でありフィルム同士やフィルムが陶器やガラス器などにくっつく力を測定するものである。密着仕事量の値が高いほどくっつく力が高いことを示が、多層フィルムの適度な密着力及び使い易さの点で、0.5〜2.5mJであることが好ましく、0.7〜2.2mJであることがより好ましい。
【0045】
本実施の形態における多層フィルムの透湿度は、水蒸気バリア性の指標であり、包装した食品の水分を保持するため、300g/m2/day以下であることが好ましく、150g/m2/day以下であることがより好ましい。
【0046】
本実施の形態における多層フィルムの140℃耐熱性は、耐熱性の指標である。多層フィルムは、食品を包み、電子レンジで加熱する場合、食品から発生する水蒸気によって多層フィルムが加熱されるため、電子レンジでの加熱中、または過熱後に取り出す際、あるいは多層フィルムを引き剥がす際に、切断しないことが求められる。
【0047】
本実施の形態における多層フィルムのヘイズ値は、透明性の指標であり、食品包装用ラップフィルムとして使用される際の好ましい範囲としては、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
【0048】
本実施の形態における多層フィルムの引出力は、幅30cmのロール状に巻取られたフィルムを巻きほどく際に必要となる荷重である。多層フィルムの使い勝手を示すひとつの指標であり、数値が低い程軽い力でフィルムを引き出すことができることを意味する。引出力は5〜100cNであることが好ましく、10〜80cNであることがより好ましく、15〜60cNであることがさらに好ましい。引出力が5cN以上であれば、フィルムが巻き解けすぎてしまうことがなく、100cN以下であればフィルムを引き出す際に過剰な力がかからず使い勝手がよい。
【0049】
(多層フィルムの製造方法)
本実施の形態の多層フィルムは、溶融混練によってそれぞれ得られたポリ乳酸系樹脂組成物及びポリオレフィン系樹脂(以下、単に両者を総称して「樹脂組成物」と略称する場合がある。)を共押出し法によって積層する工程を経た後、一旦冷却固化させた後に再加熱し、少なくとも2方向に延伸する工程を経ることによって製造することができる。また、得られるフィルムの熱収縮率を調節するために熱固定をすることが好ましい。
【0050】
本実施の形態において、前記樹脂組成物を得るための溶融混練法としては同方向回転2軸押出機、異方向回転2軸押出機、単軸押出機を使用することができるが、混練能力の点から同方向回転2軸押出機を使用することが好ましい。
【0051】
本実施の形態において、共押出しとは、溶融混練して得られた前記樹脂組成物をフィードブロック法若しくはマルチマニホールド法、又はこれらを組み合わせた方法により、溶融状態でフィルム状に積層させ、冷却固化させる積層方法である。
本実施の形態において、良好な外観のフィルムを得るためには、積層時に表面層として用いられるポリ乳酸系樹脂組成物の溶融粘度が内層として用いられるポリオレフィン系樹脂の溶融粘度よりも低くなっていることが好ましい。層の厚み構成によって適正な粘度領域が異なるが、本実施の形態の範囲内において、ポリ乳酸系樹脂組成物のグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量を調整する、あるいは押出機やフィードブロック、ダイの温度を変更することで溶融粘度を調整することができる。
【0052】
本実施の形態において、フラット状に積層フィルムを押出す場合、冷却ロールによって固化させるが、冷却ロールの温度は表面層のポリ乳酸系樹脂組成物のガラス転移温度をTg(I)としたとき、Tg(I)−10℃〜Tg(I)+10℃とすることが好ましい。冷却ロールの温度をTg(I)−10℃以上とすることで押出したフィルムを冷却ロールに密着させ、良好な表面状態を得ることができ、Tg(I)+10℃以下とすることで、押出したフィルムを冷却ロールから良好に引き剥がすことができる。
本実施の形態において、チューブ状に積層フィルムを押出す場合、水冷または空冷によって冷却する方法をとることができるが、冷却する際の温度をTg(I)−10℃〜Tg(I)+10℃とすることが好ましく、Tg(I)−5℃〜Tg(I)+5℃とすることがより好ましい。冷却水の温度をTg(I)−10℃以上とすることでフィルムのガラス化による、シワや破れの発生を抑制することができ、Tg(I)+10℃以下とすることでフィルムを固着させることなくチューブ状に成形することができる。
このような積層および押出し方法を採用することにより、ラミネート法、コーティング法に比べて各層の界面における接着性が増し、良好な外観のフィルムが得られる。
