説明

多層体及びエラストマー組成物

【課題】ブリード性物質を含有する最外層に隣接する層が可塑剤等の液状物質を含有している場合であっても、過剰なブリードの発生が十分に防止された多層体を提供すること。
【解決手段】第1のエラストマー及びこれと相溶している第1の液状物質を含有する第1層11aと、第1層11aに隣接するとともに最外層に位置するように設けられた第2層12aと、を備え、第2層12aが、第2のエラストマーと、当該第2のエラストマーからブリードするブリード性物質と、当該第2のエラストマーと相溶している第2の液状物質と、を含有している、多層体1a。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー組成物の層を複数備える多層体、及びこの多層体の成形のために用いられるエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品に摺動性、付着防止、光沢改善、帯電防止等の機能を付与する方法として、樹脂中にブリード性物質を配合する方法がある。ブリード性物質を配合した樹脂を用いて成形した成形品においては、微量のブリード性物質が除々に成形品表面にブリードすることにより、所望の機能が発現する。例えば、摺動性、付着防止、光沢改善を目的とする場合、多くの高分子材料と非相溶であるシリコーンオイルがブリード性物質として広く用いられている(例えば、特許文献1)。また、帯電防止を目的として、界面活性剤をブリード性物質として用いた例が知られている(例えば、特許文献2)。
【0003】
ブリード性物質を用いた成形品の応用例としては、自動車の窓ガラスを案内するために用いられる部材である、グラスランチャンネルがある。グラスランチャンネルにおける窓ガラスと接触する部分をシリコーンオイル等のブリード性物質を含有する材料で形成することにより、窓ガラスとの適度な摩擦力を有する摺動性や、高級感のある光沢が付与される。
【特許文献1】特開平8−120134号公報
【特許文献2】特開2004−25483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブリード性物質を配合した樹脂を用いた樹脂成形品においては、多くの場合、摺動性等の機能が必要とされる最外層部分をブリード性物質を配合した樹脂組成物によって形成し、内層部分はこれ以外の樹脂組成物で形成した多層構造とされる。そして、内層部分を構成する樹脂組成物中には、材料コストの削減、柔軟性の付与等のために、可塑剤等の液状物質が配合される場合がある。
【0005】
しかしながら、ブリード性物質を含有する最外層を有する多層体である成形品において、最外層に隣接する層が可塑剤等の液状物質を含有している場合に、ブリード性物質が過剰にブリードする現象が起こることが明らかとなった。過剰なブリードが生じると、摺動性等の機能が損なわれるばかりでなく、成形品の外観が損なわれるため、実用上大きな問題となる。
【0006】
そこで、本発明は、ブリード性物質を含有する最外層に隣接する層が可塑剤等の液状物質を含有している場合であっても、過剰なブリードの発生が十分に防止された多層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1のエラストマー及びこれと相溶している第1の液状物質を含有する第1層と、当該第1層に隣接するとともに最外層に位置するように設けられた第2層と、を備える多層体であって、第2層が、第2のエラストマーと、当該第2のエラストマーからブリードするブリード性物質と、当該第2のエラストマーと相溶している第2の液状物質と、を含有しているものである。
【0008】
本発明の多層体は、ブリード性物質を含有する最外層(第2層)に上記第2の液状物質を含有させたことにより、ブリード性物質を含有する最外層に隣接する層が可塑剤等の液状物質を含有している場合であっても、過剰なブリードの発生が十分に防止されたものとなった。従来の多層体における過剰なブリードは、最外層に隣接する層に含まれる液状物質が最外層に移行し、移行してきた液状物質によって最外層中のブリード性物質が押し出されるために生じると、本発明者は推察している。そして、本発明の多層体においては、最外層に予めエラストマーと相溶する液状物質を含ませておくことにより、内層部分からの液状物質の移行が抑制され、その結果、過剰なブリード発生防止の効果が奏されると考えられる。ただし、本発明は係る作用を奏するものには限られない。
【0009】
上記第2のエラストマーは、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーであることが好ましく、特に、エチレン−αオレフィン−ジエン共重合体を熱可塑性樹脂中で動的に架橋することにより形成される熱可塑性エラストマーであることが好ましい。これらエラストマーを用いることにより、ブリード性物質による機能が特に良好に発揮される。
