説明

多層ブロー成形品

【課題】本発明の目的は、柔軟で燃料バリア性に優れており、各層の接着性が良好で、かつ耐熱性・耐薬品性・耐油性等の特性を兼ね備えた多層ブロー成形品を提供することである。また、本発明の目的は、多層ブロー成形品から形成される燃料配管、燃料容器、燃料タンク、薬液容器を提供することである。
【解決手段】フッ素樹脂(A)10〜95重量%および架橋フッ素ゴム(B)90〜5重量%を含む熱可塑性重合体組成物(X)と、熱可塑性樹脂(Y)を積層してなる多層ブロー成形品であって、フッ素樹脂(A)が、融点120〜330℃の含フッ素エチレン性重合体(a)を含み、架橋フッ素ゴム(B)が、フッ素樹脂(A)および架橋剤(C)の存在下、少なくとも1種のフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)を溶融条件下にて動的に架橋処理したものである多層ブロー成形品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性重合体組成物と熱可塑性樹脂を積層してなる多層ブロー成形品に関する。また、本発明は、該多層ブロー成形品から形成される燃料配管、燃料容器、燃料タンクおよび薬液容器に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂は、摺動性、耐熱性、耐薬品性、耐候性、電気的性質などの特性に優れ、自動車、産業機械、OA機器、電気電子機器等の幅広い分野で使用されている。
【0003】
一方、フッ素ゴムは、優れた耐熱性、耐薬品性、圧縮永久歪などの特性を有することから、自動車分野、半導体分野、工業分野などで多くの用途に使用されている。
【0004】
そのため、フッ素ゴムの耐熱性をさらに改良させる目的で、またはフッ素樹脂に柔軟性を付与する目的で、フッ素ゴムとフッ素樹脂とのポリマーアロイが研究されている。
【0005】
フッ素ゴムとフッ素樹脂とのポリマーアロイとして、例えば、含フッ素エチレン性重合体からなるフッ素樹脂、少なくとも1種のゴムの少なくとも一部を架橋した非フッ素架橋ゴムからなる熱可塑性重合体組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。該熱可塑性重合体組成物は、優れた耐熱性と耐薬品性を兼ね備え、柔軟であり、かつ成形加工性に優れるものであるが、押出成形しか実施されておらず、該組成物を用いて多層ブロー成形品を製造することについては全く検討されていない。
【0006】
また、一般にフッ素樹脂やフッ素ゴムは、他の熱可塑性樹脂との接着性に劣っており、多層ブロー成形品を製造した場合に、層間剥離等の問題が発生することが多く、その改善が求められている。
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/111140号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、柔軟で燃料バリア性に優れており、各層の接着性が良好で、かつ耐熱性・耐薬品性・耐油性等の特性を兼ね備えた多層ブロー成形品を提供することである。また、本発明の目的は、多層ブロー成形品から形成される燃料配管、燃料容器、燃料タンクおよび薬液容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、フッ素樹脂(A)10〜95重量%および架橋フッ素ゴム(B)90〜5重量%を含む熱可塑性重合体組成物(X)と、熱可塑性樹脂(Y)を積層してなる多層ブロー成形品であって、
フッ素樹脂(A)が、融点120〜330℃の含フッ素エチレン性重合体(a)を含み、架橋フッ素ゴム(B)が、フッ素樹脂(A)および架橋剤(C)の存在下、少なくとも1種のフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)を溶融条件下にて動的に架橋処理したものである多層ブロー成形品に関する。
【0010】
フッ素樹脂(A)が、分子末端および/または分子側鎖に官能基を有する構造であることが好ましい。
【0011】
含フッ素エチレン性重合体(a)が、
(a−1)テトラフルオロエチレンおよびエチレンの共重合体、
(a−2)テトラフルオロエチレンと、下記一般式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は、−CF3または−ORf2であり、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物の共重合体、
(a−3)テトラフルオロエチレン単位19〜90モル%、エチレン単位9〜80モル%、および下記一般式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は、−CF3または−ORf2であり、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表わす)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位1〜72モル%からなる共重合体、
(a−4)ポリフッ化ビニリデン、および
(a−5)クロロトリフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレンの共重合体
からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体であることが好ましい。
【0012】
架橋フッ素ゴム(B)のフッ素濃度が、68重量%以上であることが好ましい。
【0013】
フッ素ゴム(b−1)が、ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴムであることが好ましい。
【0014】
熱可塑性樹脂(Y)が、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂およびフッ素系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、前記多層ブロー成形品から形成される燃料配管、燃料容器、燃料タンクおよび薬液容器に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、特定のフッ素樹脂およびフッ素ゴムからなる熱可塑性重合体組成物と熱可塑性樹脂からなることにより、柔軟性、燃料バリア性が優れており、耐熱性・耐薬品性・耐油性等の特性を兼ね備え、かつ成形加工性に優れる多層ブロー成形品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、フッ素樹脂(A)10〜95重量%および架橋フッ素ゴム(B)90〜5重量%を含む熱可塑性重合体組成物(X)と、熱可塑性樹脂(Y)を積層してなる多層ブロー成形品であって、
フッ素樹脂(A)が、融点120〜330℃の含フッ素エチレン性重合体(a)を含み、架橋フッ素ゴム(B)が、フッ素樹脂(A)および架橋剤(C)の存在下、少なくとも1種のフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)を溶融条件下にて動的に架橋処理したものである多層ブロー成形品に関する。
【0018】
フッ素樹脂(A)としては、融点120〜330℃の含フッ素エチレン性重合体(a)を含むフッ素樹脂であればよい。含フッ素エチレン性重合体(a)の融点は、150〜310℃であることが好ましく、150〜290℃であることがより好ましい。含フッ素エチレン性重合体(a)の融点が、120℃未満であると、熱可塑性重合体組成物(X)の耐熱性が低下する傾向があり、330℃を超えると、本発明の多層ブロー成形品の成形加工時において、該熱可塑性重合体組成物(X)に含有される架橋フッ素ゴム(B)が熱劣化するおそれがある。
