説明

多層光学フィルム製造方法

【課題】同時押出しポリマー多層光学フィルムを製造する方法および装置を提供する。
【解決手段】多層光学フィルムを製造するための供給ブロックであって、(a)少なくとも第1流路32および第2流路34を含む勾配プレート30であって、該流路の少なくとも一方が、該流路に沿って第1部分から第2部分まで変化する断面領域を有する勾配プレート30と、(b)該第1流路32と連通する第1の複数の導管42と、該第2流路34と連通する第2の複数の導管44とを有する供給管プレート40であって、各々の導管が、該導管自体の個々のスロットダイ56に供給し、第1端部と第2端部とを有し、該導管の該第1端部が該流路と連通し、該導管の該第2端部が該スロットダイと連通する供給管プレートと、を含む供給ブロック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ポリマー多層フィルムを製造する方法に関し、特に、屈折率が異なるポリマー層が1つおきになっており、少なくとも1つのポリマーが、伸長されたときに大きい複屈折を生じ、その複屈折を維持することができる同時押出し多層光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
本発明は、ポリマー多層フィルムの製造方法に関し、特に、屈折率が異なるポリマー層が1つおきになっている同時押出し多層光学フィルムに関する。特定の層厚さを有する各種材料の層が規則正しく配列された構成を有する多層フィルム構造を製造するため、様々な方法が工夫されてきた。こうした構造の例は、屈折率および層厚さが異なる材料の連続層の相互作用により光学的または視覚的効果を生じる構造である。
【0003】
多層フィルムは、たとえば、Schrenkに付与された米国特許第3,773,882号(特許文献1)および第3,884,606号(特許文献2)に記載されているように、複合同時押出し供給ブロックのみを使用して従来製造されてきたか、または製造することが提案されており、Schrenkに付与された米国特許第3,687,589号(特許文献3)に記載されているように、装置を変更して個々の層厚さを調節することを可能にするように提案されてきた。こうして変更された供給ブロックを使用すると、所望の層厚さ勾配または層厚さ分布を有する多層フィルムを製造することができる。こうした装置を製造するのは非常に難しくコストも高く、実際上、層の数が合計約300以下であるフィルムの製造に限られている。さらに、こうした装置は、操作が複雑であり、あるフィルム構成の製造から他のフィルム構成の製造に切り換えるのは容易ではない。
【0004】
多層フィルムは、たとえばSchrenk等に付与された米国特許第3,565,985号(特許文献4)および第3,759,647号(特許文献5)に記載されているように、供給ブロックと1つまたは複数の増倍器または界面生成器(ISG)との直列の結合により製造されてきた。供給ブロックと界面生成器とのこうした組合せは、供給ブロックとISGとの組合わせにより融通性または適合性が高まり、製造コストが安くなるため、多数の層を有するフィルムの製造によりさらに一般的に適用される。1つまたは複数の材料の層の一方の主面から反対側の主面までの厚さが規定の層厚さ勾配である多層フィルムを製造するための改良されたISGは、Schrenk等に付与された米国特許第5,094,788号(特許文献6)および第5,094,793号(特許文献7)に記載されている。Schrenkの特許には、個々に区別できる重なり合う層の第1の流れが複数の分岐流に分割され、この流れが再度方向付けられるかまたは再度配置されて、個々に対称に膨張および収縮し、流れに対する抵抗、ひいては各々の分岐流の流量が個々に調節され、分岐流が重なり合う関係で再び結合して、規定の勾配で分布する個々に区別できるように重なり合う、より多数の層を有する第2の流れを形成する方法および装置が記載されている。第2の流れは、対称に膨張および収縮する。この方法で製造された多層フィルムは、厚さが非常に変化しやすく、縦すじや色が不均一な斑点が生じることは、こうしたフィルムの特性である。さらに、こうしたフィルムの反射率は、フィルムに衝突する光の入射角に著しく依存する。今までの材料および方法を使って製造されたフィルムは、反射率の均一性を要する用途には概して実際的ではない。
【0005】
上記の特許および特許出願のいくつかには、層厚さ勾配を多層ポリマー本体に導入する点に関する教示が記載されている。たとえば、Schrenk等に付与された米国特許第3,711,176号(特許文献8)には、1つまたは複数の材料層の厚さの勾配またはその他の分布をフィルムの厚さから決めると記載されている。勾配を生じる方法としては、米国特許第3,195,865号(特許文献9)、第3,182,965号(特許文献10)および第3,051,452号(特許文献11)に記載されているように、フィルムをエンボス加工する、最終的な伸長時にフィルムを選択的に冷却する、および回転ダイを使用して層を形成するといった方法が挙げられる。これらの技術では、層厚さ勾配を既に押し出したフィルムに導入しようと試みられたが、勾配を正確に生成するかまたは調整することはできなかった。Schrenk等に付与された米国特許第3,687,589号(特許文献12)には、回転または往復剪応力断生成手段を使用して、ポリマーの流れが再分割される同時押出し供給ブロックの供給スロットに入る材料の量を変える方法が示唆されている。こうした装置を使用して容積流量を正確に制御するのは難しい。Schrenk等は、米国特許第5,094,788号(特許文献13)で、同時押出しダイから下流のISGに可変羽根を使用して、層厚さ勾配を多層ポリマー溶融液の流れに導入する方法を教示している。Lewis等に付与された米国特許第5,389,324号(特許文献14)には、分岐流中のポリマー材料の個々の流量を調整して、各々の分岐流を通して流れる材料の量に差を与える方法が記載されている。複合流を構成する分岐流中を流れるポリマー材料の量に差があるため、本体内の個々の層は厚さに勾配を有する。流量は、分岐流の少なくともいくつかに温度差を与えるか、ポリマー材料の粘度を変化させて、それによりこれらポリマーの流れを調整するか、または供給ブロック内で可塑化ポリマー材料が流れる通路または供給スロットの幾何学的形状を変更することにより調整される。こうして、分岐流の径路長さ、幅または高さを変更し、ポリマー流の流量を調節して、形成される層の厚さを調整することができる。
【0006】
多層フィルムを形成するには、多層流は、供給ブロックまたは結合供給ブロック/ISGを出た後、一般に、層流が維持されて、押し出された生成物が、各々の層が隣接層の主面にほぼ平行な多層フィルムを形成するように構成された押出しダイ内に入る。こうした押出し装置は、Chisholm等に付与された米国特許第3,557,265号(特許文献15)に記載されている。微細層押出し技術に関連する1つの問題は、2種類以上のポリマーがダイを通って同時に押し出されるときに生じる可能性がある流れの不安定性だった。こうした不安定性によって、ポリマー層の界面に波打ちや歪みが生じ、極端な場合は、各々の層が混ざり合って個々の層の独自性が失われ、層の崩壊と呼ばれる状態が生じる。均一な層、つまり波打ち、歪みまたは混合がない層の重要性は、多層製品の光学的特性を使用する用途では最優先事項である。処理の際のわずかな不安定性によって層の1%程度のみの層崩壊が生じた場合でも、製品の反射率または外観が著しく損なわれる場合がある。高度に反射性の本体またはフィルムを形成するために、層界面の合計数が増やされ、同時押出し装置内における製品の層の数が増加するにつれて、個々の層の厚さが薄くなり、その結果比較的わずかな層の崩壊であっても、製品の光学的特性が著しく悪化する可能性が生じる。層崩壊の問題は、供給ブロック、増倍器または押出しダイの壁に隣接する個々の層の厚さが約10μm以下である多層本体に特に重大である。供給ブロックおよびISGを通る複数のポリマー層の流れは、一般に剪断応力および拡張流の両方を伴うが、押出しダイの外側の流れは剪断応力を含まない拡張流である。層崩壊は、剪断流が主である流路壁に非常に近い流路内部で発生し、薄い層厚さ、剪断応力、ポリマー層間の界面張力、ポリマー溶融液と流路壁との間の界面付着、およびこうした様々な要素の組合せによって影響を受ける。
【0007】
流れの不安定性を最小限にするためにいくつか可能性のある提案が行われたが、たとえば、ダイ壁に最も近い表皮層の厚さを増加する、温度を上昇させるかまたは比較的低粘度の樹脂に切り換えてダイに最も近い層の粘度を低下させる、全体の押出し速度を低下させる、またはダイ隙間を増加するなどの方法があった。Im等に付与された米国特許第4,540,623号(特許文献16)には、約1〜10mil(25.4〜254μm)台の犠牲的または一体の表皮層を使用して、処理を容易にし、表面の損傷を防ぐ方法が記載されている。こうした外側の表皮層は、多層フィルムを成形ダイから押し出す直前かまたは層増倍の直前に追加される。Ramanathan等に付与された米国特許第5,269,995号(特許文献17)には、熱可塑化押出し可能な熱可塑性材料の保護境界層(PBL)を使用して、層の不安定性を最小限にする方法が教示されている。これらの層は、多層本体の内部にあるか、および/または外面にあり、一般に、同時押出し多層ポリマー本体内の複数のポリマー層を形成および操作するときの層崩壊を防ぐのに役立つ。
【0008】
上記の説明は、概して多層フィルムに適用されるが、多層スタックを構成する材料の化学的、物理的または光学的特性に多くの場合は関係なく、材料の精選およびその後の処理ステップの適切な調整により、光学的または物理的特性が強化された多層フィルムを形成することができる。たとえばSchrenk等に付与された米国特許第5,486,949号(特許文献18)および第5,612,820号(特許文献19)には、干渉偏光子として有用な同時押出しポリマー多層光学フィルムの製造に複屈折ポリマーを使用することが記載されている。複屈折ポリマーは、Rogers等に付与された米国特許第4,525,413号(特許文献20)に記載されているように1軸または2軸伸長させて延伸してポリマーを分子レベルで延伸し、平面内屈折率の所望の一致または不一致を達成して、所望の偏光を反射または透過するようにすることができる。さらに、Jonza等に付与された米国特許第08/402,041号(特許文献21)には、干渉偏光子および鏡を製造するのに有用な複屈折材料を使用して、平面内屈折率と平面外屈折率との関係を調整し、垂直以外の角度における光学的特性が改善された同時押出しポリマー多層光学フィルムを形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,773,882号明細書
【特許文献2】米国特許第3,884,606号明細書
【特許文献3】米国特許第3,687,589号明細書
【特許文献4】米国特許第3,565,985号明細書
【特許文献5】米国特許第3,759,647号明細書
【特許文献6】米国特許第5,094,788号明細書
【特許文献7】米国特許第5,094,793号明細書
【特許文献8】米国特許第3,711,176号明細書
【特許文献9】米国特許第3,195,865号明細書
【特許文献10】米国特許第3,182,965号明細書
【特許文献11】米国特許第3,051,452号明細書
【特許文献12】米国特許第3,687,589号明細書
【特許文献13】米国特許第5,094,788号明細書
【特許文献14】米国特許第5,389,324号明細書
【特許文献15】米国特許第3,557,265号明細書
【特許文献16】米国特許第4,540,623号明細書
【特許文献17】米国特許第5,269,995号明細書
【特許文献18】米国特許第5,486,949号明細書
【特許文献19】米国特許第5,612,820号明細書
【特許文献20】米国特許第4,525,413号明細書
【特許文献21】米国特許出願第08/402,041号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ポリマー多層光学フィルムの製造に使用できる材料が最近開発され、光学フィルムに新たに使用されるようになったが、こうした材料は、層厚さおよび/または平面内屈折率と平面外屈折率との関係の調整を改善する必要があることが分かった。上記の方法は、使用可能な新しい樹脂の潜在的能力を利用することができず、必要な程度の多様性がなく、こうしたフィルムの多くを機械的作業で製造するのに必要な絶対層厚さ、層厚さ勾配、屈折率、配向および層間の付着の調整を行うことはできない。したがって、先行技術には、より多様性があり、製造工程のいくつかのステップの調整を強化して、同時押出しポリマー多層光学フィルムを製造する方法を改善する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の開示
本発明は、多層光学フィルムを製造する方法および装置に関する。
【0012】
簡潔にまとめると、本発明の多層光学フィルムの製造に有用な供給ブロックは、(a)少なくとも第1および第2流路を含む勾配プレートであって、少なくとも一方の流路が、流路に沿って第1部分から第2部分まで変化する横断面積を有する勾配プレートと、(b)第1流路に連通する第1の複数の導管と、第2流路と連通する第2の複数の導管とを有する供給管プレートであって、各々の導管が、導管自体の個々のスロットダイに供給し、第1端部と第2端部とを備え、導管の第1端部が流路と連通し、導管の第2端部がスロットダイと連通する供給管プレートとを含む。
【0013】
簡潔にまとめると、多層光学フィルムを製造する方法は、(a)樹脂の少なくとも第1および第2の流れを提供するステップと、(b)(i)第1および第2流路を含む勾配プレートであって、第1流路が、流路に沿って第1位置から第2位置まで変化する横断面積を領域を有する勾配プレートと、(ii)第1流路と連通する第1の複数の導管と、第2流路と連通する第2の複数の導管とを有する供給管プレートであって、各々の導管が、導管自体の個々のスロットダイに供給し、第1端部と第2端部とを備え、導管の第1端部が流路に連通し、導管の第2端部がスロットダイに連通する供給管プレートを含む供給ブロックを使用して、第1および第2の流れを複数の層に分割するステップと、(c)複合流を押出しダイに通して、各々の層が隣接層の主面にほぼ平行な多層ウェブを形成するステップと、(d)多層ウェブを流延ロール上に流延して、流延多層フィルムを形成するステップとを含む。
【0014】
簡潔にまとめると、表面組織付き多層光学フィルムを製造する方法は、(a)樹脂の少なくとも第1および第2の流れを形成するステップと、(b)第1の流れの層が第2の流れの層と交互配置されて複合流を形成するように、第1および第2の流れを複数の層に分割するステップと、(c)複合流を押出しダイに通して、各々の層が隣接層の主面にほぼ平行な多層ウェブを形成するステップと、(d)多層ウェブを流延ロール上に流延するステップと、(e)多層ウェブを微細エンボス加工ロールに接触させて、流延多層フィルムを形成するステップとを含む。
【0015】
多層光学フィルムを製造するもう1つの方法は、(a)樹脂の少なくとも第1の流れと第2の流れを形成するステップであって、樹脂の第1の流れがポリエチレンナフタレンのコポリマー(coPEN)であり、樹脂の第2の流れがポリメチルメタクリレート(PMMA)であるステップと、(b)第1の流れの層が第2の流れの層と交互配置されて複合流を形成するように、第1および第2の流れを複数の層に分割するステップと、(c)複合流をダイに通して同時に押し出し、各々の層が隣接層の第1主面にほぼ平行であり、coPENおよびPMMA樹脂が約260℃の溶融温度で同時に押し出され、coPEN樹脂の複屈折が、特定の圧伸比において、ホモポリマーPEN樹脂の複屈折に比べて約0.02単位以下である多層ウェブを形成するステップと、(d)多層ウェブを流延ロール上に流延して多層フィルムを形成するステップとを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ポリマー多層フィルムを製造する方法に関し、特に、屈折率が異なるポリマー層が1つおきになっており、少なくとも1つのポリマーが、伸長されたときに大きい複屈折を生じ、その複屈折を維持することができる同時押出し多層光学フィルムに関する。
【0017】
本発明は、本発明の様々な実施態様の以下の詳細な説明を添付の図面に関連して考慮するとより完全に理解できる。これらの図面は理想化されており、一定の比率で縮小したものではなく、単に具体的に示すことを意図しており、本発明を限定する意図はない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明により製造される多層光学フィルムを同時押出しするのに有用な一般的な工程を示す略図である。
【図2】本発明の多層光学フィルムを製造する工程に有用な装置の一部の略図である。
【図3】本発明の多層光学フィルムを製造する工程に有用な供給ブロックの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好適な実施態様の詳細な説明
工程の様々な問題は、本発明による高品質のポリマー多層光学フィルムおよびその他の光デバイスを製造する上で重要である。こうした光学フィルムとしては、干渉偏光子、鏡、着色フィルムおよびこれらの組合わせがあるが、これらだけに限らない。こうしたフィルムは、紫外スペクトル、可視スペクトルおよび赤外スペクトルの多様な部分上で光学的に有効である。特に重要なのは、本質的に複屈折である1つまたは複数の層を有する同時押出しポリマー多層光学フィルムである。各々の層の製造に使用する工程条件は、一部には(1)使用する特定の樹脂系および(2)最終的なフィルムに所望の光学的特性によって決まる。
【0020】
本発明の多層フィルムの製造に好ましい方法を図1に略図で示す。適切に異なる光学的特性を有するように選択した材料100および102は、これら材料の融解温度および/またはガラス転移温度を超えて加熱し、多層供給ブロック104に供給する。一般に、融解および最初の供給は、各々の材料用の押出機を使って行う。たとえば、材料100を押出機101に供給し、材料102を押出機103に供給することができる。供給ブロック104からは、多層流の流れ105が出て行く。層増倍器106は多層流の流れを分割してから方向を変えて、1つの流れを第2の流れの上に「積み重ね」て、押し出される層の数を増倍する。非対称な増倍器は、層厚さの偏差をスタック全体に導入する押出機とともに使用すると、多層フィルムが、光の可視スペクトルの所望部分に対応する層の対を有し、所望の層厚さ勾配を形成することができるように、層厚さ分布を広げることができる。必要なら、表皮層111用の樹脂108を表皮層供給ブロック110に供給することにより、表皮層111を多層光学フィルムに導入することができる。
【0021】
多層供給ブロックは、フィルム押出しダイ112に供給する。本発明の製造に有用な供給ブロックは、たとえば米国特許第3,773,882号(Schrenk)および第3,884,606号(Schrenk)に記載されている。一例として、押出し温度は約295℃、各材料の供給量は毎時約10〜150kgである。殆どの場合、表皮層111は、供給ブロックおよびダイを通るときに、フィルムの上面および下面を流れることが望ましい。これらの層は、壁付近に見られる大きい応力勾配を散逸させ、その結果、光層が比較的円滑に押し出される。各表皮層の代表的な押出し量は、毎時2〜50kg(全体の処理量の1〜40%)である。表皮材料は、光層の1つと同じ材料であるか、または異なる材料で良い。ダイを出る押出物は、一般に溶融液の形態である。
【0022】
押出物は、流延ホイール116上で冷却され、ピンニングワイヤ114を超えて回転する。ピンニングワイヤは、押出物を流延ホイールにピンで固定する。広範な角度で透明フィルムを形成するには、流延ホイールを低速で回転させてフィルムを比較的厚くして、反射帯域を比較的長い波長方向に移動させると良い。フィルムは、所望の光学的および機械的特性により決定される比率で伸長させて延伸する。長手方向の伸長は、プルロール118により行われる。横断方向の伸長は、テンターオーブン120内で行うことができる。必要なら、フィルムは、同時に2軸延伸することができる。伸長比は約3〜4対1であることが好ましいが、小さくて2対1、大きくて6対1の伸長比も特定のフィルムには適している。伸長温度は、使用する複屈折ポリマーの種類によって決まるが、ポリマーのガラス転移温度より2℃〜33℃(5°F〜60°F)高い温度も適切な範囲である。フィルムは、一般に、テンターオーブンの最後の2つの領域122内で熱硬化し、フィルムに最大結晶度を与え、フィルムの収縮率を低下させる。テンター内でフィルムが破損しない状態でできるだけ高い熱硬化温度を使用すると、加熱エンボス加工ステップでの収縮が減少する。テンターレールの幅を約1〜4%減少させても、フィルムの収縮を減少させるのに役立つ。フィルムを熱硬化しない場合、熱収縮特性は最大になり、安全保護包装用途によっては望ましい。フィルムは、巻取ロール124上に収集することができる。
【0023】
用途によっては、2種類以上のポリマーを多層フィルムの光層に使用することが望ましい。この場合、追加の樹脂の流れは、樹脂の流れ100および102に類似の手段を使用して供給することができる。供給ブロック104に類似の2種類以上の層を分配するのに適する供給ブロックを使用することができる。
【0024】
図2は、本発明の実施に有用な代表的な構成の一部分を示す略図である。供給ブロック200は、4つの部分、つまり勾配プレート202と、供給管プレート204と、任意のスロットプレート206と、任意の圧縮部208とを有する。スロットプレートは、スロットダイ(図示しない)の一部である複数の個々のスロットを収容する。あるいは、スロットは、供給管プレートの一部でも良い。圧縮部は、一般に供給ブロック内に位置するが、必ずしもここに位置しなくても良い。供給ブロックに隣接して、保護境界層の導入に有用なユニット210が位置する。増倍器212および214を図示するが、本発明の範囲には、増倍器をまったく使用しないかまたは少なくとも1つの増倍器を使用して、多層光学フィルム内の層の数を増やすことも含まれれる。ユニット216は、必要なら、表皮層の導入に有用である。フィルム流延ダイ218は、多層フィルムの形成を開始する。流延ダイを出る押出物は、流延ホイール220に接触することが可能である。流延ホイールは、一般に、押出物を急冷してフィルムを形成するように冷却される。本発明の多層フィルムの圧伸、延伸および熱硬化など、追加の処理も行うことができる。
