説明

多層冷菓

【課題】流動性の悪い材料からなる添加物を、冷菓の中に多層状にかつ各層が冷菓の外周部から中央部付近まで薄く広がるようにした多層冷菓およびその製造方法を提供する。
【解決手段】チョコレートおよびソースの少なくとも2種類の添加物が冷菓2の中に充填されている。チョコレートは、冷菓2を上下方向に切断した断面において、複数のチョコレート層4が上下に間隔をあけて積層されるとともに、各チョコレート層4が冷菓2の中央部から左右両側の外周部に向けて広がるように、冷菓2の中に充填されている。ソースは、冷菓2を上下方向に切断した断面において、各チョコレート層4の層上または層下にソース層6がそれぞれ当接するように、冷菓2の中に充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイスクリームなどの冷菓の内部に、異種の食品からなる添加物が複数層状に充填された多層冷菓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の多層冷菓として、アイスクリームなどの冷菓の内部に、チョコレートやフルーツソース、キャラメルソースなどの流動性を有する添加物が複数層状に充填されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような多層冷菓は、一般的には、カップなどの容器の中に、例えばアイスリーム生地およびチョコレート生地の2種類の材料を、それぞれ上方から同一の、または別々の充填ノズルにより同時に吐出するとともに、このときに容器を回転(偏芯)させたり、充填ノズルを回転(偏芯)させたりすることによって製造され、容器内で各生地が固化することにより、アイスクリームの中に、チョコレートがらせん状に積層した状態で保持される。
【0004】
上記した構成の多層冷菓では、アイスクリームの内部に、その縦断面視において、チョコレートなどの板状の層が上下に多層状に形成されるので、食べたときに、このチョコレートなどがアイスクリームとともに口の中に入れられて、2種類の食感、風味、味を同時に堪能でき、市場で好評をきたしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3723348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記した構成の多層冷菓において、添加物としてチョコレートを用いた場合には、チョコレートの生地は油脂であって、その表面状態も滑らかであるので、図12に示すように、アイスクリームの生地に対して、チョコレートの生地がその流動性によって面状に広がる、つまり、回転による遠心力により、中央部付近から外周部にまで入り込む。その結果、各生地が固化したとき、薄い板状のチョコレートの層11がアイスクリーム10の中にまんべんなく広がるようにして形成される。
【0007】
しかしながら、添加物としてフルーツソースやキャラメルソースなどを用いた場合、これらのソースの生地は、一般的にチョコレートの生地と比べると粘度が高いために流動性が悪い。その上、アイスクリームの生地はその表面がザラザラしていて表面滑性も悪いことから、図13に示すように、アイスクリームの生地の中にソースに生地が面状に広がりにくく、ソースの生地は棒状でアイスクリームの生地内でらせんを描くにとどまってしまう。
【0008】
また、らせん状に充填する以外の方法として、添加物としてフルーツソースやキャラメルソースなどを用いて、アイスクリームの中に、棒状のソースの層を縦に複数並列して充填することが行われている。しかし、このような構成の多層冷菓においても、喫食している最中や、喫食前などに多層冷菓を長時間放置することにより、アイスクリームが溶け出すと、溶けたクリームとともにソースの層が容器の底に沈みこんでしまう。そうなると外観が損なわれるうえ、ソースとアイスクリームとが完全に分離してしまうなどの問題もある。
【0009】
本発明は、上記した問題に着目してなされたもので、フルーツソースなどの流動性の悪い材料からなる添加物を、冷菓の中に多層状に、しかも、各層が冷菓の中央部付近から外周部まで薄く広がるようにした多層冷菓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の前記目的は、冷菓の内部に異種の添加物を充填してなる多層冷菓であって、融点が約10℃〜45℃であるチョコレート、および前記チョコレートよりも粘度が高いソースの少なくとも2種類の添加物が前記冷菓の中に充填されており、前記チョコレートは、前記冷菓を上下方向に切断した断面において、複数のチョコレート層が上下に間隔をあけて積層されるとともに前記各チョコレート層が前記冷菓の中央部付近から左右両側の外周部に向けて広がるように、前記冷菓の中に充填され、前記ソースは、前記冷菓を上下方向に切断した断面において、前記各チョコレート層の層上または層下にソース層がそれぞれ当接するように、前記冷菓の中に充填されていることを特徴とする多層冷菓により達成される。