【0019】
また、フッ素樹脂(A)が、分子末端および/または分子側鎖に官能基を有する構造である場合には、該熱可塑性重合体組成物(X)からなる層と熱可塑性樹脂(Y)からなる層との接着が強固なものととなり、本発明の多層ブロー成形品において層間剥離等の問題が発生しない点で好ましい。官能基としては特に限定されるものではなく、積層される熱可塑性樹脂(Y)の種類に応じて適宜選択することができるが、その中でも、エポキシ基;イソシアネート基;水酸基;カルボニル基;カルボキシル基、塩を形成しているカルボキシル基、カルボニルジオキシ基〔−O−C(=O)−O−〕、アルコキシカルボニル基、ハロホルミル基〔−C(=O)−X;Xはハロゲン原子〕等のカルボニル基を有する基等が好ましく、カルボニル基、カルボニル基を有する基、水酸基および/またはエポキシ基が特に好ましい。
【0020】
上記カルボニル基を有する基としては、1種または2種以上組み合わせて用いることができ、導入が容易であり、層間接着力が強固な点で、カルボニルジオキシ基および/またはハロホルミル基であることが好ましい。
【0021】
含フッ素エチレン性重合体(a)としては、特に限定されるものではないが、例えば、
テトラフルオロエチレン(以下、TFEとする)、一般式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は、−CF3または−ORf2であり、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である)
で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物などのパーフルオロオレフィン、クロロトリフルオロエチレン(以下、CTFEとする)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、ビニリデンフルオライド(以下、VdFとする)、フッ化ビニル、一般式(2):
CH2=CX1(CF2n2 (2)
(式中、X1は、水素原子またはフッ素原子であり、X2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、nは、1〜10の整数である)
などのフルオロオレフィンなどをあげることができる。
【0022】
そして、含フッ素エチレン性重合体(a)は、上記含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位を有してもよく、このような単量体としては、上記フルオロオレフィン、パーフルオロオレフィン以外の非フッ素エチレン性単量体をあげることができる。
【0023】
非フッ素エチレン性単量体としては、例えば、エチレン、プロピレンまたはアルキルビニルエーテル類などをあげることができる。ここで、アルキルビニルエーテルは、炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキルビニルエーテルをいう。
【0024】
これらの中でも、本発明の多層ブロー成形品の燃料バリア性・耐熱性・耐薬品性・耐油性が優れ、かつ成形加工性が容易になる点から、含フッ素エチレン性重合体(a)は、
(a−1)TEFおよびエチレンの共重合体(ETFE)、
(a−2)TFEと、下記一般式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は、−CF3または−ORf2であり、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である)
で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物の共重合体(PFAまたはFEP)、
(a−3)TFE単位19〜90モル%、エチレン単位9〜80モル%、および下記一般式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は、−CF3または−ORf2であり、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表わす)
で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位1〜72モル%からなる共重合体、
(a−4)ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、および
(a−5)CTFEおよびTFEの共重合体
のいずれかであることが好ましい。次に(a−1)〜(a−5)の好ましい含フッ素エチレン性重合体(a)について説明する。
【0025】
(a−1)ETFE
ETFEの場合、上述の作用効果に加えて柔軟性の点で好ましい。TFE単位とエチレン単位との含有モル比は20:80〜90:10が好ましく、62:38〜90:10がより好ましく、63:37〜80:20が特に好ましい。また、第3成分を含有していてもよく、第3成分としてはTFEおよびエチレンと共重合可能なものであればその種類は限定されない。第3成分としては、通常、下記式
CH2=CX3f3、CF2=CFRf3、CF2=CFORf3、CH2=C(Rf32
(式中、X3は水素原子またはフッ素原子、Rf3はフルオロアルキル基を表す)
で示されるモノマーが用いられ、これらの中でも、CH2=CX3f3で示される含フッ素ビニルモノマーがより好ましく、Rf3の炭素数が1〜8のモノマーが特に好ましい。
【0026】
前記式で示される含フッ素ビニルモノマーの具体例としては、1,1−ジヒドロパーフルオロプロペン−1、1,1−ジヒドロパーフルオロブテン−1、1,1,5−トリヒドロパーフルオロペンテン−1、1,1,7−トリヒドロパーフルオロへプテン−1、1,1,2−トリヒドロパーフルオロヘキセン−1、1,1,2−トリヒドロパーフルオロオクテン−1、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルビニルエーテル、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロペン、パーフルオロブテン−1、3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロペン−1、2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(CH2=CFCF2CF2CF2H)があげられる。
【0027】
第3成分の含有量は、含フッ素エチレン性重合体に対して0.1〜10モル%が好ましく、0.1〜5モル%がより好ましく、0.2〜4モル%が特に好ましい。
【0028】
(a−2)PFAまたはFEP
PFAまたはFEPの場合、上述の作用効果においてとりわけ燃料バリア性および耐熱性が優れたものとなる点で好ましい。TFE単位90〜99モル%と一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位1〜10モル%からなる含フッ素エチレン性重合体であることがより好ましい。また、TFEおよび一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物からなる含フッ素エチレン性重合体は、第3成分を含有していてもよく、第3成分としてはTFEおよび式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物と共重合可能なものであればその種類は限定されない。
【0029】