【0025】
上記の説明は、本発明の範囲内に含まれる方法および装置の概要を示すことを意図している。しかし、その意図は、説明された特定の実施態様に本発明を限定することではなく、添付の請求の範囲に規定される本発明の精神および範囲内に入るすべての変形、等価なものおよび代案を含むことである。
【0026】
材料の選択
本発明の使用に適する様々なポリマー材料は、同時押出し多層光学フィルムの製造における使用に関して既に教示されている。たとえば、Schrenk等に付与された米国特許第4,937,134号、第5,103,337号、第5,1225,448,404号、第5,540,978号および第5,568,316号、並びにWheatleyおよびSchrenkに付与された第5,122,905号、第5,122,906号および第5,126,880号に列挙して説明されているポリマー材料は、本発明による多層光学フィルムの製造に有用である。特に重要なのは、Schrenk等に付与された第5,486,949号および第5,612,820号、米国特許出願第08/402,041号および第09/006,601号に記載されているような複屈折ポリマーである。フィルムを製造するのに好ましい材料については、本発明の多層光学フィルムを製造するために満たさなければならない条件がいくつかある。第1に、これらのフィルムは、区別できる少なくとも2種類のポリマーから構成しなければならない。ポリマーの数に制限はなく、特定のフィルムに3種類以上のポリマーを使用すると有利である。第2に、2種類の必要なポリマーの少なくとも一方は、一般に「第1ポリマー」と呼ばれ、絶対値が大きい応力光係数を有することが好ましい。つまり、第1ポリマーは、伸長時に大きい複屈折を示すことが好ましい。多層フィルムの用途に応じて、複屈折は、フィルム平面内の2つの直交方向の間、1つまたは複数の平面内方向の間およびフィルム平面に垂直な方向、またはこれらの組合わせで生じる。等方性屈折率が広く分岐される特別な場合、第1ポリマー内の大きい複屈折を優先することは緩和されるが、複屈折はなお一般的に望ましい。こうした特別な場合は、フィルムを2つの直交する平面内方向に圧伸する2軸工程を使用して形成される鏡フィルムおよび偏光子フィルム用ポリマーを選択するときに生じる。第3に、第1ポリマーは、所望の光学的特性が最終的なフィルムに付与されるように、圧伸後に複屈折を維持することができなければならない。第4に、その他の必要なポリマーは、一般に「第2ポリマー」と呼ばれ、最終フィルムにおいて、少なくとも1方向における最終フィルムの屈折率が、同方向における第1ポリマーの屈折率と著しく異なるように選択しなければならない。ポリマー材料は一般に分散性である、つまり屈折率が波長とともに変化するため、これらの条件は、問題になる特定のスペクトル帯域の点で考慮しなければならない。
【0027】
ポリマー選択のその他の態様は、特定の用途によって決まる。偏光フィルムの場合、1つのフィルム平面方向における第1ポリマーと第2ポリマーとの屈折率の差は、最終フィルムで著しく異なり、直交するフィルム平面の屈折率の差は最小限であると有利である。第1ポリマーの屈折率が、ポリマーが等方性である場合に高く、正の複屈折である(つまりポリマーの屈折率が伸長方向に増加する)場合、第2ポリマーは、処理後、伸長方向に直交する平面方向の屈折率が第1ポリマーの屈折率と一致し、伸長方向の屈折率ができるだけ低くなるように選択する。逆に、第1ポリマーの屈折率が、ポリマーが等方性である場合に低く、負の複屈折である場合、第2ポリマーは、処理後、伸長方向に直交する平面の屈折率が第1ポリマーの屈折率と一致し、伸長方向の屈折率ができるだけ高くなるように選択する。
【0028】
あるいは、正の複屈折であり、等方性の場合に屈折率が中間または低い第1ポリマーを選択するか、または負の複屈折であり、等方性の場合に屈折率が中間または高い第1ポリマーを選択することができる。この場合、第2ポリマーは、一般に、処理後、ポリマーの屈折率が、伸長方向または伸長方向に直交する方向で第1ポリマーの屈折率に一致するように選択する。さらに、第2ポリマーは、その他の平面方向における屈折率が非常に低いかまたは非常に高いために最も良く達成されるかどうかに関係なく、その他の平面方向における屈折率の差が最大限になるように一般に選択される。
【0029】
1方向において一致し、直交方向において一致しない平面屈折率の組合わせを達成するには、いくつかの手段がある。たとえば、伸長したときに著しい複屈折を示す第1ポリマーを選択し、伸長したときに殆どまたはまったく複屈折を示さない第2ポリマーを選択し、結果として得られるフィルムを1つの平面方向にのみ伸長するようにすると良い。もう1つの方法では、第2ポリマーは、第1ポリマーの複屈折と反対の向きに(負−正または正−負)に複屈折を示すポリマーから選択することができる。もう1つの方法は、第1および第2ポリマーの両方が、伸長したときに複屈折を示すことができるように選択し、2つの直交平面方向に多層フィルムを延伸することである。この最後の方法は、第1および第2ポリマーの2つの伸長方向における延伸レベルが等しくなくなるように温度、伸長比、伸長後の緩和などの工程条件を選択し、1つの平面内屈折率が、第1ポリマーの屈折率にほぼ一致し、直交する平面内屈折率が第1ポリマーの屈折率に著しく一致しないようにすることを含む。たとえば、条件は、第1ポリマーが最終的なフィルムにおいて2軸延伸特性を有し、第2ポリマーが最終的なフィルムにおいて主に1軸延伸特性を有するように選択することができる。
【0030】
偏光フィルムに関する上記の説明は、具体的に示すことを意図している。これらの技術および他の技術の組合わせを使用して、1つの平面内方向で屈折率が一致せず、直交する平面方向で相対屈折率が一致するようにできることが分かるであろう。
【0031】
様々な問題は、反射フィルムまたは鏡フィルムに当てはまる。フィルムが、いくつかの偏光特性を有するように意図されない場合、屈折率基準はフィルム平面のどの方向にも等しく適用される。したがって、直交する平面内方向の特定層の屈折率は、一般にほぼ等しい。しかし、第1ポリマーのフィルム平面屈折率は、第2ポリマーのフィルム平面屈折率とできるだけ大きく異なると有利である。したがって、第1ポリマーの屈折率が、ポリマーが等方性であるときに高い場合、第1ポリマーはさらに正の複屈折であると有利である。同様に、第1ポリマーの屈折率が、ポリマーが等方性であるときに低い場合、第1ポリマーはさらに負の複屈折であると有利である。第2ポリマーは、伸長したときに殆どまたはまったく複屈折を示さないか、または反対の向き(正−負または負−正)の複屈折を示し、第2ポリマーのフィルム平面屈折率が、最終フィルムの第1ポリマーの平面屈折率とできるだけ大きく異なるようにすると有利である。これらの基準は、鏡フィルムがある程度の偏光特性を有するように考える場合、偏光フィルムに関する上記の基準と適切に組合わせることができる。
【0032】
着色フィルムは、鏡フィルムおよび偏光フィルムの特殊な事例であると考えることができる。したがって、上記の同じ基準が適用される。知覚色は、スペクトルの1つまたは複数の特定帯域幅上における反射または偏光の結果である。本発明の多層フィルムが有効な帯域幅は、光スタックに使用する層厚さの分布によって主に決まるが、第1および第2ポリマーの屈折率の波長依存、つまり分散についても考慮しなければならない。同じ規則は、可視色に関する赤外および紫外波長に適用されることが分かる。
【0033】
吸光は、もう1つの問題である。殆どの用途では、第1ポリマーも第2ポリマーも、問題のフィルムの関連帯域幅内に吸光帯域を持たないことが有利である。したがって、帯域幅内のすべての入射光は、反射または透過される。しかし、用途によっては、第1ポリマーと第2ポリマーの一方または両方が、特定の波長を全体的または部分的に吸収すると有用である。
【0034】
多くのポリマーは、第1ポリマーとして選択することができるが、特定のポリエステルは、特に大きい複屈折の能力を有する。こうしたポリエステルの中で、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)は、本発明のフィルムの第1ポリマーとして選択されることが多い。PENは、非常に大きい正の応力光係数を有し、伸長後に効果的に複屈折を保持し、可視範囲内で殆どまたはまったく吸光度がない。さらに、PENは等方性状態で大きい屈折率を有する。550nm波長の偏光入射光に対するPENの屈折率は、偏光平面が伸長方向に平行である場合、約1.64から高ければ約1.9にも増加する。PENの複屈折は、PENの分子配向を増加させることにより増加することができ、結局、他の伸長条件を一定に保った状態で比較的大きい伸長比まで伸長させることにより増加することができる。
【0035】
その他の半結晶質ナフタレンジカルボキシルポリエステルも、第1ポリマーとして適している。その一例は、ポリブチレン2,6−ナフタレート(PBN)である。こうしたポリマーは、ホモポリマーでもコポリマーでも良いが、コモノマーの使用によって、伸長後の応力光係数または複屈折の保持が実質的に損なわれないことが条件である。本明細書で使用する「PEN」という用語は、こうした制限を満たすPENのコポリマーを含むと考えられる。実際、こうした制限は、コモノマー成分に上限を課し、上限の正確な値は、使用するコモノマーの選択によって変わる。しかし、コモノマーを含むことによってその他の特性が改善される場合、これらの特性にある程度の妥協は認められる。こうした特性としては、層間の付着の改善、比較的低融点(押出し温度が比較的低くなる)、フィルム内の他のポリマーに対する流動学的一致の改善、ガラス転移温度の変化による伸長用処理領域の有利な移動が挙げられるが、これらだけに限らない。
【0036】
PEN、PBNなどに使用するのに適するコモノマーは、ジオールまたはジカルボン酸またはエステルタイプのもので良い。ジカルボン酸コモノマーとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、すべての異性ナフタレンジカルボン酸(2,6−、1,2−、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−、1,8−、2,3−、2,4−、2,5−、2,7−および2,8−)、二安息香酸、たとえば4,4’−ビフェニルジカルボン酸およびその異性体など、トランス−4,4’−スチルベンジカルボン酸およびその異性体、4,4’−ジフェニルエーテルカルボン酸およびその異性体、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸およびその異性体、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸およびその異性体、ハロゲン化芳香族ジカルボン酸、たとえば2−クロロテレフタル酸および2,5−ジクロロテレフタル酸など、その他の置換芳香族ジカルボン酸、たとえば第三ブチルイソフタル酸およびナトリウムスルホン化イソフタル酸など、シクロアルカンジカルボン酸、たとえば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸およびその異性体、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸およびその異性体など、二環式または多環式ジカルボン酸(たとえば各種異性ノルボルナンおよびノルボルネンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸およびビシクロ−オクタンジカルボン酸など)、アルカンジカルボン酸(たとえばセバシン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アゼライン酸およびドデカンジカルボン酸など)、縮合環芳香族炭化水素の何らかの異性ジカルボン酸(たとえばインデン、アントラセン、フェナントレン、ベンゾナフテン、フルオレンなど)が挙げられるが、これらだけに限らない。あるいは、これらのモノマーのアルキルエステル、たとえばジメチルテレフタレートを使用しても良い。
【0037】
適切なジオールコモノマーとしては、線状または分枝アルカンジオールまたはグリコール(たとえばエチレングリコール、トリメチレングリコールなどのようなプロパンジオール、テトラメチレングリコールなどのようなブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのようなペンタンジオール、ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールおよび高級ジオールなど)、エーテルグリコール(たとえばジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールなど)、鎖式エステルジオール、たとえば3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロパノエート、シクロアルカングリコール、たとえば1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびその異性体、1,4−シクロヘキサンジオールおよびその異性体、二環式または多環式ジオール(たとえば各種の異性トリシクロデカン、ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルネンジメタノールおよびビシクロ−オクタンジメタノールなど)、芳香族グリコール(たとえば1,4−ベンゼンジメタノールおよびその異性体、1,4−ベンゼンジオールおよびその異性体、ビスフェノールA、2,2’−ジヒドロキシビフェニルなどのビスフェノールおよびその異性体、4,4’−ジヒドロキシメチルビフェニルおよびその異性体、および1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンおよびその異性体)、並びにこれらのジオールの低級アルキルエーテルまたはジエーテル、たとえばジメチルまたはジエチルジオールが挙げられるが、これらだけに限らない。
【0038】
ポリエステル分子に分枝構造を与えるのに役立つ三官能価または多官能価コモノマーを使用しても良い。これらのコモノマーは、カルボン酸、エステル、ヒドロキシまたはエーテルタイプで良い。これらのコモノマーの例としては、トリメリット酸およびそのエステル、トリメチロールプロパン、およびペンタエリトリトールが挙げられるが、これらだけに限らない。
【0039】
やはりコモノマーとして適しているのは混合多官能価のモノマーであり、ヒドロキシカルボン酸、たとえばパラヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸およびこれらの異性体、混合官能価の三官能価または多官能価コモノマー、たとえば5−ヒドロキシイソフタル酸などがある。
【0040】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、有意の正応力光係数を示し、伸長後に複屈折を効果的に維持し、可視範囲に吸光性が殆どまたはまったくないもう1つの材料である。したがって、PET、および上記のコモノマーを使用する高PET含有コポリマーも、本発明の用途の第1ポリマーとして使用することができる。
【0041】
PENまたはPBNなどのようなナフタレンジカルボキシルポリエステルを第1ポリマーとして選択する場合、第2ポリマーを選択するのに取る方法はいくつかある。用途によって好ましい1つの方法は、伸長した場合に著しく小さい複屈折を示すかまたはまったく複屈折を示さないように処方したナフタレンジカルボキシルコポリエステル(coPEN)を選択することである。これは、coPENの結晶性がなくなるかまたは著しく減少するように、コモノマーおよびコポリマー中のコモノマーの濃度を選択して行うことができる。1つの代表的な配合物は、ジカルボン酸またはエステル成分として約20モル%〜約80モル%のジメチルテレフタレートまたはジメチルナフタレンおよび約20モル%〜約80モル%のジメチルテレフタレートまたはジメチルイソフタレートを使用し、ジオール成分としてエチレングリコールを使用する。当然、対応するジカルボン酸をエステルの代わりに使用しても良い。coPEN第2ポリマーの配合物に使用できるコモノマーの数に限りはない。coPEN第2ポリマーに適するコモノマーは、適切なPENコモノマーとして上記に列挙したすべてのコモノマー、たとえば酸、エステル、ヒドロキシ、エーテル、三官能価または多官能価および混合官能価タイプが挙げられるが、これらだけに限らない。
【0042】
coPEN第2ポリマーの等方性屈折率を予測することは、多くの場合有用である。使用するモノマーの屈折率の容積平均は、適切な指針であることが分かった。先行技術で公知の類似の技術を使用すると、使用するモノマーのホモポリマーのガラス転移温度からcoPEN第2ポリマーのガラス転移温度を概算することができる。
【0043】
さらに、PENのガラス転移温度に匹敵するガラス転移温度を有し、PENの等方性屈折率に類似する屈折率を有するポリカーボネートも、第2ポリマーとして有用である。ポリエステル、コポリエステル、ポリカーボネートおよびコポリカーボネートを一緒に押出機に供給し、新しい適切なコポリマー系第2ポリマーにエステル交換しても良い。
【0044】
第2ポリマーがコポリエステルまたはコポリカーボネートである必要はない。ビニルナフタレン、スチレン、エチレン、無水マレイン酸、アクリレート、アセテートおよびメタクリレートなどのようなモノマーから製造されるビニルポリマーおよびコポリマーを使用しても良い。ポリエステルおよびポリカーボネート以外の縮合ポリマーを使用しても良い。縮合ポリマーの例としては、ポリスルホン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアミン酸およびポリイミドがある。ナフタレン基並びに塩素、臭素およびヨウ素などのハロゲンは、第2ポリマーの屈折率を所望のレベルまで増加するのに有用である。アクリレート基およびフッ素は、必要なら、屈折率を低下させるのに特に有用である。
【0045】
前記の説明から、第2ポリマーの選択は、問題の多層光学フィルムに意図する用途にのみ左右されるのではなく、第1ポリマーの選択および伸長に使用する処理条件にも左右されることが分かる。適切な第2ポリマー材料としては、ポリエチレンナフタレート(PEN)およびその異性体(たとえば2,6−、1,4−、1,5−、2,7−および2,3−PEN)、ポリアルキレンテレフタレート(たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、その他のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド(たとえばナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン4/6、ナイロン6/6、ナイロン6/9、ナイロン6/10、ナイロン6/12およびナイロン6/T)、ポリイミド(たとえば熱可塑性ポリイミドおよびポリアクリルイミド)、ポリアミド−イミド、ポリエーテル−アミド、ポリエーテルイミド、ポリアリルエーテル(たとえばポリフェニレンエーテルおよび環置換ポリフェニレンオキシド)、ポリアリルエーテルケトン、たとえばポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、脂肪族ポリケトン(たとえばエチレンおよび/またはプロピレンと二酸化炭素とのコポリマーおよびターポリマー)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン(たとえばポリエーテルスルホンおよびポリアリルスルホン)、アタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン(「sPS」)およびその誘導体(たとえばシンジオタクチックポリ−α−メチルスチレンおよびシンジオタクチックポリジクロスチレン)、これらのポリスチレンの何れかの互いのブレンドまたはポリフェニレンオキシドなどのような他のポリマーとのブレンド、これらのポリスチレンの何れかのコポリマー(たとえばスチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー)、ポリアクリレート(たとえばポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレートおよびポリブチルアクリレートなど)、ポリメタクリレート(たとえばポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレートおよびポリイソブチルメタクリレートなど)、セルロース誘導体(たとえばエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレートおよびセルロースニトレートなど)、ポリアルキレンポリマー(たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレンおよびポリ(4−メチル)ペンテン)、フッ素化ポリマーおよびコポリマー(たとえばポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、フッ素化エチレン−プロピレンコポリマー、ペルフルオロアルコキシ樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレン−co−トリフルオロエチレン、ポリエチレン−co−クロロトリフルオロエチレンなど)、塩素化ポリマー(たとえばポリ塩化ビニリデンおよびポリ塩化ビニルなど)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリエーテル(たとえばポリオキシメチレンおよびポリ酸化エチレンなど)、イオノマー系樹脂、エラストマー(たとえばポリブタジエン、ポリイソプレンおよびネオプレン)、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、並びにポリウレタンがあるが、これらだけに限らない。
【0046】
