多層吸収性衛生物品
【課題】本発明は、水分の逆戻りがなく、通気性に優れ、肌触りが良好な、多層吸収性衛生物品を提供することを、主な目的とする。
【解決手段】低融点ポリマーを含む繊維を含有し、スパンレース法によって製造されることを特徴とする吸収体が、表面シートとバックシート間に挟まれて、積層されてなる多層吸収性衛生物品を提供する。また本発明は、前記吸収体と、不織布からなるバックシートを含む多層吸収性衛生物品を提供する。
【解決手段】低融点ポリマーを含む繊維を含有し、スパンレース法によって製造されることを特徴とする吸収体が、表面シートとバックシート間に挟まれて、積層されてなる多層吸収性衛生物品を提供する。また本発明は、前記吸収体と、不織布からなるバックシートを含む多層吸収性衛生物品を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、水分の逆戻りのない多層吸収性衛生物品に関する。
【背景技術】
【０００２】
おりものシートや汗とりパッド等の体液吸収用に使用されるシートは、主に、表面シート、吸収体及びバックシートを含む積層構造を有する。このようなシートにおいて、吸収体には、一般に不織布が使用される（例えば、特許文献１）。不織布の種類は、ニードルパンチ法、スパンレース法、サーマルボンド法、メルトボンド法、エアレイド法等の製造方法によって分類されている。これらの不織布は、通気性に優れ、肌触りがよいことから、おむつ、生理用ナプキン等の衛生物品の分野において汎用されている。
【０００３】
しかしながら、従来の不織布では、特に、おりものシート等の体液吸収の目的で用いられる薄型シートに適用される場合、不織布を構成する繊維間の空隙が多いことから、充分な水分保持力が得られなかった。すなわち、繊維中だけではなく、繊維間の空隙にも吸収された体液等の水分が保持されるため、使用に際して圧がかかった場合、圧によって繊維間の空隙に存在する水分が逆戻りし、べたつき、不快感等の原因となることが問題となっていた。
【特許文献１】特開２００５−３１２９９０
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明は、水分の逆戻りがなく、通気性に優れ、べたつきがないために肌触りが良好な多層吸収性衛生物品を提供することを、主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本発明者らは、低融点ポリマーを含む繊維を含有し、スパンレース法によって製造された不織布を吸収体として用いることにより、水分の逆戻りのない多層吸収性衛生物品を提供できることを見出した。また、このような吸収体を用いることによって、バックシートに不織布を使用することが可能となり、さらに通気性に優れ、べたつきが無く、肌触りの良好な多層吸収性衛生物品を提供できることを見出した。
【０００６】
本発明は、以下の多層吸収性衛生物品を提供するものである。
項１．低融点ポリマーを含む繊維を含有し、スパンレース法によって製造されることを特徴とする吸収体を含む、多層吸収性衛生物品。
項２．低融点ポリマーの融点が１６０℃以下である、項１に記載の多層吸収性衛生物品。項３．低融点ポリマーが、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくともいずれか１種である、項１又は２に記載の多層吸収性衛生物品。
項４．吸収体が芯鞘構造を有する繊維を含み、該繊維の鞘部分が低融点ポリマーで構成されている、項１〜３のいずれかに記載の多層吸収性衛生物品。
項５．さらに、不織布からなるバックシートを備えた、項１〜４のいずれかに記載の多層吸収性衛生物品。
項６．前記不織布からなるバックシートが、スパンボンド法によって製造された不織布とメルトブロー法によって製造された不織布の積層物である、項５に記載の多層吸収性衛生物品。
項７．前記不織布からなるバックシートがＳＭＭＳ（スパンボンド／メルトブロー／メルトブロー／スパンボンド）によって製造されたバックシートである、項６に記載の多層吸
収性衛生物品。
項８．おりものシート、汗とりパッド又は尿漏れパッドである、項１〜７のいずれかに記載の多層吸収性衛生物品。
【発明の効果】
【０００７】
本発明の多層吸収性衛生物品は、スパンレース法によって製造された不織布を吸収体に用いる。スパンレース法によって製造された不織布は、繊維が平面方向に寝た状態で存在するため、吸収された体液等の水分が速やかに拡散される。また、吸収体における繊維間の空隙が少ないため、吸収体に保持される水分のほとんどが繊維中に吸収される。よって、本発明の多層吸収性衛生物品によれば、本衛生物品着用時に圧がかかった場合にも、吸収体の繊維中に水分が保持されるため、水分の逆戻りがなく、使用時にべたつき等の不快感を生じることがない。
【０００８】
また、上記スパンレース法によって製造された不織布に低融点ポリマーを含有させることによって、使用時の体の動き等による繊維の毛羽立ちを抑制することができる。これにより、吸収体の繊維間の空隙が少ない状態を維持することでき、持続的に逆戻りを防止できる。
【０００９】
さらに、本発明においては、吸収体の繊維中に水分が保持されることから、バックシートに不織布を使用することができる。よって、さらに優れた通気性を有し、べたつきがより一層改善された肌触りが良好な、多層吸収性衛生物品を提供することができる。
【００１０】
本発明においては、スパンレース法によって製造された低融点ポリマーを含む繊維を含有する不織布を使用することから、吸収体の厚みを小さくすることができ、非常に薄く、使用感に優れた多層吸収性衛生物品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
本発明の多層吸収性衛生物品は、表面シートとバックシートが、間に吸収体を挟んで積層されてなる、多層構造を有する。
【００１２】
（１）吸収体
本発明の多層吸収性衛生物品を構成する吸収体は、低融点ポリマーを含む繊維を含有し、スパンレース法によって製造されることを特徴とするものである。
【００１３】
低融点ポリマーを含む繊維
