説明

多層プリント配線板の層間絶縁用樹脂組成物、接着フィルム及びプリプレグ

【課題】熱膨張率が低く、かつ導体層のピール強度に優れる絶縁層が形成可能な、多層プリント配線板の層間絶縁用樹脂組成物、並びに該樹脂組成物より調製される多層プリント配線板用の接着フィルムおよびプリプレグの提供。また該樹脂組成物または該プリプレグの硬化物により絶縁層が形成されている多層プリント配線板の提供。
【解決手段】下記成分(A)〜(E):(A)1分子中に2以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状であるエポキシ樹脂、(B)1分子中に3以上のエポキシ基を有し、エポキシ当量が200以下である芳香族系エポキシ樹脂、(C)フェノール系硬化剤、(D)ガラス転移温度が100℃以上である、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂からなる群より選ばれる一種以上の樹脂、及び(E)無機充填材を含む多層プリント配線板の層間絶縁用樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路形成された導体層と絶縁層とを交互に積み上げたビルドアップ方式の多層プリント配線板の層間絶縁材料として有用な樹脂組成物、並びに該樹脂組成物により調製される多層プリント配線板用の接着フィルムおよびプリプレグに関する。本発明は、更に、該樹脂組成物またはプリプレグの硬化物により絶縁層が形成されている多層プリント配線板および該多層プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化が進み、多層プリント配線板のビルドアップ層が複層化され、ビアホールが複数のビルドアップ絶縁層にまたがって接続されたスタッガードビア、スタックトビアと呼ばれる多段ビア構造を有する多層プリント配線板の需要が高まっている。このような多段ビア構造を有する多層プリント配線板では、ビアホールを接続する銅配線と絶縁層との熱膨張係数が大きく異なるため、サーマルサイクル等の信頼性試験を行うと銅配線または絶縁層にクラックが入る等の問題が発生していた。そこで、絶縁層を構成する樹脂組成物の熱膨張率を低く抑えることが急務となっている。
【0003】
熱膨張率を抑える手段の一つとして樹脂組成物中に無機充填材を添加する方法が一般的に知られており、無機充填材の添加量が多いほど熱膨張率を低下させる効果がある。しかしながら、従来は絶縁層に多量の無機充填材が含まれると、絶縁層のビアホールの形成に主として使用されていた炭酸ガスレーザーによる熱分解温度が樹脂と無機充填材で異なるため、ビア形状の悪化や加工速度が遅くなるといった問題点があった。例えば特許文献1は無機充填材の含有量として、レーザー加工性の点から30重量%以下が好ましいとしている。しかしながら、炭酸ガスレーザーの進展、UV−YAGレーザーの本分野への汎用化は目覚しく、現在は無機充填材が多量に含まれた樹脂組成物であってもレーザーにより大きな問題なく加工可能となっている。
【0004】
一方、ビルトアップ工法において、高密度配線を形成するのに適しためっき方法として、アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤で絶縁層表面を粗化処理後、無電解めっき、または無電解めっきと電解めっきを組み合わせて導体層を形成する方法が知られている。しかしながら、この方法において、絶縁層中に無機充填材が多量に含まれると粗化処理後の表面に無機充填材が剥き出しとなる部分が多くなり、めっきにより形成される導体層のピール(peel)強度(引き剥がし強度)が低下するという問題があった。特に本発明者ら経験によれば、従来、樹脂組成物中に35重量%以上、特に40重量%以上無機充填材が含まれると、多層プリント配線板に要求されるピール強度を安定的に得る事は極めて困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−87927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、熱膨張率が低く、かつ導体層のピール強度に優れる絶縁層が形成可能な、多層プリント配線板の層間絶縁用樹脂組成物、並びに該樹脂組成物より調製される多層プリント配線板用の接着フィルムおよびプリプレグを提供することである。また、本発明の目的は、該接着フィルムまたはプリプレグにより絶縁層を導入する多層プリント配線板の製造方法、および該樹脂組成物または該プリプレグの硬化物により絶縁層が形成されている多層プリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(A)1分子中に2以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状であるエポキシ樹脂、(B)1分子中に3以上のエポキシ基を有し、エポキシ当量が200以下である芳香族系エポキシ樹脂、(C)フェノール系硬化剤、(D)ガラス転移温度が100℃以上である、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂からなる群より選ばれる一種以上の樹脂を特定割合で配合し、更に無機充填材(E)を35重量%以上配合した樹脂組成物によって、絶縁層における低熱膨張率と高いピール強度が同時に達成されることを見いだし、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は以下の内容を含むものである。
【0009】
[1] 下記成分(A)〜(E):
(A)1分子中に2以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状であるエポキシ樹脂、
(B)1分子中に3以上のエポキシ基を有し、エポキシ当量が200以下である芳香族系エポキシ樹脂、
(C)フェノール系硬化剤、
(D)ガラス転移温度が100℃以上である、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂からなる群より選ばれる一種以上の樹脂、及び
(E)無機充填材
