説明

多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物、基材付き絶縁シート、多層プリント配線板及び半導体装置

【課題】本発明の目的は、多層プリント配線板作製工程における樹脂残渣除去工程でデスミア性に優れる多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物を提供するものである。また、本発明の目的は、加工性に優れる基材付き絶縁樹脂層を提供するものである。
【解決手段】下記成分を必須成分とする多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカ
(B)エポキシ樹脂
(C)硬化促進剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物、基材付き絶縁シート、多層プリント配線板及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在の電子機器において、より高速伝送化、高密度集積化が進んでおりこれらの電子機器に用いられるプリント配線板はビルドアップ方式の多層プリント配線板が多く採用されている。
【0003】
多層プリント配線板に用いられる層間の絶縁材料は、そのほとんどが熱硬化性樹脂をガラス布に含浸したプリプレグである。ところが、近年多層プリント配線板の薄型化、高密度化の要求に伴い、絶縁層を極めて薄くするためガラス布等の基材を用いない層間の絶縁材料が必要となった。このようなビルドアップ方式の多層プリント配線板では、微細なビアで層間接続されるためより信頼性に優れた層間絶縁材料が求められている。そのためシアネートエステル樹脂を配合し、高耐熱性、低熱膨張化を達成する技術が開示されている(特許文献1)。しかしながら、さらに高耐熱化、低熱膨張化させるにはシリカ等の無機充填材をさらに高充填化させると銅などの各種被着体との密着性の低下、樹脂中での均一分散性の低下するため、多層プリント配線板作製工程における樹脂残渣除去工程でデスミア性が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−299834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物は、多層プリント配線板作製工程における樹脂残渣除去工程でデスミア性に優れ、該組成物を含む基材付き絶縁シートを用いた多層プリント配線板、半導体装置は高耐熱性、低熱膨張性であり信頼性に優れるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(12)により達成される。
(1)下記成分を必須成分とする多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカ
(B)エポキシ樹脂
(C)硬化促進剤
(2)前記(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカの平均粒径が2.0μm以下である(1)記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
(3)前記(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカの官能基含有シラン類が、2級アミノシラン化合物である(1)または(2)に記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
(4)前記(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカの比表面積は、1.0m/g以上200m/g以下である(1)ないし(3)のいずれかに記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
(5)前記(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカの含有量が、多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物の20重量%以上80重量%以下である(1)ないし(4)のいずれかに記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
(6)多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物は、シアネートエステル樹脂を含むものである(1)ないし(5)のいずれかに記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
(7)前記シアネートエステル樹脂は、フェノールノボラック骨格を含むもので(6)に記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
(8)多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物は、フェノキシ樹脂を含むものである(1)ないし(7)のいずれかに記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
(9)前記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、及びビスフェノールS型よりなる群から選ばれる少なくとも1種の骨格を有するフェノキシ樹脂の1種以上含むものである(8)に記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
(10)(1)ないし(9)のいずれかに記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物を含む基材付き絶縁シート。
(11)(10)に記載の基材付き絶縁シートを内層回路板の片面または両面に重ね合わせて加熱加圧成型してなる多層プリント配線板。
