説明

多層吸音プラスターシステム

吸音プラスターシステムは、基層混合物および仕上層混合物を特徴とする。基層混合物は、第1のバインダー、第1の増粘剤、および複数の第1の粒子を含み、第1の粒子は、第1の平均粒径を有する多孔質で軽量な非最密充填粒子である。仕上層混合物は、粉末状ラテックスバインダー、第2の増粘剤、および複数の第2の粒子を含み、第2の粒子は、第2の粒径を有する多孔質で軽量な粒子である。第1の平均粒径は前記第2の平均粒径より大きい。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
騒音を低減し、静かな室内空間を提供しようとする傾向により、吸音材の使用が促進され、吸音建築資材の市場が拡大している。しかしながら、吸音材はその少なくとも一方の表面が居住エリアから見えるものであることから、見映えの良い仕上げも要求される。
【0002】
従来のプラスターは、モデル表面と考えられる滑らかなモノリシック仕上げの外観を有している。それには、塗装、壁紙、新しい模造仕上げなどの様々な装飾仕上げを施すことができる。しかしながら、そのようなプラスターはまた音を反射し、騒音を増大させる。ある周波数領域の音はまた歪められることもあり、反射音は一層望ましくないものになる。
【0003】
従来の吸音パネルは、音の吸収には非常に適している。このパネルの表面は、音が入射する開口部を設けるよう加工されている。例えば、パネルには針で穴が開けられている、すなわち、パネル表面に細孔を穿つ針の列により穿刺されている。多孔質のパネル構造と組み合わせることにより、音は針穴から入射しパネルの細孔へと伝播する。音が針穴または細孔の壁で反射するとき、音の一部が吸収される。その結果、パネルからは音が殆どまたは全く出てこなくなる。しかしながら、このパネルの見映えは広く受け入れられるものではなく、消費者は目に見える穴または亀裂のない吸音パネルを求めている。
【0004】
見映えの良い仕上げと音の減衰を両立させる他の吸音システムが商業的に入手できる。しかしながら、このシステムは、特殊なファイバーグラスのマットを接着剤で基材に固定し、接合部を処理し、人手により仕上げ用プラスターを塗布する必要がある。したがって、これらのシステムはいくつかの欠点を有している。特殊なファイバーグラスのパネルを購入し、損傷させずに現場へ運び込まなければならない。パネル、接着剤、および少なくとも2種類の吸音プラスターを含む多数の特殊な材料が必要である。パネルの施工に、パネルの準備、パネルの接着、接合部の処理およびプラスターの塗布などの少なくとも4つの時間がかかる工程が必要である。
【0005】
したがって、高い吸音率と見映えの良い表面を共に提供するような、基材の仕上げシステムを設計することは、有利であると考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
当業者であれば、本発明の1つもしくはそれ以上の利点は明らかであろう。具体的には、本吸音プラスターシステムは、基層混合物および仕上層混合物を特徴とする。基層混合物は、第1のバインダー、第1の増粘剤、および複数の第1の粒子を含み、第1の粒子は、第1の平均粒径を有する多孔質で軽量な非最密充填粒子である。仕上層混合物は、ラテックスバインダー、第2の増粘剤、および複数の第2の粒子を含み、第2の粒子は、第2の粒径を有する多孔質で軽量な粒子である。第1の平均粒径は前記第2の平均粒径より大きい。
【0007】
このプラスターシステムは、従来技術より有利な点がいくつかある。ファイバーグラスパネルを購入し、輸送し、そして既存の基材の上に取り付ける必要がない。本システムを使用すれば、パネルは全く必要なくなる。もしパネルを使用するならば、ミネラルウールファイバーパネルなどの従来の安価な吸音パネルが適している。
【0008】
本システムを使用すれば、現場へ輸送しなければならない材料の数と量が削減される。建設エリアへ持ち込む必要があるのは、基層混合物と仕上層混合物という僅かに2つのパッケージである。必要な材料リストから、少なくとも接着剤とパネルを省略することができる。材料は、場合により、生産プラントにおいて水と予め混合しておくことができ、その場合は、現場での混合調製がさらに省略され、製品を混合するために現場へ水を運ぶ必要もなく、塗装者がパッケージから直接製品を取り出して使用することができる。
