説明

多層光学薄膜、多層光学薄膜の製造方法、光学素子の製造方法及び光学素子

【課題】 従来得られなかった特性を有する多層光学薄膜とその製造方法を提供する。
【解決手段】 まず、基板1の上に、溶解液に溶ける溶解物質2を成膜し、その上に、薄膜材料3を成膜する(b)。続いて、溶解物質2をその上に成膜するが、そのときマスク4を使用して、その下にある薄膜材料3の左右端部には溶解物質2が成膜されないようにする。(c)。続いて、その上に、薄膜材料3を成膜する(d)。続いて、(c)の工程と同じように、溶解物質2をその上に成膜する(e)。続いて、(d)の工程と同じように、その上に、薄膜材料3を成膜する(f)。最後に、溶解物質2を溶剤で溶解すると、溶解物資2があった部分に空隙5が形成されると共に、基板1が分離し、図においては、薄膜材料3が3相、空隙5を挟んで積層された光学薄膜が形成される(g)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層光学薄膜及びその製造方法、光学素子とその製造方法、さらには前記多層光学薄膜を有する光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屈折率の異なる物質の薄膜を交互に積層して形成された多層光学薄膜は、光学フィルタ、偏光ビームスプリッタ、反射防止膜等として広く使用されている。その典型的なものは、低屈折率材料であるSiOと高屈折率材料であるTiOの薄膜を、使用波長をλとするときλ/4の厚さとし、これを、ガラス等の基板の上に数十層〜数百層交互に積層して形成されたものである。このような多層光学薄膜の例は、例えば特開平8−262224号公報に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−262224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、上記のような光学特性の異なる薄膜を積層して形成される多層光学薄膜の場合、多層光学薄膜を構成する物質の屈折率の差が大きいほど、設計の自由度が大きくなり、得られる光学特性も多様なものとなる。しかし、例えば1.5μm〜1.6μmの波長域におけるSiOの屈折率は1.46であり、TiOの屈折率は2.25であって、両者の差は0.79に留まっている。実際に世の中に存在する光学材料の屈折率は、どんなに小さくても1.3程度であるので、得られる光学特性にも自ら限界がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、空気等の気体を一つの光学物質として使用することにより、従来得られなかった特性を有する多層光学薄膜とその製造方法、及びこの多層光学薄膜を有する光学素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための第1の手段は、空隙部と、固体物質からなる薄膜層が、交互に形成された多層光学薄膜(請求項1)である。
【0007】
空気やヘリウム等の主な気体の屈折率は1とみなせるので、このような物質を多層光学薄膜を構成する物質として使用することにより、従来の光学材料のみを使用した場合に得られなかった特性を有する多層光学薄膜を得ることができる。なお、「構造を有する」とは、多層光学薄膜の一部に、空隙と、固体物質からなる薄膜層が、交互に形成された構造があれば、この構造に他の構造(例えば反射防止膜や他の光学的構造)が付加されたものも、本手段の範囲内に含まれることを意味する。
【0008】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段である多層光学薄膜の製造方法であって、以下の工程を有することを特徴とするもの(請求項2)である。
(1)基板の上に第1の溶解物質を塗布し、この第1の溶解物質の上に第1の薄膜材料を重ねて成膜する工程
(2)さらにその上に第2の溶解物質を塗布し、その上に第2の薄膜材料を、その直下にある前記第2の溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記第2の溶解物質の下にある前記第1の薄膜材料と前記第2の薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(3)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(4)(3)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧3)の薄膜の積層体を形成し、その後各薄膜間と薄膜と基板間の溶解物質を溶解して空隙を形成する工程
本手段においては、溶解物質と薄膜材料を交互に積層し、その後溶解物質を溶解することにより、溶解物質のあった部分を空気等の、溶解物質よりも屈折率が小さい物質が入り込む空隙部とすることができ、容易に前記第1の手段である光学薄膜を形成することができる。第1の溶解物質の溶解により、多層光学薄膜は基板から離れて、単独の薄膜が形成される。
