説明

多層プレート小片構造を有する絶縁テープ

その最薄寸法で0.01から0.05mmの平均サイズ範囲を有するマイカフレーク小片(22)、その最長寸法で10から1,000nmの平均サイズ範囲を有する六方晶窒化ホウ素(26)及び樹脂マトリックスから製造される電気絶縁紙。前記マイカフレーク小片及び前記六方晶窒化ホウ素と混合されて、紙(17)に形成され、前記樹脂は、形成後の紙に加えられ、前記六方晶窒化ホウ素対前記マイカフレーク小片の重量比は、前記六方晶窒化ホウ素の平均サイズに対する前記マイカフレーク小片の平均サイズに、調整係数の範囲内で、正比例する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に援用される、Smithらにより2005年4月15日に出願された、米国特許出願第11/106,846号、「高熱伝導性材料を備えた絶縁紙」の一部継続出願である。
【0002】
本発明の分野は、ホスト樹脂マトリックス内の充填材及びその相互作用に関する。
【背景技術】
【0003】
電気器具を使用する場合、導体を電気絶縁することが必要である。サイズの絶え間ない縮小並びに電気及び電子系の簡素化の推進に伴い、より良好で且つよりコンパクトな絶縁体及び絶縁系を見出すことが、対応して必要となっている。
【0004】
強靭で柔軟な電気絶縁材料であって表面に容易に接着させることができるという実用的な利点により、様々なエポキシ樹脂材料が、電気絶縁系で広範囲に使用されている。マイカフレークやガラス繊維等の慣用の電気絶縁材料を、これらのエポキシ樹脂で表面被覆し、結合させると、高い機械的強度、耐化学薬品性及び電気絶縁特性を備えた複合体料を製造することができる。多くの場合、エポキシ樹脂が、慣用のワニスに取って代わっているが、それにも拘らず、このような材料は、一部の高圧電気装置で引き続き使用されている。
【0005】
良好な電気絶縁体は、まさしくその本質により、良好な熱絶縁体である傾向をも、また、有するが、このことは、望ましくない。熱絶縁挙動は、特に空冷電気器具及び部品における熱絶縁挙動は、部品と同様に器具全体の効率及び耐久性を低下させる。最大電気絶縁特性及び最小熱絶縁特性を有する電気絶縁系を製造することが望ましい。
【0006】
電気絶縁は、往々にして、それ自体が様々な層を有する絶縁テープの形態で現れる。界面で繊維層に結合している紙層が、これらのタイプのテープに共通していて、その際、両方の層に、樹脂が含浸されていることが多い。好ましいタイプの絶縁材料は、マイカテープである。マイカテープの改善には、特許文献1に教示されている触媒添加マイカテープが包含される。マイカテープを導体の周囲に巻き付けると、極めて良好な絶縁を得ることができる。この例は、図1に示されている。そこでは、複数回方向転換する導体14を含むコイル13が図示されており、導体14は、そこに図示されている例では、ベークライト処理されたコイルに組立てられている。ターン絶縁15は、繊維材料、例えばガラス又はガラス及び熱処理されているダクロンから調製されている。コイルのための接地絶縁は、ベークライト処理されたコイル14の周りに1つ又は複数の層の複合マイカテープ16を巻き付けることにより与えられる。このような複合テープは、例えばガラス繊維布又はポリエチレングリコールテレフタレートマットで構成された柔軟なバッキングシート18と、小さなマイカフレークの紙又はフェルトとの、組合せであってよく、ここで、マイカ20の層は、液体樹脂結合剤により、それに結合されている。通常、複数層の複合テープ16を、電圧要求に応じてコイルの周りに巻き付ける。強靱な繊維材料、例えばガラス繊維、の外側テープ21の巻き付けをコイルに適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6103882号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常、多重層のマイカテープ16を、コイルの周りに巻き付けるが、高圧コイルには、通常、16層以上が使用される。次いで、樹脂がテープ層に含浸される。樹脂を、絶縁テープとは独立に、絶縁としても使用することができる。残念ながら、この量の絶縁は、熱放散の複雑さを更に増すだけである。必要なことは、慣用の方法におけるよりも多くの熱を伝導しうるが、電気絶縁並びに機械的及び熱的性能を始めとする他の性能因子を損なうことのない電気絶縁である。
【0009】
先行技術には、他の困難も、また、存在し、そのうちのいくつかは、更に読み進むと、明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の事項を考慮して、本発明に一致する方法及び装置は、特に、マイカ及び六方晶窒化ホウ素(hBN)組成物を製造することにより、絶縁材料の熱伝導性を促進する。マイカ及びhBN成分のサイズ分布に応じて、この組成物を使用して絶縁紙又は粉末を製造するが、これらは、成形可能かつ押出し可能な絶縁体として使用可能な、樹脂等の、様々な材料と組み合わせることができる。
【0011】
また、本発明のマイカ−hBN組成物に、他のタイプの高熱伝導性(HTC)充填材を含浸させて、熱伝導性及び他の物理的特性を更に高めることができる。絶縁紙が、この組成物から形成される場合には、絶縁紙は、単独で又は他の材料と組み合わされて、絶縁テープを形成することができる。これらの他の材料は典型的には、ガラス等の繊維バッキング、及び樹脂含浸体を含む。また、他の材料をHTC材料と混合して、組合せHTC材料テープ製品を製造することもできる。
【0012】
本発明に一致する、これらの及び他の対象、形態及び利点は、その最薄寸法で0.01から0.05mmの平均サイズ範囲を有するマイカフレーク小片及びその最長寸法で10から10,000nmの平均サイズ範囲を有する六方晶窒化ホウ素からなる電気絶縁部品並びに樹脂マトリックスによる、特定の実施態様をもたらす。他の側面では、六方晶窒化ホウ素は、10〜100nmの平均サイズ範囲及び1:100から1:20の間の六方晶窒化ホウ素対マイカ重量比を、又は100〜1,000nmの平均サイズ範囲及び1:50から1:10の間の重量比を、又は1,000nmから10,000nmの平均サイズ範囲及び1:10から1:2の間の重量比を有する。マイカフレーク小片及び六方晶窒化ホウ素は混合され、六方晶窒化ホウ素対マイカ小片重量比は、マイカフレーク小片の平均サイズに対する六方晶窒化ホウ素の平均サイズに、0.5から2の調整係数の範囲内で、正比例し、六方晶窒化ホウ素対マイカフレーク小片重量比は、重量で約1:1を超えることはない。