【0009】
また、本吸音プラスターシステムは、より少ない工程で施工することができる。取り付けるべきパネルも、仕上げるべき接合部もない。施工は、基層混合物を塗布し、その後、基層が硬化したところで、仕上層混合物を塗布することを含む。硬化した吸音プラスターシステムは、プラスター様の仕上がりになる。音は、音を透過する仕上層を通った後、基層に吸収される。音が部屋へ反射してくることは殆どないか全くない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、基材上のクッション層に塗布した基層混合物の写真である。
【図2】図2は、プラスターシステムの写真であり、クッション層上の基層混合物に塗布した仕上層混合物を示している。
【図3】図3は、図2のプラスターシステムの断面写真であり、各層の相対的厚さを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
プラスターシステムは、基層混合物と仕上層混合物を含む。吸音プラスターシステムを他の層と共に構築すれば、特定の用途に対する音響効果を最適化できると考えられる。
【0012】
基層混合物は基材に塗布する。基層は場合によりパネルに塗布されるが、基層の塗布は、基材が基礎パネルを含まない場合に有利である。適した基材の例としては、木材、金属、打設コンクリート、レンガ、木もしくはセルロース系粒子の複合板、セメント板、または表面を紙で仕上げた鉱物パネルなどが挙げられる。
【0013】
基層は吸音層である。基層は、その厚さ全体に広がる連結した細孔システムを含む。音は、一部が基層により吸収され、一部は反射する。細孔システムは、細孔に入射した音が十分に吸収されるまで細孔システム内を反射するのを助ける。これにより、部屋から発せられた音が反射してその部屋へ戻ることも、隣室へ抜けて伝わることも殆どなくなることが保証される。
【0014】
基質の厚さを厚くすると、音の吸収度が増加する。基層を厚くすると、この材料に入射した音波を消散させる複雑な通路を有効に増加させることができる。したがって、基層の厚さは、少なくとも部分的には、所望する音の吸収度により選択することができる。いくつかの実施形態では、基層の厚さは少なくとも0.5インチ(1.3cm)である。いくつかの好ましい実施形態では、基層の厚さは約1インチ(2.5cm)〜約2インチ(5cm)である。基層をより厚くするために、基層材料を多数回塗布することが必要な場合があることに留意すべきである。
【0015】
基層混合物の主要成分は、複数の第1の粒子である。第1の粒子は、多孔質で軽量な非最密充填粒子である。多孔質とは、多量の、典型的には8〜45%の内部空隙を有する材料と定義される。軽量とは、密度が0.3g/cm未満の材料を意味する。非最密充填粒子とは、少なくともいくつかの粒子の面と面の間に空間が残って粒子間細孔を形成している粒子である。好ましくは、相互連結細孔システムは音の管理のために創出される。第1の粒子の例としては、膨張パーライト、コーティング処理膨張パーライト、ガラスマイクロスフィア、樹脂マイクロスフィア、吹きガラスビーズ、ガス充填樹脂スフィア、ポリスチレン粒子、ガス充填無機スフィア、中空または多孔質無機ビーズ、ポリブタジエン粒子、ゴム粒子、エラストマー粒子、およびこれらの組み合わせが挙げられる。第1の粒子の少なくとも一部は、基層の耐火性を維持するために、無機粒子であることが好ましい。有機粒子を使用する場合は、適当な難燃性添加剤を組み合わせることが好ましい。
【0016】
第1の粒子は、比較的大きい。好ましくは、それらは少なくとも約1000ミクロンの第1の平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、第1の粒子の少なくとも85容積%は、約1000ミクロン〜約5000ミクロンの第1の平均粒径を有する。第1の粒子の量は、基層混合物の乾燥重量に対して約3%〜約80%の範囲であるが、水硬性成分を含有する場合には、それに依存する。
【0017】