上記のPENのコポリマー、およびPENに適するポリエステルコモノマーの上記のリストから処方される、ナフタレン基を含有しないその他のコポリエステルなどのコポリマーも適切である。用途によっては、特にPETを第1ポリマーとして使用する場合、PETベースのコポリエステル、および上記のリストから選択されるコモノマー(coPET)が特に適している。さらに、第1または第2ポリマーは、2種類以上の上記ポリマーまたはコポリマーの混和性または不混和性ブレンド(たとえばsPSおよびアタクチックポリスチレンのブレンド、またはPENおよびsPSのブレンド)から構成しても良い。上記のcoPENおよびcoPETは直接合成するか、または少なくとも1つの成分がナフタレンジカルボン酸またはテレフタル酸ベースのポリマーであり、その他の成分がポリカーボネートであるかまたはその他のポリエステル、たとえばPET、PEN、coPETまたはcoPENであるペレットのブレンドとして処方しても良い。
【0047】
用途によって、第2ポリマーの材料として好適なもう1つの族は、シンジオタクチックビニル芳香族ポリマー、たとえばシンジオタクチックポリスチレンである。本発明に有用なシンジオタクチックビニル芳香族ポリマーとしては、ポリ(スチレン)、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(アリルスチレン)、ポリ(スチレンハライド)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニルエステルベンゾエート)、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルスチレン)およびポリ(アセナフタレン)、並びに水素化ポリマーおよびこれらの構造単位を含む混合物またはコポリマーが挙げられる。ポリ(アルキルスチレン)の例としては、以下の異性体が挙げられる:ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(プロピルスチレン)、およびポリ(ブチルスチレン)。ポリ(アリルスチレン)の例としては、ポリ(フェニルスチレン)の異性体が挙げられる。ポリ(スチレンハライド)の例としては、以下の異性体が挙げられる:ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)およびポリ(フルオロスチレン)。ポリ(アルコキシスチレン)の例としては、以下の異性体が挙げられる:ポリ(メトキシスチレン)およびポリ(エトキシスチレン)。これらの例の中では、特に好ましいスチレン基ポリマーは、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−第三ブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、並びにスチレンおよびp−メチルスチレンのコポリマーである。
【0048】
さらに、コモノマーを使用してシンジオタクチックビニル芳香族基コポリマーを製造しても良い。シンジオタクチックビニル芳香族ポリマーの群の定義で上記に列挙したホモポリマーに対するモノマーのほか、適切なコモノマーとして、オレフィンモノマー(たとえばエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテンまたはデセンなど)、ジエンモノマー(たとえばブタジエンおよびイソプレンなど)、極性ビニルモノマー(たとえば環状ジエンモノマー、メチルメタクリレート、無水マレイン酸またはアクリロニトリルなど)が挙げられる。
【0049】
本発明のシンジオタクチックビニル芳香族コポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーまたは交互コポリマーで良い。
【0050】
本発明で言及するシンジオタクチックビニル芳香族ポリマーおよびコポリマーは、炭素−13核磁気共鳴で決定して75%を超えるシンジオタクチック性を一般に有する。好ましくは、シンジオタクチック性の程度は、85%を超えるラセミ2価元素、または30%を超えるか、さらに好ましくは50%を超えるラセミ5価元素である。
【0051】
さらに、これらのシンジオタクチックビニル芳香族ポリマーおよびコポリマーの分子量に関する特定の制限はないが、重量平均分子量は、10,000を超えて1,000,000未満であることが好ましく、50,000を超えて800,000未満であればさらに好ましい。
【0052】
シンジオタクチックビニル芳香族ポリマーおよびコポリマーは、たとえば、アタクチック構造を含むビニル芳香族基ポリマー、アイソタクチック構造を含むビニル芳香族基ポリマー、およびビニル芳香族ポリマーと混和可能なその他のポリマーとのポリマーブレンドの形態で使用しても良い。たとえば、ポリフェニレンエーテルは、前記のビニル芳香族基ポリマーの多くと良好な混和性を示す。
【0053】
主に1軸伸長による工程を用いて偏光フィルムを製造する場合、光層に特に好ましいポリマーの組合わせは、PEN/coPEN、PET/coPET、PEN/sPS、PET/sPS、PEN/EastarTM、およびPET/EastarTMであり、「coPEN」は、上記のナフタレンジカルボン酸ベースのコポリマーまたはブレンドを指し、EastarTMは、Eastman Chemical Co.が市販しているポリエステルまたはコポリエステルであり、これらは、シクロヘキサンジメチレンジオール単位およびテレフタレート単位を含むと考えられる。2軸伸長工程の工程条件を操作して偏光フィルムを製造する場合、光層に特に好適なポリマーの組合わせは、PEN/coPEN、PEN/PET、PEN/PBT、PEN/PETGおよびPEN/PETcoPBTであり、「PBT」はポリブチレンテレフタレート、「PETG」は、第2グリコール(一般にシクロヘキサンジメタノール)を使用するPETのコポリマーを指し、「PETcoPBT」は、テレフタル酸またはそのエステルとエチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールの混合物とのコポリエステルを指す。
【0054】
鏡または着色フィルムの場合、光層に特に好ましいポリマーの組合わせとして、PEN/PMMA、PET/PMMA、PEN/EcdelTM、PET/EcdelTM、PEN/sPS、PET/sPS、PEN/coPET、PEN/PETGおよびPEN/THVTMがあり、「PMMA」は、ポリメチルメタクリレートを指し、EcdelTMは、Eastman Chemical Co.が市販している熱可塑性ポリエステルまたはコポリエステルであり、これらは、シクロヘキサンジカルボキシレート単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位およびシクロヘキサンジメタノール単位を含むと考えられ、「coPET」は、上記のテレフタル酸ベースのコポリマーまたはブレンドを指し、「PETG」は、第2グリコール(一般にシクロヘキサンジメタノール)を使用するPETのコポリマーを指し、THVTMは、3Mが市販しているフルオロポリマーである。
【0055】
鏡フィルムの場合、フィルム平面に垂直な方向における第1ポリマーおよび第2ポリマーの屈折率は、入射光の角度に対して一定の反射率を提供する(つまりブルースター角が存在しない)という点で、一致することが好ましい場合がある。たとえば、特定の波長では、平面内屈折率は、2軸延伸PENの場合1.76であるが、フィルム平面に垂直な屈折率は1.49まで低下する。PMMAを多層構成内の第2ポリマーとして使用する場合、同じ波長におけるPMMAの屈折率は、3方向すべてで1.495である。もう1つの実施例はPET/EcdelTMシステムであり、類似の屈折率は、PETの場合1.66および1.51であり、EcdelTMの等方性屈折率は1.52である。重要な特性としては、1つの材料の平面に垂直な屈折率は、その材料自体の平面内屈折率よりも他の材料の平面内屈折率に近くなければならないという点が挙げられる。
【0056】
その他の実施態様では、平面に垂直な屈折率を故意に一致させないことが望ましい。実施例によっては、光スタック内に3つ以上の層を含み、平面に垂直な屈折率が、平面内の1方向における屈折率の不一致と符号が反対の故意による不一致であることが望ましいものがある。本発明の多層光学フィルムが2種類を超える識別可能なポリマーから成ることは、場合により好ましい。第3以降のポリマーは、光スタック内の第1ポリマーと第2ポリマーとの間の付着を促進する層として使用すると、光学的目的のスタック内の追加構成要素として、光スタック間の保護境界層として、表皮層として、機能的なコーティングとして、またはその他の何らかの目的で効果的である。したがって、第3ポリマー、または第3以降のポリマーが存在する場合、これらのポリマーの組成に制限はない。好ましい多成分構成のいくつかは、米国特許第出願第09/006,118号に記載されている。
【0057】
工程の考察
本発明の同時押出しポリマー多層光学フィルムの製造に使用する工程は、選択する樹脂材料および最終的なフィルム製品に望ましい光学的特性によって異なる。
【0058】
感湿性樹脂は、押出し前かまたは押出し時に乾燥させて劣化を防がなければならない。乾燥は、先行技術で公知の手段で行うことができる。十分に周知されている1つの手段は、オーブンかまたはより複雑な加熱真空および/または乾燥剤ホッパ乾燥器を使用して、樹脂を押出機に供給する前に乾燥させることである。もう1つの手段は、真空換気2軸押出機を使用して、樹脂が押し出されるときに樹脂から水分を除去することである。乾燥時間および温度は、ホッパ乾燥器またはオーブンで乾燥させるときに、熱による劣化または固着を防ぐように制限するべきである。さらに、感湿性樹脂と同時押出しされる樹脂は、他の樹脂によって運ばれる水分によって感湿性同時押出し樹脂が破損するのを防ぐように乾燥させなければならない。
【0059】
押出し条件は、ポリマー樹脂供給流を連続的かつ安定した方法で適切に供給、融解、混合および揚送するように選択する。最終的な溶融流れ温度は、温度範囲の低い方の端部における凍結、結晶化または不当に高い圧力降下を防ぐとともに、温度範囲の高い方の端部における劣化を防ぐ範囲内で選択する。たとえば、ポリエチレンナフタレート(PEN)は、135℃で8時間にわたって乾燥させてから、最終区分温度または融解温度270℃〜300℃、さらに好ましくは275℃〜290℃の押出機に真空供給する。
【0060】
多くの場合、多層供給ブロックに入るすべてのポリマーは同じかまたは非常に類似する融解温度であることが好ましい。そのためには、理想融解処理温度が一致しない2種類のポリマーを同時押出しする場合、処理の妥協が必要である。たとえば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)は、一般に約250℃未満の温度で押し出される。しかし、本発明の出願人は、流れの停滞点の可能性が最小限になり、PMMAの溶融液内における全体の滞留時間を最小限に保つように、PMMA融解系統内の設計を検討することを条件として、PMMAは、275℃という高温のPMMAの融解温度でPENと同時に押し出すことができることを発見した。この点に関して有用であると分かったもう1つの技術は、PMMA融解系統を比較的従来の処理温度で開始し、次に、工程全体で十分に展開された流れが得られた場合にのみ、融解系統の温度をさらに高温のPENの匹敵する温度まで上昇させることである。
【0061】
上記とは逆に、PEN処理温度を低下させて、PEN処理温度をPMMAの代表的な融解処理温度に一致させても良い。したがって、PENの融点、ひいては処理温度は、コモノマーをPENポリマーに追加して低下させると、PENが、圧伸後に複屈折を示す能力の低下は非常にわずかで済む。たとえば、3モル%の2,6−ジメチルナフタレート(DMN)モノマーの代わりにジメチルイソフタレート(DMI)を使用して製造したPENコポリマーは、複屈折の低下が0.02単位のみ、ガラス転移温度の低下が約4または5℃のみであるとともに、融解処理温度は15℃低下することが分かった。少量のジメチルテレフタレート(DMT)またはその他の二酸もしくはジオールコモノマーも、この点で有用である。二酸コモノマーのエステルまたはジエステルも使用できる。コモノマーをPENポリマーに添加する利点の詳細は、米国特許出願第09/006,601号および第09/006,468号に記載されている。
【0062】
当業者には、共重合によるPEN処理温度の低下と、工程設計を介したPMMA融解温度の上昇との組合わせを使用すると、1つの技術、他の技術または両方の技術とさらに他の技術とを組み合わせた場合と同様に、有用であることが明白である。同様に、PENとPMMA以外のポリマーとの等温同時押出し、PMMAとPEN以外のポリマーとの等温同時押出し、またはこの2つの例示的なポリマーを含まない組合わせの等温同時押出しに類似の技術を使用できる。
【0063】
溶融液の流れは、押出し後、望ましくない粒子およびゲルを除去するために濾過する。ポリエステルフィルム製造の先行技術で公知の1次および2次フィルタは、1〜30μm範囲のメッシュサイズのものを使用できる。先行技術は、フィルムの清浄度および表面特性の点でこうした濾過の重要性を示しているが、本発明における濾過の意味は、層の均一性にも関わる。各々の溶融液の流れは、次に、頚部管を介して、ポリマーの流れの連続的かつ均一な流量を調整するために使用されるギヤポンプに送られる。静止混合ユニットは、ギヤポンプから多層供給ブロックに溶融液を運ぶ頚部管の端部に配置され、溶融液の流れの温度を均一にする。全体の溶融液の流れは、処理時の流れを均一にするとともに劣化を最小限にするために、できるかぎり均一に加熱する。
【0064】
多層供給ブロックは、2種類以上のポリマー溶融液流の各々を多数の層に分割し、2種類以上のポリマーの多数の層を1つの多層流に融合する。ある特定の溶融液流からの層は、流れの一部を流路から、供給ブロック内にある個々の層用の層スロットに供給する側部流路管に順次取り出して形成される。多層供給ブロックの多くの構造が可能であり、Schrenk等に付与された米国特許第3,737,882号、第3,884,606号および第3,687,589号に記載されているものなどがある。層の流れを調整して層厚さ勾配を導入する方法もあり、たとえばSchrenk等に付与された米国特許第3,195,865号、第3,182,965号、第3,051,452号、第3,687,589号および第5,094,788号、並びにLewis等に付与された米国特許第5,389,324号に記載されている。代表的な工業工程では、層の流れは、個々の側部流路管および層スロットの形状および物理的寸法を機械加工するときの選択により一般に調整される。
【0065】
本発明の出願人は、層厚さ分布および層の均一性をより良く調整することを可能にする改良された供給ブロック構造を発見した。改良された構造は、モジュールの特徴を組み込んであり、その結果、以下に詳しく記載するように、供給ブロックのごく少ない部分のみを各々の特異なフィルム構造に合せて機械加工すれば良い。モジュール構造の経済的な利点は、あるフィルム構成から別のフィルム構成に変えるのに必要な時間、労力および機器の削減である。
【0066】
図3は、ハウジング12内に収容された供給ブロック10の略断面図を示す。ハウジング12内には、任意のマニホールドプレート20と勾配プレート30とが配置され、それぞれのプレートが組んで、少なくとも2つの補助流路、つまり第1補助流路22と第2補助流路24とを画定する。図示のとおり、マニホールドプレート20の底面部分は、勾配プレート30の上面部分とともに補助流路22および24を画定する。この補助流路は、供給ブロックの任意の特徴であり、供給ブロック内のある位置から別の位置に樹脂を運ぶのに役立つ。さらに、プレート型加熱器(図示しない)をハウジング12の外面に取り付けることができる。
【0067】
勾配プレート30内には、少なくとも2つの流路、つまり第1補助流路22および第2補助流路24が配置される。これら流路は、勾配プレート30および供給管プレート40の組合わせに界接する。第1流路32は第1補助流路22と連通し、第2流路34は第2補助流路24と連通する。補助流路を流路と組み合わせて使用する場合、伝達導管(図示しない)は、2つのタイプの流路を互いに連通させる手段として役立つ。一対の補助流路および一対の流路を図示するが、本発明の範囲には、各々のタイプの流路を2つ以上使用することも含まれる。
【0068】
勾配プレート30内では、各々の流路は、流路の断面が、円形、方形または等辺三角形などのように対称の中心軸線を有するように機械加工される。機械加工を容易にするため、方形断面の流路を使用することが好ましい。各々の流路に沿って、流路の断面積は一定であっても変化しても良い。この変化は、面積の増加または減少であり、減少する断面は一般に「テーパ」と呼ばれる。流路の断面積の変化は、適切な圧力勾配を形成するように設計することができる。圧力勾配は、多層光学フィルムの層厚さ分布に影響する。したがって、勾配プレートは、様々なタイプの多層フィルム構成に合せて変えることができる。
【0069】
流路の断面積が一定を保つように製造すると、層厚さ対層の数のプロットは非線形的に減少する。特定のポリマー流の場合、少なくとも1つの断面テーパプロファイルが存在し、層の数に対する層の厚さの線形的減少依存関係が生じ、場合によっては好ましい。テーパプロファイルは、合理的に能力を有する当業者が、問題のポリマーに関する信頼性のある流動学的データおよび先行技術で公知のポリマー流シミュレーションソフトウェアを使用して発見することができ、場合に応じて計算するべきである。
【0070】
再び図3を参照すると、供給ブロック10は、導管の第1の集合42および導管の第2の集合44を有する供給管プレート40をさらに含み、各々の集合はそれぞれ流路32および流路34と連通する。本明細書で使用する場合、「導管」とは、「側部流路管」をも指す。あるいは、導管の2つの集合の間には、軸線ロッド加熱器46が配置され、この加熱器46は、導管内を流れる樹脂に熱を与えるために使用される。必要なら、温度は、軸線ロッド加熱器の長さに沿った領域で変えることができる。追加の軸線ロッド加熱器を使用することができ、たとえば1つの軸線ロッド加熱器を導管42に隣接させ、もう1つの軸線ロッド加熱器を導管44に隣接させても良い。各々の導管は、導管自体の個々のスロットダイ56に供給し、スロットダイ56は拡張部分およびスロット部分を有する。拡張部分は、一般に供給管プレート40内に位置する。必要なら、スロット部分は、スロットプレート50内に配置できる。本明細書で使用する場合、「スロットダイ」という用語は、「層スロット」の同義語である。導管の第1集合42は、導管の第2集合と交互配置されて、これらの集合が1つおきになっている層を形成する。
【0071】
使用時、溶融液流の形態のポリマー樹脂は、押出機などの供給源から、補助流路が存在する場合は、補助流路22および24に供給される。一般に、各々の補助流路には異なる樹脂が供給される。たとえば、樹脂Aは流路22に、樹脂Bは流路24に、2つの異なる溶融液流として供給される。補助流路を使用しない場合、樹脂Aおよび樹脂Bは、流路22および24に直接供給される。溶融液流Aおよび溶融液流Bが勾配プレート30内の流路を下流に移動するにつれて、各々の溶融液流は導管によって取り出される。導管42および44は交互配置されているため、たとえばABABABのように、各々の溶融液が1つおきになっている層の形成を開始する。各々の導管は、導管自体のスロットダイが実際の層の形成を開始する。スロットダイを出る溶融液流は、溶融液が1つおきになっている複数の層を含む。溶融液流は、層を圧縮するととともに、さらに横断方向に均一に散開させる圧縮部分(図示しない)に供給される。保護境界層(PBL)として周知されている特別な厚い層は、光多層スタックに使用される溶融液流から、供給ブロック壁部の最も近くに供給される。PBLは、供給ブロックの後に、別個の供給流によりさらに供給される。PBLは、壁の応力の影響、および結果として流れが不安定になる可能性から、比較的薄い光層を保護する機能を果す。
【0072】
光学的用途では、特に、特定の色を透過または反射することを意図されたフィルムの場合、フィルム平面内の非常に精密な層厚さの均一性が必要である。横断方向の散開ステップ後にスロットダイに完全な層の均一性を得るのは、実際には困難である。必要な横断方向の散開の量が大きくなればなるほど、結果として得られる層厚さプロファイルが不均一になる可能性が高くなる。したがって、層厚さプロファイルの均一性(またはフィルムの場合、色の不均一性)の見地から、供給ブロックのスロットダイは比較的広くすると有利である。しかし、スロットダイの幅を広げると、供給ブロックは大型で重くなり、より高価になる。最適なスロットの幅の評価は、結果として得られるフィルムの光学的均一性要件を考慮に入れて、各々の供給ブロックについて個々に行わなければならないことは明白である。この評価は、問題のポリマーに関する信頼性のある流動学的データ、および先行技術で公知のポリマー流シミュレーションソフトウェアを供給ブロック製造コストのモデルとともに使用して行うことができる。
【0073】
層厚さの調整は、特定の層厚さまたは厚さ勾配プロファイルを有するフィルムの製造に特に有用であり、層の厚さおよび勾配プロファイルは、多層フィルムの厚さ全体で規定の方法で変更される。たとえば、赤外フィルムについて、いくつかの層厚さの設計が説明されているが、これは、上位高調波を最小限にするものである。こうした高調波は、スペクトルの可視領域に色を生じる可能性がある。こうしたフィルムの例としては、米国再発行特許第34,605号に記載されているものがあり、この特許には、3種類の多様な実質的透明なポリマー材料、A、BおよびCを含み、ABCBの反復単位を有する多層光干渉フィルムが記載されている。これらの層は、約0.09〜0.45μmの光学的厚さを有し、各々のポリマー材料は、異なる屈折率niを有する。このフィルムは、ポリマーA、BおよびCのポリマー層を含む。各々のポリマー材料は、それぞれ材料自体の屈折率nA、nB、nCを有する。ポリマーの光学的厚さ比の好ましい関係によって、複数の連続する上位屈折率が抑制される光干渉フィルムが形成される。この実施態様では、第1材料Aの光学的厚さ比fAは1/5であり、第2材料Bの光学的厚さ比fBは1/6であり、第3材料Cの光学的厚さfCは1/3であり、
【0074】
【数1】

【0075】
である。
【0076】
