説明

多層プリフォームの検査装置

【課題】植物油等の油分を含む液体中に多層プリフォームを浸漬しても、あるいは植物油等の油分を含まない水等の液体中に多層プリフォームを浸漬しても、中間樹脂層を可視化してPET樹脂層と中間樹脂層の明暗差を顕著にすることができる照明装置を備えた多層プリフォームの検査装置を提供する。
【解決手段】多層プリフォーム1を液体中に浸漬した透明容器20を挟むように照明装置2と撮像装置10とを対向して設け、照明装置2は、照明3と、照明3の前面に設置された拡散板4と、拡散板4に隣接して設置されるとともに拡散板4の延長線上に配置された光が透過しないか又は光が透過しにくい板5とからなり、多層プリフォーム1の軸心Oと、拡散板4と光が透過しないか又は光が透過しにくい板5の境界部6は、撮像装置10の光軸Lx上に位置するか又は光軸Lxに近接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プリフォームの検査装置に係り、特に多層プリフォームの中間樹脂層の充填位置が適切か否かを撮像により検査する多層プリフォームの検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、その利便性等から各種のペットボトルが飲料の充填用容器として多用されている。ペットボトルは、まずポリエチレンテレフタレート(PET)を原料としてプリフォームと呼ばれる概略試験管形状に成形し、プリフォームを延伸ブロー成形することにより製作している。ペットボトルには、酸素ガスバリア性や炭酸ガスバリア性を確保するためにガスバリア性樹脂層を中間樹脂層として配置した多層のペットボトルがある。ペットボトルの所定範囲に、このバリア層としての中間樹脂層が存在しないと、わずかなガスの透過によってペットボトルの内容物の性質が変化してしまう恐れがある。そのため、ペットボトルの予備成型品であるプリフォームの段階で、この中間樹脂層が所定範囲にあるか否かを検査する必要がある。
【0003】
多層プリフォームの中間樹脂層を空気中で可視化することは困難であるため、プリフォームの屈折率に近い植物油等の液体中にプリフォームを浸漬して中間樹脂層を可視化しようとする試みもなされている。例えば、特開2008−100439号公報(特許文献1)等においては、コーン油やオリーブ油等の植物油を含む天然油脂やシリコンオイル等の比較的高い屈折率を有した液体中にプリフォームを浸漬することにより、中間樹脂層を含む各樹脂層を可視化して目視により判別することができることが開示されている。なお、特許文献1には、「水やメタノール、エタノールなどの屈折率が比較的低い液体に浸漬した場合には、多層プリフォームの各樹脂層の配置状態を判別することはできない。」と記載されている(段落〔0026〕〔0074〕)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−100439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、多層プリフォームの中間樹脂層を空気中で可視化することは困難であるため、プリフォームの屈折率に近い植物油等を含み屈折率が比較的高い液体中にプリフォームを浸漬して中間樹脂層を可視化する試みがなされていたが、プリフォームを植物油等を含む液体中に浸漬する方法では、検査後にプリフォームを洗浄する洗浄工程が必須となり、検査工程を自動化するための検査装置を構成する際に不利になっていた。
【0006】
本発明者らは、植物油等の油分を含む液体中に多層プリフォームを浸漬しても、あるいは植物油等の油分を含まない水等の液体中に多層プリフォームを浸漬しても、中間樹脂層を可視化して撮像により検査することができる照明撮像系を見出すために種々の実験を繰り返し行った結果、以下の知見を得た。
すなわち、多層プリフォームを植物油等の油分を含む液体中に浸漬して中間樹脂層を可視化するだけでは、PET樹脂層と中間樹脂層の明暗差を顕著とすることはできないことを見出した。