本発明において低融点ポリマーを含む繊維とは、融点が約１６０℃以下、好ましくは約１４０℃以下、より好ましくは約１３０℃以下、さらに好ましくは約１２０℃以下のポリマーを含む繊維を指す。本発明において使用される低融点ポリマーは、このような融点を有するポリマーであれば特に限定されず、例えば、変性ポリエチレンテレフタレート（変性ＰＥＴ）、共重合ポリエチレンテレフタレート（共重合ＰＥＴ）等、共重合ナイロン等、ポリエチレン（ＰＥ）、ポリプロピレン（ＰＰ）等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられ、好ましくは変性ＰＥＴ、ＰＥ、ＰＰ等である。本発明においては、これらのポリマーのうち１種単独からなる繊維を用いてもよく、２種以上のポリマーを組み合わせてなる低融点ポリマーを含む繊維として使用することもできる。
【００１４】
また、低融点ポリマーを含む繊維として、鞘部分が低融点ポリマーで構成されている芯鞘構造を有する繊維を用いた吸収体を、本発明の多層吸収性衛生物品に使用することができる。このような繊維としては、従来公知のものを用いることができ、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート（芯部分）／ポリエチレン（鞘部分）、ポリエチレンテレフタレート（芯部分）／変性ポリエチレンテレフタレート（鞘部分）、ポリプ
ロピレン（芯部分）／ポリエチレン（鞘部分）等が挙げられ、好ましくはポリエチレンテレフタレート（芯部分）／ポリエチレン（鞘部分）、ポリエチレンテレフタレート（芯部分）／変性ポリエチレンテレフタレート（鞘部分）である。
【００１５】
低融点ポリマーを含む繊維の含有量は、当該繊維を用いる従来品と同様、用いる繊維の種類、所望の目的等に応じて適宜設定することができる。
【００１６】
本発明においては、低融点ポリマーを、吸収体の総重量に対して、１０〜８０重量％程度、好ましくは２０〜５０重量％程度、より好ましくは３０〜４０重量％程度含有させることが望ましい。
【００１７】
また例えば、低融点ポリマーを含む繊維の種類によっては吸収体の総重量に対して２０重量％未満の範囲、例えば５〜９重量％程度に設定することもできる。
【００１８】
吸収体の構成
本発明の多層吸収性衛生物品を構成する吸収体は、上記の低融点ポリマーを含む繊維と、従来公知の吸収性を有する素材を組み合わせ、交絡させて構成される。吸収性を有する素材としては、好ましくは、吸収性繊維が挙げられ、低融点ポリマーよりも高い融点を有するものであれば特に限定されない。
【００１９】
吸水性繊維としては、綿、羊毛、麻などの天然繊維；或いはレーヨン繊維、アセテート繊維等の半合成繊維；及び各種繊維の混紡品や混繊品が挙げられる。吸収体の水分保持力を高めるためには、好ましくはレーヨン繊維、パルプ繊維等のセルロース系繊維等を含有させることが望ましい。
【００２０】
また、上記の低融点ポリマーを含む繊維及び吸収性繊維に、必要に応じて、吸収性ポリマー、吸収性パルプ等を組み合わせて吸収体を製造することもできる。これらの素材も、低融点ポリマーよりも高い融点を有しているものが望ましい。
【００２１】
吸水性ポリマーとしては、例えば、アクリル酸−ビニルアルコール系共重合体、アクリルアミド系ポリマー、バイオコポリマー等が挙げられる。
【００２２】
これらの合成繊維は、その断面構造等によって特に制限されず、異形断面繊維、多孔性繊維、多孔吸水繊維等で代表されるような各種構造を有するものであってもよい。
【００２３】
また、各繊維の配合割合は、本発明の効果を達成するものであれば特に限定されず、低融点ポリマーの配合割合に応じて適宜設定され得る。
【００２４】
さらに、低融点ポリマーを含む繊維又は吸収性繊維に、必要に応じて不織布活性炭、シリカゲル、消臭剤、香料等を、含浸、繊維に練り込む等の方法によって添加することもできる。また、吸収体に色素等を用いて印刷、塗布等を行っても良い。
【００２５】
本発明においては、上記の吸収性を有する素材及び低融点ポリマーを含む繊維によって構成された不織布を、吸収体として使用する。本発明において吸収体として用いられる不織布は、スパンレース法によって製造される。スパンレース法は、高速ジェット水流を利用し、繊維どうしを互いに交絡させることによって不織布を製造する方法である（例えば「不織布の製造と応用」中村義男編集 株式会社シーエムシー発行）。スパンレース法では、水流を利用して繊維を交絡させるために、通常、乾燥工程（一般に約１００〜１６０℃。低融点ポリマーを含有する場合は、約１２０〜１６０℃が好ましい）が必要とされる。
【００２６】
本発明においては、スパンレース法によって製造された不織布は、吸収体における繊維が平面方向に寝た状態で存在するため、吸収された体液等の水分は速やかに拡散される。また、吸収体における繊維間の空隙が少ないため、吸収体に保持される水分はほとんどが繊維中に吸収される。
【００２７】
さらに、低融点ポリマーと吸収性繊維を組み合わせて用い、スパンレース法によって不織布を製造することによって、上記乾燥工程において低融点ポリマーが融解し、繊維間の空隙が少ない状態を維持することができる。よって、本発明の多層吸収性衛生物品によれば、本衛生物品着用時に圧がかかった場合にも水分が吸収体の繊維中に保持され、使用時にべたつき等の不快感を生じない。また、使用時の動きなどでも毛羽がたつことなく、持続的に繊維間の空隙を小さく保つことができ、水分の逆戻りを防止できる。
【００２８】
さらに、本発明においては、水分が吸収体の繊維中に保持されることから、バックシートに不織布を使用することができる。よって、さらに優れた通気性を有し、べたつきがより一層改善された肌触りが良好な、多層吸収性衛生物品を提供することができる。
【００２９】
本発明において使用される吸収体の厚みとしては、特に限定されないが、通常、０．５〜２ｍｍ程度、好ましくは０．６〜１．５ｍｍ程度、より好ましくは０．７〜１．２ｍｍ程度である。
【００３０】