基層混合物の他の成分は、第1のバインダーである。基層混合物では、典型的な接着性バインダーであればいずれも有用である。デンプンや、ポリビニルアルコールおよびホウ酸、ポリビニルアクリレートのホモ−およびコポリマー、ポリビニルアセテート、並びにポリウレタンエマルションラテックスなどの合成ポリマー系バインダーは、有用なバインダーの例である。調製済みの基層混合物が必要なら、液体エマルションを使用することができる。あるいは、ドライミックス配合物が必要なら、対応するエマルションのスプレードライ粉末を使用することができる。第1のバインダーは、乾燥基層混合物成分の全重量に対して約1〜約15%、または、調製済み含水配合物の全重量に対して約2〜20%の量で使用される。
【0018】
基層混合物は、必要に応じて、焼石膏などの水硬性成分を含む。アルファ焼石膏およびベータ焼石膏を含む多くの形態の焼石膏が有用である。天然および合成のいずれの石膏も使用することができる。他の適切な水硬性成分としては、ポルトランドセメント、ポルトランドフライアッシュセメントなどの変形種、およびメイソンリーセメントなどが挙げられる。いくつかの好ましい実施形態の基層混合物は、水硬性成分を含まない。好ましい水硬性成分は、ベータ型硫酸カルシウム半水和物である。含まれる場合、基層混合物の乾燥重量の約10〜約40%が水硬性成分である。必要に応じて、当業者によく知られた凝結促進剤を使用することができ、例えば、ポルトランドセメント配合物中の硫酸カルシウム半水和物や、硫酸カルシウム半水和物プラスター配合物中のミョウバンなどが挙げられる。
【0019】
水性基層混合物の粘度を十分に増大させ、硬化前に基材から流れ落ちたり滴り落ちたりしないように、塗布しやすくなるように、かつ、含水材料の重量をさらに減少させ、また乾燥後の材料の体積当たりの細孔をより多く発生させるためのAE剤として作用するように、基層混合物中に少なくとも1種の増粘剤を使用する。セルロース系の増粘剤は、好ましい増粘剤である。適切な増粘剤の例としては、BERMOCOLL(登録商標)製品(Akzo Nobel、Stenungsund、Sweden)、並びにMETHOCEL(登録商標)およびCELLOSIZE(登録商標)製品(Dow Wolff Cellulosics、USA/Germany)などの改質セルロースが挙げられる。これらは、必要に応じて、基層混合物の乾燥重量に対して、約2〜約8%の量で使用される。レオロジーをさらに改質して塗布を容易にするために、ベントナイトもしくはアタパルガイトなどの粘土、または超微細な炭酸カルシウムなどの無機増量剤を、必要に応じて、使用することができる。
【0020】
第1の増粘剤を単一の増粘剤とするか、増粘成分のパッケージとするかが考慮される。増粘と発泡はしばしば関係がある。多くの増粘剤は、攪拌時に空気を取り込む発泡剤でもある。基層材料のレオロジー特性と発泡量との間でバランスをとる必要がある。最適なバランスを与える単一増粘剤を見つけることが好ましいが、当業者であれば、粘度と発泡の特定の組み合わせが1種以上の増粘剤と発泡剤または消泡剤との組み合わせにより達成されることも知っていよう。
【0021】
基層混合物には、必要に応じて、吸音ファイバーが含まれる。そのような吸音用のファイバーはよく知られており、例えば、ミネラルウールファイバー、綿繊維、ファイバーグラス、セルロース系ファイバー、およびこれらの組み合わせが挙げられる。ファイバーは、基層混合物の乾燥重量に対して約1〜約70%の量で使用される。
【0022】
仕上層混合物は、硬化により滑らかなモノリシック仕上げの表面となる仕上層を形成する。それは、スプレーやこてなどの任意の知られた方法で基層に塗布される。仕上層混合物は、一般に、第2のバインダー、第2の増粘剤パッケージ、および第2の粒子を含む。
【0023】
仕上層の第2のバインダーは、好ましくは、デンプン、または、ポリビニルアルコールおよびホウ酸、ポリビニルアクリレートのホモ−およびコポリマー、ポリビニルアセテート、並びにポリウレタンエマルションラテックスなどの合成ポリマー系バインダーである。あるいは、ドライミックス配合物が必要なら、対応するエマルションのスプレードライ粉末を使用することができる。調製済みの基層混合物が必要なら、液体エマルションが使用される。粉末ラテックスは乾燥仕上層混合物の約1%〜約15重量%の量で使用される。仕上層の細孔は基層の細孔より小さいので、小さな細孔を形成する場合は、細孔を塞ぐようなバインダーの使用は適切ではない。
