説明

多層フレキシブルフィルム体

本発明は、多層フレキシブルフィルム体(6)、特にラベルフィルムまたはパッケージフィルムと、商品識別システムと、そのようなフィルム体の利用法に関する。フィルム体(6)は、キャリア層と、光学的に認知可能な情報を提供する加飾層システムとを有する。加飾層システムの多数の層は、電子制御表示エレメント(65)を形成し、その起動により、光学的に認知可能な情報が可視化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア層および光学的に認知可能な情報を提供する加飾層システムから成る多層フレキシブルフィルム体、特に、ラベルフィルムまたはパッケージフィルム、およびそのようなフィルム体の利用法、およびそのようなフィルム体を含むシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば食材などのパッケージ商品では、キャリアフィルムに加え、魅力的な視覚的印象をパッケージに添える加飾層を含む複合材料が、一般的に用いられる。例えば、特許文献1には、パッケージキャリア層、平面広告記載キャリア層、およびそれへの広告記載印刷を含む、食材に対する多層パッケージフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE 203 14 902 U1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、特に、ラベルフィルムまたはパッケージフィルムとして利用可能な、改良された多層フレキシブルフィルム体、およびそのようなフィルム体の利用法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、キャリア層および光学的に認知可能な情報を提供する加飾層システムから成り、前記加飾層システムの多数の層が、電気制御表示エレメントを形成し、その起動により、前記光学的に認知可能な情報が可視化される、多層フレキシブルフィルム体により達成される。
【0006】
本発明は、新しい光学効果を備えたパッケージの提供、新しい機能を有する光学的動的ラベルの提供、および、パッケージシステムにおける付加機能の統合を可能にする。
【0007】
本発明の有利な進歩は、従属クレームで説明される。
【0008】
前記加飾層システムは、外部起動信号を検出するためのセンサーエレメントを一つ以上含み、該センサーエレメントが、直接、または電子回路により、表示エレメントに接続されるのが好ましい。起動信号の受信により、表示エレメントが起動し、加飾層システムの光学的に認知可能な情報が、可視化される。ここで、以下のエネルギー源および作用が、表示エレメントを起動するための起動信号として用いられる。交流電磁界、特にHFまたはRF帯送信機、音、温度、導電性、湿度、圧力、キャパシタンスおよび光。この場合、加飾層システムは、それらのエネルギー源および作用を検出するためのセンサーエレメントを提供する、一つ以上の層を、それぞれ有する。従って、例えば、前記加飾層システムの光学効果は、前記外部起動信号としての交流電磁界により起動可能であり、前記加飾層システムが、前記交流電磁界を検出するためのアンテナ構造を形成し、前記交流電磁界を検出するための前記センサーエレメントとして機能する導電性層を、一つ以上含むことができる。この場合、それぞれ使用される周波数レンジに適したアンテナ構造、例えば、コイル形態アンテナ、ダイポールアンテナ、バイポールアンテナ、または容量結合構造が、アンテナ構造として用いられる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記加飾層システムの光学効果が、外部起動信号としての交流電磁界により起動可能であり、前記加飾層システムが、少なくとも部分的に、前記交流電磁界を検出する容量結合のための板形状構造の導電性層を一つ以上含み、前記交流電磁界を検出するための前記センサーエレメントとして機能する。このような起動信号の結合は、特に、フィルム体の選択的な、狙いを定めた起動を可能とする、ロバストな解を示す。
【0010】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、表示エレメントまたは電子回路は、表示エレメントが最初の起動後に起動状態のままであり、好ましくは表示エレメントの起動が無効にならない、という構成である。従って、起動後、光学的に認知可能な情報は、恒久的に可視化状態のままである。これは、一方では、単安定表示エレメントの利用により、他方では、起動信号の受信後に表示エレメントを起動状態に保つ電子回路により、達成可能である。
【0011】
