説明

多層二次元または管状食品ケーシングまたは食品フィルム

【課題】従来よりも高い加工の速度(サイクル数)も可能にするPETなどの高耐熱性材料によって形成される食品ケーシングまたはフィルムを、初めて提案する。
【解決手段】ノズルブラストドローイング法によって製造され、トリプルバブル法によって二軸延伸される、食品包装用の多層二次元または管状食品ケーシングまたは食品フィルムであって、外側から内側に向かって数え上げて少なくとも7層を含む以下の積層構造を有する。・外側から、第1層はPETを含有し、第2層は接着促進剤を含有し、第3層はアイオノマーを含有し、第4層は層構成要素として接着促進剤を含有し、第5層は層構成要素としてEVOHを含有し、第6層は層構成要素として接着促進剤を含有し、第7層は層構成要素としてポリオレフィン、好ましくはポリエチレンを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に従って、ノズルブラストドローイング(nozzle blast−drawing)法によって製造され、トリプルバブル法によって二軸延伸される、食品包装用の多層二次元または管状食品ケーシングまたは食品フィルム、例えばシュリンクバッグ、シーラブルフィルム、ラッピングフィルムなどに関する。
【背景技術】
【0002】
実際、そのような多層管状または二次元包装フィルムは、5層または7層フィルムの形態で、既に利用されている。
【0003】
したがって例えば欧州特許第0236099B2号には、7層までの層を有する包装用酸素バリアフィルムと呼ばれる食料用の多層管状包装フィルムが開示されている。しかし、外層がポリオレフィン(POと略記)から構成され、これは内層にとって湿気からの良好な保護を与えるが、内層(シール層)と比較して明確に強化された耐熱性を持たないことが、開示されたフィルムの短所である。
【0004】
欧州特許第0476836B1号では、欧州特許第0236099B2号とは対照的にPETの耐熱性外層を含む6層包装フィルムが議論されているが、酸素バリアおよび機械的強度用のEVOHおよびPAから構成されるコア層は、別個の純粋なPO層によって湿気から保護されず、PETと接着促進剤(以下、APと略記する)は、どちらも水蒸気バリアに関するこの要求を満たさない。
【0005】
そのうえ、外側にPO層を持たないので、外向きにカールする傾向が非常に強くなる。
【0006】
欧州特許第1034076B1号でも、PAから構成される耐熱性外層を有する熱収縮性熱可塑性多層フィルムと呼ばれる包装フィルムが議論されている。しかしこれは、単なる5層積層構造であるし、そのうえ、外側からの水蒸気バリアとしてのPO層をやはり有していない。これは、結果として、とりわけ強いカール傾向をもたらすと共に、EVOHとPAがどちらも何の保護も受けずに湿気に曝されるので、水蒸気バリアも強度も著しく損なわれることになる。
【0007】
国際公開第2005/011978A1号として公開された出願PCT/EP2004/051560には、さらに、PETの耐熱性外層とバリア用のEVOHのコア層とを有する5層包装フィルムが開示されている。しかしここでも、外側からの湿気バリアは設けられていない。また、上記出願PCT/EP2004/051560で議論されている製造法は、全く異なる製造法である。この出願PCT/EP2004/051560に開示されるフィルムは、二軸延伸を伴うインフレーションフィルム法(トリプルバブル法)によって製造されるのではなく、二軸延伸を伴うフラットテープ法(テンダーフレーム法)によって製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第0236099B2号
【特許文献2】欧州特許第0476836B1号
【特許文献3】欧州特許第1034076B1号
【特許文献4】国際公開第2005/011978A1号(PCT/EP2004/051560)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、汎用の多層二次元または管状食品ケーシングまたは食品フィルムを、上述の短所を避けつつ、十分に気密な酸素バリアを、高い水蒸気バリアならびに優れた機械的強度、優れた光学的性質、さらなる加工に対する良好な適性、外層の高い耐熱性、および満足な収縮率と同時に与えることができるような方法で、さらに開発することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的およびこれらの態様は請求項1の特徴によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によれば、特にノズルブラストドローイング法によって製造され、トリプルバブル法によって二軸延伸される、食品包装用の多層二次元または管状食品ケーシングまたは食品フィルム、例えばシュリンクフィルム、シーラブルフィルム、ラッピングフィルムなどであって、外側から内側に向かって数え上げて少なくとも7層を含む以下の積層構造を初めて特徴とするものが提案されている。
【0012】
外側から数えて第1層は層構成要素としてPETを含有し、第2層は接着促進剤、第3層はアイオノマー、第4層は接着促進剤、第5層はEVOH、第6層は接着促進剤、外側から数えて第7層(これは同時に最内層でもある)はポリオレフィン、好ましくはポリエチレンを含有する。
【0013】
EVOHは、有利なことに、望ましい酸素バリアを形成する。アイオノマーにより、望ましい機械的性質を確保することが可能になる。ポリエステルによって、優れた光学的性質、例えば光沢および透明度などを確保すること、ならびにその高い耐熱性ゆえに、さらなる加工の速度(サイクル数)を高くすることが可能になる。
【0014】
さらにまた、POによって、要求される水蒸気バリアを得ることが可能になり、内層のシール能に良い影響を及ぼすことができる。すなわち、高いシール結合強度を可能な限り低いシール温度で達成しうる。