【0009】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において「溶解物質」というのは、薄膜を構成する物質を溶解しない溶剤により溶解する物質を言う。又、本明細書、特許請求の範囲において第mの溶解物質、第nの薄膜材料という表現を使用することがあるが、これは、製造工程における溶解物質、薄膜材料が必ずしも同じであることを要しないという意味で区別するために使用するものであって、特に断らない限り、mやnの値が異なっても、物質、材料が異なることを意味するものではない。同様「新たな薄膜材料」とは、必ずしも、それまでに成膜された薄膜材料と異なる薄膜材料を意味するものではない。単に薄膜として新たなものであることを示し、それまでに成膜された薄膜と区別するために用いるものである。
【0010】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段である多層光学薄膜の製造方法であって、以下の工程を有することを特徴とするものである。
(1)基板の上に第1の溶解物質を塗布し、この第1の溶解物質の上に第1の薄膜材料を重ねて成膜する工程
(2)さらにその上に前記第1の溶解物質とは異なる第2の溶解物質を塗布し、その上に第2の薄膜材料を、その直下にある前記第2の溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記第2の溶解物質の下にある前記第1の薄膜材料と第2の薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記第2の溶解物質を溶解して除去する工程
(3)最表層にある成膜された薄膜材料の上に前記第1の溶解物質とは異なる溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記溶解物質を除去する工程
(4)(3)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧3)の薄膜の積層体を形成し、その後各薄膜間の溶解物質を溶解して空隙を形成する工程
(5)第1の溶解物質を溶解して除去する工程
前記第2の手段においては、全ての層間の溶解物質を一度に溶解していたが、本手段においては、一つの層が形成されることに順次溶解物質の溶解を行っている。よって、結果的には前記第2の手段と同じ多層光学薄膜を製造することができるが、1種類の溶解物質しか用いない場合、各層の薄膜を構成する薄膜材料の種類によっては、溶解物質を溶解する物質に解けるものがある場合があり、その場合には、前記第2の手段は好ましくない。それに対して、本手段は、各層の薄膜を構成する薄膜材料に応じて別の溶解物質を使用することができるので、それだけフレキシビリティに富む。
【0011】
本手段において「第1の溶解物質と異なる溶解物質」は、少なくともそれを溶解液で溶解するとき、第1の溶解物質が溶解しないようなものでなければならない。
【0012】
前記課題を解決するための第4の手段は、基板の上に、空隙部と固体物質からなる薄膜層が交互に形成された構造を有する光学素子(請求項4)である。
【0013】
本手段は、前記第1の手段と同様の作用効果を奏する。本手段においても、空隙部と固体物質からなる薄膜層が交互に形成された構造の上に、さらに別の光学的構造や反射防止膜等を構成できることは、前記第1の手段と同じであり、本手段はこのような構造等が付加されたものをも含むものである。
【0014】
前記課題を解決するための第5の手段は、基板の上に、屈折率が異なる物質が積層されて構成される部分を有し、その上に、空隙部と固体物質からなる薄膜層が交互に形成された構造を有する光学素子(請求項5)である。
【0015】
本手段は、基板の上に直接空隙部と固体物質からなる薄膜層が交互に形成された構造が形成されるのではなく、基板の上に、屈折率が異なる物質が積層されて構成される部分を有し、その上に、空隙部と固体物質からなる薄膜層が交互に形成された構造が形成されているところが前記第4の手段と異なるのみであり、前記第4の手段と同様の作用効果を奏する。
【0016】
前記課題を解決するための第6の手段は、前記第4の手段である光学素子の製造方法であって、以下の工程を有することを特徴とするもの(請求項6)である。
(1)基板の上に薄膜材料を成膜する工程
(2)前記薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、この溶解物質の上に薄膜材料を、前記溶解物質の少なくとも一部が露出し、前記基板上に成膜された薄膜材料と前記溶解物質の上に成膜される薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(3)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(4)(3)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧3)の薄膜の積層体を形成し、その後各薄膜間の溶解物質を溶解して空隙を形成する工程
本手段においては、溶解物質と薄膜材料を交互に積層し、その後溶解物質を溶解することにより、溶解物質のあった部分を空隙部とすることができ、容易に前記第4の手段である光学素子を形成することができる。
【0017】
前記課題を解決するための第7の手段は、前記第4の手段である光学素子の製造方法であって、以下の工程を有することを特徴とするもの(請求項7)である。
(1)基板の上に薄膜材料を成膜する工程