【0013】
他の実施態様では、本発明は、特定の態様の電気絶縁部品を提供する。この部品は、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン及びダイヤモンドからなってよい高熱伝導性充填材並びに約1〜1,000nmのサイズのデンドリマーを含有してなり、このような高熱伝導性材料は、10〜50のアスペクト比を有する。特定の態様では、高熱伝導性充填材が樹脂に充填され、高熱伝導性材料は、樹脂の25〜40体積%を構成する。
【0014】
本発明の他の実施態様では、電気絶縁部品において、マイカフレーク小片及び六方晶窒化ホウ素は、紙に形成され、一側面では、紙が形成された後に、樹脂が、マイカフレーク小片及び六方晶窒化ホウ素に含浸される。関連実施態様では、マイカフレーク小片及び六方晶窒化ホウ素が樹脂と混合され、プレミックス成形コンパウンドとして使用するのに適した非常に高い粘度のパテ又はプレミックス成形コンパウンドが形成される。
【0015】
他の実施態様では、本発明は、その最薄寸法で0.01から0.05mmの平均サイズ範囲を有するマイカフレーク小片、その最長寸法で10から1,000nmの平均サイズ範囲を有する六方晶窒化ホウ素及び樹脂マトリックスを含有してなる電気絶縁紙を提供する。マイカフレーク小片及び六方晶窒化ホウ素を混合し、紙に形成し、形成後に、樹脂を紙に添加する。六方晶窒化ホウ素対マイカフレーク小片重量比は、マイカフレーク小片の平均サイズに対する六方晶窒化ホウ素の平均サイズに、0.5から2の調整係数の範囲内で、正比例し、六方晶窒化ホウ素対マイカフレーク小片重量比は、重量で約1:1を超えることはない。
【0016】
他の実施態様では、本発明は、プレート小片窒化ホウ素(及び、より特定の側面では、六方晶窒化ホウ素)とマイカフレーク小片との混合物を含有してなる電気絶縁複合体を提供する。それらの比は、0.5から2の係数の範囲内で平均サイズ範囲に正比例する。六方晶窒化ホウ素は、その最長寸法で10から10,000nmの平均サイズ範囲を有し、より特定の側面では、窒化ホウ素は、1,000nmから10,000nmの平均サイズ範囲を有し、係数は、1を超える。最後に、この実施態様では、電気絶縁複合体を、樹脂マトリックスと組み合わせる。電気絶縁複合体のより特定の側面では、マイカフレーク小片は、1,000nmから10,000nmの平均サイズ範囲を有し、プレート小片窒化ホウ素対マイカフレーク小片比は、約1:1であり、より特定の側面では、樹脂は、複合体と共にペーストを形成する。
【0017】
本発明の他の実施態様もまた存在し、これは、詳細な説明を更に読み進むと明らかになるであろう。
【0018】
次の図面を参照して、例により、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ステータコイルに巻き付けられている絶縁テープの使用を示す図である。
【図2】本発明により製造された紙を通して流れる移動電荷(例えば、可動陽イオン又は陰イオン、電子及び正孔)の一様式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、マイカと組み合わされて、高熱伝導性組成物をもたらす長さ10〜10,000nmの範囲のプレート小片窒化ホウ素、特には六方晶窒化ホウ素(hBN)の組合せを提供する。マイカは、プレート小片形態に分割されうる構造を有し、このプレート小片形態は、積層紙等の製品に容易に形成することができ、次いで、この紙を、絶縁テープに形成することができる。本発明は、窒化ホウ素における同様の特性を使用して、より高熱伝導性である窒化ホウ素材料の代わりに、多少のマイカ材料を用いる。
【0021】
マイカが重要な絶縁体である理由の1つは、マイカフレーク及びフレーク小片のサイズである。マイカが形成されうるサイズ範囲は変動し得るが、通常、マイカは、天然に産生するマイカ及び慣用的に処理されたマイカ(既知の一般的な鉱物形態の全てを包含する)の範囲で、典型的には10mmまでの最長プレート小片寸法でマクロサイズ(0.01〜0.05mm)の厚さ範囲にある。合成マイカでは、最長寸法サイズ範囲は、100nmから10,000nmのミクロン及びサブミクロン範囲にあることもある。絶縁テープでは、マイカ紙を、強度のために、ガラスマット又は布等のバッキング布と組み合わせる。次いで、これを、後で、樹脂と混合し又は樹脂で含浸してもよい。
【0022】
マイカは、紙を形成するために良好なだけでなく、プレート小片が、電気トリーイングプロセスのために高い蛇行経路を作り出すので、これは、また、優れた電気絶縁材料となる。残念ながら、マイカは、また、非常に熱絶縁性でもあり、このことは、望ましくない副作用である。マイカを他の材料と組み合わせて、熱伝導性を改善する試みがなされてきたが、その挑戦の一つは、マイカの機械的安定性及び絶縁耐力特性を著しく損ないすぎないことである。
【0023】
顕微鏡的プレート小片hBNは、マイカと同様のプレート小片形態を有するが、かなり高い熱伝導性と、シート又は粒子の面内における剪断劈開(又は層間剥離)に関して匹敵する機械的強度とを伴う。同様のサイズ規模で比較すると、hBNは一般的に、マイカよりも、面方向で小さい寸法を有し、面に対して直角の厚さ寸法でかなり小さいので、いくつかの形態では、マイカプレート小片のアスペクト比に匹敵するアスペクト比又はマイカよりも高いアスペクト比を与える。特に、hBNは、所望の顕微鏡的サイズ範囲で容易に作ることができ、市販されている。hBNは、理想のタイプのプレート小片BNであるが、他の形態、菱面体等、のプレート小片BNも、また、存在する。
【0024】