上述のように、スパンレース製法において水流で繊維を交絡させることによって繊維が圧縮され、線維間の空隙が減り、乾燥工程において低融点ポリマーが融解することによって繊維が圧縮された状態で固定される。従って、本発明においては、吸収体の厚みを小さくすることができる。
【００３１】
また、本発明において使用される吸収体の目付け（生地１ｍ２当たりの重さ）は、適度な吸収力と耐水性、使用感の良さを保つために、１０〜１００ｇ程度、好ましくは３０〜８０ｇ程度、より好ましくは４０〜６０ｇ程度であることが望ましい。
【００３２】
（２）バックシート
本発明の多層吸収性衛生物品において使用されるバックシートは、吸収された体液等の水分が裏抜けしないように液バリア性を有するシート状又はフィルム状のものであれば特に制限されないが、透湿性及び通気性を有するものであることが好ましい。このようなバックシートの素材としては、通常使用されるものが広く採用され、疎水性の素材であることが望ましい。疎水性の素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン等もしくはこれらの多層フィルムが例示される。
【００３３】
また、本発明の多層吸収性衛生物品のバックシートとして、不織布を用いることもできる。例えば、従来のおりものシート等においては、バックシートに不織布を用いると、体圧がかかることによって、吸収されたおりもの等の体液が裏抜けするという問題があった。これに対し、本発明の多層吸収性衛生物品は、上記（１）に記載されるような吸収体を用いることによって、吸収体の水分の保持力が高められている。従って、本発明においては、バックシートに不織布を使用しても、体液等の水分が裏抜けすることがない。また、バックシートに不織布を使用することにより、本発明の多層吸収性衛生物品の通気性がさらに向上する。
【００３４】
バックシートに用いられる不織布としては、上記の疎水性の素材で構成されているものを使用することができる。また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、不織布の製造方法は特に限定されないが、好ましくはスパンボンド法によって製造された不織布とメルトブロー法によって製造された不織布を２層以上、より好ましくは４層以上積層させたものを用いることが望ましい。このような不織布としては、例えば、ＳＭＭＳ（スパンボンド／メルトブロー／メルトブロー／スパンボンド）やＳＭ（スパンボンド／メルトブロー）、ＳＭＳ（スパンボンド／メルトブロー／スパンボンド）等があげられる。
【００３５】
本発明において使用されるバックシートの厚みとしては、特に限定されないが、通常、０．０５〜１ｍｍ程度、好ましくは０．１〜０．６ｍｍ程度、より好ましくは０．２〜０．４ｍｍ程度である。
【００３６】
また本発明において使用されるバックシートの目付けとしては、特に限定されないが、通常１０ｇ〜６０ｇ程度、好ましくは２０ｇ〜５０ｇ程度、より好ましくは２５ｇ〜４５ｇ程度である。
【００３７】
（３）表面シート
本発明において表面シートは、局部（陰唇部、膣口等）や腋下等の身体に直接接触し、おりものや汗等の体液を通過させて、下層の吸収体に浸透するように透過性を有しているものを指す。その限りにおいて、構成する素材の種類やシートの構造などを特に制限するものではない。このような表面シートを構成し得る素材としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン／ポリエステル複合繊維、ポリエチレン／ポリプロピレン複合繊維等の合成繊維；綿、羊毛、麻などの天然繊維；あるいはレーヨン繊維、アセテート繊維等の半合成繊維；及び各種繊維の混紡品や混繊品を挙げることができる。よりさらっとした表面を保つために、好ましくは合繊繊維である。シートの構造も特に制限されず、織物、編物、不織布（非収束状のフィラメント群や短繊維群から構成される不織布を含む。）、フェルトなどを挙げることができる。なかでも、弾性や柔軟性を備えることから、好ましくは不織布である。表面シートに用いられる不織布の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法に従って製造され得る。また、表面シートは、体液等の水分の透過性を高めるためにメッシュ状等の多孔構造を有していてもよく、肌への接触感を良くするためにエンボス加工等によって、表面に凹凸が形成されていてもよい。
【００３８】
本発明において使用される表面シートの厚みとしては、特に限定されないが、通常、０．０５〜１ｍｍ程度、好ましくは０．１〜０．６ｍｍ程度、より好ましくは０．２〜０．４ｍｍ程度である。
【００３９】
（４）多層吸収性衛生物品
本発明の多層吸収性衛生物品は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その製法は特に限定されず、従来公知の方法を使用して製造される。製造方法としては、例えば、バックシートと表面シートを、間に吸収体を挟んで積層し、これらの層を接着剤などで接着後外周部分を熱圧着し、所望の形状に沿ってシートを打ち抜き切断する方法が挙げられる。また、バックシート、吸収体及び表面シート間、バックシート下面等に、さらに他の成分からなる層を有していてもよく、例えば、バックシートの下面（すなわち、下着や衣類への接着面）に粘着層を有し、さらにこれに剥離紙、包装用シート等を有していてもよい。粘着層には、従来公知の接着剤を用いることができる。
【００４０】
この様な多層吸収性衛生物品は、おりものシート、汗とりパッド、尿漏れパッド等に適用され得る。
【００４１】
本発明の多層吸収性衛生物品は、本発明の効果を損なわないものであれば、形状は特に限定されないが、本発明の多層吸収性衛生物品が、おりものシート又は尿漏れパッドとして使用される場合は、例えば、小型の長方形又は略長方形を有するものが好ましい。長方形とは、全ての頂角が直角で、一辺が隣接する他辺よりも長く、且つ対向する辺の長さが等しい四角形をいう。略長方形とは、長方形の特徴である横長（あるいは縦長）の形状を有するものであり、例えば、楕円形、紡錘形、ひょうたん形、台形（縦長の台形）等の形状が挙げられる。
【００４２】
