説明

多層ポリエステルフィルム

【課題】 良好な透明性および易滑性を有し、また製膜時のスクラッチ傷の発生が起こりにくい透明性に優れたポリエステル系樹脂フィルムを容易に提供する。
【解決手段】 厚さ1.5μm以上のポリエステルからなる外層を両面に有する積層フィルムであり、前記外層中に、一次粒径0.50μm以下でモース硬度7以上の無機粒子を各々0.05重量%以上含有し、フィルムヘーズが2%以下であり、光学くし幅0.125mmにおける写像性透過率が90%以上であることを特徴とする多層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両表面を構成するポリエステル層中に特定の粒子を含有する積層フィルムに関するものであり、詳しくは、液晶表示装置の部材のプリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルムや反射防止用フィルムのベースフィルム、プラズマディスプレイの電磁波シールドフィルム、有機ELディスプレイのベースフィルム、ディスプレイ防爆用ベースフィルム等の光学用途に好適に用いることができる、ハードコート密着性、透明性、耐擦り傷性、作業性などに優れる積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル系樹脂フィルム、特にポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに代表される2軸延伸ポリエステル系フィルムは、電気特性、機械的特性、熱的特性、加工性および耐薬品性が優れていることから、包装材料、電気絶縁材料、金属絶縁材料、金属蒸着材料、製版材料、磁気記録材料、表示材料、転写材料、窓貼り材料などを始めとして多くの用途で使用されている。特に最近では、透明タッチパネル用、液晶表示装置に用いられるプリズムシート用のベースフィルムやブラウン管、LCD、PDP等のいわゆるフラットパネルディスプレイの前面パネルガラス表面貼り付け用に、帯電防止、反射防止、電磁波シールド等の機能層を設けた保護フィルムのベースフィルム用などの各種光学用途に広く用いられているが、ポリエステルフィルムは傷がつきやすいため、外観や光学的特性が損なわれやすいという欠点がある(特許文献1)。
【0003】
ポリエステル系樹脂フィルムには、上述の諸特性のほかに、優れた透明性や易滑性が要求される。さらに、透明なフィルムの表面は一般的に平滑であるため、加工時に傷が入りやすく、優れた耐擦り傷製を兼ね備えることも必要とされる。透明性と平滑性の両方が要求されるため、通常添加する粒子を極力減らすか、まったく添加しないことが必要である。しかし、このようなフィルムは滑り性が悪く、巻き取れないので、少なくとも片面に易滑性・耐擦り傷性層を形成することが行われている(特許文献2)。
【0004】
上記問題の対処方法として、表面に微小な突起を有するポリエステル系樹脂フィルムが知られている。このようなフィルムでは、表面に突起を形成するために、材料となるポリエステル系樹脂中に無機または有機の微粒子が添加される(特許文献3)。フィルム中に粒子を含有させ、当該粒子によってフィルム表面に微小凹凸(微小突起)を形成し、フィルム表面の摩擦係数低減を介して耐スクラッチ性を高めるようにした技術がある。このような表面に微小凹凸(突起)を形成したフィルムとして、ポリエステルにコロイド状シリカに起因する実質的に球形のシリカ粒子を含有させた2軸配向ポリエステルフィルムが知られている。
【0005】
ポリエステルフィルムの最も一般的な工業的製造手法である逐次2軸延伸を施す際、縦延伸工程において、比較的軟質な非晶質である未延伸フィルムがロールとの摩擦で多数の傷を受ける。これら傷のうち特に深いものは表面にハードコートなどを設けても埋めることができず、光学的散乱要因となるため使用に耐え得ない。
【0006】
傷入りを防止あるいは緩和するために、フィルム中に各種粒子が添加されるが、これらの粒子が内部散乱要因となり、フィルムの透明性が減少するため、透明性と傷入り回避とを両立することが困難であり、用途に応じて、いずれかの特性を犠牲にせざるを得ない状況となっている。
【0007】
従来のポリエステル系樹脂フィルムは、無機または有機の微粒子による突起を有しているため、たとえば製膜時にスクラッチ傷が生じやすい。また、生じたスクラッチ傷により、光が乱反射することにより輝点となるため透明性の不良なベースフィルムよなってしまい、高品質のポリエステル系樹脂フィルムは得ることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-157036号公報
【特許文献2】特許第4097534号公報