マイカと組み合わされるhBNのサイズ範囲は、使用される組成物に応じて、様々なタイプの物理的特性をもたらす。次いで、これを操作して、生じる複合体の機械的安定性及び熱伝導性を変える。使用されるhBNの重量分率が高くなるほど、生じる組成物における熱伝導性は高くなるが、機械的強度は弱くなる。使用されるhBNの平均サイズが大きくなるほど、機械的強度は弱くなる。
【0025】
より高い強度の組成物を使用して、良好な機械的完全性を有する紙を製造することができる。その一方で、より弱い強度の組成物を粉末充填材として使用して、様々なマトリックスの熱伝導性及び誘電性を増強することもできる。特別のタイプのマトリックスは、マイカ−hBN組成物と組み合わせたときに、含浸、流延、押出し、被覆することができ、又は、更には、ペースト、パテ又はプレミックス成形コンパウンドとして使用することができる樹脂である。これらのプロセス方法では、粘度制御が重要であり、このような制御は、マイカ及びhBN成分の両方の濃度及び粒径分布を変えることにより達成することができる。
【0026】
更に、他のタイプのHTC材料、特にナノ(1〜1,000nm)規模の材料、をマイカ−hBN組成物と組み合わせて、熱伝導性及び機械的特性を更に増強することができる。HTC材料は、また、テープ等の、組成物が添加されて生じた製品に、添加することもできる。HTC充填材のタイプには、下記で更に検討される金属酸化物、窒化物、炭化物並びに混合された化学量論的及び非化学量論的組合せが包含される。
【0027】
hBNのサイズ範囲は、生じる組成物に一般的な特性及び特別の用途を付与する3つのカテゴリーに分類することができる。他方で、マイカは、共通して、マクロ規模(例えば、mmサイズ範囲)を有し、このことが、絶縁製品中により高度な蛇行構造を作ることにより、機械的強度及びより高い絶縁耐力に良好に寄与する。この例外は、押出し可能な絶縁材料を製造する場合に、ミクロサイズのマイカ粒子を使用することである。
【0028】
hBNの3種のカテゴリーは、ナノ、メソ及びミクロであり、これらは、その面長さで10〜100nm、100〜1,000nm及び1,000nmから10,000nmの平均サイズ分布を有する。hBNは、熱伝導性を増大させるものの、マイカに関連しては、マイカ−マイカ粒子結合を中断させることにより、紙形成組成物の機械的安定性を弱めるが、良好な電気絶縁特性の維持は支持する。
【0029】
マイカに対するhBNの重量比は、求められる特性に依る。機械的に安定な紙については、マクロサイズのマイカと混合されるナノサイズのhBNは、hBN約1〜5重量%で十分でありうる。約2〜10重量%の範囲のマクロマイカを伴うメソhBNも、また、機械的に安定な紙をもたらしうるが、マクロマイカを伴うhBNの使用は、hBNが1%を超えると、機械的に不安定な紙を生じるであろう。これらよりも高い重量分率の組成物は、機械的に弱いマット又は粉末を生じるが、これは、樹脂と混合し又は樹脂で含浸して、流動成形、流延、押出被覆及びパテ又はプレミックス適用品の圧縮による加工が可能となる。重量比及び粒径分布の制御により、組成物から形成される絶縁材料に所望の物理的特性を生じる。
【0030】
ナノサイズのhBNでは、組成物を、高い熱伝導性を有する自立性紙に形成することができる。大きなマイカフレークが、紙の大部分を形成する一方で、より小さなhBNが、フォノン伝達を改善する。特に、より小さなhBNは、熱伝導性が低くなりがちなマイカ紙空孔領域に集まる。
【0031】
メソサイズのhBNは、ナノサイズのhBNよりも、マイカに対してより高い充填性を有する。この組成でも、自立性紙を形成することができるが、これは、hBNがマイカ−マイカ結合を多少妨害するので、ナノサイズのhBNで形成される紙よりも弱い。
【0032】
ミクロサイズのhBNとマクロサイズのマイカとは、粉末形態として加工することができる2相組成物をもたらす。次いで、この粉末を、樹脂マトリックスと組み合わせて、液体絶縁材料を製造し、これを、流延、押出、被覆及び他の手段により加工し、次いで、樹脂の反応により固体に変換することができる。
【0033】
ミクロサイズのhBNを、また、同様のサイズのマイカプレート小片と組み合わせることもできる。これは、粉末を形成し、この粉末は、ホスト樹脂マトリックスと組み合わせると、成形可能かつ押出可能な絶縁物質を生じる。
【0034】
マイカがこのような良好な電気絶縁体である理由の1つは、マイカが電荷(イオン、電子及び空孔)の伝達に蛇行路を作ることである。これは、図2に図示されているが、ここで、複合紙17の断面を通過するために、電子30は、マイカ22の大きな積層フレーク小片を迂回することが必要である。hBN26等のプレート小片BNは、同様の機能32として役立つ。プレート小片BNは、マイカと同様の抵抗率、更に、良好な機械的安定特性を有する。プレート小片BNは、マイカフレーク小片と組み合わせられると、電気伝播が絶縁材料を通過するのにかなりかかる蛇行路をもたらす。
【0035】
一実施態様では、本発明は、最薄寸法で0.01から0.05mmの平均サイズ範囲を有するマイカフレーク小片、その最長寸法で10から10,000nmの平均サイズ範囲を有する六方晶窒化ホウ素及び樹脂マトリックスを含有してなる電気絶縁部品を提供する。他の側面では、六方晶窒化ホウ素は、10〜100nmの平均サイズ範囲及び1:100から1:20の六方晶窒化ホウ素対マイカ重量比を、又は100〜1,000nmの平均サイズ範囲及び1:50から1:10の重量比を、又は1,000nmから10,000nmの平均サイズ範囲、1:10から1:2の重量比を有する。マイカフレーク小片及び六方晶窒化ホウ素は混合され、六方晶窒化ホウ素対マイカフレーク小片重量比は、マイカフレーク小片の平均サイズに対する六方晶窒化ホウ素の平均サイズに、0.5から2の調整係数の範囲内で、正比例し、六方晶窒化ホウ素対マイカフレーク小片重量比は、重量で約1:1を超えることは決してない。
【0036】
他の実施態様では、本発明は、約1〜1,000nmのサイズの、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛及びダイヤモンド並びにデンドリマーから構成されてもよい高熱伝導性充填材を含有してなり、このような高熱伝導性材料が10〜50のアスペクト比を有する電気絶縁部品の特定の側面を提供する。特定の側面では、高熱伝導性充填材が樹脂に充填され、高熱伝導性材料は、樹脂の25〜40体積%を構成する。