また、本発明の多層吸収性衛生物品が、汗とりパッドとして使用される場合は、例えば、円形、楕円形、ひょうたん型、それらを組み合わせたもの等が挙げられる。
【００４３】
本発明の多層吸収性衛生物品は、通常、おりものシート、汗とりパッド、尿漏れパッド等において適用される範囲のサイズで用いることができ、用途に応じて適宜設定され得る。
【００４４】
本発明の多層吸収性衛生物品全体の厚みとしては、本発明の効果を達成できる範囲であれば特に限定されないが、例えば、０．６〜３ｍｍ程度、好ましくは０．８〜２．７ｍｍ程度、より好ましくは１．１〜２ｍｍ程度である。
【実施例】
【００４５】
以下、実施例及び実験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び実験例に限定されない。
【００４６】
実施例及び比較例
下記表１に示す組成及び方法に従って吸収体及びバックシートを製造した。ＰＥＴ、ＰＰ、ＰＰ／ＰＥからなる表面シートとバックシートの間に吸収体を挟んで積層し、接着剤で接着後、外周部を熱圧着して打ち抜き、実施例１及び比較例１〜３のおりものシートを得た。
【００４７】
【表１】
【００４８】
実験例１
（１）透湿性
透湿性の測定は、ＪＩＳ Ｌ １０９９に従い、実施例１及び比較例１〜３のおりものシートにおいて、１ｃｍ２あたりの１時間に通過する水の量（ｇ）を求めた。値が大きい程、透湿性が高いことを表す。
【００４９】
（２）通気性
通気性の測定は、ＪＩＳ Ｌ １０９６に従い、実施例１及び比較例１〜３のおりものシートを通過する空気量（ｃｍ３／ｃｍ２）を求めた。値が大きい程、通気性が高いことを表す。
【００５０】
（３）水分の逆戻り
実施例１及び比較例１〜３のおりものシートにおける水分の逆戻りを、以下の方法に従って試験を行った。
１．表１に示される吸収体及びバックシートを備えたおりものシートを作製し、総吸収量が約１．３ｇになる面積にカットした。
２．上記１．でカットしたシートに、０．５ｍｌの水を吸収させて１分間放置した後、重量を測定した濾紙を各シートの上にのせ、さらに１．２ｋｇの錘を載せた。
３．１分後、濾紙の重量を測定し、濾紙に吸収された水分量（すなわち、逆戻り量）をパ
ーセンテージで算出した。値が大きい程、逆戻り量が多いことを表す。
【００５１】
（４）接触冷感
実施例１及び比較例１〜３のおりものシートの接触冷感について、サーモラボＩＩ型（KATO TECH CO.,LTD.）を用い、以下の方法に従って試験を行った。接触冷感とは、濡れた物に触れた時に冷たく感じる感覚を指す。
１．ＢＴ−ＢＯＸ（Bottom Temperature Box）（１）の温度を２５度（ショーツの外気温を想定）に設定する。
２．Ｔ−ＢＯＸ（Temperature Detecting Box）の温度を３２度（皮膚温を想定）になる
よう、ＢＴ−ＢＯＸ（２）で設定する。
３．２×２ｃｍにカットしたおりものシートの表面シート（肌に接する側）に０．５ｍｌの水分を吸収させ、３０秒後ＢＴ−ＢＯＸ（１）上に、表面シートが上になるようにおく。
４．表面シート上にＴ−ＢＯＸを置き、ｑ−ｍａｘ値を測定する。ｑ−ｍａｘ値が大きいほど、接触時に冷たく感じる。
上記実験例(１)〜(４)の結果を、表２に示す。
【００５２】
【表２】
【００５３】
実施例１のおりものシートは、水分の逆戻りが極めて少なく、接触冷感が低いだけでなく、透湿性が高く、通気性にも優れていることが示された。これに対し、比較例２（吸収体は、ニードルパンチ法によって製造される）は、レーヨン（吸収性繊維）、目付量が多いにもかかわらず、水分の逆戻り量が多く、接触冷感も実施例１に比べ劣っていることがわかった。また、比較例１はバックシートにフィルムを用いているために通気性が実施例１に劣り、また逆戻りもある。さらに比較例３でも、通気性の点では実施例１よりも優れているが、水分の逆戻りがあった。
【００５４】
実験例２（モニター試験）
実施例１、比較例１〜３の４サンプルを、総吸収量が１．３ｇになるような面積（実施例１：２４ｃｍ２，比較例１：１２．７２ｃｍ２，比較例２：８．２４ｃｍ２，比較例３：６．９５ｃｍ２）に切り、切ったサンプルに０．５ｍｌの蒸留水を吸収させた。各サンプルに蒸留水を吸収させて３０秒後、被検者１２人（女性）に手で触ってもらい、濡れていない順に１点、２点、３点、４点とし、総得点を計算した。総得点の値が小さい方が、濡れていない（べたつきがない）ことを示す。結果を、下記表３に示す。
【００５５】
【表３】
【００５６】
表３より、モニター試験においても、実施例１のおりものシート物品が最も濡れ（べた
つき）が少ないことが示された。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、水分の逆戻りのない多層吸収性衛生物品に関する。
【背景技術】
【０００２】
おりものシートや汗とりパッド等の体液吸収用に使用されるシートは、主に、表面シート、吸収体及びバックシートを含む積層構造を有する。このようなシートにおいて、吸収体には、一般に不織布が使用される（例えば、特許文献１）。不織布の種類は、ニードルパンチ法、スパンレース法、サーマルボンド法、メルトボンド法、エアレイド法等の製造方法によって分類されている。これらの不織布は、通気性に優れ、肌触りがよいことから、おむつ、生理用ナプキン等の衛生物品の分野において汎用されている。
【０００３】
しかしながら、従来の不織布では、特に、おりものシート等の体液吸収の目的で用いられる薄型シートに適用される場合、不織布を構成する繊維間の空隙が多いことから、充分な水分保持力が得られなかった。すなわち、繊維中だけではなく、繊維間の空隙にも吸収された体液等の水分が保持されるため、使用に際して圧がかかった場合、圧によって繊維間の空隙に存在する水分が逆戻りし、べたつき、不快感等の原因となることが問題となっていた。
【特許文献１】特開２００５−３１２９９０