【0010】
上記第2の液状物質は、炭化水素化合物であることが好ましい。炭化水素化合物を用いることにより、過剰なブリード発生防止の効果をより顕著なものとすることができる。
【0011】
本発明の多層体においては、第1層全体の質量を基準とする第1の液状物質の濃度をA質量%とし、第2層全体の質量を基準とする第2の液状物質の濃度をB質量%としたときに、BのAに対する比が0.3以上であることが好ましい。これにより、過剰なブリード発生防止の効果をより顕著なものとすることができる。
【0012】
上記ブリード性物質としては、摺動性(低摩擦)や光沢を付与する場合はシリコーンオイルが好ましく、帯電防止性を付与する場合は界面活性剤が好ましい。また、ブリード性物質がシリコーンオイルであり、ブリード性物質の第2層全体質量を基準とする濃度が0.05〜30質量%であることが好ましい。あるいは、ブリード性物質が界面活性剤であり、ブリード性物質の第2層全体質量を基準とする濃度が0.05〜5.0質量%であることが好ましい。これにより、ブリード性物質による機能が特に良好に発揮される。
【0013】
本発明はまた、第1のエラストマー及びこれと相溶している第1の液状物質を含有する第1層と、当該第1層に隣接するとともに最外層に位置するように設けられた第2層と、を備える多層体の第2層を形成するために用いられるエラストマー組成物であって、第2のエラストマーと、当該第2のエラストマーからブリードするブリード性物質と、当該第2のエラストマーと相溶している第2の液状物質と、を含有するものである。
【0014】
このエラストマー組成物を用いて形成される第2層を最外層として有する多層体は、ブリード性物質を含有する最外層に隣接する層が可塑剤等の液状物質を含有している場合であっても、過剰なブリードの発生が十分に防止される。
【0015】
膜状に成形されている上記本発明のエラストマー組成物は、第1層と貼りあわせることにより多層体の成形に好適に用いることができる点で有用なものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ブリード性物質を含有する最外層に隣接する層が可塑剤等の液状物質を含有している場合であっても、過剰なブリードの発生が十分に防止された多層体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の多層体の一実施形態を示す断面図である。図1に示す多層体1aは、第1のエラストマー及びこれと相溶している第1の液状物質を含有する第1層11aと、第1層11aに隣接するとともに最外層に位置するように設けられた第2層12aと、を備える。第2層11aは最外層に位置し、その表面の少なくとも一部が外部に露出している。一方、第1層11aよりも更に内層の部分には、1又は2以上の他の層が設けられていてもよい。
【0019】
第2層12aは、第2のエラストマーと、当該第2のエラストマーからブリードするブリード性物質と、当該第2のエラストマーと相溶している第2の液状物質とを含有しているエラストマー組成物が膜状に成形されたものである。
【0020】
第2のエラストマーとしては、1種のエラストマー、又は2種以上のエラストマーからなる混合物が用いられる。成形性等の点からは、第2のエラストマーは熱可塑性エラストマーであることが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられるが、なかでも、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0021】
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとは、ソフトセグメントを持つ熱可塑性オレフィンであって、ソフトセグメントはゴムであることが好ましい。このゴムは架橋されていることがより好ましい。特に、ソフトセグメントであるエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(以下「EPDM」という。)等のエチレン−αオレフィン−ジエン共重合体を熱可塑性樹脂中で動的に架橋することにより形成される熱可塑性エラストマー(以下「動的架橋型TPO」という。)が好ましい。動的架橋型TPOは、エチレン−αオレフィン−ジエン共重合体の架橋体の微粒子がポリオレフィン系の熱可塑性樹脂中に分散した構造を有する。このような構造を有していることにより、動的架橋型TPOは、加熱により塑性変形可能な状態となり、通常の熱可塑性樹脂と同様の成形加工が可能である。
【0022】
動的架橋型TPOは、当業者には明らかなように、熱可塑性樹脂及びエチレン−αオレフィン−ジエン共重合体をできるだけ均一に混合した混合物を、高い剪断力で混練すると同時にエチレン−αオレフィン−ジエン共重合体を架橋する方法により、調製される。この調製方法は動的架橋法とも呼ばれる。エチレン−αオレフィン−ジエン共重合体の架橋は、パーオキサイド架橋、フェノール架橋、ヒドロシリル化架橋等の方法により進行させることができる。