また、前記加飾層システムは、外部停止信号を検出するためのセンサーエレメントを提供する層を一つ以上含み、前記停止信号の検出により、前記表示エレメントが停止するように、前記センサーエレメントが、直接、または電子回路により、前記表示エレメントに接続可能である。また、表示エレメントは、センサーエレメントにより起動信号が検出される間のみ、起動状態のままであることも可能である。
【0012】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、多層体は、所定の期間後に表示エレメントを起動する、スイッチングエレメントを有する。従って、加飾層システムの外観は、この期間後に変化する。この実施形態により、外部起動信号を検出するためのセンサーエレメントを省略することもできる。
【0013】
加飾層システムは、電源を提供する一つ以上の層を有するのが好ましい。この場合、電源は、直接またはスイッチングエレメントにより、表示エレメントに接続される。加飾層システムは、電源として電気化学的な板状のバッテリーを提供する、2つ以上の層を有するのが好ましい。また、例えば、加飾層システムは、交流電磁界からのエネルギーと誘導結合するための、フラットコイルの形態で、少なくとも部分的に形成される、一つ以上の導電性層を有することもでき、フラットコイルは、直流を生じる電源として、同調コンデンサおよび整流器に接続される。また、加飾層システムは、交流電磁界からのエネルギーと容量結合するための、板形状の金属面の形態で、少なくとも部分的に形成される、一つ以上の導電性層を有することができ、板形状の金属面は、直流を生じるための電源として、整流器およびコンデンサに接続される。さらに、加飾層システムは、電源として、好ましくは有機太陽電池を有する、一つ以上の層を有し、または、例えば、フィルム体の折り畳みまたは屈曲により、または、加熱または冷却作用で、対応する電極層により検出されコンデンサに蓄えられる電圧パルスを発生する圧電材料を含む、一つ以上の層を有することができる。さらに、前記電源としての前記加飾層システムが、摩擦および帯電により生じる電荷キャリアを受け取る一つ以上の電極を有することができる。この場合、加飾層システムは、エネルギー貯蔵手段として機能し、上述した電源により充電され、直接または間接的に表示エレメントに接続される、コンデンサを有するのが好ましい。
【0014】
また、上述した電源、例えば圧電エレメントまたはバッテリー付き太陽電池を、2つ以上組み合わせた電源を利用することもできる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、電源と表示エレメントとの間を接続または遮断するスイッチングエレメントを含むことができる電子回路が、電源と表示エレメントとの間に提供される。この場合、電子回路は、有機電子回路を含み、溶液から適用された一つ以上の半導体層を提供する、加飾層システムの2つ以上の層により形成されるのが好ましい。この場合、電子回路は、一方では電源に、他方では表示エレメントに接続され、表示エレメントの起動を制御する。この場合、スイッチングエレメントとして、有機電界効果トランジスタが用いられるのが好ましい。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記加飾層システムは、2つの電極層と、該電極層の間に配置され、ネマティックまたはコレステリック液晶材料、エレクトロクロミック材料、エレクトロルミネッセンス材料、または有機(または無機)蛍光物質を含む、一つ以上の層とを有し、それらが前記電気制御表示エレメントを提供する。従って、表示エレメントは、例えば、ポリマーマトリクスに囲まれ、液晶で充填され、電圧により配向可能であり、不透明から透明に切り替え可能な領域を有することができる。コレステリック液晶材料も利用可能である。エレクトロクロミック材料を用いる場合、電気化学作用により染料が還元されると、表示エレメントの色が変化する。エレクトロルミネッセンス材料の場合、交流電磁界により、リンが励起されて発光する。また、2つの電極間に配置され、静電気力により移動して、観察者に可視または不可視となる、カラー電荷を用いることもできる。さらに、2つの電極間に、静電気力により形態が変化し、可視または不可視となる、カラーの液体を提供することもできる。また、表示エレメントとして、有機発光ダイオードを用いることもでき、この場合、電流により有機蛍材料が励起されて発光する。また、加飾層システムは、電気過熱エレメント、例えば蛇行形状の導電トラックに隣り合って加飾層システムに配置される、サーモクロミック層を有することもできる。加熱エレメントに電圧が適用されると、過熱し、サーモクロミック層のサーモクロミック材料の色が変化する。このように、エネルギー起動の、単安定または双安定表示エレメントを用いることもできる。