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明は、水分の逆戻りがなく、通気性に優れ、べたつきがないために肌触りが良好な多層吸収性衛生物品を提供することを、主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本発明者らは、低融点ポリマーを含む繊維を含有し、スパンレース法によって製造された不織布を吸収体として用いることにより、水分の逆戻りのない多層吸収性衛生物品を提供できることを見出した。また、このような吸収体を用いることによって、バックシートに不織布を使用することが可能となり、さらに通気性に優れ、べたつきが無く、肌触りの良好な多層吸収性衛生物品を提供できることを見出した。
【０００６】
本発明は、以下の多層吸収性衛生物品を提供するものである。
項１．低融点ポリマーを含む繊維を含有し、スパンレース法によって製造されることを特徴とする吸収体を含む、多層吸収性衛生物品。
項２．低融点ポリマーの融点が１６０℃以下である、項１に記載の多層吸収性衛生物品。項３．低融点ポリマーが、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくともいずれか１種である、項１又は２に記載の多層吸収性衛生物品。
項４．吸収体が芯鞘構造を有する繊維を含み、該繊維の鞘部分が低融点ポリマーで構成されている、項１〜３のいずれかに記載の多層吸収性衛生物品。
項５．さらに、不織布からなるバックシートを備えた、項１〜４のいずれかに記載の多層吸収性衛生物品。
項６．前記不織布からなるバックシートが、スパンボンド法によって製造された不織布とメルトブロー法によって製造された不織布の積層物である、項５に記載の多層吸収性衛生物品。
項７．前記不織布からなるバックシートがＳＭＭＳ（スパンボンド／メルトブロー／メルトブロー／スパンボンド）によって製造されたバックシートである、項６に記載の多層吸
収性衛生物品。
項８．おりものシート、汗とりパッド又は尿漏れパッドである、項１〜７のいずれかに記載の多層吸収性衛生物品。
【発明の効果】
【０００７】
本発明の多層吸収性衛生物品は、スパンレース法によって製造された不織布を吸収体に用いる。スパンレース法によって製造された不織布は、繊維が平面方向に寝た状態で存在するため、吸収された体液等の水分が速やかに拡散される。また、吸収体における繊維間の空隙が少ないため、吸収体に保持される水分のほとんどが繊維中に吸収される。よって、本発明の多層吸収性衛生物品によれば、本衛生物品着用時に圧がかかった場合にも、吸収体の繊維中に水分が保持されるため、水分の逆戻りがなく、使用時にべたつき等の不快感を生じることがない。
【０００８】
また、上記スパンレース法によって製造された不織布に低融点ポリマーを含有させることによって、使用時の体の動き等による繊維の毛羽立ちを抑制することができる。これにより、吸収体の繊維間の空隙が少ない状態を維持することでき、持続的に逆戻りを防止できる。
【０００９】
さらに、本発明においては、吸収体の繊維中に水分が保持されることから、バックシートに不織布を使用することができる。よって、さらに優れた通気性を有し、べたつきがより一層改善された肌触りが良好な、多層吸収性衛生物品を提供することができる。
【００１０】
本発明においては、スパンレース法によって製造された低融点ポリマーを含む繊維を含有する不織布を使用することから、吸収体の厚みを小さくすることができ、非常に薄く、使用感に優れた多層吸収性衛生物品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
本発明の多層吸収性衛生物品は、表面シートとバックシートが、間に吸収体を挟んで積層されてなる、多層構造を有する。
【００１２】
（１）吸収体
本発明の多層吸収性衛生物品を構成する吸収体は、低融点ポリマーを含む繊維を含有し、スパンレース法によって製造されることを特徴とするものである。
【００１３】
低融点ポリマーを含む繊維
本発明において低融点ポリマーを含む繊維とは、融点が約１６０℃以下、好ましくは約１４０℃以下、より好ましくは約１３０℃以下、さらに好ましくは約１２０℃以下のポリマーを含む繊維を指す。本発明において使用される低融点ポリマーは、このような融点を有するポリマーであれば特に限定されず、例えば、変性ポリエチレンテレフタレート（変性ＰＥＴ）、共重合ポリエチレンテレフタレート（共重合ＰＥＴ）等、共重合ナイロン等、ポリエチレン（ＰＥ）、ポリプロピレン（ＰＰ）等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられ、好ましくは変性ＰＥＴ、ＰＥ、ＰＰ等である。本発明においては、これらのポリマーのうち１種単独からなる繊維を用いてもよく、２種以上のポリマーを組み合わせてなる低融点ポリマーを含む繊維として使用することもできる。
【００１４】
また、低融点ポリマーを含む繊維として、鞘部分が低融点ポリマーで構成されている芯鞘構造を有する繊維を用いた吸収体を、本発明の多層吸収性衛生物品に使用することができる。このような繊維としては、従来公知のものを用いることができ、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート（芯部分）／ポリエチレン（鞘部分）、ポリエチレンテレフタレート（芯部分）／変性ポリエチレンテレフタレート（鞘部分）、ポリプ
ロピレン（芯部分）／ポリエチレン（鞘部分）等が挙げられ、好ましくはポリエチレンテレフタレート（芯部分）／ポリエチレン（鞘部分）、ポリエチレンテレフタレート（芯部分）／変性ポリエチレンテレフタレート（鞘部分）である。
【００１５】
低融点ポリマーを含む繊維の含有量は、当該繊維を用いる従来品と同様、用いる繊維の種類、所望の目的等に応じて適宜設定することができる。
【００１６】
本発明においては、低融点ポリマーを、吸収体の総重量に対して、１０〜８０重量％程度、好ましくは２０〜５０重量％程度、より好ましくは３０〜４０重量％程度含有させることが望ましい。
【００１７】
また例えば、低融点ポリマーを含む繊維の種類によっては吸収体の総重量に対して２０重量％未満の範囲、例えば５〜９重量％程度に設定することもできる。
【００１８】
吸収体の構成