【0037】
本発明の他の実施態様では、電気絶縁部品中で、マイカフレーク小片及び六方晶窒化ホウ素は、紙に形成されて、一側面では、紙が形成された後に、樹脂を、マイカフレーク小片及び六方晶窒化ホウ素に含浸させる。関連実施態様では、マイカフレーク小片及び六方晶窒化ホウ素を樹脂と混合して、プレミックス成形コンパウンドを包含するパテを形成する。
【0038】
他の実施態様では、本発明は、最薄寸法で0.01から0.05mmの平均サイズ範囲を有するマイカフレーク小片、その最長寸法で10から1,000nmの平均サイズ範囲を有する六方晶窒化ホウ素及び樹脂マトリックスを含有してなる電気絶縁紙を提供する。マイカフレーク小片及び六方晶窒化ホウ素を混合し、紙に形成し、形成の後に、樹脂を紙に添加し、六方晶窒化ホウ素対マイカフレーク小片重量比は、マイカフレーク小片の平均サイズに対する六方晶窒化ホウ素の平均サイズに、0.5から2の調整係数の範囲内で、正比例し、六方晶窒化ホウ素対マイカフレーク小片重量比は、重量で約1:1を超えることは決してない。
【0039】
他の実施態様では、本発明は、プレート小片窒化ホウ素(及び、より特定の側面では、六方晶窒化ホウ素)とマイカフレーク小片との混合物を含有してなり、それらの比が、0.5から2の係数の範囲内で平均サイズ範囲に正比例する電気絶縁複合体を提供する。六方晶窒化ホウ素は、その最長寸法で10から10,000nmの平均サイズ範囲を有し、より特定の側面では、窒化ホウ素は、1,000nmから10,000nmの平均サイズ範囲を有し、係数は、1を超える。最後に、この実施態様では、電気絶縁複合体を、樹脂マトリックスと組み合わせる。電気絶縁複合体のより特定の側面では、マイカフレーク小片は、1,000nmから10,000nmの平均サイズ範囲を有し、プレート小片窒化ホウ素対マイカフレーク小片比は、約1:1であり、より特定の側面では、樹脂が、複合体と共にペーストを形成する。
【0040】
絶縁紙に関しては、これらは、マイカ等のホストマトリックスを含有してなることが多く、紙に形成され、次いで、これが、樹脂若しくは促進剤又はその両方で含浸される。含浸させる前又は後に、テープで使用される紙を、ガラス又はポリマーフィルム等の高張力バッキングに添加する。絶縁テープのホストマトリックスは、非常に良好な電気絶縁体として作用するが、また、熱も絶縁し、これは、望ましくない副作用である。
【0041】
マイカ−hBNから、前記で検討されたように、形成されうる基材の熱伝導性を高めることが望ましい。本明細書で使用される場合、基材は、それから絶縁紙が形成されるホスト材料を指し、マトリックスは、基材から製造されるより全体的な紙成分を指している。これら2つの用語は、やや互換的に使用されていることもある。マトリックスは、また、ホスト樹脂を指すこともあり、次いでこれを、ホストテープと組み合わせることができるが、両方とも、HTC材料を別々に含浸させることができる。熱伝導性の上昇は、電気的特性、及び、散逸率等の誘電特性、又は引張強さ、凝集性等の基材の機械的特性を著しく損なうことなく、達成されなければならない。いくつかの実施態様では、表面被覆等で、物理的特性を改善することさえもできる。更に、いくつかの実施態様では、ホストマトリックスの電気抵抗率を、HTC材料を添加することによっても向上させることができる。
【0042】
HTC材料は、絶縁紙を製造する様々な段階のうちの1つ又は複数において、基材又はマトリックスに添加することができる。絶縁紙の製造には、別々の段階が存在する。これらは、3つの段階に分けることができる。原材料段階、スラリー段階及び紙製品段階である。例えば、マイカ紙は、マイカとして出発し、これを、フレークに、次いで、マイカフレーク小片に変換し、次いでこれを液体と組み合わせてスラリーにし、次いでこれを、機械に通して、マイカ紙を製造する。
【0043】
電気絶縁のために典型的に使用される標準的なマイカ(白雲母、フロゴパイト)に加えて、黒雲母マイカ、更に、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト及びクロライト等の数種の他のマイカ様アルミノケイ酸塩材料も、また、存在する。モンモリロナイトは、その構造中に格子を有し、ここには、金属カチオン等のHTC材料、有機化合物並びにモノマー及びポリマーが容易に挿入されて、高絶縁耐力複合体を生じることができる。
【0044】
HTC材料の添加は、任意の又は全ての製造段階で行なうことができる。これらの段階は、勿論、それぞれ、HTC材料を添加してもよい複数のサブ段階を含む。様々な段階でHTC材料を適用するプロセスは、これらの様々な段階でのホストマトリックスの物理的特性の差違に適合すべきである。例えば、ばらのマイカフレーク又はマイカフレーク小片へのHTC材料の添加は、スラリー又は紙製品中のマイカへの材料の添加とは異なる。HTC材料は、また、バッキング布又は層間結合樹脂等の、完成絶縁テープの他の構成部分に存在してもよい。
【0045】
絶縁紙を製造するプロセスは、熱的、化学的及び機械的処理を、個別に又は組み合わせて、併用して、パルプを製造し、次いで、これを、紙を構成するシートに変える。HTC材料は、原材料段階において、無水形態で又は液体若しくは他の媒体中に含有させて、添加することができる。HTC材料を、乾燥マイカフレーク小片等の基材に添加し、混ぜ合わせて、一例では、基材内での均質な分布を形成する。加熱等の方法を使用して液体媒体を除去し、HTC材料を基材に配送することができる。
【0046】
HTC材料を、液体担体中の凝集又は非凝集形態の懸濁液に添加することにより、スラリー段階でマトリックスに導入する。HTC材料の凝集は、通常、この段階では好ましくないが、場合によっては、凝集構造の性質に応じて、使用することもできる。界面活性剤、化学的表面製剤又はpH調節を使用して、粒子が、確実に、凝集しないように又は特定の方法で凝集するようにすることができる。HTCが、ある程度自己整列性であるか又は外力により整列させることができるならば、混合に際して十分な分散は必ずしも必要ではない。