(a−3)TFE単位19〜90モル%、エチレン単位9〜80モル%、および一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位1〜72モル%からなる共重合体
前記共重合体の場合、上述の作用効果に加えて柔軟性の点で好ましい。TFE単位19〜90モル%、エチレン単位9〜80モル%、および一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位1〜72モル%からなる含フッ素エチレン性重合体であることがより好ましく、さらに好ましくはTFE単位20〜70モル%、エチレン単位20〜60モル%、および一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位1〜60モル%からなる含フッ素エチレン性重合体である。
【0030】
一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位としては、ヘキサフルオロプロピレン単位が好ましい。
【0031】
また、TFE、エチレンおよび一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物からなる含フッ素エチレン性重合体は、追加成分を含有していてもよく、追加成分としては、2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(CH2=CFCF2CF2CF2H)などをあげることができる。
【0032】
追加成分の含有量は、含フッ素エチレン性重合体に対して0.1〜3モル%であることが好ましい。
【0033】
(a−4)PVDF
PVDFの場合、上述の作用効果に加えて、柔軟性および優れた力学物性の点で好ましい。
【0034】
(a−5)CTFEおよびTFEの共重合体
CTFEおよびTFEの共重合体の場合、上述の作用効果に加えて、柔軟性および優れた燃料バリア性の点で好ましい。CTFE単位とTFE単位との含有モル比は、5:95〜90:10が好ましく、10:90〜80:20がより好ましい。また、第3成分を含有していてもよく、第3成分としてはTFEおよびエチレンと共重合可能なものであればその種類は限定されないが、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)が好ましく、その中でもパーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)が特に好ましい。
【0035】
架橋フッ素ゴム(B)は、フッ素樹脂(A)および架橋剤(C)の存在下、少なくとも1種のフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)を溶融条件下にて動的に架橋処理したものである。
【0036】
フッ素ゴム(b−1)としては、パーフルオロフッ素ゴム、非パーフルオロフッ素ゴムなどがあげられる。
【0037】
パーフルオロフッ素ゴムとしては、TFE/PAVE系共重合体、TFE/HFP/PAVE系共重合体などがあげられる。
【0038】
非パーフルオロフッ素ゴムとしては、たとえば、VdF系重合体、TFE/プロピレン系共重合体などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組合わせて用いることができる。
【0039】
また、前記パーフルオロフッ素ゴムや非パーフルオロフッ素ゴムとして例示したものは主モノマーの構成であり、架橋用モノマーや変性モノマー等を共重合したものも好適に用いることができる。架橋用モノマーや変性モノマーとしては、ヨウ素原子、臭素原子、二重結合を含むものなどの公知の架橋用モノマー、移動剤、公知のエチレン性不飽和化合物などの変性モノマーなどを使用することができる。
【0040】
前記VdF系重合体としては、具体的には、VdF/HFP系共重合体、VdF/TFE/HFP系共重合体、VdF/TFE/プロピレン系共重合体、VdF/エチレン/HFP系共重合体、VdF/TFE/PAVE系共重合体、VdF/PAVE系共重合体、VdF/CTFE系共重合体などをあげることができる。さらに具体的には、VdF25〜85モル%と、VdFと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体75〜15モル%とからなる含フッ素共重合体であることが好ましく、より好ましくは、VdF40〜80モル%と、VdFと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体60〜20モル%とからなる含フッ素共重合体である。
【0041】
ここで、VdFと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体としては、たとえば、TFE、CTFE、トリフルオロエチレン、HFP、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、PAVE、フッ化ビニルなどの含フッ素単量体、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどの非フッ素単量体があげられる。これらをそれぞれ単独で、または、任意に組み合わせて用いることができる。
【0042】
前記フッ素ゴムの中でも、耐熱性、圧縮永久ひずみ、加工性、コストの点から、VdF単位を含むフッ素ゴムであることが好ましく、圧縮永久ひずみが良好な点から、VdF単位とHFP単位と有するフッ素ゴムであることがより好ましい。
【0043】
また、VdF/HFP系フッ素ゴム、VdF/TFE/HFP系フッ素ゴム、TFE/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴムであることが好ましく、VdF/TFE/HFP系フッ素ゴムであることがより好ましい。
【0044】
本発明に使用されるフッ素ゴム(b−1)は、通常の乳化重合法により製造することができる。重合時の温度、時間などの重合条件としては、モノマーの種類や目的とするゴムにより適宜決定すればよい。
【0045】
含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)としては、特に限定されるものではないが、少なくとも1種のエラストマー性ポリマーセグメントと、少なくとも1種の非エラストマー性ポリマーセグメントとからなり、かつエラストマー性ポリマーセグメントと非エラストマー性ポリマーセグメントのうち、少なくとも一方が含フッ素ポリマーセグメントであることが好ましい。
【0046】
エラストマー性ポリマーセグメントは、重合体に柔軟性を付与し、ガラス転移点が25℃以下が好ましく、より好ましくは0℃以下である。その構成単位としては、たとえば、TFE、CTFE、HFP、一般式(3):
CF2=CFO(CF2CFX4O)p−(CF2CF2CF2O)q−Rf4 (3)
(式中、X4は、フッ素原子または−CF3、Rf4は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、pは、0〜5の整数、qは、0〜5の整数である)
で表されるパーフルオロビニルエーテルなどのパーハロオレフィン;VdF、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、フッ化ビニルなどの含フッ素単量体;エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどの非フッ素単量体などがあげられる。
【0047】
架橋部位を与える単量体としては、たとえば、一般式(4):
CX52=CX5−Rf5CHR16 (4)
