説明

多層レジストプロセス用無機膜形成組成物及びパターン形成方法

【課題】無機膜上に形成するレジストパターンの形成性及びエッチング選択比に優れ、レジスト膜を薄膜化する場合においても忠実なパターン転写が可能な多層レジストプロセス用無機膜形成組成物、並びにパターン形成方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、[A]加水分解性基を有する金属錯体(I)、加水分解性基を有する金属錯体(I)の加水分解物及び加水分解性基を有する金属錯体(I)の加水分解縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、並びに[B]有機溶媒を含有する多層レジストプロセス用無機膜形成組成物であって、[A]化合物が、第3族元素、第4族元素及び第5族元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含有し、かつこの金属元素の含有割合が、[A]化合物に含まれる金属元素及び半金属元素の合計量に対し50モル%以上であることを特徴とする多層レジストプロセス用無機膜形成組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層レジストプロセス用無機膜形成組成物及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の微細化に伴い、より高い集積度を得るために多層レジストプロセスを用いた加工サイズの微細化が進んでいる。この多層レジストプロセスでは、シリコン系無機材料を用いて無機膜を形成した後、レジスト組成物をさらに塗布して無機膜とはエッチング選択比の異なる有機膜であるレジスト膜を形成し、次いで露光によってマスクパターンを転写し、現像液で現像することによりレジストパターンを得る。引き続きドライエッチングによりこのレジストパターンを無機膜に転写し、最終的にドライエッチングによりレジスト下層膜のパターンを被加工基板に転写することにより、所望のパターンが施された基板が得られる(特開2001−284209号公報、特開2010−85912号公報及び特開2008−39811号公報参照)。
【0003】
一方、被加工基板をより微細に加工するためにはレジスト膜を薄膜化する必要がある。しかし、シリコン酸化膜等の従来の無機材料を用い、レジスト膜を薄膜化する場合、レジストパターンの消失、型崩れ、曲がり等を生じ、所望のパターンの転写が困難となる不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−284209号公報
【特許文献2】特開2010−85912号公報
【特許文献3】特開2008−39811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、無機膜上に形成するレジストパターンの形成性及びエッチング選択比に優れ、レジスト膜を薄膜化する場合においても忠実なパターン転写が可能な多層レジストプロセス用無機膜形成組成物、並びにパターン形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]加水分解性基を有する金属錯体(I)、加水分解性基を有する金属錯体(I)の加水分解物及び加水分解性基を有する金属錯体(I)の加水分解縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(以下、「[A]化合物」とも称する)、並びに
[B]有機溶媒
を含有する多層レジストプロセス用無機膜形成組成物であって、
[A]化合物が、第3族元素、第4族元素及び第5族元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素(以下、「特定元素」とも称する)を含有し、かつ上記第3族元素、第4族元素及び第5族元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の含有割合が、[A]化合物に含まれる金属元素及び半金属元素の合計量に対し50モル%以上であることを特徴とする多層レジストプロセス用無機膜形成組成物である。
【0007】
当該組成物は[A]化合物を含有し、かつ上記特定元素の含有割合を上記特定範囲とすることで、無機膜上に形成するレジストパターンの形成性及び形成される無機膜と有機膜との間のエッチング選択比を向上することができる。
【0008】
当該組成物は、[C]水をさらに含有することが好ましい。当該組成物が、[C]水をさらに含有することで無機膜形成反応を促進することができる。
【0009】
当該組成物は、[D]架橋促進剤をさらに含有することが好ましい。当該組成物が[D]架橋促進剤をさらに含有することで、加熱等の処理により[A]化合物をより高分子量化することができ、その結果、形成される無機膜と有機膜との間のエッチング選択比をより向上することができる。
【0010】
本発明のパターン形成方法(以下、「パターン形成方法(I)」とも称する)は、
(1)当該組成物を用い、被加工基板の上側に無機膜を形成する工程、
(2)レジスト組成物を用い、上記無機膜上にレジスト膜を形成する工程、
(3)フォトマスクを介した放射線の照射により、上記レジスト膜を露光する工程、
(4)上記露光されたレジスト膜の現像により、レジストパターンを形成する工程、及び
(5)上記レジストパターンをマスクとした1又は複数回のドライエッチングにより、被加工基板にパターンを形成する工程
を有する。
【0011】
当該パターン形成方法(I)によると、レジスト膜を薄膜化する場合においてもレジストパターンの消失、型崩れ、曲がり等を抑制でき忠実なパターン転写が可能となる。これにより本発明はより微細な加工サイズが要求されるパターン形成においても好適に適用することができる。
【0012】
当該パターン形成方法は、
(0)被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
をさらに有し、
上記工程(1)において、無機膜を上記レジスト下層膜上に形成することも好ましい。
【0013】
当該組成物は、有機材料と無機材料との間で優れたエッチング選択比が得られることから、無機膜及び有機膜を有するレジスト下層膜を順次、ドライエッチングプロセスを用いてレジストパターンの転写を良好に行うことができる。
【0014】
上記工程(2)におけるレジスト組成物は、
[α]酸の作用により解離する酸解離性基を有する重合体(以下、「[α]重合体」とも称する)
を含有し、
上記工程(4)おける現像を有機溶媒を含む現像液で行い、ネガ型のレジストパターンを形成することも好ましい。
【0015】
このように、上記構成とすることで、レジストパターンの膜減りを抑制することができる。その結果、当該パターン形成方法によれば、より忠実なパターン転写が可能となる。
【0016】
本発明の別のパターン形成方法(以下、「パターン形成方法(II)」ともいう)は、
(1)当該組成物を用い、被加工基板の上側に無機膜を形成する工程、
(2’)ナノインプリントリソグラフィー法により、上記無機膜上にレジストパターンを形成する工程、及び
(5)上記レジストパターンをマスクとした1又は複数回のドライエッチングにより、被加工基板にパターンを形成する工程
を有する。
【0017】
また、当該パターン形成方法(II)は、
(0)被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
をさらに有し、
上記工程(1)において、無機膜を上記レジスト下層膜上に形成することが好ましい。
【0018】