(12)(11)に記載の多層プリント配線板に半導体素子を搭載した半導体装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、多層プリント配線板作製工程における樹脂残渣除去工程でデスミア性に優れる多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物を提供することができる。また該多層プリント配線板用組成物は流動性、デスミア性に優れることから多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物を含む基材付き絶縁シートを用いた多層プリント配線板は成形性に優れる。また該多層プリント配線板は、吸湿耐半田性に優れ、該多層プリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体装置は熱衝撃試験に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物について詳細に説明する。
【0009】
本発明に用いる(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカの官能基含有シラン類の官能基含有シラン類としては、例えばエポキシシラン、スチリルシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシラン、メルカプトシラン、N−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルメトキシルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルシラン、イソシアネートシラン、スルフィドシラン、クロロプロピルシラン、ウレイドシラン化合物等を挙げることができる。これらの中でもアミノシランが好ましく、特に2級アミノシラン化合物が好ましい。2級アミノシラン化合物としては、例えばN−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルメトキシルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これにより、多層プリント配線板作製工程における樹脂残渣除去工程でデスミア性に優れた多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物を得ることができる。
【0010】
前記(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカのアルキルシラザン類としては、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザンなどを挙げることができる。これらの中でもヘキサメチルジシラザン(HMDS)が好ましい。これにより、多層プリント配線板作製工程における樹脂残渣除去工程でデスミア性に優れた多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物を得ることができる。
【0011】
前記(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカのシリカとしては、溶融シリカが好ましい。特に球状溶融シリカが好ましい。シリカは、他の無機充填材と比較して低熱膨張性に優れる点で好ましい。その形状は破砕状、球状等あるが、球状であるものが好ましい。球状であると多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物中における無機充填材含有量を多くすることができ、その場合でも流動性に優れている。また、前記球状シリカは、特に限定されることなく、公知の方法によって得られるもの使用することができる。前記球状シリカの種類としては、例えば乾式シリカ、湿式シリカ、ゾル−ゲル法によるシリカを挙げることができる。
【0012】
前記球状シリカを、官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理して用いる。表面処理を施すことで、シリカの凝集を抑制することができる。従って、本発明の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物に対して分散性に優れ、樹脂とシリカ表面の密着性が向上し、機械強度に優れる。
【0013】
前記(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカの平均粒子径としては特に限定されないが、0.05μm以上2.0μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.1μm以上1.0μm以下である。無機充填材の平均粒子径が前記下限値未満であると、本発明の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物を用いて樹脂ワニスを調製する際に、樹脂ワニスの粘度が高くなるため、基材付き絶縁シートを作製する際の作業性に影響を与える場合がある。一方、前記上限値を超えると、樹脂ワニス中で無機充填材の沈降等の現象が起こる場合がある。無機充填材の平均粒子径を前記範囲内とすることにより、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
【0014】
前記(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカの比表面積としては特に限定されないが、1m/g以上200m/g以下であることが好ましい。比表面積が前記上限値を超えると無機充填材どうしが凝集しやすくなり、絶縁樹脂組成物の構造が不安定になる場合がある。また前記下限値未満であると多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物中に無機充填材を充填しにくい場合がある。尚、比表面積は,BET法により求めた。
【0015】
前記(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカへの表面処理剤量は特に限定しないが、前記シリカに対して0.01重量%以上5重量%以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.1重量%以上3重量%以下が好ましい。カップリング剤の含有量が前記上限値を超えると、多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物にクラックが入る場合があり、前記下限値未満であると、樹脂成分との密着力が低下する場合がある。
【0016】