を含み、無機充填材(E)の含有割合が樹脂組成物の35重量%以上であり、成分(A)と成分(B)のエポキシ樹脂の割合が重量比で1:0.3乃至1:2であり、樹脂組成物中のエポキシ基と成分(C)のフェノール系硬化剤のフェノール性水酸基の割合が1:0.5乃至1:1.5であり、成分(D)の樹脂の含有割合が樹脂組成物の2乃至20重量%である多層プリント配線板の層間絶縁用樹脂組成物。
[2] 下記成分(A)〜(E):
(A)1分子中に2以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状であるエポキシ樹脂、
(B)1分子中に3以上のエポキシ基を有し、エポキシ当量が200以下である芳香族系エポキシ樹脂、
(C)フェノール系硬化剤、
(D)ガラス転移温度が100℃以上である、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂からなる群より選ばれる一種以上の樹脂、及び
(E)無機充填材
を含み、無機充填材(E)の含有割合が樹脂組成物の40重量%以上であり、成分(A)と成分(B)のエポキシ樹脂の割合が重量比で1:0.3乃至1:2であり、樹脂組成物中のエポキシ基と成分(C)のフェノール系硬化剤のフェノール性水酸基の割合が1:0.5乃至1:1.5であり、成分(D)の樹脂の含有割合が樹脂組成物の2乃至20重量%である多層プリント配線板の層間絶縁用樹脂組成物。
[3] 成分(A)のエポキシ樹脂が芳香族系エポキシ樹脂である[1]又は[2]記載の樹脂組成物。
[4] 成分(B)の芳香族系エポキシ樹脂のエポキシ当量が150〜200である[1]又は[2]記載の樹脂組成物。
[5] 成分(B)の芳香族系エポキシ樹脂が20℃で固体である芳香族系エポキシ樹脂である[1]又は[2]記載の樹脂組成物。
[6] 成分(E)の無機充填材の含有割合が樹脂組成物の35乃至70重量%である[1]記載の樹脂組成物。
[7] 成分(E)の無機充填材の含有割合が樹脂組成物の40乃至70重量%である[2]記載の樹脂組成物。
[8] 樹脂組成物中の成分(A)と成分(B)の合計量が10〜50重量%である[1]又は[2]記載の樹脂組成物。

[9] [1]乃至[8]記載の樹脂組成物からなる樹脂組成物層が支持フィルム上に形成されている多層プリント配線板用の接着フィルム。
[10] 樹脂組成物が、これを測定開始温度60℃、昇温速度5℃/分及び振動数1Hz/degで動的粘弾性を測定した場合の溶融粘度が、90℃で4,000乃至50,000ポイズ、100℃で2,000乃至21,000ポイズ、110℃で900乃至12,000ポイズ、120℃で500乃至9,000ポイズ、130℃で300乃至15,000である[9]記載の接着フィルム。
[11] [1]乃至[8]記載の樹脂組成物が繊維からなるシート状補強基材中に含浸されていることを特徴とする多層プリント配線板用のプリプレグ。
[12] [1]乃至[8]記載の樹脂組成物の硬化物により絶縁層が形成されている多層プリント配線板。
[13] [11]記載のプリプレグの硬化物により絶縁層が形成されている多層プリント配線板。
[14] 下記の工程(a)乃至(g)を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法:
(a)[9]記載の接着フィルムを回路基板の片面又は両面にラミネートし、支持フィルムを剥離するか又は剥離しない工程、
(b)ラミネートされた樹脂組成物を熱硬化し絶縁層を形成する工程、
(c)支持フィルムが存在する場合に該支持フィルムを剥離する行程、
(d)絶縁層が形成された回路基板に穴あけする行程、
(e)絶縁層の表面を酸化剤により粗化処理する工程、
(f)粗化された絶縁層の表面にめっきにより導体層を形成させる工程、および
(g)導体層に回路形成する工程。
[15] 下記の工程(h)乃至(m)を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
(h)[11]記載のプリプレグを回路基板の片面又は両面にラミネートする工程、
(i)ラミネートされたプリプレグを熱硬化し絶縁層を形成する工程、
(j)絶縁層が形成された回路基板に穴あけする行程、
(k)絶縁層の表面を酸化剤により粗化処理する工程、
(l)粗化された絶縁層の表面にめっきにより導体層を形成させる工程、および
(m)導体層に回路形成する工程。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱膨張率が低く、かつ導体層のピール強度に優れる絶縁層を多層プリント配線板に簡便に導入することが可能である。該絶縁層は破断強度にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
成分(A)である「1分子中に2以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状であるエポキシ樹脂」としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。またエポキシ樹脂としては硬化物の好ましい物性等の観点から芳香族系エポキシ樹脂が好ましい。なお本発明において芳香族系エポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環骨格を有するエポキシ樹脂を意味する。従って成分(A)としては「1分子中に2以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状である芳香族系エポキシ樹脂」がより好ましい。これらのエポキシ樹脂は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお成分(A)のエポキシ樹脂は温度20℃未満で液状であってもよい。成分(A)として温度20℃で固体のものを用いた場合、接着フィルムを取り扱う常温(20〜30℃程度)で接着フィルムの十分な可とう性が得られにくく、接着フィルムの取り扱い性が低下する傾向にある。また回路基板へのラミネートの際に、ビアホールやスルーホール内を充填するだけの樹脂組成物の十分な流動性が得られない傾向にある。
【0012】