【0053】
本実施の形態において、延伸とは共押出しによって得られた積層フィルムを構成する樹脂組成物中の化合物のガラス転移温度以上の温度に再加熱し引き伸ばすことによって分子を配向させる工程である。フラット状フィルムであればロールや拘束具を用いて引き伸ばすフラット延伸法を採用することができ、チューブ状フィルムであれば冷却固化されたチューブをロールで挟んだ後、空気による圧力によって膨らませることでフィルムを引き伸ばすチューブラー延伸法を採用することができる。
【0054】
延伸時における加熱方法としてはロール加熱、熱風加熱、赤外線加熱などを好ましく利用することができるが、フィルムとロールが加熱状態で直接接触しない熱風加熱、又は赤外線加熱がより好ましく用いられる。延伸はフィルムの流れ方向(MD方向)及びそれと直交する方向(TD方向)に延伸することが好ましい。延伸倍率としては、MD、TD方向にそれぞれ2倍以上5倍以下の倍率、すなわち面積倍率で4倍以上25倍以下の倍率で延伸することが好ましく、2.5〜4.5倍、すなわち面積倍率で6.25〜20.25倍以下であることがより好ましい。各方向への延伸倍率を2倍以上とすることで配向結晶化による耐熱性が得られ、5倍以下とすることで過度な結晶化による破断などが起こり難い。延伸温度は40℃〜90℃であることが好ましく、45℃〜80℃であることがより好ましい。40℃以上であれば表面層、内層とも延伸が可能であり、かつ表面層のポリ乳酸系樹脂組成物中の結晶性ポリ乳酸の配向結晶化が起こりやすく、90℃以下であれば予熱又は延伸時にフィルムのたるみや破れが発生しにくく、良好に延伸することが可能である。また、ラップフィルムとする場合には、収納箱に付属する鋸刃でのカット性など、ラップフィルムとしての使い勝手を向上させるため、MD方向よりもTD方向に裂けやすい分子配向状態とすることが好ましい。より具体的には、MD方向の引裂き強度をXm、TD方向の引裂き強度をXtとしたとき、Xm>Xtであることが好ましい。分子配向の調整方法としては、フラット状フィルム延伸の場合、ロールの回転速度やテンター内におけるフィルム拘束具の幅によって調整することができ、チューブラー延伸法では圧力空気によるブローアップ比や、延伸工程の前後におけるフィルムの引取り速度を変更することで調整することができる。
【0055】
本実施の形態において、チューブラー延伸法を用いて延伸する場合、積層フィルムを冷却固化させる工程と、圧力空気によって延伸する工程を分離するために、冷却固化後にピンチロールで挟む必要がある。このとき、フィルムのシワ、破れなどの不具合を防止するためには、冷却水の温度をポリ乳酸系樹脂組成物のガラス転移温度をTg(I)としたときに、Tg(I)−10℃〜Tg(I)+10℃とすることが好ましく、Tg(I)−5℃〜Tg(I)+5℃とすることがより好ましい。冷却水の温度をTg(I)−10℃以上とすることでフィルムのガラス化による、シワや破れの発生を抑制することができ、Tg(I)+10℃以下とすることでフィルムを固着させることなくチューブ状に成形することができる。
冷却固化後に再加熱して圧力空気を吹き込み、延伸を行う際、表面に粘着性のあるポリ乳酸系樹脂組成物からなる表面層を有するという特徴があるため、ロールで挟んだフィルム同士が固着してしまい空気がフィルム間に入り込めず、安定した延伸ができなくなる場合がある。これを防ぐためには、冷却固化したフィルムをロールで挟む際に、固着防止剤をロールで挟まれるフィルムの内側に封入及び滞留させることによってフィルム上に塗布することが有効である。より具体的には、図1に示されるように円筒形のダイから鉛直下向きにフィルムを押出し、水中にフィルムを導き冷却固化させ、ダイの中心部に設けられた空洞を通じて上方より固着防止剤を導入することができる。
【0056】
本実施の形態における固着防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭化水素類、油脂類、多価アルコール類、脂肪族アルコール類、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸とのエステル及びそのエポキシ化物などの化合物を好ましく用いることができる。
固着防止剤がダイからの輻射熱や押出し直後の溶融フィルムからの伝熱などによって沸騰することのないよう、固着防止剤の沸点は120℃以上であることが好ましく150℃以上であることがより好ましい。また、熱処理によってフィルムの表面から除去するために沸点は400℃以下であることが好ましい。また、ポリ乳酸系樹脂組成物の表面に液体状態において均一に塗布するため、固着防止剤の融点は25℃以下であることが好ましい。