【0011】
本発明の好ましい実施態様においては、前記各チョコレート層および各ソース層は、前記冷菓の中央部付近から外周部へ向けて高くなるように傾斜していることを特徴としている。
【0012】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記チョコレートは、前記冷菓の内部にらせん状に積層した状態で保持されていて、前記ソースは、らせん状の前記チョコレートのらせん面上またはらせん面下に積層されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フルーツソースなどの流動性の悪い材料からなる添加物を、冷菓の内部に多層状に、しかも、各層が冷菓の中央部付近から外周部まで広がっている多層冷菓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態である多層冷菓の外観を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】多層冷菓の内部構造を示す説明図である。
【図4】多層冷菓の製造工程の一部を示す説明図である。
【図5】充填ノズルの形状を示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態である多層冷菓の内部構造を示す説明図である。
【図7】図6の多層冷菓の縦断面図である。
【図8】各生地を充填した後の多層冷菓の内部状態を示す説明図である。
【図9】ヒートショックを与えた後の実施例および比較例の多層冷菓の内部状態を示す説明図である。
【図10】比較例の多層冷菓の内部構造を示す縦断面図である。
【図11】比較例の多層冷菓の内部構造を示す縦断面図である。
【図12】従来例の多層冷菓の内部構造を示す縦断面図である。
【図13】従来例の多層冷菓の内部構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態である多層冷菓1の外観構成を、図2および図3は、図1の多層冷菓1の内部構成を、それぞれ示している。ここで、多層冷菓とは、各種の冷菓の内部に、チョコレートやフルーツソ−スなどの異種の食品からなる添加物が層状に充填された食品のことを指す。
【0016】
本実施形態の多層冷菓1は、冷菓2の内部に少なくとも2種類の添加物を含ませたものであり、図示例では、容器3に充填されている。容器3は、本実施形態では、略円筒状のもので、上部に開口30を有するとともに下部に底部31を有している。なお、容器3は、上部に開口30を有するものであれば、形状はこれに限定されない。この容器3は、ガラス製の容器、陶磁器製の容器、合成樹脂製の容器、紙製の容器など、いずれの材質のものであってもよく、さらには、可食容器であってもよい。可食容器は、モナカやコーンなどの焼き菓子で構成するのが好適である。
【0017】
冷菓2は、凍結または半凍結状態で喫食される菓子食品全般を意味し、本実施形態では、アイスクリーム類やシャーベットなどを好適に例示することができる。アイスクリーム類の種類は、乳固形分含量や乳脂肪分含量によって、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスなどに分類されているが、本発明の対象とする冷菓2は、これらのいずれであってもよい。本実施形態では、冷菓2としてラクトアイスが用いられている。
【0018】
冷菓2は、詳細は後述するが、冷菓2を形成する冷菓生地として、例えばアイスクリームミックス、アイスミルクミックス、ラクトアイスミックスなどの材料を製造機にかけ、充填ノズルから容器3に吐出した後、凍結固化することにより製造される。アイスクリームミックスなどの原料としては、乳製品を主成分とし、これに糖類、植物性脂肪、乳化剤、安定剤、香料と、必要に応じて着色料などを配合したうえで加水調整した、通常、一般的なアイスクリームに使用する材料と同様のものを用いることができる。また、果汁、果肉、果汁粉末、チョコレート、抹茶などの呈味物質、糖類や人工甘味料などの甘味料などを適宜加えることも可能である。
【0019】
上述した冷菓2の内部には、チョコレート、および、チョコレートよりも粘度が高いソースの少なくとも2種類の添加物が充填されている。チョコレートは、その性状として、冷菓2と比べると融点が高くて溶融しにくいことが好ましい。チョコレートの融点としては、約10℃〜45℃程度であり、冷菓2の凍結点は、約−2.0℃前後である。
