説明

多層ラメラ顆粒、及びこれを含有する皮膚外用剤組成物

本発明は多層ラメラ顆粒及びこれを含有する皮膚外用剤組成物に関するものであって、核剤、前記核剤上のセラミド含有擬似角質脂質ラメラ層、及び前記擬似角質脂質ラメラ層上の高分子層を含むことを特徴とし、このような本発明の多層ラメラ顆粒を含有する皮膚外用剤組成物は皮膚への塗布時に優れた保湿効果及び障壁機能の治癒効果を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚への塗布時に優れた保湿効果及び障壁機能(角質機能)治癒効果を提供する多層ラメラ顆粒、及びこれを含有する皮膚外用剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミドは、スフィンゴシン(Sphingosine)又はフィトスフィンゴシン(Phytosphingosine)に脂肪酸が連結されている構造を有するスフィンゴ脂質の一種であって、セラミドは皮膚角質層を構成する角質細胞間脂質のうち約40%以上を占めており、角質層の構造形成や機能を示すのに必須の成分である。セラミドは、内・外部のストレス(stress)によって細胞が損傷を受けた場合、損傷を受けた細胞を取り除くことによりストレスから個体を保護する機能を果たす。
【0003】
このような角質層内のセラミドは、皮膚の老化が進行すると共に角質層内の含量が減少し、これに伴って皮膚水分の損失、紫外線や化学物質等の外部刺激への露出及び角質細胞の剥離現象が発生して皮膚表面が荒れるようになる。
【0004】
上述したような症状は、外部におけるセラミド供給、例えば化粧品等の皮膚外用剤を通じた供給により改善され得る。ところが、セラミドを含む各種角質層成分(脂質成分)は難溶性であって、これらを化粧品剤形に多量に含有させた場合、界面活性剤、オイル等の添加剤の使用量もまた増加して角質層の成分が皮膚角質層と類似した構造を形成することが難しい。それだけでなく、セラミドは容易にゲル化(gelation)して化粧品剤形の安定度を低下させるため、1重量%以上の量で使用されるのにも制限がある。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の目的は剤形安定度が優れ、皮膚の角質層と類似の構造を示す擬似角質脂質ラメラ層を含む多層ラメラ顆粒を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、上記多層ラメラ顆粒を含有して皮膚への塗布時に優れた保湿効果及び障壁機能の治癒効果を示す皮膚外用剤組成物を提供することである。
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は核剤、前記核剤上のセラミド含有擬似角質脂質ラメラ層、及び前記擬似角質脂質ラメラ層上の高分子層を含む、多少ラメラ顆粒を提供する。
【0008】
前記他の目的に従い、本発明は上記のような多層ラメラ顆粒を含む皮膚外用剤組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、流動層コーティング法の段階別模式図及び本発明の多層ラメラ顆粒の模式図である。
【図2】図2は、(a)及び(b)が流動層コーティング機のパイロットスケール及び生産スケールのそれぞれの写真図であり、(c)、(d)及び(e)が実施例1において製造された顆粒の光学顕微鏡、偏光顕微鏡及び電子顕微鏡のそれぞれの写真図である。
【図3】図3は、(a)がセラミドPC104、ステアリン酸及びコレステロールからなる三成分系デザインであり、(b)特定の組成におけるX線回折(XRD)の分析結果である。
【図4】図4は、皮膚障壁機能が損傷したハツカネズミに対して実施例9乃至13、及び比較例1乃至3の皮膚外用剤組成物を処理した後、一定時間の経過後に得た経皮水分損失量(TEWL)のグラフである。
【図5】図5は、実施例6において製造された顆粒の電子顕微鏡の写真図である。
【図6】図6は、実施例16及び18の皮膚外用剤組成物それぞれと色素との混合物を人口皮膚上に位置させ、一定時間洗浄した後に吸着している色素量を比較、観察した写真図である(上側:実施例16の組成物、右側:実施例18の組成物)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は核剤、前記核剤上のセラミド含有擬似角質脂質ラメラ層及び前記擬似角質脂質ラメラ層上の高分子層を含む多層ラメラ顆粒を提供する。
【0011】
本発明に使用される核剤は非活性でありながら外部の刺激に対して容易に崩壊が可能なコロイド類であって、例えば砂糖、塩、ヒアルロン酸、アルギン酸、コンドロイチンサルフェート、キトサン、キチン、ポリリシン、コラーゲン、ゼラチン、ステアリン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール及びこれらの混合物が挙げられる。
【0012】
このような核剤は、多層ラメラ顆粒の総重量を基準として1乃至99重量%の量で使用され得る。核剤の量を前記範囲で使用した場合、核剤表面に擬似角質脂質ラメラ層、高分子層等をコーティングする過程において発生し得る凝集現象を低くすることができるだけでなく、コーティング率を高めることができ、最終結果物である多層ラメラ顆粒の構造安定性を高めることができる。
【0013】
前記のような核剤上には、擬似角質脂質ラメラ(lamellar)層が位置する。人体の皮膚の角質層は角質細胞と角質細胞間脂質から構成され、皮膚固有の障壁機能を行う。このような障壁機能に最も核心的な役割を果たすのが角質細胞間脂質であって、多重層状構造であるラメラ構造を有する。ラメラ構造を有する角質細胞間脂質の構造と実質的に類似するように模写したものが擬似角質脂質ラメラ層に該当する。
【0014】
このような擬似角質脂質ラメラ層は、セラミドを必須として含み、好ましくは前記セラミド以外にリン脂質、脂肪酸、コレステロール又はその誘導体、アルコール、分子固定剤(molecular anchoring agent)、或いはこれらの混合物をさらに含み得る。
【0015】
前記のような擬似角質脂質ラメラ層に含まれるセラミドは、天然セラミドと擬似セラミドをいずれも包括する。
【0016】
天然セラミドとしては、例えばセラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド7及びセラミド8からなる群より少なくとも一つ選ばれたものであり得る。
【0017】
擬似セラミドは、天然のセラミドの皮膚保護作用、水分保有能力等と類似した特性を備える合成物質であって、例えば下記化学式1乃至6で表される化合物からなる群より少なくとも一つ選ばれ、これに限定される訳ではない。
【0018】
【化1】