(2)前記薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、この溶解物質の上に薄膜材料を、前記溶解物質の少なくとも一部が露出し、前記基板の上に成膜された薄膜材料と前記溶解物質の上に成膜される薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記基板の上に成膜された溶解物質を溶解して除去する工程
(3)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記溶解物質を溶解して除去する工程
(4)(3)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧3)の薄膜の積層体を形形成する工程
前記第6の手段においては、全ての層間の溶解物質を一度に溶解していたが、本手段においては、一つの層が形成されることに順次溶解物質の溶解を行っている。よって、結果的には前記第6の手段と同じ多層光学薄膜を製造することができるが、1種類の溶解物質しか用いない場合、各層の薄膜を構成する薄膜材料の種類によっては、溶解物質を溶解する物質に解けるものがある場合があり、その場合には、前記第6の手段は好ましくない。それに対して、本手段は、各層の薄膜を構成する薄膜材料に応じて別の溶解物質を使用することができるので、それだけフレキシビリティに富む。
【0018】
前記課題を解決するための第8の手段は、前記第4の手段である光学素子の製造方法であって、以下の工程を有することを特徴とするもの(請求項8)である。
(1)基板の上に溶解物質を塗布し、この溶解物質の上に薄膜材料を、前記溶解物質の少なくとも一部が露出し、前記基板と前記薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(2)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(3)(2)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧2)の薄膜の積層体を形成し、その後各薄膜間の溶解物質を溶解して空隙を形成する工程
本手段においては、基板の上に直接光学薄膜が形成されるのでなく、まず空隙部分か形成され、その上に光学薄膜が形成される点が、前記第6の手段と異なっているのみであり、作用効果は前記第6の手段と同じである。
【0019】
前記課題を解決するための第9の手段は、前記第4の手段である光学素子の形成方法であって、以下の工程を有することを特徴とするもの(請求項9)である。
(1)基板の上に溶解物質を塗布し、この溶解物質の上に薄膜材料を、前記溶解物質の少なくとも一部が露出し、前記基板と前記薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記溶解物質を溶解して除去する工程
(2)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記溶解物質を溶解して除去する工程
(3)(2)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧2)の薄膜の積層体を形成する工程
本手段においては、基板の上に直接光学薄膜が形成されるのでなく、まず空隙部分が形成され、その上に光学薄膜が形成される点が、前記第7の手段と異なっているのみであり、作用効果は前記第7の手段と同じである。
【0020】
前記課題を解決するための第10の手段は、前記第5の手段である光学素子の製造方法であって、以下の工程を有することを特徴とするもの(請求項10)である。
(1)基板の上に屈折率の異なる複数の物質を交互に積層して成膜し中間体を製造する工程
(2)前記中間体の上に薄膜材料を成膜する工程
(3)前記薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、この溶解物質の上に薄膜材料を、前記溶解物質の少なくとも一部が露出し、前記中間体の上に成膜された薄膜材料と前記溶解物質の上に成膜される薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(4)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(5)(4)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧3)の薄膜の積層体を形成し、その後各薄膜間の溶解物質を溶解して空隙を形成する工程
本手段は、前記第5の手段である光学素子の製造方法であるために、(1)の工程が付加されているのみであり、その他は前記第6の手段と同じである。
【0021】
前記課題を解決するための第11の手段は、前記第5の手段である光学素子の製造方法であって、以下の工程を有することを特徴とするもの(請求項11)である。
(1)基板の上に屈折率の異なる複数の物質を交互に積層して成膜し中間体を製造する工程
(2)前記中間体の上に第1の薄膜材料を成膜する工程