成分(B)である「1分子中に3以上のエポキシ基を有し、エポキシ当量が200以下である芳香族系エポキシ樹脂」としては、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物(トリスフェノール型エポキシ樹脂)が挙げられ、具体的には大日本インキ化学工業(株)製EXA4700(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)EPPN−502H(トリスフェノールエポキシ樹脂)等がある。これらのエポキシ樹脂は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。成分(B)において、エポキシ当量は好ましくは150〜200であり、温度20℃で固体であるものがより好ましい。すなわち成分(B)としては、「1分子中に3以上のエポキシ基を有し、エポキシ当量が150〜200である芳香族系エポキシ樹脂」が好ましく、「1分子中に3以上のエポキシ基を有し、エポキシ当量が150〜200であり、温度20℃で固体の芳香族系エポキシ樹脂」がより好ましい。成分(B)は樹脂組成物の硬化物の破断強度を向上させ、また硬化物の架橋密度を向上させ、無機充填材が35wt%以上、更には40wt%以上存在しても粗化処理後の硬化物表面に無機充填材が剥き出しになるのを抑制し、安定して高いめっきピール強度を得るための重要な役割を果たす。エポキシ当量が150〜200、温度20℃で固体であるものはこのような機能を十分発揮する上で好ましい。
【0013】
本発明の樹脂組成物における成分(A)と成分(B)の配合割合は1:0.3乃至1:2の範囲とする。特に1:0.5乃至1:1の範囲とするのが好ましい。成分(A)がこの配合割合を超えて多すぎると、樹脂組成物の粘着性が高くなり、真空ラミネート時の脱気性が低下してボイドが発生しやすくなる、あるいは硬化後の耐熱性が不十分となるなどの問題が発生する。一方、成分(B)がこの配合割合を超えて多すぎると、樹脂組成物が常温において脆くなり、接着フィルムに用いた場合の取り扱いが困難となる。
【0014】
樹脂組成物(不揮発分100重量%)中における成分(A)と成分(B)の合計量は通常10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%とする。
【0015】
なお、本発明の樹脂組成物には本発明の効果を損なわない程度に(A)または(B)以外の多官能エポキシ樹脂、または単官能エポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0016】
成分(C)である「フェノール系硬化剤」としては、例えばフェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、トリアジン構造含有ノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ザイロック(Xylok)型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類等のフェノール系硬化剤、ナフタレン系硬化剤、フルオレン系硬化剤を挙げることができる。これらのフェノール系硬化剤は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
フェノール系硬化剤は、樹脂組成物中に存在するエポキシ基の合計数と成分(C)のフェノール系硬化剤のフェノール性水酸基の合計数の割合が1:0.5乃至1:1.5となるように配合する。なお、樹脂組成物中に成分(A)および成分(B)以外のエポキシ樹脂が含まれる場合、これらのエポキシ樹脂のエポキシ基を含めて上記割合が決定される。フェノール系硬化剤の配合割合がこの範囲を外れると、樹脂組成物の硬化物の耐熱性が不十分となる場合がある。
【0018】
上記フェノール系硬化剤に加え、トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン系化合物、2−エチル4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール系化合物等を硬化促進剤として添加してもよい。硬化促進剤を使用する場合、配合量はフェノール系硬化剤の配合量を100重量%とした場合に0.5乃至2重量%の範囲で用いるのが好ましい。
【0019】
次に、成分(D)の「ガラス転移温度が100℃以上である、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂からなる群より選ばれる一種以上の樹脂」について説明する。
【0020】
フェノキシ樹脂の具体例としては東都化成(株)製FX280、FX293、ジャパンエポキシレジン(株)製YX8100、YL6954、YL6974等が挙げられる。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、積水化学工業(株)製エスレックKSシリーズ、ポリアミド樹脂としては日立化成工業(株)製KS5000シリーズ、日本化薬(株)製BPシリーズ、さらにポリアミドイミド樹脂としては日立化成工業(株)製KS9000シリーズ等が挙げられる。これらの樹脂は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。成分(D)の樹脂としては特にフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。
【0021】
ガラス転移温度は、JIS(日本工業規格) K 7197に記載の方法に従って決定される。なお、ガラス転移温度が分解温度よりも高いため実際にはガラス転移温度が観測されない場合も本発明に言う「ガラス転移温度が100℃以上である」の定義内に含まれる。なお、分解温度とは、JIS K 7120に記載の方法に従って測定したときの質量減少率が5%となる温度で定義される。
【0022】
成分(D)は、樹脂組成物のラミネート時における熱流動性と、酸化剤による硬化物の粗化性に重要な影響を及ぼす。また成分(D)のガラス転移温度が100℃未満であると、硬化物の機械強度が十分でなく、粗化後の硬化物表面に無機充填材が析出しやすく、十分なめっきピール強度を得る事が困難となる。
【0023】
成分(D)の樹脂組成物(不揮発分100重量%)に対する含有割合は2〜20重量%とする。2重量%未満であると樹脂組成物のラミネート時の熱流動性が大きくなりすぎて絶縁層厚が不均一となる、あるいは硬化物の十分な粗化性が得られない等の問題を生じることがある。一方、20重量%を超えると、熱流動性が低すぎて回路基板に存在するビアホールやスルーホールに十分に樹脂組成物が充填されないなどの問題を生じることがある。
【0024】