(式中、X5は、水素原子、フッ素原子または−CH3、Rf5は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基またはパーフルオロポリオキシアルキレン基、R1は、水素原子または−CH3、X6は、ヨウ素原子または臭素原子である)
で表されるヨウ素または臭素含有単量体、一般式(5):
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2n−X7 (5)
(式中、mは、0〜5の整数、nは、1〜3の整数、X7は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、臭素原子である)
で表されるような単量体などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組合わせて用いることができる。
【0048】
つぎに、非エラストマー性ポリマーセグメントの構成単位としては、TFE、CTFE、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、PAVEとする)、HFP、一般式(6):
CF2=CF(CF2r8 (6)
(式中、rは、1〜10の整数、X8は、フッ素原子または塩素原子である)
で表される化合物、パーフルオロ−2−ブテンなどのパーハロオレフィン;VdF、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、一般式(7):
CH2=CX9−(CF2s−X9 (7)
(式中、X9は、水素原子またはフッ素原子、sは、1〜10の整数)
で表される化合物、CH2=C(CF32などの部分フッ素化オレフィン;エチレン、プロピレン、塩化ビニル、ビニルエーテル、カルボン酸ビニルエステル、アクリル酸などの非フッ素単量体などをあげることができる。
【0049】
また、これらの中でも、エラストマー性ポリマーセグメントが、TFE/VdF/HFPの共重合体であり、かつ非エラストマー性ポリマーセグメントが、TFE/エチレンの共重合体である含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)が好ましく、エラストマー性ポリマーセグメントが、TFE/VdF/HFP=0〜35/40〜90/5〜50モル%であり、かつ非エラストマー性ポリマーセグメントが、TFE/エチレン=20〜80/80〜20モル%である含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)がより好ましい。
【0050】
含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)は、1分子中にエラストマー性ポリマーセグメントと非エラストマー性ポリマーセグメントがブロックやグラフトの形態で結合した含フッ素多元セグメント化ポリマーであることが好ましく、含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)が、1個のエラストマー性ポリマーセグメントと、2個の非エラストマー性ポリマーセグメントからなり、かつそのうちの少なくとも一方は含フッ素ポリマーセグメントであるトリブロックポリマーからなることが好ましい。
【0051】
含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)としては、エラストマー性ポリマーセグメントと非エラストマー性ポリマーセグメントとをブロックやグラフトなどの形態でつなぎ、含フッ素多元セグメント化ポリマーとするべく、公知の種々の方法が採用できるが、なかでも特公昭58−4728号公報などに示されたブロック型の含フッ素多元セグメント化ポリマーの製法や、特開昭62−34324号公報に示されたグラフト型の含フッ素多元セグメント化ポリマーの製法などが好ましく採用できる。
【0052】
とりわけ、セグメント化率(ブロック化率)も高く、均質で規則的なセグメント化ポリマーが得られることから、特公昭58−4728号公報、高分子論文集(Vol.49、No.10、1992)記載のいわゆるヨウ素移動重合法で合成されたブロック型の含フッ素多元セグメント化ポリマーが好ましい。
【0053】
含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)の好ましい製造方法としては、フッ素ゴムの製造法として公知のヨウ素移動重合法をあげることができる。たとえば、実質的に無酸素下で、水媒体中で、ヨウ素化合物、好ましくはジヨウ素化合物の存在下に、前記パーハロオレフィンと、要すれば硬化部位を与える単量体を加圧下で撹拌しながらラジカル開始剤の存在下、乳化重合を行なう方法があげられる。使用するジヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、一般式(8)
2xBry (8)
(式中、xおよびyはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R2は炭素数1〜16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1〜3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)
で表される化合物を存在させることによって得られる。このようにして導入されるヨウ素または臭素が架橋点として機能する。
【0054】
式(8)で表される化合物としては、たとえば1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカン、1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、1,3−ジヨード−n−プロパン、CF2Br2、BrCF2CF2Br、CF3CFBrCF2Br、CFClBr2、BrCF2CFClBr、CFBrClCFClBr、BrCF2CF2CF2Br、BrCF2CFBrOCF3、1−ブロモ−2−ヨードパーフルオロエタン、1−ブロモ−3−ヨードパーフルオロプロパン、1−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブタン、2−ブロモ−3−ヨードパーフルオロブタン、3−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、2−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2−ヨードエチル)および(2−ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合せて使用することもできる。
【0055】
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、ジヨードメタンなどを用いるのが好ましい。
【0056】
本発明で使用するラジカル重合開始剤は、従来から含フッ素エラストマーの重合に使用されているものと同じものであってよい。これらの開始剤には有機および無機の過酸化物ならびにアゾ化合物がある。典型的な開始剤として過硫酸塩類、過酸化カーボネート類、過酸化エステル類などがあり、好ましい開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)があげられる。APSは単独で使用してもよく、またサルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤と組み合わせて使用することもできる。
【0057】
