説明

多層ポリイミドフィルム

【課題】 高温高湿時における剥がれの生じない耐熱接着性多層フィルムを提供する。
【解決手段】(a)層:フッ素樹脂と、サーモトロピック型の液晶高分子とを主成分とする層と、(b)層:芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とを重縮合して得られるポリイミドからなる非熱可塑性ポリイミドフィルムとが少なくとも積層された構成を有する多層ポリイミドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層ポリイミドフィルムに関し、ポリイミドフィルムを基材フィルムとし、その表面に特定の熱可塑性樹脂を積層し、表面物性を熱可塑性樹脂保有の接着性、電気絶縁性、ガスバリア性に優れた物性とした多層ポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、−269〜300℃までの広い温度範囲での物性変化が極めて少ないために、電気及び電子分野での応用、用途が拡大している。電気分野では、例えば車両用モーターや産業用モーター等のコイル絶縁、航空機電線及び超導電線の絶縁等に使用されている。一方、電子分野では、例えばフレキシブルプリント基板や、半導体実装用フィルムキャリヤーのベースフィルム等に利用されている。このようにポリイミドフィルムは、種々の機能性ポリマーフィルムの中でも極めて信頼性の高いものとして、電気及び電子分野で広く利用されている。しかし、最近では電気及び電子分野等のファイン化にともなって問題が顕在化してきている。例えば、銅を蒸着又はメッキ等によって銅張したポリイミドフィルム基材からなるプリント基板は、経時変化、環境変化によって銅層の密着力が低下し、更には剥離が発生する傾向が認められる。
【0003】
また、情報通信機器(放送機器、移動体無線、携帯通信機器等)、レーダーや高速情報処理装置などといった電子部品の基材の材料として、従来のセラミックに代わるものとして、ポリイミドフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルムなどが提案されている。
従来のポリイミドフィルムは耐熱性に優れ、かつ強靭であるのでフィルムを薄くできるという長所を備えているが、高周波における信号強度の低下や信号伝達の遅れなどという点、引張破断強度、引張弾性率がまだ不十分である点、線膨張係数が大きすぎる点などの課題を有している。
一方、従来のポリテトラフルオロエチレンフィルムは、高周波にも対応し得るが、引張弾性率が低いのでフィルムを薄くできない点、金属導体や抵抗体などとの接着性が悪いという点、線膨張係数が大きく温度変化による寸法変化が著しくて微細な配線をもつ回路の製造に適さない点などが問題となり、使用できる分野が限定される。このように、耐熱性、高機械的物性、フレキシブル性を兼ね備えた基材用のフィルムは未だ得られていない。
【0004】
弾性率を高くしたポリイミドフィルムとして、ベンゾオキサゾール環を主鎖に有するポリイミドからなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムが提案されている(特許文献1参照)。このポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを誘電層とするプリント配線板も提案されている(特許文献2、特許文献3参照)。
ベンゾオキサゾール環を主鎖に有するポリイミドからなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムは、引張破断強度、引張弾性率が改良され、かつ線膨張係数において満足し得る範囲のものであるが、接着性においては不十分であった。
ポリイミドフィルムの接着性を改良するために種々の提案がなされており、例えば接着性を有しないポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を形成するもの(特許文献4参照)、ポリイミドフィルムとポリアミド系樹脂からなるフィルムとが積層された2層フイルム(特許文献5参照)などがある。
これらのポリイミドフィルム上に熱可塑性樹脂層を設けたものは、接着性を満足するものは耐熱性に乏しく、耐熱性を満足するものは接着性に乏しいという傾向を有しており、耐熱性と接着性を兼ね備えた多層ポリイミドフィルムは未だ得られていなかった。
【特許文献1】特開平06−56992号公報
【特許文献2】特表平11−504369号公報
【特許文献3】特表平11−505184号公報
【特許文献4】特開平09−169088号公報
【特許文献5】特開平07−186350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリイミドフィルムの耐熱性、引張破断強度、引張弾性率等の優れた物性を保持し、ポリイミドフィルムの接着性などの欠点を改良した多層ポリイミドフィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、下記の構成によるものである。
1. 下記(a)層と(b)層とが積層されてなることを特徴とする多層ポリイミドフィルム。
(a)層:フッ素樹脂及びサーモトロピック型の液晶高分子を含有し、該熱可塑性樹脂層中におけるフッ素樹脂の含有率が20〜80質量%、サーモトロピック型の液晶高分子の含有率が20〜80質量%である熱可塑性樹脂層。
(b)層:芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類との重縮合から得られるポリイミドからなる非熱可塑性ポリイミドフィルム。下記(a)層と(b)層とが少なくとも積層されてなることを特徴とする多層ポリイミドフィルム。
2. サーモトロピック型の液晶高分子が、全芳香族ポリエステルである前記1.記載の多層ポリイミドフィルム。
3. フッ素樹脂が、少なくとも水酸基を有する含フッ素エチレン性単量体と水酸基を有さないエチレン性単量体とを用いて共重合して得られる熱可塑性フッ素樹脂である前記1.又は2.記載の多層ポリイミドフィルム。
4. フッ素樹脂の水酸基を有さないエチレン性単量体が、少なくともテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルの中から選ばれた1種又は2種以上である前記1.〜3.のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルム。
5. ポリイミドフィルムが、芳香族テトラカルボン酸類とベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類との重縮合から得られるポリイミドベンゾオキサゾールを主成分とし、かつ線膨張係数が−10〜10ppm/℃である前記1.〜4.のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルム。
6. 前記1.〜5.のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルムを用いた電気絶縁性、ガスバリア性を有する部材。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多層ポリイミドフィルムにおいて、(a)層の熱可塑性樹脂層がフッ素樹脂とサーモトロピック型の液晶高分子とを含むことにより、フッ素樹脂とサーモトロピック型の液晶高分子は海島型の相分離構造を取り、海成分のフッ素樹脂が接着効果と、島成分のサーモトロピック型の液晶高分子によるフッ素樹脂の補強効果により、成形加工性、接着性、および耐熱性を兼ね備えた優れた効果を発現する。
本発明の多層ポリイミドフィルムは、(b)層のポリイミドフィルムの有する高い引張弾性率と引張破断強度と低い線膨張係数とを保持し、かつ (a) 層が上記の特性を示すため、接着性に優れ、かつ高温高湿時処理においてもその性能が維持され、両者の優れた点を兼ね備えた多層ポリイミドフィルムとなり、金属薄膜積層材の基材フィルム、金属箔との接合積層フィルムの基材フィルムなどとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いる非熱可塑性ポリイミドを主成分とするポリイミドフィルムは、例えば芳香族テトラカルボン酸類(無水物、酸、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)と芳香族ジアミン類(アミン、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)とを反応させて得られるポリアミド酸溶液を流延、乾燥、熱処理(イミド化)してフィルムとなす方法で得られるポリイミドフィルムである。ここで、非熱可塑性ポリイミドとは(1)ポリマー鎖中の繰り返し単位中のイミド単位の濃度が高い、及び(2)平面状の芳香族イミド基が直線的または平面的に配列し剛直分子鎖を形成する、ことにより、分子が強い会合状態にあるため、明確な融点およびガラス転移温度を示さないものを意味する。
前記のポリイミドフィルムは、特に限定されるものではないが、下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
A.ピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸類、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類との組み合わせ。
B.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.ジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
中でも特にA.のベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン残基を有するポリイ
ミドフィルムが好ましい。
【0009】
前記のベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類の分子構造は特に限定されるものではなく、具体的には以下のものが挙げられる。これらのジアミンは全ジアミンの70モル%以上することが好ましく、より好ましくは80モル%以上である。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
【化5】