成分(E)無機充填材の樹脂組成物(不揮発分100重量%)に対する含有割合は樹脂組成物に要求される特性によっても異なるが、35重量%以上又は40重量%以上である。より好ましい範囲は35〜75重量%又は40〜75重量%である。35重量%未満であると、熱膨張率が高くなり本発明の効果が得られない。なお75重量%以上である場合はピール強度が低下する傾向にある。
【0025】
無機充填材としては、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。特にシリカが好ましい。無機充填材は平均粒径5μm以下のものが好ましい。平均粒径が5μmを超える場合、導体層に回路パターンを形成する際にファインパターンの形成を安定的行うのが困難になる場合がある。また無機充填材は耐湿性を向上させるため、シランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理してあるものが好ましい。
【0026】
本発明の樹脂組成物には上記成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、熱硬化性樹脂、添加剤等の他の成分を配合することもできる。熱硬化性樹脂としては、例えば、ブロックイソシアネート樹脂、キシレン樹脂、ラジカル発生剤と重合性樹脂などが挙げられる。添加剤としては、例えばシリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤等を挙げることができる。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとするか、または繊維からなるシート状補強基材中に該樹脂組成物を含浸させて多層プリント配線板の層間絶縁層用のプリプレグとすることができる。本発明の樹脂組成物は回路基板に塗布して絶縁層を形成することもできるが、工業的には、一般に、接着フィルムまたはプリプレグの形態として絶縁層形成に用いられる。
【0028】
本発明の接着フィルムにおいて樹脂組成物層を構成する樹脂組成物は、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すものであるものが好ましい。多層プリント配線板のスルホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2が充填されればよい。このような物性は、樹脂組成物の動的粘弾性の測定による温度−溶融粘度曲線によって特徴づけることができる。
【0029】
後掲実施例1で得られた樹脂組成物の動的粘弾性を測定し、温度−溶融粘度(η)の関係を図4に示した。図4は測定開始温度を60℃、振動数を1Hz/degとし、5℃/分の昇温速度で加熱したときの樹脂組成物の溶融粘度を曲線図として表したものである。このように、本発明の樹脂組成物は、測定開始温度60℃、昇温速度5℃/分及び振動数を1Hz/degの条件で測定した場合の溶融粘度が、90℃で4,000乃至50,000ポイズ、100℃で2,000乃至21,000ポイズ、110℃で900乃至12,000ポイズ、120℃で500乃至9,000ポイズ、130℃で300乃至15,000となるものを用いるのが好ましい。
【0030】
このような溶融粘度特性を有する樹脂組成物を用いることにより、真空ラミネーターを用いた真空ラミネートにより、回路基板表面への樹脂組成物の積層とビアホール及びスルーホール内への樹脂組成物の充填を同時に一括して行うことができる。溶融粘度が低すぎると、真空ラミネート法により回路基板への樹脂組成物のラミネートする際または加熱硬化する際、樹脂組成物の流動性が大きくなり過ぎ、樹脂層の厚さが不均一になる傾向にある。また溶融粘度が高すぎると樹脂組成物の流動性が小さすぎて、ビアホールやスルーホール内への樹脂充填が不十分となる傾向にある。(国際公開WO01/97582号パンフレット参照)。当業者は、本発明のエポキシ樹脂組成物と接着フィルムに関する開示、及び上記WO01/97582号公報の開示に従って、真空ラミネート法に好適な溶融粘度特性を有する接着フィルムを適宜容易に調製することができる。
【0031】
【表1】

【0032】
本発明の接着フィルムは、当業者に公知の方法、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、支持フィルムを支持体として、この樹脂ワニスを塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0033】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。有機溶剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層への有機溶剤の含有割合が通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下となるように乾燥させる。形成される樹脂組成物層の溶融粘度曲線は後掲の乾燥条件によっても影響を受けるため、好ましくは前記溶融粘度特性を満たすよう乾燥条件を設定する。ワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、例えば30〜60重量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることができる。当業者、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。
【0035】
形成される樹脂組成物層の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
【0036】
なお、本発明における樹脂組成物層は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0037】
本発明における支持フィルム及び保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0038】
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。なお、後述するように、接着フィルムの製造工程で支持体として用いる支持フィルムを樹脂組成物層表面を保護する保護フィルムとして使用することもできる。
【0039】