乳化重合に使用される乳化剤としては、広範囲なものが使用可能であるが、重合中におこる乳化剤分子への連鎖移動反応を抑制する観点から、フルオロカーボン鎖、またはフルオロポリエーテル鎖を有するカルボン酸の塩類が望ましい。乳化剤の使用量は、添加された水の約0.05〜2重量%が好ましく、とくに0.2〜1.5重量%が好ましい。
【0058】
重合圧力は、広い範囲で変化させることができる。一般には、0.5〜5MPaの範囲である。重合圧力は、高い程重合速度が大きくなるため、生産性の向上の観点から、0.8MPa以上であることが好ましい。
【0059】
前記ヨウ素移動重合法で含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)のエラストマー性ポリマーセグメントを製造した場合、その数平均分子量は、得られる含フッ素多元セグメント化ポリマー全体へ柔軟性の付与、弾性の付与、機械的物性の付与の点から、3,000〜750,000であることが好ましく、5,000〜300,000であることがより好ましい。
【0060】
このようにして得られるエラストマー性ポリマーセグメントの末端部分はパーハロ型となっており、非エラストマー性ポリマーセグメントのブロック共重合の開始点となるヨウ素原子を有している。
【0061】
ついで、非エラストマー性ポリマーセグメントのエラストマー性ポリマーセグメントへのブロック共重合は、エラストマー性ポリマーセグメントの乳化重合に引き続き、単量体を非エラストマー性ポリマーセグメント用に変えることにより行なうことができる。
【0062】
得られる非エラストマー性ポリマーセグメントの数平均分子量は、熱可塑性重合体組成物(X)への耐熱性の付与、機械的物性の付与の点から、1,000〜1,200,000が好ましく、より好ましくは3,000〜600,000である。
【0063】
また、含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)には、非エラストマー性ポリマーセグメントが結合していないエラストマー性ポリマーセグメントのみのポリマー分子は、含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)中のセグメントとポリマー分子との合計量に対し20重量%以下であることが好ましく、より好ましくは10重量%以下である。
【0064】
架橋フッ素ゴム(B)のフッ素濃度は、68重量%以上であることが好ましく、68〜75重量%であることがより好ましく、69〜74重量%であることがさらに好ましく、70〜73重量%であることが特に好ましい。フッ素濃度が68重量%未満であると得られる多層ブロー成形品の燃料バリア性が低下する傾向がある。
【0065】
架橋剤(C)は、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)の種類や溶融混練条件に応じて、適宜選択することができる。
【0066】
本発明で用いられる架橋系は、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)に架橋性基(キュアサイト)が含まれる場合は、キュアサイトの種類によって、または多層ブロー成形品などの用途により適宜選択すればよい。
【0067】
架橋系としては、ポリオール架橋系、有機過酸化物架橋系およびポリアミン架橋系のいずれも採用できる。
【0068】
ここで、ポリオール架橋系により架橋してなる場合は、架橋点に炭素−酸素結合を有しており、圧縮永久歪みが小さく、成形性も良い、という特徴がある点で好適である。
【0069】
有機過酸化物架橋系により架橋してなる場合は、架橋点に炭素−炭素結合を有しているので、架橋点に炭素−酸素結合を有するポリオール架橋系および炭素−窒素二重結合を有するポリアミン架橋系に比べて、耐薬品性および耐スチーム性に優れているという特徴がある。
【0070】
ポリアミン架橋により架橋してなる場合は、架橋点に炭素−窒素二重結合を有しているものであり、動的機械特性に優れているという特徴がある。しかし、ポリオール架橋系または有機過酸化物架橋系架橋剤を用いて架橋してなる場合に比べて、圧縮永久歪みが大きくなる傾向がある。
【0071】
したがって、本発明では、ポリオール架橋系または有機過酸化物架橋系の架橋剤を用いることが好ましく、ポリオール架橋系の架橋剤を用いることがより好ましい。
【0072】
本発明における架橋剤は、有機過酸化物、ポリアミン化合物およびポリヒドロキシ化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0073】
ポリアミン化合物としては、たとえば、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどのポリアミン化合物があげられる。これらの中でも、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0074】
ポリヒドロキシ化合物としては、従来、フッ素ゴムの架橋剤として知られている化合物を用いることができ、特に、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。
【0075】
上記ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、たとえば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’―ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールAなどがあげられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析した場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。
【0076】
有機過酸化物としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどをあげることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3が好ましい。
【0077】
これらの中でも、得られる成形品などの圧縮永久歪みが小さく、成形性に優れているという点から、ポリヒドロキシ化合物が好ましく、耐熱性が優れることからポリヒドロキシ芳香族化合物がより好ましく、ビスフェノールAFがさらに好ましい。
【0078】
また、ポリオール架橋系においては、ポリオール系架橋剤と併用して、通常、架橋促進剤を用いる。架橋促進剤を用いると、フッ素ゴム主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の形成を促進することにより架橋反応を促進することができる。
【0079】
ポリオール架橋系の架橋促進剤としては、一般にオニウム化合物が用いられる。オニウム化合物としては特に限定されず、たとえば、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、1官能性アミン化合物などがあげられ、これらの中でも第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩が好ましい。