【0023】
動的架橋型TPOを構成するポリオレフィン系の熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン(PP)が好ましい。一方、エチレン−αオレフィン−ジエン共重合体としてはEPDMが好ましく、EPDMの中でも、ジエン成分としてエチルノルボルネン若しくはビニルノルボルネンを用いた共重合体が好ましい。
【0024】
第2層中に含まれるブリード性物質は、第2のエラストマーと混合されたときに、除々に表面に移行してブリードする性質を有する物質である。ブリードしているか否かは、第2のエラストマーと混合したエラストマー組成物を成形した成形品を一定期間放置した後、成形品の表面を観察して、表面にブリードしているブリード性物質の存在を確認することにより判断することができる。ブリード量が比較的多い場合には、成形品の表面からブリード性物質を拭き取ったときの質量変化から、ブリード量を定量することも可能である。なお、第2層は、複数種のブリード性物質を含有していてもよい。
【0025】
ブリード性物質としては、シリコーンオイル又は界面活性剤が好ましい。シリコーンオイルは、主として、摺動性、付着防止、光沢改善といった機能を付与することを目的として用いられる。界面活性剤は、主として帯電防止の機能を付与することを目的として用いられる。界面活性剤としては、脂肪酸金属塩又は脂肪酸アンモニウム塩が好ましい。
【0026】
ブリード性物質がシリコーンオイルである場合、ブリード性物質の第2層全体の質量を基準とする濃度は0.05〜30質量%であることがより好ましく、0.05〜3質量%であることがより好ましい。また、ブリード性物質が界面活性剤である場合、ブリード性物質の第2層全体の質量を基準とする濃度が0.05〜5.0質量%であることが好ましい。ブリード性物質の濃度が上記範囲内にない場合、ブリード性物質によって付与される機能が十分に発揮され難くなる傾向にある。
【0027】
第2の液状物質としては、第2のエラストマーとの相溶性を有し、多層体1aが使用される温度領域、例えば−40℃〜100℃において液体の状態で存在する物質が用いられる。第2の液状物質は、第1層11aに含まれる第1の液状物質と同一でも異なっていてもよい。
【0028】
第2の液状物質は、第2のエラストマーとの相溶性の観点から、その溶解性パラメーター(SP値)が、第2のエラストマーのSP値±2の範囲内にあることが好ましい。第2の液状物質の好適な具体例としては、炭化水素化合物(好ましくはパラフィン)が挙げられる。
【0029】
第1層11a全体の質量を基準とする第1の液状物質の濃度をA質量%とし、第2層12a全体の質量を基準とする第2の液状物質の濃度をB質量%としたときに、BのAに対する比が0.3以上であることが好ましく、0.3〜0.9であることがより好ましい。
【0030】
第1層11aは、第1のエラストマー及びこれと相溶している第1の液状物質を含有している。第1のエラストマーは、第2層12a中の第2のエラストマーと同一でも異なっていてもよいが、両層の密着性を良好なものとするため、第2のエラストマーと同種類のエラストマーが好ましい。具体的には、例えば、第1のエラストマー及び第2のエラストマーが、上述の動的架橋型TPOであることが好ましい。
【0031】
第1の液状物質は、一般に、第1のエラストマーの可塑剤として配合される物質であり、第2の液状物質と同様のものから選択される。すなわち、第1の液状物質及び第2の液状物質の両方が、炭化水素化合物であることが好ましい。
【0032】
図2は、本発明の多層体に係るグラスランチャンネルの一実施形態を示す断面図である。図2に示すグラスランチャンネル1bは、窓ガラスを挿入するための開口部を有する第1層11bと、窓ガラスと接触する部分の最外層に設けられた第2層12bと、を備える。グラスランチャンネル1bは、自動車の窓ガラスの摺動を案内するために用いられる成形品である。
【0033】
第1層11b及び第2層12bは、それぞれ、上述の積層体1aにおける第1層11a及び第2層12aと同様の材料を成形したものである。ただし、第2層12bにおいては、窓ガラスの摺動性を付与するため、ブリード性物質としてはシリコーンオイルが好適に用いられる。
【0034】
多層体1a及びグラスランチャンネル1bは、例えば、第1層及び第2層を構成するエラストマー組成物のペレットを準備し、二色押出成形装置を用いて成形することにより、製造することが可能である。あるいは、それぞれ別途成形した第1層及び第2層を貼り合わせてもよい。
【0035】