本発明における支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。なお、支持フィルム上に形成される樹脂組成物層は、層の面積が支持フィルムの面積より小さくなるように形成するのが好ましい。また接着フィルムは、ロール状に巻き取って、保存、貯蔵することができる。
【0040】
次に、本発明の接着フィルムを用いて本発明の多層プリント配線板を製造する方法について説明する。樹脂組成物層が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、樹脂組成物層を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面にラミネートする。本発明の接着フィルムにおいては真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0041】
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。
【0042】
真空ラミネートは市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製 バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製 真空加圧式ラミネーター、(株)日立インダストリイズ製 ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0043】
本発明における回路基板とは、主として、ガラスエポキシ、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また導体層と絶縁層が交互に層形成され、片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている多層プリント配線板も本発明にいう回路基板に含まれる。なお導体回路層表面は黒化処理等により予め粗化処理が施されていた方が絶縁層の回路基板への密着性の観点から好ましい。
【0044】
このように接着フィルムを回路基板にラミネートした後、支持フィルムを剥離する場合は剥離し、熱硬化することにより回路基板に絶縁層を形成することができる。加熱硬化の条件は150℃〜220℃で20分〜180分の範囲で選択され、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分である。
【0045】
絶縁層を形成した後、硬化前に支持フィルムを剥離しなかった場合は、ここで剥離する。次に回路基板上に形成された絶縁層に穴開けを行いビアホール、スルーホールを形成する。穴あけは例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけがもっとも一般的な方法である。
【0046】
次いで、絶縁層表面を酸化剤より粗化処理を行う。酸化剤としては、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等が挙げられる。好ましくはビルトアップ工法による多層プリント配線板の製造における絶縁層の粗化に汎用されている酸化剤である、アルカリ性過マンガン酸溶液(例えば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムの水酸化ナトリウム水溶液)を用いて粗化を行うのが好ましい。
【0047】
次に、粗化処理により凸凹のアンカーが形成された樹脂組成物層表面に、無電解めっきと電解めっきを組み合わせた方法で導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのめっきレジストを形成し、無電解めっきのみで導体層を形成することもできる。なお導体層形成後、150〜200℃で20〜90分アニール(anneal)処理することにより、導体層のピール強度をさらに向上、安定化させることができる。本発明によれば、多層プリント配線板として好ましい導体層のピール強度が得ることができる。多層プリント配線板に好ましいピール強度は、通常0.6kgf/cm以上、好ましくは0.7kgf/cm以上である。
【0048】
また、導体層をパターン加工し回路形成する方法としては、例えば当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディディブ法などを用いることができる。
【0049】
本発明のプリプレグは、本発明の樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸させ、加熱により半硬化させることにより製造することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物が繊維からなるシート状補強基材に含浸した状態となるプリプレグとすることができる。
【0050】
繊維からなるシート状補強基材としては、例えばガラスクロスやアラミド繊維等、プリプレグ用繊維として常用されているものを用いることができる。
【0051】
ホットメルト法は、樹脂を有機溶剤に溶解することなく、樹脂を樹脂と剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをシート状補強基材にラミネートする、あるいはダイコーターにより直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、接着フィルムと同様、樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスにシート状補強基材を浸漬し、樹脂ワニスをシート状補強基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。
【0052】
次に本発明のプリプレグを用いて本発明の多層プリント配線板を製造する方法について説明する。回路基板に本発明のプリプレグを1枚あるいは必要により数枚重ね、離型フィルムを介して金属プレートを挟み加圧・加熱条件下でプレス積層する。圧力は好ましくは5〜40kgf/cm、温度は好ましくは120〜200℃で20〜100分の範囲で成型するのが好ましい。また接着フィルムと同様に真空ラミネート法により回路基板にラミネートした後、加熱硬化することによっても製造可能である。その後、前に記載した方法と同様、酸化剤により硬化したプリプレグ表面を粗化した後、導体層をめっきにより形成して多層プリント配線板を製造することができる。