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、植物油等の油分を含む液体中に多層プリフォームを浸漬しても、あるいは植物油等の油分を含まない水等の液体中に多層プリフォームを浸漬しても、中間樹脂層を可視化してPET樹脂層と中間樹脂層の明暗差を顕著にすることができる照明装置を備えた多層プリフォームの検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明の第1の態様は、内外の樹脂層の中に中間樹脂層が充填された構造を有する多層プリフォームの検査装置において、前記多層プリフォームを液体中に浸漬した透明容器を挟むように照明装置と撮像装置とを対向して設け、前記照明装置は、照明と、該照明の前面に設置された拡散板と、該拡散板に隣接して設置されるとともに該拡散板の延長線上に配置された光が透過しないか又は光が透過しにくい板とからなり、前記多層プリフォームの軸心と、前記拡散板と前記光が透過しないか又は光が透過しにくい板の境界部は、前記撮像装置の光軸上に位置するか又は前記光軸に近接していることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、照明からの光は拡散板を透過する際に拡散され、拡散板からの拡散光は、透明容器および透明容器内の液体を透過して多層プリフォームに入射される。この場合、照明と多層プリフォームとは近接しているため、照明からの拡散光は、多層プリフォームの拡散板に面した部分に主として入射するが、多層プリフォームの光が透過しないか又は光が透過しにくい板に面した部分にはごく一部が入射する。そして、多層プリフォームを透過し、さらに透明容器内の液体および透明容器を透過した光は、撮像装置に入射し、この入射光は撮像装置により撮像される。
【0010】
多層プリフォームは空気中よりもPET樹脂層の屈折率に近い液体中に浸漬されているため、プリフォーム表面での光の屈折が小さく、そのため、プリフォーム断面内を光が透過し易い。プリフォーム断面内を透過する光には、PET樹脂層を透過する光と中間樹脂層を透過する光があるが、両樹脂層における屈折率が異なるため、撮像装置により撮像した画像は、PET樹脂層と中間樹脂層との間に明度差がある画像となる。
【0011】
画像中でPET樹脂層と中間樹脂層の明暗差が顕著となっている。画像の一方側の半分でPET樹脂層が明るくなるのは、主に光軸から所定の範囲にある照明と拡散板からの照明光による。また、画像の一方側の半分で中間樹脂層が暗くなるのは、主に光軸から所定の範囲の遮光による。
なお、照明装置、多層プリフォーム、透明容器等の左右の対称性から考えて、画像の他方側の半分でPET樹脂層が暗くなるのは、主に光軸から所定の範囲の遮光による。また、画像の他方側の半分で中間樹脂層が明るくなるのは、主に光軸から所定の範囲にある照明と拡散板からの照明光によることが推測される。
【0012】
本発明の第2の態様は、内外の樹脂層の中に中間樹脂層が充填された構造を有する多層プリフォームの検査装置において、前記多層プリフォームを液体中に浸漬した透明容器を挟むように照明装置と撮像装置とを対向して設け、前記照明装置は、照明と、該照明の前面に設置された拡散板と、該拡散板の前方に配置されたリニアフレネルレンズとからなり、前記多層プリフォームの軸心と、前記リニアフレネルレンズの中心と、前記照明の中心は、前記撮像装置の光軸上に位置するか又は前記光軸に近接していることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、照明からの光は拡散板を透過する際に拡散され、拡散板からの拡散光は、リニアフレネルレンズにより集光されて平行光になり、この平行光が透明容器および透明容器内の液体を透過して多層プリフォームに入射される。そして、多層プリフォームを透過し、さらに透明容器内の液体および透明容器を透過した光は、撮像装置に入射し、この入射光は撮像装置により撮像される。
【0014】
多層プリフォームは空気中よりもPET樹脂層の屈折率に近い液体中に浸漬されているため、プリフォーム表面での光の屈折が小さく、そのため、プリフォーム断面内を光が透過し易い。プリフォーム断面内を透過する光には、PET樹脂層を透過する光と中間樹脂層を透過する光があるが、両樹脂層における屈折率が異なるため、撮像装置により撮像した画像は、PET樹脂層と中間樹脂層との間に明度差がある画像となる。
画像中で左右の中間樹脂層が明るくなるのは、リニアフレネルレンズの中心付近からの光で中間樹脂層を通る一部の光がカメラ画角に入るためと推測される。
【0015】
本発明の第3の態様は、内外の樹脂層の中に中間樹脂層が充填された構造を有する多層プリフォームの検査装置において、前記多層プリフォームを液体中に浸漬した透明容器を挟むように照明装置と撮像装置とを対向して設け、前記照明装置は、照明と、該照明の前面に設置された拡散板とからなり、前記多層プリフォームの軸心と、前記照明の中心は、前記撮像装置の光軸上に位置するか又は前記光軸に近接していることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、照明からの光は拡散板を透過する際に拡散され、拡散板からの拡散光は、透明容器および透明容器内の液体を透過して多層プリフォームに入射される。そして、多層プリフォームを透過し、さらに透明容器内の液体および透明容器を透過した光は、撮像装置に入射し、この入射光は撮像装置により撮像される。