前記シリカの含有量として特に限定されないが、多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物全体の20〜80重量%であることが好ましい。さらに好ましくは25〜75重量%である。無機充填材の含有量が前記下限値未満であると、低熱膨脹性、低吸水性を付与する効果が低下する場合がある。また、前記上限値を超えると、絶縁樹脂組成物の流動性の低下により絶縁樹脂層の成形性が低下する場合がある。シリカの含有量を前記範囲内とすることにより、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
【0017】
前記シリカへのカップリング剤処理法は特に限定されないが、湿式方式または乾式方式が好ましい。
【0018】
前記シリカの粗粒カットレベルとしては特に限定されないが、5μm以上カットされていることが好ましい。これにより、5μm以上の粗粒の除去ができ、また異物の除去も可能となる。
【0019】
本発明の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物に用いる(B)エポキシ樹脂は、特に限定されないが、実質的にハロゲン原子を含まないものが好ましい。(B)エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'−シクロヘキシィジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'−(1,4)−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用もでき、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用することもできる。
これらエポキシ樹脂の中でも特にアリールアルキレン型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、吸湿半田耐熱性および難燃性を向上させることができる。
【0020】
前記アリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に一つ以上のアリールアルキレン基を有するエポキシ樹脂をいう。例えばキシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でもビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂が好ましい。ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂は、例えば式(I)で示すことができる。
【0021】
【化1】

【0022】
前記エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、絶縁樹脂組成物全体の5〜50重量%が好ましく、特に10〜40重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であるとシアネート樹脂の反応性が低下したり、得られる製品の耐湿性が低下したりする場合があり、前記上限値を超えると低熱膨張性、耐熱性が低下する場合がある。
【0023】
前記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量500〜20000が好ましく、特に800〜15000が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であると絶縁樹脂層の表面にタック性が生じる場合が有り、前記上限値を超えると半田耐熱性が低下する場合がある。重量平均分子量を前記範囲内とすることにより、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
前記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えばGPCで測定することができる。
【0024】
本発明の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物は製膜性が向上する樹脂を含有することが好ましい。これにより、基材付き絶縁樹脂層を製造する際の製膜性やハンドリング性をさらに向上させることができる。
【0025】
本発明の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物に用いる(C)硬化促進剤としてはエポキシ樹脂の硬化促進剤として公知の物を用いることが出来る。例えばイミダゾール化合物が好ましい。これにより、吸湿半田耐熱性を向上させることができる。前記イミダゾール化合物は、特に限定されないが、例えば、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−〔2'−メチルイミダゾリル−(1')〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2'−ウンデシルイミダゾリル)−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2'−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1')〕−エチル−s−トリアジン、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルー5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどを挙げることができる。
【0026】
これらの中でも、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、及び、2−エチル−4−メチルイミダゾールから選ばれるイミダゾール化合物であることが好ましい。これらのイミダゾール化合物は、特に優れた相溶性を有することで、均一性の高い硬化物が得られるとともに、微細かつ均一な粗化面を形成することができるので、微細な導体回路を容易に形成することができるとともに、多層プリント配線板に高い耐熱性を発現させることができる。
【0027】
前記イミダゾール化合物の含有量としては特に限定されないが、多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物に対して、0.01〜5重量%が好ましく、特に0.05〜3重量%が好ましい。これにより、特に耐熱性を向上させることができる。
【0028】