本発明の多層吸収性衛生物品を構成する吸収体は、上記の低融点ポリマーを含む繊維と、従来公知の吸収性を有する素材を組み合わせ、交絡させて構成される。吸収性を有する素材としては、好ましくは、吸収性繊維が挙げられ、低融点ポリマーよりも高い融点を有するものであれば特に限定されない。
【００１９】
吸水性繊維としては、綿、羊毛、麻などの天然繊維；或いはレーヨン繊維、アセテート繊維等の半合成繊維；及び各種繊維の混紡品や混繊品が挙げられる。吸収体の水分保持力を高めるためには、好ましくはレーヨン繊維、パルプ繊維等のセルロース系繊維等を含有させることが望ましい。
【００２０】
また、上記の低融点ポリマーを含む繊維及び吸収性繊維に、必要に応じて、吸収性ポリマー、吸収性パルプ等を組み合わせて吸収体を製造することもできる。これらの素材も、低融点ポリマーよりも高い融点を有しているものが望ましい。
【００２１】
吸水性ポリマーとしては、例えば、アクリル酸−ビニルアルコール系共重合体、アクリルアミド系ポリマー、バイオコポリマー等が挙げられる。
【００２２】
これらの合成繊維は、その断面構造等によって特に制限されず、異形断面繊維、多孔性繊維、多孔吸水繊維等で代表されるような各種構造を有するものであってもよい。
【００２３】
また、各繊維の配合割合は、本発明の効果を達成するものであれば特に限定されず、低融点ポリマーの配合割合に応じて適宜設定され得る。
【００２４】
さらに、低融点ポリマーを含む繊維又は吸収性繊維に、必要に応じて不織布活性炭、シリカゲル、消臭剤、香料等を、含浸、繊維に練り込む等の方法によって添加することもできる。また、吸収体に色素等を用いて印刷、塗布等を行っても良い。
【００２５】
本発明においては、上記の吸収性を有する素材及び低融点ポリマーを含む繊維によって構成された不織布を、吸収体として使用する。本発明において吸収体として用いられる不織布は、スパンレース法によって製造される。スパンレース法は、高速ジェット水流を利用し、繊維どうしを互いに交絡させることによって不織布を製造する方法である（例えば「不織布の製造と応用」中村義男編集 株式会社シーエムシー発行）。スパンレース法では、水流を利用して繊維を交絡させるために、通常、乾燥工程（一般に約１００〜１６０℃。低融点ポリマーを含有する場合は、約１２０〜１６０℃が好ましい）が必要とされる。
【００２６】
本発明においては、スパンレース法によって製造された不織布は、吸収体における繊維が平面方向に寝た状態で存在するため、吸収された体液等の水分は速やかに拡散される。また、吸収体における繊維間の空隙が少ないため、吸収体に保持される水分はほとんどが繊維中に吸収される。
【００２７】
さらに、低融点ポリマーと吸収性繊維を組み合わせて用い、スパンレース法によって不織布を製造することによって、上記乾燥工程において低融点ポリマーが融解し、繊維間の空隙が少ない状態を維持することができる。よって、本発明の多層吸収性衛生物品によれば、本衛生物品着用時に圧がかかった場合にも水分が吸収体の繊維中に保持され、使用時にべたつき等の不快感を生じない。また、使用時の動きなどでも毛羽がたつことなく、持続的に繊維間の空隙を小さく保つことができ、水分の逆戻りを防止できる。
【００２８】
さらに、本発明においては、水分が吸収体の繊維中に保持されることから、バックシートに不織布を使用することができる。よって、さらに優れた通気性を有し、べたつきがより一層改善された肌触りが良好な、多層吸収性衛生物品を提供することができる。
【００２９】
本発明において使用される吸収体の厚みとしては、特に限定されないが、通常、０．５〜２ｍｍ程度、好ましくは０．６〜１．５ｍｍ程度、より好ましくは０．７〜１．２ｍｍ程度である。
【００３０】
上述のように、スパンレース製法において水流で繊維を交絡させることによって繊維が圧縮され、線維間の空隙が減り、乾燥工程において低融点ポリマーが融解することによって繊維が圧縮された状態で固定される。従って、本発明においては、吸収体の厚みを小さくすることができる。
【００３１】
また、本発明において使用される吸収体の目付け（生地１ｍ２当たりの重さ）は、適度な吸収力と耐水性、使用感の良さを保つために、１０〜１００ｇ程度、好ましくは３０〜８０ｇ程度、より好ましくは４０〜６０ｇ程度であることが望ましい。
【００３２】
（２）バックシート
本発明の多層吸収性衛生物品において使用されるバックシートは、吸収された体液等の水分が裏抜けしないように液バリア性を有するシート状又はフィルム状のものであれば特に制限されないが、透湿性及び通気性を有するものであることが好ましい。このようなバックシートの素材としては、通常使用されるものが広く採用され、疎水性の素材であることが望ましい。疎水性の素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン等もしくはこれらの多層フィルムが例示される。
【００３３】
また、本発明の多層吸収性衛生物品のバックシートとして、不織布を用いることもできる。例えば、従来のおりものシート等においては、バックシートに不織布を用いると、体圧がかかることによって、吸収されたおりもの等の体液が裏抜けするという問題があった。これに対し、本発明の多層吸収性衛生物品は、上記（１）に記載されるような吸収体を用いることによって、吸収体の水分の保持力が高められている。従って、本発明においては、バックシートに不織布を使用しても、体液等の水分が裏抜けすることがない。また、バックシートに不織布を使用することにより、本発明の多層吸収性衛生物品の通気性がさらに向上する。
【００３４】
バックシートに用いられる不織布としては、上記の疎水性の素材で構成されているものを使用することができる。また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、不織布の製造方法は特に限定されないが、好ましくはスパンボンド法によって製造された不織布とメルトブロー法によって製造された不織布を２層以上、より好ましくは４層以上積層させたものを用いることが望ましい。このような不織布としては、例えば、ＳＭＭＳ（スパンボンド／メルトブロー／メルトブロー／スパンボンド）やＳＭ（スパンボンド／メルトブロー）、ＳＭＳ（スパンボンド／メルトブロー／スパンボンド）等があげられる。