【0019】
(上記式において、
RはC9-C21の飽和又は不飽和脂肪族鎖である。)、
【0020】
【化2】

【0021】
(上記式において、
nは1又は2であり、
R及びR’はC9-C21の飽和又は不飽和脂肪族鎖である。)、
【0022】
【化3】

【0023】
(上記式において、
m及びnは同じであるか異なり、1乃至3の整数であり、
k及びlは同じであるか異なり、1又は2であり、
jは0又は1であり、
R及びR’は同じであるか異なり、ヒドロキシ基を含有するか又は含有しない、C1-C31の直鎖或いは分枝鎖の飽和又は不飽和アルキル基であり、
A1、A2及びA3は同じであるか異なり、水素又は下記構造の置換基のうちいずれか一つであり、ただし、A1、A2及びA3が同時に水素である場合は除く:
【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
【化7】

【0028】
[上記式において、M、M1及びM2はアルカリ金属、リシン、アルギニン、ヒスチジン、トリエタノールアミン、アンモニア、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド及びステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドからなる群より選ばれ、Lはアルカリ土類金属である。])、
【0029】
【化8】

【0030】
(上記式において、
R及びR’は同じであるか異なり、ヒドロキシ基を含有するか又は含有しない、C10-C32の直鎖或いは分枝鎖の飽和又は不飽和アルキル基であり、
R3及びR4は同じであるか異なり、水素又はC1-C4のアルキル基或いはヒドロキシアルキル基であり、
R5は-CH2CH2OA又は下記構造の置換基のうちいずれか一つである:
【0031】
【化9】

【0032】
【化10】

【0033】
【化11】

【0034】
【化12】

【0035】
【化13】

【0036】
【化14】

【0037】
[上記式において、M、M1及びM2はアルカリ金属、リシン、アルギニン、ヒスチジン、トリエタノールアミン、アンモニア、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド及びステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドからなる群より選ばれ、Lはアルカリ土類金属である。])、
【0038】
【化15】

【0039】
(上記式において、
m及びnは同じであるか異なり、1乃至4の整数であり、
R及びR’は同じであるか異なり、ヒドロキシ基を含有するか又は含有しない、C1-C31の直鎖或いは分枝鎖の飽和又は不飽和アルキル基であり、
A1及びA2は同じであるか異なり、水素又は下記構造の置換基のうちいずれか一つである:
【0040】
【化16】

【0041】
【化17】

【0042】
【化18】

【0043】
【化19】

【0044】
【化20】

【0045】
【化21】

【0046】
[上記式において、M、M1及びM2はアルカリ金属又は窒素を含有する有機塩基であり、Lはアルカリ土類金属である。])、
【0047】
【化22】

【0048】
(上記式において、
m及びnは同じであるか異なり、1乃至3の整数であり、
k及びlは同じであるか異なり、1又は2であり、
jは0又は1であり、
A1、A2及びA3は同じであるか異なり、水素又は下記構造の置換基のうちいずれか一つであり:
【0049】
【化23】

【0050】
【化24】

【0051】
【化25】

【0052】
【化26】

【0053】
[上記式において、M、M1及びM2はアルカリ金属又は窒素を含有する有機塩基であり、Lはアルカリ土類金属である。]、
Rは下記構造を有する置換基である:
【0054】
【化27】