【0017】
多層プリフォームは空気中よりもPET樹脂層の屈折率に近い液体中に浸漬されているため、プリフォーム表面での光の屈折が小さく、そのため、プリフォーム断面内を光が透過し易い。プリフォーム断面内を透過する光には、PET樹脂層を透過する光と中間樹脂層を透過する光があるが、両樹脂層における屈折率が異なるため、撮像装置により撮像した画像は、PET樹脂層と中間樹脂層との間に明度差がある画像となる。
画像中で左右の中間樹脂層が明るくなるのは、照明および拡散板からの光で中間樹脂層を通る一部の光がカメラ画角に入るためと推測される。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、前記照明は、LEDを縦横に配列したLED照明からなることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記液体は水であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、植物油等の油分を含む液体中に多層プリフォームを浸漬しても、あるいは植物油等の油分を含まない水等の液体中に多層プリフォームを浸漬しても、中間樹脂層を可視化してPET樹脂層と中間樹脂層の明暗差が顕著な画像を形成することができる。したがって、得られた画像を処理することにより、中間樹脂層の充填位置を検出することができる。
また、本発明によれば、多層プリフォームを水に浸漬して多層プリフォームを撮像して検査することにより、検査後にプリフォームを洗浄する洗浄工程が不要となり、検査後に水分を乾燥する乾燥工程のみで済み、検査工程を自動化するための検査装置を構成する際にきわめて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明に係る多層プリフォームの検査装置において水を満たした透明容器内に検査対象の多層プリフォームを浸漬した状態を示す模式的縦断面図である。
【図2】図2は、多層プリフォームを撮影した画像であり、透明容器に水を満たした場合の画像である。
【図3】図3は、多層プリフォームを撮影した画像であり、透明容器に植物油を満たした場合の画像である。
【図4】図4は、本発明に係る多層プリフォームの検査装置の第1の態様を示す模式的平面図である。
【図5】図5は、図4に示す装置構成の検査装置を用いて多層プリフォームを撮影した画像である。
【図6】図6は、本発明に係る多層プリフォームの検査装置の第2の態様を示す模式的平面図である。
【図7】図7は、図6に示す装置構成の検査装置を用いて多層プリフォームを撮影した画像である。
【図8】図8は、本発明に係る多層プリフォームの検査装置の第3の態様を示す模式的平面図である。
【図9】図9は、図8に示す装置構成の検査装置を用いて多層プリフォームを撮影した画像である。
【図10】図10は、多層プリフォームを植物油に浸漬して図4に示す装置構成の検査装置を用いて多層プリフォームを撮影した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る多層プリフォームの検査装置の実施形態について図1乃至図10を参照して説明する。なお、図1乃至図10において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明に係る多層プリフォームの検査装置において水を満たした透明容器内に検査対象の多層プリフォームを浸漬した状態を示す模式的縦断面図である。図1に示すように、ガラス製の容器からなる透明容器20内には水が満たされており、検査対象の多層プリフォーム1は、プリフォーム保持具30により保持されて水に浸漬されている。
【0022】
本発明の構成を創案する際に、本発明者らが行った実験結果についてまず説明する。
図1に示すように多層プリフォーム1を水に浸漬した状態で、透過照明から多層プリフォーム1に投光し、多層プリフォーム1を透過した透過光をCCDカメラにより撮影した。
図2および図3は、多層プリフォーム1を撮影した画像である。図2は透明容器20に水を満たした場合の画像であり、図3は透明容器20に植物油を満たした場合の画像である。