【0057】
このような固着防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、グリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びジプロピレングリコールなどの多価アルコール類、並びに脂肪酸とのエステル、流動パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、及びスクワランなどの炭化水素類や、大豆油、亜麻仁油、桐油、ヒマシ油、アボガド油、及びオリーブ油などの油脂類、並びにそのエポキシ化物、アセチル化クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、ステアリン酸イソブチル、アジピン酸ジイソノニル、ポリ(プロピレングリコール・アジピン酸,ラウリル酸)エステル、及びエポキシ化ステアリン酸(2−エチルヘキシル)などの脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸とのエステル、並びにそのエポキシ化物などが挙げられる。これらの固着防止剤は単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
【0058】
本実施の形態において、固着防止剤は加工助剤として用いられるため、フィルム表面への塗布量はフィルムが固着せず、かつ表面の密着性を阻害しない程度の量とすることが好ましい。フィルム表面への塗布量を制御するためには、水溶性化合物であれば、水溶液として濃度を希釈したものを用いる方法、非水溶性であれば、水をチューブ内に封入した後に固着防止剤をその上部に油膜又は油層として浮遊させる方法、あるいはエマルジョン化して用いる方法を好ましく用いることができる。このような方法で塗布量を制御することで、固着防止剤の塗布量を制御し、フィルム内部への染み込み、及び/又は熱処理による揮発などによって、固着防止剤をフィルムの最表面から取り除くことができる。
固形防止剤の塗布量としては、多層フィルムの全質量に対して100〜5000ppmとなるように塗布することが好ましく、300〜3000ppmとすることがより好ましく、500〜1500ppmとすることがさらに好ましい。100ppm以上の割合で塗布することでフィルムの固着が防止され、5000ppm以下とすることで固着防止剤のフィルム内部への移行及び熱風処理による揮発などにより表面から取り除くことが可能であり、密着性を阻害することがない。
【0059】
本実施の形態において、熱固定とは加熱ロールや熱風、赤外線などを用いてフィルムを所定の温度以上に加熱し、延伸によって生じた分子鎖の過度な緊張を取り除く工程である。加熱する方法は特に限定はされないが、表面層を構成するポリ乳酸系樹脂組成物のガラス転移温度を超え、融点未満であることが好ましい。より具体的には、70〜120℃であることが好ましく、80℃〜110℃とすることがより好ましい。70℃以上で加熱することによって分子鎖の過度な緊張を取り除くことができ、120℃以下とすることで熱固定中のフィルムの溶断を防ぐことができる。上記加熱条件による熱固定の時間としては、1〜30秒であることが好ましく、2〜20秒であることがより好ましい。このような工程を経ることによって得られるフィルムの熱収縮を20%未満に抑えることができる。
熱固定時は、フィルムをロール、又は拘束具、又は圧力空気などによって一定幅に拘束した状態で行われるが、拘束を緩めながら熱固定することが好ましい。例えば、TD方向に4倍に延伸した後、熱固定しながら倍率を3.8倍まで緩めることで効率的に熱固定を行うことができる。延伸倍率の緩和率としては、最大の延伸倍率から1〜10%であることが好ましい。1%以上緩和することで過度な緊張を取り除きやすくなり、10%以下とすることでフィルムのたるみを抑え、良好に製造することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態を具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、本実施の形態に用いられる評価方法及び測定方法は以下のとおりである。
【0061】
(1)引張弾性率