【0017】
ここで、表示エレメントの一つ以上の層は、光学的に認知可能な形態で形成され、表示エレメントの起動により、加飾層システムの光学効果がその領域で変化し、光学的に認知可能な情報が可視化されるのが好ましい。
【0018】
しかしながら、光学的に認知可能な情報は、好ましくはカラー特性があり、観察者の視点から表示エレメントの上方または下方に配置され、表示エレメントの起動により観察者に対して可視化される、一つ以上の層、例えば、観察者に対して露出され、または、背景の変化により可視化される層で形成することもできる。
【0019】
また、前記表示エレメントの前記電極の一方または双方が、非導電性印刷材料と重なることにより構造化される非構造化電極層により、前記光学的に認知可能な情報に関するネガ形態で形成可能であり、前記電極が、前記光学的に認知可能な情報のアイテムの領域においてのみ導電性面を有し、該面が、エレクトロクロミック材料、エレクトロルミネッセンス材料、または前記有機/無機蛍光物質と接触する。ここで、熱伝導ワックスが、そのような電極構造の絶縁体として用いられることが、特に有利であることが分かっている。ここで、滴点90〜110°、凝固点75〜85°、100°での粘性が50〜100μPaの、多数のワックスと樹脂とに基づく混合体が、特に適していることが分かっている。ワックス層は、熱転写プリンタによる印刷により、電極層に適用される。この場合、熱転写プリンタは、キャリアフィルムと、キャリアフィルムに適用され熱転写ワックスから成るワックス層とを有する、熱転写フィルムが供給される。熱転写ワックスは、デジタル駆動される熱転写プリンタのヘッドにより、部分的に溶け、この場合、熱転写フィルムの転写層の個々の小領域が、電極に転写される。この転写工程では、電極に転写された熱転写ワックス層の領域の隣接領域は溶け、一方では、加飾層システムの熱負荷が低く保たれ、電極のエッジ領域を含む、電極の非作動領域の絶縁が、信頼性高く達成される。熱転写層は、表示エレメントにより使用される感光材料、たとえば、ルミネッセンス材料、有機または無機蛍光物質に対して特に良好な抵抗を有し、このような絶縁層の使用により、表示エレメントのフェールセーフ特性が改善される、という、さらなる利点が提供される。
【0020】
また、加飾層システムは、2つ以上の異なる光学的に認知可能な情報のアイテムを提供し、加飾層システムの多数の層は、2つ以上の電気制御表示エレメントを提供し、それらの個々の起動により、異なる光学的に認知可能な情報のアイテムのそれぞれを可視化することが可能である。
【0021】
フィルム体は、総合システムにおけるダイナミックラベルとして利用されるのが好ましい。
【0022】
そのシステムは、電波起動装置と多数の光学的ダイナミックラベルとから成り、費用のかからない製造により、多数の商品の販売目的で使用可能である。光学的ダイナミックラベルは、例えばポテトチップの外袋のような、パッケージ業界で適用可能である。表示エレメントが起動されると、画像またはくじ引きの番号等の種々の情報のアイテムが、表示の後ろに隠蔽可能である。従って、例えば、可視化可能な光学的に認知可能な情報の形態の起動可能なロゴが存在するパッケージが配られる。限られた数のロゴのバリエーションが提供される(例えば、ハート、星、シャンパングラス)。従って、2つ以上の異なるパッケージグループが存在し、同一のグループのパッケージは、他のグループの起動可能な情報のアイテムとは異なる、同一の起動可能な情報のアイテムをそれぞれ有する。また、非起動光学ダイナミックラベルに相当する光学的外観を有し、電気制御表示エレメントを有しない、さらなるパッケージグループを提供することができる。勝利のチャンスは、そのような“ダミー”により、制限される。
【0023】
また、本発明のフィルム体は、チケット、登録商標保護エレメント(例えばラベル)、抽選券、トランプ、または他のゲームで利用され、または、さらなる光学的な情報のアイテムを備えたRFIDタグの形態であってもよい。
【0024】
電気制御表示エレメントは、例えば、7セグメントのエレメント(数字または文字の表示)にセグメント化されてもよい。また、多数の電気制御表示エレメントが、互いに隣り合う関係で提供可能であり、種々のロゴエレメント又は情報エレメントの起動により、可視化される。
【0025】