(3)前記第1の薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、この溶解物質の上に薄膜材料を、前記溶解物質の少なくとも一部が露出し、前記中間体の上に成膜された薄膜材料と前記溶解物質の上に成膜される薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記中間体の上に成膜された溶解物質を溶解して除去する工程
(4)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記溶解物質を溶解して除去する工程
(5)(4)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧3)の薄膜の積層体を形成する工程
本手段は、前記第5の手段である光学素子の製造方法であるために、(1)の工程が付加されているのみであり、その他は前記第7の手段と同じである。
【0022】
前記課題を解決するための第12の手段は、前記第5の手段である光学素子の製造方法であって、以下の工程を有することを特徴とするもの(請求項12)である。
(1)基板の上に屈折率の異なる複数の物質を交互に積層して成膜し中間体を製造する工程
(2)前記中間体の上に溶解物質を塗布し、この溶解物質の上に薄膜材料を、前記溶解物質の少なくとも一部が露出し、前記中間体と前記薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(3)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(4)(3)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧2)の薄膜の積層体を形成し、その後各薄膜間の溶解物質を溶解して空隙を形成する工程
本手段は、前記第5の手段である光学素子の製造方法であるために、(1)の工程が付加されているのみであり、その他は前記第8の手段と同じである。
【0023】
前記課題を解決するための第13の手段は、前記第5の手段である光学素子の製造方法であって、以下の工程を有することを特徴とするもの(請求項13)である。
(1)基板の上に屈折率の異なる複数の物質を交互に積層して成膜し中間体を製造する工程
(2)前記中間体の上に溶解物質を塗布し、この溶解物質の上に薄膜材料を、前記溶解物質の少なくとも一部が露出し、前記中間体と前記薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記溶解物質を溶解して除去する工程
(3)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記溶解物質を溶解して除去する工程
(4)(3)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧2)の薄膜の積層体を形成する工程
本手段は、前記第5の手段である光学素子の製造方法であるために、(1)の工程が付加されているのみであり、その他は前記第9の手段と同じである。
【0024】
前記課題を解決するための第14の手段は、前記第1の手段である多層光学薄膜を有することを特徴とする光学素子(請求項14)である。
【0025】
本手段は、例えば、前記第1の手段である多層光学薄膜を光学基材に貼り付けたり、光学基材で挟み込んだりして形成され、前記第1の手段と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、従来得られなかった特性を有する多層光学薄膜とその製造方法、及びこの多層光学薄膜を有する光学素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態である多層光学薄膜の製造方法を説明するための図である。
【0028】
まず、基板1の上に、溶解液に溶ける溶解物質2をスパッタリングや蒸着等により成膜する(a)。溶解液としては、光学薄膜となる物質を溶かさないものを適宜使用することができる。次に、その上に、薄膜材料3をスパッタリングや蒸着等により成膜する(b)。
【0029】
続いて、溶解物質2をスパッタリングや蒸着等によりその上に成膜するが、そのときマスク4を使用して、その下にある薄膜材料3の左右端部には溶解物質2が成膜されないようにする。但し、図の紙面手前と奥方向には、このマスク4の作用は無く、溶解物質2は、その下にある薄膜材料3の端部まで形成される(c)。
【0030】
続いて、その上に、薄膜材料3をスパッタリングや蒸着等により成膜する(d)。そのとき、図に示すように、溶解物質2が成膜されていない左右端部においては、新しく成膜された薄膜材料3とその下にある薄膜材料3が一体化する。
【0031】
続いて、(c)の工程と同じように、溶解物質2をスパッタリングや蒸着等によりその上に成膜する(e)。
【0032】
続いて、(d)の工程と同じように、その上に、薄膜材料3をスパッタリングや蒸着等により成膜する(f)。
【0033】
最後に、溶解物質2を溶剤で溶解すると、溶解物質2があった部分に空隙5が形成されると共に、基板1が分離し、図においては、薄膜材料3が3層、空隙5を挟んで積層された光学薄膜が形成される(g)。なお、この溶解の際、薄膜材料3間にある溶解物質2の左右方向は、薄膜材料3で塞がれているために溶剤は入り込めないが、図の紙面の手前及び奥方向の端部では、溶解物質の端部がむき出しになっており、ここから溶剤が作用して、溶解物質が全部溶解される。