【0024】
第2の増粘剤もまた、仕上層混合物に含まれる。第1の増粘剤と同様に、セルロース系増粘剤が好ましく、必要に応じて、無機増量剤を使用することができる。第2の増粘剤は、乾燥仕上層混合物の約8〜約20重量%の量で使用される。第1の増粘剤について上で記載したように、第2の増粘剤を単一の増粘剤とするか、または増粘成分のパッケージとするかが考慮される。第2の増粘剤は、第1の増粘剤と同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
仕上層の1つの成分は複数の第2の粒子である。第2の粒子は、多孔質で軽量な粒子(これらの用語は上で定義した通り)であるが、第1の平均粒径より小さい第2の平均粒径を有する。いくつかの好ましい実施形態では、第2の平均粒径は約100ミクロン〜約500ミクロンである。より小さい粒径の粒子を使用すれば、音波を通過させ、基層に吸収させる全体的な多孔質構造を維持しながら、基層より滑らかな外観に仕上げることができる。水硬性成分の含有の有無にも依るが、第2の粒子の量は、基層混合物の乾燥重量に対して約3%〜約80%の範囲である。
【0026】
第1の粒子として使用を示唆したものと同タイプの粒子は、第2の粒子としても有用である。しかしながら、第1の平均粒径は第2の平均粒径より大きい。第2の粒子の量は、仕上層混合物の乾燥重量に対して約50%〜約80%の範囲である。
【0027】
基層混合物と同様、仕上層混合物は、必要に応じて、上記のような水硬性成分を含む。含む場合には、乾燥仕上層混合物重量の約10〜約40%が水硬性成分である。
【0028】
上記のように、基層混合物と仕上層混合物は、乾燥混合物として調製することができる。それらは現場での使用のためにそれぞれ個別にパッケージングされ、使用直前に現場で水が加えられる。乾燥基層混合物のパッケージと仕上層混合物のパッケージは、基材の吸音性を改善するためのキットとして一緒に販売することも考えられる。基層混合物と仕上層混合物の比は、好ましくは、約1:0.1〜約1:0.25である。
【0029】
加える水はできるだけ純度の高いものとすべきである。水硬性成分を含む場合、水性不純物が基層混合物または仕上層混合物のいずれかの水硬性成分と相互作用を起こし、望ましくない結果を生じさせるおそれがある。例えば、水中に塩が存在すると、任意成分の焼石膏に対して凝結遅延剤または凝結促進剤として作用し、プラスターの作業可能時間を変化させ、塗布を困難にする。一旦塗布されると、この材料は異なる速度で凝結し、ドライアウトまたは亀裂の発生を引き起こすことがある。いくつかの実施形態では、水は基層混合物に対し、約2:1〜約4:1の重量比で加えられる。他の実施形態では、水と仕上層混合物の比は重量比で約4:1〜約6:1である。
【0030】
他の選択可能なこととして、基層混合物および/または仕上層混合物をすぐに使用可能な形態に調製することがある。これは、水が蒸発しない限り使用可能である。配合物中に水硬性成分が存在する場合、米国特許第6,805,741B1号明細書および2008年4月22日出願の米国特許出願第12/107,382号明細書(参照することにより本明細書中に組み込まれる)にしたがって、その凝結機構を不活性化させることができる(参照することにより取り込むものとする)。この材料を使用する準備ができたなら、先行技術に記載された適当な活性化剤を使用することができる。
【0031】
調製済み配合物を調製する場合、微生物の繁殖を防止するため、保存料を添加することも有利である。殺菌剤を添加しないと、基層混合物または仕上層混合物中に存在する水または空気からの微生物は、水分と栄養となる有機粒子が存在する場所で繁殖することができる。そのような殺菌剤の使用は熟練した技術者であれば知っている。有用な殺菌剤の例としては、ピリチオン塩、ホウ酸、ジヨードトルスルホン、および他の知られた保存料が挙げられる。通常、殺菌剤は含水混合物に対して1%未満の量で使用される。
【0032】
