説明

多層光学フィルムを組入れるカードおよび積層体

【課題】多層光学フィルムの代替構造、そのようなフィルムを組入れる積層体の代替構造、およびそのような積層体を組入れるカードの代替構造を開示する。
【解決手段】多層光学フィルム、それらの積層体、およびそれらを組入れるカードの新たな構造を開示する。カードにおいて、厚さが少なくとも0.5ミルであるが、合わせて厚さの3ミル以下を占めることができる接着剤層を使用して、多層光学フィルムを比較的厚いポリマー層の間に挟むことができる。カードは、望ましい場合、可視において高度に透過性であることができるが、赤外の部分において高度に不透明であることができる。得られるカードは、カードスタンピングの間の低減されたエンジェルヘア形成、層間剥離に対する増加された耐性、および低減されたヘイズを有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層光学フィルムに関する。本発明は、さらに、多層光学フィルムを組入れる積層体およびカード、ならびにそれらに関連する方法に関する。そのようなフィルム、積層体、およびカードの少なくともいくつかの実施形態は、垂直入射において、可視光の高い平均透過率(transmission)を有し、かつ、波長が約700nmを超える電磁放射線の少なくとも一部を選択的に反射するか他の態様で遮断する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも部分的に、異なる屈折率の光学的に薄い層(「微小層」)の配列によって、所望の透過および/または反射特性を提供することができる多層光学フィルムが、知られている。真空チャンバ内で基材上に微小層内の一連の無機材料を堆積させることによって、そのような多層光学フィルムを製造することが長く知られている。典型的には、基材は、真空チャンバ体積、および/または堆積プロセスによって可能な均一性の程度に対する制約によってサイズが制限された比較的厚いガラス片である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願は、多層光学フィルムの代替構造、そのようなフィルムを組入れる積層体の代替構造、およびそのような積層体を組入れるカードの代替構造を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
たとえば、可視光透過カードが、多層光学フィルムが間に配置された第1および第2の比較的厚いポリマー層を含むことができる。厚いポリマー層は、各々、厚さが、少なくとも5ミル(125μm)、または少なくとも約10ミル(250μm)であることができ、多層光学フィルムは、波長範囲800〜1000nmを実質的にカバーする垂直入射における反射帯域を有することができる。カードは、また、多層光学フィルムと第1および第2のポリマー層との間の複数の接着剤層を含むが、カードは、12%以下、または10%を超えないヘイズ(haze)を有するように構成される。
【0005】
別の例として、カードが、多層光学フィルムが間に配置された比較的厚い第1および第2のポリマー層を含むことができ、多層光学フィルムは、所望のスペクトル領域をカバーする垂直入射における反射帯域を有する。カードは、また、多層光学フィルムと第1および第2のポリマー層との間の複数の接着剤層を含む。向上されたフィルム一体性のため、多層光学フィルムは、coPENおよびPETGなどのコポリエステルの交互の層を含むことができる。多層光学フィルムは、また、保護境界層によって分離された微小層の2つ以上のパケットを含むことができる。
【0006】
いくつかの実施形態において、接着剤の1つの層のみが多層光学フィルムと厚いポリマー層の各々との間に位置する。そのような接着剤層は、好ましくは厚さが少なくとも1ミルの半分であるが、合わせて、厚さの約2または3ミル以下を構成する。いくつかの構造において、カード、積層体、およびフィルムは、すべて、ポリ塩化ビニル(PVC)を実質的に含まない。
【0007】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明から明らかであろう。しかし、決して、上記要約は、請求された主題に関する限定として解釈されるべきでなく、主題は、手続処理の間補正することができるような特許請求の範囲によってのみ規定される。
本明細書全体を通して、同じ参照符号が同じ要素を示す添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】既知の多層光学フィルムの大きく拡大された斜視図である。
【図2】多層光学フィルムを含む既知の積層体構造の概略断面図である。
【図3】既知の多層光学フィルム、および中にそのような多層光学フィルムが組入れられた既知のクリアなカードのスペクトル透過グラフである。
【図4】剥離テストを受けるカードまたはその一部の概略断面図である。
【図5】既知の積層体構造を組入れる既知のカードに対する代表的な剥離強度テストを示すグラフである。
【図6】新たな多層光学フィルムを含む新たな積層体構造の概略断面図である。
【図7】そのような新たな多層光学フィルム単独、および新たな積層体構造を組入れるカードのスペクトル透過グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書は、どのように、代替の多層光学フィルム、積層体、およびカード構造が、既存の製品に対して、向上されたクラリティ(clarity)、層間剥離特性、および製造性を提供することができるかを教示する。これは、接着剤分配および厚さ、接着剤デュロメータ(または「硬さ」)、多層光学フィルムの層間凝集力、ならびに多層光学フィルムスキン層の引張強度の適切な組合せによって行うことができる。
【0010】
多層光学フィルムが、交互のポリマー層の共押出によって示されている。たとえば、米国特許第3,610,724号明細書(ロジャーズ(Rogers));米国特許第3,711,176号明細書(アルフレー・ジュニア(Alfrey, Jr.)ら)、「赤外光、可視光、または紫外光のための高度反射性熱可塑性光学本体(Highly Reflective Thermoplastic Optical Bodies For Infrared, Visible or Ultraviolet Light)」;米国特許第4,446,305号明細書(ロジャーズ(Rogers)ら);米国特許第4,540,623(イム(Im)ら);米国特許第5,448,404号明細書(シュレンク(Schrenk)ら);米国特許第5,882,774号明細書(ジョンザ(Jonza)ら)「光学フィルム(Optical Film)」;米国特許第6,045,894号明細書(ジョンザ(Jonza)ら)「着色セキュリティフィルムにクリア(Clear to Colored Security Film)」;米国特許第6,531,230号明細書(ウェーバー(Weber)ら)「カラーシフトフィルム(Color Shifting Film)」;国際公開第99/39224号パンフレット(アウダーカーク(Ouderkirk)ら)「赤外干渉フィルタ(Infrared Interference Filter)」;および米国特許第2001−0022982 A1号明細書(ニービン(Neavin)ら)、「多層光学フィルムを製造するための装置(Apparatus For Making Multilayer Optical Films)」を参照されたい。国際公開第03/100521号パンフレット(テート(Tait)ら)、「多層光学フィルムをきれいにかつ急速に細分するための方法(Method For Subdividing Multilayer Optical Film Cleanly and Rapidly)」も参照されたい。そのようなポリマー多層光学フィルムにおいて、ポリマー材料が、個別の層の構成に優勢にまたは排他的に使用される。そのようなフィルムは、大量製造プロセスと適合し、大きいシートおよびロール品で製造することができる。