【0053】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0054】
(A)成分として液状ビスフエノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量170、ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート807」)20部、(B)成分としてナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量163、大日本インキ化学工業(株)製「EXA−4700」)12部、メチルエチルケトン(以下MEKと略す)10部、シクロヘキサノン10部に撹拝しながら加熱溶解させた。そこへ(C)成分としてトリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂のMEKワニス(大日本インキ化学工業(株)製「フェノライトLA−7052」、不揮発分60%、不揮発分のフェノール性水酸基当量120)25部、(D)成分としてフェノキシ樹脂ワニス(不揮発分40重量%、東都化成(株)製「FX293」、ガラス転位温度163℃)20部、さらに(E)成分として球形シリカ(平均粒径1μm、アミノシラン処理)60部を添加し樹脂ワニスを作製した(樹脂ワニスの不揮発分に対する無機充填材含有量52重量%)。
次に、樹脂ワニスをポリエチレンテレフタレート(厚さ38μm、以下PETと略す)上に、乾燥後の樹脂厚みが70μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80〜120℃(平均100℃)で6分間乾燥した(残留溶媒量約1重量%)。次いで樹脂組成物の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の接着フィルムを幅507mmにスリット(slit)し、これより507×336mmサイズのシート状の接着フィルムを得た。
【実施例2】
【0055】
(A)成分として液状ビスフエノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185、ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート828EL」)15部、(B)成分としてトリスフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量176、日本化薬(株)製「EPPN−502H」)15部、MEK10部、シクロヘキサノン10部に撹拝しながら加熱溶解させた。そこへ(C)成分としてトリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂のMEKワニス(大日本インキ化学工業(株)製「フェノライトLA−7052」)25部、(D)成分としてポリアミドイミド樹脂ワニス(不揮発分33重量%、日立化成工業(株)製「KS9300」、ガラス転位温度180℃)25部、さらに(E)成分として球形シリカ(平均粒径1μm、アミノシラン処理)30部、カオリン(平均粒径3μm、アミノシラン処理)10部を添加し樹脂ワニスを作製した(樹脂ワニスの不揮発分に対する無機充填材含有量43重量%)。
次に、樹脂ワニスを実施例1と同様にPET上に、乾燥後の樹脂厚みが70μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80〜120℃(平均100℃)で6分間乾燥した(残留溶媒量約2重量%)。次いで樹脂組成物の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の接着フィルムを幅507mmにスリットし、これより507×336mmサイズのシート状の接着フィルムを得た。
【実施例3】
【0056】
(A)成分として液状ビスフエノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量170、ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート807」)20部、(B)成分としてナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量163、大日本インキ化学工業(株)製「EXA−4700」)12部、さらにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂10部(エポキシ当量220、大日本インキ化学工業(株)製「N−690」)をMEK20部、シクロヘキサノン10部に撹拝しながら加熱溶解させた。そこへ(C)成分としてトリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂のMEKワニス(大日本インキ化学工業(株)製「フェノライトLA−7052」、不揮発分60%、不揮発分のフェノール性水酸基当量120)30部、(D)成分としてフェノキシ樹脂ワニス(不揮発分40重量%、東都化成(株)製「FX293」、ガラス転位温度163℃)20部、ポリビニルアセタール樹脂ワニス(不揮発分15重量%、積水化学工業製「KS1」、ガラス転位温度107℃)15部、さらに(E)成分として球形シリカ(平均粒径1μm、アミノシラン処理)40部を添加し樹脂ワニスを作製した(樹脂ワニスの不揮発分に対する無機充填材含有量36重量%)。
次に、樹脂ワニスをPET(厚さ38μm)上に、乾燥後の樹脂厚みが70μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80〜120℃(平均100℃)で6分間乾燥した(残留溶媒量約1重量%)。次いで樹脂組成物の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の接着フィルムを幅507mmにスリット(slit)し、これより507×336mmサイズのシート状の接着フィルムを得た。
【実施例4】
【0057】
実施例1の樹脂ワニスをガラスクロスに含浸し、80〜120℃(平均100℃)で6分間乾燥させ、樹脂含量45重量%で厚みが0.1mmのプリプレグを得た。