【0034】
図においては、説明を簡略化するために薄膜材料3層からなる光学薄膜の製造方法を示しているが、(c)、(d)の工程を繰り返すことにより、任意の層数の光学薄膜を製造することができる。又、薄膜材料3は、必ずしも全ての層について同じである必要はない。但し、スパッタリングや蒸着で成膜を行った際に、互いに密着性の良いものでないと、剥がれる恐れがあり、このような場合には、特別に密着性を高める処理が必要である。これらのことは、以下に述べる全ての実施の形態について同じである。
【0035】
図2は、本発明の第2の実施の形態である多層光学薄膜の製造方法を説明するための図である。この実施の形態においては、まず基板1の上に、溶解物質6をスパッタリングや蒸着で成膜する(a)。この溶解物質6は、後に述べる溶解物質2とは異なるものであり、溶解物質2を溶解する溶剤では溶解しないものである。
【0036】
次に、その上に、薄膜材料3をスパッタリングや蒸着等により成膜する(b)。
【0037】
続いて、溶解物質2をスパッタリングや蒸着等によりその上に成膜するが、そのときマスク4を使用して、その下にある薄膜材料3の左右端部には溶解物質2が成膜されないようにする。但し、図の紙面手前と奥方向には、このマスク4の作用は無く、溶解物質2は、その下にある薄膜材料3の端部まで形成される(c)。
【0038】
続いて、その上に、薄膜材料3をスパッタリングや蒸着等により成膜する(d)。そのとき、図に示すように、溶解物質2が成膜されていない左右端部においては、新しく成膜された薄膜材料3とその下にある薄膜材料3が一体化する。
【0039】
次に、溶剤により、溶解物質2を溶解する。すると溶解物質2があった部分に空隙5が形成される(e)。
【0040】
続いて、(c)の工程と同じように、溶解物質2をスパッタリングや蒸着等によりその上に成膜する(f)。次に、(d)の工程と同じように、その上に、薄膜材料3をスパッタリングや蒸着等により成膜する(g)。
【0041】
次に、(e)の工程と同じように、溶剤により、溶解物質2を溶解する。すると溶解物質2があった部分に空隙5が形成される(h)。
【0042】
最後に、溶解物質6を溶剤で溶解すると、基板1が分離し、薄膜材料3が3層、空隙5を挟んで積層された光学薄膜が形成される(i)。
【0043】
図3は、本発明の第3の実施の形態である光学素子の製造方法を説明するための図である。
【0044】
まず、基板1の上に、薄膜材料3をスパッタリングや蒸着等により成膜する(a)。
【0045】
続いて、溶解物質2をスパッタリングや蒸着等によりその上に成膜するが、そのときマスク4を使用して、その下にある薄膜材料3の左右端部には溶解物質2が成膜されないようにする。但し、図の紙面手前と奥方向には、このマスク4の作用は無く、溶解物質2は、その下にある薄膜材料3の端部まで形成される(b)。
【0046】
続いて、その上に、薄膜材料3をスパッタリングや蒸着等により成膜する(c)。そのとき、図に示すように、溶解物質2が成膜されていない左右端部においては、新しく成膜された薄膜材料3とその下にある薄膜材料3が一体化する。
【0047】
続いて、(b)の工程と同じように、溶解物質2をスパッタリングや蒸着等によりその上に成膜する(d)。
【0048】
続いて、(c)の工程と同じように、その上に、薄膜材料3をスパッタリングや蒸着等により成膜する(e)。
【0049】
最後に、溶解物質2を溶剤で溶解すると、溶解物質2があった部分に空隙5が形成され、基板1の上に、薄膜材料3が3層、空隙5を2層挟んで積層された光学素子が形成される(f)。
【0050】
図4は、本発明の第4の実施の形態である光学素子の製造方法を説明するための図である。この実施の形態においては、まず基板1の上に、薄膜材料3をスパッタリングや蒸着等により成膜する(a)。
【0051】
続いて、溶解物質2をスパッタリングや蒸着等によりその上に成膜するが、そのときマスク4を使用して、その下にある薄膜材料3の左右端部には溶解物質2が成膜されないようにする。但し、図の紙面手前と奥方向には、このマスク4の作用は無く、溶解物質2は、その下にある薄膜材料3の端部まで形成される(b)。
【0052】
続いて、その上に、薄膜材料3をスパッタリングや蒸着等により成膜する(c)。そのとき、図に示すように、溶解物質2が成膜されていない左右端部においては、新しく成膜された薄膜材料3とその下にある薄膜材料3が一体化する。
【0053】
次に、溶剤により、溶解物質2を溶解する。すると溶解物質2があった部分に空隙5が形成される(d)。
【0054】
続いて、(b)の工程と同じように、溶解物質2をスパッタリングや蒸着等によりその上に成膜する(e)。次に、(c)の工程と同じように、その上に、薄膜材料3をスパッタリングや蒸着等により成膜する(f)。
【0055】
次に、(d)の工程と同じように、溶剤により、溶解物質2を溶解する。すると溶解物質2があった部分に空隙5が形成される(g)。
【0056】
最後に、溶解物質6を溶剤で溶解すると、基板1の上に、薄膜材料3が3層、空隙5を2層挟んで積層された光学素子が形成される(g)。
【0057】