【0015】
本発明の趣旨において、ポリオレフィン類には、有利なことに、PEと、EVAおよびEM(M)Aが、どちらも包含されると共に、ポリオレフィンそのものの配合物およびポリオレフィンとアイオノマーとの配合物も包含される。
【0016】
さらにまたEVAは、EVA、およびEVAとポリマー、アイオノマー、またはEM(M)Aとの配合物を、どちらも示す。接着促進剤(APと略記)は接着層を表す。EVOHは、EVOH、およびEVOHとポリマーとの配合物の両方であると理解すべきである。
【0017】
有利なことに、60%までの所定の高収縮、またはそれとは反対に、下は0%という所定の低収縮を、択一的に得ることが可能な食品包装用の食品ケーシングまたは食品フィルムが、こうして供給される。
【0018】
こうして初めて提案される積層構造を用いることにより、有利なことに、シュリンクバッグなどには、約90℃の水温で測定して、少なくとも30%〜70%、好ましくは少なくとも40%〜60%に達する、とりわけ高い収縮を達成することができる。
【0019】
こうして初めて提案される積層構造を用いることにより、有利なことに、シーラブルフィルムなどには、約90℃の水温で測定して、せいぜい0〜30%、好ましくは2〜5%に達する、とりわけ低い収縮を達成することができる。
【0020】
こうして初めて提案される積層構造では、有利なことに、例えばポリオレフィンを、好ましくはLDPE、LLDPE、EVA、EM(M)A、アイオノマーもしくはPOPまたはその配合物などと共に、シュリンクバッグまたはシーラブルフィルムの内側に設けられるシール層用の出発物質として用意することができる。
【0021】
層構成要素EVOHの結果として得られるとりわけ顕著な酸素バリアは、それによって包装される食品の品質低下を一切伴わずに、数週間にわたる優れた保存を保証する。
【0022】
さらにまた、極めて適格な酸素バリアのおかげで、本発明の食品ケーシングまたは食品フィルムは、たとえ長い貯蔵期間であっても、空気に対してとりわけ鋭敏な物品でさえ変色を起こさず、あるいは酸素の侵入による老化またはその食味もしくは香気の変化のリスクにさえさらされない食品包装を初めて供給する。
【0023】
EVOHのバリア特性は湿気による悪影響を受けうるので、サンドイッチ型積層構造、すなわちEVOHを水蒸気バリアとしての2つのポリオレフィン層の間に内側と外側から埋め込むことが好ましい。
【0024】
これにより、食肉または新鮮さを保つことが必要な他の食品の場合にとりわけ重要になる優れた水蒸気バリアを、手に入れることができる。本発明の食品ケーシングまたは食品フィルムで包装された食料は、こうして、とりわけ長期間にわたって新鮮な状態を保つ。
【0025】
低い水蒸気透過性ゆえに、食品の貯蔵、特に食肉の貯蔵に伴う重量損失は、とりわけ低く保たれる。
【0026】
こうして初めて提案される食品ケーシングまたは食品フィルムの最外層は、PETなどの高耐熱性出発物質からなり、それゆえに、フィルムを溶接機端子に結合させることなく、極めて高い温度でフィルムを溶接することができる。結果として、より高いサイクル数を溶接機で達成することができる。加えて、このフィルムは外傷に対する感受性が大幅に低下しており、PETが一般にそうであるように、光沢および透明度に関して優れた光学的性質を有する。さらにまた、このフィルムは、刻印または印刷にとりわけ適している。
【0027】
加えて、本願出願人は、対応する施設を活用して、本発明の食品ケーシングまたは食品フィルムをとりわけうまく製造および加工することができる。
【0028】
本発明の有利な態様または成果は、本願請求項の特徴に起因する。
【0029】
したがって、本発明による食品包装用の食品ケーシングまたは食品フィルムの好ましい一実施形態では、層構成要素としてポリエチレンを含有する層が、代替的に、ポリプロピレン、EVA(エチルビニルアルコール)、EM(M)A、アイオノマー、またはこれらの配合物なども含有する。
【0030】
さらにまた、好ましい一実施形態では、接着促進剤を含有する層が、基材としてのPE、EVA、EM(M)A、またはアイオノマーに基づく接着促進剤を含む。
【0031】
さらにもう一つの好ましい実施形態によれば、構成要素として接着促進剤を含む層が、代替的に、ポリオレフィンと接着促進剤との配合物、またはEVAおよび/もしくはEM(M)Aと接着促進剤との配合物を含有する。
【0032】
さらにもう一つの好ましい実施形態によれば、層構成要素としてEVOHを含む層が、代替的に、MXD6(変性ポリアミド)を含有する。
【0033】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、構成要素としてEVOHを含む層が、代替的に、PVAを含有する。
【0034】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、EVOH、PVAまたはMXD6を含有する層が、代替的に、これらの出発物質とPAとの配合物を含有する。
【0035】
さらにもう一つの好ましい実施形態によれば、層構成要素としてPETを含む層が、代替的に、ポリカプロラクタム(PA6)、ポリヘキサメチレンアジピンアミド(PA66)、PA6/66、PA11、PA12、またはこれらのポリアミドの配合物などを含有する。
【0036】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、層構成要素としてPETを含有する外層が、代替的に、PA、PSまたはPCを含む。
【0037】
また、さらなる好ましい実施形態では、PETを含有する外層が、代替的に、COC、PP、もしくはHDPE、またはこれらの出発物質とポリオレフィンとの各配合物を含む。
【0038】
最後に、さらなる好ましい実施形態では、二次元または管状食品ケーシングまたは食品フィルムが、シュリンクバッグまたはシーラブルフィルムの形態を持つ食品包装として仕上げられる。