【0015】
【化6】

【0016】
【化7】

【0017】
【化8】

【0018】
【化9】

【0019】
【化10】

【0020】
【化11】

【0021】
【化12】

【0022】
【化13】

【0023】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましく、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールがより好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0024】
さらに、全ジアミンの30モル%以下であれば下記に例示されるジアミン類を一種または二種以上を併用しても構わない。そのようなジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0025】
前記の芳香族テトラカルボン酸無水物類の分子構造は特に限定されるものではなく、具体的には、以下のものが挙げられる。これらの酸無水物は全酸無水物の70モル%以上することが好ましく、より好ましくは80モル%以上である。
【0026】
【化14】

【0027】
【化15】

【0028】
【化16】

【0029】
【化17】

【0030】
【化18】

【0031】
【化19】

【0032】
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0033】
さらに、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%以下であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種または二種以上を併用しても構わない。そのようなテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0034】
前記の芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とを反応(重合)させてポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるような量が挙げられる。
【0035】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/または混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
【0036】
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
重合反応により得られるポリアミド酸溶液から、ポリイミドフィルムを形成するためには、ポリアミド酸溶液を支持体上に塗布して乾燥することによりグリーンフィルム(自己支持性の前駆体フィルムを得て、次いで、グリーンフィルムを熱処理に供することでイミド化反応させる方法が挙げられる。支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
【0037】
支持体上に塗布したポリアミド酸を乾燥してグリーンシートを得る条件は特に限定はなく、温度としては70〜150℃が例示され、乾燥時間としては、5〜180分間が例示される。そのような条件を達する乾燥装置も従来公知のものを適用でき、熱風、熱窒素、遠赤外線、高周波誘導加熱などを挙げることができる。次いで、得られたグリーンシートから目的のポリイミドフィルムを得るために、イミド化反応を行わせる。その具体的な方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、必要により延伸処理を施した後に、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)が挙げられる。この場合の加熱温度は100〜500℃が例示され、フィルム物性の点から、より好ましくは、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間処理する2段階熱処理が挙げられる。
【0038】
別のイミド化反応の例として、ポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることもできる。この方法では、ポリアミド酸溶液を支持体に塗布した後、イミド化反応を一部進行させて自己支持性を有するフィルムを形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。この場合、イミド化反応を一部進行させる条件としては、好ましくは100〜200℃による3〜20分間の熱処理であり、イミド化反応を完全に行わせるための条件は、好ましくは200〜400℃による3〜20分間の熱処理である。
【0039】
前記のポリイミドフィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、電子部品の軽小化という目的からして、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは1〜25μmである。また、これらのフィルムの厚さ斑も20%以下であることが好ましく、これらのフィルムを使用することで、電子部品の軽小短薄に大きく貢献できる。
前記のポリイミドフィルムの線膨張係数(CTE)が−10〜10ppm/℃であるものを基材フィルムとして使用することが前記した理由により好ましく、より好ましくは−5〜10ppm/℃、さらに好ましくは、−5〜5ppm/℃である。
【0040】