【0020】
本実施形態のチョコレートを形成するチョコレート生地としては、カカオバターを用いたチョコレートだけでなく、準チョコレート、チョコレート加工品も含まれる。カカオバターの代替油脂などを用いたチョコレート生地も用いることができる。また、いわゆるカカオマスを用いたチョコレート色をしたチョコレート生地の他にも、例えば、カカオマスを用いずに糖、粉乳に油脂を混ぜたホワイトチョコレート(他の色に着色したチョコレートでもよい)、さらには、種々の粉末類を使用してコーヒー風味、抹茶風味、果実風味などの様々な風味が付けられた種々のチョコレート生地も用いることもできる。
【0021】
このチョコレートは、冷菓2を上下方向に真っ二つ(半分)に切断した断面において、冷菓2を周方向の如何なる方向において切断した場合でも、図2に示すように、複数の薄い板状のチョコレートの層(チョコレート層)4が、上下に間隔をあけて積層されるように、冷菓2の中に充填されている。本実施形態では、各チョコレート層4は、冷菓2の中央部付近から外周方向に向けて広がっていて、左右両側の外周部まで入り込んでいる。また、各チョコレート層4は、冷菓2の中央部付近から外周部へ向けて高くなるように傾斜している。その結果、複数のチョコレート層4が冷菓2の中にまんべんなく広がるようになっている。
【0022】
各チョコレート層4の厚みは、0.3mm〜2.5mmの範囲であることが好ましい。厚みが0.3mm未満であると、食したときにチョコレート特有のパリパリッとした食感が乏しくなる一方、厚みが2.5mmを超えると、チョコレートが硬くなり過ぎて口溶けが不良になるとともに、食したときにチョコレートの風味が強くなり過ぎて冷菓2との風味のバランスが悪くなるからである。
【0023】
本実施形態のチョコレートは、図3に示すように、冷菓2の中に、らせん状に積層した状態で保持されている。チョコレートのらせん5は、一定の幅を有する帯状のらせんであり、隣接するらせん面50間に冷菓2が満たされている。各らせん面50の幅は、冷菓2の外周部から中央部付近までの距離と同程度であり、これにより、冷菓2を上下方向に切断した断面において、複数のチョコレート層4が、冷菓2の中央部付近から左右両側の外周部に向けて、左右で上下方向に沿って互い違いで広がった状態で積層される。
【0024】
図2に戻って、冷菓2を上下方向に切断した断面において、各チョコレート層4の層上には、ソースの層(ソース層)6がそれぞれ当接している。この各ソース層6を形成するソースは、フルーツソース、チョコレートソース、コーヒーソース、キャラメルソース、シロップ、フルーツペースト、ジャム、練乳など、流動性を有するものであれば、一般的に用いられる各種食品を使用することができ、これらは、通常用いられる方法により調製することができる。また、ソースに、果実、果肉などの各種固形物を含有させることもできる。
【0025】
本実施形態では、ソースは、図3に示すように、冷菓2の中に保持されたチョコレートのらせん5のらせん面50上に積層される。これにより、冷菓2を上下方向に切断した断面において、複数のソース層6が、チョコレート層4上で、面状に薄く広がって、冷菓2の中央部付近から左右両側の外周部まで伸展している。
【0026】
次に、本発明の多層冷菓1は、例えば次のようにして製造される。まず、図4に示すように、上方に前記冷菓2用の生地(冷菓生地)7を吐出する冷菓充填ノズル10、前記チョコレート用の生地(チョコレート生地)8を吐出するチョコレート充填ノズル11、および、前記ソース用の生地(ソース生地)9を吐出するソース充填ノズル12を、下方に上記した各生地を受ける容器3を、それぞれ配置する。冷菓充填ノズル10は、チョコレート充填ノズル11およびソース充填ノズル12と近接した形で配置されている。なお、チョコレート充填ノズル11およびソース充填ノズル12は、本実施形態では、図5に示すように、冷菓充填ノズル10の両側にそれぞれ2つ配置されているが、1つまたはそれ以上であってもよい。また、各充填ノズル10〜12の形状、配置の仕方、および数は、チョコレート生地8の上方(または下方に)ソース生地9が当接するように各生地7〜9が容器3内に充填されるのであれば、本実施形態に限られず、種々の方法を採用することができる。
【0027】
そして、図示しない回転装置により容器3を回転させながら、各生地7〜9を各充填ノズル10〜12から同時に容器3内に吐出することにより、各生地7〜9を容器3の中心を巻き込むようにらせん状に積み重ねながら充填する。その際、チョコレート生地8の上方にソース生地9が当接するように各生地7〜9が充填されるようになっている。
【0028】