【特許文献3】特開平3−175034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、良好な透明性および易滑性を有し、また製膜時のスクラッチ傷の発生が起こりにくい透明性に優れたポリエステル系樹脂フィルムを容易に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、厚さ1.5μm以上のポリエステルからなる外層を両面に有する積層フィルムであり、前記外層中に、一次粒径0.50μm以下でモース硬度7以上の無機粒子を各々0.05重量%以上含有し、フィルムヘーズが2%以下であり、光学くし幅0.125mmにおける写像性透過率が90%以上であることを特徴とする多層ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えば、縦延伸工程等で発生する傷入りを顕著に抑制でき、透明性に優れたポリエステルフィルムを簡便かつ廉価に得ることができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明でいうポリエステルとは、1種あるいは複数のジカルボン酸と1種あるいは複数のジオールとを重縮合して得られるポリマーをいう。ジカルボン酸の例として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸や、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。ジオールの例として、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。本発明では、特に強度および透明性に優れ、かつ比較的廉価で各種用途で幅広く使用されるポリエチレンテレフタレート、あるいは他のエステル単位が数モル%程度共重合されたポリエステルが推奨される。
【0014】
本発明のフィルムは透明性を有するものであり、本発明で言う透明性とは、フィルムを隔てて得られる光学像が明瞭である特性を指し、実用特性指標として、フィルムヘーズおよび写像性によって評価することができる。
【0015】
一般に、ポリエステルフィルムが単体で使用されることは少なく、表面に保護のためハードコートを設けたり、ガラスなどに接着剤で貼り合わせられたりするため、表面の平滑性や耐擦り傷性などが求められる。そこで、本発明では、フィルムヘーズ値および写像性が特定の範囲であることを必須とするものである。
【0016】
すなわち、本発明のフィルムのフィルムヘーズが2%以下であり、好ましくは、1.5%以下、さらに好ましくは0.9%以下であり、光学くし幅0.125mmにおける写像性透過率が90%以上であり、好ましくは92%以上、さらに好ましくは94%以上である。フィルムヘーズが2%を超えると、拡散・プリズム・タッチパネル部材などの光学用途における十分な透明性に欠け、高透明ニーズ求められる光学設計部材として不十分である。一方、光学くし幅0.125mmにおける写像性透過率が90%未満では、高い像鮮明度が求められるディスプレイ用保護シートやタッチパネル用部材としては適さず、高解像度の映像がぼやけてしまう。
【0017】
本発明の多層フィルムの表層以外の層、すなわち中間層は実質的に粒子を含有しないことが好ましい。ここで言う実質的に含有しないとは、具体的には、粒子の含有量が100ppm以下のことを指す。これは粒子添加の目的がロール延伸機による縦延伸工程における傷入り緩和であるため、中間層に粒子を含有させる意義がないからである。粒子の使用は些少ではあるがコストアップの要因となり、また延伸の条件によっては粒子周囲にボイドが形成され透明性を減じる可能性がある。
【0018】
本発明の多層フィルムの両表層が含有する粒子の1次粒径は、0.50μm以下であり、0.005〜0.50μmの範囲が好ましい。ここでいう1次粒径とは、非凝集性粒子においては、いわゆる平均粒径を指し、凝集性粒子においては、凝集塊を構成する微小粒子の平均粒径を指す。表層中の粒子の1次粒径が0.50μmを超えると、粒子表面の凹凸のサイズが顕著になるため、粒子とポリエステルとの間に空隙ができる割合が増大し、比較的ポリエステルと近似した屈折率の粒子種をもってしても、当該空隙による入射光の散乱を低減することができず、フィルムが不透明となるため好ましくない。また、人による視認性において添加粒子の粒状感が確認できるため、画像鮮明性としても好ましくない。表層が含有する粒子の1次粒径は細かいほど良く、0.10μm以下、さらには0.07μm以下が好ましい。しかし、1次粒径が0.005μmに達すると凝集性が著しくなり、高剪断の2軸押出機による溶融押出でも微分散せずに、平均粒径0.15μm以上の凝集塊が多数生成してしまう可能性がある。
【0019】