表示エレメントは、光学的に認知可能な情報が、直接起動(例えば、押しボタンの押し込み、または交流電磁界の直接作用)によってのみ可視化され、または、種々の表示エレメントに関し、エレメントが連続的に起動され、情報のアイテムそれぞれが、連続的に可視化されるような構造であってもよい。さらに、表示エレメントは、恒久的に起動されてもよく、従って、情報は、1度の起動により、恒久的に可視化されてもよく、または、リセット信号により、再び切り替わってもよい。
【0026】
ロゴは、例えば、所定の交流電磁界を放射する起動装置により、例えばくじ引きゲームの製造業者の下で起動されてもよい。
【0027】
また、光学的なダイナミックラベルは、支払い手段として利用可能である。従って、例えば、ロゴは、支払い後に、レジで起動され、可視化されてもよい。商品の取り扱いが終了した後、シンボルは再び停止する。この手順が繰り返される。表示エレメントは、恒久的に起動可能であってもよく、すなわち、表示エレメントが一度起動されると、情報が維持される。
【0028】
また、本発明による多層体は、合理的で、インタラクティブな操作インストラクションとして機能してもよい。例えば、商品、関連実装、またはそのユーザビリティに関する、さらなる情報のアイテムが、起動により統合可能である。
【0029】
また、本発明による多層体は、商品の真贋を識別するためのセキュリティ特性として機能してもよい。製造業者は、起動により、商品が、海賊商品か否かを確認でき、または、保証時に、または、商品廃棄時に、商品が、自社のものか、および顧客サービスを提供する義務があるか否か、を確証できる。
【0030】
さらに、本発明による多層体は、電子コンポーネントのモニタ用ラベルとして用いることもできる。電子機器においては、あるコンポーネントは、強力な電界または磁界に曝されるべきではない。それらの要求の順守をチェックするため、本発明による多層体は、そのような製品またはそれらのパッケージに対するインジケータとして適用可能である。この場合、フィルム体は、電界または磁界を検出するためのセンサーエレメントを有し、所定の制限値を超えた場合、直ちに表示エレメントが起動される。
【0031】
また、本発明による多層体は、食材のモニタ用ラベルとして用いることもでき、その目的のために、食材またはそのパッケージに適用可能である。この場合、フィルム体は、例えば、食材の温度検出用(クールチェイン)、露光期間(例えば、紫外線に敏感な商品)、または、パッケージの密閉の安全性(酸素濃度、窒素濃度、水等の検出)のモニタ用の、センサーエレメントを有する。所定の制限値を超えた場合、表示エレメントが起動し、情報、例えば警告表示が可視化される。
【0032】
フィルム体のさらなる利用分野は、いわゆる“ライフスタイル商品”である。
【0033】
例えば、フィルム体は、ポスターのレイアウトやグラフィックの変化が、起動信号に対して保護される、インタラクティブなポスターを形成可能である。例えば、Tシャツ(または他の衣料品)、ブレスレットまたはアームバンド、時計または腕時計またはペンダントへのフィルムエレメントの一体化などの、インタラクティブな特性を示す他の利用法が可能であり、この場合、光学的な表示エレメントは、特に狙って起動可能である。
【0034】
また、本発明による多層体は、パッケージまたは表面へのラベルスタックの形態であってもよい。また、フィルム体は、パッケージに添付可能である。また、例えばパッケージにスタンプされた表示エレメントの寸法に応じた開口を有してもよく、フィルム体は、パッケージの開口に正確に適合した位置関係で、例えば接着により、裏面から固定されてもよい。この場合、表示エレメントは、パッケージまたは表面の色にマッチするのが好ましい。さらに、フィルム体自身が、パッケージ用のパッケージフィルムに相当し、表示エレメントおよび他のコンポーネント(電源、電子回路、センサーエレメント)が、パッケージフィルムの製造中に、印刷プロセスにより適用可能である。この場合、本発明によるフィルム体は、実質上印刷法により、ロール・ツー・ロールプロセスで生産されるのが好ましい。
【0035】
本発明は、以降、付随する図面を参照しつつ、例示的な多数の実施形態により、例示的に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明によるフィルム体の図を示す。
【図2】図1のフィルム体の断面図を示す。
【図3】起動装置と本発明によるフィルム体から成る商品識別システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1および図2は、キャリア層11および加飾層システム11を有するフィルム体1を示す。この場合、キャリア層11および加飾層システム11に加えて、フィルム体1は、さらなる層、例えば、接着層、保護層、および接着下塗層を有することができる。
【0038】