【0055】
[上記式において、Bはトコフェロールの5-、7-又は8-位置のメチル基であり、mは1乃至3の整数であり、Dは-CH2(CH3)-CH-又は-CH(CH3)=C-である。])。
上述した化学式1乃至6の化合物は、皮膚保湿及び皮膚障壁機能の回復において優れた効果を有し、セラミドPC104、PC102、PC107等として販売されている。
【0056】
また、擬似角質脂質ラメラ層に含まれるリン脂質はセラミドの安定化に大きく寄与し、セラミドのゲル化を抑制する役割を果たす。本発明に使用されるリン脂質は、植物、大豆、卵等から抽出して製造するか又はこれをより精製して製造したものであって、炭素数12乃至24個の脂肪酸鎖を有する種であり、この具体的な例としてはホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、本発明において使用するリン脂質は大豆から抽出したものであって、ホスファチジルコリンの含量が10-99重量%に該当する不飽和レシチンを20-99重量%含有する飽和レシチンと不飽和レシチンの混合物であり得る。
【0057】
また、擬似角質脂質ラメラ層に含まれる脂肪酸としては、例えば炭素数8乃至30個の不飽和又は飽和脂肪酸が使用され得、アルコールとしては例えば炭素数8乃至30個の不飽和又は飽和アルコールが使用され得る。
【0058】
さらに、擬似角質脂質ラメラ層に含まれるコレステロール又はその誘導体としては、例えばコレステロール、コレステリルクロライド、コレステリルオクタノエート、コレステリルノナノエート、コレステリルオレイルカーボネート、コレステリルイソステアリルカーボネート及びこれらの混合物が挙げられる。
【0059】
擬似角質脂質ラメラ層に含まれる分子固定剤(molecular anchoring agent)は、脂質構造体と皮膚上の蛋白質を化学的に結合させて脂質構造体が皮膚上に長い時間維持されるようにする役割を果たす。本発明に使用可能な分子固定剤は疎水基として炭素数12乃至20個のアルキル基又はアルケニル基を有し、親水基としてスクシンイミジルエステルを有する物質であって、好ましくは[オレイルオキシ-ポリ(エチレングリコール)n-スクシニル-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル](nは2乃至100の整数、より好ましくは10乃至80の整数)であり得る。
【0060】
好ましくは、前記擬似角質脂質ラメラ層は前記セラミド100重量部を基準としてリン脂質、脂肪酸、コレステロール又はその誘導体、アルコール及び分子固定剤をそれぞれ1〜100重量部、1〜100重量部、1〜50重量部、1〜50重量部及び1〜50重量部の量で含み得る。これらの成分の適正配合比率は、混合物が安定したラメラ構造を形成する含量に決定する。
【0061】
このような擬似角質脂質ラメラ層は、本発明の多層ラメラ顆粒の総重量を基準として例えば0.00001乃至99重量%の量で使用され得る。
【0062】
上記のような擬似角質脂質ラメラ層上には、高分子層が位置する。高分子層は擬似角質脂質ラメラ層の外部を囲み、擬似角質脂質ラメラ層を保護するものであって、多層ラメラ顆粒の構造安定性を大きく向上させる役割を果たす。
【0063】
このような高分子層は溶媒、例えば水や極性を有する有機溶媒等に容易に溶解されず、擬似角質脂質ラメラ層の表面に均一にコーティングされ得るものであれば特に限定されず、天然高分子でもあり得、合成高分子でもあり得、また天然高分子と合成高分子の混合型でもあり得る。
【0064】
高分子層を構成する天然高分子は、例えばヒアルロン酸、アルギン酸、ペクチン、カラギナン、コンドロイチンサルフェート、デキストランサルフェート、キトサン、キチン、ポリリシン、コラーゲン及びフィブリン等がある。
【0065】
また、高分子層を構成する合成高分子としては、例えばポリエチレングリコール-ポリ乳酸-ポリエチレングリコール(PEG-PLA-PEG)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)-ポリエチレングリコール(PEG-PLGA-PEG)、ポリエチレングリコール-ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコール(PEG-PCL-PEG)、ポリエチレン-ビス-(ポリ乳酸-アクリレート)及びリン(イソプロピルアクリルアミド-コ-アクリル酸)等がある。
【0066】
また、高分子層を構成する天然高分子と合成高分子の混合型としては、例えばリン(ポリエチレングリコール-コ-ペプチド)、アルジネート-g-(ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド-ポリエチレンオキサイド(PEO-PPO-PEO))、リン(ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)-コ-セリン)、コラーゲン-アクリレート及びアルジネート等がある。また、生分解性疎水性脂肪族ポリエステルを前記高分子として使用することができるが、この例としては、ポリ-L-乳酸、ポリ-D,L-グリコール酸、ポリ-L-乳酸-コ-グリコール酸、ポリ-D,L-乳酸-コ-グリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレート、ポリオルトエステル及びこれらの単量体から製造された共重合体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0067】
また、本発明に使用可能な高分子としてはポリスチレン、ポリp-又はm-メチルスチレン、ポリp-又はm-エチルスチレン、ポリp-又はm-クロロスチレン、ポリp-又はm-クロロメチルスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ポリp-又はm-又はt-ブトキシスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピル(メタ)アクリレート、ポリn-ブチル(メタ)アクリレート、ポリイソブチル(メタ)アクリレート、ポリt-ブチル(メタ)アクリレート、ポリ2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ポリn-オクチル(メタ)アクリレート、ポリラウリル(メタ)アクリレート、ポリステアリル(メタ)アクリレート、ポリ2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリグリシジル(メタ)アクリレート、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネート、ポリビニルブチレート、ポリビニルエーテル、ポリアリルブチルエーテル、ポリアリルグリシジルエーテル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸のような不飽和カルボキシル酸、ポリアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリロニトリル等を混用して使用することができる。
【0068】
前記高分子層は多層ラメラ顆粒の総重量を基準として0.01乃至90重量%の量で使用され得る。高分子層の量を前記範囲で使用する場合、多層ラメラ顆粒の安定度を高めることができ、最終結果物である多層ラメラ顆粒を化粧品等の皮膚外用剤への適用時に異物感が現われないようにする。
【0069】
本発明の多層ラメラ顆粒は、多様なコーティング方法を通じて製造することができ、好ましくは、例えば流動層コーティング機を使用する流動層コーティング法を使用して製造することができる。
【0070】
これをより詳細に説明すると次のとおりである。
【0071】
先ず、核剤を流動層コーティング機に入れてかき混ぜる。
【0072】
引き続き、かき混ぜた核剤の表面をセラミドを含有する擬似角質脂質ラメラ配合物の溶液で室温減圧条件下にて1次的に噴霧コーティングした後乾燥させ、核剤表面に擬似角質脂質ラメラ層を形成する。このとき、他の任意成分(リン脂質、脂肪酸、コレステロール又はその誘導体、アルコール、又は分子固定剤)を共に溶液に添加して噴霧コーティングすることができ、リン脂質を使用した場合、セラミドとリン脂質をそれぞれ別途の溶液にして順次噴霧コーティングすることもできる。別途のセラミド溶液とリン脂質溶液を使用する場合には、その他の任意成分をどの溶液にでも分けて添加することができる。