当該パターン形成方法(II)によれば、ナノインプリントリソグラフィー法によるレジストパターンの形成を介することによって、忠実なパターン転写が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、レジストパターン形成性及びエッチング選択比に優れる多層レジストプロセス用無機膜形成組成物、並びにパターン形成方法を提供することができる。従って、当該組成物を用いた多層レジストプロセスにおいては、有機膜を薄膜化する場合においてもレジストパターンの消失、型崩れ、曲がり等を抑制でき忠実なパターン転写が可能となる。従って、本発明は、今後更に微細化が進行するとみられるLSIの製造、特に微細なコンタクトホール等の形成に極めて好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<多層レジストプロセス用無機膜形成組成物>
本発明の多層レジストプロセス用無機膜形成組成物は、[A]化合物及び[B]有機溶媒を含有する。また、好適成分として[C]水及び[D]架橋促進剤を含有することができる。さらに、当該組成物は本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有してもよい。当該組成物は、無機膜上に形成するレジストパターンの形成性及びドライエッチング耐性に優れる無機膜を形成することができ、多層レジストプロセスに好適に用いることができる。以下、各成分について詳述する。
【0021】
<[A]化合物>
[A]化合物は加水分解性基を有する金属錯体(I)、加水分解性基を有する金属錯体(I)の加水分解物及び加水分解性基を有する金属錯体(I)の加水分解縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。[A]化合物は、第3族元素、第4族元素及び第5族元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含有する。上記第3族元素、第4族元素及び第5族元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の含有割合は、[A]化合物に含まれる金属元素及び半金属元素の合計量に対し50モル%以上であり、70モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。
【0022】
特定元素としては、例えば
Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)等の第3族元素;
Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)等の第4族元素;
V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)等の第5族元素が挙げられる。
【0023】
これらの特定元素のうちジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、チタンが好ましい。
【0024】
[金属錯体(I)]
上記金属錯体(I)は、特定元素の原子へ加水分解性基が結合した化合物であり、下記式(5)で表される。
【0025】
【化1】

【0026】
上記式(5)中、Mは、特定元素の原子である。Rは、アルコキシ基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数3〜10のシクロアルキル基である。Rは、有機基である。b及びcは、それぞれ独立して0〜7の整数である。但し、b+cは原子Mの価数に対応する。bが2以上の場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。cが2以上の場合、複数のRは、同一であっても異なっていてもよい。dは、0〜7の整数である。Rは、有機化合物である。但し、dが2以上の場合、複数のRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
上記ORで表されるアルコキシ基は、アルコールが有するヒドロキシ基の水素原子を除いた基である。
【0028】
上記アルコールとしては、例えば下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0029】
【化2】

【0030】
上記式(2)中、Rは、上記式(1)におけるRと同義である。
【0031】
上記Rがアルキル基又はシクロアルキル基である場合の上記式(2)で表される化合物としては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、ペンタノール、シクロヘキサノール等が挙げられる。上記Rがアルコキシ基で置換されたアルキル基又はシクロアルキル基である場合の上記式(2)で表される化合物としては、例えばメトキシメタノール、メトキシエタノール、エトキシメタノール、エトキシエタノール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、プロポキシプロパノール等が挙げられる。
【0032】
上記OCORで表される基は、カルボン酸が有するカルボキシ基の水素原子を除いた基である。
【0033】
上記カルボン酸としては、例えば下記式(4)で表される化合物が好ましい。
【0034】
【化3】

【0035】
上記式(4)中、Rは、上記式(5)におけるRと同義である。
【0036】
上記式(4)で表される化合物としては、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、2−メチルプロパン酸、ペンタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、アクリル酸、メタクリル酸、サリチル酸等が挙げられる。
【0037】
上記Rで表される有機化合物としては、例えば下記式(6)で表されるエーテル類が挙げられる。
【0038】
【化4】

【0039】
上記式(6)中、R及びRは、骨格鎖中に酸素原子を有していてもよい炭素数1〜10の飽和又は不飽和の炭化水素基である。但し、R及びRは、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0040】
上記式(6)で表されるエーテル類としては、例えばメチラール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジエチルアセタール、ジヘキシルエーテル、トリオキサン、ジオキサン等が挙げられる。
【0041】
上記Rで表される有機化合物としては、例えば下記式(7)又は式(8)で表されるケトン類等が挙げられる。
【0042】
【化5】

【0043】
上記式(7)及び(8)中、R及びR10は、それぞれ独立して骨格鎖中にケト基を有していてもよい炭素数1〜10の飽和又は不飽和の炭化水素基である。R及びR11は、それぞれ独立して炭素数1〜10の飽和又は不飽和の炭化水素基である。
【0044】
上記式(7)又は(8)で表されるケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、トリメチルノナノン、アセトニルアセトン、メシチルオキシド、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−トリフルオロペンタンジオン、2,4−ヘキサフルオロペンタンジオン、エチルアセトアセテート、2,2,6,6−テトラメチル‐3,5−ヘプタンジオン、1,3−ジフェニル‐1,3−プロパンジオン、1−フェニル‐1,3−ブタンジオン等が挙げられる。
【0045】
上記Rで表される有機化合物としては、例えば下記式(9)で表されるエステル類が挙げられる。
【0046】
【化6】

【0047】