キャリア層は、プラスティックフィルム、特に、層厚が12〜100μmの、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリフタルアミド、シンジオタクチックポリスチレン、ニフッ化ポリビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
【0039】
加飾層システム11は、例えば、ロール・ツー・ロールプロセスでの凹版印刷、またはタンポ印刷等の、印刷プロセスにより、構造化形態で適用されるのが好ましい、多数の層から成る。
【0040】
図2は、例として、多数の導電性層12、14、および16、光学的な活性材料の層13、および非導電性材料の層15を示している。これらの電気的機能層は、保護層17により密閉されている。
【0041】
第一の領域において、加飾層システム11の電気的機能層は、交流電磁界を検出する働きをするセンサーエレメント2を提供するように構成される。センサーエレメント2の領域では、導電性機能層12は、図1に示すように、交流電磁界をフィルム体1に容量結合する働きをする、2つの板形状の金属面21および22の形態で形成される。
【0042】
フィルム体1のさらなる領域において、加飾層システム11の電気的機能層は、有機電子回路を提供するように配置形成される。図1の実施形態は、導電性接続経路により、一方がセンサーエレメント2に、他方が表示エレメント4に結合された、電子回路3を有している。電子回路3は、一つ以上の有機ダイオードまたは電界効果トランジスタ、およびそれらの出力側に接続された平滑コンデンサから成る、整流器であり、容量プレート21および22により容量結合された交流電磁界を、直流電圧信号に変換する。電子回路3の領域において、加飾層システム11は、平滑コンデンサを形成する層16、15、および12に加えて、さらなる層(図示せず)、特に、有機電解効果トランジスタまたは有機ダイオードの機能層に相当し、整流器を提供する、導電性層および半導体層を有する。また、電子回路3は、さらなるコンポーネント、例えば、表示エレメントへの電流の供給を制御するスイッチングエレメント、または、例えば、結合された交流電磁界に変調された情報を復調し、および/または、さらなるセンサーエレメントから信号を検出し、それらの情報アイテムに論理結合する、論理回路を含み、所定の条件が満たされた場合に、スイッチングエレメントにより表示エレメントを起動することもできる。これらのコンポーネントは、導電性機能層、半導体機能層、および非導電性機能層を含む電気機能層の配置形成により作られ、それらにより、印刷プロセスで、有機電解効果トランジスタ、コンデンサ、および抵抗に基づく電子回路が構築される。
【0043】
表示エレメントを形成する導電性層12と14、および機能層13は、加飾層システム11において、表示エレメント4の領域に配置される。機能層13は、電界の適用または電流に対して、光学特性を変化させる材料から成る。従って、層13は、例えば、ネマティックまたはコレステリック液晶材料で満たされたキャビティを有するポリマー配列から成り、電界の適用で、層13の光学的な外観が変化する。層13は、エレクトロクロミック材料、エレクトロルミネッセンス材料、電気泳動材料、または、有機蛍光物質から成ってもよく、それぞれの場合に、層12と13との間に、さらなる層が提供されてもよい。一つ以上の層12、13、または14が、表示エレメント4の領域に、光学的に認知可能な情報のアイテムの形態で形成され、表示エレメント4の起動で、すなわち、表示エレメント4の結合端子に電圧を適用することで、表示エレメント4の光学的外観が、光学的に認知可能な情報の領域において変化し、光学的に認知可能な情報5が光学的に可視可能となる。
【0044】
使用される導電性機能層は、厚さの範囲が約1〜5nmで、例えば銅、アルミニウム、銀、金、または合金から成る、薄い金属層であるのが好ましい。導電性機能層は、特に、表示エレメント4の領域において、ITOまたはTIOx、または、PEDOT/PSS、Paniまたはカーボンナノチューブ等の有機導電性材料のような、透明導電性材料を含むこともできる。
【0045】
加飾層システム11の半導体機能層は、有機半導体、例えば、ポリチオフェン、ポリテルスロペン、ポリフルオレン、ペンタセン、テトラセン、オリゴトロペン、ポリマー配列に埋め込まれた無機シリコン、ナノシリコン、または、ポリアリルアミン、または、カーボンナノチューブ等から成るのが好ましい。有機半導体層の層厚は、5nm〜1μmが好ましい。半導体層は、例えば、凹版印刷プロセスまたはタンポ印刷プロセス等の印刷プロセス、または、スピンコーティング、スプレー、または流し込みにより、溶液、例えば、水溶液から適用される。
【0046】