前記多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物には、更にシアネート樹脂を用いることが好ましい。シアネート樹脂は、例えばハロゲン化シアン化合物とフェノール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。具体的には、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂等を挙げることができる。これらの中でもノボラック型シアネート樹脂が好ましい。これにより、架橋密度増加による耐熱性が向上し、さらには難燃性も向上する。ノボラック型シアネート樹脂は、硬化反応後にトリアジン環を形成するからである。さらに、ノボラック型シアネート樹脂は、その構造上ベンゼン環の割合が高く、炭化しやすいためと考えられる。
【0029】
前記ノボラック型シアネート樹脂としては、例えば式(II)で示されるものを使用することができる。
【0030】
【化2】

【0031】
前記シアネート樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量500〜4500が好ましく、特に600〜3000が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であると絶縁樹脂層を硬化物の機械的強度が低下する場合があり、さらに絶縁樹脂層を作製した場合にタック性が生じ、樹脂の転写が生じたりする場合がある。また、重量平均分子量が前記上現値を超えると硬化反応が速くなり、基板(特に回路基板)とした場合に、成形不良が生じたり、層間ピール強度が低下したりする場合がある。
前記シアネート樹脂等の重量平均分子量は、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)で測定することができる。
【0032】
また、特に限定されないが、前記シアネート樹脂はその誘導体も含め、1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
【0033】
前記シアネート樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物全体の5〜50重量%が好ましく、特に10〜40重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると絶縁樹脂層を形成するのが困難となる場合があり、前記上限値を超えると絶縁樹脂層の強度が低下する場合がある。
【0034】
前記多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物には、更にフェノキシ樹脂が含まれることが好ましい。フェノキシ樹脂としては、特に限定はされないが、例えば、ビスフェノールA骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールM骨格(4,4'−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール骨格)を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールP(4,4'−(1,4)−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール骨格)骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールZ(4,4'−シクロヘキシィジエンビスフェノール骨格)骨格を有するフェノキシ樹脂等ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ノボラック骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノキシ樹脂、ノルボルネン骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
またフェノキシ樹脂として、これら中の骨格を複数種類有した構造を用いることもできるし、それぞれの骨格の比率が異なるフェノキシ樹脂を用いることができる。さらに異なる骨格のフェノキシ樹脂を複数種類用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有するフェノキシ樹脂を複数種類用いたり、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
【0035】
これらの中でも、ビフェニル骨格と、ビスフェノールS骨格とを有するフェノキシ樹脂を用いることができる。これにより、ビフェニル骨格が有する剛直性によりガラス転移温度を高くすることができるとともに、ビスフェノールS骨格により、多層プリント配線板を製造する際のメッキ金属の付着性を向上させることができる。
また、ビスフェノールA骨格とビスフェノールF骨格とを有するフェノキシ樹脂を用いることができる。これにより、多層プリント配線板の製造時に内層回路基板への密着性を向上させることができる。さらに、前記ビフェニル骨格とビスフェノールS骨格とを有するフェノキシ樹脂と、ビスフェノールA骨格とビスフェノールF骨格とを有するフェノキシ樹脂とを併用してもよい。
【0036】
前記フェノキシ樹脂の分子量としては特に限定されないが、重量平均分子量が5000〜100000であることが好ましい。さらに好ましくは10000〜70000である。製膜性樹脂の重量平均分子量が前記下限値未満であると、製膜性を向上させる効果が充分でない場合がある。一方、前記上限値を超えると、製膜性樹脂の溶解性が低下する場合がある。製膜性樹脂の重量平均分子量を前記範囲内とすることにより、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
【0037】
本発明の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物は実質的にハロゲン原子を含まないものであることが好ましい。これにより、ハロゲン化合物を用いることなく、難燃性を付与することができる。
ここで、実質的にハロゲン原子を含まないとは、例えば、エポキシ樹脂あるいはフェノキシ樹脂中のハロゲン原子の含有量が1重量%以下のものをいう。
【0038】
前記樹脂ワニスに用いられる溶媒は、前記多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物中の樹脂成分に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系等が挙げられる。