図2および図3に示す画像から明らかなように、PET樹脂層と中間樹脂層とは、明暗差がほとんどなく、画像から両者を峻別することはできない。そのため、本発明者らは、多層プリフォーム1におけるPET樹脂層と中間樹脂層の明暗差が顕著となるように、多層プリフォーム1に投光する照明装置について種々の構成を創案し、これらの構成を備えた検査装置を用いて得られた画像を比較することにより、本発明の構成を想到したものである。
【0023】
図4は、本発明に係る多層プリフォームの検査装置の第1の態様を示す模式的平面図である。図4に示すように、透明容器20内の水に浸漬された検査対象の多層プリフォーム1を検査する検査装置は、多層プリフォーム1を挟むように配置された照明装置2と撮像装置10とから構成されている。照明装置2は、LED照明3と、LED照明3の前面に設置された拡散板4と、拡散板4の延長線上に設置された黒色板5とから構成されている。撮像装置10はCCDカメラから構成されており、撮像装置10は画像処理装置(図示せず)に接続されている。
【0024】
照明装置2におけるLED照明3は、多数のLEDを縦横に配列することにより構成されている。LED照明3の前面に設置された拡散板4は、進入した光線をあらゆる角度に屈折させる作用を有する材質からなる板状体で構成され、樹脂材(例えば、アクリル樹脂)に光を屈折される粒子を添加して成形した板材からなっている。また、拡散板4の延長線上に配置された黒色板5は、光が透過しない黒色の板状体で構成され、拡散板4の前面と黒色板5の前面とは、同一面上に位置している。なお、黒色板5は白色板であってもよく、光が透過しにくい板であればよい。
【0025】
一方、CCDカメラからなる撮像装置10の光軸Lxは、検査対象の多層プリフォーム1の軸心Oを通るように設置されている。また、撮像装置10の光軸Lxと、拡散板4と黒色板5の境界部6およびLED照明3の端部とは、略一直線になるように設定されている。すなわち、多層プリフォーム1の軸心Oと、拡散板4と黒色板5の境界部6は、撮像装置10の光軸Lx上に位置するか又は光軸Lxに近接している。
【0026】
次に、多層プリフォーム1を基準として各機器の配置関係について説明する。
図5に示した画像を撮像した際の条件は以下の通りである。多層プリフォーム1は直径22mmのプリフォームであり、多層プリフォーム1を水に浸漬するための透明容器20は直径55mmの容器である。多層プリフォーム1の軸心Oから拡散板4までの距離L1−1は、34mmに設定されている。すなわち、多層プリフォーム1とLED照明3、拡散板4とは、近接して配置されている。多層プリフォーム1の軸心Oから撮像装置10までの距離L1−2は210mmに設定されている。LED照明3および拡散板4の幅W1−1は、80mmに設定されている。すなわち、LED照明3および拡散板4の幅W1−1は、多層プリフォーム1の直径に比較して大きく設定されている。黒色板5の幅は、LED照明3および拡散板4の幅と概略同一寸法に設定されている。
【0027】
多層プリフォーム1の軸心Oから撮像装置10までの距離L1−2は、多層プリフォームをより拡大して撮像する必要がある場合には、より小さな値となる。すなわち、多層プリフォーム1とカメラ10を近接させる。
多層プリフォーム1の軸心Oから拡散板4までの距離L1−1とLED照明3および拡散板4の幅W1−1には関連が有る。L1−1を34mmとするなら、W1−1は24mm程度あれば図5とほぼ同様な画像が得られるが、24mmから徐々に幅を狭くすると右側の明るいPET樹脂層の一部が暗くなり検査に好ましくない状態となる。W1−1を24mmとするとL1−1が40mmを越えるあたりから、右側の明るいPET樹脂層の一部が暗くなり検査に好ましくない状態となる。
なお、容器20は直径55mmの円筒形であるが、直径を大きくしても小さくしても、形状を方形としても、L1−1、W1−1の調整により図5相当の画像を得ることができる。
【0028】
次に、図4に示すように構成された多層プリフォームの検査装置の作用を説明する。
LED照明3からの光は拡散板4を透過する際に拡散され、拡散板4からの拡散光は、透明容器20および透明容器20内の水を透過して多層プリフォーム1に入射される。この場合、LED照明3と多層プリフォーム1とは近接しているため、LED照明3からの拡散光は、多層プリフォーム1の左側半分(カメラ側から見て)に主として入射するが、多層プリフォーム1の右側半分(カメラ側から見て)にはごく一部が入射する。そして、多層プリフォーム1を透過し、さらに透明容器20内の水および透明容器20を透過した光は、撮像装置10に入射し、この入射光はCCDカメラからなる撮像装置10により撮像される。