【0080】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、たとえば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8―ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド(以下、DBU−Bとする)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7―ウンデセニウムクロライド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライドなどがあげられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、DBU−Bが好ましい。
【0081】
また、第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、たとえば、テトラブチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロライド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロライドなどをあげることができ、これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(BTPPC)が好ましい。
【0082】
また、架橋促進剤として、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
【0083】
有機過酸化物架橋促進剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルフタルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどがあげられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0084】
架橋剤(C)の配合量としては、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜5重量部である。架橋剤(C)が、0.1重量部未満であると、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)の架橋が充分に進行せず、得られる多層ブロー成形品の耐熱性および耐油性が低下する傾向があり、10重量部をこえると、得られる熱可塑性重合体組成物(X)の成形加工性が低下する傾向がある。
【0085】
架橋促進剤の配合量としては、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)100重量部に対して、0.01〜8重量部であることが好ましく、より好ましくは0.02〜5重量部である。架橋促進剤が、0.01重量部未満であると、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)の架橋が充分に進行せず、得られる多層ブロー成形品の耐熱性および耐油性が低下する傾向があり、8重量部をこえると、得られる熱可塑性重合体組成物(X)の成形加工性が低下する傾向がある。
【0086】
本発明で用いる熱可塑性重合体組成物(X)における架橋フッ素ゴム(B)は、フッ素樹脂(A)および架橋剤(C)の存在下、少なくとも1種のフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)を溶融条件下にて動的に架橋処理したものである。
【0087】
ここで、動的に架橋処理するとは、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、押出機等を使用して、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)を溶融混練と同時に動的に架橋させることをいう。これらの中でも、高剪断力を加えることができる点で、二軸押出機等の押出機であることが好ましい。動的に架橋処理することで、フッ素樹脂(A)と架橋フッ素ゴム(B)の相構造を制御することができる。
【0088】
また、溶融条件下とは、フッ素樹脂(A)、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)が溶融する温度下を意味する。溶融する温度は、それぞれフッ素樹脂(A)およびフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)のガラス転移温度および/または融点により異なるが、120〜330℃であることが好ましく、130〜320℃であることがより好ましい。温度が、120℃未満であると、フッ素樹脂(A)とフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)の間の分散が粗大化する傾向があり、330℃をこえると、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)が熱劣化する傾向がある。
【0089】
得られた熱可塑性重合体組成物(X)は、フッ素樹脂(A)が連続相を形成し、かつ架橋フッ素ゴム(B)が分散相を形成する構造、またはフッ素樹脂(A)と架橋フッ素ゴム(B)が共連続を形成する構造を有することができるが、その中でも、フッ素樹脂(A)が連続相を形成し、かつ架橋フッ素ゴム(B)が分散相を形成する構造を有することが好ましい。
【0090】
フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)が、分散当初マトリックスを形成していた場合でも、架橋反応の進行に伴い、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)が架橋フッ素ゴム(B)となることで溶融粘度が上昇し、架橋フッ素ゴム(B)が分散相になる、またはフッ素樹脂(A)との共連続相を形成するものである。
【0091】
また、熱可塑性重合体組成物(X)は、フッ素樹脂(A)が連続相を形成し、かつ架橋フッ素ゴム(B)が分散相を形成する構造の一部に、フッ素樹脂(A)と架橋フッ素ゴム(B)との共連続構造を含んでいても良い。
【0092】
このような構造を形成すると、本発明の多層ブロー成形品は、優れた燃料バリア性、耐熱性、耐薬品性および耐油性を示すと共に、良好な成形加工性を有することとなる。その際、架橋フッ素ゴム(B)の平均分散粒子径は、0.01〜30μmであることが好ましく、0.1〜20μmであることがより好ましく、0.1〜10μmであることがさらに好ましい。平均分散粒子径が、0.01μm未満であると、流動性が低下する傾向があり、30μmをこえると、得られる多層ブロー成形品の強度が低下する傾向がある。
【0093】
本発明の熱可塑性重合体組成物(X)において、フッ素樹脂(A)と架橋フッ素ゴム(B)との組成比は、フッ素樹脂(A)10〜95重量%、架橋フッ素ゴム(B)90〜5重量%であることが好ましく、フッ素樹脂(A)20〜90重量%、架橋フッ素ゴム(B)80〜10重量%であることがより好ましい。フッ素樹脂(A)が10重量%未満であると、得られる多層ブロー成形品の燃料バリア性が悪化し、成形加工性が低下する傾向があり、95重量%をこえると、得られる多層ブロー成形品の柔軟性が低下する傾向がある。
【0094】
熱可塑性重合体組成物(X)のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜50g/10分であることが好ましく、1〜25g/10分であることがより好ましい。MFRが0.1g/10分未満であると、流動性が悪化し、成形加工性が低下する傾向がある。ここで、MFRは、(株)東洋精機製作所製メルトフローレート測定装置を使用して、297℃、5000g荷重の条件下にて実施する時の値を示す。
【0095】