吸音プラスターシステムは多くの方法で調製される。乾燥基層混合物を調製するには、バインダー、第1の増粘剤、および複数の第1の粒子などの上述した所要成分を全て、乾燥形態で入手する。各成分を秤量して適切な量を得た後、成分をドライブレンドして、均一な混合物とする。基層混合物は、すぐに使用するのでなければ、乾燥状態を保つためにパッケージングしてもよい。基層混合物とは別に、粉末バインダー、第2の増粘剤、および複数の第2の粒子を使用して、類似の方法で、乾燥仕上層混合物を調製する。
【0033】
基層混合物および仕上層混合物が乾燥混合物として供給される場合、各層を塗布する前に水を加える。最初に、第1の分量の水を基層混合物に加える。基材に接着するよう、十分な量の水を基層混合物に加える。第1の分量の水に使用する水の量は、基層混合物の塗布方法による。基層混合物を基材にスプレーする場合は、濃度の比較的低い混合物が有利であり、大量の水が必要となる。いくつかの実施形態では、第1の分量の水は、最終的な含水配合物の約30重量%〜約85重量%の量で使用される。
【0034】
基層混合物は任意の適切な手段により基材に塗布する。いくつかの実施形態では、基層混合物はスプレーまたはこてを使用して基材に塗布する。滑らかなモノリシック仕上げの表面が所望される場合、必要に応じて、基層の表面をこてで滑らかにする。基層を滑らかにして、ほぼ一定の厚さにすることは有益であるが、表面の僅かな不完全さは仕上層で覆われるため無視することができる。基層混合物を塗布した後、触ってみて乾燥が確認されるまで、または約12時間、乾燥または固化させて基層を形成する。正確な乾燥時間は、周囲の温度および湿度や、塗布した材料の厚さにより影響を受ける。
【0035】
基層に塗布するための仕上層混合物の調製も同様に進められる。仕上層混合物を調製または入手した後、第2の分量の水を加えて含水混合物とする。基層混合物と同様に、第2の分量としての水の量は塗布方法により変化する。いくつかの実施形態では、第2の分量の水は、最終の含水仕上層混合物に対して約30%〜約85%の範囲である。仕上層混合物が任意選択の水硬性成分を含む場合、乾燥仕上層混合物への水の添加により水和反応が開始されることに留意すべきである。水の添加と硬化前に行う仕上層塗布との時間的間隔は十分に確保すべきである。
【0036】
基層混合物と同様に、仕上層混合物はスプレーやこてを含む任意の適切な方法で塗布する。塗布後、仕上層混合物は、必要に応じて、滑らかでモノリシックな表面などの所望の表面に仕上げられる。フローティングおよびこて仕上げは、仕上層混合物を仕上げ方法として好ましい方法である。仕上層混合物の仕上げ処理の後、固化させる。仕上層混合物は乾燥によって少なくとも一部固化する。任意選択の水硬性成分が含まれる場合、水硬性成分の水和もまた仕上層混合物の固化に寄与する。最終仕上げ表面は、ジョイントコンパウンド壁の仕上施工で従来から使用されている研磨用具で研磨することにより、さらに滑らかにすることができる。
【0037】
基層または仕上層混合物のいずれかが、水を含有する調製済みの形態で提供される場合、製品は容器から直接使用される。使用前の輸送や貯蔵中にいくらかの沈殿が発生している可能性がある。このため、まず最初に製品を攪拌混合して均質な状態にする。不活性化された水硬性成分が含まれている場合は、攪拌とともに活性化剤を加える。その後、この材料を、水添加後の乾燥形態の混合物の場合と同様の方法で塗布する。
【0038】
硬い、例えば石膏ボードパネルなどの下面に下方から基層混合物を塗布する場合、基材と基層混合物との間の基材上にクッション層を塗ることが有利である。クッション層は、塗布時には柔軟な材料であり、場合により、基層混合物塗布後に硬化させて硬質層を形成するようにしてもよい。クッション層の他の特性は、基層混合物の基材に対する接着性をさらに高めることである。適切なクッション層の例としては、タイル用マスチック接着剤、セメントモルタル、RTVゴムなどの硬化型粘弾性材料およびシーラントなどの高濃度(好ましくは90,000〜210,000cps)の接着剤が挙げられる。クッション層の例としては、USG DUROCKTM High Performance Tile Mastic、USG DUROCKTM Latex Modified Fast−set High Performance Mortar、およびUSGブランドのAcoustical Sealantなどが挙げられる。クッション層は、1mm超の粒子を有する基層混合物に特に有用である。クッション層がなければ、大きな凝集物を有する基層混合物を、固い基材の下面に下方から塗布することは困難である。基層混合物は、クッション層の固化、硬化または凝結前に、クッション層に塗布される。