多層プリフォーム1は空気中よりもPET樹脂層の屈折率に近い水中に浸漬されているため、プリフォーム表面での光の屈折が小さく、そのため、プリフォーム断面内を光が透過し易い。プリフォーム断面内を透過する光には、PET樹脂層を透過する光と中間樹脂層を透過する光があるが、両樹脂層における屈折率が異なるため、撮像装置10により撮像した画像は、PET樹脂層と中間樹脂層との間に明度差がある画像となる。
【0029】
図5は、図4に示す装置構成の検査装置を用いて多層プリフォーム1を撮影した画像である。図5に示すように、多層プリフォーム1の左側半分の画像中に、PET樹脂層に相当する暗い画像部分と、この暗い画像部分の中段部から上方に延びている中間樹脂層に相当するやや明るい画像部分とが形成されている。すなわち、画像中でPET樹脂層と中間樹脂層の明暗差は顕著となる。
一方、多層プリフォーム1の右側半分の画像中に、PET樹脂層に相当するやや明るい画像部分と、このやや明るい画像部分の中段部から上方に延びている中間樹脂層に相当するやや暗い画像部分とが形成されている。すなわち、画像中でPET樹脂層と中間樹脂層の明暗差は顕著となる。
【0030】
画像中でPET樹脂層と中間樹脂層の明暗差が顕著となっている。画像の右半分でPET樹脂層が明るくなるのは、主に光軸Lxから左に2mmから24mm、幅22mmの範囲にあるLED照明3と拡散板4からの照明光による。また、画像の右半分で中間樹脂層が暗くなるのは、主に光軸Lxから右に12mm、幅12mmの範囲の遮光による。
なお、照明装置2、多層プリフォーム1、透明容器20等の左右の対称性から考えて、画像の左半分でPET樹脂層が暗くなるのは、主に光軸Lxから左に2mmから24mm、幅22mmの範囲の遮光による。また、画像の左半分で中間樹脂層が明るくなるのは、主に光軸Lxから右に12mm、幅12mmの範囲にあるLED照明3と拡散板4からの照明光によることが推測される。
【0031】
図5に示す画像を画像処理装置(図示せず)により処理する。この場合、左側の画像部分においては画像を走査して暗い背景の中にやや明るい画像部分を識別することにより中間樹脂層の充填位置を検出することができる。右側の画像部分においてはやや明るい背景の中に暗い画像部分を識別することにより中間樹脂層の充填位置を検出することができる。
【0032】
図6は、本発明に係る多層プリフォームの検査装置の第2の態様を示す模式的平面図である。図6に示すように、透明容器20内の水に浸漬された検査対象の多層プリフォーム1を検査する検査装置は、多層プリフォーム1を挟むように配置された照明装置2と撮像装置10とから構成されている。照明装置2は、LED照明13と、LED照明13の前面に設置された拡散板14と、拡散板14の前方に配置されたリニアフレネルレンズ15とから構成されている。撮像装置10はCCDカメラから構成されており、撮像装置10は画像処理装置(図示せず)に接続されている。
【0033】
照明装置2におけるLED照明13は、多数のLEDを縦横に配列することにより構成されている。LED照明13の前面に設置された拡散板14は、進入した光線をあらゆる角度に屈折させる作用を有する材質からなる板状体で構成され、樹脂材(例えば、アクリル樹脂)に光を屈折される粒子を添加して成形した板材からなっている。
【0034】
リニアフレネルレンズ15は、シリンドリカルレンズ(かまぼこ形状のレンズ)を平行直線状の溝で分割したレンズであり、のこぎり状の断面を持つレンズであり、一方向だけ集光や拡散ができる機能を有している。本発明においては、リニアフレネルレンズ15に形成された平行直線状の溝が垂直方向になるようにリニアフレネルレンズ15を配置して、LED照明13からの拡散光を平行光に集光するようにしている。
【0035】
一方、CCDカメラからなる撮像装置10の光軸Lxは、検査対象の多層プリフォーム1の軸心Oを通るように設置されている。また、撮像装置10の光軸Lxと、リニアフレネルレンズ15の中心およびLED照明13の中心とは、略一直線になるように設定されている。すなわち、多層プリフォーム1の軸心Oと、リニアフレネルレンズ15の中心と、LED照明13の中心は、撮像装置10の光軸Lx上に位置するか又は光軸Lxに近接している。
【0036】
次に、多層プリフォーム1を基準として各機器の配置関係について説明する。