このようにして各生地7〜9が容器3内に充填される際の冷菓2の内部では、チョコレート生地8が流動性を有するとともに、油脂であってその表面状態も滑らかであるので、チョコレート生地8が、冷菓生地7に対してその流動性によって面状に薄く広がる、つまり、回転による遠心力によって外周方向に高く傾斜しながら伸展して、冷菓2の中央部付近から外周部まで達する。よって、冷却・固化した後の冷菓2の内部には、図3に示されるような、幅広のらせん面50を有するらせん状のチョコレート5が形成され、冷菓2を切断した縦断面では、薄い板状のチョコレート層4が、冷菓2の中で、上下に複数積層されるとともに、幅方向にもまんべんなく広がった形状となる。
【0029】
一方、ソース生地9は、一般的には、チョコレート生地8と比べると粘度が高いので流動性が悪く、また、冷菓生地7の表面も、詳細に観察すると、凸凹していて表面滑性が悪いために、冷菓生地7に対して滑らず面状に広がりにくい。しかし、本実施形態においては、ソース生地9は表面状態が滑らかな油脂のチョコレート生地8上に積層されているために、チョコレート生地8が存在しない場合と比べると、冷菓生地7に対するソース生地9の滑り性が向上する。よって、各生地が容器3内に充填されるときの冷菓2の内部では、冷却・固化されながら面状に広がるチョコレート生地8上を、回転による遠心力によってソース生地9が滑って面状に薄く広がる結果、チョコレート生地8とともに外周方向に伸展して冷菓2の外周部まで入り込む。これにより、冷却・固化した後の冷菓2を切断した縦断面では、図2に示されているように、冷菓2の中で、薄い板状のソース層6が、チョコレート層4の層上ではあるが、上下に複数積層されるとともに、幅方向にもまんべんなく広がった形状となる。
【0030】
なお、冷菓2としてアイスクリームなどを使用する場合には、オーバーランが15以上のものが好適である。オーバーランが15未満であると、アイスクリームなどが冷却・固化したときにスプーンですくったときの触感として硬く、チョコレートのパリパリ感との対比が楽しめないからである。
【0031】
また、チョコレート生地8は、その粘度が、B型粘度計(例えば、株式会社東京計器社製のデジタル粘時計「DVL−B」)で40℃における粘度を測定して、50cP〜2000cPの範囲にあることが好ましい。粘度が50cP未満であると、充填時にチョコレート生地8が冷菓生地7上をくまなく流れ出したりする結果、チョコレート層4を薄い板状に形成することができず、むらができてしまう。一方、粘度が2000cPを超えると、充填時にチョコレート生地8が冷菓生地7上に薄く広がらないからである。
【0032】
また、ソース生地9の粘度は、一般的には、チョコレート生地8の粘度よりも高いが、B型粘度計(例えば、株式会社東京計器社製のデジタル粘時計「DVL−B」)で20℃における粘度を測定して、2000cP〜20000cPの範囲にあることが好ましい。粘度が20000cPを超えると、充填時にソース生地9がチョコレート生地8上に薄く広がらなくなるおそれがある。一方、粘度が2000cP未満であると、流動性が高すぎるために容器3の回転による遠心力によって、中央部付近にソースが留まらない傾向にあるからである。
【0033】
上記した粘度の測定は、本実施形態では、4000cPまでの粘度に対しては、No.3ローターを用いて、30秒間で30回転させた後の値を用いている。また、4000cP以上の粘度に対しては、No.4ローターを用いて、30秒間で30回転させた後の値を用いている。
【0034】
なお、多層冷菓1の製造過程においては、容器3としては、冷媒に浸漬させたモールドであってもよい。すなわち、モールド内に各生地7〜9を、上述したような方法で充填した後、各生地7〜9を凍結固化せしめ、次いで脱型することにより得られる多層冷菓1を、他のコーンなどの可食容器またはカップなどの非可食容器に入れるようにしてもよい。
【0035】
上記した構成の多層冷菓1では、冷菓2の中に、薄い板状のチョコレートの層4および薄い板状のソースの層6が、冷菓2の半径方向に広がった状態で上下に複数積層されているので、断面が層状を呈する美しい外観を持つとともに、冷菓2のどの箇所をスプーンですくっても、チョコレート層4およびソース層6を冷菓2と一緒にすくうことができる。また、喫食時にはチョコレートがパリパリと割れ、面白い食感が付与されるとともに、チョコレートに加えてソースの風味も味わうことができるので、従来には存在しなかったユニ−クな風味と食感を楽しむことができる。
【0036】