【0011】
図1は、既知の多層光学フィルム20を示す。フィルムは、個別の微小層22、24を含む。微小層は、ある光が隣接した微小層の間の界面で反射されるように、異なった屈折率特徴を有する。微小層は、フィルムに所望の反射または透過特性を与えるために、複数の界面で反射された光が建設的または相殺的干渉を受けるように十分に薄い。紫外、可視、または近赤外波長における光を反射するように設計された光学フィルムの場合、各微小層は、一般に、光学厚さ(すなわち、物理的厚さに屈折率を乗じたもの)が約1μm未満である。しかし、フィルムの外面におけるスキン層、または、微小層のパケットを分離する、フィルム内に配置された保護境界層などのより厚い層も、含むことができる。
【0012】
多層光学フィルム20の反射および透過特性は、それぞれの微小層の屈折率の関数である。各微小層は、面内屈折率n、n、およびフィルムの厚さ軸と関連する屈折率nによって、少なくともフィルム内の局所化された位置で、特徴づけることができる。これらの屈折率は、それぞれ、相互に直交するx軸、y軸、およびz軸に沿って偏光された光の、対象材料の屈折率を表す(図1を参照のこと)。実際には、屈折率は、賢明な材料選択および処理条件によって制御される。フィルム20は、典型的には何十または何百の、2つの交互のポリマーA、Bの層を共押出しし、その後、任意に、多層押出物を1以上の増倍のダイを通過させ、次に、押出物を伸張するか他の態様で延伸して、最終フィルムを形成することによって、製造することができる。結果として生じるフィルムは、可視または近赤外などのスペクトルの所望の領域内の1つ以上の反射帯域を提供するように厚さおよび屈折率が調整された、典型的には何十または何百の個別の微小層から構成される。妥当な数の層で高反射性を達成するために、隣接した微小層が、好ましくは、少なくとも0.05の、x軸に沿って偏光された光の屈折率差(Δn)を示す。高反射性が、2つの直交する偏光に望ましい場合、隣接した微小層は、また、好ましくは、少なくとも0.05の、y軸に沿って偏光された光の屈折率差(Δn)を示す。そうでなければ、1つの偏光状態の垂直入射光を反射し、直交する偏光状態の垂直入射光を透過する多層スタックを製造するために、屈折率差Δnは、0.05未満、好ましくは約0であることができる。
【0013】
望ましい場合、z軸に沿って偏光された光の、隣接した微小層の間の屈折率差(Δn)も、斜め入射光のp偏光成分について所望の反射性特性を達成するように調整することができる。説明の容易さのため、多層光学フィルム上の関心のある任意の点において、x軸は、Δnの大きさが最大であるようにフィルムの平面内に配向されると考えられる。したがって、Δnの大きさは、Δnの大きさに等しいかΔnの大きさより小さい(しかし、より大きくない)ことができる。さらに、差Δn、Δn、Δnを計算する際にどの材料層で始めるべきかの選択は、Δnが負でないことを必要とすることによって決められる。換言すれば、界面を形成する2つの層の間の屈折率差は、Δn=n1j−n2jであり、ここで、j=x、y、またはzであり、層指定1、2は、n1x≧n2x、すなわち、Δn≧0であるように選択される。
【0014】
斜め入射角におけるp偏光の高反射性を維持するために、微小層間のz屈折率不一致Δnを、Δn≦0.5*Δnであるように最大面内屈折率差Δnより実質的に小さいように制御することができる。より好ましくは、Δn≦0.25*Δn。ゼロまたはほぼゼロの大きさのz屈折率不一致が、p偏光の反射性が入射角の関数として一定またはほぼ一定である微小層の間の界面をもたらす。さらに、z屈折率不一致Δnは、面内屈折率差Δnと比較して反対の極性を有する、すなわち、Δn<0であるように制御することができる。この条件は、s偏光の場合と同様に、p偏光の反射性が、増加する入射角とともに増加する界面をもたらす。
【0015】
あるいは、多層光学フィルムは、ポリマー微小層のすべてが性質が等方性である、すなわち、各層について、n=n=nである、より単純な構造を有することができる。さらに、コレステリック反射偏光子および特定のブロックコポリマーなどの既知の自己組立て周期的構造を、本出願の目的のための多層光学フィルムとみなすことができる。左旋性および右旋性キラルピッチ要素の組合せを使用して、コレステリックミラーを製造することができる。
【0016】
カード態様における最近の傾向が、金融取引カード用途のための可視光透過カード(「VLTカード」、以下の定義を参照のこと)への要求を生じさせている。そのようなVLTカードが、できるだけ高度に透明かつクリアであることが望ましいことができ、いくつかの場合、適度の量のヘイズまたは着色が望ましいであろう。これらのカードが現金自動預払機(ATM)などのカード読取り機に使用されるべきである場合に、難題が提示される。そのような機械は、典型的には、赤外(IR)光を使用してカードの存在を検出するエッジセンサを含む。カードがそのようなIR光を十分に遮断しない限り、エッジセンサは作動されず、カード読取り機は、カードの存在を認めない。いくつかのカード製造装置も、IRエッジセンサを使用する。そのような装置上で製造されたカードも、必要なIR光を遮断するにちがいない。ISO標準No.7810(2003年改定)が、範囲850〜950nm全体にわたる光学濃度(OD)>1.3(<5%の透過率に対応する)、および範囲950〜1000nm全体にわたるOD>1.1(<7.9%の透過率に対応する)を指定すると考えられる。
【0017】
したがって、VLTカードの難題が、可視波長にわたってできるだけ高度に透明であるが、少なくとも約800から1000nmの、ほとんどのIR光を実質的に遮断することであった。この波長範囲において、5%未満の平均透過率が好ましいが、8%の透過率も受入れられる。いくつかのカード検出システムにおいて、10%または15%の高い平均IR透過率も受入れられるであろう。他のカードでのように、VLTカードは、また、それらの一体性および外観を維持し、かつ使用中層間剥離しないことが、一般に予期される。
【0018】
図2は、既知のVLT金融取引カードの構造に使用されている既知のIRフィルタ積層体30の断面図を示す。積層体30は、外側ポリ塩化ビニル(PVC)層32a、32bと、可視において高度に透明であり、かつIR反射帯域を有する中心多層光学フィルム34(これの個別の微小層およびスキン層は、図示の容易さのために示されていない)と、複合結合層36a、36bとを含む。積層体30は、また、多層光学フィルム34の主面に付与されたプライマーの薄い層38a、38bを含む。イリノイ州フランクリンパークのトランシルラップ・カンパニー(Transilwrap Company of Franklin Park, Illinois)によってKRTY 1/1/1接着剤として販売される結合層36aおよび36bは、示されているように、ホットメルト接着剤の層40a1、40a2、および40b1、40b2がそれぞれの主面に付与されたポリエチレンテレフタレート(PET)の層41a、41bからなる。既知のIRフィルタ積層体30の構造詳細は、次の通りである。
PVC層32a:公称厚さ1ミル(25μm)
複合結合層36a:公称厚さ3ミル(75μm)。トランシルラップKRTY 1/1/1。
接着剤層40a1:公称厚さ1ミル(25μm)。組成は、ポリエチレンと、ポリエチルアクリレートとを含む。