本発明の多層フィルムの両表層が含有する粒子のモース硬度は7以上でなければならない。モース硬度が7未満であると、縦延伸工程における傷入り防止あるいは緩和の効果が薄く実用に耐え得ない。粒子のモース硬度は8以上であることが好ましい。本発明で用いる粒子としては、具体的には、酸化アルミニウム、シリコンカーバイド、バナジウムカーバイド、チタンカーバイド、ボロンカーバイド、ほう化タングステン、ボロンナイトライト等を挙げることができる。そして、これらの中では、工業的に入手が容易な酸化アルミニウムまたはシリコンカーバイド、なかんずく、酸化アルミニウムが好ましい(具体例は特開平5-128490号公報に記載がある)。
【0020】
本発明の多層フィルムの両表層が含有する粒子の濃度は0.05重量%以上であり、上限は通常10重量%であり、好ましくは5重量%である。一般的にモース硬度が7以上の無機粒子はポリエステル樹脂よりも高価であるため、フィルムのコストを抑える上で少量添加が望ましい。しかし、耐擦傷効果を得るためには最低0.05重量%必要である。また、耐擦傷性を得るためには多量に粒子を添加したほうが良いが、5重量%を超えて添加するとポリエステル樹脂中への分散不良が起こり、凝集塊が多数発生し、透明性を低下させるため好ましくない。
【0021】
本発明の多層フィルムの両表層厚みは、1.5μm以上であり、上限は通常10μm以下である。両表層の厚みが1.5μm未満であると、当該層のコシが小さくなり、縦延伸工程における傷入り緩和効果と滑り性が減じてしまうため好ましくない。なお、前述のとおり、粒子は些少とはいえ透明性を減じる可能性があるため、可能な限り中間層の厚み比率を増し、表層は縦延伸工程における傷入り緩和に十分な機能を発揮する限り薄ければ薄いほどよいが、工業的生産では精度良く製造することのできる厚みの下限が実質的に存在するため、工業生産を想定する上では3〜8μm程度の表層厚みが好適である。逆に10μm以上の厚みは透明性を損ねる可能性がある。
【0022】
本発明の多層フィルムの製造において多層構造とする手段は限定されないが、透明性を減じない観点から、積層界面で界面剥離が生じる可能性の絶無である共押出法が推奨される。以下、本発明の透明多層フィルムの製造方法の1例を示すが、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
【0023】
まず、粒子を実質的に含有しないポリエステルと、粒子を含有するポリエステルとをそれぞれ別々の押出機にて溶融し、共押出ダイスで合流させ、Tダイより溶融押し出し、キャストドラム上にてガラス転移温度未満にまで急冷し、非晶質シートを得る。非晶質シートをロール延伸機を用いてガラス転移温度〜ガラス転移温度+30℃程度の温度で縦方向に3〜4倍延伸する。引き続き易滑粒子を配合した水系塗布液を塗布し、テンター延伸機に導き、塗布液を乾燥させながら横方向に3〜5倍延伸する。なお、この時の延伸温度は縦延伸温度と同程度から30℃程度高い温度までの範囲で適宜選択する。さらに、ヒートセッターにて熱固定を行い、結晶化させる。
【0024】
本発明の多層フィルムは、良好な滑り性を与えるのに十分な表面突起サイズ、個数となる程度に粒子を高濃度含有させると、場合によってはフィルムヘーズ値が2.0%を超えてしまう場合がある。このため透明性を減じることなく良好な滑り性を付与する手段として、縦延伸工程以降に粒子を配合した塗布液を塗布・乾燥する手法を用いる。この場合でも易滑粒子によって透明性が減じられないように、配合する易滑粒子は0.1μm以下の平均粒径であることが望ましい。また、小粒径粒子で十分な滑り性を付与するため、易滑粒子による表面突起を大きくしなければならないので、塗布層は、その乾燥厚みが易滑粒子径以下であることが望まれる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、本発明における各種の物性および特性の測定方法、定義は下記のとおりである。また、実施例および比較例中、「部」とあるのは、特に断らない限り「重量部」を意味する。
【0026】
(1)ヘーズ(%)
JIS−K7136に準じ、日本電色工業製濁度計NDH−300Aによりフィルムの内部ヘーズを測定する。
【0027】
(2)1次粒径(μm)
試料フィルムをエポキシ樹脂にて包埋し、ウルトラミクロトームでセクショニングを行い、得られた薄片を走査型電子顕微鏡にて断面の観察を行う。観察される粒子像より平均粒径を求める。
【0028】
(3)厚み(μm)
試料フィルムをエポキシ樹脂にて包埋し、ウルトラミクロトームでセクショニングを行ない、得られた薄片を走査型電子顕微鏡にて断面観察を行なう。粒子が密集する領域を表層として厚みを測定し、全体の厚みから各表層の厚みを減じたものを中間層の厚みとする。
【0029】
(4)表面粗さRa
中心線平均粗さRa(μm)をもって表面粗さとした。小坂研究所社製表面粗さ測定機(