【0047】
スラリー段階では、充填材は、粉末として又は液体相中の懸濁液として、添加することができる。液体は、当分野で使用される様々なタイプのものであってよいが、水が典型的である。水は、それ自体、脱イオン若しくは脱塩されていてもよく、又はpH値を調整するための添加剤を有してよい。
【0048】
HTC材料を紙製品に添加するために、充填材は、懸濁液として適切な溶媒に導入することができる。その例は、ヘキサン、トルエン、メチルエチルケトン等の典型的な有機溶媒である。同様に、HTC材料を、非凝集懸濁液として液体に均一に分布させることが望ましい。粒子のサイズ分布は、ホストマトリックス中での空孔サイズ分布に関連して、望ましい目標を満たすように選択することができる。HTC材料のサイズ及び形状分布を使用して、熱伝導性及び他の物理的特性に影響を及ぼすことができ、このことを達成するために、そのような部品の異なる稠密充填挙動又はその異なる凝集若しくは自己集合特性を使用することができる。
【0049】
スラリー又は紙製品段階では、溶媒は、また、ナフテン酸亜鉛及び他の金属塩又は有機金属化合物等の1種又は複数の促進剤を、含有してもよく、これらは、後で含浸される樹脂の反応を加速するために使用することができる。HTC材料を、一般的な溶媒中の促進剤又は促進剤と共に添加することができる。
【0050】
HTC材料は、マイカ及びポリエステル等の、ホストマトリックス又は基材に挿入される。他の基材成分には、ガラスフレーク及びポリイミドであるKapton(登録商標)又はポリエチレンテレフタレート等のポリエステルであるMylar(登録商標)が包含される。HTC材料は、任意のそして全部の外面及び内面に適用することができる。フレークは、一般的な第1段階基材であるが、数種の基材材料は、多層又は連続であってよい複合紙を形成することができる、異なる物理的構成又は物理的構成の組合せも使用することができる。
【0051】
HTC材料という用語は、ホストマトリックスの熱伝導性を高める粒子を指している。一実施態様では、これらは、約1〜1,000nmの寸法を有するナノ充填材である。これらは、球状でもプレート小片であってもよく、ウィスカ、ロッド又はナノチューブ等の高いアスペクト比並びに凝集体、繊維状樹脂状結晶、ロープ、バンドル、ネット及び他の形態等のその関連集成形態を有していてもよい。更に、HTC材料は、また、ホストマトリックスに適用することができる、ダイヤモンド様被覆(DLC)並びに様々な金属酸化物、窒化物、炭化物及び混合化学量論的及び非化学量論的組合せ等の、被覆を指している。後で検討するように、ナノ、メソ若しくはミクロの球及びロッドの組合せ又はナノ、メソ若しくはミクロ粒子上のDLC若しくは金属酸化物被覆のように、HTC材料を組み合わせることが可能である。また、ダイヤモンド様被覆とは別個である様々な形態のダイヤモンドナノ充填材が存在しうることを特記することも重要である。多くの紙絶縁体は、最後には、樹脂で含浸されるので、HTC材料が、含浸後にマトリックスの熱伝導性を高めることが、これらの実施態様の目的である。含浸の後に、ホストマトリックス粒子の表面に若しくは又は含浸樹脂と共に又はその両方の何らかの組合せで、熱伝導性ネットワークを形成することにより、粒子は熱伝導性を上昇させる。含浸樹脂は、また、それ自体、HTC材料を有してもよく、これは、絶縁紙に挿入されているHTC材料と共に、又はそれとは独立に、作用しうる。
【0052】
HTC材料は、従って、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛及びダイヤモンド、並びに、より高い熱伝導性をもたらす他のもの等の、ナノ、メソ及びミクロ無機HTC材料を更に含有してなる。これらの材料は、様々な結晶学的及び形態学的形態を有してよく、これらを、ホストマトリックスと共に、直接又は担体液体として作用する溶媒を介して、加工することができる。HTC材料をマトリックスに紙製品等の段階で添加する場合には、溶媒が好ましい輸送系であることがある。
【0053】
一実施態様では、HTC材料は、デンドリマーであり、他の実施態様では、これらは、3から100又はそれ以上、より特定の範囲では10〜50のアスペクト比(平均横寸法対平均縦寸法比)を有する高アスペクト比粒子を始めとする定義されたサイズ又は形状を有するナノ又はミクロ無機充填材である。
【0054】
一実施態様では、所望の形状及びサイズ分布並びに選択された表面特性を有するナノ、メソ及びミクロ無機充填材の表面被覆とバルク充填材特性とは、相互に相補的である。これにより、ホストマトリックスのより良好な穿孔が可能になり、独立連係特性が、必要なバルク特性を維持しながら独立に制御される。
【0055】
形状に関しては、ホストマトリックス中での穿孔を増強するために、天然のロッド及びプレート小片であることの多い形状−天然に形成されたもののほか、合成処理された材料を始めとするロッドが、最も好ましい実施態様であるが−を利用する。ロッドは、約5以上、特定の実施態様では、10以上、但し、より特定の実施態様では、100以下の、平均アスペクト比を有する粒子と定義される。一実施態様では、ロッドの軸長さは、約10nmから100ミクロンの範囲である。より小さいロッドは、完成されたホストマトリックスに溶媒を使用して添加すると、より良好にホストマトリックスを穿孔するであろう。
【0056】
多くのミクロ粒子は、球状、楕円形及び円盤状の形状を形成して、特定の条件下では均一に分布する能力が低減するので、凝集フィラメント状構造をもたらして穿孔が生じる濃度を低下させることがある。穿孔を高めることにより、基材の熱特性を高めるか、又は、基材に加える必要のあるHTC材料の量を減らすことができる。また、高い穿孔は、回避されるべき凝集よりもむしろ、基材内でのHTC材料のより均一な分布をもたらし、望ましくない界面、不完全な粒子濡れ及びミクロボイド形成を有することが少ないであろう、より均質な製品を作り出す。同様に、より高いアスペクト比粒子から形成された凝集フィラメント状又は樹枝状構造は、球状(稠密)凝集体又は凝集塊よりも、むしろ、高い熱伝導性をもたらす。