また、半導体機能層は、実質上、溶液から適用される無機物質から成る層から作られてもよい。従って、層は、例えば無機半導体のナノ粒子、例えばシリコン等の、溶液から適用された無機半導体の層を含むことができ、5nm〜1μmの層厚で、上述したプロセスの一つにより、溶液から適用される。
【0047】
加飾層システム11の非導電性機能層は、5nm〜16μmの層厚の、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、PVP、PHS、PS、ポリスチレン共重合体、ユリア樹脂、またはPMMA共重合体のポリマー材料の層であるのが好ましい。この層も、上述したプロセスの一つ、特に、オフセット印刷、インクジェット印刷、凹版印刷、またはスクリーン印刷、またはフレキソ印刷により、溶液から適用されるのが好ましい。
【0048】
加飾層システム11は、一つの連続的な製造プロセスで製造されるだけでなく、加飾層システム11の個々のコンポーネント、例えば、電子回路3および/または表示エレメント4は、ロール・ツー・ロールプロセスで別々に製造され、例えば導電性機能層12に適用され、導電性接着剤により対応する他のコンポーネントに電気的に接続可能である。
【0049】
図1に示すフィルム体1は、製造後、個々に分離され、例えば、ラベルの形態で、トランプに適用される。この場合、フィルム体1は、表示エレメントが異なる光学情報を提供する、図1に示すフィルム体を備えた多数のさらなるカードを含み、センサー2に同調される起動装置を有する、システムの一部を形成する。この場合、起動装置は、金属面21および22に同調される、2つの板形状の金属面を有する。互いに関連する起動装置の板と個々のトランプとを適切に重ねることにより、交流電磁界の結合がなされ、電子システム3により整流されて直流電圧に変換され、表示エレメント4を起動して情報を可視化する。
【0050】
図3は、起動装置7とフィルム体6から成る商品識別システムを示す。フィルム体6は、図1および2に示すフィルム体1と同様に構成されているが、フィルム体6における加飾層システム11の、導電性、半導体、および絶縁層の配置形状が、加飾層システム11におけるそれらとは異なる機能の実施を提供する点で異なっている。フィルム体6は、加飾層システムの層の配置形状により、上述したように設計された、センサーエレメント61、センサーエレメント64、電子回路62、電源63、および表示エレメント65を有する。
【0051】
センサーエレメント61は、起動装置7により放出される交流電磁界8に同調して検出するアンテナコイルにより形成される。電源63は、印刷により作られる、電気化学的な板状のバッテリーである。
【0052】
センサーユニット64は、例えば、2つの電極と、2つの電極の間に配置された半導体とから成る配置により形成された、適切な温度依存導電性を備えた、温度センサーである。表示エレメント65は、例えば、図1の表示エレメント4のように設計される。電子回路62は、一方では、センサーエレメント61により結合された交流電磁界8と、温度センサー64により提供される信号とを検出する。
【0053】
対応する起動信号8が電子回路62により検出されると、センサーエレメント64からの信号により、温度のモニターが開始され、所定の制限値を超えるか否かが確認される。温度の制限値を超えた場合、電子回路62は、表示エレメント65を起動し、光学情報のアイテム、例えば警告表示が、可視化される。フィルム体6は、例えば、食材のモニター用ラベルとして用いられ、そのために、例えば、モニターする食材またはパッケージに適用され、またはそのようなパッケージの一部を形成する。センサーエレメント64に加えて、フィルム体6は、例えば、光照射または酸素含有量を検出する、さらなるセンサーエレメントを有してもよく、それらの信号は、電子回路62により、所定の制限値の順守がチェックされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア層(10)および光学的に認知可能な情報(5)を提供する加飾層システム(11)を含む多層フレキシブルフィルム体(1、6)、特にラベルフィルムまたはパッケージフィルムであって、
前記加飾層システムの多数の層(12、13、14)が、電気制御表示エレメント(5、65)を形成し、その起動により、前記光学的に認知可能な情報(5)が可視化されること、
を特徴とする、多層フレキシブルフィルム体。
【請求項2】
前記加飾層システム(11)が、外部起動信号(8)を検出するためのセンサーエレメント(2、61)を提供する層を一つ以上含み、該センサーエレメント(2、61)が、直接、または電子回路(3、62)により、前記表示エレメント(4、65)に接続されること、