引張弾性率は、JIS−K7127、JIS−K7161に準拠した方法で測定した。フィルム片の寸法はMD、TD方向に沿うように、それぞれ幅10mm、長さ100mmに切り出して試験片とし、5mm/分の引張速度にて測定を行い、5回の測定の平均値を測定値とした。測定には、商品名「AUTOGRAPH AG−IS」(島津製作所社製)を用いた。
【0062】
(2)熱収縮率
熱収縮率は、フィルムのMD方向、TD方向に沿うように縦横100mmの正方形に切り出し、100℃のオーブン中で1分間保持した後の各辺の長さを測定して算定して、5回の測定の平均値を測定値とした。
【0063】
(3)密着仕事量
密着仕事量は以下の方法により測定した。まず、底面全面にろ紙を貼り付けた底面積が25cm2の円筒状測定治具を2つ準備する。底面にフィルムを皺が入らないように被せ、緊張状態で固定した。次に、フィルム面同士が当接するように円筒状測定治具を上下に合せ、上側の治具に500gの重りを載せて1分間、フィルム当接面に荷重をかけた。その後、静かに重りを除去しフィルムを当接面に垂直方向に引張試験機で5mm/分の引張速度で引き剥がす際に必要となるエネルギーを密着仕事量とした。測定は23℃50%の恒温恒湿下で行い、5回の測定の平均値を測定値とした。
【0064】
(4)透湿度
透湿度測定は、恒温恒湿状態(40℃ 90%Rh)における一定時間ごとの質量増加を測定し一定時間あたりにフィルムを透過した水蒸気量であり、JIS−K7129に準じて測定した。測定には、商品名「L80−5000型水蒸気透過度計」(Lyssy社製)を用い、5回の測定の平均値を測定値とした。
【0065】
(5)140℃耐熱性
耐熱性は、東京都消費生活条例第11条に基づき以下の方法で測定した。すなわち、フィルムのMD方向およびTD方向に沿う形で切り出された縦140mm、横30mmのサンプルの両端を縦25mm、横30mmの紙片で保護した。その一方を固定し、一方に10gの荷重をかけた状態で140℃に加熱したオーブン内に吊下げた。各方向について5片のサンプルを準備し、加熱開始から1時間後にフィルムが荷重によっていずれのサンプルも切断しないものを合格として○、1片でも切断してしまうものを×とした。
【0066】
(6)ヘイズ値
透明性は、JIS−K7136に基づいて測定されるヘイズ値によって表した。測定には、商品名「300A」(日本電色工業社製)を用い、5回の測定の平均値を測定値とした。
【0067】
(7)引出力
引出力は、以下の方法により測定した。まずは、幅300mmに調製したフィルムを、外径36mm、内径34mmの紙管に巻き取り、外径33mm/内径27mmのアクリル製円筒と直径10mmのスチール棒とをベアリングを介して連結させた回転可能な固定具にはめ込み、スチール棒を引張試験機に固定し、アクリル円筒部および紙管巻きフィルムは自由に回転できる状態にした。フィルムの端を引張試験機のロードセルに直結する幅330cmのプレートに固定し、1000mm/分の速度でフィルムを引出した際に発生する荷重の平均値を測定した。測定は23℃50%Rhの恒温恒湿下で行われ、5回の測定の平均値を測定値とした。
【0068】
実施例及び比較例に用いた各成分は以下のとおりである。
(ポリ乳酸系樹脂組成物)
PLA:結晶性ポリ乳酸 光学純度92%ee 商品名「4042D」(NatureWorks社製)
p−1:グリセリンジアセト(カプリル酸,カプリン酸)エステル 商品名「リケマールPL019」(理研ビタミン社製)
p−2:ジグリセリンテトラアセテート 商品名「リケマールPL710」(理研ビタミン社製)
a:脂肪族ヒドロキシカルボン酸と脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸との共重合物 商品名「プラメートPD150」(大日本インキ社製)
b:エチレン酢酸ビニル共重合物(酢酸ビニル含有量40〜50質量%) 商品名「エバフレックスEV45LX」(三井・デュポンポリケミカル社製)
c:ポリブチレンアジペートテレフタレート 商品名「エコフレックス」(BASF社製)
b’:エチレン酢酸ビニル共重合物(酢酸ビニル含有量25質量%) 商品名「エバフレックスEV360」
エポキシ化植物油:エポキシ化大豆油 商品名「ニューサイザー510R」(日本油脂社製、登録商標)
(ポリプロピレン系樹脂)
II−1:プロピレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィン含有量10〜35質量% 商品名「タフマーXM7070」(三井化学社製)
II−2:プロピレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィン含有量10〜35質量%) 商品名「Versify3401.01」(ダウケミカル社製)