【0073】
このとき、擬似角質脂質ラメラ配合物を溶解させるための溶媒は揮発性を備え、擬似角質脂質成分を溶解させることができるものであれば特に限定されない。
【0074】
前記過程において使用する溶媒は、選ばれた擬似角質脂質成分を溶解させることができる全ての化学物質であって、具体的にはヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等のような直鎖状アルカン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のような直鎖又は分枝鎖アルコール類;ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール等のような炭素数4乃至10個のアルコール類;n-ヘキシルアセテート、2-エチルヘキシルアセテート、メチルオリエート、ジブチルセバケート、ジブチルアジペート(adipate)、2-ブチルカルバメート等のような炭素数7個以上のアルキルエステル;メチルイソブチルケトン、イソブチルケトン等のような脂肪族ケトン;ベンゼン、トルエン、o-又p-はキシレン等のような芳香族炭化水素;メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素等のような塩素化合物等を使用することができるが、これに限定される訳ではない。
【0075】
好ましくは沸点が低く、簡単に蒸発してコーティングを容易に進行させるメタノール、エタノール、メチレンクロライド、クロロホルム又はアセトン等を使用するのがよい。
溶媒の使用量は、擬似角質脂質ラメラ配合物100重量部を基準として10乃至99重量部であり得る。溶媒の量を前記範囲で使用した場合、有効成分を効果的に溶解させることができ、噴霧コーティング時の噴射時間が長くなく工程の効率を高めることができる。
【0076】
次に、核剤上の擬似角質脂質ラメラ層の表面を高分子の溶液で室温減圧条件下で2次的に噴霧コーティングした後、乾燥させて本発明による多層ラメラ顆粒を製造することができる。
【0077】
このとき、高分子を溶解させるための溶媒は揮発性を備え、選ばれる高分子に対して類似した溶解度パラメータを備える全ての化学物質であって、具体的な例は上述した擬似角質脂質ラメラ配合物に対する溶媒と実質的に同一である。
【0078】
溶媒の使用量は、高分子100重量部を基準として10乃至99重量部であり得る。溶媒の量を前記の範囲で使用した場合、高分子のゲル化を防止し、噴霧コーティング時の噴射時間が長くなく工程の効率を高めることができる。
【0079】
上述した流動層コーティング法の段階的模式図及びこれを通じて得られた本発明の多層ラメラ顆粒の模式図を図1に示した。
【0080】
さらに、本発明はまた、前記多層ラメラ顆粒を含む皮膚外用剤組成物を提供する。
【0081】
本発明の皮膚外用剤組成物は、前記多層ラメラ顆粒を、組成物の総重量を基準として例えば約0.01乃至99重量%、好ましくは約0.01乃至5重量%の量で含み得る。前記範囲を満たした場合、より優れた剤形安定性、使用感、皮膚保湿及び障壁の回復効果に利点がある。
本発明の皮膚外用剤組成物は、その剤形において特に限定される訳ではなく、例えば柔軟化粧水、栄養化粧水、マッサージクリーム、栄養クリーム、パック、ジェル又は皮膚粘着タイプ化粧料の剤形を有する化粧料組成物であり得る。好ましくは、化粧料組成物は相安定度に優れた水中油エマルジョン、可溶化ジェルの剤形であり得る。
【0082】
これ以外にも、薬学的に許容可能な担体内に本発明の多層ラメラ顆粒が分散又は溶解された状態で存在する薬学組成物であり得、ローション、溶液、ジェル、クリーム、エモリエントクリーム、軟膏、パッチ剤、又は噴霧剤のような経皮投与用製剤であり得る。このような薬学組成物の場合、例えばアトピー性皮膚炎、あせも、ただれ、凍傷、オムツによる皮膚病、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、ビダール苔癬、貨幣状湿疹、主婦湿疹、日光皮膚炎、蟲刺症、皮膚焼盡症、痒疹、薬疹、中毒疹、乾癬、類乾癬、掌蹠膿疱症、扁平苔癬、光沢苔癬、毛孔性紅粃糠疹、ジベルトバラ色粃糠疹、紅斑症、紅皮症、円板状紅斑性狼瘡、全身性紅斑性狼瘡、天疱瘡、類天疱瘡、ジュー
リング疱疹状皮膚炎、円形脱毛症、尋常性白斑、サルコイドーシス、皮膚アミロイドーシス、ケロイド、肥厚性瘢痕、瘡傷、褥瘡、皮膚潰瘍、脱毛、養毛又は育毛の治療及び予防に使用され得る。
【0083】
本発明の皮膚外用剤組成物はまた、他の薬剤を伝達するための基材として作用し、薬剤に対する臨床的反応を向上させることができる。このような薬剤の例としては、抗炎症剤(例:コルチコステロイド、コルヒチン、スルファサラジン及びスルホン);抗生物質(例:キノロン、マクロライド、ペニシリン、セファロスポリン、スルホンアミド及びテトラサイクリン);抗ウイルス剤(例:アシクロビル、イドクスウリジン、ジドブジン、2’、3’-ジデオキシイノシン(ddI)、ビダリビン及びトリフルリジン;抗疹菌剤(例:ケトコナゾール、エコナゾール、グリセオフルビン、シクロピロクス及びナフチジン);抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、アステミゾール、ヒドロキシジン、ドキセピン、アミトリプチリン、シプロヘプタジン及びソジウムクロモリン);抗そう痒剤(例:カンフル、メントール、フェノール、ベンゾカイン、ベンジルアルコール、サリチル酸、ジクロニン及びプラモキシン);抗新生物剤(例:メトトレキセート、ピリトレキシム、シスプラチン、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、カルムスチン、ヒドロキシウレア、アザチオプリン及び窒素マスタード);カルボン酸擬似体(例:1-モノラウリン、アゼライン酸及びドデカンジオン酸);天然又は合成ビタミン及びその擬似体(例:ビタミンD、カルシポトリオール、1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール、レチノール、レチニルパルミテート、レチニルアスコルベート、イソトレチノイン、エトレチナート及びレチノン酸);及びアルテミシニン擬似体(例:アルテスネート、アルテエーテル、アルテメーテル、ジヒドロアルテミシニン及びアルテレニック酸)等がある。
【0084】
本発明の組成物は上述した成分に限定されず、必要に応じて通常の化粧料組成物又は薬学組成物に配合される他の成分を含み得る。例えば、油脂成分、保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、有機又は無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、精製水等を含み得る。
【0085】
以上において察し見たように、本発明による多層ラメラ顆粒は、擬似角質脂質ラメラ層を顆粒内に含むことにより、後に剤形化される場合にもオイル及び界面活性剤等との接触が遮断されて皮膚角質層と類似したラメラ構造を安定して維持することができる。したがって、このような本発明の多層ラメラ顆粒を含有する皮膚外用剤組成物は、皮膚への塗布時に優れた保湿効果及び障壁機能の治療効果を示すことから化粧品及び薬品等に有用に使用することができる。
【0086】
以下、本発明を下記の実施例に基づいて詳細に説明することにする。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものであるだけであって、本発明の範囲がこれに限定される訳ではない。
【実施例】
【0087】
〈実施例1:擬似角質脂質ラメラ層(擬似セラミド/ステアリン酸/コレステロール)を含有する多層ラメラ顆粒の製造〉
擬似セラミドであるセラミドPC104(マクロケア社、韓国)を使用し、顆粒は次のような過程を経て製造された。
【0088】