PET層41a:公称厚さ1ミル(25μm)。
接着剤層40a2、40b1、40b2:層40a1と同じ。
プライマー層38a:公称厚さ約0.1〜0.2μm。層は、すべて脱イオン水ベース中の、第1および第2のスルホポリエステル成分、界面活性剤(トリトン(Triton)X−100)、ならびに架橋剤(ネオクリル(Neocryl)CX−100)を含むコーティングされた組成物から得られる。コーティング組成物は、典型的には5%から10%の固形分である。第1のスルホポリエステル成分は、次の反応生成物、すなわち、スルホナトリウムイソフタル酸(sulfosodium isophthalic acid)(2.75mol%)、テレフタル酸(23.5mol%)、イソフタル酸(23.75mol%)、ネオペンチルグリコール(16.5mol%)、およびエチレングリコール(33.5mol%)でのバッチケトルプロセスを用いる標準ポリエステル反応化学によって製造される。第2のスルホポリエステル成分は、イーステク(Eastek)1100、イーストマンケミカルのロウター・ケミカル・ディビジョン(Lawter Chemical Division of Eastman Chemical)の製品である。MOFは、プライマー層上のコーティング前に、コロナ放電で処理しなければならない。
多層光学フィルム34:公称厚さ2.55ミル(65μm)。完全にポリマーの、共押出され、二軸延伸され、PET/coPMMAの交互の層から構成される。各々が公称上厚さ12〜13μmである外側PETスキン層と、厚さ勾配によって特徴づけられた275の微小層の1つの中心パケットとを含む。coPMMA層は、n=n=n=1.49を有し、PET層は、面内屈折率n=n=1.65と、面外屈折率n=1.49とを有する。
プライマー層38b:層38aと同じ。
複合結合層36b:層36aと同じ。
PVC層32b:層32aと同じ。
積層体30全体:公称厚さ10.5ミル(265μm)。
【0019】
IRフィルタ積層体30は、5の別個のシート−PVC層32a、32b、複合結合層36a、36b、および下塗りされた多層光学フィルム34−を繰出し、加熱されたニップ内に供給し、それにより、そのような積層体30のロールを形成することによって、構成される。次に、積層体30は、大きいシートにカットされ、積層プレス内で、望まれるように、印刷、集積回路チップなどとともに、厚いPVCカードストック(公称厚さ約9ミル(225μm))の2つの同様のサイズのシートの間に挿入され、積層プレスは、組立てられた要素を、隣接したPVC層をともに溶融するのに十分な熱および圧力に曝す。積層温度は、約280〜300°F(137〜149℃)であることができる。次に、結果として生じる大きい剛性カードシートは、ダイカット手順にかけられ、個別の標準サイズ金融取引カードがより大きいカードシートから打抜かれる。たとえば、米国特許第6,581,839号明細書(ラッシュ(Lasch)ら)「取引カード(Transaction Card)」、米国特許出願第US2002/0145049 A1号明細書(ラッシュ(Lasch)ら)「取引カード(Transaction Card)」、および米国特許出願第US2002/0130186 A1号明細書(ラッシュ(Lasch)ら)「取引カード(Transaction Card)」を参照されたい。ダイカット手順の間、既知のIRフィルタ積層体30を組入れる既知のカードシートを使用しているとき、「エンジェルヘア」として知られている過度の量の本質的でないポリマーフィラメントが、打抜かれたカードの端縁に沿って発生されることがある。そのようなポリマーフィラメントは、カード製造業者に実質的な迷惑をもたらすことがある。
【0020】
それにもかかわらず、結果として生じる既知のカードは、可視領域全体にわたる高透過、およびカード読取り機での使用のための適切なIR遮断を有する。図3は、そのようなカードの最もクリアな部分(印刷、ICチップなどによって遮られていない)の典型的な測定スペクトル透過率50を示す。図3は、また、典型的な多層光学フィルム30単独の測定スペクトル透過率52を示す。(これらのスペクトル透過率測定は、パーキン−エルマーラムダ(Perkin−Elmer Lambda)−19分光光度計上で、垂直入射で行われ、出力半球における散乱方向に関わらず、カードを透過されたすべての光を集めるために積分球を使用した。測定スペクトル透過率は、表面反射を補正しない。)当然、入射角が増加するにつれて、多層光学フィルムの反射帯域は、より短い波長にシフトする。スペクトルの可視部分内の、完成したカードの透過率は、裸の多層光学フィルム30のものより低い。これは、PVC層中の色添加剤、ならびに、4の比較的厚い(1ミル)接着剤層、およびPVC層によって引起された散乱またはヘイズによると考えられる。完成したカードのヘイズは、時間、温度、および圧力のカードシート積層条件の関数であるが、典型的には、20〜41%である。しかし、特に高温におけるいくつかの実験的試みが、14%の低いヘイズ読取りを達成している。この点に関して、「ヘイズ」は、標準実験室条件下でBYKガードナー・ヘイズガード(BYK Gardner Hazegard)(登録商標)プラス(Plus)ヘイズメータ上で測定された通りである。同じように測定された多層光学フィルム30単独のヘイズは、典型的には約3%である。
【0021】
重要な考慮事項であり得る別のカード特性は、耐久性、または、カードの、層間剥離の受けやすさである。カードの既存の標準は、任意の積層された層の間の「剥離力」が、剥離の全長にわたって3.5N/cm(カード積層体のセンチメートル単位の幅あたりの力のニュートンを意味する)を超えることを推奨するが、少なくとも7N/cmまたはさらには10N/cmなどのより高い値も望ましい。カードが多層光学フィルムをIR遮断構成要素などの反射構成要素として組入れる場合、多層光学フィルムの微小層、保護境界層、およびスキン層の層間一体性が重要になる。また、多層光学フィルムの主面と接触する(直接であろうと薄いプライマー層を介してであろうと)接着剤層の特性も重要になり得る。
【0022】
図4は、接着剤層36aと多層光学フィルム30との間の層間剥離強度を測定するために剥離テストを受けているVLTカードまたはカードシート54(またはその一部)を概略的に示す。フィルム30の外側スキン層および中心微小層パケットは、図示する目的のために示されている(同じ割合でない)。各々が厚さ約10ミルの厚いPVCカードストック層56a、56b(厚いPVCカードストックシートに溶融されたそれぞれの1ミルのPVC層32a、32b、およびいかなる付加的なPVCオーバレイ層から生じる)も示されている。プライマー層、印刷、および他のカード要素は、簡単にするために示されていない。180度剥離テストの準備において、カットをカードシートに作ることができるか、カードシート積層工程前、テスト下で、界面において、示されているように薄いポリマータブ55を挿入することができる。積層後、剥離はカットまたはタブにおいて開始され、線幅あたりの剥離力は、剥離の長さとともに監視される。VLTカードシート54は、長さ12.5cmのストリップにカットされた。そこで、そのようなストリップのテストにおける最大剥離長さは25cmであり、というのは、各半体が12.5cmまで剥離することができるからである。既知の積層体30を使用するカードのいくつかの典型的な180度剥離テストの結果(曲線60および62を参照のこと)が、図5に示されている。示されているように、測定剥離力が、最初に容易に3.5N/cmを超えるが、剥離ストリップは、しばしば、テストストリップの端部に達する前、すなわち、完全な剥離長さに達する前に破断する。図4に示された破断58を参照されたい。破断は、曲線62の場合、2cmの剥離長さをわずかに超えた後に生じ、曲線60の破断は、約6cmの剥離長さで生じた。(力がゼロに低下するが、器械が破断後データを集めるのをやめることに留意されたい)。