この実施態様の場合、第1次波長で強度の反射が生じ、第2、第3および第4次波長における反射は抑制される。太陽赤外範囲内の広帯域幅の波長を反射するフィルムを製造するには(たとえば、約0.7〜2.0μmの反射など)、フィルムの厚さ全体に層厚さ勾配を導入する。たとえば、層厚さは、フィルムの厚さ全体で単調に増加しても良い。好ましくは、本発明の3成分システムでは、第1ポリマー材料(A)の屈折率は第2ポリマー材料(B)の屈折率と少なくとも約0.03だけ異なり、第2ポリマー材料(B)の屈折率は、第3ポリマー材料(C)の屈折率と少なくとも約0.03だけ異なり、第2ポリマー材料(B)の屈折率は、第1ポリマー材料(A)の屈折率と第3ポリマー材料(C)の屈折率の中間である。ポリマー材料は、ポリマーのコポリマーまたは混和可能なブレンドを使用して所望の屈折率を有するように合成することができる。たとえば、第2ポリマー材料は、第1および第3ポリマー材料のコポリマーまたは混和可能なブレンドで良い。コポリマー中のモノマーまたはブレンド中のポリマーの相対量を変えることにより、第1、第2または第3材料のどれでも、屈折率の関係
【0077】
【数2】

【0078】
であるように調整することができる。
【0079】
もう1つの適切なフィルムは、米国特許第5,360,659号に記載されている。この特許には、1つおきに反復する単位から成る6つの層を有する2成分フィルムが記載されている。このフィルムは、約380〜770nmの可視波長領域の望ましくない第2、第3および第4次反射を抑制し、約770〜2000nmの赤外波長領域の光を反射する。第4次以上の反射は、一般に、スペクトルの見えない紫外線領域にあるか、または問題にならないほど低い強度である。このフィルムは、第1(A)および第2(B)の多様なポリマー材料が1つおきになっている層から成り、1つおきに反復する単位の6つの層は、ほぼ.778A.111B.111A.778B.111A.111B.の相対的な光学的厚さを有する。反復単位内に6つの層のみ使用することにより、従来の構造に比べて材料を比較的有効に使用し、製造も比較的単純になる。反復単位勾配は、フィルムの厚さ全体に導入することができる。したがって、一実施態様では、反復単位厚さは、フィルムの厚さ全体で線形的に増加する。「線形的」という用語により、反復単位厚さがフィルムの厚さ全体で一定の割合で増加することを意味する。実施態様によっては、反復単位光学的厚さをフィルムの一方の表面から他方の表面まで2倍にすることが望ましい。反復単位光学的厚さの比率は、反射帯域の短い波長範囲が770nmを超え、長い波長端が約2000nmである限り、2より多くても少なくても良い。その他の反復単位勾配は、対数関数および/または四次関数を使用して導くことができる。反復単位厚さの対数分布は、赤外帯域全体にほぼ一定の反射率を提供する。
【0080】
もう1つの実施態様では、2成分フィルムは、1つおきになっている層の第1部分および第2部分を含む。第1部分は、1つおきの層反復単位の6つの層を有し、約1200〜2000nmの波長の赤外光を反射する。1つおきの層の第2部分は、AB反復単位を有し、第1部分と実質的に等しい光学的厚さを有し、約770〜1200nmの波長の赤外光を反射する。1つおきの層のこうした組み合わせにより、約2000nmまでの赤外波長領域全体で光が反射する。この組合わせは、「ハイブリッド構造」として一般に周知されている。好ましくは、1つおきの層の第1部分は、約5/3:1の反復単位勾配を有し、1つおきの層の第2部分は約1.5:1の層厚さ勾配を有する。このハイブリッド構造は、たとえば米国特許第5,360,659号に記載されているが、広帯域赤外線反射器または本発明の多成分光構造とともに有用なより広範囲にわたる用途がある。
【0081】
もう1つの有用なフィルム構造は、米国特許出願第09/006,118号に記載されている。光学フィルムおよびその他の光学的本体は、スペクトルの1次領域の電磁放射線の少なくとも1つの偏光に対して1次反射帯域を示すものが記載されている。こうした光学フィルムは、第1反射帯域の少なくとも第2、好ましくは少なくともさらに第3の上位高調波を抑制し、第1次高調波の反射率は本質的に一定であるか、または入射角の関数として増加する。これは、光学的本体の少なくとも一部を反復順序ABCで配列されたポリマー材料A、BおよびCから形成して行われ、Aの屈折率は、相互に直交する軸線x、yおよびzに沿ってそれぞれnxA、nyAおよびnzAである。同様に、材料Bの屈折率は、軸線x、yおよびzに沿ってそれぞれnxB、nyBおよびnzBであり、Cの屈折率は、軸線x、yおよびzに沿ってそれぞれnxC、nyCおよびnzCである。z軸は、フィルムまたは光学的本体の平面に直交する。光学フィルムの場合、nxA>nxB>nxCまたはnyA>nyB>nyCおよびnzC≧nzB≧nzAである。nzA−nzBおよびnzB−nzCの差は、約−0.05未満であることが好ましい。
【0082】
フィルムまたは光学的本体を上記の制約内で設計することにより、特に第1反射帯域がスペクトルの赤外領域にある場合に、入射角に応じて第1高調波反射を実質的に低下させずに、第2、第3および第4の上位反射率の組合わせを抑制することができる。こうしたフィルムおよび光学的本体は、IR鏡として特に有用であり、ウィンドウフィルムとして、およびIR保護が望ましいが、良好な透明性および薄い色が重要な類似の用途に使用すると有利である。
【0083】
本明細書に記載したタイプのモジュラー供給ブロックは、供給ブロック組立体全体を変えるか、または再機械加工する必要がなく、個々の層厚さまたは層厚さプロファイルを変えるのに適する変更可能な勾配プレートは、上記の層厚さプロファイルを変更するのに特に有用である。
【0084】
フィルム内の各種の層は、フィルム全体に異なる厚さを有することが好ましい。これは、一般に層厚さ勾配と呼ばれる。層厚さ勾配は、反射に所望の帯域幅が得られるように選択する。1つの一般的な層厚さ勾配は、最も厚い層の対の厚さが最も薄い層の対の厚さより一定の割合だけ厚い線形の勾配である。たとえば、1.005:1の層厚さ勾配は、最も厚い層の対(一般に一方の主面に隣接する)が、最も薄い層の対(一般に、フィルムの反対側の表面に隣接する)より5.5%厚いことを意味する。もう1つの実施態様では、層の厚さは、フィルムの一方の主面から他方の主面まで減少し、次に増加し、次に再び減少する。これは、比較的鋭利な帯端、ひいてはスペクトルの反射領域から透過領域まで比較的鋭利な、つまり比較的急な遷移が得られると考えられる。鋭利な帯端を得るのに好ましい方法は、米国特許出願第09/006,085号に完全に説明されている。
【0085】
2種類の光学的材料「A」および「B」が1つおきになっている順序で層が配置された多層フィルムについて、鋭利な帯端を得る方法を簡潔に説明する。他の実施態様では、3つ以上の別個の光学的材料を使用することができる。隣接する「A」層および「B」層の各々の対は、フィルム上部においてORU1で開始し、ORU6で終わり、各々のORUは光学的厚さOT1、OT2、...OT6を有する光学的反復単位(ORU)を構成する。設計波長における最大1次反射率(方程式IではM=1)の場合、各々のORUは、AまたはB層について50%f比を有するべきである。A層は、B層よりも薄く示されているため、B層よりも高いX(平面内)屈折率を有する。ORU1〜3は、ORUの光学的厚さが負のZ方向に単調に減少する多層スタックS1に分類され、ORU4〜6は、ORUの光学的厚さが単調に増加するもう1つの多層スタックS2に分類される。このような厚さプロファイルは、鋭利なスペクトル遷移を生じるのに役立つ。対照的に、以前に公知のフィルムの厚さプロファイルは、一般に、1方向にのみ単調に増加または減少する。用途によって望ましい場合、光学的厚さの不連続性を2つのスタック間に導入して、単純なノッチ透過帯域スペクトルを生じさせる。
【0086】
その他の厚さ勾配は、ピーク透過を改善するとともに、より鋭利な帯端(比較的狭い透過帯域)を形成するように設計される。これは、スタックの一部が反対にカーブした厚さプロファイルを有し、スタックの隣接部分がわずかにカーブしたプロファイルを有してスタックの第1部分の湾曲に一致する成分多層スタックに個々の層を配置して行うことができる。湾曲プロファイルは、任意の数の機能的な形態を取ることができ、この形態の主な目的は、層を1つの波長にのみ同調させた状態で、1/4波スタック内に存在する厚さの正確な反復を壊すことである。この場合に使用する特定の関数は、線形プロファイルの加法関数、および適切な負または正の第1導関数でプロファイルをカーブさせる正弦関数である。重要な特徴は、ORU厚さプロファイルの第2導関数が、反射率スタックの赤色(長い波長)帯端に対して正であり、反射率スタックの青色(短い波長)帯端に対して負であるということである。ノッチ透過帯域の帯端については、逆の正負が必要である。同じ原理の他の実施態様は、第1導関数のゼロ値を含む複数の点を有する層プロファイルを含む。上記のすべての場合において、導関数は、実際のORU光学的厚さプロファイルから適合させた最適な曲線の導関数を指し、光学的厚さ値で1σの10%未満の標準偏差の小さい統計誤差を含むことができる。
【0087】
その他の層プロファイルが考えられ、本発明のモジュール式勾配プレート供給ブロックと層増倍器との組合わせについて、好都合な方法でプロファイル構造を変えることを特に研究する。
【0088】
供給ブロックマニホルドを出る多層スタックは、次に、ダイなどの最終的な賦形ユニットに直接入る。あるいは、流れは、好ましくは層に垂直に分割され、2つ以上の多層流が形成され、この多層流は、積み重ねられて再び結合する。この流れは、層に垂直な角度以外の角度で分割しても良い。流れを分割して積み重ねる流路システムは、増倍器または界面生成器(ISG)と呼ばれる。分割された流れの幅は等しくても等しくなくても良い。乗数比は、比較的広い流れの幅対比較的狭い流れの幅の比率で定義される。等しくない流れの幅(つまり、乗数比が1を超える)は、層厚さ勾配を形成するのに有用である。等しくない流れの場合、増倍器は、比較的狭い流れを散開させ、および/または比較的広い流れを厚さおよび流れの方向に対して横断方向に圧縮して、積み重ねた後の層の幅が一致するようにする。多くの構造が可能であり、たとえば、Schrenk等に付与された米国特許第3,565,985号、第3,759,647号、第5,094,788号および第5,094,793号に開示されている構造がある。一般的な慣習では、増倍器に対する供給流は、断面が矩形であり、2つ以上の分割流も断面が矩形であり、矩形の断面は、分割流を再び積み重ねるために使用される流路全体で維持される。一定の断面積は、各々の分割流路に沿って維持されることが好ましいが、これは必須ではない。
【0089】
供給ブロックマニホルドを出る多層スタックの各々の元の部分は、PBLを除いて、パケットとして周知されている。光学的用途のフィルムの場合、各々のパケットは、特定帯域の波長で反射、透過または偏光するように設計する。多層スタックが供給ブロックを出るとき、1つを超えるパケットが存在する。したがって、フィルムは、2つまたは複数の帯域で光学的性能が得られるように設計する。これらの帯域は、別個で異なっても、重複しても良い。複数のパケットは、2種類以上のポリマーの同じかまたは異なる組合わせから構成する。各々のパケットが2種類以上の同じポリマーから構成される複数のパケットは、各々のポリマーの1つの溶融液系統がすべてのパケットに供給するか、または溶融液系統の別個の集合が各々のパケットに供給するように、供給ブロックおよびその勾配プレートを構成して製造される。物理的特性など、光学的特性以外の特性をフィルムに与えるように設計されたパケットを、1つの多層供給ブロックスタック内の光学的パケットと結合しても良い。
【0090】
供給ブロック内に2つまたは複数のパケットを形成する代案は、1を超える乗数比で増倍器を使用して、1つの供給ブロックパケットからパケットを形成することである。元のパケットの帯域幅および乗数比に応じて、結果として得られるパケットは、帯域幅が重複するか、またはパケットの間に帯域幅隙間を残すように製造することができる。当業者には、特定の光学フィルムの目的に合わせた供給ブロックと増倍器方針の最適な組合わせは多くの要素によって決まり、個々の基準で決定しなければならないことは明白である。
【0091】
増倍する前に、追加の層を多層スタックに追加することができる。これら外側層は、この場合は増倍器内でやはりPBLとして機能する。増倍および積重ね後、PBLの流れの一部は、光層間の内部境界層を形成するが、流れの他の部分は表皮層を形成する。したがって、パケットは、この場合はPBLによって分離される。ダイなどの形成ユニットに最終的に供給するまえに、追加のPBLを追加し、追加の増倍ステップを行っても良い。こうした供給の前に、増倍を行うかどうか、増倍を行う場合は、この増倍を行う前にPBLを追加するかどうかに関係なく、最終的な追加層を多層スタックの外側に追加することができる。これで、最終的な表皮層が形成され、前に塗布されたPBLの外側部分は、この最後の表皮層の下にある下層表皮を形成することになる。ダイは、溶融液流の追加の圧縮および幅の散開を行う。やはり、ダイ(ダイの内部マニホルド、圧力領域などを含む)は、ウェブがダイを出るときにウェブ全体に層が均一に分布するように設計する。
【0092】
表皮層は、壁応力の影響およびその結果生じる流れが不安定になる可能性から比較的薄い光層を保護するために、多層スタックに追加されることが多いが、フィルムの表面に厚い層を追加するためなど、その他の理由もある。フィルム同時押出しの当業者には、多くの理由が明白であり、こうした理由としては、付着性、塗布性、剥離性、摩擦係数などのような表面特性、および障壁特性、耐候性、引掻/摩耗抵抗性などがある。上記のほかに、意外なことに、後に1軸延伸または非常に等しくない2軸延伸が行われるフィルムの場合、「分割性」、つまり比較的高度な圧伸方向に沿って容易に裂けるかまたは破損する傾向は、下層表皮または最も近い光層に良く付着し、圧伸後に自然に伸びる傾向が少ない表皮層ポリマーを選択することにより実質的に抑制することができる。模範的な例は、結晶化および/または結晶配向を抑制するのに十分なコモノマー分を含むPENコポリマー(coPEN)を、PENホモポリマーを含む光多層スタック上の表皮層として使用することである。こうした構造では、フィルムを一方の平面方向に高度に圧伸し、この方向に直交する平面方向にまったく圧伸しないか、またはわずかに延伸すると、coPEN表皮層を含まない類似フィルムに比べて、分割の著しい抑制が見られる。当業者は、その他の光層ポリマーおよび/または下層表皮層ポリマーを補うための類似の表皮層ポリマーを選択することができるであろう。
【0093】
温度調節は、供給ブロックと、供給ブロックからダイリップでの流延までの流れにきわめて重要である。温度は多くの場合均一であることが望ましいが、供給ブロック内の意図的な温度勾配、または供給流の約40℃以下の温度差を使用して、スタック層厚さの分布を狭めるかまたは広げても良い。PBLまたは表皮ブロックへの供給流も、供給ブロックの平均温度とは異なる温度に設定することができる。多くの場合、こうしたPBLまたは表皮流は、約40℃以下高く設定し、これら保護流の粘度または弾性を低下させて、保護層としての効果を高める。場合によっては、これらの流れの温度を約40℃以下に低下させると、これらの流れと他の流れとの間の流動学的一致を改善することができる。たとえば、低粘度の表皮の温度を低下させると、粘度の一致および流れの安定性を高めることができる。また場合によっては、弾性効果を一致させる必要がある。
【0094】
意外なことに、供給ブロック−増倍器−ダイ組立体を加熱する従来の手段、つまり、組立体のボア内に取り付けられる挿入またはロッドまたはカートリッジ型加熱器は、本発明の光学フィルムに必要な温度調節を行うことができない。熱は、以下の方法により、組立体の外部から均一に供給することが好ましい:(i)プレート型加熱器を組立体の外側にタイル状に配置する、(ii)組立体全体を完全に絶縁する、または(iii)これら2つの方法を組合わせる。プレート型加熱器は、鋳造アルミニウムなどのような金属材料中に埋め込まれた抵抗加熱要素を使用する。こうした加熱器は、たとえば供給ブロックなどのような装置に熱を均一に分配する。
【0095】
絶縁体を使用して熱流を調節する方法は新しいことではないが、ポリマー溶融液が組立体から絶縁体上に漏れる可能性があるため、フィルム押出し業界では一般に行われない。層の流れを非常に精密に調節する必要があるという点で、こうした漏れは、本発明のフィルムに使用される供給ブロック−増倍器−ダイ組立体には許容できない。したがって、供給ブロック、増倍器およびダイは、こうしたポリマー溶融液の漏れを防ぐように入念に設計、機械加工、組立て、接続および保持する必要があり、組立体の絶縁は実行可能であるとともに好ましい。
【0096】
挿入またはロッドまたはカートリッジ型加熱器は特有の構造を有し、供給ブロック内で特有の配置を取るが、こうした加熱器は、上記のとおり、供給ブロック内の一定の温度を保ち、約40℃以下の温度勾配を形成するのに有利である。この加熱器は、軸線ロッド加熱器と呼ばれ、供給ブロックを貫通するボア内に配置され、層平面に垂直な方向、好ましくは各々の側部流路管が層スロットに供給する点を通る仮想線の非常に近くに方向付けられる加熱器から成る。さらに好ましくは、第1ポリマーおよび第2ポリマーを同時押出しする場合、軸線ロッド加熱器用のボアは、各々の側部流路管が層スロットに供給する点を通るとともに、第1ポリマーを運ぶ側部流路管および第2ポリマーを運ぶ側部流路管から等距離に位置する仮想線付近に位置する。さらに、軸線ロッド加熱器は、軸線ロッド加熱器の長さに沿った電気抵抗を変えるか、または多数領域の制御、または先行技術で公知のその他の手段により、軸線ロッド加熱器の長さに沿って温度勾配または不連続の温度を提供するタイプであることが好ましい。こうした加熱器は、上記のプレート型加熱器、上記の絶縁体またはこれら両方と組み合わせて使用され、従来の手段に優れた温度調節および/または均一性を提供する。層厚さ勾配および層厚さ分布のこうした優れた調節は、米国特許出願第09/006,085号および第09/006,591号に記載されているように、反射帯域の位置およびプロファイルの調節に特に重要である。
【0097】
剪断速度は、粘度および弾性などのその他の流動学的特性に影響することが観察される。流れの安定性は、場合によって、同時押出しポリマーの粘度(またはその他の流動学的関数)対剪断速度曲線の相対的形状を一致させることにより、改善するようである。つまり、こうした曲線間の最大限の不一致を最小化することは、流れの安定性に適切な目標である。したがって、流れの中の様々な段階で温度差があると、その流れの進路全体における剪断応力またはその他の流量差を平衡させるのに役立つ。
【0098】
ウェブは、流延ホイールまたは流延ドラムと呼ばれることもあるチルロール上に流延される。こうした流延は、ポリエステルフィルムの製造技術で詳細が十分に周知されている静電ピンニングにより促進することが好ましい。本発明の多層光学フィルムの場合、静電ピンニング装置のパラメーターを設定するときに細心の注意を払わなければならない。フィルムの押出し方向に沿った周期的な流延ウェブ厚さの変動は、「ピンニングチャター」(pinning chatter)とも呼ばれ、できる限り避けなければならない。電流、電圧、ピンニングワイヤの太さ、およびダイおよび流延チルロールに対するピンニングワイヤの位置の調整は、すべて影響があることが分かっており、当業者が状況に応じて設定しなければならない。
【0099】
ウェブは、一方の面にホイールが接触し、他方の面に単に空気が接触することにより、表面組織の側面形成、ある程度の結晶化、またはその他の特性を達成する。これは、用途によって望ましい場合もあるし、望ましくない場合もある。こうした側面形成の差を最小限にすることが望ましい場合、ニップロールをチルロールと組み合わせて使用して、急冷を強化するか、または他の場合には流延ウェブの空気側になる側を平滑化させる。
【0100】
場合によっては、多層スタックの片面は、チルロール側で優れた急冷が行われるように選択することが重要である。たとえば、多層スタックが層厚さの分布から成る場合、米国特許出願第08/904,325号に詳しく記載されているように、最も薄い層をチルロールの最も近くに配置することが望ましい場合が多い。
【0101】
場合によっては、フィルムに表面粗さまたは表面組織を与えて、巻取りおよび/またはその後の転換および使用時の取扱いを改善することが望ましい。こうした多くの場合は、フィルム製造の当業者が周知している。本発明の光学フィルムに密接な関係がある特定の例は、こうしたフィルムが、ガラスプレートまたは第2のフィルムに密接に接触する用途のために意図される場合に生じる。こうした場合は、光学フィルムがプレートまたは第2のフィルム上で選択的に「浸潤」(wetting out)状態になることにより、「ニュートンの環」と呼ばれる現象が生じる可能性があり、その結果、広い範囲にわたって光学素子の均一性が損なわれる。表面組織または粗い表面は、浸潤状態およびニュートンの環現象が生じるのに必要な密接な接触を防ぐ。
【0102】
ポリエステルフィルムの分野では、少量の微粒子材料(「スリップ剤」と呼ばれることが多い)を含んで、こうした表面粗さまたは組織を与えることは十分に周知されている。これは、本発明の光学フィルムで行うことができる。しかし、スリップ剤微粒子を含むことにより、少量の曇りが生じ、フィルムの光透過が多少低下する。本発明によると、フィルムの流延時に微細エンボス加工ロールに接触させて表面粗さまたは組織を与えると、曇りを生じないで、きわめて効果的にニュートンの環を防ぐことができる。微細エンボス加工ロールは、流延ホイールに対するニップロールとして機能することが好ましい。あるいは、流延ホイール自体に微細組織を形成しても、類似の効果を得ることができる。さらに、微細組織付き流延ホイールおよび微細組織付きニップロールの両方を一緒に使用すると、微細エンボス加工済みの両面を有する粗さまたは組織を形成することができる。
【0103】
さらに、本発明の出願人は、他の場合にはフィルムの空気側になる側の急冷を促進するほかに、流延チルロール部に平滑なニップロールを使用しても、上記のとおり、ダイのライン、ピンニングチャターおよびその他の厚さの変動の大きさを著しく減少させることができる。ウェブは、ウェブを横断して均一な厚さに流延するか、またはダイリップの調節を使用して、ウェブ厚さのプロファイルを意図的に形成する。こうしたプロファイルは、フィルム処理の終わりまでに均一性を改善する。他の場合には、流延の厚さが均一であれば、フィルム処理が終わる時点で均一性が最善になる。処理機器の振動を調節することも、流延多層ウェブの「チャター」を減少させる上で重要である。
【0104】