先ず、平均200mmの大きさの砂糖核剤500gを流動層コーティング機(Glatt社、ドイツ)に入れてかき混ぜた。使用した流動層コーティング機のパイロットスケール及び生産スケールそれぞれの写真を図2の(a)及び(b)に示した。引き続き、擬似角質脂質ラメラ配合物(440, g/g)をエタノール2000gに完全に溶解させた後、この溶液で核剤の表面を室温条件で噴霧コーティングしてから減圧乾燥させた。噴霧速度は10ml/minであり、擬似角質脂質ラメラ配合物はセラミドPC104、ステアリン酸及びコレステロールが0.4:0.4:0.2の重量比で配合されたものを使用した。引き続き、上記で得られたコーティング物の表面を、キチン50gを水95gに溶かした溶液で室温条件において噴霧コーティングしてから減圧乾燥させた。噴霧速度は10ml/minであり、全ての工程は室温で進められた。最終的に回収された多層ラメラ顆粒を篩で濾して微細残余物を除去し、パックに密閉保管した。
【0089】
〈実施例2:擬似角質脂質ラメラ層(天然セラミド/ステアリン酸/コレステロール)を含有する多層ラメラ顆粒の製造〉
擬似セラミドの代わりに天然セラミドであるセラミド3(斗山、韓国)を使用したことを除いては、前記実施例1と同一の方法により行って多層ラメラ顆粒を製造した。
【0090】
〈実施例3:擬似角質脂質ラメラ層(擬似セラミド)を含有する多層ラメラ顆粒の製造〉
セラミドPC104のみを使用して擬似角質脂質ラメラ層を形成したことを除いては、前記実施例1と同一の方法により行って多層ラメラ顆粒を製造した。
【0091】
〈実施例4:擬似角質脂質ラメラ層(擬似セラミド/ステアリン酸)を含有する多層ラメラ顆粒の製造〉
セラミドPC104及びステアリン酸を1:1の重量比で使用して擬似角質脂質ラメラ層を形成したことを除いては、前記実施例1と同一の方法により行って多層ラメラ顆粒を製造した。
【0092】
〈実施例5:擬似角質脂質ラメラ層(擬似セラミド/パルミチン酸/コレステロール)を含有する多層ラメラ顆粒の製造〉
ステアリン酸の代わりにパルミチン酸を使用したことを除いては、前記実施例1と同一の方法により行って多層ラメラ顆粒を製造した。
【0093】
〈実施例6:擬似角質脂質ラメラ層(擬似セラミド/ステアリン酸/分子固定剤/リン脂質)を含有する多層ラメラ顆粒の製造〉
擬似セラミドであるセラミドPC104(マクロケア社、韓国)を使用したのであり、顆粒は次のような過程を経て製造された。
【0094】
先ず、平均200nmの大きさの砂糖核剤500gを流動層コーティング機(Glatt社、ドイツ)に入れてかき混ぜた。引き続き、セラミドPC104、1000gを塩化メチレン5kgに完全に溶解させた後、この溶液で核剤の表面を室温減圧条件にて噴霧コーティングした。それから、ホスファチジルコリン100g、分子固定剤として[オレイルオキシ-ポリ(エチレングリコール)20-スクシニル-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル]10g及びステアリン酸50gを塩化メチレン500gに溶解させた後、上記と同一の方法でコーティング物の表面を室温減圧条件にて噴霧コーティングした。引き続き、上記で得られたコーティング物の表面を、キチン50gを水95gに溶かした溶液で室温減圧条件にて噴霧コーティングした。噴霧速度はいずれも10ml/minであり、全ての工程は室温で進められた。最終的に回収された多層ラメラ顆粒を篩で濾して微細残余物を除去し、アルミニウムパックに密閉保管した。
【0095】
〈実施例7:擬似角質脂質ラメラ層(天然セラミド/ステアリン酸/分子固定剤/リン脂質)を含有する多層ラメラ顆粒の製造〉
擬似セラミドの代わりに天然セラミドであるセラミド1(斗山、韓国)を使用したことを除いては、前記実施例6と同一の方法により行って多層ラメラ顆粒を製造した。
【0096】
〈実施例8:擬似角質脂質ラメラ層(擬似セラミド/ステアリン酸/リン脂質)を含有する多層ラメラ顆粒の製造〉
分子固定剤を使用しないことを除いては、前記実施例6と同一の方法により行って多層ラメラ顆粒を製造した。
【0097】
〈試験例1:多層ラメラ顆粒の構造分析〉
前記実施例1及び2において製造された多層ラメラ顆粒の形状を光学顕微鏡、偏光顕微鏡及び電子顕微鏡で観察し、実施例1で製造された顆粒の光学顕微鏡の写真、偏光顕微鏡の写真及び電子顕微鏡の写真それぞれを図2の(c)、(d)及び(e)に示した。図2の偏光顕微鏡の写真と電子顕微鏡の写真から、実施例1で製造された多層ラメラ顆粒の擬似角質脂質層がラメラ構造を形成することが分かる。
【0098】
上記実施例6及び7において中間に(高分子層の形成前に)得られたラメラ顆粒の形状を光学顕微鏡、偏光顕微鏡及び電子顕微鏡で観察し、実施例6で得られた顆粒の電子顕微鏡の写真を図5に示した。図5の写真から、実施例6で得られた高分子層形成前の顆粒の場合、核剤の周囲をラメラ層が連続して囲っていることが分かる。
【0099】
また、実施例7で製造された多層ラメラ顆粒も図5に示した顕微鏡のイメージと同一の形状を示したが、これはセラミド、分子固定剤及び脂肪酸がリン脂質と共にラメラ構造に配列されて固定化されていることを示す。
【0100】
〈実施例9-13及び比較例1-3:皮膚外用剤組成物の製造〉
下記表1の組成で実施例9、及び比較例1と2の皮膚外用剤組成物を水中油(O/W)エマルジョン剤形に製造したのであり、下記表2の組成で実施例10乃至13及び比較例3の皮膚外用剤組成物をジェル剤形に製造した。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
<実施例9及び比較例1-2の製造方法>
(1) 油相成分を70乃至75℃で加熱して均一に混合した。
(2) 水相成分1を70乃至75℃で加熱して均一に溶解及び混合した。
(3) 前記(2)の混合物に前記(1)の混合物を70乃至75℃の温度を維持した状態で撹拌して投与した後、28乃至30℃まで冷却してO/Wエマルジョンを得てから水相成分2を投入した後、撹拌して均一に分散させた。
【0104】
<実施例10-13及び比較例3の製造方法>
(1) 水相成分1を均一に混合した。
(2) アルコール成分を均一に混合した。
(3) 前記(1)の混合物に水相成分2を撹拌して徐々に投与した上で漸増させた後、連続して前記(2)の混合物を投与してジェル剤形を得、水相成分3を投入してから撹拌して均一に分散させた。
【0105】
〈試験例2:ハツカネズミにおける皮膚障壁機能の回復試験〉
前記実施例9-13及び比較例1-3の化粧料組成物の長期間にわたる皮膚損傷による皮膚障壁機能の回復能力を評価した。
【0106】
先ず、出生後8乃至10週間が経過した若い無毛のハツカネズミ(オリエント社、韓国)の背(back)にオキサゾロンを1日1回ずつ5日間周期的に塗布して実験動物の皮膚障壁機能を損傷させた。
【0107】
以後、蒸発計(デルフィン社、フィンランド)で経皮水分損失量(Transepidermal Water Loss; TEWL)を測定して時間当たり40g/m2以上の経皮水分損失を示す皮膚を有する実験動物のみを対象にして試験物質を皮膚面積5cm2当たり50μlの容量で1日2回ずつ7日間連続塗布しながら一定時間ごとにTEWLを測定したのであり、その結果を図4に示した。
【0108】
図4に示されているように、実施例9-13の組成物を塗布した処理群が比較例1-3の組成物を塗布した処理群に比して更にずっと効果的に障壁損傷を回復させ、正常な皮膚に戻すことが分かった。
【0109】
〈試験例3:人体における皮膚保湿力の改善効果試験〉
前記実施例9及び10、並びに比較例1及び3において製造した水中油エマルジョン及び可溶化ジェル剤形の皮膚保湿力改善効果を測定した。
【0110】
皮膚乾燥症が現われた50〜60代の成人男女40名を4つの組に分け、各組に実施例9及び10、並びに比較例1及び3の化粧料組成物を毎日2回ずつ4週間、顔面に塗布した。塗布開始前と塗布後1週間、2週間、4週間経過した時点、それと塗布を中止してから2週間経過(総6週間経過)後に恒温、恒湿条件(24℃、相対湿度40%)で皮膚表皮の電気伝導度の値を測定して皮膚に存在する水分量を測定する水分測定器であるコルネオメーターで皮膚の水分量を測定した。結果を下記の表3に示した。表3の結果は試験開始直前に測定したコルネオメーターの値を基準として一定の期間処置した後の測定値の増加分を百分率(%)で表示したものである。
【0111】
これとは別に、試験を終了した時点で試験対象者に対して設問紙を作成してもらうようにし、機器的な評価と共に主観的な効能評価も実施した。その結果を下記の表4に示した。
【0112】
【表3】