上記式(9)中、R14は、ケト基、ヒドロキシル基又はアルコキシ基を有していてもよい炭素数1〜10の飽和又は不飽和の炭化水素基である。R15は、アルコキシ基を有していてもよい炭素数1〜10の飽和又は不飽和の炭化水素基である。
【0048】
上記式(9)で表されるエステル類としては、例えばギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、酪酸エチル、オキシイソ酪酸エチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、メトキシブチルアセテート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル等が挙げられる。
【0049】
加水分解物は、金属錯体(I)を加水分解して得られる。加水分解縮合物は、金属錯体(I)のみを縮合させてもよいし、金属錯体(I)と他の金属錯体とを縮合させてもよい。上記加水分解縮合物における、特定元素の含有割合は、加水分解縮合物に含まれる金属元素及び半金属元素の合計量に対し、50モル%以上であり、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。加水分解は、金属錯体(I)に水、又は水及び触媒を添加し、20℃〜100℃で数時間〜数日間撹拌することで行なわれる。水の使用量としては、[A]化合物100モルに対して、通常100モル以下、好ましくは5モル〜50モルである。触媒としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸;酢酸、プロピオン酸、酪酸、マレイン酸等の有機酸等の酸触媒や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の無機又は有機アルカリ触媒等が挙げられる。
【0050】
<[B]有機溶媒>
本発明においては、[A]化合物を[B]有機溶媒へ溶解又は分散することにより、当該組成物が得られる。[B]有機溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0051】
アルコール系溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコールエーテル系溶媒等が挙げられる。
【0052】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチルiso−ブチルケトン、メチルn−ペンチルケトン、エチルn−ブチルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、ジiso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0053】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0054】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0055】
これらの[B]有機溶媒のうち、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
【0056】
[B]有機溶媒の含有量としては、当該組成物中における[A]化合物の含有量が、金属酸化物換算で0.5質量%〜20質量%、好ましくは0.5質量%〜15質量%となる含有量が好ましい。
【0057】
<[C]水>
当該組成物は好適成分として[C]水をさらに含有することが好ましい。当該組成物が、[C]水をさらに含有することで無機膜形成反応を促進することができる。[C]水としては、特に限定されず、例えば蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。[C]水の含有量としては、当該組成物100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、1質量部〜8質量部がより好ましい。
【0058】
<[D]架橋促進剤>
当該組成物は好適成分として[D]架橋促進剤をさらに含有することが好ましい。[D]架橋促進剤は、光又は熱によって酸又は塩基を発生する化合物であり、当該組成物が[D]架橋促進剤をさらに含有することで、無機膜と有機膜との間のエッチング選択比が向上する。[D]架橋促進剤としては、例えばオニウム塩化合物、N−スルホニルオキシイミド化合物等が挙げられる。[D]架橋促進剤としては、熱によって酸又は塩基を発生する熱架橋促進剤が好ましく、中でもオニウム塩化合物が好ましい。
【0059】
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0060】
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルホスホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート等が挙げられる。
【0061】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0062】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0063】
アンモニウム塩としては、例えば蟻酸アンモニウム、マレイン酸アンモニウム、フマル酸アンモニウム、フタル酸アンモニウム、マロン酸アンモニウム、コハク酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、リンゴ酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、ブタン酸アンモニウム、ペンタン酸アンモニウム、ヘキサン酸アンモニウム、ヘプタン酸アンモニウム、オクタン酸アンモニウム、ノナン酸アンモニウム、デカン酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、セバシン酸アンモニウム、酪酸アンモニウム、オレイン酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム、リノール酸アンモニウム、リノレイン酸アンモニウム、サリチル酸アンモニウム、ベンゼンスルホン酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、p−アミノ安息香酸アンモニウム、p−トルエンスルホン酸アンモニウム、メタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロエタンスルホン酸アンモニウム等が挙げられる。また、上記アンモニウム塩のアンモニウムイオンが、メチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、プロピルアンモニウムイオン、ジプロピルアンモニウムイオン、トリプロピルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、ブチルアンモニウムイオン、ジブチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、トリメチルエチルアンモニウムイオン、ジメチルジエチルアンモニウムイオン、ジメチルエチルプロピルアンモニウムイオン、メチルエチルプロピルブチルアンモニウムイオン、エタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等に置換されたアンモニウム塩等が挙げられる。さらに、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン塩、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン塩等が挙げられる。1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン塩としては1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン蟻酸塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンp−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0064】