前記樹脂ワニス中の固形分含有量としては特に限定されないが、30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。
【0039】
更に本発明の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物には、必要に応じて、更にカップリング剤等の添加剤を用いることができる。本発明で使用できるカップリング剤としてはエポキシシラン、スチリルシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、ビニルシラン、イソシアネートシラン、スルフィドシラン、クロロプロピルシラン、ウレイドシラン等のアルコキシシラン化合物、アルキルシラザン類の中から選ばれる1種以上のカップリング剤を使用することが好ましい。これにより、樹脂成分と無機充填材との界面の濡れ性を特に高めることができ、耐熱性をより向上させることができる。
【0040】
前記カップリング剤の含有量としては特に限定されないが、上記シリカ100重量%に対して0.05〜5重量%であることが好ましい。
【0041】
前記多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物は、さらにポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体等のポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン、エポキシ変性ポリブタジエン、アクリル変性ポリブタジエン、メタクリル変性ポリブタジエン等のジエン系エラストマーを併用しても良い。
また、前記多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物には、必要に応じて、顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオン捕捉剤等の前記成分以外の添加物を添加しても良い。
【0042】
次に、本発明の基材付き絶縁シートについて説明する。
本発明の基材付き絶縁シートは、前記本発明の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物を含む基材付き絶縁シートであり、基材付き絶縁シートを作製する方法としては特に限定されないが、例えば、樹組成物を溶剤などに溶解・分散させて樹脂ワニスを調製して、各種塗工装置を用い、樹脂ワニスを基材に塗工した後、これを乾燥する方法、スプレー装置により樹脂ワニスを基材に噴霧塗工した後、これを乾燥する方法、などが挙げられる。
これらの中でも、コンマコーター、ダイコーターなどの各種塗工装置を用いて、樹脂ワニスを基材に塗工した後、これを乾燥する方法が好ましい。これにより、ボイドがなく、均一な絶縁シート層の厚みを有する基材付き絶縁シートを効率よく製造することができる。
【0043】
本発明の基材付き絶縁シートにおいて、絶縁層の厚さとしては特に限定されないが、10〜100μmであることが好ましい。さらに好ましくは20〜80μmである。これにより、この基材付き絶縁シートを用いて多層プリント配線板を製造する際に、内層回路の凹凸を充填して成形することができるとともに、好適な絶縁層厚みを確保することができる。
【0044】
本発明の基材付き絶縁シートに用いられる基材としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂フィルム、あるいは、銅及び/又は銅系合金、アルミ及び/又はアルミ系合金、鉄及び/又は鉄系合金、銀及び/又は銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金等の金属箔などを用いることができる。
前記基材の厚みとしては特に限定されないが、10〜70μmのものを用いると、基材付き絶縁シートを製造する際の取り扱い性が良好であり好ましい。
なお、本発明の基材付き絶縁シートを製造するにあたっては、絶縁シートと接合される側の絶縁基材表面の凹凸は極力小さいものであることが好ましい。これにより、本発明の作用を効果的に発現させることができる。
【0045】
本発明の基材付き絶縁シートは、多層プリント配線板を製造する工程において、例えば過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤を用いて表面の粗化処理を行うと、粗化処理後の絶縁層表面に均一性の高い微小な凹凸形状を多数形成することができる。
このような粗化処理後の絶縁樹脂層表面に金属メッキ処理を行うと、粗化処理面の平滑性が高いため、微細な導体回路を精度よく形成することができる。また、微小な凹凸形状によりアンカー効果を高め、絶縁樹脂層とメッキ金属との間に高い密着性を付与することができる。
【0046】
次に、本発明の基材付き絶縁シートを用いた多層プリント配線板について説明する。
前記多層プリント回路板は、前記基材付き絶縁シートを内層回路板の片面又は両面に重ね合わせて加熱加圧成形してなるものである。
具体的には、前記本発明の基材付き絶縁シートの絶縁シート層側と内層回路板とを合わせて、真空加圧式ラミネーター装置などを用いて真空加熱加圧成形させ、その後、熱風乾燥装置等で加熱硬化させることにより得ることができる。
ここで加熱加圧成形する条件としては特に限定されないが、温度60〜160℃、圧力0.2〜3MPaで実施することが好ましい。また、加熱硬化させる条件としては特に限定されないが、温度140〜240℃、時間30〜120分間で実施することが好ましい。
あるいは、前記本発明の基材付き絶縁シートの絶縁シート層側を内層回路板に重ね合わせ、平板プレス装置などを用いて加熱加圧成形することにより得ることができる。ここで加熱加圧成形する条件としては特に限定されないが、温度140〜240℃、圧力1〜4MPaで実施することが好ましい。
なお、前記多層プリント配線板を得る際に用いられる内層回路板は、例えば、銅張積層版の両面に、エッチング等により所定の導体回路を形成し、導体回路部分を黒化処理したものを好適に用いることができる。
【0047】
前記で得られた多層プリント配線板は、さらに、基材を剥離除去して、絶縁樹脂層表面を過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤などにより粗化処理した後、金属メッキにより新たな導電配線回路を形成することができる。本発明の絶縁樹脂組成物から形成された絶縁樹脂層は、前記粗化処理工程において、微細な凹凸形状を高い均一性で多数形成することができ、また、絶縁樹脂層表面の平滑性が高いため、微細な配線回路を精度よく形成することができる。