【0113】
【表4】

【0114】
前記表3から分かるように、本発明による多層ラメラ顆粒を含有する実施例9及び10の組成物を塗布した処理群が比較例1及び3の組成物を塗布した処理群に比して皮膚水分量がさらに増加することが分かる。また、試験物質の塗布を中止してから2週間後、すなわち総6週間経過後の数値が1乃至2週間経過後の数値と類似して示され、組成物を継続して塗布しなくても本発明の組成物によりある程度皮膚水分が持続的に維持されることが分かる。
また、前記表4から分かるように、設問調査を通じた調査結果からも本発明による多層ラメラ顆粒を含有する実施例9及び10の組成物を塗布した場合、皮膚乾燥症が改善されることが確認された。
【0115】
〈実施例14-15及び比較例4-5:皮膚外用剤組成物(可溶化剤形)の製造-剤形安定度試験〉
下記表5の組成を有する透明ジェル形態(粘度約3,500cps)の可溶化剤形を製造した。この際、粘度はブルックフィールド(Brookfield, LVDVII+)を利用して30℃にて12rpmで測定した。また、顆粒はいずれも5重量%で添加したのであり、剤形安定度を比較するためにセラミドPC104又はセラミド1を別途に添加した。このように製造された剤形を25℃と45℃のオーブンでそれぞれ保管し、2週間、4週間及び8週間後にそれぞれ試料を取ってゲル化の程度を観察した。その結果を下記表6に示した。
【0116】
【表5】