【0023】
一貫して、20%未満、より好ましくは、14%未満、12%未満、またはさらには10%未満であるVLTカードのヘイズレベルを達成し、依然として、(1)少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、またはさらには80%の高い平均可視光透過率を維持し、(2)カードがカード読取り機と適合するように、適切なIR遮断を維持することが有利であろう。構造に多層光学フィルムを組入れるカードの強度および一体性(層間剥離破損に対する)を向上させることも有利であろう。最後に、ダイカットプロセスの間本質的でないポリマーフィラメントの形成を回避する多層光学フィルム積層体構造を提供することが有利であろう。
【0024】
上述された多層光学フィルム34は、強靭かつ可撓性であるが、PETおよびcoPMMA層の層間接着力は高くない。したがって、このフィルムをカード構造内の厚いPVCカードストックに結合するための接着剤の選択の際に特別に注意しなければならない。接着剤が硬すぎるか脆性すぎるか、薄すぎる場合、互いに反対のカード半体に付与される力は、2つの半体の間の劈開領域内の小さい領域に集中される。厚い柔らかい接着剤が、剥離テストの間カードの半体を引き離すとき、層間剥離の劈開点において、より広い領域にわたって剥離力を広げる。この理由のため、上で説明された既知のカードの厚いPVCカードストックとMOFとの間の測定剥離強度は、多層光学フィルム自体の微小層または他の層の間の剥離強度よりはるかに高い。しかし、過剰厚さまたは柔らかさの接着剤を使用することのトレードオフは、エンジェルヘア、またはダイが粘着物で動かなくなることなどを生じさせることがあるカード打抜き問題であることがある。接着剤厚さおよび柔らかさの実際の限界があるので、MOF構造自体は、MOFの破壊を防止しながら、MOFと接着剤との間のより高い剥離強度を有するカードを製造するように修正することができる。既知のPET/coPMMAシステムより高い層間接着力を有するMOF構造を製造することができる。本発明者らは、また、破壊に対するMOFの耐性が、また、良好な引張強度を有するスキン層の存在によることができることを見出した。
【0025】
剥離テストの間のMOFの破壊をもたらす力は、少なくとも4のパラメータ、すなわち、接着剤の厚さ、接着剤の柔らかさ/硬さ(デュロメータ)、MOFへの接着剤結合の強度、MOF自体の層間接着力値、および、いくつかの場合、MOFスキン層の引張強度による。これらのパラメータは、すべて、3.5N/cmのISO推奨値を十分に超えるカード剥離力をもたらし、同時に、剥離テストの間のMOFの自発的な破壊を防止するように制御することができる。これらのパラメータのすべてに変化がある一連のカード構造を積層しテストして、接着剤およびMOFの剥離力および破壊力を測定する。
【0026】
MOFの異なった材料は、カード積層体の層間剥離の根本的な原因である。MOFの微小層の間の結合強度の増加が、カードの測定剥離力の対応する増加をもたらす。3組のMOF材料を、カード構造の結合強度についてテストした。これらは、coPEN/PMMA、PET/coPMMA、およびcoPEN/PETGであり、coPENは、90/10比のPENおよびPETモノマーで製造し、次に、これらを共重合した。MOF単独の層間接着力は、測定することが困難であり、というのは、フィルムは、典型的には、1つの界面に沿ってテストストリップの幅および長さを横切って劈開しないからである。代わりに、いくつかの界面が伴われ、層はこれらの領域の境界において引裂かれる。したがって、カード剥離で維持することができる実際の剥離力は、より関連する。coPEN/PETGの場合、15から20N/cmの剥離力を、テストされた積層体サンプル上で確実に得ることができ、MOFが10メガパスカル(MPa)未満の硬さの厚さ1ミルの接着剤でPVCに結合されたとき、MOF破壊の発生が非常に低く−約40のテストストリップにおいてMOF破壊が観察されなかった。一方、15〜20N/cmの同じ剥離力で、カード積層体内のPET/coPMMAの破壊の低発生をもたらすことができる接着剤が見出されなかった。
【0027】
テストされた接着剤厚さ値は、約12から50μm(2分の1から2ミル)であった。
【0028】
MOFへの接着剤結合強度は、接着剤の選択によって、およびMOF上のプライマーコーティングの選択によって調整することができる。テストされた接着剤を、以下の実施例に記載する。
【0029】
さまざまな接着剤のデュロメータをナノインデンテーション方法で測定した。この方法は、接着剤層の弾性率および硬さを、カードへの積層前にその主面で、またはカードが積層された後にその端縁で測定することができるので、有用である。ナノインデンテーション方法のさらなる詳細を以下で提供する。
【0030】
MOFスキン層の引張強度は、MOF層間接着力が低い構造において重要になり得る。いくつかのMOFスキン厚さ値および材料を、以下の実施例でテストし、そのようなスキン層は、coPEN/PETGフィルムの場合coPENから構成するか、PET/coPMMAフィルムの場合PETから構成した。
【0031】
MOF構造および接着剤タイプの、カード積層体の剥離強度に及ぼす影響を、次の実施例に提示された一連のフィルムおよびカード構造から評価した。実施例積層体のすべてを、約0.75mmの厚さに製造し、接着剤およびMOF厚さ値の変化をさまざまなPVCシート厚さ値で補償した。行われた剥離テストは、幅約2.54cmおよび長さ約12cmのストリップに対する180度剥離テストであった。図4に示されたタブなどのタブを使用して、剥離を開始した。
【0032】
調査された接着剤は、上述されたトランシルラップKRTY 1−1−1;イリノイ州ウッドストックのクエスト・フィルムズ・インコーポレイテッド(Quest Films Inc. of Woodstock, Illinois)によって販売されるクエスト(Quest)PVC4(3/1)A;トランシルラップ3/1および2/1 ZZ;マサチューセッツ州シャーリーのビーミス・アソシエーツ・インコーポレイテッド(Bemis Associates Inc. of Shirley, Massachusetts)によって販売されるビーミス(Bemis)5214;ならびにPETG、テネシー州キングズポートのイーストマンケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Company, Kingsport, Tennessee)によってイースター(Eastar)6763として販売されるコポリエステルであった。いくつかの接着剤に関する3/1および2/1の命名は、実際の接着剤材料のミル単位の厚さに対する、3または2ミルの厚さのポリマーバッキング材料を指す。その点に関して、「接着剤」とここで呼ばれる材料は、実際には、ポリマー材料の層と、接着剤の層とを含む複合結合層であることができる。特定の実施例でプライマーを使用する場合、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニー(3M Company, of St. Paul, MN)によって製造された層38a、38bと関連して上述されたプライマーを使用した。
【実施例】
【0033】
実施例1
【0034】
【表1】