【実施例】
【0039】
実施例1
表1に示す成分を使用して、調製済み基層混合物配合物を調製した。V型ドライブレンダーで乾燥成分を5分間混合し、その後、予め混合しておいた液体成分に加えた。その後、攪拌翼を具備したHobartミキサー中、約60rpmで10〜15分間、全ての材料を混合した。
【0040】
【表1】

【0041】
1/4”ノッチ付こてを使用して、予めクッション層をコーティングしておいた10”×7”インチの石膏ウォールボードパネルに基層混合物を塗布した。パネルの下面に下方から塗布したが、基層混合物は付着を維持し、基材から垂れ下がったり、落ちたり、あるいは分離したりすることはなかった。
【0042】
実施例2
表IIに示す成分を使用して、乾燥基層混合物配合物を調製する。V型ドライミキサー中で乾燥成分を約5分間混合して、乾燥粉末混合物を生成する。
【0043】
【表2】

【0044】
上記のように調製した乾燥粉末混合物に、使用の直前、現場で3800gの水を加える。攪拌翼を具備した汎用のドリルミキサーで攪拌する。
【0045】
実施例3
表IIIに示す成分を使用して、乾燥基層混合物配合物を調製する。V型ドライミキサー中で乾燥成分を約5分間混合して、乾燥粉末混合物を生成する。
【0046】
【表3】

【0047】
上記のように調製した乾燥粉末混合物に、使用の直前、現場で4500gの水を加える。攪拌翼を具備した汎用のドリルミキサーで攪拌する。
【0048】
実施例4
表IVに示す成分を使用して、調製済み仕上層混合物配合物を調製した。V型ドライミキサー中で乾燥成分を約5分間混合して乾燥粉末混合物を生成し、その後、予め混合しておいた液体成分に加えた。その後、攪拌翼を具備したHobartミキサー中、約60rpmで10〜15分間、全ての材料を混合した。
【0049】
【表4】

【0050】
クッション層がコーティングされた10”×7”インチの石膏ウォールボードパネルに予め塗布し硬化させておいた基層に、1/4”ノッチ付こてを使用して、仕上層混合物を塗布した。仕上層混合物は滑らかであり、その塗布感は比較的良好であった。
【0051】
実施例5
表Vに示す成分を使用して、乾燥仕上層混合物調合物を調製した。V型ドライミキサー中で乾燥成分を約5分間混合して、乾燥粉末混合物を生成した。
【0052】
【表5】

【0053】
上記のように調製した乾燥粉末混合物に、使用の直前、現場で994.3gの水を加えた。攪拌翼を具備した汎用のドリルミキサーで攪拌した。外観を評価するために基材に塗布した際、仕上層混合物の塗布感は比較的良好であったが、やや流れやすいことがわかった。乾燥後のコーティングは滑らかであった。
【0054】
実施例6
表VIに示す成分を使用して、乾燥仕上層混合物調合物を調製する。V型ドライミキサー中で乾燥成分を約5分間混合して、乾燥粉末混合物を生成する。
【0055】
【表6】

【0056】
上記のように調製した乾燥粉末混合物に、使用の直前、現場で10kgの水を加える。攪拌翼を具備した汎用のドリルミキサーで攪拌した。
【0057】
実施例7
表VIIの成分を使用して、基層混合物配合物を調製した。V型ドライミキサー中で乾燥成分を約5分間混合し、乾燥粉末混合物を生成する。その後、乾燥成分に水を加えてペーストとした。
【0058】
【表7】

【0059】
調製した基層混合物の施工に先立って、厚さ約1/4〜約1/2インチ(6〜12mm)のUSG DUROCKTM High Performance Tile Masticからなるクッション層を、基材に塗布した。クッション層が柔らかいうちに、図1に示すように、基層混合物をクッション層表面に塗布した。
【0060】
実施例8
表VIIIの成分から仕上層混合物を調製した。
【0061】
【表8】

【0062】