本発明の熱可塑性樹脂層に用いられるフッ素樹脂は、熱可塑性であることが好ましく、より好ましくは水酸基を有する熱可塑性フッ素樹脂であり、具体的には水酸基を有する含フッ素エチレン性単量体と水酸基を有さない含フッ素エチレン性単量体とを共重合することによって製造されたものが例示できる。
水酸基を有する含フッ素エチレン性単量体としては、
CX2=CX1−Rf−CH2OH
を挙げることができる。式中X、X1は同一または異なり、いずれも水素原子またはフッ素原子、Rfは炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基、炭素数1〜40の含フッ素オキシアルキレン基、炭素数1〜40のエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基または炭素数1〜40のエーテル結合を含む含フッ素オキシアルキレン基を表す。
【0041】
水酸基を有する含フッ素エチレン性単量体としては、より具体的には
CF2=CF−Rf1−CH2OH
を挙げることができる。式中、Rf1は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または−ORf2、ただし、Rf2は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数1〜40のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基である。
また、
CF2=CFCF2−ORf3−CH2OH
を挙げることができる。式中、−Rf3は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数1〜39のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基を表わす。
また、
CH2=CFCF2−Rf4−CH2OH
を挙げることができる。式中、−Rf4は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基、または−ORf5(Rf5は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数1〜39のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基)を表わす。
また、
CH2=CH−Rf6−CH2OH
を挙げることができる。式中、Rf6は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基である。
一方、水酸基を含まない含フッ素単量体としては、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライドなどが挙げられ、好ましくはテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、およびテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体である。
【0042】
本発明における熱可塑性樹脂層中に占めるフッ素樹脂の質量比率は、20〜80質量%であり、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%である。フッ素樹脂の質量比率が20質量%未満であると、溶融成形することが困難になる、接着性が低下する等の理由から好ましくない。また、フッ素樹脂の質量比率が80質量%を超えると、サーモトロピック型の液晶高分子による補強効果が充分ではなく、耐熱性にも劣るため好ましくない。
【0043】
本発明の熱可塑性樹脂層に用いられるサーモトロピック型の液晶高分子は、液晶ポリエステル系樹脂、液晶ポリアミド系樹脂、液晶ポリエステルアミド系樹脂などが挙げられるが、特に、液晶ポリエステル系樹脂が好ましい。ここでサーモトロピック型の液晶高分子とは、加熱溶融することによって、液晶(結晶と液体の中間状態のうち、粒子方向に何らかの秩序は保っているものの、3次元的な位置の秩序を失った状態)になる高分子を意味する。液晶ポリエステル系樹脂は、p−置換芳香族環、直鎖状ビフェニル基、置換ナフチル基などのメソーゲン基(液晶形成能を有する基)を構造単位として有するポリエステル系樹脂であってもよい。具体的には、p−ヒドロキシ安息香酸の単量体、およびp−ヒドロキシ安息香酸とジオール(ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族ジオール、エチレングリコールなどのC2−6アルカンジオールなど)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸など)および芳香族ヒドロキシカルボン酸(オキシナフトエ酸など)から選択された少なくとも一種の単量体との共重合体などが例示できる。より具体的には、ポリp−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸と4,4′−ジヒドロキシビフェニルとの共重合体、p−ヒドロキシ安息香酸と4,4′−ジヒドロキシビフェニルとテレフタル酸との共重合体、p−ヒドロキシ安息香酸単位とエチレンテレフタレート単位との共重合体、p−ヒドロキシ安息香酸と2−オキシ−6−ナフトエ酸との共重合体などが挙げられる。
サーモトロピック型の液晶高分子は、熱や圧力によって粒子方向に何らかの秩序は保っているもの、3次元的な位置の秩序を失った状態を取り得ることから、高い機械的特性を有しているにも拘わらず、溶融流動性に優れる。
【0044】
本発明における熱可塑性樹脂層中に占めるサーモトロピック型の液晶高分子の質量比率は、20〜80質量%であり、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%である。サーモトロピック型の液晶高分子の質量比率が80質量%を超えると、溶融成形することが困難になる、接着性が低下する等の理由から好ましくない。また、サーモトロピック型の液晶高分子の質量比率が20質量%未満であると、補強効果が充分ではなく、耐熱性にも劣るため好ましくない。