【0035】
これは実際には比較例であり、というのは、それは、現在販売されているIRフィルタ積層体を使用するカード構造を表すからである。剥離テスト結果は、典型的には15から20N/cmであるが、たいてい、ストリップの端部の前のMOF破壊をもたらす。
【0036】
実施例2
【0037】
【表2】

【0038】
実施例1と同じMOF構造、しかし、接着剤は、より薄く、わずかにより柔らかい。剥離力は12から17N/cmであり、剥離力が実施例1のKRTY接着剤の場合より小さいが、MOFの時々の破壊が観察された。
【0039】
実施例3
【0040】
【表3】

【0041】
再び、実施例1と同じMOF構造。しかし、この実施例の接着剤は、実施例1および2の接着剤の2倍を超えて硬い。結果として、平均剥離力がわずか9N/cmであったが、10の剥離のうちの5が、破壊されたフィルムをもたらした。
【0042】
実施例4
【0043】
【表4】

【0044】
MOFは、実施例1〜3と同じポリマー材料を使用したが、次のように、異なった構造に配列した。交互の微小層の2つのパケットがあり、各パケットは223の微小層を有し、パケットは厚さが1.3倍だけ異なり、各パケットは、延伸PETの厚さ2ミクロンの境界層(まん中で溶融して、パケット間の4ミクロンの分離を形成する)と境界を接する。したがって、延伸PETの外側境界層は、スキン層として特徴づけることができる。MOFスキン層の、剥離テストに及ぼす影響を、この実施例で示す。このPET/coPMMAの多層光学フィルムを、通常の厚いPETスキン層の代わりにPETGの外層とともに共押出した。アモルファスPETG層は、延伸PETと比較して低い引張強度を有する。結果として、剥離テストは、約1cmの短い剥離後、破壊されたMOFをもたらした。PET/coPMMAおよび12ミクロンの延伸PETスキンで製造されたMOF(実施例1を参照のこと)は、約3cmを超える平均剥離長さを示した。この差は、実施例1のより厚いPETスキン層のより高い引張強度に帰せられる。
【0045】
実施例5
【0046】
【表5】

【0047】
この実施例に使用されたMOFは、実施例4と同じ層構造を有し、PETをcoPENと取替え、coPMMAをPETGと取替えた。保護境界層はPETGであり、外側スキン層もPETGであり、歪み硬化スキンのないMOF構造をもたらした。PETGの外側スキン層は、このフィルムのプライマー層とみなされる。しかし、実施例4と対照的に、歪み硬化スキンのないこのMOFは、剥離テストを、柔らかい接着剤を有するPVCの積層体内で耐えることができる。PETおよびcoPMMAと比較して優れたcoPENおよびPETGの層間接着力は、カードのはるかに高い層間剥離剥離強度(delamination peel strength)をもたらす。平均剥離力は19N/cmであった。
【0048】
coPEN/PETG組合せを使用するこのおよび後のMOFフィルムにおいて、PETG層は、n=n=n=1.564を有し、coPEN層は、面内屈折率n=n=1.73と、面外屈折率n=1.51とを有する。
【0049】
実施例6
【0050】
【表6】

【0051】
この実施例は、実施例5と同じMOF構造を使用する。薄く非常に硬い接着剤を有するカード構造の例として、coPEN/PETGの多層赤外反射フィルムサンプルを、PETGの外側スキン層とともに構成した。PETGおよび同様のアモルファスポリエステルは、典型的にはカード製造に使用される熱および圧力下で、PVCに積極的に結合する。この構造では、PVCの厚いカードストックを、付加的な接着剤層なしで、IR遮断光学フィルムに直接結合することができる。しかし、PETGは、トランシルラップKRTY接着剤またはZZ接着剤よりはるかに硬い。標準剥離テストにかけられると、MOFはすぐに破壊する。
【0052】
実施例7
【0053】
【表7】

【0054】
この実施例のMOFは、次の構造で、実施例5〜6と同じポリマー材料、coPENおよびPETGを使用した。交互の微小層の2つのパケットがあり、各パケットは223の微小層を有し、パケットは厚さが1.16倍だけ異なり、各パケットは、PETGの厚さ2ミクロンの境界層(真ん中で溶融して、パケット間の4ミクロンの分離を形成する)と境界を接する。延伸coPENの12ミクロンの層をスキン層として共押出した。このMOF、およびカード積層体内のMOFの光学透過スペクトルは、図7に曲線82として示されている。10のストリップ上の剥離力平均は22.4N/cmであり、MOFの破壊はなかった。
【0055】
実施例8
【0056】
【表8】