【0117】
【表6】

【0118】
上記表6からセラミドを擬似角質脂質ラメラ層として顆粒内にのみ含む実施例14及び15の可溶化剤形はゲル化を起こさないのに対し、顆粒化しないセラミドを含む比較例4及び5の可溶化剤形は時間が経過するに伴ってゲル化することが確認された。
【0119】
〈実施例16-18及び比較例6-7:皮膚外用剤組成物(乳化剤形)の製造-剤形安定度試験〉
乳化剤形におけるゲル化防止効果を調べるために、下記表7の組成を有するローションを製造した。それぞれの油相と水相は70℃で完全に溶解させ、7,000rpmで5分間乳化させて不透明ジェル形態のローションを製造した。ローションの粘度は約3,000cpsであった。このように製造された剤形を25℃と45℃のオーブンでそれぞれ保管し、4週間、8週間及び16週間後にそれぞれ試料を取ってゲル化の程度を観察した。その結果を下記の表8に示した。
【0120】
【表7】

【0121】
【表8】

【0122】
上記表8から、セラミドを擬似角質脂質ラメラ層として顆粒内にのみ含む実施例16及び17の乳化剤形はゲル化を起こさないのに対し、顆粒化しないセラミドを含む比較例6及び7の乳化剤形は時間が経過するに伴ってゲル化することが確認された。
【0123】
〈参照例1:擬似角質脂質ラメラ配合物の組成の決定〉
セラミドPC104/ステアリン酸/コレステロールの三成分系からなる擬似角質脂質ラメラ配合物を有し、皮膚角質層と類似したラメラ構造を有することが可能な最適組成を決定するために実験を行った。図3に示したように、三成分それぞれを0乃至1重量%の領域において10個の濃度に分けた後、三成分を配合した。引き続き、それぞれの配合物を70℃で溶解させた後、35℃で4ヶ月間保管してラメラ構造の変化を確認した。確認の結果、擬似角質層構造を有する配合物の組成がセラミド0-1.0重量%、ステアリン酸0-1.0重量%及びコレステロール0-0.5重量%分率領域の具体化された三成分系において存在することが確認された。
【0124】
特に、セラミドPC104、ステアリン酸及びコレステロールの重量比が0.4:0.4:0.2である組成では、図3に示したX線回折(XRD)分析結果から確認することができるように、最も安定化したラメラ相が形成されることが分かる。
【0125】
〈参照例2:分子固定剤の効果〉
製造された多層ラメラ顆粒中の分子固定剤の効果を検証するために、次のような試験を行った。
【0126】
前記実施例16及び18で製造された乳化剤形それぞれを人口皮膚上に0.2gの量で位置させ、水溶性色素である赤色227号の1/1000希釈液0.01gを添加してよく混合した後、100mlの水でマグネチック撹拌(magnetic stirring)を利用して7分間洗浄してから吸着している色素量を観察してその写真を図6に示した(左側:実施例16の剤形、右側:実施例18の剤形)。図6の写真から、分子固定剤が使用された実施例16の剤形はほとんど皮膚上に残存するのに対し、分子固定剤が使用されない実施例18の剤形は実施例16の剤形に比して相当部分が洗浄されてしまうことが確認できる。これは、分子固定剤の使用を通じて多層ラメラ顆粒をより長い間皮膚上に残存させることができることを示している。
【0127】
以上において詳述したように、本発明による多層ラメラ顆粒は、擬似角質脂質ラメラ層を顆粒内に含むことにより、後に剤形化される場合にもオイル及び界面活性剤等との接触が遮断されて皮膚角質層と類似したラメラ構造を安定的に維持することができる。したがって、このような本発明の多層ラメラ顆粒を含有する皮膚外用剤組成物は、皮膚への塗布時に優れた保湿効果及び障壁機能の治癒効果を示すことから化粧品及び薬品等に有用に使用することができる。
【0128】
以上において本発明を特定の実施態様と関連付けて説明したが、添付の請求の範囲により定められる本発明の範疇内において当該分野の専門家は、本発明を多様に変形及び変化させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核剤、前記核剤上のセラミド含有擬似角質脂質ラメラ層、及び前記擬似角質脂質ラメラ層上の高分子層を含む、多層ラメラ顆粒。
【請求項2】
前記核剤は、砂糖、塩、ヒアルロン酸、アルギン酸、コンドロイチンサルフェート、キトサン、キチン、ポリリシン、コラーゲン、ゼラチン、ステアリン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール及びこれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1の多層ラメラ顆粒。
【請求項3】
前記核剤は、前記多層ラメラ顆粒の総重量を基準として1乃至99重量%の量で含まれる請求項1の多層ラメラ顆粒。
【請求項4】
前記セラミドは、天然セラミド及び擬似セラミドのうち少なくとも一つ選ばれる請求項1の多層ラメラ顆粒。
【請求項5】
前記天然セラミドは、セラミド1乃至セラミド8からなる群より少なくとも一つ選ばれる請求項4の多層ラメラ顆粒。
【請求項6】
前記擬似セラミドは、次の化学式1乃至6からなる群より少なくとも一つ選ばれる請求項4の多層ラメラ顆粒。
【化1】