【0045】
サーモトロピック型の液晶高分子フッ素樹脂への配合は、フッ素樹脂を溶融して液晶高分子を混合することができ、特に限定されるものではないが、フッ素樹脂のペレットや粉末に所定量の液晶高分子を混合して、2軸あるいは単軸の押出機を用いて混合する方法や、高濃度のフィラーマスターバッチを予め作り、成形時に混合させる方法を用いることができる。
本発明における熱可塑性樹脂層の製造は、合成樹脂フィルムの製造に利用されているフィルム成形方法が応用・利用できる。例えば、Tダイ成形法、インフレーション成形法、インサイドマンドレル法、真空フオーマー成形法等によって製造することができる。
【0046】
本発明においては、熱可塑性樹脂層がフッ素樹脂とサーモトロピック型の液晶高分子を含むことで、フッ素樹脂とサーモトロピック型の液晶高分子は海島型の相分離構造を取り、海成分のフッ素樹脂が接着性に寄与し、島成分のサーモトロピック型の液晶高分子がフッ素樹脂を補強するという機構を持つため、成形加工性、接着性、および耐熱性を兼ね備えた優れた効果を発現する。
本発明における熱可塑性樹脂層中には、本発明の効果を阻害しない範囲において、フッ素樹脂とサーモトロピック型の液晶高分子以外に、他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、分散剤、安定剤などを含有させることができる。
【0047】
本発明で用いる多層ポリイミドフィルムの積層方法は、特に限定されるものではないが、例えば、
(イ)ポリイミドフィルム、熱可塑性樹脂フィルム貼り合わせたうえで、熱プレスによって溶着させる方法、
(ロ)ポリイミドフィルムの前駆体であるポリアミド酸溶液と熱可塑性樹脂を共押出しにより積層した後、前駆体フィルムをイミド化する方法、
(ハ)ポリイミドフィルムの前駆体フィルム上に熱可塑性樹脂を流延した後に、前駆体フィルムをイミド化する方法、
(ニ)ポリイミドフィルム上に熱可塑性樹脂を流延する方法、
などが挙げられる。
【0048】
本発明の多層ポリイミドフィルムにおける(a)層、(b)層には、滑剤をポリイミド中に添加含有せしめるなどして層(フィルム)表面に微細な凹凸を付与しフィルムの滑り性などを改善することが好ましい。
滑剤としては、無機や有機の0.03〜3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
【0049】
本発明においては、得られた多層ポリイミドフィルムの表面(特に(a)の表面)を、コロナ処理、大気圧プラズマ処理、真空プラズマ放電処理することは、更なる接着力を高めるために好ましい実施態様である。
大気圧プラズマ処理は好ましくは不活性ガスプラズマであり、不活性ガスとしては窒素ガス、Ne、Ar、Kr、Xeが用いられる。プラズマを発生させる方法に格別な制限はなく、不活性気体をプラズマ発生装置内に導入し、プラズマを発生させればよい。プラズマ処理に要する時間は特に限定されず、通常1秒〜30分、好ましくは10秒〜10分である。プラズマ処理時のプラズマの周波数と出力、プラズマ発生のためのガス圧、処理温度に関しても格別な制限はなく、プラズマ処理装置で扱える範囲であれば良い。周波数は通常13.56MHz、出力は通常50〜1000W、ガス圧は通常0.01〜10Pa、温度は、通常20〜250℃、好ましくは20〜180℃である。出力が高すぎるとフィルム表面に亀裂の入るおそれがある。また、ガス圧が高すぎるとフィルム表面の平滑性が低下するおそれがある。
【実施例】
【0050】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0051】
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
【0052】
2.ポリイミドフィルムの厚さ
測定対象のポリイミドフィルムについて、マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
【0053】
3.ポリイミドフィルムの厚さ斑
測定対象のポリイミドフィルムについて、幅方向(TD方向)については、幅方向1cm間隔で全幅測定し、その間の平均厚さおよび最大厚さ、最小厚さを出し、下式を用いて計算した。また、長手方向(MD方向)については、長手方向5cm間隔で5m分測定し、その間の平均厚さおよび最大厚さ、最小厚さを出し、下式を用いて計算した。
厚さ斑(%)=((最大厚さ−最小厚さ)/平均厚さ)×100
【0054】
4.ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度、および引張破断伸度
測定対象のポリイミドフィルムについて、下記条件で引張破壊試験を行い、MD方向について、引張弾性率、引張破断強度、および引張破断伸度を測定した。
装置名 : 島津製作所社製 オートグラフ
サンプル長さ : 100mm
サンプル幅 : 10mm
引貼り速度 : 50mm/min
チャック間距離 : 40mm
【0055】
5.ポリイミドフィルムの線膨張係数(CTE)
測定対象のポリイミドフィルムについて、下記条件にてMD方向およびTD方向の伸縮率を測定し、90〜100℃、100〜110℃、…と10℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を400℃まで行い、100℃から350℃までの全測定値の平均値をCTE(平均値)として算出した。
装置名 : MACサイエンス社製 TMA4000S