N−スルホニルオキシイミド化合物としては、例えばN−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等が挙げられる。
【0065】
これらの[D]架橋促進剤のうち、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、テトラアルキルアンモニウム塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン塩が好ましい。
【0066】
これらの[D]架橋促進剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。[D]架橋促進剤の使用量としては、[A]化合物100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、0.1質量部以上5質量部以下がより好ましい。[D]架橋促進剤の使用量を上記特定範囲とすることで、エッチング選択比をより向上させることができる。
【0067】
<その他の任意成分>
当該無機膜形成組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤等のその他の任意成分を含有できる。
【0068】
[界面活性剤]
界面活性剤は塗布性、ストリエーション等を改良する作用を示す成分である。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下商品名として、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、大日本インキ化学工業製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子製)等が挙げられる。
【0069】
界面活性剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。また、界面活性剤の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0070】
<多層レジストプロセス用無機膜形成組成物の調製方法>
当該組成物は、例えば[B]有機溶媒中で[A]化合物、[C]水、[D]架橋促進剤、及びその他の任意成分等を所定の割合で混合することにより調製できる。当該組成物は通常、その使用に際して溶媒に溶解した後、例えば孔径0.2μm程度のフィルターでろ過することによって、調製される。
【0071】
<パターン形成方法(I)>
本発明のパターン形成方法(I)は、
(1)当該組成物を用い、被加工基板の上側に無機膜を形成する工程、
(2)レジスト組成物を用い、上記無機膜上にレジスト膜を形成する工程、
(3)フォトマスクを介した放射線の照射により、上記レジスト膜を露光する工程、
(4)上記露光されたレジスト膜の現像により、レジストパターンを形成する工程、及び
(5)上記レジストパターンをマスクとした1又は複数回のドライエッチングにより、被加工基板にパターンを形成する工程
を有する。
【0072】
当該組成物を用いた本発明のパターン形成方法(I)によると、レジスト膜を薄膜化する場合においてもレジストパターンの消失、型崩れ、曲がり等を抑制でき忠実なパターン転写が可能となる。これにより本発明はより微細な加工サイズが要求されるパターン形成においても好適に適用することができる。
【0073】
また、当該パターン形成方法(I)は、
(0)被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
をさらに有し、
上記工程(1)において、無機膜を上記レジスト下層膜上に形成することが好ましい。
【0074】
上記工程(2)におけるレジスト組成物は、
[α]酸の作用により解離する酸解離性基を有する重合体
を含有し、
上記工程(4)における現像を有機溶媒現像液で行い、ネガ型のレジストパターンを形成するパターン形成方法も好ましい。
【0075】
当該組成物は、有機材料と無機材料との間で優れたエッチング選択比が得られることから、無機膜及び有機膜を有するレジスト下層膜を順次、ドライエッチングプロセスを用いてレジストパターンの転写を良好に行うことができる。以下、各工程を詳述する。
【0076】
[工程(1)]
本工程では、当該組成物を用い、被加工基板の上側に無機膜を形成する。上記被加工基板としては、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、ポリシロキサン等の絶縁膜、並びに市販品であるブラックダイヤモンド(AMAT製)、シルク(ダウケミカル製)、LKD5109(JSR製)等の低誘電体絶縁膜で被覆したウェハ等の層間絶縁膜が挙げられる。また、この被加工基板としては、配線講(トレンチ)、プラグ溝(ビア)等のパターン化された基板を用いてもよい。上記無機膜の形成方法としては、被加工基板の表面に塗布することにより、当該組成物の塗膜を形成し、この塗膜を加熱処理、又は紫外光の照射及び加熱処理を行うことにより硬化させることで形成できる。当該組成物を塗布する方法としては、例えばスピンコート法、ロールコート法、ディップ法等が挙げられる。また、加熱温度しては、通常150℃〜500℃であり、好ましくは180℃〜350℃である。加熱時間としては、通常30秒〜1,200秒であり、好ましくは45秒〜600秒である。さらに、当該組成物塗布後に紫外光照射を行っても良い。無機膜の膜厚としては、通常5nm〜50nm程度である。
【0077】
[工程(0)]
また、上記工程(1)の前に、被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程を有していてもよい。レジスト下層膜としては、例えばレジスト下層膜用組成物を用いて形成する有機膜、従来公知のCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される炭素膜等が挙げられる。レジスト下層膜形成組成物としては、従来公知のものを使用でき、例えばNFC HM8005(JSR製)等が挙げられる。レジスト下層膜の形成方法としては、被加工基板上に塗布することにより、レジスト下層膜形成組成物の塗膜を形成し、この塗膜を加熱処理、又は紫外光の照射及び加熱処理を行うことにより硬化させることで形成できる。レジスト下層膜形成組成物を塗布する方法としては、例えばスピンコート法、ロールコート法、ディップ法等が挙げられる。また、加熱温度しては、通常150℃〜500℃であり、好ましくは180℃〜350℃である。加熱時間としては、通常30秒〜1,200秒であり、好ましくは45秒〜600秒である。レジスト下層膜の膜厚としては、通常50nm〜500nm程度である。
【0078】
また、上記被加工基板表面には、レジスト下層膜形成組成物を用いて得られるレジスト下層膜とは異なる他の下層膜が形成されていてもよい。この他の下層膜は、反射防止機能、塗布膜平坦性、CF等のフッ素系ガスに対する高エッチング耐性等が付与された膜である。この他の下層膜としては、例えばNFC HM8005(JSR製)等の市販品を使用することができる。
【0079】
[工程(2)〜(4)]