図5は、本発明の第5の実施の形態である光学素子の製造方法を説明するための図である。この実施の形態においては、まず基板1の上に、溶解物質2をスパッタリングや蒸着等により成膜する。その際、成膜範囲は、図の左右方向において、後に薄膜材料が成膜される範囲より狭くしておく(a)。
【0058】
次に、薄膜材料3をスパッタリングや蒸着等により成膜する(b)。このとき、図の左右両端で、薄膜材料3が基板1と密着する。
【0059】
続いて、溶解物質2をスパッタリングや蒸着等によりその上に成膜するが、そのときマスク4を使用して、その下にある薄膜材料3の左右端部には溶解物質2が成膜されないようにする。但し、図の紙面手前と奥方向には、このマスク4の作用は無く、溶解物質2は、その下にある薄膜材料3の端部まで形成される(c)。
【0060】
続いて、その上に、薄膜材料3をスパッタリングや蒸着等により成膜する(d)。そのとき、図に示すように、溶解物質2が成膜されていない左右端部においては、新しく成膜された薄膜材料3とその下にある薄膜材料3が一体化する。
【0061】
続いて、(c)の工程と同じように、溶解物質2をスパッタリングや蒸着等によりその上に成膜する(e)。次に、(d)の工程と同じように、その上に、薄膜材料3をスパッタリングや蒸着等により成膜する(f)。
【0062】
最後に、溶解物質6を溶剤で溶解すると、図においては、基板1の上に、薄膜材料3が3層、空隙5を3層挟んで積層された光学素子が形成される(g)。
【0063】
以上説明した第5の実施の形態においては、全ての薄膜材料3による薄膜形成を終えてから、一度に溶解物質2の溶解を行っていたが、図4に示したのと同じように、1層の薄膜材料3による薄膜形成を終える毎に溶解物質の溶解を行うようにしてもよい。
【0064】
さらに、以上説明した光学素子の形成においては、基板1の上に空隙と薄膜が交互に形成された多層薄膜を形成していたが、基板1の上に、従来の方法により屈折率が異なる物質からなる多層薄膜が形成されたものの上に、上記のような実施の形態の方法により、空隙と薄膜が交互に形成された多層薄膜を形成することもでき、その方法はあえて説明するまでもないであろう。さらに、本実施の形態の方法により形成された光学素子の上に、従来の方法により屈折率が異なる物質からなる多層薄膜を形成することも容易であり、さらに、このような光学素子の上に、再び本実施の形態の方法により空隙と薄膜が交互に形成された多層薄膜を形成することも容易である。
【0065】
本発明の実施の形態のような多層光学薄膜、光学素子は、ブリュースター角を小さくできるので、入射角が小さい偏光ビームスプリッタとして使用することができる他、フィルタ、偏光ビームスプリッタ、反射防止膜等に用いる場合、従来得られなかった光学特性を得ることができる。
【実施例】
【0066】
図3に示すような方法により、光学素子を形成した。基板1としては、屈折率1.7のガラス基板を使用し、溶解物質2としてアルミニウム、薄膜物質として2酸化ケイ素(SiO)を使用し、2酸化ケイ素薄膜が101層、空気層が100層、合計201層からなる多層薄膜を形成し、さらにその上に、屈折率1.7の接着剤を使用して、屈折率1.7のガラス基板を接着により接合した。完成した光学素子は、多層光学薄膜を2枚のガラス基板で挟んだ構成を有し、多層薄膜全体の厚さは16μmである。なお、溶解物質であるアルミニウムの溶解には、10%の水酸化ナトリウム水溶液を使用し、10分間水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬することにより、アルミニウムを完全に溶解した。
【0067】
形成された201層の多層光学薄膜の膜構成を表1〜表4に分割して示す。これらの表は、膜番号、膜の材質、膜厚を示している。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
この光学素子の入射角30°における分光反射特性を図6に示す。図において横軸は波長、縦軸は分光反射率であり、太線はS偏光、細線はP偏光についてのものである。但し、細線は、ほとんど反射率0の線と重なって見えにくくなっている。この光学素子の平均消光比は約550であった。従来の多層光学薄膜では、入射角30°において10を越す消光比を得ることが困難であったことを考慮すると、本光学素子が以下に優れた特性を有するかが分かる。
【0073】
この光学素子は、従来の多層光学薄膜では実現が困難であった小入射角偏光ビームスプリッタとして使用することができ、例えばウエアラブルディスプレイの光学系に用いれば、ディスプレイ性能を落とすことなく、大幅な薄型化、軽量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施の形態である多層光学薄膜の製造方法を説明するための図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態である多層光学薄膜の製造方法を説明するための図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態である光学素子の製造方法を説明するための図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態である光学素子の製造方法を説明するための図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態である光学素子の製造方法を説明するための図である。