【0058】
<比較例1>
液状ビスフエノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量170、ジャパンエポキシレジン(株)製 「エピコート807」)20部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量210、大日本インキ化学工業(株)製「N673」)12部をMEK10部、シクロヘキサノン10部に撹拝しながら加熱溶解させた。そこへトリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂のMEKワニス(大日本インキ化学工業(株)製「フェノライトLA−7052」)25重量、フェノキシ樹脂ワニス(不揮発分35重量%、東都化成(株)製「YB−50−EK35」、ガラス転位温度84℃)23部、さらに球型シリカ60部(平均粒径1μm、アミノシラン処理)を添加し樹脂ワニスを作製した(樹脂ワニスの不揮発分に対する無機充填材含有量52重量%)。
次に樹脂ワニスを実施例1と同様にPET上に、乾燥後の樹脂厚みが70μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80〜120℃(平均100℃)で6分間乾燥した。(残留溶媒量約1重量%)次いで樹脂組成物の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の接着フィルムを幅507mmにスリットし、これより507×336mmサイズのシート状の接着フィルムを得た。
【実施例5】
【0059】
銅箔18μm、板厚0.3mmのFR4両面銅張積層板から内層回路基板を作製し(直径0.2mmのスルーホールあり)、実施例1で得られた接着フィルムのポリプロピレンフィルムを剥離した後、樹脂組成物層を回路面にして(株)名機製真空ラミネーターにより、温度110℃、圧力7kgf/cm、気圧5mmHg(1.33hPa)以下の条件で両面にラミネートした。次いでPETフィルムを剥離し、180℃で30分加熱硬化させた。その後、レーザーにより穴開けを行いビアホールを形成させ、次いで過マンガン酸塩のアルカリ性酸化剤で硬化した樹脂組成物層表面を粗化処理し、無電解及び電解めっきを行いサブトラクティブ法に従って回路を形成し、4層プリント配線板を得た。その後、さらに180℃で30分アニール処理を行った。得られた導体層の導体めっき厚は約30μmであり、スルーホールは完全に樹脂充填されており、ピール強度は0.9kgf/cmであった。なお、ピール強度測定は日本工業規格(JIS) C6481に準じて評価した。
【実施例6】
【0060】
実施例2で得られた接着フィルムを用いて実施例5と同様にして4層プリント配線板を得た。得られた導体層の導体めっき厚は約30μmであり、スルーホールは完全に樹脂充填されており、ピール強度は0.8kgf/cmであった。
【実施例7】
【0061】
実施例3で得られた接着フィルムを用いて実施例5と同様にして4層プリント配線板を得た。得られた導体層の導体めっき厚は約30μmであり、スルーホールは完全に樹脂充填されており、ピール強度は0.9kgf/cmであった。
【実施例8】
【0062】
実施例4で得られたプリプレグを実施例5と同じ回路基板上に枚葉し、離型フィルムを介して金属プレートで挟み、120℃、10kgf/cmで15分間真空積層プレスした後、更に180℃、40kgf/cmで60分間真空積層プレスした。その後、実施例5と同様にして4層プリント配線板を得た。得られた導体層のピール強度は0.8kgf/cmであった。
【0063】
<比較例2>
比較例1で得られた接着フィルムを用いて実施例5と同様にして4層プリント配線板を得た。得られた導体層の導体めっき厚は約30μmであり、スルーホールは完全に樹脂充填されており、導体層のピール強度は0.4kgf/cmであった。
【0064】
<粗化後樹脂表面の評価>
実施例5、6及び比較例2における粗化処理後の樹脂表面をSEM観察した。結果を図1〜3に示す。図1〜3より、実施例5及び6においては粗化処理後、表面に樹脂層が残っているが、比較例2においては粗化処理後、樹脂組成物の硬化物(絶縁層)表面の多くの部分で無機充填剤の球形シリカが剥き出しとなっていることが分かる。
【0065】
<機械強度の評価>
実施例1、2及び比較例1で得られた接着フィルムの樹脂組成物面を180℃で90分熱硬化させた。本サンプルをJIS K7127に準拠し、引張破断強度測定を行った。
【0066】
<熱膨張係数の評価>
実施例1、2及び比較例1で得られた接着フィルムの樹脂組成物面を180℃で90分熱硬化させた。本サンプルを幅約5mm長さ約15mmの試験片とし、理学電機株式会社製熱機械分析装置(TMA)を使用して、引張モードで熱機械分析を行った。荷重1g、昇温速度5℃/分で2回測定した。表2に、2回目の測定における室温(23℃)から150℃までの平均線膨張率を記した。
【0067】
上記各評価の結果を下記表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
本発明の樹脂組成物を用いて形成された絶縁層は熱膨張率が低く、粗化処理後、めっきにより形成された導体層との密着性にも優れることがわかる。
【0070】
<樹脂組成物の動的粘弾性測定>
実施例1で得られた接着フィルムのエポキシ樹脂組成物を(株)ユー・ビー・エム社製型式Rheosol-G3000を用いて、動的粘弾性を測定した。測定結果を図4に示す。測定は初期温度約60℃から昇温速度5℃/分で、測定間隔温度2.5℃、振動数1Hz/degで測定した。表3に各温度における溶融粘度値を以下に示す。
【0071】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の樹脂組成物、該樹脂組成物により調製される多層プリント配線板用の接着フィルムおよびプリプレグは、多層プリント配線板、特にビルドアップ方式で製造される多層プリント配線板の層間絶縁材料として好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施例5における粗化処理後の樹脂組成物の硬化物表面をSEMで撮影した写真である(倍率1000倍)。
【図2】実施例6における粗化処理後の樹脂組成物の硬化物表面をSEMで撮影した写真である(倍率1000倍)。