工程(2)〜(4)では、無機膜上にレジスト組成物を塗布し、露光、加熱及び現像し、レジストパターンを形成する。上記レジスト組成物としては、例えば酸発生剤を含有し、露光部がアルカリ水溶性現像液に対しては溶解性を示し、有機溶媒現像液に対しては難溶性を示す化学増幅型レジスト組成物、酸発生剤と架橋剤を有し、露光部がアルカリ水溶性現像液、有機溶媒現像液に難溶性となる化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなり、露光部がアルカリ水溶性現像液に対しては溶解性を示すレジスト組成物等が挙げられる。これらのレジスト組成物のうち、酸発生剤を含有し、露光部がアルカリ水溶性現像液に対しては溶解性を示し、有機溶媒現像液に対しては難溶性を示す化学増幅型レジスト組成物が好ましい。
【0080】
上記レジスト塗膜は、上記レジスト組成物を塗布することによって形成された塗膜をプレベークすることにより、塗膜中の溶媒(即ち、レジスト組成物に含有される溶媒)を揮発させて形成することができる。プレベークの温度としては、使用するレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、30℃〜200℃が好ましく、50℃〜150℃がより好ましい。加熱時間としては、通常30秒〜200秒であり、好ましくは45秒〜120秒である。なお、このレジスト膜の表面にさらに他の塗膜を設けてもよい。レジスト膜の膜厚としては、通常、1nm〜500nmであり、10nm〜300nmが好ましい。
【0081】
次いで、得られたレジスト塗膜に、フォトマスクを介して選択的に放射線を照射してレジスト塗膜を露光する。放射線としては、レジスト組成物に使用されている酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択されるが、遠紫外線であることが好ましく、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(波長157nm)、Krエキシマレーザー(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー(波長134nm)、極紫外線(波長13.5nm等)がより好ましい。また、液浸露光法も採用することができる。なお、レジスト膜上に液浸上層膜形成組成物を用いて液浸上層膜を形成してもよい。
【0082】
露光後にレジスト膜の解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行う。このPEBの温度としては、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、180℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。加熱時間としては、通常30秒〜200秒であり、好ましくは45秒〜120秒である。
【0083】
PEB後、レジスト塗膜を現像して、レジストパターンを形成する。現像に用いる現像液としては、使用されるレジスト組成物の種類に応じて適宜選択することができる。化学増幅型レジスト組成物やアルカリ可溶性樹脂を含有するレジスト組成物の場合には、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液が挙げられる。また、これらのアルカリ性水溶液は、水溶性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加したものであってもよい。現像後にはレジストパターンをリンス液により洗浄することが好ましい。
【0084】
[工程(5)]
本工程では、上記レジストパターンをマスクとした1又は複数回のドライエッチングにより、被加工基板にパターンを形成する。なお、上記レジスト下層膜を形成している場合は、上記レジストパターンをマスクとして無機膜、レジスト下層膜及び被加工基板を順次ドライエッチングしてパターンを形成する。ドライエッチングは、公知のドライエッチング装置を用いて行うことができる。また、ドライエッチング時のソースガスとしては、被エッチング物の元素組成にもよるが、O、CO、CO等の酸素原子を含むガス、He、N、Ar等の不活性ガス、Cl、BCl等の塩素系ガス、CHF、CF等のフッ素系ガス、H、NHのガス等を使用することができる。なお、これらのガスは混合して用いることもできる。
【0085】
上記工程(2)におけるレジスト組成物は、
[α]酸の作用により解離する酸解離性基を有する重合体、及び
[β]酸発生体
を含有し、
上記工程(4)における現像を有機溶媒現像液で行い、ネガ型のレジストパターンを形成することが好ましい。また、上記レジスト組成物は、[α]重合体以外の他の重合体を含有してもよい。
【0086】
[[α]重合体]
[α]重合体は、酸の作用により解離する酸解離性基を有する重合体である。[α]重合体は、酸の作用により解離する酸解離性基を有する重合体であれば、その具体的な構造は特に限定されるものではないが、例えば下記式(10)で表される酸解離性基を含む構造単位(I)を有することが好ましい。
【0087】
【化7】

【0088】
上記式(10)中、Rは、酸解離性基である。
【0089】
構造単位(I)が上記式(10)で表される基を有することで、当該パターン形成方法に用いられるレジスト膜の露光部の現像液に対する溶解性を減少させることができ、露光部の膜減りを抑制することができる。
【0090】
構造単位(I)は、下記式(11)で表される構造単位であることが好ましい。
【0091】
【化8】

【0092】
上記式(11)中、R16は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、上記式(10)と同義である。
【0093】
構造単位(I)が上記特定構造であると、当該パターン形成方法に用いられるレジスト膜の露光部の現像液に対する溶解性をより減少させることができ、露光部の膜減りをより抑制することができる。
【0094】
上記Rで表される酸解離性基は、下記式(12)で表されることが好ましい。
【0095】
【化9】

【0096】
上記式(12)中、Rp1〜Rp3は、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式炭化水素基である。但し、上記アルキル基及び脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。また、Rp2及びRp3は、互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成してもよい。
【0097】
上記式(10)及び式(11)においてRで表される酸解離性基を上記式(12)で表される特定構造の基とすることで、上記酸解離性基は、露光部において発生する酸の作用により解離し易くなる。その結果、当該パターン形成方法によると、レジスト膜における露光部の現像液に対する溶解性をさらに減少させることができ、膜減りをさらに抑制することができる。
【0098】
[[β]酸発生体]
[β]酸発生体は、露光により酸を発生し、その酸により[α]重合体中に存在する酸
解離性基を解離させる等により、[α]重合体の現像液に対する溶解度を変化させる。
【0099】
[β]酸発生体としては、例えば、オニウム塩化合物、N−スルホニルオキシイミド化
合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。
【0100】
オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩
、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0101】