【0048】
次に、本発明の多層プリント配線板を用いた半導体装置について説明する。
前記半導体装置は、前記多層プリント配線板に半導体素子を実装し、封止樹脂によって封止することによって製造する。半導体素子の実装方法、封止方法は特に限定されない。本発明の多層プリント配線板をパッケージ用基板として使用することにより、高密度実装が可能なうえ、信頼性に優れた半導体装置を製造することができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例および比較例により詳細に説明する。
【0050】
実施例及び比較例において用いた原材料は以下の通りである。
(1)シアネート樹脂/ノボラック型シアネート樹脂:ロンザ社製・「プリマセットPT−30」、重量平均分子量700
(2)エポキシ樹脂/ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂:日本化薬社製・「NC−3000」、エポキシ当量275、重量平均分子量1000
(3)フェノキシ樹脂A/ビフェニルエポキシ樹脂とビスフェノールSエポキシ樹脂との共重合体であり、末端部はエポキシ基を有している:ジャパンエポキシレジン社製・「YX−8100H30」、重量平均分子量30000)
(4)フェノキシ樹脂B/ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との共重合体であり、末端部はエポキシ基を有している:ジャパンエポキシレジン社製・「jER4275」、重量平均分子量60000)
(5)硬化促進剤/イミダゾール化合物:四国化成工業社製・「キュアゾール1B2PZベンジル−2−フェニルイミダゾール)」
(6)シリカA/球状溶融シリカ:電気化学工業社製・「SFP−20M(フェニルアミノシラン処理)」、平均粒径約0.3μm、比表面積約11.4m/g
(7)シリカB/球状溶融シリカ:電気化学工業社製・「SFP−20M(ビニルシラン処理)」、平均粒径約0.3μm、比表面積約11.4m/g
(8)シリカC/球状溶融シリカ:電気化学工業社製・「SFP−20M(HMDS処理)」、平均粒径約0.3μm、比表面積約10.7m/g
(9)シリカD/球状溶融シリカ:電気化学工業社製・「SFP−20M」、平均粒径約0.3μm、比表面積約13.9m/g
(10)カップリング剤/エポキシシランカップリング剤:日本ユニカー社製・「A−187」
【0051】
<実施例1>
(1)樹脂ワニスの調製
シリカA24.7重量部、シアネート樹脂45重量部、エポキシ樹脂25重量部、フェノキシ樹脂B5重量部を溶剤に溶解・分散させた。さらにカップリング剤0.2重量部、硬化促進剤0.1重量部を添加し、攪拌機にて攪拌し樹脂ワニスを調整した。
【0052】
(2)基材付き絶縁シートの製造
前記で得られた樹脂ワニスを、厚さ38μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの片面に、コンマコーター装置を用いて乾燥後の絶縁フィルムの厚さが40μmとなるように塗工し、これを110〜150℃の乾燥装置で乾燥して、基材付き絶縁シートを製造した。
【0053】
(3)多層プリント配線板1の製造
所定の内層回路が両面に形成された内層回路基板の表裏に、前記で得られた基材付き絶縁樹脂層の絶縁樹脂面を内側にして重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形させ、その後、熱風乾燥装置にて170℃で45分間加熱硬化行った。
なお、内層回路基板としては、ハロゲンフリー FR−4材(厚さ0.4mm)を用い、絶縁樹脂層に形成する導体層には厚み18μmの銅箔を用いた。
【0054】
(4)多層プリント配線板2の製造
前記で得られた多層プリント配線板1から基材を剥離し、80℃の膨潤液(アトテックジャパン社製・「スウェリングディップ セキュリガント P500」)に10分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製・「コンセントレート コンパクト CP」)に20分浸漬後、中和して粗化処理を行った。
これを脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅メッキ皮膜を約1μm、電気メッキ銅30μm形成させ、熱風乾燥装置にて200℃で60分間アニール処理を行い、多層プリント配線板を得た。
【0055】
(5)半導体装置の製造
50mm×50mmサイズの両面銅張積層板上に所定の回路配線を形成し、厚さ0.8mm、15mm×15mmサイズの半導体素子をフリップチップボンダーで実装し、リフロー炉にて接合し、アンダーフィルを充填することによって、半導体装置を作製した。
【0056】
<実施例2>
シリカA39.7重量部、シアネート樹脂30重量部、エポキシ樹脂25重量部、フェノキシ樹脂A5重量部を溶剤に溶解・分散させた。さらにカップリング剤0.2重量部、硬化促進剤0.1重量部を添加し、攪拌機にて攪拌し樹脂ワニスを調整した。この樹脂ワニスを用い、実施例1と同様にして、基材付き絶縁シート及び多層プリント配線板1、2、及び半導体装置を得た。
【0057】
<実施例3>
シリカB39.7重量部、シアネート樹脂35重量部、エポキシ樹脂20重量部、フェノキシ樹脂B5重量部を溶剤に溶解・分散させた。さらにカップリング剤0.2重量部、硬化促進剤0.1重量部を添加し、攪拌機にて攪拌し樹脂ワニスを調整した。この樹脂ワニスを用い、実施例1と同様にして、基材付き絶縁シート及び多層プリント配線板1、2、及び半導体装置を得た。
【0058】
<実施例4>
シリカC39.7重量部、シアネート樹脂35重量部、エポキシ樹脂20重量部、フェノキシ樹脂A5重量部を溶剤に溶解・分散させた。さらにカップリング剤0.2重量部、硬化促進剤0.1重量部を添加し、攪拌機にて攪拌し樹脂ワニスを調整した。この樹脂ワニスを用い、実施例1と同様にして、基材付き絶縁シート及び多層プリント配線板1、2、及び半導体装置を得た。
【0059】
<比較例1>
シリカD39.7重量部、シアネート樹脂20重量部、エポキシ樹脂20重量部、フェノキシ樹脂A20重量部を溶剤に溶解・分散させた。さらにカップリング剤0.2重量部、硬化促進剤0.1重量部を添加し、攪拌機にて攪拌し樹脂ワニスを調整した。この樹脂ワニスを用い、実施例1と同様にして、基材付き絶縁シート及び多層プリント配線板1、2、及び半導体装置を得た。
