多層回路基板およびその製造方法
【課題】低誘電特性,低誘電損失に優れ、かつ、充分な機械的強度を備えた多層回路基板を提供する。
【解決手段】絶縁体層3と、上記絶縁体層3を保持する合金箔2と、複数の回路配線4とを備え、上記絶縁体層3と合金箔2とを貫通する電気導通路5を用いて回路配線4の各層が所定の位置で電気接続されている多層回路基板であって、上記絶縁体層3が多孔質の耐熱性材料で構成されている。
【解決手段】絶縁体層3と、上記絶縁体層3を保持する合金箔2と、複数の回路配線4とを備え、上記絶縁体層3と合金箔2とを貫通する電気導通路5を用いて回路配線4の各層が所定の位置で電気接続されている多層回路基板であって、上記絶縁体層3が多孔質の耐熱性材料で構成されている。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多層回路基板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年の通信機器を含む様々な電子機器の小型化,高性能化に伴い、高密度配線で、かつ、電気信号の高速処理に対応する高周波特性に優れた回路基板が求められている。一方、多孔質膜は、多くの空孔を含有しており、これによって、従来の樹脂よりも低誘電特性,低誘電損失に優れている。そこで、これを絶縁層に採用することで、高周波用途の微細回路のインピーダンス制御対応が容易になったり、回路設計に自由度が得られたりするという利点がある。
【0003】また、高密度実装の必要性から、パッケージされていない半導体(ベアチップ)が、回路基板に直接実装されることも求められている。このベアチップ実装において、端子の位置合わせの観点から、回路基板の寸法精度の確保はますます重要になっている。さらに、実装後の信頼性を得るため、ベアチップのシリコン材料と回路基板の熱膨張係数の差から発生する実装工程での熱ストレスを抑止することも試みられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、空孔率30%以上の多孔質膜は、低誘電特性に優れているものの、単体では機械的強度が不足しているため、回路配線層を支持し、寸法精度を得ることが難しい。また、多孔質膜の内部にファイバー等を充填したり、ガラス繊維等のクロスを埋設して補強したりしても、機械的強度は充分ではなく、かえって、利点だった低誘電性等の電気特性が損なわれる。一方、低誘電特性を発揮するため、これらの充填量を減らしたり、クロスの目付空孔率を大きくしたりすると、支持効果が不足する。
【0005】本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低誘電特性,低誘電損失に優れ、かつ、充分な機械的強度を備えた多層回路基板およびその製造方法の提供をその目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明は、絶縁体層と、上記絶縁体層を保持する支持体層と、複数の回路配線層とを備え、上記絶縁体層と支持体層とを貫通する電気導通路を用いて回路配線層の各層が所定の位置で電気接続されている多層回路基板であって、上記絶縁体層が多孔質の耐熱性材料で構成されている多層回路基板を第1の要旨とし、多孔質の耐熱性材料で構成される絶縁体層を介して上記絶縁体層を保持する支持体層の両面に導体層を積層して第1の積層板を作製する工程と、上記第1の積層板の絶縁体層と支持体層とを貫通する電気導通路を形成する工程と、上記第1の積層板の両面の導体層に回路配線を形成して両面回路基板を作製する工程と、上記両面回路基板の両面の回路配線層に、多孔質の耐熱性材料で構成される絶縁体層を介して、少なくとも導体層を積層して第2の積層板を作製する工程と、上記第2の積層板に表面の導体層から裏面の導体層まで貫通する導電路を形成する工程と、上記第2の積層板の両面の導体層に回路配線を形成する工程とを備えた多層回路基板の製造方法を第2の要旨とし、多孔質の耐熱性材料で構成される絶縁体層を介して上記絶縁体層を保持する支持体層の両面に導体層を積層して第1の積層板を作製する工程と、上記第1の積層板の絶縁体層と支持体層とを貫通する電気導通路を形成する工程と、上記第1の積層板の両面の導体層に回路配線を形成して両面回路基板を作製する工程と、上記両面回路基板を2枚以上準備する工程と、上記2枚以上の両面回路基板を位置合わせし、所定の位置に厚み方向の導電路が形成された接着性絶縁樹脂層を介して積層し、かつ、上記接着性絶縁樹脂層を挟む2つの両面回路基板の回路配線層を上記導電路により電気接続させる工程とを備えた多層回路基板の製造方法を第3の要旨とする。
【0007】すなわち、本発明の多層回路基板は、多孔質の耐熱性材料で構成されている絶縁体層と、この絶縁体層を保持する支持体層と、複数の回路配線層とを備えている。このように、本発明の多層回路基板は、機械的強度が不足している多孔質の絶縁体層を支持体層で支持しているため、低誘電特性,低誘電損失に優れているとともに、充分な機械的強度を備えている。