これらのうち、オニウム塩化合物が好ましく、スルホニウム塩がより好ましく、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−(1−アダマンチル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネートがさらに好ましい。[β]酸発生体は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0102】
[β]酸発生体が酸発生剤である場合の含有量としては、上記レジスト組成物の感度及び現像性を確保する観点から、[α]重合体100質量部に対して、通常、0.1質量部以上20質量部以下であり、0.5質量部以上15質量部以下が好ましい。
【0103】
上記工程(4)における現像を有機溶媒現像液で行い、ネガ型のレジストパターンを形成する場合において、上記有機溶媒としては、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒及びエステル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒であることが好ましい。これにより、露光部の現像液に対する溶解性をさらに減少させることができ、膜減りをさらに抑制することができる。
【0104】
上記エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジフェニルエーテル、メトキシベンゼン等が挙げられる。
【0105】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチル−イソアミルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0106】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0107】
有機溶媒現像液中の有機溶媒の含有量は80質量%以上であり、好ましくは100%である。現像液中の有機溶媒の含有量を80質量%以上とすることにより、露光の有無によるパターンのコントラストを向上させることができ、その結果、現像特性及びリソグラフィー特性に優れたパターンを形成することができる。なお、有機溶媒現像液には露光部の現像液への溶解性を調節することを目的として、アミン類等の塩基性化合物を添加することができる。現像後にはレジストパターンをリンス液により洗浄することが好ましい。
【0108】
<パターン形成方法(II)>
本発明のパターン形成方法(II)は、
(1)当該組成物を用い、被加工基板の上側に無機膜を形成する工程、
(2’)ナノインプリントリソグラフィー法により、上記無機膜上にレジストパターンを形成する工程、及び
(5)上記レジストパターンをマスクとした1又は複数回のドライエッチングにより、被加工基板にパターンを形成する工程
を有する。
【0109】
また、当該パターン形成方法(II)は、
(0)被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
をさらに有し、
上記工程(1)において、無機膜を上記レジスト下層膜上に形成することが好ましい。
【0110】
当該パターン形成方法によると、ナノインプリントリソグラフィー法によっても好適に適用することができる。なお、パターン形成方法(II)の上記工程(0)、工程(1)及び工程(5)は、上述のパターン形成方法(I)の項における説明を適用できる。以下、工程(2’)について詳述する。
【0111】
[工程(2’)]
工程(2’)は、ナノインプリントリソグラフィー法により、上記無機膜上にレジストパターンを形成する工程である。このレジストパターンは、例えば感放射線性の硬化性組成物を用いて形成することができる。具体的には工程(1)で無機膜が形成された基材上に感放射線性の硬化性組成物の塗布によりパターン形成層を形成する工程と、表面に反転パターンを有するモールドの表面を疎水化処理する工程と、疎水化処理した上記モールドの表面をパターン形成層に圧接する工程と、上記モールドを圧接した状態でパターン形成層を露光する工程と、上記モールドを、露光されたパターン形成層から剥離する工程とを含む方法である。
【0112】
この場合、上記硬化性組成物は、硬化促進剤等を含有できる。硬化促進剤としては、例えば感放射線性硬化促進剤や熱硬化促進剤がある。これらの中でも、感放射線性硬化促進剤が好ましい。感放射線性硬化促進剤は、ナノインプリント用感放射線性組成物を構成する構成単位によって適宜選択でき、例えば光酸発生剤、光塩基発生剤及び光増感剤等が挙げられる。なお、感放射線性硬化促進剤は、2種以上を併用してもよい。
【0113】
塗布方法としては、例えばインクジェット法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコード法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法等が挙げられる。
【0114】
モールドの疎水化処理工程は、表面に反転パターンを有するモールドの表面を離型剤等により疎水化処理する。上記モールドは、光透過性の材料で構成される必要がある。この光透過性の材料としては、例えばガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂等の光透明性樹脂;透明金属蒸着膜;ポリジメチルシロキサン等の柔軟膜;光硬化膜;金属膜等が挙げられる。
【0115】
上記離型剤としては、例えばシリコン系離型剤、フッ素系離型剤、ポリエチレン系離型剤、ポリプロピレン系離型剤、パラフィン系離型剤、モンタン系離型剤、カルナバ系離型剤等が挙げられる。なお、離型剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、シリコン系離型剤が好ましい。このシリコン系離型剤としては、例えばポリジメチルシロキサン、アクリルシリコーングラフトポリマー、アクリルシロキサン、アリールシロキサン等が挙げられる。
【0116】
圧接工程は、パターン形成層に上記疎水化処理したモールドを圧接する工程である。パターン形成層に凹凸パターンを有するモールドを圧接することでパターン形成層中に、モールド凹凸パターンが形成される。モールドを圧接する際の圧力としては、通常0.1MPa〜100MPaであり、0.1MPa〜50MPaが好ましく、0.1MPa〜30MPaであることがより好ましく。圧接時間としては、通常1秒〜600秒であり、1秒〜300秒が好ましく、1秒〜180秒がより好ましい。
【0117】
露光工程は、モールドを圧接したままパターン形成層を露光する。パターン形成層を露光することにより、ナノインプリント用感放射線性組成物に含有される光重合開始剤からラジカルが発生する。それにより、ナノインプリント用感放射線性組成物からなるパターン形成層が、モールドの凹凸パターンが転写された状態で硬化する。凹凸パターンが転写されることで、例えばLSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体素子の層間絶縁膜用膜、半導体素子製造時におけるレジスト膜等として利用することができる。
【0118】
なお、硬化性組成物が熱硬化性である場合には、上記露光工程の代わりに、加熱硬化工程により硬化させる。熱硬化を行う場合、加熱雰囲気及び加熱温度等は特に限定されないが、例えば不活性雰囲気下又は減圧下で、40℃〜200℃で加熱することができる。加熱はホットプレート、オーブン、ファーネス等を用いて行うことができる。
【0119】