【0057】
一実施態様では、デンドリマーは、分離の有機デンドリマー複合体を含み、ここで、有機−無機界面は、デンドリマーコア−シェル構造とは非分離である。デンドリマーは、中心コア上に形成されている一群の三次元ナノ規模のコア−シェル構造である。コアは、有機又は無機材料からなるものであってよい。中心コア上に形成する場合、デンドリマーは、同心円シェルを順次加えることにより形成される。シェルは、分枝鎖分子群を含有してなるが、各分枝シェルは、世代と称される。典型的には、使用される世代の数は、1〜10であり、外側シェルでの分子群の数は、世代に伴って指数関数的に増える。分子群の組成は正確に合成することができ、外側基は、反応性官能基であってよい。デンドリマーは、ホストマトリックスと、また、相互に、結合することができる。従って、これらは、ホストにHTC材料として添加することができる。
【0058】
通常、デンドリマーが大きくなるほど、フォノン伝達要素として機能するその能力は高くなる。しかしながら、材料に浸透する能力及び穿孔能力は、そのサイズにより不利な影響を受けうるので、必要な構造及び特性のバランスを達成するために、最適なサイズを求める。他のHTC材料と同様に、溶媒をデンドリマーに添加して、マイカ又はガラステープ等の基材での含浸を促進する。多くの実施態様では、様々な分子群を伴う様々な世代のデンドリマーを使用する。
【0059】
市販の有機デンドリマーポリマーとしては、ポリアミド−アミンデンドリマー(PAMAM)及びポリプロピレン−イミンデンドリマー(PPI)並びにPAMAM内部構造とオルガノ−ケイ素外部構造とを備えたデンドリマーであるPAMAM−OSが包含される。前2種は、Aldrich ChemicalTMから、最後の1種は、Dow−CorningTMから入手することができる。
【0060】
相互に又は基材と反応しうる無機−有機デンドリマーには、同様の要件が存在する。この場合、デンドリマーの表面は、デンドリマー−デンドリマー、デンドリマー−有機、デンドリマー−ハイブリッド及びデンドリマー−HTCマトリックス反応を可能にする前記と同様の反応基を含有することができる。この場合、デンドリマーは、該当する有機又は無機反応性基又は配位子を含有する無機コア及び有機シェル又はその逆を有する。従って、一般的なゾル−ゲル化学に関与する反応と同様の無機反応に参加しうるヒドロキシル、シラノール、ビニル−シラン、エポキシ−シラン及び他の基等の反応基も含有する無機シェルを備えた有機コアを有することも可能である。
【0061】
分子群は、相互に又は基材と反応するその能力に関して選択することができる。しかしながら、他の実施態様では、デンドリマーのコア構造を、熱伝導性を促進するそれ自体の能力で選択することができ、例えば、下記で検討されるとおりの金属酸化物である。
【0062】
電気絶縁材料は、有機−無機複合体に基づくものであってよい。誘電特性(誘電率及び誘電損失)、導電率、絶縁耐力及び電圧耐久特性等の他の絶縁特性、熱安定性、引張弾性率、曲げ弾性率、衝撃強さ及び熱耐久性、更に、粘弾性特性及び熱膨張係数等の他の因子並びに全体絶縁に不利な影響を及ぼさずに、熱伝導性を最適化する。特性及び性能の適切なバランスを達成するように、有機及び無機相を構成し、選択する。
【0063】
ミクロ及びナノHTC粒子を、ロッド及びプレート小片等の望ましい形状に自己凝集する能力に基づいて選択することができる。粒子を、自然に自己集合する能力で選択することができるが、このプロセスは、また、粒子の、電荷分布を始めとする、粒子表面電荷状態に変化をもたらす電場、磁場、音波、超音波、pH制御、界面活性剤の使用及び他の方法等の外力により、増幅することもできる。特定の実施態様では、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンド等の表面被覆を例証する粒子を、所望の形状に自己集合させる。こうして、所望のロッド形状を、始めに高熱伝導性材料から製造するか、又はホストマトリックスへの導入の間に集合させることができる。
【0064】
多くの実施態様では、HTC材料のサイズ及び形状は、同じ用途内で変動する。複数のサイズ及び形状の範囲が、同じ製品で使用される。様々な長い及びより短い変動可能なアスペクト比のHTC材料が、ホストマトリックスの熱伝導性を増強し、更に、高い物理的特性及び性能を潜在的にもたらす。しかしながら、観察すべき一態様は、意図しない限り、基質/絶縁の層間の架橋を引き起こすほど、粒子長さが長くならないことである。また、様々な形状及び長さが、より均一な体積充填及び充填密度をもたらすことにより、HTC材料の穿孔安定性を改善して、より均質なマトリックスをもたらす。サイズ及び形状を混合すると、一実施態様では、より長い粒子は、よりロッド形状となる一方で、より小さな粒子は、より球状、プレート状又は円盤状、更には立方形にさえなる。例えば、HTC材料を含有するマトリックスは、体積で低くて約0.1%から高くて65%のHTC材料を含有し、より特定の範囲は、体積で約1〜25%である。
【0065】
関連実施態様では、HTC材料は、定義されたサイズ及び形状分布を有することができる。両方の場合に、充填材粒子の濃度及び相対濃度を、体積充填を用いて又は用いずに、高い熱伝導性をもたらすバルク結合(又はいわゆる穿孔)構造が達成されうるように選択して、向上した熱伝導性を有する構造的に安定な分離の2相複合体を達成する。他の関連実施態様では、HTC材料の配向により、熱伝導性を高める。更に他の実施態様では、HTC材料の表面被覆により、フォノン伝達を向上させる。これらの実施態様は、他の実施態様とは独立であってもよく一体的に関連していてよい。例えば、デンドリマーを、熱硬化性プラスチック及び熱可塑性材料等の、他のタイプの高構造化材料と組み合わせる。これらを、ホスト材料中に均一に分布させて、HTC材料が、フォノン散乱を低減し、フォノンのためのミクロ規模のブリッジをもたらして、HTC材料間に良好な熱伝導性界面をもたらすようにする。熱伝導性が、単一方向に沿って増加して、局在化又はバルク異方性電気絶縁材料をもたらすように、高度構造化材料を配列させる。他の実施態様では、定義されたバルク特性を有する充填材に物理的又は化学的に結合されている、高熱伝導性の金属酸化物、炭化物又は窒化物及び混合系で、比較的低い熱伝導性の充填材を表面被覆することにより、HTCを達成するが、ここで、このような結合は、化学蒸着及び物理蒸着等のプロセスにより、また、プラズマ処理により、達成される。