【0039】
このように本発明は、酸素バリア用のEVOH層を有し、外層は、その優れた光学的性質に加えて、さらなる加工の速度(サイクル数)を明確に高くすることを可能にするPETなどの高耐熱性材料によって形成される、少なくとも7層の積層構造を持つ二次元または管状食品ケーシングまたは食品フィルムを初めて提案する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にノズルブラストドローイング法によって製造され、トリプルバブル法によって二軸延伸される、食品包装用の多層二次元または管状食品ケーシングまたは食品フィルムであって、外側から内側に向かって数え上げて少なくとも7層を含む以下の積層構造を特徴とする食品ケーシングまたは食品フィルム:
・外側から数えて第1層は層構成要素としてPETを含有し、
・外側から数えて第2層は層構成要素として接着促進剤を含有し、
・外側から数えて第3層は層構成要素としてアイオノマーを含有し、
・外側から数えて第4層は層構成要素として接着促進剤を含有し、
・外側から数えて第5層は層構成要素としてEVOHを含有し、
・外側から数えて第6層は層構成要素として接着促進剤を含有し、
・外側から数えて第7層は層構成要素としてポリオレフィン、好ましくはポリエチレンを含有する。
【請求項2】
層構成要素としてポリオレフィン、好ましくはポリエチレンを含有する層が、代替的に、さらなるポリオレフィン類、ポリプロピレン、EVA、EM(M)A、アイオノマーまたはこれらの配合物なども含有することを特徴とする、請求項1に記載の食品ケーシングまたは食品フィルム。
【請求項3】
接着促進剤を含有する層が、基材としてのPE、PP、EVA、EM(M)A、またはアイオノマーに基づく接着促進剤を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の食品ケーシングまたは食品フィルム。
【請求項4】
接着促進剤を含む層が、代替的に、ポリオレフィンと接着促進剤との配合物、またはEVAおよび/もしくはEM(M)Aと接着促進剤との配合物、またはアイオノマーおよび接着促進剤、または種々の接着促進剤もしくはその配合物を、それぞれ単一の層に含有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の食品ケーシングまたは食品フィルム。
【請求項5】
層構成要素としてEVOHを含む層が、代替的に、MXD6(変性ポリアミド6)を含有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の食品ケーシングまたは食品フィルム。
【請求項6】
層構成要素としてEVOHを含む層が、代替的に、PVA(ポリビニルアルコール)を含有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の食品ケーシングまたは食品フィルム。
【請求項7】
EVOH、PVAまたはMXD6を含む層が、代替的に、これらの出発物質とPAとの配合物を含有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の食品ケーシングまたは食品フィルム。
【請求項8】
層構成要素としてPETを含む層が、代替的に、ポリカプロラクタム(PA6)、ポリヘキサメチレンアジピンアミド(PA66)、PA6/66、PA11、PA12、またはこれらのポリアミドの配合物などを含有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の食品ケーシングまたは食品フィルム。
【請求項9】
層構成要素としてPETを含む層が、代替的に、PS(ポリスチレン)を含有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の食品ケーシングまたは食品フィルム。
【請求項10】
層構成要素としてPETを含む層が、代替的に、COCまたはCOCとポリオレフィンとの配合物を含有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の食品ケーシングまたは食品フィルム。
【請求項11】
層構成要素としてPETを含む層が、代替的に、ポリオレフィン、好ましくはPPもしくはHDPEまたは異なるポリオレフィン類の配合物を含有することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の食品ケーシングまたは食品フィルム。
【請求項12】
層構成要素としてPETを含む層が、代替的に、PC(ポリカーボネート)を含有することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の食品ケーシングまたは食品フィルム。
【請求項13】
シュリンクバッグまたはシーラブルフィルムの形態を持つ食品包装として仕上げられることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の食品ケーシングまたは食品フィルム。


【公開番号】特開2013−82227(P2013−82227A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−260920(P2012−260920)
【出願日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【分割の表示】特願2009−529544(P2009−529544)の分割
【原出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(509088088)クーネ アンラーゲンバウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【Fターム(参考)】