最後に、モールドをパターン形成層から剥離する。剥離方法としては、特に限定されず例えば基材を固定してモールドを基材から遠ざかるように移動させて剥離してもよく、モールドを固定して基材をモールドから遠ざかるように移動させて剥離してもよく、これらの両方を逆方向へ引っ張って剥離してもよい。
【実施例】
【0120】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0121】
<[A]化合物>
合成例、実施例及び比較例において用いた[A]化合物は以下のとおりである。
A−1:ビス(2,4−ペンタンジオネート)ジi−プロポキシチタン(75質量%イソプロパノール)
A−2:2,4−ペンタンジオネートトリブトキシジルコニウム(50質量%酢酸ブチル/ブタノール)
A−3:ハフニウム2,4−ペンタンジオネート
A−4:バナジウム2,4−ペンタンジオネート
A−5:テトラメトキシシラン
A−6:メチルトリメトキシシラン
A−7:フェニルトリメトキシシラン
【0122】
[合成例1]
上記(A−1)40.00g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)54.06gを混合し、25℃で10分間攪拌した後、水5.94gを混合し、60℃まで昇温し、4時間加熱撹拌を行った。反応終了後、室温まで冷却し、プロピレングリコールモノメチルエーテルを50.00g添加し、低沸点物をエバポレーターにて除去して加水分解縮合物(A−8)の溶液を得た。(A−8)の溶液の固形分濃度は、焼成法により測定した結果、11.00%であった。
【0123】
[合成例2及び3]
表1に示す種類、量の各成分を使用した以外は合成例1と同様に操作して、加水分解縮合物(A−9)及び(A−10)を合成した。
【0124】
[合成例4]
シュウ酸0.27gを水10.00gに加熱溶解させて、シュウ酸水溶液を調製した。上記(A−3)18.61g、(A−4)11.32g及びPGME60.00gを入れたフラスコに、冷却管と調製したシュウ酸水溶液を入れた滴下ロートとをセットした。次いで、オイルバスにて60℃に加熱した後、シュウ酸水溶液をゆっくり滴下し、60℃で4時間反応させた。反応終了後、反応溶液の入ったフラスコを放冷してからエバポレーターにセットし、低沸点物をエバポレーターにて除去して加水分解縮合物(A−11)の溶液を得た。(A−11)の溶液の固形分濃度は、焼成法により測定した結果、10.98%であった。
【0125】
[合成例5]
シュウ酸0.40gを水19.20gに加熱溶解させて、シュウ酸水溶液を調製した。上記(A−5)9.46g、(A−6)3.02g、(A−7)0.88g及びPGME67.04gを入れたフラスコに、冷却管と調製したシュウ酸水溶液を入れた滴下ロートとをセットした。次いで、オイルバスにて60℃に加熱した後、シュウ酸水溶液をゆっくり滴下し、60℃で4時間反応させた。反応終了後、反応溶液の入ったフラスコを放冷してからエバポレーターにセットし、低沸点物をエバポレーターにて除去して加水分解縮合物(A−12)の溶液を得た。(A−12)の溶液の固形分濃度は、焼成法により測定した結果、11.90%であった。また、固形分の重量平均分子量(Mw)は2,900であった。
【0126】
【表1】

【0127】
<多層レジストプロセス用無機膜形成組成物の調製>
実施例及び比較例において用いた[B]有機溶媒及び[D]架橋促進剤は以下のとおりである。
【0128】
<[B]有機溶媒>
B−1:プロピレングリコールモノメチルエーテル
B−2:プロピレングリコールモノエチルエーテル
【0129】
<[D]架橋促進剤>
D−1:ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート
D−2:1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート
D−3:酢酸テトラメチルアンモニウム
D−4:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンp−トルエンスルホン酸塩
【0130】
[実施例1]
[A]化合物としての(A−1)5.33質量部を[B]有機溶媒としての(B−1)89.48質量部に溶解させた後、(C)5.00質量部、(D−1)0.19質量部を添加した後、この溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過して、多層レジストプロセス用無機膜形成組成物を調製した。
【0131】
[実施例2〜7及び比較例1]
表2に示す種類、量の各成分を使用した以外は実施例1と同様に操作して、各多層レジストプロセスの各無機膜形成組成物を調製した。なお、「−」は該当する成分を使用しなかったことを示す。
【0132】
<評価>
上記のように調製した多層レジストプロセスの各無機膜形成組成物について、以下のように各種物性を評価した。結果を表2にあわせて示す。
【0133】
[レジストパターン形成性、アルカリ水溶液現像]
被加工基板としてのシリコンウェハ上に、レジスト下層膜形成組成物(NFC HM8005、JSR製)をスピンコーターによって塗布し、250℃のホットプレート上で60秒間乾燥させることにより、膜厚300nmのレジスト下層膜を形成した。形成したレジスト下層膜上に各無機膜形成組成物をスピンコーターによって塗布し、250℃のホットプレート上で60秒間焼成することにより膜厚20nmの無機膜を形成した。形成した無機膜上にレジスト組成物(ARX2014J、JSR製)を塗布し、90℃で60秒間乾燥させ膜厚100nmのレジスト膜を形成した。形成したレジスト膜上に液浸上層膜形成組成物(NFC TCX091−7、JSR製)を塗布し、90℃で60秒間乾燥させ膜厚30nmの液浸上層膜を形成した。その後、ArFエキシマレーザー照射装置(S610C、ニコン製)を用い、液浸法によって16mJ/cmのレーザー照射量で露光処理した後、被加工基板を115℃で60秒間加熱した。次いで、2.38wt%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液で30秒間現像処理し、シリコンウェハ上に残ったレジストと生じた溝の幅がそれぞれ50nmである、50nmのライン・アンド・スペースパターンのレジストパターンを形成した。形成したレジストパターンを走査型電子顕微鏡(日立ハイテク製)で観察し、50nmのライン・アンド・スペースのパターンにおいて、レジストパターンのボトム形状が裾広がり形状にならない場合をレジストパターン形成性が良好(A)と判断し、裾広がり形状になる場合をレジストパターン形成性が不良(B)と判断した。なお、形成したレジストパターンをマスクとして無機膜及び被加工基板に対し、ドライエッチンッグ装置(東京エレクトロン製、Telius SCCM)を用いて順次ドライエッチングすることでパターン転写を行った。
【0134】
[レジストパターン形成性、有機溶剤現像]