【0060】
<比較例2>
シリカD81.7重量部、シアネート樹脂6重量部、エポキシ樹脂6重量部、フェノキシ樹脂B6重量部を溶剤に溶解・分散させた。さらにカップリング剤0.2重量部、硬化促進剤0.1重量部を添加し、攪拌機にて攪拌し樹脂ワニスを調整した。この樹脂ワニスを用い、実施例1と同様にして、基材付き絶縁シート及び多層プリント配線板1、2、及び半導体装置を得た。
【0061】
評価方法は下記のとおりである。
【0062】
1.基材付き絶縁シートの評価
基材付き絶縁シートの内側を重ね合わせ、基材を除去した。トータル枚数が5枚重ねになるまで前記作業を繰り返し、最終的に基材を除去し、5枚重ねの絶縁樹脂層をサークルカッターで切り出した。また、同様に銅箔を絶縁樹脂層と同じ大きさにカットし、絶縁樹脂層の両面に重ね、170℃×5分でプレスし、銅箔からはみ出た樹脂分との重量減少量にて流動性を算出した。
【0063】
2.デスミア性の評価
多層プリント配線板2を作製した後,SEMにて多層プリント配線板2の表面を観察し、ひび割れの有無を確認した。
【0064】
3.多層プリント配線板の評価(吸湿半田耐熱)
厚さ0.2mmの両面銅張積層板から50mm×50mmに切り出し、JIS C 6481に従い半面エッチングを行ってテストピースを作成した。121℃のプレッシャークッカーで2時間処理した後、260℃のはんだ槽に銅箔面を下にして浮かべ、120秒後の外観異常の有無を調べた。
【0065】
4.半導体装置の評価(熱衝撃試験)
厚さ0.8mmの両面銅張積層板を用いて半導体装置のテストピースを作製した。得られたテストピースをフロリナート中で−55℃10分、125℃10分、−55℃10分を1サイクルとして、1000サイクル処理し、テストピースにクラックが発生していないか確認した。
【0066】
実施例および比較例で得られた基材付き絶縁シート、及び、多層プリント配線板について、特性の評価を行った結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
前記表1中の各数字及び符号の意味は、以下のとおりである。
[流動性]
○:20%以上
△:10〜20%
×:10%未満
[デスミア性]
○:ひび割れ無し
×:ひび割れ有り
[吸湿半田耐熱]
○:異常なし
×:フクレあり
[熱衝撃試験]
○:異常なし
×:クラック発生
【0069】
表1から明らかなように、実施例1〜4は、流動性、デスミア性、吸湿半田耐熱性、熱衝撃試験に優れていた。これに対して、比較例1と比較例2は、流動性、デスミア性、吸湿半田耐熱性、熱衝撃試験において劣っていた。
【0070】
本発明によれば、多層プリント配線板作製工程における樹脂残渣除去工程でデスミア性に優れる多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物を用い、多層プリント配線板を製造した場合に、吸湿半田耐熱性に優れ、半導体装置を製造した場合は、熱衝撃試験に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分を必須成分とする多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカ
(B)エポキシ樹脂
(C)硬化促進剤
【請求項2】
前記(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカの平均粒径が2.0μm以下である請求項1記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカの官能基含有シラン類が、2級アミノシラン化合物である請求項1または2に記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカの比表面積は、1.0m/g以上200m/g以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理されたシリカの含有量が、多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物の20重量%以上80重量%以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
【請求項6】
多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物は、シアネートエステル樹脂を含むものである請求項1ないし5のいずれかに記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
【請求項7】
前記シアネートエステル樹脂は、フェノールノボラック骨格を含むものである請求項6に記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
【請求項8】
多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物は、フェノキシ樹脂を含むものである請求項1ないし7のいずれかに記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
【請求項9】
前記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、及びビスフェノールS型よりなる群から選ばれる少なくとも1種の骨格を有するフェノキシ樹脂の1種以上含むものである請求項8に記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の多層プリント配線板用絶縁樹脂組成物を含む基材付き絶縁シート。
【請求項11】
請求項10に記載の基材付き絶縁シートを内層回路板の片面または両面に重ね合わせて加熱加圧成型してなる多層プリント配線板。
【請求項12】
請求項11に記載の多層プリント配線板に半導体素子を搭載した半導体装置。

【公開番号】特開2012−64952(P2012−64952A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223612(P2011−223612)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【分割の表示】特願2006−313990(P2006−313990)の分割
【原出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】