【図6】本発明の実施例得ある光学素子の、入射角30°における分光反射特性を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1…基板、2…溶解物質、3…薄膜材料、4…マスク、5…空隙、6…溶解物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空隙部と、固体物質からなる薄膜層が、交互に形成された多層光学薄膜。
【請求項2】
以下の工程を有する請求項1に記載の多層光学薄膜の製造方法。
(1)基板の上に第1の溶解物質を塗布し、この第1の溶解物質の上に第1の薄膜材料を重ねて成膜する工程
(2)さらにその上に第2の溶解物質を塗布し、その上に第2の薄膜材料を、その直下にある前記第2の溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記第2の溶解物質の下にある前記第1の薄膜材料と前記第2の薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(3)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(4)(3)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧3)の薄膜の積層体を形成し、その後各薄膜間と薄膜と基板間の溶解物質を溶解して空隙を形成する工程
【請求項3】
以下の工程を有する請求項1に記載の多層光学薄膜の製造方法。
(1)基板の上に第1の溶解物質を塗布し、この第1の溶解物質の上に第1の薄膜材料を重ねて成膜する工程
(2)さらにその上に前記第1の溶解物質とは異なる第2の溶解物質を塗布し、その上に第2の薄膜材料を、その直下にある前記第2の溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記第2の溶解物質の下にある前記第1の薄膜材料と前記第2の薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記第2の溶解物質を溶解して除去する工程
(3)最表層にある成膜された薄膜材料の上に前記第1の溶解物質とは異なる溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記溶解物質を除去する工程
(4)(3)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧3)の薄膜の積層体を形成し、その後各薄膜間の溶解物質を溶解して空隙を形成する工程
(5)前記第1の溶解物質を溶解して除去する工程
【請求項4】
基板の上に、空隙部と固体物質からなる薄膜層が交互に形成された構造を有する光学素子。
【請求項5】
基板の上に、屈折率が異なる物質が積層されて構成される部分を有し、その上に、空隙部と固体物質からなる薄膜層が交互に形成された構造を有する光学素子。
【請求項6】
以下の工程を有する請求項4に記載の光学素子の製造方法。
(1)基板の上に薄膜材料を成膜する工程
(2)前記薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、この溶解物質の上に薄膜材料を、前記溶解物質の少なくとも一部が露出し、前記基板上に成膜された薄膜材料と前記溶解物質の上に成膜される薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(3)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(4)(3)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧3)の薄膜の積層体を形成し、その後各薄膜間の溶解物質を溶解して空隙を形成する工程
【請求項7】
以下の工程を有する請求項4に記載の光学素子の製造方法。
(1)基板の上に薄膜材料を成膜する工程
(2)前記薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、この溶解物質の上に薄膜材料を、前記溶解物質の少なくとも一部が露出し、前記基板の上に成膜された薄膜材料と前記溶解物質の上に成膜される薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記基板の上に成膜された溶解物質を溶解して除去する工程
(3)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記溶解物質を溶解して除去する工程
(4)(3)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧3)の薄膜の積層体を形形成する工程
【請求項8】
以下の工程を有する請求項4に記載の光学素子の製造方法。
(1)基板の上に溶解物質を塗布し、この溶解物質の上に薄膜材料を、前記溶解物質の少なくとも一部が露出し、前記基板と前記薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(2)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(3)(2)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧2)の薄膜の積層体を形成し、その後各薄膜間の溶解物質を溶解して空隙を形成する工程