【0057】
この実施例は、実施例7と同じMOFの構造およびポリマー材料を使用したが、測定可能により柔らかい接着剤を伴った。この2/1構造内のZZ接着剤層は、3/1構造と同じでなければならないが、接着剤硬さ値のロットからロットへの変化があり得る。10ストリップ上の剥離力平均は25.6Nt/cmであり、これは、実施例7の剥離力平均より高い。これは、この接着剤のより低い測定硬さ値と一致する。再び、これらの剥離テスト上で破壊が生じなかった。
【0058】
実施例9
【0059】
【表9】

【0060】
この実施例のMOFは、実施例5および6と同じ構造および材料を使用した。実施例6の接着剤ほど硬くないが、この接着剤の硬さ(33MPa)は、この接着剤の、下塗り層との優れた結合と組合されて、すべてテストストリップ上のcoPEN/PETG MOFの即時の破壊をもたらした。この接着剤の、MOFへの結合を、プライマー層のタイプの変更によってより低い値に調整した場合、ここで使用されるMOFの破壊を低減するかなくすことができる。
【0061】
実施例10
【0062】
【表10】

【0063】
この実施例のMOFは、実施例7および8と同じ構造および材料を使用した。ビーミス5214接着剤より幾分より柔らかい、クエスト3/1接着剤で製造されたカード積層体は、剥離テストの間、いかなるcoPEN/PETG MOF破壊も有さない。これは、この同じ接着剤で製造された10のPET/coPMMA積層体のうちの5が剥離テストの間に破壊した実施例3と対照的である。平均剥離力は9N/cmであり、これは、MOF上の同じプライマー層を使用した実施例3で測定された剥離力と一致する。
【0064】
実施例11
【0065】
【表11】

【0066】
実施例11は、トランシルラップ製品の1つの側の接着剤層を省き、MOFを含む、実施例1の材料のすべてで構成した。1ミルのPETの1つの側のみがKRTY 1−1−1製品と同じKRTY接着剤でコーティングされた特別に構成された接着剤層を使用して、PET/coPMMA製品を積層してPVCカード積層体にした。1−1構造のKRTYコーティング側を、MOFに面して配置し、PETのコーティングされていない側はPVCに面していた。これは、商業的に使用可能なカードを製造せず、というのは、PVCはPETに十分に結合しなかったからであったが、それにもかかわらず、実施例1より50%少ない接着剤を有する積層体を、ヘイズ、透過率、およびクラリティをテストするために製造することができた。積層体を、他の実施例のすべてと同様に、15分間285°Fで100PSIでプレスした。以下のヘイズおよびクラリティ表に示されているように、ヘイズは9%未満に低減され、クラリティは97に増加された。実施例1のKRTY 1−1−1積層体の剥離テストが、MOFの破壊をもたらすので、2/1または3/1 ZZ接着剤のようにPVCとともに製造することができるこの1/1構造などのより薄い接着剤は、より頑丈でないPET/coPMMAベースのIR遮断カードをもたらすだけである。しかし、実施例7および8の結果は、適切な材料セットに変えることによって、剥離テストで破壊せず、かつ優れた耐久性およびより小さいヘイズを有するカードをもたらすMOFベースのカードを製造することができることを明らかに示す。より薄い接着剤は、また、カード打抜きにおいてより少ないエンジェルヘアをもたらすことが予期される。
【0067】
さらなる積層体サンプルを、実施例5および6のものと同様であるが、PETGがPMMAと取替えられた多層光学フィルムを使用して、構成した。MOF内の保護境界層はcoPENであり、スキン層は、またcoPENであり、厚さ12ミクロンであった。接着剤およびプライマーは、実施例1と同じであった。剥離テストの間、サンプルはすぐに破壊した。意味のある測定値を得ることができなかった。
【0068】
ヘイズ値、透過率値、およびクラリティ値を、BYKガードナー(BYK Gardner)からのヘイズ−ガード・プラス(Haze−gard Plus)器械を使用して、接着剤のすべてで製造された厚さ0.75mmのカード積層体上で得た。この製造業者は、クラリティパラメータを「シースルー性質」の尺度と説明する。
【0069】
【表12】

【0070】
硬さおよび弾性率の表概要を以下で提示する。一般的な(generic)ポリマー、フルオレル(fluorel)も、測定方法の正確さに関するチェックとしてx断面でテストした。公称値は約21MPaである。
【0071】
【表13】