被加工基板としてのシリコンウェハ上に、レジスト下層膜形成組成物(NFC HM8005、JSR製)をスピンコーターによって塗布し、250℃のホットプレート上で60秒間乾燥させることにより、膜厚300nmのレジスト下層膜を形成した。形成したレジスト下層膜上に各無機膜形成組成物をスピンコーターによって塗布し、250℃のホットプレート上で60秒間焼成することにより膜厚20nmの無機膜を形成した。形成した無機膜上にレジスト組成物を塗布し、90℃で60秒間乾燥させ膜厚100nmのレジスト膜を形成した。形成したレジスト膜上に液浸上層膜形成組成物(NFC TCX091−7、JSR製)を塗布し、90℃で60秒間乾燥させ膜厚30nmの液浸上層膜を形成した。その後、ArFエキシマレーザー照射装置(S610C、ニコン製)を用い、液浸法によって16mJ/cmのレーザー照射量で露光処理した後、被加工基板を115℃で60秒間加熱した。次いで、酢酸ブチルを現像液としてパドル現像(30秒間)し、MIBCでリンスした。2,000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、40nmライン/80nmのライン・アンド・スペースパターンのレジストパターンを形成した。形成したレジストパターンを走査型電子顕微鏡(日立ハイテク製)で観察し、40nmのライン・アンド・スペースのパターンにおいて、レジストパターンのボトム形状が裾広がり形状にならない場合をレジストパターン形成性が良好(A)と判断し、裾広がり形状になる場合をレジストパターン形成性が不良(B)と判断した。なお、形成したレジストパターンをマスクとして無機膜及び被加工基板に対し、ドライエッチンッグ装置(東京エレクトロン製、Telius SCCM)を用いて順次ドライエッチングすることでパターン転写を行った。
【0135】
[レジストパターン形成性、ナノインプリントリソグラフィー法]
被加工基板としてのシリコンウェハ上に、レジスト下層膜形成組成物(NFC HM8005、JSR製)をスピンコーターによって塗布し、250℃のホットプレート上で60秒間乾燥させることにより、膜厚300nmのレジスト下層膜を形成した。形成したレジスト下層膜上に各無機膜形成組成物をスピンコーターによって塗布し、250℃のホットプレート上で60秒間焼成することにより膜厚20nmの無機膜を形成した。形成した無機膜上にUV硬化性組成物を実験用基板の中心に約50μLスポットし、簡易インプリント装置(EUN−4200、エンジニアリングシステム社製)のワークステージに設置した。一方、離型剤(商品名「HD−1100Z」、ダイキン化成社製)を所定の方法であらかじめ塗布した石英テンプレート(NIM−PH350、NTT−ATN社製)を、シリコーンゴム(厚さ0.2mm)を接着層として、簡易インプリント装置の石英製露光ヘッドへ貼り付けた。次いで、簡易インプリント装置の圧力を0.2MPaとした後、露光ヘッドを下降し、テンプレートと実験基板とを、ナノインプリント用光硬化性組成物を介して密着させた後、UV露光を15秒間実施した。15秒後に露光ステージを上昇し、テンプレートを硬化した被形状転写層から剥離し、パターンを形成した。形成したレジストパターンを走査型電子顕微鏡(日立ハイテク製)で観察し、50nmのライン・アンド・スペースのパターンにおいて、レジストパターンに欠けがなく、矩形である場合をレジストパターン形成性が良好(A)と判断し、パターン損失がある場合をレジストパターン形成性が不良(B)と判断した。
【0136】
[耐エッチング性]
上記エッチング装置を用いて、上記無機膜を2通りの方法でエッチングした。1つ目は、上記レジスト下層膜(NFC HM8005)を毎分200nmだけエッチングする条件でエッチングした。2つ目は、二酸化シリコン膜を毎分100nmだけエッチングする条件でエッチングした。いずれのエッチングにおいても、初期膜厚とエッチング後膜厚の差が5nm未満の場合を、エッチング選択比が良好(A)と判断し、差が5nm以上の場合を不良(B)と判断した。良好なエッチング選択性と判断された場合、上記各無機膜形成組成物はそれぞれの膜を加工する際のマスク膜として良好に機能する。
【0137】
【表2】

【0138】
表2に示される結果から明らかなように、当該無機膜形成組成物はエッチング選択比に優れ、また当該無機膜形成組成物を用いた場合、形成されるレジストパターンはレジストパターン形成性に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、レジストパターン形成性及びエッチング選択比に優れる多層レジストプロセス用無機膜形成組成物、並びにパターン形成方法を提供することができる。従って、当該組成物を用いた多層レジストプロセスにおいては、有機膜を薄膜化する場合においてもレジストパターンの消失、型崩れ、曲がり等を抑制でき忠実なパターン転写が可能となる。従って、本発明は、今後更に微細化が進行するとみられるLSIの製造、特に微細なコンタクトホール等の形成に極めて好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]加水分解性基を有する金属錯体(I)、加水分解性基を有する金属錯体(I)の加水分解物及び加水分解性基を有する金属錯体(I)の加水分解縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、並びに
[B]有機溶媒
を含有する多層レジストプロセス用無機膜形成組成物であって、
[A]化合物が、第3族元素、第4族元素及び第5族元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含有し、かつ上記第3族元素、第4族元素及び第5族元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の含有割合が、[A]化合物に含まれる金属元素及び半金属元素の合計量に対し50モル%以上であることを特徴とする多層レジストプロセス用無機膜形成組成物。
【請求項2】
[C]水をさらに含有する請求項1に記載の多層レジストプロセス用無機膜形成組成物。
【請求項3】
[D]架橋促進剤をさらに含有する請求項1又は請求項2に記載の多層レジストプロセス用無機膜形成組成物。
【請求項4】
(1)請求項1、請求項2又は請求項3に記載の無機膜形成組成物を用い、被加工基板の上側に無機膜を形成する工程、
(2)レジスト組成物を用い、上記無機膜上にレジスト膜を形成する工程、
(3)フォトマスクを介した放射線の照射により、上記レジスト膜を露光する工程、
(4)上記露光されたレジスト膜の現像により、レジストパターンを形成する工程、及び
(5)上記レジストパターンをマスクとした1又は複数回のドライエッチングにより、被加工基板にパターンを形成する工程
を有するパターン形成方法。
【請求項5】
(0)被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
をさらに有し、
上記工程(1)において、無機膜を上記レジスト下層膜上に形成する請求項4に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
上記工程(2)におけるレジスト組成物が、
[α]酸の作用により解離する酸解離性基を有する重合体
を含有し、
上記工程(4)における現像を有機溶媒現像液で行い、ネガ型のレジストパターンを形成する請求項4又は請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
(1)請求項1、請求項2又は請求項3に記載の無機膜形成組成物を用い、被加工基板の上側に無機膜を形成する工程、
(2’)ナノインプリントリソグラフィー法により、上記無機膜上にレジストパターンを形成する工程、及び
(5)上記レジストパターンをマスクとした1又は複数回のドライエッチングにより、被加工基板にパターンを形成する工程
を有するパターン形成方法。
【請求項8】
(0)被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
をさらに有し、
上記工程(1)において、無機膜を上記レジスト下層膜上に形成する請求項7に記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2012−215878(P2012−215878A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−78446(P2012−78446)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】