【請求項9】
以下の工程を有する請求項4に記載の多層光学素子の製造方法。
(1)基板の上に溶解物質を塗布し、この溶解物質の上に薄膜材料を、前記溶解物質の少なくとも一部が露出し、前記基板と前記薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記溶解物質を溶解して除去する工程
(2)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記溶解物質を溶解して除去する工程
(3)(2)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧2)の薄膜の積層体を形成する工程
【請求項10】
以下の工程を有する請求項5に記載の光学素子の製造方法。
(1)基板の上に屈折率の異なる複数の物質を交互に積層して成膜し中間体を製造する工程
(2)前記中間体の上に薄膜材料を成膜する工程
(3)前記薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、この溶解物質の上に薄膜材料を、前記溶解物質の少なくとも一部が露出し、前記中間体の上に成膜された薄膜材料と前記溶解物質の上に成膜される薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(4)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(5)(4)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧3)の薄膜の積層体を形成し、その後各薄膜間の溶解物質を溶解して空隙を形成する工程
【請求項11】
以下の工程を有する請求項5に記載の光学素子の製造方法。
(1)基板の上に屈折率の異なる複数の物質を交互に積層して成膜し中間体を製造する工程
(2)前記中間体の上に第1の薄膜材料を成膜する工程
(3)前記第1の薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、この溶解物質の上に薄膜材料を、前記溶解物質の少なくとも一部が露出し、前記中間体の上に成膜された薄膜材料と前記溶解物質の上に成膜される薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記中間体の上に成膜された溶解物質を溶解して除去する工程
(4)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記溶解物質を溶解して除去する工程
(5)(4)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧3)の薄膜の積層体を形成する工程
【請求項12】
以下の工程を有する請求項5に記載の多層光学素子の製造方法。
(1)基板の上に屈折率の異なる複数の物質を交互に積層して成膜し中間体を製造する工程
(2)前記中間体の上に溶解物質を塗布し、この溶解物質の上に薄膜材料を、前記溶解物質の少なくとも一部が露出し、前記中間体と前記薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(3)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜する工程
(4)(3)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧2)の薄膜の積層体を形成し、その後各薄膜間の溶解物質を溶解して空隙を形成する工程
【請求項13】
以下の工程を有する請求項5に記載の多層光学素子の製造方法。
(1)基板の上に屈折率の異なる複数の物質を交互に積層して成膜し中間体を製造する工程
(2)前記中間体の上に溶解物質を塗布し、この溶解物質の上に薄膜材料を、前記溶解物質の少なくとも一部が露出し、前記中間体と前記薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記溶解物質を溶解して除去する工程
(3)最表層にある成膜された薄膜材料の上に溶解物質を塗布し、その上に新たな薄膜材料を、その直下にある溶解物質の少なくとも一部が露出し、かつ前記溶解物質の下にある薄膜材料と前記新たな薄膜材料の一部がつながるように成膜し、その後前記溶解物質を溶解して除去する工程
(4)(3)の工程を必要数繰り返すことにより、n層(n≧2)の薄膜の積層体を形成する工程
【請求項14】
請求項1に記載の多層光学薄膜を有することを特徴とする光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−10719(P2006−10719A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183155(P2004−183155)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】