SE−3F)を用い、JIS−B−0601−1982に準じて測定する。フィルム断面曲線からその中心線の方向に基準長さL(2.5mm)の部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をx軸、竪倍率の方向をy軸として粗さ曲線y=f(x)で表したとき、次の数式〔数1〕で与えられた値を(μm)で表す。そして、中心線平均粗さは、試料フィルム表面から10本の断面曲線を求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の中心線平均粗さの平均値で表した。なお、触針の先端半径は2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08mmとした。
【0030】
Ra=(1/L)∫|f(x)|dx
【0031】
(5)傷付き防止性
大平理化工業製のラビングテスターを用いて、JIS K6718に規定された厚み2mmのメタクリル樹脂板を往復運動するプレートに両面粘着テープで固定する。次に5cm×5cmのガーゼを24枚重ねクッションとした試験フィルムを貼り付けたプレートをおく、そしてプレートを含めた治具の自重50gの荷重がかかった状態で試験フィルムとメタクリル板とがこすられる状態で10回往復運動をさせる。その後試験フィルムの表面に発生した長さ5mm以上の傷を蛍光灯下で目視観察する。1試料につき3回試験を行い傷の本数の平均値を求め、以下のように評価する。
○:傷の本数が5以下であり、傷つき防止性に優れる
△:傷の本数が3を超え10 以下であり、傷付き防止性がやや良い
×:傷の本数が10を超え無数にある、傷付き防止性が不良
【0032】
(6)写像性(像鮮明性)
JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」像鮮明度に準拠して透過法により測定した。フィルム試験片はフィルム長手方向を鉛直方向として測定した。測定器にはスガ試験機社製ICM−1T型写像性測定器を用いた。光学くしは0.125mmを使用。
【0033】
(7)接着性
ポリエステルフィルム(塗布層を積層した場合は塗布層側)に、日本化薬製KAYARAD DPHAを77部、日本化薬KAYARAD R−128Hを18部、チバガイギー製IRGACURE651を5部よりなる組成物をトルエンで30wt%に希釈・溶解してハードコート混合塗液剤を調整。混合塗液を乾燥膜厚が6μm程度になるように塗布し、120W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離100mmにて約10秒間照射して硬化した。ハードコート混合塗液剤塗布後のポリエステルフィルム表面を1mm間隔10本のクロスカットを入れ、その上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした後、剥離面を観察し、下記の基準で評価した
○:全く剥離しない
○△:わずかに剥離する
△:多少剥離する
△×:かなり剥離する
×:セロテープ(登録商標)を貼り付けた部分が完全に剥離する
【0034】
(ポリエステルの製造)
・ポリエステルA
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・4水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去と共に徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。
4時間後、実質的にエステル交換反応を終了した。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間30分重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、4時間30分を経た時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステルAの固有粘度は0.65、エステル単位の99%がエチレンテレフタレート、残りはジエチレングリコールとテレフタル酸を縮合した単位であった。
【0035】
・ポリエステルB
ポリエステルAをあらかじめ160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、極限粘度0.78、エステル単位の99%がエチレンテレフタレート、残りはジエチレングリコールとテレフタル酸を重合した単位であった。
【0036】
・ポリエステルC
エステル交換反応終了後に1次粒径0.05μmのアルミナ(モース硬度8)をエチレングリコールスラリーとして添加した以外はポリエステルAと同様にして、固有粘度0.65、エステル単位の99%がエチレンテレフタレート、残りはジエチレングリコールとテレフタル酸縮合エステル単位であるポリエステルCを得た。アルミナの含有率は1.5部であった。