サンプル長さ : 10mm
サンプル幅 : 2mm
昇温開始温度 : 25℃
昇温終了温度 : 400℃
昇温速度 : 5℃/min
雰囲気 : アルゴン
【0056】
6.融点
測定対象の熱可塑性樹脂について、下記条件で示差走査熱量測定(DSC)を行い、融点(Tm)をJIS K 7121に準拠して求めた。
装置名 : MACサイエンス社製 DSC3100S
パン : アルミパン(非気密型)
試料質量 : 4mg
昇温開始温度 : 30℃
昇温終了温度 : 400℃
昇温速度 : 20℃/min
雰囲気 : アルゴン
【0057】
7.剥離強度
ポリイミドフィルム/金属箔間の剥離強度は下記条件でT字剥離試験を行うことで求めた。
装置名 : 島津製作所社製 オートグラフAG−IS
サンプル長さ : 100mm
サンプル幅 : 10mm
測定温度 : 25℃
剥離速度 : 50mm/min
雰囲気 : 大気
【0058】
《基板の評価》耐湿熱性
ポリイミドフィルム、熱可塑性樹脂、ポリイミドフィルムから成る各多層ポリイミドフィルムにつき、ステンレスメッシュ性の籠に入れ、PCT装置(PC242−III、平山製作所社製)を用いて121℃×2気圧の飽和蒸気圧中で96時間、加圧加熱処理を行い、試験後の剥離強度を評価した。また、試験後の外観検査により、剥がれ、膨れ、変色の全く見られないものを○、剥がれ、膨れ、変色が僅か見られるものを△、剥がれ、膨れ、変色が見られるものを×とした。
【0059】
《基板の評価》耐熱性
ポリイミドフィルム、熱可塑性樹脂、ポリイミドフィルムから成る各多層ポリイミドフィルムにつき、ステンレスメッシュ性の籠に入れ、N雰囲気下で400℃1時間、加熱処理を行い試験後の剥離強度を評価した。また、試験後の外観検査により、剥がれ、膨れ、変色の全く見られないものを○、剥がれ、膨れ、変色が僅か見られるものを△、剥がれ、膨れ、変色が見られるものを×とした。
【0060】
〔製造例1〕
(ポリイミドフィルムAの作成)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。この還元粘度は3.9dl/gであった。
このポリアミド酸溶液Aを、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分間、2段目220℃×2分間、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、テンター通過後20分間に6本のロールを通過させて両面フリーのプロセスを与え、最終的に500mm幅にスリットして、ポリイミドフィルムAを得た。
得られたポリイミドフィルムAの物性値を表1に示す。
【0061】
〔製造例2〕
(ポリイミドフィルムBの作成)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ジアミノジフェニルエーテル200質量部、N−メチル−2−ピロリドン4170質量部を加えて完全に溶解させた後、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え、25℃の反応温度で5時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Bが得られた。この還元粘度は3.6dl/gであった。
このポリアミド酸溶液Bを、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分間、2段目220℃×2分間、3段目400℃×4分間の熱処理を行い、テンター通過後20分間に6本のロールを通過させて両面フリーのプロセスを与え、最終的に500mm幅にスリットして、ポリイミドフィルムBを得た。
得られたポリイミドフィルムBの物性値を表1に示す。
【0062】
〔製造例3〕
(ポリイミドフィルムCの作成)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、フェニレンジアミン108質量部、N−メチル−2−ピロリドン4010質量部を加えて完全に溶解させた後、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)と、ジフェニルテトラカルボン酸二無水物292.5質量部を加え、25℃の反応温度で12時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Cが得られた。この還元粘度は4.3dl/gであった。
このポリアミド酸溶液Cを、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分間、2段目220℃×2分間、3段目460℃×4分間の熱処理を行い、テンター通過後20分間に6本のロールを通過させて両面フリーのプロセスを与え、最終的に500mm幅にスリットして、厚さ25μmのポリイミドフィルムCを得た。
得られたポリイミドフィルムCの物性値を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
〔製造例4〕
(熱可塑性樹脂フィルムAの作成)
ポリパラヒドロキシ安息香酸である液晶高分子(スミカスーパーE101、住友化学工業社製)40質量部、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体であるフッ素樹脂(ネオフロンPFA RAP、ダイキン工業社製)60質量部を配合し、二軸押出成形機(KZW20−25G)を用いて溶融混練した。得られた混練原料を、直径40mm押出機の先端に600mmのTダイを取り付けたフィルム成形機で、厚さ15μmの熱可塑性樹脂フィルムAを成形した。
得られた熱可塑性樹脂フィルムA(以下、単にフィルムAと表記することがある)の物性値を表2に示す。
【0065】