多層体1a又はグラスランチャンネル1bを成形するために用いるエラストマー組成物は、各成分を混合した混合物を、二軸押出機を用いる方法等の公知の方法によって混練することにより、調製することができる。特に、動的架橋型TPOを用いる場合には、動的架橋と同時に他の成分と混合してエラストマー組成物を調製することができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
(材料)
以下の実施例及び比較例においては、下記材料を用いた。
PP:プライムポリマー(株)製「J−300S」(商品名)
EPDM:三井化学(株)製「3042E」(商品名)
シリコーンオイル(ブリード性物質):信越化学工業製「KF−1000」(商品名)
パラフィンオイル(液状物質):出光石油化学工業(株)製「PW−380」(商品名)
抗酸化剤:旭電化工業(株)製「A−60」(商品名)
界面活性剤:花王(株)製「エレクトロストリッパーTS−2B」(商品名)
【0038】
(実施例1〜3、比較例1)
表1に示す組成(質量%)を有する表層材−1〜表層材−4のエラストマー組成物、及び表2に示す組成(質量%)を有する内層材−1のエラストマー組成物を調製した。エラストマー組成物の調製は、表1、2に示す各成分の他、パーオキサイド(日本油脂(株)製「パーヘキサ25B」(商品名))を3質量%添加した混合物を、L/Dが30の二軸押出機(池貝(株)製、「PCM−30」(商品名))を用いて混練して、エラストマー成分を動的に架橋することにより行った。これにより、EPDMがポリプロピレン(PP)中で動的に架橋された熱可塑性エラストマーを含有するエラストマー組成物が得られた。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
調製したエラストマー組成物を表3に示す組み合わせで用いて、図1に示す多層体と同様の構成を有し、幅100mmの4種類の多層体(実施例1〜3、比較例1)を成形した。成形は、二色押出成形装置を用いて行った。得られた多層体の第2層の表面は、いずれも、やや光沢のある状態であったが、肉眼で確認できる油膜はなく、また、指で軽く撫ぜても光沢は変化しなかった。
【0042】
得られた多層体について、ブリードの状態を、外観評価及びブリード量の測定によって評価した。ブリード量は、長さ100mmに切り出した多層体の質量変化に基づいて求めた。すなわち、初期の多層体質量をM1(g)とし、第2層側の表面をワイピング紙(ベンコットン、旭化成工業(株)製)を用いて均等になるように50回往復させてブリードした物質を拭き取った後の多層体質量をM2(g)とし、M1とM2の差Mを求めた。それぞれの多層体についてMを5回測定し、その平均値をブリード量とした。
【0043】
ブリード量の測定は、成形直後、及び23±2℃に温度調節した恒温器中で1週間静置した後(経時後)のそれぞれにおいて行った。外観評価は、経時後の多層体表面の状態を観察することにより行った。
【0044】
また、「HEIDON」を用いて、ガラスと第2層との動的摩擦係数を評価した。ブリードの状態及び動的摩擦係数の評価結果を表3にまとめて示す。
【0045】
【表3】

【0046】
表3に示すように、パラフィンオイルを含有しないエラストマー組成物により第2層を形成させた比較例1の多層体においては、特に経時後にブリード性物質であるシリコーンオイルが過剰にブリードして油膜が多く発生した。これに対して、パラフィンオイルを含有するエラストマー組成物により第2層を形成させた実施例1〜3の多層体においては、経時後もシリコーンオイルのブリード量が適度なレベルに留まっていた。特に、第2層中のパラフィンオイル濃度の第1層中のパラフィンオイル濃度Aに対する比が0.3以上である実施例2、3の多層体は、光沢感はあるものの油膜の発生は全く認められず、外観的に優れたものであった。
【0047】
(実施例4、5)
表4に示す組成(質量%)のエラストマー組成物(表層材−4、表層材−5)を表層材−1等と同様にして調製した。そして、第1層及び第2層の材料として表5に示す組み合わせの材料を用いた他は実施例1と同様にして多層体を成形した。得られた多層体の第2層の表面は、いずれも、やや光沢のある状態であったが、肉眼で確認できる油膜はなく、また、指で軽く撫ぜても光沢は変化しなかった。多層体のブリードの状態及びガラスと第2層との動的摩擦係数を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表5に示す。
【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
実施例4、5の多層体はともに、経時後も過剰にブリードすることなく、良好な外観を有していた。ただ、実施例4の多層体は、動的摩擦係数が1を大きく上回っており、摺動性の点ではやや劣るものであった。
【0051】
(実施例5)