【0008】また、支持体層を構成する材料として、高弾性率材料を用いると、全体の積層構造の機械的強度を大きく向上させることができる。また、低熱膨張材料を用いると、シリコンとの熱膨張の差を小さくすることができるため、熱ストレス発生を抑止することができる。したがって、高弾性率で低熱膨張の支持体層を、多孔質の絶縁体層と積層することにより、寸法安定性を得ることができ、しかも、回路配線の位置寸法精度がよくなり、積層時の回路配線層間やチップ実装時の位置合わせが容易になる。特に、低熱膨張の金属箔を用いた場合は、剛直性にも優れ、曲げても割れにくい。また、ベアチップ実装時に搭載時の圧力にも耐え、熱膨張差による熱ストレス抑止効果も高く、信頼性も良好になる。
【0009】一方、本発明の多層回路基板の製造方法により、上記優れた効果を奏する多層回路基板を作製することができる。
【0010】つぎに、本発明を詳しく説明する。
【0011】本発明は、多孔質の耐熱性材料で構成されている絶縁体層と、支持体層と、回路配線層とを備えている。
【0012】上記絶縁体層を構成する絶縁樹脂としては、耐熱性,電気的特性等から、ポリイミド系,ポリアミド系,ポリエステル系,ポリエーテルイミド系,エポキシ系,シリコーン系もしくはその混合系の材料が用いられるが、耐熱性があり、樹脂の中では機械的強度も高いポリイミド系,ポリアミド系が好ましい。なお、これらの絶縁樹脂は、フッ素系樹脂を含有したもの(例えば、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体〔PFA〕、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕)でもよい。
【0013】ポリイミド系樹脂としては、酸残基とアミノ残基とがイミド結合した繰り返し単位を主体とするものであれば、他の共重合成分やブレンド成分を含むものでもよい。好ましくは、耐熱性,機械的強度の点から、主鎖に芳香族基を有するポリイミドを挙げることができる。特に、0.55〜3.00、好ましくは、0.60〜0.85の極限粘度(30℃での測定値)を有している高分子であることが望ましい。上記範囲の極限粘度を有するものは、多孔質の絶縁体層の形成を湿式凝固法で行う場合に、溶剤への溶解性が良好で、機械的強度が大きい。
【0014】また、ポリイミド系樹脂は、例えば、酸成分とジアミン成分とを用いて得られる。上記酸成分としては、テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。上記テトラカルボン酸二無水物として、具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。ブタンテトラカルボン酸は、無水物でなくても、ジアミンとの加熱反応によってイミド環形成が可能である。
【0015】一方、上記ジアミン成分の例としては、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノフェニルスルホン、2,2′−ビス−4−(4−アミノフェノキシ)フェニルプロパン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0016】ポリイミド系樹脂は、当該重合体またはその前駆体(ポリアミド酸)を用いることができるが、ポリアミド酸はポリイミドと比較して溶解性が高いために、分子構造上の制約が少ないという利点がある。なお、重合体としては、完全にイミド化しているものがよいが、イミド化率が70%以上のものでもよい。
【0017】ポリアミド系樹脂を構成する酸成分とアミン成分としては、例えば、下記のようなものを用いることができる。
【0018】上記酸成分であるジカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2−クロロテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0019】一方、上記アミン成分の例としては、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノフェニルスルホン、2,2′−ビス−4−(4−アミノフェノキシ)フェニルプロパン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0020】多孔質の絶縁樹脂層の形成は、湿式凝固法,乾式凝固法,延伸法等種々の製膜法が挙げられる。湿式凝固法では、一般的に、溶剤に樹脂と添加剤等を溶解した製膜原液(ドープ)を調製し、これを基材に塗布(キャスト)したものを凝固液に浸漬して溶剤置換させることで、樹脂を凝固(ゲル化)させ、そののち、凝固液等を乾燥除去する等して多孔質樹脂層を得る。もしくは、ドープに分散性化合物を含有させ、加熱によって揮散せしめるか、特定の溶剤によって抽出させるかして、多孔化することもできる。