(上記式において、
RはC9-C21の飽和又は不飽和脂肪族鎖である。)、
【化2】

(上記式において、
nは1又は2であり、
R及びR’はC9-C21の飽和又は不飽和脂肪族鎖である。)、
【化3】

(上記式において、
m及びnは同じであるか異なり、1乃至3の整数であり、
k及びlは同じであるか異なり、1又は2であり、
jは0又は1であり、
R及びR’は同じであるか異なり、ヒドロキシ基を含有するか又は含有しない、C1-C31の直鎖或いは分枝鎖の飽和又は不飽和アルキル基であり、
A1、A2及びA3は同じであるか異なり、水素又は下記構造の置換基のうちのいずれかであり、但しA1、A2及びA3が同時に水素である場合は除く:
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

[上記式において、M、M1及びM2はアルカリ金属、リシン、アルギニン、ヒスチジン、トリエタノールアミン、アンモニア、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド及びステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドからなる群より選ばれ、Lはアルカリ土類金属である。])、
【化8】

(上記式において、
R及びR’は同じであるか異なり、ヒドロキシ基を含有するか又は含有しない、C10-C32の直鎖或いは分枝鎖の飽和又は不飽和アルキル基であり、
R3及びR4は同じであるか異なり、水素又はC1-C4のアルキル基或いはヒドロキシアルキル基であり、
R5は-CH2CH2OA又は下記構造の置換基のうちいずれか一つである:
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

[上記式において、M、M1及びM2はアルカリ金属、リシン、アルギニン、ヒスチジン、トリエタノールアミン、アンモニア、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド及びステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドからなる群より選ばれ、Lはアルカリ土類金属である。])、
【化15】

(上記式において、
m及びnは同じであるか異なり、1乃至4の整数であり、
R及びR’は同じであるか異なり、ヒドロキシ基を含有するか又は含有しない、C1-C31の直鎖或いは分枝鎖の飽和又は不飽和アルキル基であり、
A1及びA2は同じであるか異なり、水素又は下記構造の置換基のうちいずれか一つである:
【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

[上記式において、M、M1及びM2はアルカリ金属又は窒素を含有する有機塩基であり、Lはアルカリ土類金属である。])、
【化22】

(上記式において、
m及びnは同じであるか異なり、1乃至3の整数であり、
k及びlは同じであるか異なり、1又は2であり、
jは0又は1であり、
A1、A2及びA3は同じであるか異なり、水素又は下記構造の置換基のうちいずれか一つであり:
【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

[上記式において、M、M1及びM2はアルカリ金属又は窒素を含有する有機塩基であり、Lはアルカリ土類金属である。]、
Rは下記構造を有する置換基である:
【化27】

[上記式において、Bはトコフェロールの5-、7-又は8-位置のメチル基であり、mは1乃至3の整数であり、Dは-CH2(CH3)-CH-又は-CH(CH3)=C-である。])。
【請求項7】
前記擬似角質脂質ラメラ層は、前記多層ラメラ顆粒の総重量を基準として0.00001乃至99重量%の量で含まれる請求項1の多層ラメラ顆粒。
【請求項8】
前記擬似角質脂質ラメラ層は、リン脂質、脂肪酸、コレステロール又はその誘導体、アルコール、分子固定剤、或いはこれらの混合物をさらに含む請求項1の多層ラメラ顆粒。
【請求項9】
前記リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸及びこれらの混合物からなる群より選ばれる請求項8の多層ラメラ顆粒。
【請求項10】
前記脂肪酸は、炭素数8乃至30個の不飽和又は飽和脂肪酸である請求項8の多層ラメラ顆粒。
【請求項11】
前記コレステロール又はその誘導体は、コレステロール、コレステリルクロライド、コレステリルオクタノエート、コレステリルノナノエート、コレステリルオレイルカーボネート、コレステリルイソステアリルカーボネート及びこれらの混合物からなる群より選ばれる請求項8の多層ラメラ顆粒。
【請求項12】
前記アルコールは、炭素数8乃至30個の不飽和又は飽和アルコールである請求項8の多層ラメラ顆粒。
【請求項13】
前記分子固定剤は疎水基であって、炭素数12乃至20個のアルキル基又はアルケニル基を有し、親水基としてスクシンイミジルエステルを有する物質である請求項8の多層ラメラ顆粒。
【請求項14】
前記分子固定剤は、[オレイルオキシ-ポリ(エチレングリコール)n-スクシニル-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル](nは2乃至100の整数)である請求項13の多層ラメラ顆粒。
【請求項15】
前記リン脂質、脂肪酸、コレステロール又はその誘導体、アルコール及び分子固定剤はそれぞれ前記セラミド100重量部を基準として1〜100重量部、1〜100重量部、1〜50重量部、1〜50重量部及び1〜50重量部の量で含まれる請求項8の多層ラメラ顆粒。
【請求項16】
前記高分子層は、多層ラメラ顆粒の総重量を基準として0.01乃至90重量%の量で含まれる請求項1の多層ラメラ顆粒。
【請求項17】
前記多層ラメラ顆粒は、流動層コーティング機で製造される請求項1の多層ラメラ顆粒。
【請求項18】
請求項1による多層ラメラ顆粒を含む皮膚外用剤組成物。
【請求項19】
前記多層ラメラ顆粒を、組成物の総重量を基準として0.01乃至99重量%で含有する請求項18の組成物。
【請求項20】
前記組成物は、化粧料組成物又は薬学組成物である請求項18の組成物。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−529043(P2011−529043A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519967(P2011−519967)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005143
【国際公開番号】WO2010/010985
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(505118718)アモーレパシフィック コーポレイション (21)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【Fターム(参考)】