【0037】
・ポリエステルD
粒子種を1次粒径1.5μmの無定形シリカ(モース硬度6)とする以外はポリエステルBと同様にしてポリエステルDを得た。シリカの含有率は0.2部であった。
・ポリエステルE
粒子種を1次粒径0.5μmの合成炭酸カルシウム(モース硬度3)とする以外はポリエステルBと同様にしてポリエステルEを得た。合成炭酸カルシウムの含有率は2.0部であった。
【0038】
・塗布剤
塗布層を構成する化合物は以下のとおりである。
(化合物例)
I:テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=24/25/1/25/25モル比のポリエステル分散体II:メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリロニトリル/N-メチロールメタアクリレルアミド=45/45/5/5モル比の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
III:大日本インキ製 ハイドランAP
IV:メラミン系架橋剤:ヘキサメトキシメチルメラミン
V:無機粒子:酸化ケイ素の水分散体(粒子径0.06μm)
塗料配合固形分組成(重量比):I:II:III :IV:V=17:50:30:3とし、固形分が10重量%程度となるように調整し、適当に界面活性剤を添加して使用した。
【0039】
実施例1:
ポリエステルAおよび、ポリエステルBとポリエステルCの重量比を96:4の割合でブレンドし、それぞれ別の2軸押出機にて溶融し、ポリエステルBとポリエステルCのブレンドを表層・ポリエステルAを中間層とした時の吐出量比を2:121:2の割合でTダイより共押出した。溶融シートはキャストドラム上でガラス転移温度未満にまで急冷し、実質的に非晶質のフィルムを得た。引き続きロール延伸機にて80℃で縦方向に3倍延伸を施した。その後、上記塗布剤をコートし、テンター延伸機にて100℃で横方向に4倍延伸を施し、さらに220℃で熱固定を行った後、ガラス転移温度未満にまで急冷し、全厚み125μmのフィルムを得た。なお、コートAは乾燥時の厚みが0.05μmとなるようにし、塗膜中に粒径0.09μmの凝集性シリカ粒子が3.5部含有されるように調製した。得られたフィルムの諸物性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0040】
実施例2:
ポリエステルBとポリエステルCの重量比を90:10の割合でブレンドし、ポリエステルBとポリエステルCのブレンドを表層・ポリエステルAを中間層とした時の吐出量比を7:111:7の割合でTダイより共押出した。ほかは実施例1と同様にして、厚み125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの諸物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0041】
実施例3:
ポリエステルBとポリエステルCの重量費を70:30の割合でブレンドし、ポリエステルBとポリエステルCのブレンドを表層・ポリエステルAを中間層とした時の吐出量比を7:111:7の割合でTダイより共押出した。ほかは実施例1と同様にして、厚み125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの諸物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0042】
実施例4:
ポリエステルBとポリエステルCの重量費を70:30の割合でブレンドし、ポリエステルBとポリエステルCのブレンドを表層・ポリエステルAを中間層とした時の吐出量比を7:174:7の割合でTダイより共押出した。ほかは実施例1と同様にして、厚み188μmのフィルムを得た。得られたフィルムの諸物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0043】
実施例5:
ポリエステルBとポリエステルCの重量費を70:30の割合でブレンドし、ポリエステルBとポリエステルCのブレンドを表層・ポリエステルAを中間層とした時の吐出量比を9:232:9の割合でTダイより共押出した。ほかは実施例1と同様にして、厚み250μmのフィルムを得た。得られたフィルムの諸物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0044】
比較例1:
ポリエステルAを中間層兼表層とし、実施例1と同様にして、厚み125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの諸物性を測定し、その結果を表1に示す。実用に耐えないものであった。
【0045】