【００３５】
本発明において使用されるバックシートの厚みとしては、特に限定されないが、通常、０．０５〜１ｍｍ程度、好ましくは０．１〜０．６ｍｍ程度、より好ましくは０．２〜０．４ｍｍ程度である。
【００３６】
また本発明において使用されるバックシートの目付けとしては、特に限定されないが、通常１０ｇ〜６０ｇ程度、好ましくは２０ｇ〜５０ｇ程度、より好ましくは２５ｇ〜４５ｇ程度である。
【００３７】
（３）表面シート
本発明において表面シートは、局部（陰唇部、膣口等）や腋下等の身体に直接接触し、おりものや汗等の体液を通過させて、下層の吸収体に浸透するように透過性を有しているものを指す。その限りにおいて、構成する素材の種類やシートの構造などを特に制限するものではない。このような表面シートを構成し得る素材としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン／ポリエステル複合繊維、ポリエチレン／ポリプロピレン複合繊維等の合成繊維；綿、羊毛、麻などの天然繊維；あるいはレーヨン繊維、アセテート繊維等の半合成繊維；及び各種繊維の混紡品や混繊品を挙げることができる。よりさらっとした表面を保つために、好ましくは合繊繊維である。シートの構造も特に制限されず、織物、編物、不織布（非収束状のフィラメント群や短繊維群から構成される不織布を含む。）、フェルトなどを挙げることができる。なかでも、弾性や柔軟性を備えることから、好ましくは不織布である。表面シートに用いられる不織布の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法に従って製造され得る。また、表面シートは、体液等の水分の透過性を高めるためにメッシュ状等の多孔構造を有していてもよく、肌への接触感を良くするためにエンボス加工等によって、表面に凹凸が形成されていてもよい。
【００３８】
本発明において使用される表面シートの厚みとしては、特に限定されないが、通常、０．０５〜１ｍｍ程度、好ましくは０．１〜０．６ｍｍ程度、より好ましくは０．２〜０．４ｍｍ程度である。
【００３９】
（４）多層吸収性衛生物品
本発明の多層吸収性衛生物品は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その製法は特に限定されず、従来公知の方法を使用して製造される。製造方法としては、例えば、バックシートと表面シートを、間に吸収体を挟んで積層し、これらの層を接着剤などで接着後外周部分を熱圧着し、所望の形状に沿ってシートを打ち抜き切断する方法が挙げられる。また、バックシート、吸収体及び表面シート間、バックシート下面等に、さらに他の成分からなる層を有していてもよく、例えば、バックシートの下面（すなわち、下着や衣類への接着面）に粘着層を有し、さらにこれに剥離紙、包装用シート等を有していてもよい。粘着層には、従来公知の接着剤を用いることができる。
【００４０】
この様な多層吸収性衛生物品は、おりものシート、汗とりパッド、尿漏れパッド等に適用され得る。
【００４１】
本発明の多層吸収性衛生物品は、本発明の効果を損なわないものであれば、形状は特に限定されないが、本発明の多層吸収性衛生物品が、おりものシート又は尿漏れパッドとして使用される場合は、例えば、小型の長方形又は略長方形を有するものが好ましい。長方形とは、全ての頂角が直角で、一辺が隣接する他辺よりも長く、且つ対向する辺の長さが等しい四角形をいう。略長方形とは、長方形の特徴である横長（あるいは縦長）の形状を有するものであり、例えば、楕円形、紡錘形、ひょうたん形、台形（縦長の台形）等の形状が挙げられる。
【００４２】
また、本発明の多層吸収性衛生物品が、汗とりパッドとして使用される場合は、例えば、円形、楕円形、ひょうたん型、それらを組み合わせたもの等が挙げられる。
【００４３】
本発明の多層吸収性衛生物品は、通常、おりものシート、汗とりパッド、尿漏れパッド等において適用される範囲のサイズで用いることができ、用途に応じて適宜設定され得る。
【００４４】
本発明の多層吸収性衛生物品全体の厚みとしては、本発明の効果を達成できる範囲であれば特に限定されないが、例えば、０．６〜３ｍｍ程度、好ましくは０．８〜２．７ｍｍ程度、より好ましくは１．１〜２ｍｍ程度である。
【実施例】
【００４５】
以下、実施例及び実験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び実験例に限定されない。
【００４６】
実施例及び比較例
下記表１に示す組成及び方法に従って吸収体及びバックシートを製造した。ＰＥＴ、ＰＰ、ＰＰ／ＰＥからなる表面シートとバックシートの間に吸収体を挟んで積層し、接着剤で接着後、外周部を熱圧着して打ち抜き、実施例１及び比較例１〜３のおりものシートを得た。
【００４７】
【表１】
【００４８】
実験例１
（１）透湿性
透湿性の測定は、ＪＩＳ Ｌ １０９９に従い、実施例１及び比較例１〜３のおりものシートにおいて、１ｃｍ２あたりの１時間に通過する水の量（ｇ）を求めた。値が大きい程、透湿性が高いことを表す。
【００４９】
（２）通気性
通気性の測定は、ＪＩＳ Ｌ １０９６に従い、実施例１及び比較例１〜３のおりものシートを通過する空気量（ｃｍ３／ｃｍ２）を求めた。値が大きい程、通気性が高いことを表す。
【００５０】
（３）水分の逆戻り
実施例１及び比較例１〜３のおりものシートにおける水分の逆戻りを、以下の方法に従って試験を行った。
１．表１に示される吸収体及びバックシートを備えたおりものシートを作製し、総吸収量が約１．３ｇになる面積にカットした。
２．上記１．でカットしたシートに、０．５ｍｌの水を吸収させて１分間放置した後、重量を測定した濾紙を各シートの上にのせ、さらに１．２ｋｇの錘を載せた。
３．１分後、濾紙の重量を測定し、濾紙に吸収された水分量（すなわち、逆戻り量）をパ
ーセンテージで算出した。値が大きい程、逆戻り量が多いことを表す。
【００５１】