【0066】
表面官能基の添加には、ホストマトリックスとの化学反応に利用することができるヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン又はビニルの各基が包含される。これらの官能基は、無機充填材の表面に天然に存在していてもよく、湿潤化学法、プラズマ重合、化学蒸着及び物理蒸着を始めとする非平衡プラズマ蒸着、スパッタイオンメッキ並びに電子及びイオンビーム蒸発法を使用して付与してもよい。
【0067】
有機表面被覆並びに金属酸化物、窒化物、炭化物及び混合系等の無機表面被覆を生じさせることができるが、これらを、選択された粒径及び形状分布と組み合わせると、絶縁系の全体の熱及び電気伝導性の制御を伴う定義された穿孔構造が得られ、他方、粒子誘電率は、系の誘電率を制御するように選択することができる。
【0068】
反応性表面官能基は、無機被覆に固有の表面基から形成させてもよく追加の有機被覆を適用することにより達成することができるが、これら両方には、ホストマトリックスとの化学反応に利用可能な、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン、ビニル及び他の基が包含されうる。これらの単一又は複数の表面被覆及び表面官能基は、湿潤化学法、プラズマ重合及び化学蒸着及び物理蒸着を始めとする非平衡プラズマ方法、スパッタイオンメッキ並びに電子及びイオンビーム蒸発法を使用して付与することができる。
【0069】
ダイヤモンド様炭素被覆(DLC)は、高い硬度、低い摩擦、化学的不活性を有し、電気絶縁のための高い電気抵抗率(〜1013Ohm cm)と高い熱伝導性(>1,000W/mK)とを併せ持つことができる。DLCを製造するためには、プラズマアシスト化学蒸着(PACVD)、物理蒸着(PVD)及びイオンビーム蒸着(IBD)等、いくつかの方法が存在する。通常、DLCは、1ミクロンよりも厚さが薄く、非晶質炭素及び炭化水素からなり、混合sp2及びsp3結合をもたらす。結合比は、プロセスパラメーター、例えば、ガス比及びDC電圧、を変動させることにより、変動させ、特性の変化を生じさせることができる。結合比は、例えば、ラマン分光法を使用して、直接測定することができる。
【0070】
比較的大きな面積をかなり迅速に被覆することができる。例えば、PICVD低圧非平衡プロセスを使用すると、ガラス布表面に20〜100nmの被覆を、約1平方フィートの面積に数分で付与することができる。例えば被覆中の応力を低下させるための被覆パラメーターを制御又は最適化するために、DLCを、露出している基材又は他の被覆を有する基材に付与することができる。DLCは、連続していてもよく被覆面に間隙を有していてもよい。間隙は、例えば、含浸樹脂のより良好な結合を可能にするために、有利なことがある。
【0071】
熱伝導においては、構造素子の長さ規模を、熱伝達の原因であるフォノン分布よりも、確実に、短く又は同程度とすることによりフォノン伝達が増強され、フォノン散乱が低減される。比較的大きなHTC粒子材料は、それ自体の力で、フォノン伝達を実際に上昇させうるが、比較的小さなHTC材料は、ホストマトリックスの性質を変えることにより、フォノン散乱の変化に影響を及ぼしうる。これは、そのマトリックスが高い熱伝導性を示すこと、粒子サイズが、確実に、その効果を維持するのに十分なものにすること、また、フォノン散乱減少のための長さ規模要件を満たすことが知られているナノ粒子を使用することにより促進される。また、短い範囲周期及び比較的長い範囲周期の両方を有する反応デンドリマー格子及びマトリックスから形成されうるはしご又は秩序化ネットワーク構造を始めとする、より高度に秩序化された構造を選択することを考慮することも必要である。
【0072】
DLCをナノ、メソ、ミクロ及びより大きな寸法の粒子に適用すると、高熱伝導性粒子のサイズ及び形状を設計することができて、例えば、自然に生じ又は作り出した穿孔の効果により、利点を得ることができる。一例では、DLCを、ガラス繊維又はいくつかの繊維の表面に準連続的に被覆して付与する。被覆前の繊維表面は、被覆による所望の特性を促進するように選択する。次いで、繊維を機械的手段又は他の手段により分解して、所望の寸法分布を有する短いDLC被覆ロッドにする。他の例では、DLC被覆を、大きな表面対厚さ比を有するフレーク形状粒子−例として、マイカフレーク小片及びBN粒子が挙げられる−に適用する。
【0073】
多結晶性及び単結晶性ナノ粒子形態では、粒子は、担体粒子、例えばシリカ、の表面と会合することがある。シリカ自体は、強熱伝導性材料ではないが、表面被覆をすると、より高熱伝導性になりうる。しかしながら、シリカ及び他のこのような材料は、上記で検討したとおり、ロッド形状の粒子に容易に形成することができる等の有利な特性を有する。こうして、様々なHTC特性を組み合わせて、1つの製品にすることができる。これらの被覆は、また、後の樹脂含浸及び絶縁テープのガラス部品に適用することもできる。
【0074】
更に、流体流れ場並びに電場及び磁場を、HTC材料に適用して、それを分散させることができる。交流電場又は静電場を使用することにより、ロッド及びプレート小片形状を、ミクロ規模で配列させることができる。これは、異なる方向で異なる熱特性を有する材料を作り出す。電場の生成は、絶縁電気導体を横切って電極を取り付けることにより、又は材料又は絶縁系の中心で導体を使用すること等により、当分野で知られている様々な技術により達成することができる。
【0075】
本発明を主に、電気工業での使用で検討してきたが、本発明は、他の分野でも等しく適用可能である。熱移動を高める必要のある工業は、本発明により等しく利益を受けるであろう。例えば、オイル及びガスを包含するエネルギー工業である。本発明の他の対象には、パワーエレクトロニクス、プリント回路板、従来のエレクトロニクス及び集積回路が包含されるが、これらの分野では、部品の密度向上に対する高まる要求から、局所的に及び広い面積において効率的に熱を除去する必要性が生じている。