図7に示した画像を撮像した際の条件は以下の通りである。多層プリフォーム1は直径22mmのプリフォームであり、多層プリフォーム1を水に浸漬するための透明容器20は直径55mmの容器である。多層プリフォーム1の軸心Oからリニアフレネルレンズ15までの距離L2−1は、150mmに設定されている。すなわち、多層プリフォーム1とリニアフレネルレンズ15とは、やや離間して配置されている。リニアフレネルレンズ15から拡散板14までの距離L2−2は、60mmに設定されており、LED照明13はリニアフレネルレンズ15の焦点位置に配置されている。多層プリフォーム1の軸心Oから撮像装置10までの距離L2−3は350mmに設定されている。LED照明13および拡散板14の幅W2−1は、12mmに設定されている。すなわち、LED照明13および拡散板14の幅W2−1は、多層プリフォーム1の直径に比較して小さく設定されている。
【0037】
多層プリフォーム1の軸心Oから撮像装置10までの距離L2−3は、多層プリフォームをより拡大して撮像する必要がある場合には、より小さな値となる。すなわち、多層プリフォーム1とカメラ10を近接させる。
LED照明13および拡散板14の幅W2−1は、理論上は幅0mmに近い線状の光源でも良い。しかし、必要な明るさを得るためにはある程度の個数のLEDを配置するため照明幅が必要となる。したがって、単位面積あたりでより光量の大きなLEDを使用して必要な明るさが確保できれば照明幅は12mm以下でもよい。
リニアフレネルレンズ15から拡散板14までの距離L2−2は、リニアフレネルレンズ15の焦点距離に一致する。したがって、異なるリニアフレネルレンズを使用する場合には、その焦点距離の値に一致させることとなる。
多層プリフォーム1の軸心Oからリニアフレネルレンズ15までの距離L2−1は、平行光を利用しているため、150mmを34mmや300mmに変更しても画像上では大きな差異はない。
なお、容器20は直径55mmの円筒形であるが、直径を大きくしても小さくしても、図7相当の画像を得ることができる。
【0038】
次に、図6に示すように構成された多層プリフォームの検査装置の作用を説明する。
LED照明13からの光は拡散板14を透過する際に拡散され、拡散板14からの拡散光は、リニアフレネルレンズ15により集光されて平行光になり、この平行光が透明容器20および透明容器20内の水を透過して多層プリフォーム1に入射される。そして、多層プリフォーム1を透過し、さらに透明容器20内の水および透明容器20を透過した光は、撮像装置10に入射し、この入射光はCCDカメラからなる撮像装置10により撮像される。
多層プリフォーム1は空気中よりもPET樹脂層の屈折率に近い水中に浸漬されているため、プリフォーム表面での光の屈折が小さく、そのため、プリフォーム断面内を光が透過し易い。プリフォーム断面内を透過する光には、PET樹脂層を透過する光と中間樹脂層を透過する光があるが、両樹脂層における屈折率が異なるため、撮像装置10により撮像した画像は、PET樹脂層と中間樹脂層との間に明度差がある画像となる。
【0039】
図7は、図6に示す装置構成の検査装置を用いて多層プリフォーム1を撮影した画像である。図7に示すように、多層プリフォーム1の画像中に、PET樹脂層に相当する暗い画像部分と、この暗い画像部分の中段部から上方に延びている中間樹脂層に相当するやや明るい画像部分とが形成されている。すなわち、画像中でPET樹脂層と中間樹脂層の明暗差は顕著となる。
【0040】
画像中で左右の中間樹脂層が明るくなるのは、リニアフレネルレンズの中心付近からの光で中間樹脂層を通る一部の光がカメラ画角に入るためと推測される。試みに、平行光の幅を100mmから40mmとしても画像に差異はない。また、平行光の幅を2mmとしても一部中間樹脂層に明るくなる部分がある。
【0041】
図7に示す画像を画像処理装置(図示せず)により処理する。この場合、画像を走査して暗い背景の中にやや明るい画像部分を識別することにより中間樹脂層の充填位置を検出することができる。
【0042】
図8は、本発明に係る多層プリフォームの検査装置の第3の態様を示す模式的平面図である。図8に示すように、透明容器20内の水に浸漬された検査対象の多層プリフォーム1を検査する検査装置は、多層プリフォーム1を挟むように配置された照明装置2と撮像装置10とから構成されている。照明装置2は、LED照明23と、LED照明23の前面に設置された拡散板24とから構成されている。撮像装置10はCCDカメラから構成されており、撮像装置10は画像処理装置(図示せず)に接続されている。
【0043】