さらに、喫食している最中や、喫食前などに、多層冷菓1を放置することにより、冷菓2が徐々に溶け出した場合でも、チョコレートは、冷菓2と比べて融点が高くて溶融しにくいため、固化したときのらせん形状が保たれる。よって、本実施形態の多層冷菓1では、らせん状のチョコレート5がソースの受け皿となって、溶けた冷菓2とともにソースが容器3の底に沈みこむのを防ぐので、外観が損なわれることがないうえ、チョコレート層4およびソース層6と冷菓2とが完全に分離することを防止できる。
【0037】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態の多層冷菓1では、ソースは、冷菓2を上下方向に切断した断面において、各チョコレート層4の層上にソース層6がそれぞれ当接するように、冷菓2の中に充填されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、各チョコレート層4の層下にソース層6がそれぞれ当接するように、冷菓2の中に充填されていてもよい。この場合には、多層冷菓を製造する過程において、各生地7〜9を各充填ノズル10〜12から同時に吐出して容器3内にらせん状に積み重ねながら充填する際に、ソース生地9の上方にチョコレート生地8が当接するように各生地7〜9を充填するようにする。
【0038】
この実施形態においては、各生地7〜9が容器3内に充填されたときの冷菓2の内部では、ソース生地9は冷菓生地7上に積層されるが、ソース生地9上には油脂のチョコレート生地8が存在しているために、このチョコレート生地8の存在により、冷菓生地7による上方からの圧力がソース生地9に作用するのが防止されることに加えて、冷却・固化されながら面状に広がる層上のチョコレート生地8により、ソース生地9が押し広げられてチョコレート生地8の滑らかな表面に沿って滑るようになるので、チョコレート生地8が存在しない場合と比べると、冷菓生地7に対するソース生地9の滑り性が向上する。その結果、回転による遠心力によって冷菓生地7の中でソース生地9が面状に広がって、チョコレート生地8とともに外周方向に伸展して冷菓2の外周部まで入り込むようになる。よって、この実施形態の多層冷菓においても、冷却・固化した後の冷菓2を切断した縦断面では、薄い板状のソース層6が、冷菓2の中で、チョコレート層4の層下ではあるが、上下に複数積層されるとともに、幅方向にもまんべんなく広がった形状となる。
【0039】
さらに、喫食している最中や、喫食前などに、上記した構成の多層冷菓を放置することにより、冷菓2が徐々に溶け出した場合でも、チョコレートは、冷菓2と比べて融点が高くて溶融しにくいので、固化したときのらせん形状が保たれる。よって、チョコレートが溶けた冷菓2の沈み込みを受け止めるとともに、ソース層6自体も薄く広がっていて冷菓2内に沈み込みにくくなっていることから、この実施形態の多層冷菓においても、ソースが冷菓2とともに容器3の底に沈み込むのが防止される。その結果、外観が損なわれることがないうえ、チョコレートおよびソースと冷菓2とが完全に分離することが防止される。
【0040】
また、本発明の多層冷菓は、上記した製造方法によって製造されたものに限定されるものではない。例えば、図3に示されているような、らせん状の骨格を有するチョコレート5を予め製造しておき、このらせん状のチョコレート5のらせん面50上またはらせん面50下にソースを積層させた後、隣接するらせん面50間に冷菓2を充填することにより、多層冷菓を製造するようにしてもよい。
【0041】
また、図6に示されるような、平面視がドーナツ状をなす薄い板状のチョコレート51を予め複数枚製造しておき、この板状のチョコレート51の上面または下面にソース52を積層させた後、容器3内に上下に所定の間隔をあけて配置し、隣接するチョコレート51の間に冷菓2を充填することにより、多層冷菓10を製造するようにしてもよい。この多層冷菓10においても、冷菓2を上下方向に真っ二つに切断した断面では、冷菓2を周方向の如何なる方向において切断した場合でも、図7に示すように、薄い板状のチョコレートの層4および薄い板状のソースの層6が、冷菓2の中央部付近から外周部まで広がった状態で上下に複数並列して積層されるので、上記した実施形態の多層冷菓1と同様の効果が得られる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の多層冷菓の実施例を示すが、本発明がこれら実施例に限定されないことは言うまでもない。本実施例では、容器3を回転させながら、冷菓充填ノズルからアイスクリーム生地を、前記冷菓充填ノズルの両側の複数箇所からそれぞれチョコレート生地およびソース生地を同時に吐出して、容器3内に各生地を、ソース生地の上方にチョコレート生地が当接するようにして、らせん状に積み重ねながら充填した。図8に、冷却・固化された後の多層冷菓の縦断面図を示す。そして、この多層冷菓について、その味、風味、食感などを基準とした満足度、購入意向を、種々のタイプ別に、計34人のパネラーを対象に1〜4の4段階評価による官能試験を行った。その結果が表1〜表6に示されている。なお、4段階評価の内容は、以下の通りである。比較例としては、図10に示すように、アイスクリーム13の内部にチョコレート14が複数層状にして充填されているとともに、棒状のソース15がアイスクリーム13の中央部に充填された例の多層冷菓を示す。