【0076】
本発明の特定の実施態様を詳述したが、本開示の教示全体を考慮すれば、これらの詳細に対する様々な変更及び代替を展開することができることは、当業者には理解されるであろう。従って、開示されている特定の組合せは、例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではないことが意図されており、本発明は、添付の請求項並びにその任意及び全ての等価物の全範囲であるべきである。
【符号の説明】
【0077】
17 紙
22 マイカフレーク小片
26 六方晶窒化ホウ素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイカフレーク小片であって、その最薄寸法で0.01から0.05mmの平均サイズ範囲を有するマイカフレーク小片;
六方晶窒化ホウ素であって、その最長寸法で10から10,000nmの平均サイズ範囲を有する六方晶窒化ホウ素;及び
樹脂マトリックス;
を含んでなる電気絶縁部品であって:
ここで、前記マイカフレーク小片及び前記六方晶窒化ホウ素は、混合されていて;
前記六方晶窒化ホウ素対前記マイカフレーク小片重量比は、前記マイカフレーク小片の平均サイズに対する前記六方晶窒化ホウ素の平均サイズに、0.5から2の調整係数の範囲内で、正比例し;
前記六方晶窒化ホウ素対前記マイカフレーク小片重量比は、重量で約1:1を超えることはない、電気絶縁部品。
【請求項2】
高熱伝導性充填材を更に含んでなる、請求項1に記載の電気絶縁部品。
【請求項3】
前記高熱伝導性充填材が、サイズが約1〜1,000nmの、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン及びダイヤモンド並びにデンドリマーのうちの少なくとも1種を含み、前記高熱伝導性材料が、10〜50のアスペクト比を有する、請求項2に記載の電気絶縁部品。
【請求項4】
前記高熱伝導性充填材が、前記樹脂に充填されていて、前記高熱伝導性材料が、前記樹脂の25〜40体積%を構成する、請求項2に記載の電気絶縁部品。
【請求項5】
前記マイカフレーク小片及び前記六方晶窒化ホウ素が紙に形成されている、請求項1に記載の電気絶縁部品。
【請求項6】
前記紙が形成された後に、前記樹脂が前記マイカフレーク小片及び前記六方晶窒化ホウ素に含浸されている、請求項5に記載の電気絶縁部品。
【請求項7】
前記マイカフレーク小片及び前記六方晶窒化ホウ素が、前記樹脂と混合されて、パテを形成している、請求項1に記載の電気絶縁部品。
【請求項8】
前記六方晶窒化ホウ素が10〜100nmの平均サイズ範囲を有し、六方晶窒化ホウ素対マイカ比が、重量で1:100から1:20である、請求項1に記載の電気絶縁。
【請求項9】
前記六方晶窒化ホウ素が、100〜1,000nmの平均サイズ範囲を有し、六方晶窒化ホウ素対マイカ比が、重量で1:50から1:10である、請求項1に記載の電気絶縁部品。
【請求項10】
前記六方晶窒化ホウ素が、1,000nmから10,000nmの平均サイズ範囲を有し、六方晶窒化ホウ素対マイカ比が、重量で1:10から1:2である、請求項1に記載の電気絶縁部品。
【請求項11】
マイカフレーク小片であって、その最薄寸法で0.01から0.05mmの平均サイズ範囲を有するマイカフレーク小片;
六方晶窒化ホウ素であって、その最長寸法で10から1,000nmの平均サイズ範囲を有する六方晶窒化ホウ素;及び
樹脂マトリックス;
を含んでなる電気絶縁紙であって:
ここで、前記マイカフレーク小片及び前記六方晶窒化ホウ素は混合されて、紙に形成されるが、形成後に、前記樹脂が前記紙に加えられ;
前記六方晶窒化ホウ素対前記マイカフレーク小片重量比は、前記マイカフレーク小片の平均サイズに対する前記六方晶窒化ホウ素の平均サイズに、0.5から2の調整係数の範囲内で、正比例し、;
前記六方晶窒化ホウ素対前記マイカフレーク小片重量比は、重量で約1:1を超えることはない、電気絶縁紙。
【請求項12】
高熱伝導性充填材を更に含んでなる、請求項1に記載の電気絶縁紙。
【請求項13】
プレート小片窒化ホウ素とマイカフレーク小片との混合物であって、
前記プレート小片窒化ホウ素対前記マイカフレーク小片比は、0.5から2の係数の範囲内で、平均サイズ範囲に正比例する混合物;
を含有してなる電気絶縁複合体であって:
前記六方晶窒化ホウ素は、その最長寸法で10から10,000nmの平均サイズ範囲を有し;
前記電気絶縁複合体が、樹脂マトリックスと組み合わされている、
電気絶縁複合体。
【請求項14】
前記プレート小片窒化ホウ素が六方晶窒化ホウ素である、請求項13に記載の電気絶縁複合体。
【請求項15】
前記窒化ホウ素が、1,000nmから10,000nmの平均サイズ範囲を有し、前記係数が、1を超えている、請求項13に記載の電気絶縁複合体。
【請求項16】
前記マイカフレーク小片が、1000nmから10,000nmの平均サイズ範囲を有し、前記プレート小片窒化ホウ素対前記マイカフレーク小片比が、約1:1である、請求項13に記載の電気絶縁複合体。
【請求項17】
前記樹脂が、前記複合体と共にペーストを形成している、請求項16に記載の電気絶縁複合体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−517222(P2010−517222A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546395(P2009−546395)
【出願日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/000166
【国際公開番号】WO2008/091489
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(599078705)シーメンス エナジー インコーポレイテッド (57)
【Fターム(参考)】