照明装置2におけるLED照明23は、多数のLEDを縦横に配列することにより構成されている。LED照明23の前面に設置された拡散板24は、進入した光線をあらゆる角度に屈折させる作用を有する材質からなる板状体で構成され、樹脂材(例えば、アクリル樹脂)に光を屈折される粒子を添加して成形した板材からなっている。
【0044】
一方、CCDカメラからなる撮像装置10の光軸Lxは、検査対象の多層プリフォーム1の軸心Oを通るように設置されている。また、撮像装置10の光軸Lxと、LED照明23の中心とは、略一直線になるように設定されている。すなわち、多層プリフォーム1の軸心Oと、LED照明23の中心は、撮像装置10の光軸Lx上に位置するか又は光軸Lxに近接している。
【0045】
次に、多層プリフォーム1を基準として各機器の配置関係について説明する。
図9に示した画像を撮像した際の条件は以下の通りである。多層プリフォーム1は直径22mmのプリフォームであり、多層プリフォーム1を水に浸漬するための透明容器20は直径55mmの容器である。多層プリフォーム1の軸心Oから拡散板24までの距離L3−1は、190mmに設定されている。すなわち、多層プリフォーム1とLED照明23、拡散板24とは、やや離間して配置されている。多層プリフォーム1の軸心Oから撮像装置10までの距離L3−2は350mmに設定されている。LED照明23および拡散板24の幅W3−1は、12mmに設定されている。すなわち、LED照明23および拡散板24の幅W3−1は、多層プリフォーム1の直径に比較して小さく設定されている。
【0046】
多層プリフォーム1の軸心Oから撮像装置10までの距離L3−2は、多層プリフォームをより拡大して撮像する必要がある場合には、より小さな値となる。すなわち、多層プリフォーム1とカメラ10を近接させる。
LED照明23および拡散板24の幅W3−1と多層プリフォーム1の軸心Oから拡散板24までの距離L3−1に関連がある。幅W3−1を広くした場合には、距離L3−1を長くとる必要がある。例えば、幅W3−1を12mmとすると、距離L3−1は100mm〜330mm程度の範囲ならば検出に問題のない画像が得られる。ただ距離L3−1を長くすると中間樹脂層の明るさが暗くなる傾向がありこの点は不利となる。幅W3−1を28mmとすると、距離L3−1は170mm以上あるのが望ましい。これは、背景が明るくなり、画像上で多層プリフォーム1の幅が狭まる傾向が出てくるための対策であり、ただちに検査が出来ないというものではない。照明の見かけの幅を小さくするため、距離L3−1をある程度以上長くする必要がある。また、必要な明るさを得るためにはある程度の個数のLEDを配置するため照明幅が必要となる。したがって、単位面積あたりでより光量の大きなLEDを使用して必要な明るさが確保できれば照明幅は12mm以下でもよい。
なお、容器20は直径55mmの円筒形であるが、直径を大きくしても小さくしても、L3−1、W3−1の調整により図9相当の画像を得ることができる。
【0047】
次に、図8に示すように構成された多層プリフォームの検査装置の作用を説明する。
LED照明23からの光は拡散板24を透過する際に拡散され、拡散板24からの拡散光は、透明容器20および透明容器20内の水を透過して多層プリフォーム1に入射される。そして、多層プリフォーム1を透過し、さらに透明容器20内の水および透明容器20を透過した光は、撮像装置10に入射し、この入射光はCCDカメラからなる撮像装置10により撮像される。
多層プリフォーム1は空気中よりもPET樹脂層の屈折率に近い水中に浸漬されているため、プリフォーム表面での光の屈折が小さく、そのため、プリフォーム断面内を光が透過し易い。プリフォーム断面内を透過する光には、PET樹脂層を透過する光と中間樹脂層を透過する光があるが、両樹脂層における屈折率が異なるため、撮像装置10により撮像した画像は、PET樹脂層と中間樹脂層との間に明度差がある画像となる。
【0048】
図9は、図8に示す装置構成の検査装置を用いて多層プリフォーム1を撮影した画像である。図9に示すように、画像中に、PET樹脂層に相当する暗い画像部分と、この暗い画像部分の中段部から上方に延びている中間樹脂層に相当する明るい画像部分とが形成されている。すなわち、画像中でPET樹脂層と中間樹脂層の明暗差は顕著となる。
【0049】
画像中で左右の中間樹脂層が明るくなるのは、LED照明23および拡散板24からの光で中間樹脂層を通る一部の光がカメラ画角に入るためと推測される。試みに、LED照明23および拡散板24の幅W3−1を大きくすると、幅が狭い時と比べ中間樹脂により種々の方向からの照明光が加わるため、中間樹脂層の幅がより広く撮像される傾向がある。