【0043】
1=大変良い(多いにある)。
2=やや良い(ややある)。
3=どちらでも。
4=全くない。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
図8に示されているように、本発明の製造方法によって製造された多層冷菓では、ソース生地をチョコレート生地と当接するように容器内に充填することで、回転による遠心力によってチョコレート生地とともにソース生地が面状に広がり、外周方向に伸展して冷菓2の外周部まで入り込むようになるために、冷却・固化した後の冷菓を切断した縦断面においては、薄い板状のソース層が、チョコレート層とともに、冷菓の中で、上下に複数積層されるとともに、幅方向にもまんべんなく広がった形状となることが確認された。また、表1〜表6より、本発明の多層冷菓は、比較例の多層冷菓よりも、食したときの満足度および購入意向が高く、しかも、その満足度および購入意向自体についても高い評価を受けていることが確認された。
【0051】
これは、本発明の多層冷菓では、断面が層状を呈する美しい外観を持つとともに、冷菓のどの箇所をスプーンですくっても、チョコレート層およびソース層を冷菓と一緒にすくうことができ、また、喫食時にはチョコレートがパリパリと割れ、面白い食感が付与されるとともに、チョコレートに加えてソースの風味も味わうことができることから、従来には存在しなかったユニ−クな風味と食感を楽しむことができるからであると思料される。
【0052】
また、本発明の多層冷菓の保存評価として、上述した多層冷菓を、30℃で1時間放置してヒートショックを与え、放置された後の多層冷菓の断面形状を確認した。その結果が図9の右に示されている。なお、比較例として、図11に示すような、アイスクリーム16の内部に棒状のソース17を複数縦にして並列して充填した多層冷菓を、同様に、30℃で1時間放置してヒートショックを与えた後の断面形状を、図9の左に示す。
【0053】
図9から分かるように、比較例の多層冷菓では、ソースが溶けたアイスクリームとともに容器の底に沈み込んでいるのに対し、本発明の多層冷菓では、アイスクリームが溶解した場合であっても、チュコレート層およびソース層は、冷却・固化されたときの層形状を保っていて、ソースがアイスクリームとともに容器の底に沈み込むのが防止されることが確認された。
【符号の説明】
【0054】
1 多層冷菓
2 冷菓
3 容器
4 チョコレート層
6 ソース層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷菓の内部に異種の添加物を充填してなる多層冷菓であって、
融点が約10℃〜45℃であるチョコレート、および前記チョコレートよりも粘度が高いソースの少なくとも2種類の添加物が前記冷菓の中に充填されており、
前記チョコレートは、前記冷菓を上下方向に切断した断面において、複数のチョコレート層が上下に間隔をあけて積層されるとともに前記各チョコレート層が前記冷菓の左右両側の中央部付近から外周部に向けて広がるように、前記冷菓の中に充填され、
前記ソースは、前記冷菓を上下方向に切断した断面において、前記各チョコレート層の層上または層下にソース層がそれぞれ当接するように、前記冷菓の中に充填されていることを特徴とする多層冷菓。
【請求項2】
前記各チョコレート層および各ソース層は、前記冷菓の中央部付近から外周部へ向けて高くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の多層冷菓。
【請求項3】
前記チョコレートは、前記冷菓の内部にらせん状に積層した状態で保持されていて、前記ソースは、らせん状の前記チョコレートのらせん面上またはらせん面下に積層されていることを特徴とする請求項1または2に記載の多層冷菓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−182765(P2011−182765A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54750(P2010−54750)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】