様々な処理段階における滞留時間は、一定の剪断速度でも重要である。たとえば、層間の相互拡散は、滞留時間を調節して変更および調整することができる。この場合の相互拡散とは、個々の層の材料間の接触および反応過程、たとえば通常の拡散、架橋反応またはエステル交換反応などのような様々な分子運動を指す。層間を良好に付着させて剥離を防ぐには、十分な相互拡散が望ましい。しかし、相互拡散が過度である場合は、層間の組成の識別性が著しく失われるなど、有害な影響の原因になる可能性がある。相互拡散は、層間の共重合または混合を生じる可能性もあり、圧伸時に層の被延伸能力が低下する場合もある。こうした悪影響のある相互拡散が生じる滞留時間の規模は、良好な層間付着が行われるのに必要な規模よりもはるかに大きいため(たとえば、1桁以上)、滞留時間を最適化すると良い。しかし、多少大規模な相互拡散は、たとえば皺のある構造を形成するなどのため、層間の組成の分布を測定する上で有用である。
【0105】
相互拡散の影響は、さらに層を圧縮しても変更することができる。したがって、一定の滞留時間における影響は、最終圧縮比に対する当該時間間隔における層の圧縮状態の関数でもある。比較的薄い層は、相互拡散の影響を受けやすいため、流延ホイールの最も近くに配置して、急冷を最大限にするのが一般的である。
【0106】
最後に、本発明の出願人は、多層フィルムを流延、急冷および圧伸した後、高温での熱硬化により相互拡散を強化できることを発見した。熱硬化は、テンターオーブン内で、横断方向の圧伸領域の次の領域で通常行われる。一般に、ポリエステルフィルムの場合、熱硬化温度は、結晶化を最大化するとともに、寸法安定特性を最適にするように選択する。この温度は、ガラス転移温度と融解温度の間であって、どちらかの温度にのみ非常に近くないように一般に選択される。多層フィルム内のポリマーの中で融解点が最低のポリマーの融解点に近い熱硬化温度を選択することは、最終段階の延伸を維持する上で望ましく、層間の付着が著しく改善される。これは、オンラインでの熱硬化に要する滞留時間が短く、処理段階におけるポリマーが非溶融性であるため意外である。さらに、オフラインでの加熱処理が非常に長時間であることは、多層フィルムの層間付着を改善することが分かっているが、このような処理は、弾性率またはフィルム平面度など、その他の特性を悪化させる傾向がある。こうした悪化は、たとえばオンラインでの高温熱硬化処理では見られなかった。
【0107】
流延ホイールにおける条件は、所望の結果に応じて設定する。急冷温度は、光学的透明性が望ましい場合、曇りを制限するのに十分に低温でなければならない。ポリエステルの場合、一般的な流延温度は10℃〜60℃である。この温度範囲の比較的高温部分は、平滑化またはエンボス加工ロールに関連して使用するが、比較的低温部分は、厚いウェブをより効果的に急冷することができる。流延ホイールの速度をさらに使用して、急冷および層の厚さを調整する。たとえば、押出機の揚送速度を遅くすると、剪断速度が遅くなるかまたは相互拡散が増加し、流延ホイールの速度を上昇させると、所望の流延ウェブ厚さを維持することができる。流延ウェブの厚さは、厚さの減少を伴うすべての圧伸の終わりに、所望の空間帯が最終層厚さ分布になるように選択する。
【0108】
多層ウェブは、圧伸されて最終多層光学フィルムを形成する。圧伸の主な理由は、1つまたは複数の材料層に複屈折を誘発させて、最終光スタックの光パワーを増加することである。一般に、少なくとも1つの材料は、圧伸により複屈折になる。この複屈折は、選択した圧伸過程が行われた材料の分子配向から生じる。この複屈折は、圧伸過程の応力または歪によって誘発される結晶の成核および成長(たとえば、応力誘発結晶化)により著しく増加することが多い。結晶化は、複屈折の発生を妨げる分子の緩和を抑制し、結晶自体も圧伸によって延伸する。場合により、結晶のいくつかまたはすべては予め存在するか、または圧伸前の流延もしくは予熱によって生じる。光学フィルムを圧伸するその他の理由としては、処理量の増加およびフィルムの機械的特性の改善があるが、これらだけに限らない。
【0109】
多層偏光子を製造する1つの代表的な方法では、1つの圧伸ステップを使用する。この工程は、テンターまたは長さ延伸機で行う。代表的なテンターは、ウェブ径路に対して横断方向(TD)に圧伸するが、特定のテンターは、ウェブ径路の寸法方向つまり縦方向(MD)にフィルムを圧伸または緩和(収縮)する。したがって、この代表的な方法では、フィルムは、平面内方向に圧伸される。第2の平面内寸法は、従来のテンターの場合のように一定に保つか、または長さ延伸機の場合のように比較的小さい幅に縮小することができる。こうした縮小は重要であり、圧伸比に応じて増加する。弾性の圧縮不能なウェブの場合、最終幅は、長さ方向の圧伸比×初期幅の平方根の逆数として理論上概算される。この理論上の場合では、厚さも同じ割合だけ減少する。実際上、こうした縮小では、理論上の幅より多少広い幅になり、ウェブの厚さは減少して、およその容積保存を維持する。しかし、容積は必ずしも保存されないので、この説明と一致しない可能性がある。
【0110】
多層鏡を製造する1つの代表的な方法では、2段階圧伸工程を試用して、複屈折材料を平面内の両方向に延伸する。圧伸工程は、上記の1段階工程の組合わせであり、平面内の2方向に圧伸することができる。さらに、MDに沿った圧伸を可能にするテンター、たとえば2方向に順次または同時に圧伸することができる2軸テンターを使用しても良い。同時に圧伸する場合、1回の2軸圧伸過程を使用する。
【0111】
多層偏光子を製造するさらにもう1つの方法では、各種材料の異なる作用を個々の圧伸ステップに利用する複数圧伸工程を使用して、1つの同時押出し多層フィルム内に様々な材料を含む様々な層が、互いに異なる程度およびタイプで延伸されるようにする。この方法で鏡を形成することもできる。こうした光学フィルムおよび方法は、米国特許出願第09/006,455号に記載されている。
【0112】
多層偏光子フィルムの圧伸条件は、第1材料が、圧伸後の平面内で高度に複屈折を示すように選択されることが多い。複屈折材料は、第2材料として使用する。第2材料が、第1材料と同じ向きの複屈折を有する(たとえば、どちらの材料も正複屈折である)場合、第2材料は、本質的に等方性を保つように選択することが好ましい。他の実施態様では、第2材料は、圧伸した場合に、第1材料の向きと逆の複屈折を有するように選択する(たとえば、第1材料が正複屈折である場合、第2材料は負複屈折である)。正複屈折の第1材料の場合、最高平面内屈折率の方向、つまり第1平面内方向は圧伸方向と一致するが、第1材料の最低平面内屈折率の方向、つまり第2平面内方向は圧伸方向に垂直である。同様に、多層鏡フィルムの場合、第1材料は、大きい平面外複屈折を有し、平面内屈折率が、正複屈折材料の場合は最初の等方性値より大きいか、または負複屈折材料の場合は低くなるように選択する。鏡の場合、多くは、反射が両方の偏光状態で類似するように、つまり平衡鏡であるように、平面内複屈折が小さいことが好ましい。鏡の場合の第2材料は、偏光子の場合と同様に、等方性であるか、または反対の向きの複屈折であるように選択する。
【0113】
多層光学フィルムのもう1つの実施態様では、偏光子は、2軸工程により製造される。さらにもう1つの実施態様では、平衡鏡は、平面内複屈折、ひいては平面内非対称性が重要な2つ以上の材料を形成する工程により製造し、非対称性が一致して、平衡が取れた結果、たとえば両方の主平面内方向にほぼ等しい屈折率の差を生じるようにする。
【0114】
特定の工程では、ウェブ下流方向の張力の変化などの工程条件の影響により、軸線の回転が生じる可能性がある。これは、場合により、従来のテンターで製造されるフィルムの場合「前方屈折」(bow−forward)または「後方屈折」(bow−back)と呼ばれることがある。光軸の均一な方向性は、効力および性能を強化する上で一般に望ましい。こうした屈曲および回転を制限する方法、たとえば、機械的または熱的方法による張力の調整または隔離を利用すると良い。
【0115】
多くの場合、テンター内の縦方向に対して横断方向のフィルムの圧伸は不均一であり、フィルムがウェブの把持縁部に接近するにつれて、厚さ、延伸具合またはこれら両方が変化することが観察される。一般に、こうした変化は、把持縁部付近のウェブはウェブ中心よりも低温であるという仮説に一致する。こうした不均一性により、最終フィルムに使用可能な幅が著しく減少する可能性がある。この制限は、本発明の光学フィルムの場合はさらに重大である。なぜなら、フィルム厚さの非常に小さな差によって、ウェブを横断する光学的特性が不均一になる可能性があるからである。本発明の出願人には、圧伸具合、厚さおよび色の不均一さは、赤外線加熱器を使用して、テンター把持器付近のフィルムウェブの縁部をさらに加熱すると改善できることが分かる。こうした赤外線加熱器は、テンターの予熱領域の前、予熱領域内、伸長領域内、またはこれらの位置の組合わせに使用することができる。当業者は、赤外線熱追加の領域および調整に多くの選択肢があることが分かるであろう。さらに、赤外線縁部加熱と流延ウェブのウェブ横方向の厚さプロファイルとを組み合わせる可能性も明白である。
【0116】
本発明の特定の多層光学フィルムについては、1つまたは複数の特性が、最終フィルムで測定して、縦方向および横方向に同じ値を有するようにフィルムを圧伸することが望ましい。こうしたフィルムは、「平衡」フィルムと呼ばれることが多い。縦方向および横方向の平衡は、2軸延伸フィルム製造の分野で十分に周知されている技術により、工程条件を選択して行われる。一般に、調査する工程パラメーターとしては、縦方向の延伸予熱温度、伸長温度および圧伸比、テンターの予熱温度、伸長温度および圧伸比、並びに場合によりテンターの伸長後領域に関連するパラメーターが挙げられる。その他のパラメーターも重要である。一般に、計画した実験を行って分析し、条件の適切な組合わせを求める。当業者には、各々のフィルム構成およびフィルムが製造される各々のフィルムラインについて、こうした評価を個々に行う必要が分かるであろう。
【0117】
同様に、寸法安定性のパラメーター(高温における収縮性および熱膨張の可逆係数など)は、先行技術で周知されている従来のフィルムの場合と同様、様々な工程条件により影響を受ける。こうしたパラメーターとしては、熱硬化温度、熱硬化持続時間、熱硬化時の横断方向寸法緩和(「トーイン」)、ウェブの冷却、ウェブの張力、およびロールに巻き取った後の熱「浸漬」(つまり焼鈍)が挙げられるが、これらだけに限らない。やはり、当業者は、計画した実験を行って、特定フィルムライン上の特定のフィルム組成物の走行について、寸法安定性要件の特定の集合に対する最適な条件を決定することができる。
【0118】
一般に、多層流の安定性は、粘度および弾性などの流動学的特性を第1および第2材料間で一定の誤差内に一致させるかまたは平衡させることにより得られる。必要な誤差または平衡のレベルは、PBLおよび表皮層に選択した材料によっても決まる。多くの場合、1つまたは複数の光スタック材料を個々に様々なPBLまたは表皮層に使用することが望ましい。ポリエステルの場合、高粘度材料と低粘度材料との代表的な比率は、供給ブロック、増倍器およびダイの一般的な工程条件で4:1以下であるが、2:1以下であれば好ましく、1.5:1以下であれば最も好ましい。比較的低粘度の光スタック材料をPBLおよび表皮層に使用すると、一般に流れの安定性が強化される。特定の第1材料とともに使用する第2材料に対する要件の比較的大きい許容範囲は、これらPBLおよび表皮の追加層の追加の材料を選択して得られる場合が多い。多くの場合、こうした第3材料の粘度要件は、第1および第2材料を含む多層スタックの有効平均粘度と平衡させる。一般に、PBLおよび表皮層の粘度は、安定性を最大限にするには、このスタック平均より低くなければならない。安定性の処理枠が大きい場合、より高粘度の材料をこれら追加の層に使用して、たとえば、長さ延伸機における流延の下流のローラに付着するのを防ぐことができる。
【0119】
圧伸互換性は、望ましくない光学的作用を生じる原因になるような多層に対する破損などの悪影響、または空隙の形成もしくは応力白化現象を生じたりすることがない状態で、第2材料について、第1材料に所望の複屈折を得るのに必要な圧伸処理を行うことができることを意味する。圧伸互換性を得るには、第2材料のガラス転移温度は、第1材料のガラス転移温度よりもせいぜい40℃高温である必要がある。この制限を改善するには、圧伸速度を非常に速くして第1材料の延伸工程を比較的高温でも可能になるようにするか、または結晶化もしくは架橋現象により、こうした比較的高い温度で第1材料の延伸を強化する。また、圧伸互換性のためには、第2材料が、本質的に等方性屈折率であるか、または高度に複屈折状態であるかに関係なく、処理の終わりに所望の光状態を達成できなければならない。
【0120】
最終処理後に等方性を保つ第2材料の場合、材料を選択して処理する少なくとも3つの方法を使用して、圧伸互換性のこの第2の要件を満たすことができる。第1に、第2材料は、ポリメチルメタクリレートなどのように本質的に非複屈折で良い。この場合、ポリマーは、圧伸後に実質的に分子配向が存在する場合、屈折率で測定して光学的に等方性の状態を保つ。第2に、第2材料は、異なる条件で圧伸された場合に複屈折になるとしても、第1材料の圧伸条件で非延伸状態を保つように選択することができる。第3に、第2材料は、熱硬化ステップなど、後続の処理で延伸状態が失われれば、圧伸工程で延伸することができる。最終的に所望のフィルムが1つを超える高度な複屈折材料(たとえば、特定の2軸圧伸計画で製造された偏光子)を含む複数圧伸計画の場合、圧伸互換性はこうした方法を必要としない。あるいは、第3の方法を適用して、特定の圧伸ステップ後に等方性を達成するか、またはこれらの方法のどれかを第3または第3以降の材料に使用することができる。
【0121】
圧伸条件は、第1および第2の光学的材料並びに表皮層およびPBL層の任意の材料の異なる粘弾性を利用するように選択して、第1材料が、圧伸時に高度に延伸され、第2材料が、上記の第2計画により、圧伸後に非延伸状態であるかまたはごくわずかに延伸されるようにすることもできる。粘弾性は、ポリマーの基本的な特性である。ポリマーの粘弾性は、ポリマーが歪に対して粘性の液体または弾性の固体のように反応する傾向を説明するために使用する。高温および/または低歪速度では、ポリマーは、圧伸された場合、分子配向が殆どまたはまったくない粘性液体のように流れる。低温および/または高歪速度では、ポリマーは、付随する分子配向を有する固体のように弾性的に移動する傾向がある。低温過程は、ポリマー材料のガラス転移温度付近で生じる過程と一般に考えられ、高温過程は、このガラス転移温度を実質的に超える温度で生じる。
【0122】
粘弾性作用は、一般に、ポリマー材料の分子緩和速度の結果である。一般に、分子緩和は、多くが分子量に依存する多数の分子力学の結果であり、したがって、多分数ポリマー材料は、多分数ポリマー中の各々の分子量部分が最長の緩和時間を有する緩和時間分布を有する。分子緩和速度は、平均最長全体緩和時間(つまり、全体の分子転位)またはこうした時間の分布で特徴付けることができる。特定分布の平均最長緩和時間の正確な数値は、この分布内の様々な時間が平均してどの程度加重されるかの関数である。平均最長緩和時間は、一般に温度が低下するにつれて増加し、ガラス転移温度付近で非常に大きくなる。平均最長緩和時間は、実際の目的では、一般に使用する処理時間および温度での緩和を抑制するポリマー材料中の結晶化および/または架橋によっても増加する可能性がある。分子量および分布並びに化学組成および構造(たとえば分枝)も、こうした最長緩和時間に影響する可能性がある。
【0123】
樹脂の選択は、特徴的な緩和時間に強く影響する。平均分子量、MWは、特に目立つ要素である。特定の組成では、特性時間は、分子量が絡み合い閾値を十分に超えるポリマーの場合、分子量の関数(一般に分子量の3〜3.5乗)として増加する傾向がある。絡み合わないポリマーの場合、特性時間は、分子量の相関度が比較的弱い関数として増加する傾向がある。この閾値未満のポリマーは、ガラス転移温度未満の場合に脆性の傾向があって一般に望ましくないため、ここでは主としては取り上げない。しかし、特定の比較的低分子量の材料は、ガラス転移温度を超える低分子量のゴム状材料、たとえばエラストマーまたは粘着層のように、比較的高分子量の層と組み合わせて使用することができる。平均分子量ではなく内部粘度つまり固有粘度、IVは、一般に実際に測定される。IVはMWαとして変化し、ここでαは溶剤依存Mark−Houwink累乗の指数である。累乗の指数αは、ポリマーの溶解性とともに増加する。代表的なα値は、60:40のフェノール:オルト−クロロベンゼンの溶液中で測定して、PEN(ポリエチレンナフタレート)では0.62であり、PET(ポリエチレンテレフタレート)では0.68であり、コポリマーの場合はこの2つの中間である(たとえばcoPEN)。PBT(ポリブチレンテレフタレート)は、選択する溶剤の溶解性の改善を仮定して、比較的長いアルカングリコール(たとえばヘキサンジオール)と同様、PETよりもさらに大きいα値を有すると思われる。特定のポリマーの場合、比較的良質の溶剤は、本明細書に引用する溶剤に比べて、大きな累乗の指数を有する。したがって、特性時間は、IVの累乗につれて変化すると予想され、その累乗の指数は3/α〜3.5/αである。たとえば、PEN樹脂のIVが20%増加すると、特定の工程温度および歪速度で、有効特性時間、ひいてはWeissenberg数(以下に定義する)および圧伸流の有効強度が約2.4〜2.8だけ増加すると考えられる。IVが比較的低い樹脂は流れが弱いため、本発明では、所望の最終複屈折が低い第2ポリマーには、IVが比較的低い樹脂が好ましく、複屈折が高い第1ポリマーを必要とする比較的強度の流れには、IVが比較的高い樹脂が好ましい。この実施上の制限は、低IVの端部の脆性、および同時押出し時に流動学的互換性が適切である必要性によって決まる。第1および第2材料の両方に強度の流れおよび高い複屈折が必要なその他の実施態様では、両方の材料に比較的高いIVが望ましい。処理に関するその他の問題、たとえば、溶融液流フィルターに見られる上流の圧力降下なども重要になる可能性がある。
【0124】
歪速度プロファイルの重度は、特定材料の歪速度と平均最長緩和時間との積であるWeissenberg数(Ws)を最初に概算して特徴付けることができる。弱い圧伸と強い圧伸との間の閾値Ws(この値より下またはこの値より上では、材料は等方性を保つか、または強度の延伸、結晶化および高度の複屈折をそれぞれ生じる)は、多分散性ポリマー材料中の平均最長緩和時間としてのこの平均最長緩和時間の正確な定義によって決まる。特定材料の反応は、圧伸温度、処理の速度および比率を調整することにより変えることができることが分かる。実質的な分子配向を生じるのに十分な短時間および/または十分な低温で行われる処理は、延伸または強度の圧伸処理である。分子配向が殆どまたはまったく生じないような十分な長時間および/または十分な高温で行われる処理は、非延伸または弱い処理である。
【0125】
もう1つの重要な問題は、圧伸処理の持続時間である。強度の圧伸処理は、一般に、十分な延伸を生じる、たとえば歪誘発結晶化の閾値を超え、それにより第1材料に高度の複屈折を生じるのに十分な持続時間(つまり、十分に高い圧伸比)を必要とする。したがって、歪速度の履歴プロファイルは、一連の圧伸工程が経過する過程での瞬間歪速度の集合であるが、これは、圧伸過程の重要な要素である。圧伸過程全体の瞬間歪速度の蓄積は、最終的な圧伸比である。温度および歪速度の圧伸プロファイルの履歴は、当該ポリマーの特性時間および過冷却を仮定すると、第1ポリマーが歪誘発結晶化を開始する圧伸比を決定する。一般に、この開始圧伸比は、Wsが増加するにつれて低下する。PETの場合、実験による証拠は、この開始圧伸比の限度が、非常に高度の歪速度で1.5〜2であることを示す。比較的低い歪速度では、PETの開始圧伸比は3を超える可能性がある。延伸の最終レベルは、最終圧伸比対開始圧伸比の比率と相関することが多い。
【0126】
温度は、材料の特性平均最長緩和時間に主な影響を及ぼし、したがって、特定材料が弱い流れを生じるかまたは強い流れを生じるかを決定する主な要素である。温度に対する特性時間の依存は、十分に周知されているWLF方程式により数量化できる。[1970年にニューヨークのJohn Wiley & Sonsが発行したJ.D.Ferry著「Viscoelastic Properties of Polymers(ポリマーの粘弾性)参照]。この方程式は、c1、c2およびT0の3つのパラメーターを含む。多くの場合、T0は、ガラス転移温度Tgに関連する。多くのポリマーを最初に概算するときに適用されるc1およびc2のおおよその「普遍」値を使用すると、WLF方程式は、緩和時間および温度に大きく依存することを示す。たとえば、Tgより5℃高い温度における緩和時間を比較値として使用すると、Tgより10℃、15℃および20℃高い温度における緩和時間は、それぞれ約20倍、250倍および2000倍短い。WLFパラメーターの比較的高度の精度は、特定クラスのポリマー、たとえばポリエステルの経験的曲線適合技術を使用して求めることができる。したがって、第1近似値として、温度が特性時間に及ぼす影響の1つの最も重要なパラメーターはTgである。ウェブ温度とTgとの温度差が大きくなるにつれて、特性時間は短くなり、その結果圧伸流は弱くなる。さらに、この説明は結晶化前の圧伸過程、特に歪誘発結晶化に最も関係があるということを繰り返し述べる。結晶化が生じた後、結晶の存在は、緩和時間をさらに遅延させ、さもなければ弱い流れを強い流れに転換する可能性がある。
【0127】
処理に応じて材料の延伸/非延伸反応を考慮するときに材料および処理条件を選択することにより、フィルムは、第1材料が延伸されて複屈折を示し、第2材料が本質的に延伸されないように、つまり処理が、第1材料については強い圧伸処理であり、第2材料については弱い圧伸処理であるように構成することができる。強い流れおよび弱い流れの一例として、IVが約0.48、初期圧伸比が毎秒約15%、圧伸比を線形に最終圧伸比まで増加させる1軸圧伸プロファイルが6.0であるPENを考える。ウェブ温度が約155℃の場合、PENは、PENを低複屈折状態に保つ弱い流れを生じる。135℃では、PENは、PENを高度の複屈折にする強い流れを生じる。延伸および結晶化の程度は、温度がさらに低下するにつれて、この強い流れの状況で増加する。これらの値は、具体的に示すために記載するのであって、これらの状況の値を制限するものと解釈するべきではない。
【0128】