比較例2:
ポリエステルBとポリエステルCの重量費を98:2の割合でブレンドし、ポリエステルBとポリエステルCのブレンドを表層・ポリエステルAを中間層とした時の吐出量比を2:121:2の割合でTダイより共押出した。ほかは実施例1と同様にして、厚み125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの諸物性を測定し、その結果を表1に示す。
実用に耐えないものであった。
【0046】
比較例3:
ポリエステルBとポリエステルCの重量費を90:10の割合でブレンドし、ポリエステルBとポリエステルCのブレンドを表層・ポリエステルAを中間層とした時の吐出量比を5:115:5の割合でTダイより共押出した。ほかは実施例1と同様にして、厚み125μmのフィルムを得た。得られたフィルムの諸物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0047】
比較例4:
ポリエステルAを中間層兼表層とし、実施例1と同様にして、厚み188μmのフィルムを得た。得られたフィルムの諸物性を測定し、その結果を表1に示す。実用に耐えないものであった。実用に耐えないものであった。
【0048】
比較例5:
ポリエステルBとポリエステルDの重量比を92:8の割合でブレンドし、ポリエステルBとポリエステルDのブレンドを表層・ポリエステルAを中間層とした時の吐出量比を7:174:7の割合でTダイより共押出した。ほかは実施例1と同様にして、厚み188μmのフィルムを得た。得られたフィルムの諸物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0049】
比較例6:
ポリエステルBとポリエステルDの重量比を88:12の割合でブレンドし、ポリエステルBとポリエステルDのブレンドを表層・ポリエステルAを中間層とした時の吐出量比を7:174:7の割合でTダイより共押出した。ほかは実施例1と同様にして、厚み188μmのフィルムを得た。得られたフィルムの諸物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0050】
比較例7:
ポリエステルBとポリエステルDの重量比を89:11の割合でブレンドし、ポリエステルBとポリエステルDのブレンドを表層・ポリエステルAを中間層とした時の吐出量比を9:232:9の割合でTダイより共押出した。ほかは実施例1と同様にして、厚み250μmのフィルムを得た。得られたフィルムの諸物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0051】
比較例8:
ポリエステルBとポリエステルDの重量比を89:11の割合でブレンドし、ポリエステルBとポリエステルDのブレンドを表層・ポリエステルAを中間層とした時の吐出量比を9:232:9の割合でTダイより共押出した。ほかは実施例1と同様にして、厚み300μmのフィルムを得た。得られたフィルムの諸物性を測定し、その結果を表1に示す。実用に耐えないものであった。
【0052】
比較例9:
ポリエステルBとポリエステルEの重量比を90:10の割合でブレンドし、ポリエステルBとポリエステルDのブレンドを表層・ポリエステルAを中間層とした時の吐出量比を3:32:3の割合でTダイより共押出した。ほかは実施例1と同様にして、厚み38μmのフィルムを得た。得られたフィルムの諸物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のフィルムは、例えば、液晶表示装置の部材のプリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルムや反射防止用フィルムのベースフィルム、プラズマディスプレイの電磁波シールドフィルム、有機ELディスプレイのベースフィルム、ディスプレイ防爆用ベースフィルム等の光学用のフィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ1.5μm以上のポリエステルからなる外層を両面に有する積層フィルムであり、前記外層中に、一次粒径0.50μm以下でモース硬度7以上の無機粒子を各々0.05重量%以上含有し、フィルムヘーズが2%以下であり、光学くし幅0.125mmにおける写像性透過率が90%以上であることを特徴とする多層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2011−68120(P2011−68120A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104722(P2010−104722)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】