そして、多層ブロー成形品は、燃料周辺部品への使用を考慮した場合、燃料透過性が80g・mm/m2・day以下であることが好ましく、60g・mm/m2・day以下であることがより好ましく、30g・mm/m2・day以下であることがさらに好ましい。燃料透過性の下限値については、特に限定されるものではなく、小さければ小さい程好ましいものであり、0g・mm/m2・dayとなることが好ましい。
【0096】
ここで、燃料透過性の測定は、防湿包装材料の透湿度試験方法におけるカップ法に準ずる方法にて実施した。ここで、カップ法とは、JIS Z 0208に規定された透湿度試験方法であり、一定時間に単位面積の膜状物質を通過する水蒸気量を測定する方法である。本発明においては、このカップ法に準じて、燃料透過性を測定するものである。具体的方法としては、20mLの容積を有するSUS製容器(開放部面積1.26×10-32)に模擬燃料であるCE10(トルエン/イソオクタン/エタノール=45/45/10容量%)を18mL入れて、シート状試験片を容器開放部にセットして密閉することで、試験体とする。該試験体を恒温装置(60℃)に入れ、試験体の重量を測定し、単位時間あたりの重量減少が一定となったところで下記の式により燃料透過性を求める。
【0097】
【数1】

【0098】
また、熱可塑性重合体組成物(X)は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンなどの他の重合体、炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化チタン、カーボンブラック、硫酸バリウムなどの無機充填材、顔料、難燃剤、滑剤、光安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、発泡剤、香料、オイル、柔軟化剤などを、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で添加することができる。
【0099】
本発明は、熱可塑性重合体組成物(X)と熱可塑性樹脂(Y)を積層してなるブロー成形を提供するものである。
【0100】
熱可塑性樹脂(Y)としては、特に限定されるものではないが、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂およびフッ素系樹脂からなる群から選ばれる一つ以上の重合体であることが好ましく、これらの中でも高強度や成形加工性の点から、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリアミド系樹脂が特に好ましい。
【0101】
ポリアミド系樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/66、ポリアミド46、ポリアミド6T、ポリアミド9T、メタキシリレンジアミン/アジピン酸共重合体、および、これらのうち少なくとも2種のブレンド物等があげられ、ポリアミド6、ポリアミド66が特に好ましい。
【0102】
熱可塑性重合体組成物(X)の層の厚みが、10〜500μmであることが好ましく、20〜300μmであることがより好ましい。10μm未満であると燃料バリア性が低下する傾向があり、500μmをこえると柔軟性が低下する傾向がある。
【0103】
また、熱可塑性樹脂(Y)の層の厚みは、50〜1000μmであることが好ましく、70〜700μmであることがより好ましい。50μm未満であると強度が低下する傾向があり、1000μmをこえると柔軟性が低下する傾向がある。
【0104】
本発明の多層ブロー成形品においては、熱可塑性重合体組成物(X)から形成される層と熱可塑性樹脂(Y)から形成される層との間に接着剤層を介在させてもよい。接着剤層を介在させることによって、熱可塑性重合体組成物(X)から形成される層と熱可塑性樹脂(Y)から形成される層とを強固に接合一体化させることができる。接着剤層において使用される接着剤としては、ジエン系重合体の酸無水物変性物;ポリオレフィンの酸無水物変性物;高分子ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール化合物とアジピン酸等の二塩基酸とを重縮合して得られるポリエステルポリオール;酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体の部分ケン化物など)とポリイソシアネート化合物(例えば、1,6−ヘキサメチレングリコール等のグリコール化合物と2,4−トリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物とのモル比1対2の反応生成物;トリメチロールプロパン等のトリオール化合物と2,4−トリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物とのモル比1対3の反応生成物など)との混合物;等を使用することができる。
【0105】
また、熱可塑性重合体組成物(X)から形成される層と熱可塑性樹脂(Y)から形成される層からなる積層体は、特に限定されないが、熱可塑性重合体組成物(X)から形成される1層と熱可塑性樹脂(Y)から形成される1層からなる2層、または熱可塑性重合体組成物(X)から形成される1層と1種以上の熱可塑性樹脂(Y)から形成される2層からなる3層の構成を有することが、多層ブロー成形品の製造容易性の点から好ましい。
【0106】
また、多層ブロー成形方法としては、特に限定させるものではなく、通常のブロー成形方法を採用することができる。
【0107】
例えば、本発明の熱可塑性重合体組成物(X)からなる層、および1種以上の熱可塑性樹脂(Y)からなる層を含有する多層のパリソン(ブロー前の予備成形物)を製造し、該パリソンが冷却する前に金型内部にセットすると共に、空気、窒素等のガスをブローすることにより金型内でパリソンを膨張させて、本発明の多層ブロー成形品を得ることができ、ダイレクトブロー成形、コールドパリソン式ブロー成形、射出ブロー成形等のブロー成形方法を採用することができる。
【0108】
本発明の多層ブロー成形品は上述の各種用途に好適に用いることができ、燃料配管、燃料容器、燃料タンク、薬液容器として有用である。
【実施例】
【0109】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0110】
<燃料透過性の測定>
実施例または比較例で得られたブロー成形品からシートを切り出し、20mLの容積を有するSUS製容器(開放部面積1.26×10-32)に模擬燃料であるCE10(トルエン/イソオクタン/エタノール=45/45/10容量%)を18mL入れて、前記シート状試験片を容器開放部にセットして密閉することで、試験体とする。該試験体を恒温装置(60℃)に入れ、試験体の重量を測定し、単位時間あたりの重量減少が一定となったところで下記の式により燃料透過係数を求めた。
【0111】
【数2】

【0112】
<接着性の測定>
実施例または比較例で得られたブロー成形品から1cm幅のテストピースを切り取り、テンシロン万能試験機にて、25mm/分の速度で180°剥離試験を行い、伸び量−引っ張り強度グラフにおける極大5点平均を層間の接着強度として求めた。
【0113】
<引張弾性率の測定>
実施例または比較例で得られたブロー成形品からASTM V型ダンベル状試験片を打ち抜いた。得られたダンベル状試験片を用いて、テンシロン万能試験機にて、ASTM D638に準じて、50mm/分の条件下で、23℃における引張弾性率を測定した。
【0114】
製造例1