材料の選択にさらに一般的な範囲は、ポリエステルの比較的一般的な場合を考えると理解することができる。PETの場合、WLFパラメーターの近似値は、c1=11.5、c2=55.2、およびT0=Tg+4℃=80℃と考えることができる。これらの値は、具体的に示すことのみが目的であり、これらの定数を実験的に決定すると、多少異なる結果になると考えられる。たとえば、c1=17.7、c2=51.6、およびT0=85℃という「普遍」値を使用する代替値が提案された。ガラス転移温度より20℃高い温度では、温度が5℃上昇/低下する影響は、特性時間およびWsを4だけ減少/増加させることである。ガラス転移温度より10℃高い温度では、この影響ははるかに強く、約10である。PENの場合、T0を約127℃で概算する。DMIベースのポリエステル(たとえばPEI)の場合、T0を約64℃で概算する。ヘキサンジオールなどのような多少高いアルカングリコールを含むポリエステルのガラス転移温度は、上記の例のWLF値に基づいて、エチレングリコールが1%置換するごとにガラス転移温度が1℃低下すると予想される。coPENの場合、ガラス転移は、いわゆるFoxの方程式を使って概算できる。coPENガラス転移温度(絶対温度)の逆数は、coPEN成分の逆数のガラス転移温度(絶対温度)の線形合成加重平均に等しい。したがって、ナフタレンジカルボキシレート(NDC)が70%およびジメチルテレフタレート(DMT)が30%のcoPENは、PENおよびPETのガラス転移温度がそれぞれ123℃および76℃であると仮定して、約107℃の概算ガラス転移温度を有する。同様に、NDCが70%およびDMIが30%のcoPENのガラス転移温度は、約102℃である。およそ、後者のcoPENは、同じ条件下でPENの弱い流れに必要な温度より20℃低い温度で弱い流れを生じると予想される。したがって、135℃のウェブ温度では、引用した処理条件において、coPENは比較的弱く延伸され、PENは比較的強く延伸される。樹脂のこうした特定の選択は、多層反射偏光子の好適な実施態様の一例として第WO95/17303号で以前に引用された。
【0129】
温度は、成核および結晶成長の速度を変えることにより、流れの強度に2次的な影響を与える。非圧伸状態では、最大結晶化速度の温度がある。この速度は、緩和時間で特徴付けられるように、分子運動がはるかに遅いため、この温度未満では遅くなる。この温度を超える温度では、この速度は、過冷却の程度(融解温度−処理温度)が減少した分だけ遅くなり、こうした過冷却は、結晶化の熱力学的推進力に関連する。圧伸が迅速であり、温度がTg付近である場合、歪誘発結晶化の開始は、温度を上昇させることにより強化される(圧伸がより強力になる)。なぜなら、比較的高い温度では、追加の緩和は殆ど生じず、成核および成長が促進されるからである。圧伸温度が融解点付近である場合、圧伸温度を上昇させ、ひいては過冷却の程度を減少させることにより、歪誘発結晶化の速度が低下し、こうした結晶化の開始が遅延し、その結果、流れは効果的に比較的弱くなる。材料は、低融点を有し、その結果過冷却が殆どまたはまったく生じないように意図的に設計することができる。コポリマーは、追加モノマーの不純物の影響により融点が低くなることが周知されている。こうした影響を効果的に使用すると、第2ポリマーを低延伸状態に保つことができる。
【0130】
融点の上記の影響を使用すると、第2材料が所望の等方性を有する場合に、圧伸互換性を得るための第3の方法を行うこともできる。あるいは、こうした影響を複数圧伸工程の圧伸ステップ後に使用すると、1つまたは複数の材料に等方性を生じさせることができる。第1および第2材料の両方に強力な圧伸処理は、後続のステップで第2ポリマーの圧伸の影響をなくすことができれば使用して良い。たとえば、熱硬化ステップを使用すると、延伸済みだがまだ非晶質の第2ポリマーの緩和を行うことができる。同様に、熱硬化ステップを使用すると、延伸済みかつ結晶化済みの第2ポリマーが適切に急冷されていれば、この第2ポリマーを融解させることができる。
【0131】
熱硬化は、寸法安定性(温度および湿度の両方に関する)および層間付着性などのようなその他の特性を改善するのにも有用である。最後に、巻取り前の急冷時の張力条件も、収縮などのような物理的特性に影響する可能性がある。トーイン(横断方向の圧伸比の減少)により巻取り張力を減少させるとともに、ウェブ横方向の張力を減少させることにより、様々な多層光学フィルム内の収縮率を低下させることができる。フィルムロールの巻取り後の熱処理を使用しても、寸法安定性を改善し、収縮率を低下させることができる。
【0132】
一般に、強度の流れの変形を生じる複屈折は、圧伸比とともに増加する傾向がある。歪誘発結晶化により、特定の圧伸比では、こうした複屈折がより著しく増加し始める重要な圧伸比がある。結晶化の開始後、さらに圧伸することにより継続する成核および成長の相対量の変化によって、勾配は再び変化する(たとえば低下する)。本発明の多層光学フィルムの場合、少なくとも1つのポリマーの複屈折が増加することにより、多層スタックの層厚さに適する波長の光の反射が増加する。この反射力も、延伸の相対的程度が増加する傾向がある。
【0133】
一方、多層スタック内の層間の付着は、圧伸により悪影響を受けることが多く、伸長済みフィルムは、フィルムが形成された流延ウェブに比べて、層が表層剥離する傾向がはるかに大きい。意外なことに、本発明の発明者が発見したところでは、こうした層間付着の低下は、ある処理/材料の組合わせにおいて臨界点を生じ、大多数の低下は、特定の圧伸比を超えたときに比較的に急激に生じる。この重要な変化は、複屈折の変化と必ずしも相関しない。場合によっては、挙動は非線形であり、必ずしも急激ではない。この臨界圧伸比の存在および値は、関連するポリマーおよびその他多数の処理条件の複合的な作用であり、状況に応じて決定する必要がある。明らかに、圧伸比を考慮した高度の消光と高度の層間付着との調整は、急激な変化またはその他の関数形態の存在および位置によって左右され、たとえば、特定フィルムの最適な圧伸比は、最大限可能な圧伸比、および急激な層間付着の変化が生じる圧伸比よりすぐ下の圧伸比から選択される。
【0134】
その他の処理の調整もあるが、特定の樹脂系の選択には明白である。たとえば、特定の樹脂系では、圧伸比が比較的高いことによって、角度外の色も増加する。角度外の色の増加は、第1材料(PENなど)のz屈折率が低下する一方、第2材料のz屈折率がほぼ一定を保つために、z屈折率(平面外屈折率)の層間不一致の増加から生じる可能性がある。芳香族ポリエステルのz屈折率の低下は、フィルム内の結晶の平坦化に関連し、こうした平坦化によって、芳香環の平面はフィルムの平面に位置する傾向がある。こうした調整は、場合によっては、樹脂対の選択を変えることにより回避できる場合もある。たとえば、結晶化のレベルを低下させるとともに、特定レベルの延伸を維持すると、平面内圧伸方向および平面内非圧伸方向の屈折率の差がほぼ同じである限り、消光力を低下させずに、層間付着および角度外の色の両方を改善することができる。この後者の条件は、高NDC分のcoPENを第1ポリマーとして使用することにより満たすことができる。これらポリマーの融点が比較的低いことは、比較的低レベルの結晶化が同レベルの延伸で得られ、角度外の色を減少させ、かつ可能性として層間付着を増加させた状態で消光を維持できることを示唆する。類似の処理の問題は、表皮および/またはPBLに使用する材料など、追加の材料に関連することが分かる。これらの材料は、等方性であるため、厚い複屈折層からの偏光の遅延が回避される場合、所望の等方性を有する第2ポリマーの要件に従って選択するべきである。
【0135】
最後に、本発明による高品質の光学フィルムを形成するため、処理条件の念入りな調整および均一性を認識すべきである。圧伸の均一性は、温度に強く影響されるので均一なフィルムには、均一な温度が一般に望ましい。同様に、キャリパ(厚さ)および組成が均一であることも望ましい。均一性を得るのに好ましい1つの方法は、平らで均一なフィルムを流延してから均一に圧伸して、均一な最終フィルムを製造することである。多くの場合、こうした処理により、最終フィルム特性として、たとえば角度外の色は比較的均一であり、たとえば層間付着は比較的良好である。特定の状況では、流延厚さのプロファイリングを使用して、不均一な圧伸を補正し、キャリパが均一な最終フィルムを形成することができる。さらに、上記の赤外線による縁部加熱を流延厚さのプロファイリングに関連して使用しても良い。
【0136】
フィルムの均一性
本発明により製造される高品質の多層光学フィルムおよびその他の光装置は、先行技術のフィルムを使って利用可能な領域をはるかに超える大きな領域で、ある程度の物理学的光学的均一性を示すように製造することができる。本発明の方法では、先行技術の流延(非圧伸)フィルムに生じる層厚さおよび光キャリパの歪みは、約2×2〜約6×6、好ましくは4×4だけ流延ウェブを2軸伸長させて回避され、側方の層厚さの変動、したがって色の変動はそれほど急激ではなくなる。さらに、フィルムは、最終的なフィルムを伸長させずに直接流延するのと対照的に、流延ウェブを伸長させて製造されるため、必要な流延ウェブは比較的狭く、著しく少ない層拡散が比較的狭いダイに生じるので、押出ダイ内の層厚さ分布の歪みが少なくなる可能性がある。
【0137】
上記で説明し、層厚さ均一性の改善を意図するその他の多くの方法は、色は層厚さに直接依存するため、色の均一性も改善する。こうした方法としては、増倍器の樹脂系の流動学的一致、濾過、供給ブロックの構造、増倍器の構造、ダイの構造、PBLおよび表皮層の選択、温度調節、静電ピンニングパラメーター、ウェブ厚さ変動走査装置の使用、流延ニップロールの使用、振動の調節、およびテンター内のウェブ縁部加熱が挙げられるが、これらだけに限らない。
【0138】
押出機器の構造および機械加工、並びに押出しの調整に誤差があると、系統的および確率的厚さ誤差の原因になる。概して色が均一なフィルムの場合、確率的誤差は、色がウェブ縦方向とウェブ横方向の両方に変化する原因になり、系統的誤差は、色を変化させることはないが、フィルムの全体的な色とウェブ横方向の色の変化との両方に影響する。
【0139】
確率的および系統的誤差は、フィルム全体のキャリパおよび個々の層について生じる可能性がある。全体的なフィルムキャリパ誤差は、光透過または反射スペクトルを介して最も容易に検出および監視される。したがって、オンライン分光光度計は、フィルムがラインを出るときのフィルムのスペクトル透過を測定して、色の均一性を測定し、かつ工程管理用のフィードバックを提供するのに必要な情報を提供するように構成することができる。個々の層の誤差は、主に、層が光スタック内にあるかどうか、および誤差の大きさによって、知覚される色に影響する場合もあるし、影響しない場合もある。
【0140】
系統的誤差は、スタック内のどれかまたはすべての層の設計厚さからの反復性誤差である。こうした誤差が生じるのは、増倍器および供給ブロックの設計に使用するポリマー流のモデルに固有な設計近似値、または供給ブロックおよびダイの機械加工誤差のためである。こうした誤差は、誤差が減少して設計基準に達するまで再設計および再機械加工してなくすことができる。こうした誤差は、増倍器を使用せずに、光学フィルム内に必要な数の層を形成するように供給ブロックを機械加工して減少させることもできる。
【0141】
確率的誤差は、以下により生じる可能性がある:(1)供給ブロックおよびダイ領域の温度の変動、(2)樹脂の不均質性、(3)溶融液系統全体の溶融液温度管理が不適切であり、溶融液流の部分を選択的に劣化させる、(4)劣化した樹脂による供給ブロックまたはダイの汚染、(5)溶融液の圧力、温度および揚送速度の変化などのプロセス制御誤差、および(6)水力学的な流れの不安定性。流れをモデル化することは、こうした流れの不安定性を生じる条件を回避する上で、供給ブロックおよびダイの設計に対する情報になる。
【0142】
全体的な厚さの不均一性は、ダイの構造、流延ホイール速度の変動、システムの振動、ダイ隙間調整、静電ピンニング、およびフィルム伸長条件によって影響を受ける。こうした変動は、確率的な場合もあれば系統的な場合もある。系統的誤差は、必ずしも一定の(たとえば、変化しない)色を与えない。たとえば、ダイまたは流延ホイールの振動によって、0.5〜50cm台の周期で、空間的色の変動が反復する可能性がある。周期的な空間的色の変動が最終フィルムに望ましい装飾用フィルムなどの特定用途では、制御された周期的振動を流延ホイールに意図的に与えることができる。しかし、色の均一性が望ましく、良好な厚さ調整が不可欠な場合、流延ホイールには、たとえばギヤ減速を行わないダイレクトドライブモータを装備する。こうしたモータの一例は、Kollmorganから市販されている部品番号TT−10051AなどのようなD.C.ブラシサーボモータである。ギヤ減速を含む比較的高速のモータを使用しても良いが、適切に電気的同調および平滑なギヤボックスを含む高品質のシステムが不可欠である。システムの振動、特に流延ホイールに関連するダイの振動は、流延施設の床上のコンクリートパッドに流延ステーションを配置して最小限にすることができる。振動を減衰または隔離するその他の手段は、機械関連の当業者には明白である。
【0143】
振動源は、前に説明したウェブ厚さ振動走査装置を使って特定することができる。こうした装置の出力から振動周期を特定できる場合、同じ周期の振動作用を示す工程要素、または外部の振動源について調査する。次に、これらのユニットは、先行技術で公知の方法によりさらに剛性にするか、振動減衰するか、もしくはダイおよび流延ホイールから振動隔離するか、または工程に不可欠ではない場合は、単に電源を切るか、もしくは配置し直すと良い。したがって、周期性によって押出機の軸の回転によると特定された振動は、たとえば、押出機のゲートと頚部管との間に減衰材料を使用して隔離することができるが、周期性によって室内のファンによると特定された振動は、ファンの電源を切るかまたはファンを移動することにより除去することができる。さらに、完全になくすことができないダイまたは流延ステーションの振動は、ある形態の硬い上部構造によりダイを流延ステーションに機械的に連結して、ダイと流延ステーションとの間の振動的相対運動を生じるのを防ぐことができる。こうした振動伝達機械的リンク機構については、多くの構造が明白である。さらに、歪が強くなる材料をフィルムに使用する場合、ウェブを横断して均一な伸長が生じるのに十分に低温で伸長させ、ピンニングワイヤを厳密に取りつけるべきである。
【0144】
層厚さおよび光キャリパをさらに調整するには、一定の回転速度を有する精密流延ホイール駆動機構を使用して行う。流延ホイールは、ウェブの厚さに「チャター」が生じて、後続の層厚さがウェブ縦方向に変動する原因になる振動がないように設計して作動させる。本発明の出願人は、ダイと流延ホイールとの間に相対運動を生じる振動によって、流延ホイールが、ダイから出る押出物を圧伸するときに、流延ホイールに効果的な速度の変動が生じることを発見した。こうした速度の変動によって、本発明の光学フィルムの製造に有利に使用される歪強化材料に特に目立つフィルムキャリパおよび光層の変調が生じ、その結果、フィルム表面全体で色の変動が生じる。したがって、流延ホイール部でこうした調整を行わない場合、押出し工程で生じる通常の振動は、十分に本発明による光学フィルムの色の均一性を著しく減少させる。本発明の方法により、先ず、特定の観察角で色の高度の均一性を有するポリマー材料から製造される、色が遷移するフィルムの製造が可能である。したがって、本発明の方法により、特定の入射角で透過または反射する光の所望の帯域幅が、少なくとも10cm2の領域、さらに好ましくは少なくとも100cm2の領域で約1nmまたは2nm未満だけ変化し、スペクトル反射率ピークの絶対帯端の波長が、約±4nm未満だけ変化するフィルムを製造することができる。
【0145】
厚さおよび/または色の均一性は、本発明によるフィルムの多くの用途に重要だが、装飾用フィルムなど、他の用途では、色の均一性は重要ではないか、または望ましくない。色の変動が望ましい用途では、本発明のフィルムに意図的に色の変動を与えるため、ウェブの一部の任意の位置を横断するかまたはその位置に沿って所望の空間周波数の厚さ変動を誘発させてから、ウェブを急冷して光スタックの厚さに変動を生じさせる。たとえば、流延ホイールに振動を誘発するなど、この効果を得る多くの方法があるが、所望の1つまたは複数の周波数の振動をピンニングワイヤに導入して、こうした変調を便宜的に与えることができる。たとえば、ピンニングワイヤに振動を誘発させることにより、偏光子フィルムの色は、フィルムを横断して直線状に自然なグレー透過色から赤色まで、周期的に変化した。赤色ストリップは、ウェブ縦方向に6.0mm離れていた。ピンニングワイヤ振動の計算上の周波数は、21Hzだった。
【0146】
局所的な確率的色の変動は、少量の内部バブルを含む本発明のフィルムを押し出して、魅力的な装飾効果を生じることにより得られる。バブルは、通常行われているほど十分に樹脂を乾燥させないなど、いくつかの方法により、またはPMMAなどのような感熱性樹脂を多少加熱させて類似の効果を得ることにより形成することができる。形成された小さいバブルは、微細層を局所的に変形させて局所的な色の変化を生じさせ、場合によっては色の濃さという外観を与えることができる。
【0147】
色の変動を生じさせる上記の方法は、不均一なフィルムを示唆すると思われるが、色が均一であり、高度のストップバンド反射率および高い彩度を有する開始ベースフィルムは、特定の方法では局所的に分裂するが、こうした装飾用フィルムの平均色相、彩度および輝度を調節する上で望ましい。本明細書に記載する局所的な色の変動は、本質的に高い反射率を有する反射帯域および高度の勾配を有する帯端を有する均一に色が偏移するフィルムに適用する場合、さらに著しい。
【0148】
上記のとおり、流延ホイールの振動によって、流延ホイールの速度が変動し、その結果フィルムの層厚さが変動する。振動の1つまたは複数の周波数は、結果として得られるフィルムに色の反復順序またはパターンを与えるように変調することができる。さらに、こうした色の変動は、本発明のフィルムに典型的な色偏移特性を破壊せずに生じさせることができ、それにより、色が入射角の変化につれて揺らめくかまたは移動する色彩豊かな(多くの場合、可視スペクトル全体に及ぶ)フィルムの製造が可能になる。
【0149】
周期的な色の変動は、フィルムにあるパターンをエンボス加工して付与することもできる。一部には、エンボス加工済み部分は、フィルムの他の部分と同一平面ではなくなるという事実により、フィルムの他の部分と異なる1つまたは複数の色を示す。したがって、本発明の色偏移フィルムに、たとえば魚網パターン(赤色の背景に金色)またはエンブレムをエンボス加工することにより、著しい効果が得られた。
【0150】
場合により、類似の原理を使用して、フィルム内の周期的な色の変動を除去または無視して、フィルムの色の不均一性を改善することができる。したがって、ある源が、特定周波数または特定周期の周波数をウェブに与えることが分かった場合、振幅が等しい振動(位相は逆)をたとえば流延ホイールによりウェブに与えると、破壊的な干渉を生じて、その源を工程から効果的に除去することができる。
【0151】
追加の層およびコーティング
本発明の高品質同時押出しポリマー多層光学フィルムを製造する方法のその他のステップとして、様々な層またはコーティングを多層光スタックの一方または両方の側の少なくとも一部分に塗布して、フィルムの物理的、化学的または光学的特性を変更または強化することができる。こうした層またはコーティングは、フィルムの形成時に、同時押出しによるか、または別個の塗布または押出しステップで組み入れるか、または後で最終光学フィルムに塗布することができる。追加の層またはコーティングの実施例は、米国特許出願第08/910,660号に記載されている。同時押出し多層フィルムに結合できるコーティングまたは層の非制限的な例を以下の実施例に詳細に記載する。
【0152】
非光層の材料は、フィルム、つまり同時押出し光スタックの一方または両方の主面に同延に配置する。層、いわゆる表皮層の組成は、たとえば光層の完全性を保護する、最終フィルムに機械的または物理的特性を追加する、または光学的機能性を最終フィルムに追加するように選択する。特に優れている適切な材料としては、1つまたは複数の光層の材料がある。同時押出し光層に類似の溶融粘度を有するその他の材料も有用である。また、表皮層から得られる多くの機械的利点は、類似の内部的な厚い非光層、たとえばPBLから得ることもできる。
【0153】
1つまたは複数の表皮層は、同時押出し多層スタックが、押出し過程内の特にダイにおいて生じる剪断強度の広い範囲を減少させる。高度の剪断環境は、光層内に望ましくない変形を生じる。1つまたは複数の表皮層は、結果として得られる複合材料に物理的強度をさらに追加するか、または処理時の問題を減少させ、たとえばフィルムが延伸処理時に分割する傾向を減少させる。非晶質を保つ表皮層材料は、靭性が比較的高いフィルムを形成するが、半結晶質の表皮層材料は、比較的引張弾性率が高いフィルムを形成する。その他の機能的な成分、たとえば静電防止添加剤、紫外線吸収剤、染料、酸化防止剤および顔料を表皮層に添加しても良いが、これらの成分が結果として得られる製品の所望の光学的特性妨げてはならない。表皮層またはコーティングを使用すると、たとえばフィルムが高温のローラまたはテンタークリップに他着するのを防ぐことにより、押出し後の処理を促進することもできる。
【0154】
表皮層またはコーティングは、所望の障壁特性を結果として得られるフィルムまたはデバイスに与えるために添加しても良い。したがって、たとえば、障壁フィルムまたはコーティングを表皮層として添加するか、または表皮層の成分として添加して、水もしくは有機溶剤などのような液体、または酸素もしくは二酸化炭素などのような気体に対するフィルムまたはデバイスの透過性を変更することができる。
【0155】
表皮層またはコーティングは、結果として得られる製品の耐摩耗性を与えるかまたは改善するために添加しても良い。したがって、たとえば、ポリマーマトリックス中に埋め込まれたシリカ粒子を含む表皮層を本発明により製造される光学フィルムに追加すると、フィルムに耐摩耗性を与えることができる。しかし、こうした表皮層は、フィルムに意図される用途に必要な光学的特性を不当に損なってはならない。
【0156】