〔製造例5〕
(熱可塑性樹脂フィルムBの作成)
ポリパラヒドロキシ安息香酸である液晶高分子(スミカスーパーE101、住友化学工業社製)の代わりに、4,4−ジヒドロキシビフェノール、テレフタル酸、およびパラヒドロキシ安息香酸との共重合体である液晶高分子(スミカスーパーS1000、住友化学工業社製)を使用する以外は、製造例4と同様にして、熱可塑性樹脂フィルムBを得た。
得られた熱可塑性樹脂フィルムB(以下、単にフィルムBと表記することがある)の物性値を表2に示す。
【0066】
〔製造例6〕
(熱可塑性樹脂フィルムCの作成)
ポリパラヒドロキシ安息香酸である液晶高分子(スミカスーパーE101、住友化学工業社製)の代わりに、2,6−ヒドロキシナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸との共重合体である液晶高分子(ベクトラA950、ポリプラスチック社製)を使用する以外は、製造例4と同様にして、熱可塑性樹脂フィルムCを得た。
得られた熱可塑性樹脂フィルムC(以下、単にフィルムCと表記することがある)の物性値を表2に示す。
【0067】
〔製造例7〕
(熱可塑性樹脂フィルムDの作成)
ポリパラヒドロキシ安息香酸である液晶高分子(スミカスーパーE101、住友化学工業社製)の代わりに、エチレングリコール、テレフタル酸、およびパラヒドロキシ安息香酸との共重合体である液晶高分子(ノバキュレート、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)を使用する以外は、製造例4と同様にして、熱可塑性樹脂フィルムDを得た。
得られた熱可塑性樹脂フィルムD(以下、単にフィルムDと表記することがある)の物性値を表2に示す。
【0068】
〔製造例8〕
(熱可塑性樹脂フィルムEの作成)
テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体であるフッ素樹脂(ネオフロンPFA RAP、ダイキン工業社製)の代わりに、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体であるフッ素樹脂(ネオフロンFEP、ダイキン工業社製)を使用する以外は、製造例4と同様にして、熱可塑性樹脂フィルムEを得た。
得られた熱可塑性樹脂フィルムE(以下、単にフィルムEと表記することがある)の物性値を表2に示す。
【0069】
〔製造例9〕
(熱可塑性樹脂フィルムFの作成)
テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体であるフッ素樹脂(ネオフロンPFA RAP、ダイキン工業社製)の代わりに、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体であるフッ素樹脂(ネオフロンETFE、ダイキン工業社製)を使用する以外は、製造例4と同様にして、熱可塑性樹脂フィルムFを得た。
得られた熱可塑性樹脂フィルムF(以下、単にフィルムFと表記することがある)の物性値を表2に示す。
【0070】
〔製造例10〕
(熱可塑性樹脂フィルムGの作成)
ポリパラヒドロキシ安息香酸である液晶高分子(スミカスーパーE101、住友化学工業社製)を配合しない以外は、製造例4と同様にして、熱可塑性樹脂フィルムGを得た。
得られた熱可塑性樹脂フィルムG(以下、単にフィルムGと表記することがある)の物性値を表3に示す。
【0071】
〔製造例11〕
(熱可塑性樹脂フィルムHの作成)
ポリパラヒドロキシ安息香酸である液晶高分子(スミカスーパーE101、住友化学工業社製)20質量部、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体であるフッ素樹脂(ネオフロンPFA RAP、ダイキン工業社製)80質量部を配合する以外は、製造例4と同様にして、熱可塑性樹脂フィルムHを得た。
得られた熱可塑性樹脂フィルムH(以下、単にフィルムHと表記することがある)の物性値を表3に示す。
【0072】
〔製造例12〕
(熱可塑性樹脂フィルムIの作成)
ポリパラヒドロキシ安息香酸である液晶高分子(スミカスーパーE101、住友化学工業社製)80質量部、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体であるフッ素樹脂(ネオフロンPFA RAP、ダイキン工業社製)20質量部を配合する以外は、製造例4と同様にして、熱可塑性樹脂フィルムIを得た。
得られた熱可塑性樹脂フィルムI(以下、単にフィルムIと表記することがある)の物性値を表3に示す。
【0073】
〔製造例13〕
(熱可塑性樹脂フィルムJの作成)
テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体であるフッ素樹脂(ネオフロンPFA RAP、ダイキン工業社製)を配合しない以外は、製造例4と同様にして、熱可塑性樹脂フィルムJを得ようとしたが、品位の良いフィルムを製造することは不可能であった。
【0074】
〔製造例14〕
(熱可塑性樹脂フィルムKの作成)
ポリパラヒドロキシ安息香酸である液晶高分子(スミカスーパーE101、住友化学工業社製)の代わりに、エチレングリコールとテレフタル酸との共重合体であるPET樹脂(東洋紡績社製)を使用する以外は、製造例4と同様にして、熱可塑性樹脂フィルムKを得た。
得られた熱可塑性樹脂フィルムK(以下、単にフィルムKと表記することがある)の物性値を表3に示す。
【0075】
〔製造例15〕