を特徴とする請求項1に記載の多層フレキシブルフィルム体(1、6)。
【請求項3】
前記加飾層システムの光学効果が、前記外部起動信号としての交流電磁界により起動可能であり、前記加飾層システムが、前記交流電磁界を検出するためのアンテナ構造を形成し、前記交流電磁界を検出するための前記センサーエレメントとして機能する導電性層を、一つ以上含むこと、
を特徴とする請求項2に記載の多層フレキシブルフィルム体(1、6)。
【請求項4】
前記加飾層システム(11)の光学効果が、前記外部起動信号としての交流電磁界により起動可能であり、前記加飾層システム(11)が、少なくとも部分的に、前記交流電磁界を検出する容量結合のための板形状構造の導電性層(12)を一つ以上含み、前記交流電磁界を検出するための前記センサーエレメント(2)として機能すること、
を特徴とする請求項2または3に記載の多層フレキシブルフィルム体(1)。
【請求項5】
前記加飾層システム(11)が、外部停止信号を検出するためのセンサーエレメントを提供する層を一つ以上含み、前記停止信号の検出により、前記表示エレメントが停止するように、前記センサーエレメントが、直接、または電子回路により、前記表示エレメントに接続されること、
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層フレキシブルフィルム体。
【請求項6】
前記表示エレメントまたは前記電子回路は、一度起動した後に、前記表示エレメントが起動したままとなるように適応されること、
を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層フレキシブルフィルム体。
【請求項7】
前記加飾層システムが、2つ以上の異なる光学的に認知可能な情報のアイテムを提供し、前記加飾層システムの多数の層が、2つ以上の電気制御表示エレメントを提供し、その起動により、前記異なる光学的に認知可能な情報のアイテムがそれぞれ可視化されること、
を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層フレキシブルフィルム体。
【請求項8】
前記電気制御表示エレメントの少なくとも一つの電極の表面が、部分的に、前記光学的に認知可能な情報の形態で前記電極層を構築する熱伝導ワックス層を備えること、
を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の多層フレキシブルフィルム体。
【請求項9】
前記加飾層システム(11)が、2つの電極層(12、14)と、該電極層の間に配置され、ネマティックまたはコレステリック液晶材料、エレクトロクロミック材料、エレクトロルミネッセンス材料、電気泳動システム、有機蛍光物質、無機蛍光物質を含む、一つ以上の層(13)とを有し、それらが前記電気制御表示エレメント(5、65)を提供すること、
を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の多層フレキシブルフィルム体(1、6)。
【請求項10】
前記加飾層システム(11)が、溶液から適用される半導体層を一つ以上含み、電子回路(3)を提供する、2つ以上の層を有し、前記電子回路(3、62)が、前記表示エレメント(4、65)に接続され、前記表示エレメントの起動を制御するように適応されること、
を特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の多層フレキシブルフィルム体(1、6)。
【請求項11】
前記加飾層システム(11)が、電源(2、63)を提供する1つ以上の層を有し、前記電源(2、63)が、直接またはスイッチングエレメントにより、前記表示エレメント(4、65)に接続されること、
を特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の多層フレキシブルフィルム体(1、6)。
【請求項12】
前記加飾層システム(11)が、前記電源(63)として、電気化学的な板状のバッテリーを提供する、2つ以上の層を有すること、
を特徴とする請求項12に記載の多層フレキシブルフィルム体。
【請求項13】
前記加飾層システムが、交流電磁界からの電磁エネルギーと電磁結合するためのアンテナとして少なくとも部分的に形成された、一つ以上の導電性層を有し、前記アンテナが、直流の発生のための前記電源として、コンデンサおよび整流器に接続されること、
を特徴とする請求項12または13に記載の多層フレキシブルフィルム体。
【請求項14】