表皮層またはコーティングは、結果として得られる製品の耐破壊性および/または引裂抵抗性を与えるかまたは改善するために添加しても良い。したがって、たとえば、光学フィルムの外側層がcoPENを含む実施態様では、モノリシックなcoPENの表皮層を光層と同時に押し出して、結果として得られるフィルムに引裂抵抗性を与えることができる。引裂抵抗層の材料を選択するときに考慮すべき要素としては、破断点伸び百分率、ヤング率、引裂強さ、内側層に対する付着性、関連電磁帯域幅における透過および吸収百分率、光学的透明性または曇り、周波数の関数としての屈折率、表面組織および粗さ、溶融熱安定性、分子量分布、溶融液の流動性および同時押出し性、表皮層の材料と光層の材料との混和性および相互拡散率、粘弾性反応、圧伸条件下における緩和および結晶化挙動、使用温度における熱安定性、耐候性、コーティングに対する付着能力、並びに各種気体および溶剤に対する透過性が挙げられる。耐破壊性または引裂抵抗性の表皮層は、製造工程で塗布するか、または後に光学フィルム上に塗布もしくは積層することができる。これらの層を光学フィルムに、同時押出し工程などのような製造工程で付着させると、光学フィルムを製造工程中に保護するという利点がある。いくつかの実施態様では、1つまたは複数の耐破壊層または引裂抵抗層を単独で、または耐破壊性もしくは耐引裂抵抗性表皮層と組み合わせて光学フィルム内に形成する。
【0157】
表皮層は、押し出された光スタックの一方または両方の側に、押出し工程のある時点で、つまり押し出された表皮層が押出しダイを出る前に塗布する。この塗布は、3層同時押出しダイを使用するなど、従来の同時押出し技術を用いて行われる。前に形成した多層フィルムに表皮層を積層することも可能である。表皮層の合計厚さは、光スタック/表皮層の合計厚さの約2%〜約50%で良い。
【0158】
用途によっては、光学フィルムの製造時に、表皮層の外側に追加の層を同時に押し出すかまたは付着させる。こうした追加の層は、別個の塗布作業で光学フィルム上に押し出すかまたは塗布するか、あるいは別個のフィルム、箔、またははポリエステル(PET)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート金属、ガラスなどのような剛性または半剛性基材として光学フィルムに積層しても良い。
【0159】
表皮層には、多くのポリマーが適している。主に非晶質のポリマーの中では、適切な例として、1つまたは複数のテレフタル酸をベースとしたコポリエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸、またはこれらのアルキルエステル対応物、およびエチレングリコールなどのようなアルキレンジオールが挙げられる。表皮層に使用するのに適する半結晶質ポリマーの例としては、2,6−ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、およびナイロン材料が挙げられる。光学フィルムの靭性を高めるために使用される表皮層は、ECDELTMおよびPCTG5445TM(ニューヨーク州、ロチェスターのEastman Chemical Co.が市販)およびポリカーボネートを含む。特に、表皮層が、光学フィルムに付着するように、相容化装置を使って製造される場合、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどのようなポリオレフィンを上記の目的で使用しても良い。
【0160】
機能的な各種の層またはコーティングを本発明の光学フィルムおよびデバイスに追加すると、特にフィルムまたはデバイスの表面に沿って物理的または化学的特性を変更または改善することができる。こうした層またはコーティングとしては、たとえばスリップ剤、低粘着性裏側材料、導電性層、静電防止コーティングまたはフィルム、障壁層、難燃剤、紫外線安定剤、耐摩耗性材料、光学的コーティングまたはフィルムもしくはデバイスの機械的完全性もしくは強度を改善するように設計された基材がある。
【0161】
本発明の光学フィルムには、フィルムのロールの形成および転換性を改善するため、フィルムに組み込まれるか、または別個のコーティングとして追加されるスリップ剤を含むことができる。殆どの用途では、スリップ剤は、フィルムの一方の側にのみ追加されるが、曇りを最小限にするため、理想的には剛性基板に面する側に追加する。本発明のフィルムおよび光デバイスには、これらの表面に添着するポリマービードなどのような低摩擦性コーティングまたはスリップ剤で処理することにより、良好なスリップ特性を与えることができる。あるいは、押出し条件を操作するなどの方法で、フィルムに滑りやすい表面を与えるようにこうした材料の表面の形態を変更することができ、表面形態をこのように変更する方法は、米国特許出願第08/612,710号に記載されている。
【0162】
本発明により製造されるフィルムおよびその他の光デバイスは、1つまたは複数の接着剤を使用して、本発明の光学フィルムおよびデバイスを別のフィルム、表面または基板に積層することができる。こうした接着剤としては、光学的透明または拡散性接着剤、感圧接着剤、非感圧接着剤がある。感圧接着剤は、一般に室温で粘着性であり、せいぜい軽い指圧を加えて表面に付着させることができるが、非感圧接着剤は、溶剤、熱または放射線活性化接着剤系を含む。本発明に有用な接着剤の例としては、一般的なポリアクリレート配合物をベースとしたもの;ポリビニルエーテル;ジエン含有ゴム、たとえば天然ゴム、ポリイソプレンおよびポリイソブチレン;ポリクロロプレン;ブチルゴム;ブタジエン−アクリロニトリルポリマー;熱可塑性エラストマー;ブロックコポリマー、たとえばスチレン−イソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンポリマー、およびスチレン−ブタジエンポリマー;ポリアルファオレフィン;非晶質ポリオレフィン;シリコーン;エチレン含有コポリマー、たとえばエチレンビニルアセテート、エチルアクリレートおよびエチルメタクリレート;ポリウレタン;ポリアミド;ポリエステル;エポキシ樹脂;ポリビニルピロリドンおよびビニルピロリドンコポリマー;並びに上記の混合物が挙げられる。さらに、接着剤は、粘着付与剤、可塑剤、充填材、酸化防止剤、安定剤、顔料、拡散粒子、硬化剤および溶剤などのような添加剤を含むことができる。本発明の光学フィルムが接着テープの構成部品として使用されるような用途では、低粘着性バックサイズ(LAB)コーティングまたはフィルム、たとえばウレタン、シリコーンまたはフルオロカーボンの化学的性質に基づくものなどでフィルムを処理することが望ましい。この方法で処理されたフィルムは、感圧接着剤(PSA)に対して適切な剥離特性を示すため、接着剤でフィルムを処理して、ロール状に巻くことができる。この方法で製造された接着テープ、シートまたは打抜部品は、装飾用途またはテープに拡散反射または透過表面が望ましい用途に使用することができる。積層接着剤を使用して本発明の光学フィルムを別の表面に付着させる場合、接着剤の組成および厚さは、光学フィルムの光学的特性を妨げないように選択することが好ましい。たとえば、高度の透過が望ましい偏光子または鏡に追加の層を積層する場合、積層用接着剤は、偏光子または鏡が透過性であるように設計されている波長領域では、光学的に透明でなければならない。
【0163】
本発明のフィルムおよび光デバイスには、1つまたは複数の導電性層を形成しても良い。こうした導電性層は、銀、金、銅、アルミニウム、クロミウム、ニッケル、錫およびチタンなどのようなの金属、銀合金、ステンレス鋼およびインコネルなどのような合金、ドーピング処理/非ドーピング処理酸化スズ、酸化亜鉛および酸化インジウムスズ(ITO)などのような半導体金属酸化物を含むことができる。
【0164】
本発明のフィルムおよび光デバイスには、静電防止コーティングまたはフィルムを形成することもできる。こうしたコーティングまたはフィルムとしては、たとえばV25およびスルホン酸ポリマーの塩、炭素またはその他の導電性金属層が挙げられる。
【0165】
本発明の光学フィルムおよび光デバイスには、特定の液体または気体に対する光学フィルムの透過性を変える1つまたは複数の障壁フィルムまたはコーティングを形成することもできる。したがって、たとえば、本発明のデバイスおよびフィルムには、フィルムから水蒸気、有機溶剤、O2またはCO2が透過するのを抑制するフィルムまたはコーティングを形成することができる。障壁コーティングは、フィルムまたはデバイスの構成要素が水分の透過により歪むような高湿度の環境では特に望ましい。
【0166】
本発明の光学フィルムおよびデバイスは、特に、厳密な消防規則の対象になる航空機などの環境に使用する場合、難燃剤で処理することができる。適切な難燃剤としては、アルミニウム三水和物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、および難燃性有機リン化合物が挙げられる。
【0167】
本発明の光学フィルムおよびデバイスには、多くの場合表皮層として塗布される耐摩耗性または硬質コーティングを形成しても良い。こうしたコーティングとしては、ペンシルバニア州、フィラデルフィアのRohm&Haasが市販しているAcrloid A−11およびParaloid K−120N;米国特許出願第4,249,011号に記載されており、ペンシルバニア州、ウェストチェスターのSartomer Corp.が市販しているようなウレタンアクリレート;脂肪族ポリイソシアネート(たとえば、ペンシルバニア州、ピッツバーグのMiles, Inc.が市販しているDesmodur N−3300)とポリエステル(たとえば、テキサス州、ヒューストンのUnion Carbideが市販しているTone Polyol 0305)との反応から得られるウレタンハードコートが挙げられる。
【0168】
本発明の光学フィルムおよびデバイスは、たとえばガラス、金属、アクリル樹脂、ポリエステルなどの剛性または半剛性基板、およびその他のポリマー基材にさらに積層して、構造上の剛性、耐候性または取扱いの容易性を与えることができる。たとえば、本発明の光学フィルムは、薄いアクリルまたは金属基材に積層して、所望の形状に打ち抜くか、またはさもなければ所望の形状に賦形してその形状を保つことができる。光学フィルムを他の破壊可能な基材に取り付けるなどの用途では、PETフィルムまたは耐破壊性/耐摩耗性フィルムを含む追加の層を使用することができる。さらに、液晶ディスプレーなどの用途では、多層光学フィルムは、1995年3月10日に提出された米国特許出願第08/402,349号に記載されている光転送構造と結合することができる。こうした光転送構造は、多層光学フィルム上に塗布するか、別個のフィルムとして積層するか、多層光学フィルム基板上に流延して硬化させるか、または多層光学フィルムの表面に直接エンボス加工する。
【0169】
本発明の光学フィルムおよびデバイスには、耐破砕性フィルムおよびコーティングを形成することもできる。この目的に適するフィルムおよびコーティングは、たとえば欧州特許公開第592284号および第591055号に記載されており、ミネソタ州、セントポールの3M Companyから市販されている。
【0170】
本発明のフィルムおよびその他の光デバイスには、特定の用途のために、各種の光層、材料およびデバイスを塗布するか、またはこれらフィルムおよびその他の光デバイスと組み合わせて使用することができる。こうした光層、材料およびデバイスとしては、磁気または磁気光学的コーティングまたはフィルム;ディスプレーパネルおよび権利保護ウィンドウに使用されるような液晶パネル;写真乳剤;布帛;線形フレネルレンズなどのようなプリズム状フィルム;輝度強化フィルム;ホログラフのフィルムまたは画像;エンボス加工可能フィルム;干渉防止フィルムまたはコーティング;低放射用途の赤外線透過フィルム;剥離フィルムまたは剥離剤塗布紙;並びに偏光子または鏡があるが、これらだけに限らない。光学フィルムの一方または両方の主面には、複数の追加層が考えられ、上記のコーティングまたはフィルムの任意の組合わせで良い。たとえば、接着剤を光学フィルムに塗布する場合、接着剤は、二酸化チタンなどのような白色顔料を含むと、全体の反射率を増加することができ、あるいは光学的に透明であれば、基板の反射率によって光学フィルムの反射率を増加することができる。
【0171】
本発明により製造されるフィルムおよびその他の光デバイスは、1つまたは複数の反射防止層またはコーティング、たとえば従来の真空塗布誘電金属酸化物または金属/金属酸化物光学フィルム、シリカゾルゲルコーティング、並びに塗布または同時押出し反射防止層、たとえばミネソタ州、セントポールの3M Companyが市販している押出し可能なフルオロポリマーであるTHVTMなどのような低屈折率のフロオロポリマーから誘導したものを含むことができる。こうした層またはコーティングは、偏光に敏感であるか否かに関わらず、透過性を高めるとともに反射グレアを減少させるのに役立ち、コーティングまたはスパッタ蝕刻など、適切な表面処理により本発明のフィルムおよび光デバイスに付与することができる。本発明のいくつかの実施態様では、透過を最大限にするか、および/または特定の偏光に対する鏡面反射を最小限にすることが望ましい。こうした実施態様では、光学的本体は、少なくとも1つの層が、連続相または分散相を提供する層に近接する反射防止システムを構成する2つ以上の層を含む。こうした反射防止システムは、入射光の鏡面反射を減少させ、連続層および分散層を構成する本体部分に入る入射光の量を増加するように作用する。こうした機能は、先行技術で公知の様々な手段で達成することができる。こうした手段の例としては、1/4波反射防止層、2つ以上の層の反射防止スタック、屈折率勾配層、および密度勾配層がある。こうした反射防止機能は、本体の透過光に使用すると、必要に応じて透過光を増加することもできる。
【0172】
本発明により製造されるフィルムおよびその他の光デバイスには、防曇特性を与えるフィルムまたはコーティングを形成しても良い。場合によっては、上記の反射防止層は、反射防止特性および防曇特性の両方をフィルムまたはデバイスに与える二重の目的に役立つ。本発明に使用するのに適する様々な防曇剤が先行技術で公知である。しかし、一般に、こうした材料は、脂肪酸エステルなどの物質であり、フィルム表面に疎水性を与え、連続する、比較的不透明ではない水の膜が形成されるのを促進する。数人の発明者により、表面が「曇る」傾向を減少させるコーティングが報告されている。たとえば、Leighに付与された米国特許第3,212,909号には、硫酸化またはスルホン化脂肪質である界面活性剤との混合物中のアルキルアンモニウムカルボキシレートなどのようなアンモニウムセッケンを使用して、防曇組成物を生成する方法が開示されている。Eliasに付与された米国特許第3,075,228号には、硫酸化アルキルアリールオキシポリアルコキシアルコールの塩、およびアルキルベンゼンスルホネートを使用して、各種の表面に防曇特性を与える方法が開示されている。Zmodaに付与された米国特許第3,819,522号には、デシンジオールの誘導体を含む界面活性剤化合物、およびエトキシ化アルキルスルフェートを含む界面活性剤混合物を防曇用ウィンドウクリーナ界面活性剤混合物に使用する方法が開示されている。日本国特開平6[1994]−41,335号には、コロイドアルミナ、コロイドシリカおよび陰イオン界面活性剤を含む曇りおよび水滴防止組成物が開示されている。米国特許第4,478,909号(Taniguchi等)には、ポリビニルアルコール、微細分割シリカ、および有機ケイ素化合物を含む硬化防曇コーティングフィルムが開示されており、炭素/ケイ素の重量比は、報告されたフィルムの防曇特性に明らかに重要である。フッ素含有界面活性剤を含む様々な界面活性剤を使用して、コーティングの表面の平滑さを改善することができる。界面活性剤を含むその他の防曇コーティングは、米国特許第2,803,552号、第3,022,178号および第3,897,356号に記載されている。PCT国際特許出願第96/18,691号(Scholtz等)には、コーティングが防曇特性と反射防止特性の両方を与える手段が開示されている。
【0173】
本発明のフィルムおよび光デバイスについては、紫外線安定化フィルムコーティングを使用して紫外線から保護することもできる。適切な紫外線安定化フィルムおよびコーティングとしては、ベンゾトリアゾールまたは封鎖アミン安定剤(HALS)、たとえばTinuvinTM292を含むものがあり、どちらも、ニューヨーク州、ホーソンのCiba Geigh Corp.から市販されている。その他の適切な紫外線安定化フィルムおよびコーティングとしては、ベンゾフェノンまたはジフェニルアクリレートを含むものがあり、ニュージャージー州、パーシパニーのBASF Corp.から市販されている。こうしたフィルムまたはコーティングは、本発明の光学フィルムおよびデバイスを戸外の用途か、または発光源がスペクトルの紫外線領域で多量に発光する照明装置に使用される場合に特に重要である。
【0174】
本発明のフィルムおよび光デバイスは、酸化防止剤、たとえば4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチル−ブチルフェノール)、オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、ビス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスフィット、IrganoxTM1093(1979)(((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)−ジオクタデシルエステルホスホン酸)、IrganoxTM1098(N,N’−1,6−ヘキサンジイルビス(3,5−ビス(1,1−ジメチル)−ヒドロキシ−ベンゼンプロパンアミド)、NaugaardTM445(アリルアミン)、IrganoxTML57(アルキル化ジフェニルアミン)、IrganoxTML115(硫黄含有ビスフェノール)、IrganoxTMLO6(アルキル化フェニル−δ−ナフチルアミン)、Etahnox398(フルオロホスホナイト)、および2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フルオロホスナイトをさらに含むことができる。特に好ましい酸化防止剤の群は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む立体封鎖フェノール、ビタミンE(ジ−α−トコフェロール)、IrganoxTM1425WL(カルシウムビス−(O−エチル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル))ホスホネート)、IrgaoxTM1010(テトラキス(メチレン(3,5,ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、IrganoxTM1076(オクタデシル3,5−ター−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、EthanoxTM702(封鎖ビスフェノール類)、およびEthanox330(高分子量封鎖フェノール)、EthanoxTM703(封鎖フェノールアミン)である。
【0175】
本発明のフィルムおよび光デバイスは、インク、染料または顔料で処理すると、外観を変えるかまたは特定の用途に合わせて製造することもできる。したがって、たとえば、フィルムは、インク、またはたとえば商品の識別、宣伝、広告、装飾またはその他の情報を表示するために使用されるような印刷標示を施しても良い。たとえばスクリーン印刷、凸版、オフセット、フレキソ印刷、点描印刷、レーザ印刷など、様々な技術を使用してフィルム上に印刷することができ、1成分および2成分インク、酸化乾燥および紫外線乾燥インク、溶解インク、分散インクおよび100%インク系など、各種のインクを使用することができる。光学フィルムまたはその他の光デバイスの外観は、染色フィルムを光デバイスに積層する、着色コーティングを光デバイスの表面に塗布する、または光デバイスの製造に使用する1つまたは複数の材料に顔料を含むことにより変更することもできる。本発明には、可視および近赤外線染料および顔料の両方が考えられ、たとえば、色スペクトルの可視領域内の紫外線および蛍光を吸収する染料などのような光学的増白剤がある。光学フィルムの外観を変更するために追加されるその他の追加層としては、たとえば不透明(黒色)層、拡散層、ホログラフィ画像またはホログラフィ拡散体、および金属層がある。これらの各々は、光学フィルムの片面または両面に直接形成されるか、または光学フィルムに積層される第2フィルムまたは箔構成の構成要素である。あるいは、不透明剤もしくは拡散剤、または着色顔料などの成分によっては、光学フィルムを別の表面に積層するために使用される接着剤層に含むことができる。
【0176】
本発明のフィルムおよびデバイスには、金属コーティングを施すこともできる。したがって、たとえば、金属層は、熱分解、粉末被覆、蒸着、陰極スパッタ、イオンめっきなどにより、光学フィルムに直接施すことができる。金属箔または剛性金属プレートを光学フィルムに積層するか、または別個のポリマーフィルムもしくはガラスもしくはプラスチックシートを上記の技術により先ず金属被覆して、次に本発明の光学フィルムまたはデバイスに積層することもできる。
【0177】
二色性染料は、材料内で分子配列されると、特定の偏光を吸収する能力があるため、本発明のフィルムおよび光デバイスが使用される多くの用途に特に有用な添加剤である。フィルムまたはその他の光学的本体に使用する場合、二色性染料によって、材料は、ある偏光を他の偏光よりも多く吸収する。本発明に使用するのに適する二色性染料としては、コンゴレッド(ナトリウムジフェニル−ビス−α−ナフチルアミンスルホネート)、メチレンブルー、スチルベン染料(色指標(CI)=620)、および1,1’−ジエチル−2,2’−塩化シアニン(CI=3374(オレンジ)またはCI=518(ブルー)がある。これら染料の特性および製造方法は、E.H.Land著の「Colloid Chemistry」(コロイド化学)(1946年)に記載されている。これらの染料は、ポリビニルアルコール中で著しい二色性を有し、セルロース中では二色性は少ない。PEN中のコンゴレッドでは、わずかな二色性が観察される。さらに他の二色性染料およびその製造方法は、「Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」(カークオスマー化学大辞典)、第8巻、652〜661ページ(1993年発行の第4版)、および同書に引用されている参考文献に記載されている。二色性染料を特定のポリマー系と組み合わせると、様々な角度に偏光する能力を示す。ポリビニルアルコールおよび特定の二色性染料を使用すると、偏光能力を有するフィルムを製造するたことができる。ポリエチレンテレフタレートなどのようなその他のポリマー、またはナイロン−6などのようなポリアミドは、二色性染料と組み合わせた場合、それほど強度な偏光能力を示さない。ポリビニルアルコールおよび二色性染料の組合わせは、たとえばポリマー系を形成する他のフィルム中の同じ染料よりも二色性の比率が高いと言われている。二色性の比率が比較的高いということは、偏光能力が比較的高いことを示す。二色性染料と多層偏光子との組合わせは、米国特許出願第08/402,042号、第09/006,458号および第09/006,468号に記載されている。