II−3:プロピレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィン含有量10〜35質量%) 商品名「Versify3300」(ダウケミカル社製)
II’−1:プロピレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィン含有量10質量%未満) 商品名「Versify3000」(ダウケミカル社製)
II’−2:ポリプロピレン(α−オレフィン含有量10質量%未満) 商品名「ノバテックMA3H」(日本ポリプロ社製、登録商標)
可塑剤:流動パラフィン 商品名「スモイルp70s」(登録商標、以下同じ。)
【0069】
<実施例1>
表1に示される表面層及び内層の組成物をそれぞれ同方向2軸押出機によって200℃で溶融混練し、ポリマーパイプを通じてフィードブロックに導き積層し、Tダイより表面層/内層/表面層の構成にてフィルム状に押出した。押出された積層体を25℃のキャストロールにて冷却固化した後、得られたフィルムを加熱ロールによって50℃に再加熱し、フィルムの引取り方向(MD方向)に3倍に延伸した。次いでMD方向に延伸されたフィルムを再度冷却した後、テンター炉内にフィルムを導き、65℃に加熱した後MD方向と直行するTD方向に4.5倍に延伸した。その後、延伸倍率を4.3倍まで緩和しながらフィルムを120℃で3秒間熱固定して巻取り、多層ラップフィルムを得た。
得られた多層ラップフィルムについて、上記に示す方法で評価を行った(表1)。
【0070】
<実施例2〜7>
表1に示される表面層及び内層の組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして多層ラップフィルムの製造及び評価を行った(表1)。
【0071】
<実施例8>
表1に示される表面層及び内層の組成物をそれぞれ同方向2軸押出機によって200℃で溶融混練し、ポリマーパイプを通じてフィードブロックに導き積層し、中心に空洞のある円筒状のダイ2より表面層/内層/内層の構成にて円筒状の積層フィルム3を鉛直下向き方向に押出した。得られた積層フィルム3を25℃の冷却水7中に導き急冷固化し、折りたたみ幅130mmにて2本のピンチロール6で挟んだ。ここで、積層フィルム3同士の固着を防ぐため、図1に示されるように、円筒状のダイの中央部に設けられた空洞1部分からピンチロール6で挟まれた円筒状フィルム内に蒸留水5を300cc導入し、さらに固着防止剤4として、流動パラフィン(松村石油社製 商品名「スモイルp70」)を50cc導入した。表面に固着防止剤4を塗布した折りたたみフィルム8を、引取り速度を調整できる差動ロール9に導き、温水によって60℃に加熱する工程を経た後、エアーを注入してチューブを延伸した。加熱後の引取り速度の調整により、フィルムの流れ方向、すなわちMD方向に3倍に延伸し、エアーの圧力によりチューブの直径、すなわちTD方向の延伸倍率が4倍になるよう調整し、折りたたみ幅520mmの延伸フィルムを得た。次いで円筒状の延伸フィルムの両端をスリットすることで2枚の延伸フィルムとし、それぞれの端部を拘束具によって拘束して加熱炉に導き、100℃の熱風を吹き付けることによって熱固定を行い、多層ラップフィルムを得た。熱固定時の緩和は10%の緩和率となるように調整した。得られた多層ラップフィルムについて上記に示す方法で評価を行った(表1)。
【0072】
<実施例9>
表1に示される表層および内層の組成物を用い、熱固定を行わないこと以外は実施例1と同様にして多層ラップフィルムの製造及び評価を行った(表1)。
【0073】
<比較例1、2>
表1に示される表面層及び内層の組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして多層ラップフィルムの製造及び評価を行った(表1)。
【0074】
<比較例3>
内層を積層しないこと以外は、実施例1と同様にして多層ラップフィルムの製造及び評価を行った(表1)。
【0075】
<比較例4、5>
表1に示される表面層及び内層の組成物において、実施例1と同様にして多層ラップフィルムの製造を試みたが、内層のポリプロピレン系樹脂のコポリマー含有量が10質量%未満であるため、表面層の延伸温度域である40℃〜90℃の間で安定に製造することができなかった(表1)。
【0076】
【表1】