【0072】
要約すれば、より薄い接着剤層の使用、およびさまざまな接着剤から選択するためのオプションが、向上されたクラリティおよび低減された製造問題を有するカードを提供することができる。MOF構造の適切な選択は、層間剥離強度、および標準屈曲テストに合格する能力などの受入れられる物理的特性を維持することができる。接着剤をより薄くすることの影響を打ち消すために、MOFスキン層をより高い引張強度で製造することができるか、MOF層の層間接着力を増加させることができる。既存のIRフィルム積層体製品のスキン層は、現在、総フィルム厚さの約30%(15%各側)である。それらの厚さの2倍以上の著しい増加が、達成することが困難であり、高スキン厚さにおけるスキン厚さ/フィルム破断関係の線形性は依然として知られていない。この理由のため、PET/アクリル系より高い凝集力を有するポリマー材料組合せを調査した。coPEN/PETGのポリマー対を、PET/アクリル系と比較して向上された層間接着力を有する光学多層フィルム構造での使用のために特定した。
【0073】
上述された剥離力は、接着剤層と多層光学フィルムの外面またはスキン層との間の結合に関連する。多層光学フィルムの層間接着力が低すぎる場合、スキン層上の力は、それが光学層の残りから離れることを引起し、光学フィルムの破壊をもたらす。光学フィルム層自体の層間接着力値を測定するために、フィルムを、両側で、たとえばトランシルラップ3/1zzまたは3/1 KRTY接着剤フィルムなどの別のフィルムに積層することができ、PVC層は外方に面する。積層しストリップにカットした後、ストリップを、カットが光学フィルム層内に入るようにかみそりで切れ目をつけることができる。次に、ストリップを、パチンと折れるまでカットに沿って曲げることができ、光学フィルムの層の間のある境界に沿って層間剥離を生じさせる。次に、90度または180度剥離力テストを、結果として生じるサンプルで行うことができる。
【0074】
coPEN/PETG多層フィルムを製造する際に、高層間接着力を確実にするように注意しなければならない。coPENおよびPETGが、両方ともコポリエステルである点で同様の材料であり、押出キャストウェブが非常に高い層間接着力を有するが、延伸条件は、完成したフィルムも層間の同様の接着力を有することを確実にするように、適切に制御しなければならない。延伸プロセスは、典型的には、各面内方向において約3から1以上の伸張比を伴う。これは、隣接した層の層間混合ゾーンを含むすべての層厚さの約10倍以上の低減をもたらす。高屈折率層は、また、延伸時に結晶化するように設計され、これは、また、1つの層内の材料の凝集強度に影響を及ぼすことがある。したがって、フィルムを延伸するプロセスは、キャストウェブ層間接着力と比較して、延伸多層フィルムの層間剥離に抵抗する凝集力の低減をもたらすことがある。
【0075】
本発明者らは、伸張後のより高い熱硬化(アニール)温度およびより長い熱硬化時間で、延伸coPEN/コポリエステル多層フィルムの層間接着力が向上することを見出した。伸張後の熱硬化温度は、フィルムが、テンター内で溶融するか、テンターを出た後取扱うには脆性すぎるようになるまで、増加させることができる。テンター内のPET、PEN、またはいずれかのcoPENの典型的な熱硬化ゾーン制御温度は、約230℃から245℃である。熱硬化なし、またはこの範囲よりはるかに低い熱硬化が、伸張温度によって、低減された多層フィルム凝集力をもたらすことがある。
【0076】
要約すれば、より高い熱硬化温度および増加された熱硬化時間が、coPEN/PETGフィルム層間接着力を向上させることが見出され、時間および温度限界は、フィルム均一性、および熱収縮などの機械的特性を観察することによって実験的に定められた。
【0077】
延伸フィルムは、典型的には、それらのガラス転移値より高く再加熱されると収縮する。収縮値は、典型的には、より高い熱硬化温度およびより長い熱硬化時間によって低減される。これは、たとえば厚いPVC層などのカード材料が、光学フィルムより高い収縮値を有する場合、カード積層における問題を引起すことがある。次に、光学フィルムは、積層体全体が横寸法において収縮するとき、しわが寄ることがある。そのような収縮問題は、典型的には、加熱速度、プレス温度および圧力、ならびに冷却速度、圧力、および温度などのカード処理パラメータの変化によって解決することができる。光学フィルムの収縮率により厳密に一致するPVCグレードまたは他のシート材料の選択も、フィルムがカード製造の間しわが寄る傾向を低減することができる。
【0078】
接着剤選択
低ヘイズを示す非常にさまざまな柔らかいクリアな接着剤が存在するが、100から200psiの圧力下で285°F(141℃)などの高温で使用することができ、かつPVCおよびポリエステルの両方に十分に結合するそのような接着剤の数はかなり小さい。上述された柔らかい接着剤は、あるヘイズを示し、したがって、高クラリティおよび良好なカード打抜き特性を有するカードを構成するために、最小厚さで使用しなければならない。図6に示されているような、トランシルラップ3/1zz、2/1 zz、またはクエスト3/1接着剤などの両側構造が使用される場合、接着剤層を最小にすることができる。その図において、IRフィルタ積層体70が、薄い外側PVC層72a、72b(厚さ5ミル未満、典型的には1から2ミル)と、接着剤層76a、76bと、プライマー層78a、78bと、MOF74とを含む。最小厚さ要件は、良好な層凝集力を有するMOFの必要をもたらす。
【0079】
代替材料
MOFを、PVC以外の材料から製造されたカードに組入れることができる。接着剤の要件は、依然として、上述された通りである。比較的厚い(約10ミクロンを超える)柔らかい(30Mpa未満)接着剤を、依然として、上述されたcoPEN/PETG実施例などの、比較的高い層間凝集力を有するMOFと組合せて使用しなければならない。そのようなカードに有用な一般的な材料は、PETGおよびポリプロピレンである。上の実施例から、MOFに結合するためのここで説明される同じ接着剤が、また、PETGに結合することが示される。ポリプロピレンの場合、コロナ放電およびプライマー層などの適切な表面処理が必要であろう。PVC含有量を低減するために、延伸ポリエステル層もカードに組入れることができ、厚いカードストック層への結合は、たとえばスルホポリエステルなどの適切な下塗り層、または共押出PETG層によって達成される。さらに、図6のIRフィルタ積層体は、PVCのない材料から完全に構成することができるが、次に、カード製造業者の要求または要件によって、PVCまたは非PVCカードストックとともに使用することができる。
【0080】
選択された用語の用語解説
本出願の目的のための「カード」は、個人の使用のために十分に小さい、実質的に平坦な薄い剛性物品を意味する。例としては、金融取引カード(クレジットカード、デビットカード、およびスマートカードを含む)、識別カード、およびヘルスカードが挙げられるが、これらに限定されない。
本出願の目的のための「赤外」または「IR」は、波長が約700nm以上である電磁放射線を指す。これは、当然、約700nmから約2500nmの近赤外波長を含むが、これらに限定されない。
本出願の目的のための「多層光学フィルム」(または「MOF」)は、建設的干渉によって電磁放射線を反射する層のスタックを含むフィルム意味する。例示的な多層光学フィルムは、製造、取扱い、および調整可能性(tailorability)の容易さのために、組成物中完全にポリマーであることができる。コレステリック反射偏光子および鏡も、本出願の目的のための多層光学フィルムであるとみなされる。
本出願の目的のための「反射帯域」は、比較的低い反射率の領域といずれかの側で境界を接する比較的高い反射率のスペクトル領域を意味する。
本出願の目的のための「可視光」は、波長が約400nmから約700nmの範囲内である電磁放射線を意味する。
本出願の目的のための「可視光透過カード」または「VLTカード」は、可視光の少なくとも一部が透過される少なくとも1つの領域を有するカードを意味し、この領域は、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、またはさらには80%の、400から700nmの範囲にわたる平均透過率(カードを通って前方向に散乱されたすべての光を集めるために積分球で測定される)を有する。「透明なカード」のこの定義が、また、実質的な量のヘイズを有することができる(したがって、半透明であることができる)カード、および、染料もしくは顔料を組入れること、または多層光学フィルムの反射帯域の適切な配置などによって、色付けされるかそうでなければ着色されたカードを網羅することに留意されたい。
本出願の目的のための、ここで報告されたさまざまな接着剤の「弾性率」および「硬さ」は、以下で説明されるナノインデンテーション方法によって測定されたそれらの特性を意味する。マイクロプローブの使用を伴うこの方法では、カード層の弾性率および硬さを、積層前にその自由表面上で、またはカード積層体の端縁上で測定することができる。
【0081】
背景/手順−テスト前、サンプルを直径3/4インチのアルミニウムシリンダ上に装着し、これは、ナノ(Nano)DCM並進ステージの取付具として役立つ。(ミネソタ州ミネアポリス、またはドイツ、ベルリンのMTSナノ・インスツルメンツ(MTS Nano Instruments, Minneapolis, MN or Berlin Germany)からのナノ・インデンタ(Nano Indenter)XP)。すべての実験について、ダイヤモンド・ベルコビッチ(Berkovich)・プローブを使用する。公称荷重速度を10nm/sに設定し、空間ドリフト設定点を0.3nm/s最大に設定する。1500nmの深さまでの0.05/sにおける一定歪み速度実験を用いて、受取られたままのフィルムを「上から下(top down)」モードでテストする。切断されたサンプルを500nmの深さまでテストする。特徴づけられるべき領域を、400倍の倍率でビデオスクリーンを通して見られるときに上から下に見られるように突きとめる。テスト領域を、XPの400倍のビデオ倍率で局所的に選択して、テストされた領域が、所望のサンプル材料を代表する、すなわち、空隙、含有物、または砕片がないことを確実にする。さらに、テスト圧痕が溶融石英標準に作られる反復プロセスによるテスト前、顕微鏡光学軸−インデンタ軸整列をチェックし校正し、誤り訂正がXPのソフトウェアによって行われる。
【0082】
ナノインデンテーション測定−サンプル表面を表面探索機能によって突きとめ、プローブは表面に近づき、表面に遭遇されると著しく変わる空気中のばね剛性がある。いったん表面に遭遇されると、プローブが表面をくぼませるとき荷重−変位データが獲得される。次に、このデータを、以下で説明される方法に基いて、硬さおよび弾性率材料特性に変形する。機械的特性を統計的に評価することができるように、実験をサンプルの異なった領域で繰返す。
【0083】
「弾性率」の測定−荷重−変位データから直接定められる弾性率は、複合弾性率、すなわち、インデンタ−サンプル機械システムの弾性率である。これらの荷重−変位圧痕実験の複合弾性率は、下記から定めることができ、
【数1】