実施例7の基層混合物が硬化した後、基層混合物の露出表面に仕上層混合物を塗布した。図2は、仕上層、基層混合物およびクッション層の上面図であり、図3に、仕上層混合物、基層混合物およびクッション層システムの断面を示す。
【0063】
多層吸音プラスターシステムのある特定の実施形態を示し説明してきたが、当業者であれば、より広い観点の以下の請求項で記載した本発明から逸脱しない範囲で、それに変更および修正がなされ得ることは認識できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に塗布される吸音プラスターシステムであって、
前記基材に接着され、第1のバインダー、第1の増粘剤、および複数の第1の粒子を含み、前記第1の粒子が、第1の平均粒径を有する多孔質で軽量な非最密充填粒子である基層混合物と、
前記基層混合物に接着され、粉末状ラテックスバインダー、第2の増粘剤、および複数の第2の粒子を含み、前記第2の粒子が、第2の粒径を有する多孔質で軽量な粒子であり、前記第1の平均粒径が前記第2の平均粒径より大きい仕上層混合物と
を含む吸音プラスターシステム。
【請求項2】
前記第1の平均粒径が、約1000ミクロン〜約5000ミクロンである請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2の平均粒径が、約100ミクロン〜約500ミクロンである請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の平均粒径が、約1000ミクロン〜約5000ミクロンである請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の粒子および前記第2の粒子の一方が、膨張パーライト、コーティング処理膨張パーライト、ガラスマイクロスフィア、樹脂マイクロスフィア、吹きガラスビーズ、ガス充填樹脂スフィア、ポリスチレン粒子、中空または多孔質セラミックビーズ、ポリブタビエン粒子、ゴム粒子、およびこれらの組み合わせからなる群の1種を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記基層が、さらに吸音ファイバーを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記仕上層混合物が、さらに水硬性成分を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記仕上層混合物が、さらに水および凝結遅延剤を含む請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記基材に接着し、かつ前記基層が接着されるクッション層をさらに含む請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
基材に基層混合物を塗布する工程であって、前記基層混合物がバインダー、増粘剤、水、および複数の第1の粒子を含み、前記第1の粒子が、第1の平均粒径を有する多孔質で軽量な非最密充填粒子である工程;
前記基層混合物を固化させて基層を形成する工程;
前記基層に仕上層混合物を塗布する工程であって、前記仕上層混合物が粉末状ラテックスバインダー、増粘剤、水および複数の第2の粒子を含み、前記第2の粒子が、第2の粒径を有する多孔質で軽量な粒子であり、前記第1の平均粒径が前記第2の平均粒径より大きい工程;および
前記仕上層混合物を固化させて仕上層を形成する工程
を含む吸音プラスターシステムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−509787(P2012−509787A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537615(P2011−537615)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/065138
【国際公開番号】WO2010/059817
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(595026667)ユーエスジー インテリアーズ,インコーポレーテツド (20)
【Fターム(参考)】