(熱可塑性樹脂フィルムLの作成)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル368.4g(1.0モル)、無水フタル酸59.24g(0.4モル)、無水ピロメリット酸174.5g(0.8モル)およびm−クレゾール2、172gを仕込み、攪拌下200℃まで加熱し、200℃にて6時間保温した。次いで反応溶液にトルエンを仕込み、析出物を濾別し、さらにトルエンにて洗浄を数回行った後、窒素雰囲気下250℃で6時間乾燥を行い、510gのポリイミド粉を得た。ポリイミド粉を、二軸押出機を用いて380〜410℃において混練、溶融して押出して造粒しペレットとした。得られたペレットを径50mmの単軸押出機(成形温度420℃)に供給し、Tダイ前部に装着した10μmのリーフディスクタイプのフィルターを通過させ、1100mm幅Tダイより押出し、熱可塑性樹脂フィルムLを得た。
得られた熱可塑性樹脂フィルムL(以下、単にフィルムLと表記することがある)の物性値を表4に示す。
【0076】
〔製造例16〕
(熱可塑性樹脂フィルムMの作成)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、トリメリット酸無水物192g、o−トリジンジイソシアネート211g(80モル%)、2,4−トリレンジイソシアネート35g、およびトリエチレンジアミン1gを仕込み、さらにN−メチル−2−ピロリドンをポリマー濃度が40%となるように仕込んだ。120℃で約1時間反応させた後、さらに180℃で5時間攪拌しながら反応させた。次に加熱を止め、冷却しながら、さらにN−メチル−2−ピロリドンを加え希釈して、固形分濃度が20%のポリアミドイミド溶液を得た。
このポリアミドイミド溶液を、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(A−4100、東洋紡績社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、120℃にて3分間乾燥後、支持体から剥がし、3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目320℃×2分間、2段目320℃×2分間、3段目320℃×2分間の熱処理を行い、500mm幅にスリットして、熱可塑性樹脂フィルムMを得た。
得られた熱可塑性樹脂フィルムM(以下、単にフィルムMと表記することがある)の物性値を表4に示す。
なお表中含有比率は、液晶高分子の熱可塑性樹脂フィルム中の質量%を表す。
【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
〔実施例1〕
150mm×150mmのサイズに切り出したポリイミドフィルムA上の片面に、熱可塑性樹脂フィルムA、ポリイミドフィルムAをこの順に配し、熱可塑性樹脂フィルムの融点以上である330℃、5MPaにて30分間加熱加圧成形を行い、多層ポリイミドフィルム1を得た。
得られた多層ポリイミドフィルム1の評価結果を表5に示す。
【0081】
〔実施例2〜3〕
ポリイミドフィルムAの代わりにポリイミドフィルムB、Cを使用する以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作成し、評価した。
得られた多層ポリイミドフィルム2〜3の評価結果を表5に示す。
【0082】
〔実施例4〜6〕
熱可塑性樹脂フィルムAの代わりに熱可塑性樹脂フィルムB〜Dを使用する以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作成し、評価した。
得られた多層ポリイミドフィルム4〜6の評価結果を表5に示す。
【0083】
〔実施例7、8〕
熱可塑性樹脂フィルムAの代わりに熱可塑性樹脂フィルムE、Fを使用する以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作成し、評価した。
得られた多層ポリイミドフィルム7、8の評価結果を表6に示す。
【0084】
〔実施例9、10〕
熱可塑性樹脂フィルムAの代わりに熱可塑性樹脂フィルムH、Iを使用する以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作成し、評価した。
得られた多層ポリイミドフィルム9、10の評価結果を表6に示す。
【0085】
〔比較例1〕
熱可塑性樹脂フィルムAの代わりに熱可塑性樹脂フィルムGを使用する以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作成し、評価した。
得られた多層ポリイミドフィルム11の評価結果を表7に示す。
【0086】
〔比較例2〕
熱可塑性樹脂フィルムAの代わりに熱可塑性樹脂フィルムKを使用する以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作成し、評価した。
得られた多層ポリイミドフィルム12の評価結果を表7に示す。
【0087】
〔比較例3〕
熱可塑性樹脂フィルムAの代わりに熱可塑性樹脂フィルムLを使用し、熱可塑性樹脂フィルムの融点以上である390℃、10MPaにて15分間加熱加圧成形を行う以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作成し、評価した。
得られた多層ポリイミドフィルム13の評価結果を表7に示す。
【0088】
〔比較例4〕
熱可塑性樹脂フィルムAの代わりに熱可塑性樹脂フィルムMを使用し、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度以上である330℃、10MPaにて15分間加熱加圧成形を行う以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作成し、評価した。
得られた多層ポリイミドフィルム14の評価結果を表7に示す。
【0089】
【表5】