（４）接触冷感
実施例１及び比較例１〜３のおりものシートの接触冷感について、サーモラボＩＩ型（KATO TECH CO.,LTD.）を用い、以下の方法に従って試験を行った。接触冷感とは、濡れた物に触れた時に冷たく感じる感覚を指す。
１．ＢＴ−ＢＯＸ（Bottom Temperature Box）（１）の温度を２５度（ショーツの外気温を想定）に設定する。
２．Ｔ−ＢＯＸ（Temperature Detecting Box）の温度を３２度（皮膚温を想定）になる
よう、ＢＴ−ＢＯＸ（２）で設定する。
３．２×２ｃｍにカットしたおりものシートの表面シート（肌に接する側）に０．５ｍｌの水分を吸収させ、３０秒後ＢＴ−ＢＯＸ（１）上に、表面シートが上になるようにおく。
４．表面シート上にＴ−ＢＯＸを置き、ｑ−ｍａｘ値を測定する。ｑ−ｍａｘ値が大きいほど、接触時に冷たく感じる。
上記実験例(１)〜(４)の結果を、表２に示す。
【００５２】
【表２】
【００５３】
実施例１のおりものシートは、水分の逆戻りが極めて少なく、接触冷感が低いだけでなく、透湿性が高く、通気性にも優れていることが示された。これに対し、比較例２（吸収体は、ニードルパンチ法によって製造される）は、レーヨン（吸収性繊維）、目付量が多いにもかかわらず、水分の逆戻り量が多く、接触冷感も実施例１に比べ劣っていることがわかった。また、比較例１はバックシートにフィルムを用いているために通気性が実施例１に劣り、また逆戻りもある。さらに比較例３でも、通気性の点では実施例１よりも優れているが、水分の逆戻りがあった。
【００５４】
実験例２（モニター試験）
実施例１、比較例１〜３の４サンプルを、総吸収量が１．３ｇになるような面積（実施例１：２４ｃｍ２，比較例１：１２．７２ｃｍ２，比較例２：８．２４ｃｍ２，比較例３：６．９５ｃｍ２）に切り、切ったサンプルに０．５ｍｌの蒸留水を吸収させた。各サンプルに蒸留水を吸収させて３０秒後、被検者１２人（女性）に手で触ってもらい、濡れていない順に１点、２点、３点、４点とし、総得点を計算した。総得点の値が小さい方が、濡れていない（べたつきがない）ことを示す。結果を、下記表３に示す。
【００５５】
【表３】
【００５６】
表３より、モニター試験においても、実施例１のおりものシート物品が最も濡れ（べた
つき）が少ないことが示された。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
低融点ポリマーを含む繊維を含有し、スパンレース法によって製造されることを特徴とする吸収体を含む、多層吸収性衛生物品。
【請求項２】
低融点ポリマーの融点が１６０℃以下である、請求項１に記載の多層吸収性衛生物品。
【請求項３】
低融点ポリマーが、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくともいずれか１種である、請求項１又は２に記載の多層吸収性衛生物品。
【請求項４】
吸収体が芯鞘構造を有する繊維を含み、該繊維の鞘部分が低融点ポリマーで構成されている、請求項１〜３のいずれかに記載の多層吸収性衛生物品。
【請求項５】
さらに、不織布からなるバックシートを備えた、請求項１〜４のいずれかに記載の多層吸収性衛生物品。
【請求項６】
前記不織布からなるバックシートが、スパンボンド法によって製造された不織布とメルトブロー法によって製造された不織布の積層物である、請求項５に記載の多層吸収性衛生物品。
【請求項７】
前記不織布からなるバックシートがＳＭＭＳ（スパンボンド／メルトブロー／メルトブロー／スパンボンド）によって製造されたバックシートである、請求項６に記載の多層吸収性衛生物品。
【請求項８】
おりものシート、汗とりパッド又は尿漏れパッドである、請求項１〜７のいずれかに記載の多層吸収性衛生物品。
【請求項１】
低融点ポリマーを含む繊維を含有し、スパンレース法によって製造されることを特徴とする吸収体を含む、多層吸収性衛生物品。
【請求項２】
低融点ポリマーの融点が１６０℃以下である、請求項１に記載の多層吸収性衛生物品。
【請求項３】
低融点ポリマーが、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくともいずれか１種である、請求項１又は２に記載の多層吸収性衛生物品。
【請求項４】
吸収体が芯鞘構造を有する繊維を含み、該繊維の鞘部分が低融点ポリマーで構成されている、請求項１〜３のいずれかに記載の多層吸収性衛生物品。
【請求項５】
さらに、不織布からなるバックシートを備えた、請求項１〜４のいずれかに記載の多層吸収性衛生物品。
【請求項６】
前記不織布からなるバックシートが、スパンボンド法によって製造された不織布とメルトブロー法によって製造された不織布の積層物である、請求項５に記載の多層吸収性衛生物品。
【請求項７】
前記不織布からなるバックシートがＳＭＭＳ（スパンボンド／メルトブロー／メルトブロー／スパンボンド）によって製造されたバックシートである、請求項６に記載の多層吸収性衛生物品。
【請求項８】
おりものシート、汗とりパッド又は尿漏れパッドである、請求項１〜７のいずれかに記載の多層吸収性衛生物品。
【公開番号】特開２００７−１８１６６２（Ｐ２００７−１８１６６２Ａ）
【公開日】平成１９年７月１９日（２００７．７．１９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−３２９８３５（Ｐ２００６−３２９８３５）
【出願日】平成１８年１２月６日（２００６．１２．６）
【出願人】（０００１８６５８８）小林製薬株式会社 (518)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年７月１９日（２００７．７．１９）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年１２月６日（２００６．１２．６）
【出願人】（０００１８６５８８）小林製薬株式会社 (518)
【Ｆターム（参考）】
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