前記加飾層システム(11)が、交流電磁界からのエネルギーと容量結合するための、少なくとも部分的に板形状の金属面(21、22)の形態の、一つ以上の導電性層を有し、前記板形状の金属面(21、22)が、直流の発生のための前記電源として、整流器およびコンデンサに接続されること、
を特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の多層フレキシブルフィルム体(1)。
【請求項15】
前記加飾層システムが、前記電源として、太陽電池を提供する一つ以上の層を有すること、
を特徴とする請求項12〜15のいずれか1項に記載の多層フレキシブルフィルム体。
【請求項16】
前記加飾層システムが、前記電源として、圧電材料を含む一つ以上の層を有すること、
を特徴とする請求項12〜16のいずれか1項に記載の多層フレキシブルフィルム体。
【請求項17】
前記加飾層システムが、前記電源として、摩擦および帯電により生じる電荷キャリアを受け取る一つ以上の電極を有すること、
を特徴とする請求項12〜17のいずれか1項に記載の多層フレキシブルフィルム体。
【請求項18】
前記フィルム体が、商品を包むパッケージフィルムであること、
を特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の多層フレキシブルフィルム体。
【請求項19】
前記フィルム体(1、6)が、ラベルフィルムであること、
を特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の多層フレキシブルフィルム体(1、6)。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の前記フィルム体の、商品識別用のラベルとしての利用法。
【請求項21】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の前記フィルム体の、トランプのラベルとしての利用法。
【請求項22】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の前記フィルム体の、くじ引きの抽選券としての利用法。
【請求項23】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の前記フィルム体の、操作インストラクションまたは情報キャリアとしての利用法。
【請求項24】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の前記フィルム体の、電子コンポーネントのモニタ用ラベルとしての利用法。
【請求項25】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の前記フィルム体の、食材、医薬品、および、他の消費財のモニタ用ラベルとしての利用法。
【請求項26】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の前記フィルム体の、起動可能ポスターとしての利用法。
【請求項27】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の、動的光学ラベルを形成するフィルム体を備えた、多数の商品パッケージと、起動信号を放出する送信機を有する起動装置と、を含み、2つ以上の異なるパッケージグループが存在し、同一のグループのパッケージが、他のグループの起動可能な情報のアイテムとは異なる、同一の起動可能な情報のアイテムをそれぞれ有するシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−540353(P2010−540353A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524396(P2010−524396)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007445
【国際公開番号】WO2009/033662
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(309011206)ポリイイーツェー ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー (3)
【氏名又は名称原語表記】PoryIC Gmbh & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Tucherstrasse 2 90763 Furth Germany
【出願人】(507370644)レオンハード クルツ シュティフトゥング ウント コー. カーゲー (21)
【Fターム(参考)】