【0077】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜9の多層ラップフィルムは、耐熱性、密着性、柔軟性、水蒸気バリア性、及び透明性に優れる多層ラップフィルムであり、各特性をバランスよく備えている。
また、表面層における共重合物(c)を50質量部を超えて含有する比較例1と対比すると、耐熱性、密着性、透明性の点で、表面層における共重合物(c)を10〜50質量部の範囲内で含有する実施例6及び7の多層ラップフィルムは優れていた。
さらに、表面層における共重合物(b)の酢酸ビニルの含有量が40質量%未満である比較例2と対比すると、密着性の点で、酢酸ビニルの含有量が40〜50質量%の範囲内である実施例4及び5の多層ラップフィルムは優れていた。また、α−オレフィンの含有量が10質量%未満であるプロピレン系樹脂を延伸加工するために流動パラフィンを25質量部添加している比較例2と対比すると、弾性率の点で、多量の可塑剤を添加することなく延伸加工することができる実施例1〜9の多層ラップフィルムは優れていた。さらに、表面層における共重合物(a)を0.5質量部未満で含有する比較例2と対比すると、密着性の点で、表面層における共重合物(a)を0.5〜10質量部の範囲内で含有する実施例1、2、3、7、8及び9の多層ラップフィルムは優れていた。
またさらに、ポリプロピレン系樹脂として、内層を有さない比較例3では、柔軟性、水蒸気バリア性、透明性の点で、劣っており、α−オレフィンを10質量%未満で含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体を内層とした、比較例5及び6では、いずれも多層ラップフィルムを安定に製造することができないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、耐熱性、密着性、柔軟性、水蒸気バリア性、及び透明性に優れる多層フィルムを提供することができる。本発明の多層フィルムは、特に、食品包装などのラップフィルムとして産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施例8において、ダイから押出したフィルムを冷却固化し、固着防止剤をフィルム表面に塗布する工程の模式図を示す。
【符号の説明】
【0080】
1 円筒状のダイの中央部に設けられた空洞
2 円筒状のダイ
3 積層フィルム
4 固着防止剤
5 蒸留水
6 ピンチロール
7 冷却水
8 折りたたみフィルム
9 差動ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と、前記内層の表裏両面に配置した表面層と、を有する多層フィルムであって、
前記表面層が、ポリ乳酸系樹脂組成物を含む層であり、
前記ポリ乳酸系樹脂組成物が、
結晶性ポリ乳酸70〜90質量%と、グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル10〜30質量%と、からなる組成物100質量部、
柔軟樹脂として、下記(a)及び(b)からなる群から選択される少なくとも1種の柔軟樹脂0.5〜10質量部、及び/又は下記(c)である柔軟樹脂10〜50質量部;
(a)脂肪族ヒドロキシカルボン酸と脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸との共重合物、
(b)酢酸ビニルの含有量が40〜50質量%であるエチレンと酢酸ビニルとの共重合物、
(c)脂肪族ジオールと、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸と、の共重合物、
を含有し、
前記内層が、ポリプロピレン系樹脂を含む層であり、
前記ポリプロピレン系樹脂が、プロピレン65〜90質量%と、α−オレフィン10〜35質量%と、からなるプロピレン−α−オレフィン共重合体を含有し、
前記α−オレフィンが、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン及び1−ノネンからなる群から選択される少なくとも1種である、多層フィルム。
【請求項2】
100℃における熱収縮率が35%以下である、請求項1に記載の多層フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2009−262495(P2009−262495A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117489(P2008−117489)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】