ここで、
「S」は、MTSナノ・インスツルメント(MTS Nano Instrument)の連続剛性方法によって定められる接触剛性であり、周期強制関数
【数2】

を、サンプル−インデンタ機械システムの係数、すなわち、強制関数に対する変位応答の同相および異相成分に関連させる微分方程式を解くことによって、同相ばね定数k、(したがって、剛性−したがって、接触領域)、および異相減衰係数bをもたらす。これらのテストのデフォルト励起周波数は75Hzである。
「A」は、接触の面積(m2)であり、圧痕が圧痕の間のインデンタの形状を複製すると想定して、インデンタジオメトリを、解析幾何学によってモデル化し、それにより、射影面積、A=h2+高次項、ここで、hは変位深さであり、高次項は実験的に測定する。
「β」=ベルコビッチ・インデンタの場合1.034
「F」は複合弾性率[Gpa]である
次に、サンプル材料の弾性率(E)を、下記から得、
1/F=(1−u2)/K+(1−v2)/E
ここで、
「u」は、ダイヤモンドインデンタのポアソン比=0.07であり
「K」は、ダイヤモンドインデンタの弾性率=1141Gpaであり
「v」は、サンプルのポアソン比である(ここで想定をしなければならない−これらのサンプルの場合約0.4)
「硬さ」−硬さは、標本の塑性流動の開始の、ギガまたはメガパスカルで表現されるしきい値接触応力と定義する。それは、下記として表現され、
H=P/A
ここで、
「H」は、硬さ[Gpa]であり、
「P」は、塑性流動に必要な荷重であり、
「A」は、塑性接触面積である。
【0084】
本発明のさまざまな修正および変更が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。また、本発明は、ここに記載された例示的な実施形態に限定されないことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が少なくとも5ミル(125μm)の厚さを有する第1および第2のポリマー層と、
前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との間に配置された多層光学フィルムであって、範囲800〜1000nmを実質的にカバーする垂直入射における反射帯域を有する多層光学フィルムと、
前記多層光学フィルムと前記第1および第2のポリマー層との間の複数の接着剤層とを含む可視光透過カードであって、
前記カードが12%以下のヘイズを有する、可視光透過カード。
【請求項2】
前記カードが、8%以下の、800〜1000nmでの平均透過率を有する、請求項1に記載のカード。
【請求項3】
前記カードが、5%以下の、800〜1000nmでの平均透過率を有する、請求項2に記載のカード。
【請求項4】
前記カードが、400〜700nmでの少なくとも70%の平均透過率を有する、請求項1に記載のカード。
【請求項5】
前記複数の接着剤層が、前記多層光学フィルムとそれぞれ前記第1および第2のポリマー層との間に配置された第1および第2の接着剤層から本質的になる、請求項1に記載のカード。
【請求項6】
前記第1および第2の接着剤層が、合わせて、前記カードの約3ミル以下の厚さを占める、請求項4に記載のカード。
【請求項7】
前記複数の接着剤層が、直接または薄いプライマー層を介して、前記多層光学フィルムの主面と接触する、請求項1に記載のカード。
【請求項8】
前記カードがポリ塩化ビニル(PVC)を実質的に含まない、請求項1に記載のカード。
【請求項9】
各々が少なくとも5ミル(125μm)の厚さを有する第1および第2のポリマー層と、
前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との間に配置された多層光学フィルムであって、所望のスペクトル領域をカバーする垂直入射における反射帯域を有する多層光学フィルムと、
前記多層光学フィルムと前記第1および第2のポリマー層との間の複数の接着剤層とを含むカードであって、
前記多層光学フィルムが、coPENおよびコポリエステルの交互の層を含む、カード。
【請求項10】
前記コポリエステルがPETGを含む、請求項8に記載のカード。
【請求項11】
前記接着剤層が、少なくとも約0.5ミル(13μm)の厚さであり、かつ硬さが約30MPa未満である、請求項8に記載のカード。
【請求項12】
前記カードがポリ塩化ビニル(PVC)を実質的に含まない、請求項8に記載のカード。
【請求項13】
前記カードが400〜700nmでの少なくとも70%の平均透過率を有する、請求項8に記載のカード。
【請求項14】
前記カードが12%以下のヘイズを有する、請求項8に記載のカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−30599(P2012−30599A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−222939(P2011−222939)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【分割の表示】特願2007−527378(P2007−527378)の分割
【原出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】