【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の多層ポリイミドフィルムは、金属薄膜や金属箔との接着性に優れ、かつ高温高湿環境下においてもその性能が維持できるため、剥がれ、変形、反り、歪みなどのないフレキシブルプリント回路基板用に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)層と(b)層とが積層されてなることを特徴とする多層ポリイミドフィルム。
(a)層:フッ素樹脂及びサーモトロピック型の液晶高分子を含有し、該熱可塑性樹脂層中におけるフッ素樹脂の含有率が20〜80質量%、サーモトロピック型の液晶高分子の含有率が20〜80質量%である熱可塑性樹脂層。
(b)層:芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類との重縮合から得られるポリイミドからなる非熱可塑性ポリイミドフィルム。
【請求項2】
サーモトロピック型の液晶高分子が、全芳香族ポリエステルである請求項1記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項3】
フッ素樹脂が、少なくとも水酸基を有する含フッ素エチレン性単量体と水酸基を有さないエチレン性単量体とを用いて共重合して得られる熱可塑性フッ素樹脂である請求項1又は2記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項4】
フッ素樹脂の水酸基を有さないエチレン性単量体が、少なくともテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルの中から選ばれた1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項5】
ポリイミドフィルムが、芳香族テトラカルボン酸類とベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類との重縮合から得られるポリイミドベンゾオキサゾールを主成分とし、かつ線膨張係数が−10〜10ppm/℃である請求項1〜4のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の多層ポリイミドフィルムを用いた電気絶縁性、ガスバリア性を有する部材。

【公開番号】特開2009−286094(P2009−286094A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144308(P2008−144308)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】