【図3】比較例2における粗化処理後の樹脂組成物の硬化物表面をSEMで撮影した写真である(倍率1000倍)。
【図4】実施例1で得られた接着フィルムを構成する樹脂組成物の動的粘弾性の測定結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(E):
(A)1分子中に2以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状であるエポキシ樹脂、
(B)1分子中に3以上のエポキシ基を有し、エポキシ当量が200以下である芳香族系エポキシ樹脂、
(C)フェノール系硬化剤、
(D)ガラス転移温度が100℃以上である、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂からなる群より選ばれる一種以上の樹脂、及び
(E)無機充填材
を含み、無機充填材(E)の含有割合が樹脂組成物の35重量%以上であり、成分(A)と成分(B)のエポキシ樹脂の割合が重量比で1:0.3乃至1:2であり、樹脂組成物中のエポキシ基と成分(C)のフェノール系硬化剤のフェノール性水酸基の割合が1:0.5乃至1:1.5であり、成分(D)の樹脂の含有割合が樹脂組成物の2乃至20重量%である多層プリント配線板の層間絶縁用樹脂組成物。
【請求項2】
下記成分(A)〜(E):
(A)1分子中に2以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状であるエポキシ樹脂、
(B)1分子中に3以上のエポキシ基を有し、エポキシ当量が200以下である芳香族系エポキシ樹脂、
(C)フェノール系硬化剤、
(D)ガラス転移温度が100℃以上である、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂からなる群より選ばれる一種以上の樹脂、及び
(E)無機充填材
を含み、無機充填材(E)の含有割合が樹脂組成物の40重量%以上であり、成分(A)と成分(B)のエポキシ樹脂の割合が重量比で1:0.3乃至1:2であり、樹脂組成物中のエポキシ基と成分(C)のフェノール系硬化剤のフェノール性水酸基の割合が1:0.5乃至1:1.5であり、成分(D)の樹脂の含有割合が樹脂組成物の2乃至20重量%である多層プリント配線板の層間絶縁用樹脂組成物。
【請求項3】
成分(A)のエポキシ樹脂が芳香族系エポキシ樹脂である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
成分(B)の芳香族系エポキシ樹脂のエポキシ当量が150〜200である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項5】
成分(B)の芳香族系エポキシ樹脂が20℃で固体である芳香族系エポキシ樹脂である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項6】
成分(E)の無機充填材の含有割合が樹脂組成物の35乃至75重量%である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項7】
成分(E)の無機充填材の含有割合が樹脂組成物の40乃至75重量%である請求項2記載の樹脂組成物。
【請求項8】
樹脂組成物中の成分(A)と成分(B)の合計量が10〜50重量%である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8記載の樹脂組成物からなる樹脂組成物層が支持フィルム上に形成されている多層プリント配線板用の接着フィルム。
【請求項10】
樹脂組成物が、これを測定開始温度60℃、昇温速度5℃/分及び振動数1Hz/degで動的粘弾性を測定した場合の溶融粘度が、90℃で4,000乃至50,000ポイズ、100℃で2,000乃至21,000ポイズ、110℃で900乃至12,000ポイズ、120℃で500乃至9,000ポイズ、130℃で300乃至15,000である請求項9記載の接着フィルム。
【請求項11】
請求項1乃至8記載の樹脂組成物が繊維からなるシート状補強基材中に含浸されていることを特徴とする多層プリント配線板用のプリプレグ。
【請求項12】
請求項1乃至8記載の樹脂組成物の硬化物により絶縁層が形成されている多層プリント配線板。
【請求項13】
請求項11記載のプリプレグの硬化物により絶縁層が形成されている多層プリント配線板。
【請求項14】
下記の工程(a)乃至(g)を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法:
(a)請求項9又は10記載の接着フィルムを回路基板の片面又は両面にラミネートし、支持フィルムを剥離するか又は剥離しない工程、
(b)ラミネートされた樹脂組成物を熱硬化し絶縁層を形成する工程、
(c)支持フィルムが存在する場合に該支持フィルムを剥離する行程、
(d)絶縁層が形成された回路基板に穴あけする行程、
(e)絶縁層の表面を酸化剤により粗化処理する工程、
(f)粗化された絶縁層の表面にめっきにより導体層を形成させる工程、および
(g)導体層に回路形成する工程。
【請求項15】
下記の工程(h)乃至(m)を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
(h)請求項11記載のプリプレグを回路基板の片面又は両面にラミネートする工程、
(i)ラミネートされたプリプレグを熱硬化し絶縁層を形成する工程、
(j)絶縁層が形成された回路基板に穴あけする行程、
(k)絶縁層の表面を酸化剤により粗化処理する工程、
(l)粗化された絶縁層の表面にめっきにより導体層を形成させる工程、および
(m)導体層に回路形成する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−140652(P2011−140652A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31858(P2011−31858)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【分割の表示】特願2004−158247(P2004−158247)の分割
【原出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】