第2層の材料として表1の表層材−4を用い、第1層の材料として表2の内層材−1を用いて、図2に示すグラスランチャンネルと同様の構成を有するグラスランチャンネルを、二色押出成形装置を用いて成形した。得られたグラスランチャンネルの第2層の表面は、やや光沢のある状態であったが、肉眼で確認できる油膜はなく、また、指で軽く撫ぜても光沢は変化しなかった。また、23±2℃に温度調節した恒温器中に1週間静置した後も、光沢感あるが油膜は無く、良好な外観を維持していた。
【0052】
(実施例6)
表6に示す組成(質量%)のエラストマー組成物(表層材−6)を表層材−1等と同様にして調製した。そして、第2層の材料として表層材−6を用い、第1層の材料として表2の内層材−1を用いて、二色押出成形装置によって幅50mmの多層体を成形した。
【0053】
【表6】

【0054】
長さ200mmに切り出した多層体を、23±2℃に温度調節した恒温器中に1週間静置した後、表面を観察したところ、過剰なブリードは認められなかった。また、表面抵抗を測定したところ、5×10Ωcmであり、帯電防止域の性能を発現する程度には界面活性剤がブリードしていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の多層体の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の多層体に係るグラスランチャンネルの一実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1a…多層体、1b…グラスランチャンネル、11a…第1層、11b…第2層、12a…第1層、12b…第2層。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のエラストマー及びこれと相溶している第1の液状物質を含有する第1層と、当該第1層に隣接するとともに最外層に位置するように設けられた第2層と、を備える多層体であって、
前記第2層が、
第2のエラストマーと、
当該第2のエラストマーからブリードするブリード性物質と、
当該第2のエラストマーと相溶している第2の液状物質と、
を含有している、多層体。
【請求項2】
前記第2のエラストマーが、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーである、請求項1記載の多層体。
【請求項3】
前記第2のエラストマーが、エチレン−αオレフィン−ジエン共重合体を熱可塑性樹脂中で動的に架橋することにより形成される熱可塑性エラストマーである、請求項1記載の多層体。
【請求項4】
前記第2の液状物質が、炭化水素化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層体。
【請求項5】
前記第1層全体の質量を基準とする前記第1の液状物質の濃度をA質量%とし、前記第2層全体の質量を基準とする前記第2の液状物質の濃度をB質量%としたときに、BのAに対する比が0.3以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多層体。
【請求項6】
前記ブリード性物質が、シリコーンオイル又は界面活性剤である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層体。
【請求項7】
前記ブリード性物質がシリコーンオイルであり、前記ブリード性物質の前記第2層全体質量を基準とする濃度が0.05〜30質量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層体。
【請求項8】
前記ブリード性物質が界面活性剤であり、前記ブリード性物質の前記第2層全体質量を基準とする濃度が0.05〜5.0質量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層体。
【請求項9】
第1のエラストマー及びこれと相溶している第1の液状物質を含有する第1層と、当該第1層に隣接するとともに最外層に位置するように設けられた第2層と、を備える多層体の前記第2層を形成するために用いられるエラストマー組成物であって、
第2のエラストマーと、
当該第2のエラストマーからブリードするブリード性物質と、
当該第2のエラストマーと相溶している第2の液状物質と、
を含有する、エラストマー組成物。
【請求項10】
膜状に成形されている、請求項9記載のエラストマー組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−136685(P2007−136685A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329326(P2005−329326)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】