【0050】
図9に示す画像を画像処理装置(図示せず)により処理する。この場合、画像を走査して暗い背景の中に明るい画像部分を識別することにより中間樹脂層の充填位置を検出することができる。
【0051】
図4乃至図9に示す本発明の第1乃至第3の態様においては、水を満たした透明容器内に検査対象の多層プリフォームを浸漬した場合を説明したが、多層プリフォームを植物油等の油に浸漬した場合にも中間樹脂層を可視化してPET樹脂層と中間樹脂層の明暗差を顕著にすることができる。
【0052】
図10は、多層プリフォーム1を植物油に浸漬して図4に示す装置構成の検査装置を用いて多層プリフォーム1を撮影した画像である。図10に示すように、多層プリフォーム1の左側半分の画像中に、PET樹脂層に相当する暗い画像部分と、この暗い画像部分の中段部から上方に延びている中間樹脂層に相当するやや明るい画像部分とが形成されている。すなわち、画像中でPET樹脂層と中間樹脂層の明暗差は顕著となる。
一方、多層プリフォーム1の右側半分の画像中に、PET樹脂層に相当するやや明るい画像部分と、このやや明るい画像部分の中段部から上方に延びている中間樹脂層に相当する暗い画像部分とが形成されている。すなわち、画像中でPET樹脂層と中間樹脂層の明暗差は顕著となる。このように、本発明の検査装置によれば、植物油等の油分を含む液体中に多層プリフォームを浸漬しても、中間樹脂層を可視化してPET樹脂層と中間樹脂層の明暗差を顕著にすることができる。
【0053】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
1 多層プリフォーム
2 照明装置
3,13,23 LED照明
4,14,24 拡散板
5 黒色板
6 境界部
10 撮像装置
15 リニアフレネルレンズ
20 透明容器
30 プリフォーム保持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外の樹脂層の中に中間樹脂層が充填された構造を有する多層プリフォームの検査装置において、
前記多層プリフォームを液体中に浸漬した透明容器を挟むように照明装置と撮像装置とを対向して設け、
前記照明装置は、照明と、該照明の前面に設置された拡散板と、該拡散板に隣接して設置されるとともに該拡散板の延長線上に配置された光が透過しないか又は光が透過しにくい板とからなり、
前記多層プリフォームの軸心と、前記拡散板と前記光が透過しないか又は光が透過しにくい板の境界部は、前記撮像装置の光軸上に位置するか又は前記光軸に近接していることを特徴とする多層プリフォームの検査装置。
【請求項2】
内外の樹脂層の中に中間樹脂層が充填された構造を有する多層プリフォームの検査装置において、
前記多層プリフォームを液体中に浸漬した透明容器を挟むように照明装置と撮像装置とを対向して設け、
前記照明装置は、照明と、該照明の前面に設置された拡散板と、該拡散板の前方に配置されたリニアフレネルレンズとからなり、
前記多層プリフォームの軸心と、前記リニアフレネルレンズの中心と、前記照明の中心は、前記撮像装置の光軸上に位置するか又は前記光軸に近接していることを特徴とする多層プリフォームの検査装置。
【請求項3】
内外の樹脂層の中に中間樹脂層が充填された構造を有する多層プリフォームの検査装置において、
前記多層プリフォームを液体中に浸漬した透明容器を挟むように照明装置と撮像装置とを対向して設け、
前記照明装置は、照明と、該照明の前面に設置された拡散板とからなり、
前記多層プリフォームの軸心と、前記照明の中心は、前記撮像装置の光軸上に位置するか又は前記光軸に近接していることを特徴とする多層プリフォームの検査装置。
【請求項4】
前記照明は、LEDを縦横に配列したLED照明からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多層プリフォームの検査装置。
【請求項5】
前記液体は水であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多層プリフォームの検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−12981(P2011−12981A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154926(P2009−154926)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】