【0178】
上記のフィルム、コーティングおよび添加剤のほかに、本発明の光材料は、先行技術で公知のその他の材料または添加剤をさらに含むことができる。こうした材料としては、結合剤、コーティング、充填材、相容化剤、界面活性剤、抗微生物剤、発泡剤、強化剤、熱安定剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤、粘度調整剤、およびその他のこうした材料がある。
【0179】
本発明により製造されるフィルムおよびその他の光デバイスについては、コーティング、染色、金属被覆または積層などのような後続の処理にさら役立つようにするなど、材料またはその一部を変性させる様々な処理を施すことができる。これは、PVDC、PMMA、エポキシ樹脂およびアジリジンなどのような下塗剤によるか、またはコロナ、炎、プラズマ、フラッシュランプ、スパッタ蝕刻、電子ビーム処理などのような物理的下塗処理によるか、または高温カンを使用するなど、表面層を非晶質化して結晶度を除去することにより行うことができる。
【0180】
いくつかの用途では、本発明のフィルムおよびその他の光デバイスに、2つの相間の接合面が十分に弱く、フィルムを延伸するときに空隙を生じる連続相および分散相を有する1つまたは複数の層を形成することも望ましい。空隙の平均寸法は、処理パラメーターおよび伸長比を注意深く操作するか、または相容化剤を選択的に使用して調整することができる。空隙は、完成品において、液体、気体または固体で埋め戻す。空隙の形成を光スタックの鏡面光学素子に関連して使用すると、結果として得られるフィルムに所望の光学的特性を生じることができる。
【0181】
二次加工
フィルムを処理するとき、たとえば押し出すとき、各種の潤滑剤を使用することもある。本発明に使用するのに適する潤滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、モリブデンネオドカノエート、およびルテニウム(III)ステアレートがある。さらに、フィルムには、二次加工などのような後続の処理を施すことができ、特定の用途に応じてロールまたは最終シートに細断するか、またはグリッタに使用するようなストリップ、繊維、またはフレークに細断または二次加工することができる。最終使用用途によっては、上記の追加コーティングまたは層を二次加工作業の前後どちらかで追加することができる。
【0182】
本発明により製造される多層光学フィルムは、様々な所望の形状およびサイズのグリッタに二次加工することができる(世界の各国、領域などの法律(米国の法律を含む)により定義される登録可能な商標または登録済み著作権を含む著作権取得可能な素材または商標(たとえば、映画またはテレビジョンのキャラクタなど)を含む)。グリッタの外周部は、たとえば予め決められた規則的な形状(たとえば円、方形、矩形、菱形、星形、または英数字、その他の多角形(たとえば六角形))、または不規則な無作為の形状および少なくとも2つの異なる形状および/またはサイズの混合体で良い。グリッタのサイズおよび形状は、グリッタの外観を最適化するか、または特定の最終使用用途に適合するように一般に選択される。一般に、グリッタの少なくとも一部分の粒度(つまり最大粒子寸法)は約10mm未満であるが、さらに代表的には約3mm未満である。もう1つの態様では、グリッタの少なくとも一部分の粒度は、一般に約50μm〜約3mmであり、好ましくは約100μm〜約3mmである。フィルムを予め決められた規則的な形状に二次加工するのは、一般に、精密切削技術(たとえば、回転ダイ切削)を使用して行われる。二次加工役務は、たとえば、ニュージャージー州、ベルヴィルのGlitterex Corporationが商業的に提供している。
【0183】
グリッタを含む多層光学フィルムの厚さは、一般に約125μm未満であり、さらに一般的には75μm未満であるが、50μm未満であれば好ましく、自動車の塗料などの用途の場合は15μmまで薄くされる。本発明によるグリッタの製造に使用するのに適する多層フィルムは、二次加工時の剥離を防ぐため、層間が十分に付着していることが好ましい。本発明によるグリッタが製造されるフィルムの厚さ(z方向)は、x方向およびy方向に個々に測定した最小グリッタの寸法の約3〜25%であることが好ましい。グリッタは、使用時に平らな状態を保つのに十分に厚く、しかも実質的な縁部効果(つまり、フィルム厚さの実質的部分に延在するグリッタ粒子の切削縁部に歪み)を生じるほど厚くないことが好ましい。
【0184】
グリッタは、1つまたは複数の後続のステップで、マトリックス材料(たとえば、架橋ポリマー材料)中に混ぜ合わせることができる。一実施態様では、グリッタは、透明を含む半透明なマトリックス材料内に、たとえば均一または不均一に分散しており、マトリックス材料およびグリッタを含む複合材料の観察者は、グリッタの少なくとも一部分を観察することができるようになっている。グリッタがマトリックス材料の外面にあり、製品の観察者がグリッタの少なくとも一部分を見ることができる限り、マトリックス材料は半透明である必要はない(つまり不透明で良い)。本発明により製造されるグリッタは、基材を含む製品または配合品であって、基材上にマトリックスが配置され、マトリックス内に複数のグリッタが配置された製品または配合品をさらに提供する。
【0185】
本発明により製造されるグリッタをマトリックス材料中に混ぜ合わせる技術としては、従来のグリッタをマトリックス材料に混ぜ合わせるための先行技術で公知の技術がある。たとえば、グリッタは、グリッタを含んだ液体を混合するか、さもなければ攪拌するなどの方法で、液体中に分散させることができる。液体中にグリッタを分散させるのは、たとえば分散助剤を使用して促進することができる。場合によっては、グリッタが分散した液体は、この液体から派生する複合製品の先駆物質である。たとえば、グリッタは、硬化可能なポリマー材料中に分散させることができ、グリッタを含むポリマー材料は、所望の最終製品の形状を有する成形型に配置してからポリマー材料を硬化させる。
【0186】
グリッタを含むマトリックス材料を含む製品は、流し込み成形、射出成形(たとえば、3次元製品の製造に特に有用)、並びに押出し(たとえば、フィルム、シート材料、繊維およびフィラメント、円筒管、円筒状シェル(つまりパイプ)の製造に特に有用)など、様々な技術のどれかで製造することができる。シートまたはフイルム材料は、単層または複数の層(つまり多層構成)を構成することができる。多層構成は、1つまたは複数の層にグリッタを有し、異なる層に異なる形状、サイズおよび濃度のグリッタを任意に含むことができる。さらに、たとえば、本発明により製造されるグリッタは、射出成形に適するポリマーペレットに混ぜ合わせるか、またはこうしたペレットと混合することができる。本発明によるグリッタを最終製品のマトリックス材料に混ぜ合わせる処理のその他の例としては、真空成形、吹込成形、回転成形、熱成形、押出し、圧縮成形、および圧延がある。
【0187】
本発明により製造されるグリッタを混ぜ合わせる製品は、たとえば、グリッタが均一または不均一に(不規則を含む)製品中および/または製品上に分散されており、グリッタが均一または不均一に製品中および/または製品上に分散しているある領域、およびグリッタが不均一または均一に製品中および/または製品上に個々に分散している他の領域を有する。さらに、グリッタは、グリッタの濃度勾配があるように存在しても良い。
【0188】
本発明の工程は、グリッタをマトリックス材料中で方向付けるステップを含む。グリッタ粒子は、たとえば互いに対して不規則であるか、または互いに対してもしくはマトリックス材料の表面に対して実質的に向きを有する。マトリックス材料内のグリッタの整列または方向付けは、たとえばグリッタ含有マトリックス材料の高剪断処理(たとえば押出しまたは射出成形)により行われ、この処理では、マトリックス材料の流れの方向に沿ってグリッタを方向付けるかまたは整列させる。グリッタをマトリックス材料内で方向付けるその他の技術は、本発明の開示事項を検討すると、当業者にとっては明白である。
【0189】
グリッタは、製品の表面上に不規則または均一に分散させることもでき、表面のある領域では不規則に分散させ、他の領域では均一に分散させることができる。さらに、たとえば、グリッタは、表面に対して不規則または均一に(たとえば均一に離間配置する)方向付けることができ、ある領域では不規則に方向付け、他の領域では均一に方向付けることができる。グリッタは、世界の各国、領域などの法律に基づいて登録されたかまたは登録可能な商標を含む、著作権取得可能な素材または商標(たとえば、映画またはテレビジョンのキャラクタなど)を形成するか、またはその一部であるようにパターン化することができる。あるいは、コーティング(たとえば、透明コーティング)をグリッタの少なくとも一部分上に塗布すると、基材にさらに付着させる、グリッタを保護する、または視覚的に魅力的な効果を生じることができる。
【0190】
再び、本発明によるグリッタを含む液体について述べると、こうした分散液または分散可能な化合物は、溶剤系(つまり、有機溶剤中に溶解)、水系(つまり、水中に溶解または分散)、単一成分、または多成分である。分散液または分散可能な化合物を使用して表面にコーティングを施す場合、液体はフィルム形成材料であることが好ましい。
【0191】
相容性(たとえば、化学的相容性)、ひいては特定の液体の適性は、たとえばグリッタの組成、並びに分散液または分散可能な化合物のその他の成分によって決まるが、液状媒体の実施例は、水、有機液体(たとえば、アルコール、ケトン(短時間の場合))、およびその混合物を含む。いくつかのマトリックス材料は時には液体だが、固体の場合もある。たとえば、代表的なホットメルト接着材料は、室温では固体だが、個々の融点まで加熱した場合は液体である。さらに、たとえば、液体接着剤は、硬化および/または乾燥前は液体だが、硬化および/または乾燥後は固体である。
【0192】
分散液または分散可能な化合物は、たとえば乾燥可能または硬化可能であり、さらに別のマトリックスを形成することができる(たとえば、塗料は、乾燥または硬化して、固体または硬化形態になる)。分散液または分散可能な化合物は、添加剤、たとえば抗微生物剤、帯電防止剤、発泡剤、着色剤または顔料(たとえば、マトリックス材料を着色するか、さもなければマトリックス材料に色を与えるかまたは色を変更するため)、硬化剤、稀釈剤、充填材、難燃剤、耐衝撃性改良剤、開始剤、潤滑剤、可塑剤、スリップ剤、安定剤、融合助剤、増粘剤、分散助剤、脱泡剤、殺生剤を含むことができ、こうした添加剤は、たとえば所望の最終複合品(グリッタを含む)に望ましい特徴または特性を与えるか、および/または所望の最終複合品(グリッタを含む)を製造する処理ステップを促進する。
【0193】
1つの態様では、分散液または分散可能な化合物は、結合剤前駆物質材料、つまり、液体(つまり、流動可能な形態、たとえば溶剤中に溶解したポリマー、溶剤中に溶解したポリマー先駆物質、ポリマー乳濁液、および硬化可能な液体)を凝固または硬化形態に転換可能な材料を含む。液体結合剤先駆物質材料を凝固または硬化結合剤材料に転換する方法としては、溶剤の蒸発、硬化(つまり、化学反応による固化)、およびこれらの組合わせがある。
【0194】
本発明によるグリッタを含む分散液用の結合剤先駆物質および結合剤、または分散可能な化合物のその他の例としては、ビニルポリマー、ビニル−アクリルポリマー、アクリルポリマー、塩化ビニルアクリルポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、スチレン/アクリレートコポリマー、ビニルアセテート/エチレンコポリマー、アニモアルキル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、ニトロセルロース樹脂、変性アクリルラッカー、直鎖状アクリルラッカー、ポリウレタン樹脂、アクリルエナメル樹脂、シリル基含有ビニル樹脂、およびこれらの組合わせがある。
【0195】
本発明のグリッタを含むことができる分散液または分散可能な化合物の例としては、指の爪用の光沢剤、塗料(自動車および船舶用塗料、屋内および屋外用塗料、アートクラフト用塗料、趣味用塗料(たとえば、模型玩具用塗料)、および仕上げ塗料を含む)がある。こうした分散液または分散可能な化合物は、一般に表面に塗布されてコーティングを施し、後に乾燥または硬化などをして、固化した非湿潤性表面コーティングを形成する。
【0196】
本明細書に記載する用途を含む特定の用途に使用するグリッタのサイズ、形状、厚さおよび量は、多数の要素、たとえば達成すべき所望の効果、コスト、用途に固有の制限(たとえば、グリッタが結合剤材料に含まれる場合、グリッタの量は、容易に脱落するために過度のグリッタが望ましい場合を除き、結合剤マトリックスの充填容量を超えてはならない)、および液体マトリックスの場合は、分散液の粘度、グリッタを含むマトリックスのその他の物理的特性または性能特性などによって決まる。本発明により製造されるグリッタは、先ず結合剤または接着材料を塗布してからグリッタを塗布し、結合剤または接着材料を乾燥、硬化、凝固などをさせて表面に塗布することもできる。グリッタを付着させるのに適する基材としては、玩具、布帛、プラスチック、木材および金属がある。グリッタを基材の表面に付着させると、たとえば装飾効果を得ることができる。
【0197】
グリッタは、グルー、感圧接着剤、ホットメルト接着剤およびステッチなど、適切な結合形態を使用して表面に付着させることができる。グリッタは、接着材料で付着させる場合、たとえば接着剤塗布基材の表面上に配置または散布することができる。基材に対するグリッタの配置は、所望の様々なパターンおよび/または向きのどれかで行うことができる。たとえば、グリッタは、表面上に不規則または均一に配置することができ、ある領域では不規則に、別の領域では均一に配置することができる。さらに、たとえば、グリッタは、表面に対して不規則または均一に(たとえば、均一に離間配置)方向付けることができ、ある領域では不規則に、別の領域では均一に方向付けることができる。グリッタは、世界の各国、領域などの法律に基づいて登録されたかまたは登録可能な商標を含む、著作権取得可能な素材または商標(たとえば、映画またはテレビジョンのキャラクタなど)を形成するか、またはその一部であるようにパターン化することができる。あるいは、コーティング(たとえば、透明コーティング)をグリッタの少なくとも一部分上に塗布すると、基材にさらに付着させる、グリッタを保護する、または視覚的に魅力的な効果を生じることができる。
【0198】
フィルム処理技術で一般に周知されている追加の処理ステップは、本発明の同時押出しポリマー多層光学フィルムの処理に使用することもできる。本発明は、上記の特定の実施例に限定されると考えるべきではなく、むしろ、添付の請求の範囲に適切に記載する本発明のすべての態様を網羅するものであると考えるべきである。本発明を適用できる様々な変形、等価な方法、および多数の構造は、本発明の対象となる当業者にとって、この明細書を検討すると容易に分かるであろう。請求の範囲は、こうした変形および装置を網羅することを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層光学フィルムを製造するための供給ブロックであって、
(a)少なくとも第1および第2流路を含む勾配プレートであって、該流路の少なくとも一方が、該流路に沿って第1部分から第2部分まで変化する断面領域を有する勾配プレートと、
(b)該第1流路と連通する第1の複数の導管と、該第2流路と連通する第2の複数の導管とを有する供給管プレートであって、各々の導管が、該導管自体の個々のスロットダイに供給し、第1端部と第2端部とを有し、該導管の該第1端部が該流路と連通し、該導管の該第2端部が該スロットダイと連通する供給管プレートと、
を含む供給ブロック。
【請求項2】
前記導管に近接して配置された軸線ロッド加熱器をさらに含む、請求項1記載の供給ブロック。
【請求項3】
前記軸線ロッド加熱器が、前記第1の複数の導管と前記第2の複数の導管との間に位置する、請求項2記載の供給ブロック。
【請求項4】
前記軸線ロッド加熱器が、前記供給ブロックの長さに沿って調節可能な複数の別個の温度領域を提供することができる、請求項2記載の供給ブロック。
【請求項5】
前記スロットダイが、前記供給管プレートに位置する拡張部分と、スロットプレートに位置するスロット部分とを含む、請求項1記載の供給ブロック。
【請求項6】
前記スロットダイと連通する圧縮部分をさらに含む、請求項1記載の供給ブロック。
【請求項7】
上部および下部を有する少なくとも第1および第2補助流路を含むマニホールドプレートであって、該上部が該マニホールドプレートにより限定され、該下部が前記勾配プレート内に限定されるとともに該流路の反対側に位置する、請求項1記載の供給ブロック。
【請求項8】
(a)外面を有し、前記勾配プレートおよび前記供給管プレートを囲むハウジングと、
(b)該ハウジングの該外面に取り付けられるプレート型加熱器と、
を更に含む、請求項1記載の供給ブロック。
【請求項9】
多層光学フィルムを製造する方法であって、
(a)樹脂の少なくとも第1および第2の流れを提供するステップと、
(b)請求項1記載の供給ブロックを使用して、該第1および第2の流れを複数の層に分割し、該第1の流れの層が該第2の流れの層と交互配置されて複合流を生じるようにするステップと、
(c)該複合流を押出ダイに通して、各々の層が隣接層の主面にほぼ平行な多層ウェブを形成するステップと、
(d)該多層ウェブを流延ロール上に流延して、流延多層フィルムを形成するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
ステップ(b)の後に、
(a)前記複合流を増倍器内に送り、そこで前記複合流が複数の分岐流に分割され、該増倍器が、該分岐流の少なくとも1つを該分岐流の流れを横断する方向に膨張させるステップと、
(b)前記分岐流を前記複合流に再び結合し、前記複合流の層の数を増加させるステップと、
をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記流延ステップ時に前記多層ウェブの急冷をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
表面組織付き多層光学フィルムを製造する方法であって、
(a)樹脂の少なくとも第1および第2の流れを提供するステップと、
(b)該第1および該第2の流れを複数の層に分割し、該第1の流れの層が該第2の流れの層と交互配置されて複合流を生じるようにするステップと、
(c)該複合流を押出しダイに通して、各々の層が隣接層の主面にほぼ平行な多層ウェブを形成するステップと、
(d)該多層ウェブを流延ロール上に流延するステップと、
(e)該多層ウェブを微細エンボス加工ロールに接触させて流延多層フィルムを形成するステップと、
を含む方法。
【請求項13】
ステップ(b)の後に、
(a)前記複合流を増倍器内に送り、そこで該複合流が複数の分岐流に分割され、該増倍器が、該分岐流の少なくとも1つを該分岐流の流れの方向を横断する方向に膨張させるステップと、
(b)該分岐流を該複合流に再び結合し、該複合流の層の数を増加させるステップと、
をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記微細エンボス加工ステップ時に前記多層ウェブを急冷することをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
多層光学フィルムを製造する方法であって、
(a)樹脂の少なくとも第1および第2の流れを提供するステップであって、樹脂の該第1の流れがポリエチレンナフタレートのコポリマー(coPEN)であり、樹脂の該第2の流れがポリメチルメタクリレート(PMMA)であるステップと、
(b)該第1および該第2の流れを複数の層に分割し、該第1の流れの層が該第2の流れの層と交互配置されて複合流を生じるようにするステップと、
(c)該複合流をダイに通して同時に押し出し、各々の層が隣接層の主面にほぼ平行な多層ウェブを形成するステップであって、該coPENおよびPMMA樹脂が約260℃の溶融温度で同時に押し出され、該coPENの樹脂の複屈折が、特定の圧伸比でホモポリマーPEN樹脂の複屈折に比べて約0.02単位以下だけ低下するステップと、
(d)該多層ウェブを流延ロール上に流延して、流延多層フィルムを形成するステップと、
を含む方法。
【請求項16】
ステップ(b)の後に、
(a)前記複合流を増倍器に送り、そこで該複合流が複数の分岐流に分割され、該増倍器が、該分岐流の少なくとも1つを該分岐流の流れの方向を横断する方向に膨張させるステップと、
(b)該分岐流を該複合流に再び結合し、該複合流の層の数を増加させるステップと、をさらに含む請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記多層ウェブを前記流延ステップで急冷することをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記多層光学フィルムをグリッタフィルムに変換することをさらに含む、請求項9〜請求項17の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−101554(P2012−101554A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−3308(P2012−3308)
【出願日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【分割の表示】特願2009−192890(P2009−192890)の分割
【原出願日】平成11年1月13日(1999.1.13)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】