フッ素ゴム(ビニリデンフルオライド50モル%、テトラフルオロエチレン20モル%およびヘキサフルオロプロピレン30モル%からなる3元系ゴム;100℃におけるムーニー粘度=88)100重量部に、架橋剤として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(ダイキン工業(株)製「ビスフェノールAF」)2.0重量部、架橋促進剤としてベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(BTPPC、北興化学工業(株)製)1.0重量部、酸化マグネシウム(キョーワマグ150 協和化学工業(株))3重量部を添加し、8インチオープンロールを用いて混練し、フッ素ゴム組成物を得た。
【0115】
次に、該フッ素ゴム組成物10重量部、ならびに反応性官能基を有するテトラフルオロエチレン/エチレン/ヘキサフルオロエチレン共重合体(テトラフルオロエチレン:エチレン:ヘキサフルオロエチレン=46.5:44.0:9.5モル%;融点194.3℃;分子末端に有するカルボニルジオキシ基の主鎖炭素106個当たりの個数255個)90重量部を、二軸押出機(φ=15mm、L/D=60)に供給して、シリンダー温度260℃およびスクリュー回転数300rpmの条件下に溶融混練し、熱可塑性重合体組成物(X−1)のペレットを製造した。
【0116】
製造例2
フッ素ゴム組成物を30重量部、反応性官能基を有するテトラフルオロエチレン/エチレン/ヘキサフルオロエチレン共重合体を70重量部に変更し、製造例1と同様の方法にて熱可塑性重合体組成物(X−2)のペレットを製造した。
【0117】
製造例3
フッ素ゴム組成物を50重量部、反応性官能基を有するテトラフルオロエチレン/エチレン/ヘキサフルオロエチレン共重合体を50重量部に変更し、製造例1と同様の方法にて熱可塑性重合体組成物(X−3)のペレットを製造した。
【0118】
実施例1
多層ダイレクトブロー装置を用いて、熱可塑性重合体組成物(X−1)をシリンダー温度260℃で、ポリアミド樹脂(宇部興産(株)製「UBEナイロン1013B」)をシリンダー温度250℃溶融させ、次に其々の溶融物を別々にダイヘッドに流入させ、ダイヘッド部で各溶融物の層を重ねあわせた後、パリソンを押出、金型で挟み込んでエアーにてブローを行うことにより、内層:熱可塑性重合体組成物(X−1)と外層:ポリアミド樹脂が積層された中空のブロー成形品を得た。各層の厚みは、熱可塑性重合体組成物(X−1)の層が80μm厚、ポリアミド樹脂の層が200μm厚であった。
【0119】
得られたブロー成形品を使用して、上記した方法に従い、燃料透過性、接着性および引張弾性率を測定した結果を表1に示す。
【0120】
実施例2
熱可塑性重合体組成物(X−1)を、熱可塑性重合体組成物(X−2)に変更し、実施例1と同様の方法にてブロー成形品を作製し、上記した方法に従い、燃料透過性、接着性および引張弾性率を測定した結果を表1に示す。
【0121】
実施例3
熱可塑性重合体組成物(X−1)を、熱可塑性重合体組成物(X−3)に変更し、実施例1と同様の方法にてブロー成形品を作製し、上記した方法に従い、燃料透過性、接着性および引張弾性率を測定した結果を表1に示す。
【0122】
比較例1
ダイレクトブロー装置を用いて、ポリアミド樹脂(宇部興産(株)製「UBEナイロン1013B」)をシリンダー温度250℃溶融させ、ダイヘッドから溶融樹脂のパリソンを押出、金型で挟み込んでエアーにてブローを行うことにより、ポリアミド樹脂の単層からなるブロー成形品を得た。層の厚みは、200μm厚であった。
【0123】
得られたブロー成形品を使用して、上記した方法に従い、燃料透過性、接着性および引張弾性率を測定した結果を表1に示す。
【0124】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂(A)10〜95重量%および架橋フッ素ゴム(B)90〜5重量%を含む熱可塑性重合体組成物(X)と、熱可塑性樹脂(Y)を積層してなる多層ブロー成形品であって、
フッ素樹脂(A)が、融点120〜330℃の含フッ素エチレン性重合体(a)を含み、架橋フッ素ゴム(B)が、フッ素樹脂(A)および架橋剤(C)の存在下、少なくとも1種のフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)を溶融条件下にて動的に架橋処理したものである多層ブロー成形品。
【請求項2】
フッ素樹脂(A)が、分子末端および/または分子側鎖に官能基を有する構造である請求項1記載の多層ブロー成形品。
【請求項3】
含フッ素エチレン性重合体(a)が、
(a−1)テトラフルオロエチレンおよびエチレンの共重合体、
(a−2)テトラフルオロエチレンと、下記一般式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は、−CF3または−ORf2であり、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物の共重合体、
(a−3)テトラフルオロエチレン単位19〜90モル%、エチレン単位9〜80モル%、および下記一般式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は、−CF3または−ORf2であり、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表わす)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位1〜72モル%からなる共重合体、
(a−4)ポリフッ化ビニリデン、および
(a−5)クロロトリフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレンの共重合体
からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体である請求項1または2記載の多層ブロー成形品。
【請求項4】
架橋フッ素ゴム(B)のフッ素濃度が、68重量%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の多層ブロー成形品。
【請求項5】
フッ素ゴム(b−1)が、ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴムである請求項1〜4のいずれかに記載の多層ブロー成形品。
【請求項6】
熱可塑性樹脂(Y)が、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂およびフッ素系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体である請求項1〜5のいずれかに記載の多層ブロー成形品。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の多層ブロー成形品から形成される燃料配管。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の多層ブロー成形品から形成される燃料容器。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の多層ブロー成形品から形成される燃料タンク。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の多層ブロー成形品から形成される薬液容器。

【公開番号】特開2008−87402(P2008−87402A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272811(P2006−272811)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】