【0021】上記ドープは、好ましくは、−20〜40℃の温度範囲で塗布される。また、凝固液としては、上記樹脂を溶解せずに、上記溶剤と相溶性を有するものであれば、限定されないが、水やメタノール,エタノール,イソプロピルアルコール等のアルコール類およびこれらの混合液が用いられ、特に水が好適に用いられる。浸漬時の凝固液の温度は、特に限定されないが、好ましくは、0〜50℃の温度である。
【0022】上記ドープのポリマー濃度は、5重量%から25重量%の範囲が好ましく、7重量%から20重量%がより好ましい。濃度が高すぎると、粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難になるし、濃度が低すぎると、多孔質の絶縁樹脂層が形成できないからである。
【0023】ポリイミド系樹脂もしくはその前駆体であるポリアミド酸樹脂を溶解する溶剤は、溶解するものであれば特に限定されないが、溶解性の観点から、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N′−ジメチルアセトアミド、N,N′−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0024】孔径形状や孔径コントロールのために硝酸リチウムのような無機物やポリビニルピロリドンのような有機物を添加することもできる。添加物の濃度は、溶液中に1重量%から10重量%まで添加するのが好ましい。硝酸リチウムを添加すると、溶剤と凝固液との置換速度が速く、スポンジ構造の中にフィンガーボイド構造(指状にボイドを有する構造)を形成することができる。ポリビニルピロリドンのような凝固スピードを遅くする添加剤を加えると、スポンジ構造が均一に広がった多孔質フィルムを得ることができる。
【0025】上記ドープは一定の厚みに塗布し、水等の凝固液中に浸漬して凝固させたり、水蒸気雰囲気下に放置して凝固させたりしたのち、水中に浸漬する等して、脱溶剤された多孔質層となる。多孔質層の形成後、凝固液から取り出したのち乾燥する。乾燥温度は特に限定されないが、200℃以下での乾燥が望ましい。
【0026】多孔質樹脂層にポリイミド系樹脂として前駆体(ポリアミド酸)を用いた場合には、最終的に200〜500℃で熱処理して、前駆体(ポリアミド酸)を加熱閉環させてポリイミドとする。
【0027】ポリアミド系樹脂の場合は、ポリアミド系樹脂を極性溶剤に溶解した物をガラス板のような無多孔の基材上に一定の厚みに塗布し、水中に浸漬して凝固させたり、水蒸気雰囲気下に放置して凝固させたのち、水中に浸漬する等して、脱溶剤された多孔質フィルムを得る。無多孔の基材としては、ガラス板やステンレス板等の無機物のほか、ポリエチレンのシートのような高分子フィルムも使用できる。
【0028】分散性化合物を用い、これを溶剤で抽出する場合には、ポリイミド系樹脂もしくはポリアミド系樹脂と完全に相溶しないものが好ましく、特定の溶剤により抽出できるものが好ましい。そのような化合物としては、同一もしくは相異なる単量体が2以上重合している比較的低重合度のオリゴマーが挙げられる。例えば、ポリアクレートオリゴマー,ポリエーテルオリゴマー,ポリエステルオリゴマー,ポリウレタンオリゴマー等が挙げられる。
【0029】抽出溶剤としては、通常用いられる有機溶剤でよく、ポリアミド酸樹脂の組成や分散性化合物の種類によって適宜選択すればよい。そのような有機溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系極性溶剤、メタノール等のアルコール系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0030】また、この抽出による方法では、特に、液化二酸化炭素、高温高圧状態もしくは超臨界状態にある二酸化炭素を用いることが好ましい。このような二酸化炭素を用いる場合には、例えば、耐圧容器中で、0〜150℃、さらには、20〜120℃で、3.5〜100MPa、さらには、6〜50MPaで抽出を行うことが好ましい。
【0031】多孔質樹脂層の厚みは、通常、0.1〜200μm程度、好ましくは、10〜50μmである。
【0032】多孔質樹脂層の孔径は、この樹脂層について走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて写真撮影を行い、その写真のコンピューターによる画像解析から求める。
【0033】多孔質樹脂層の空孔率は、この絶縁層の容積と重量とを測定し、この絶縁層の材料の密度を用い、下記の式(1)により求める。
【0034】
【式1】
【0035】表面や内部の細孔が小さすぎると、低誘電効果が小さく、大きすぎると強度的に問題がある。このため、裏表両面が何れも孔径0.05μm以上が好ましい。より好ましくは、0.1〜5μmである。また、スポンジ構造部分(内部)の細孔のサイズは0.05μmから10μmであればよいが、好ましくは、1μmから7μmである。フィンガーボイド構造では、ファインピッチのレーザービア加工を良好に行ううえで、直径0.05μmから10μmが好ましいが、長さは最も長い場合フィルム厚み程度となる。空孔率については、30%以上で98%未満に設定されているが、好ましくは、50%以上で95%未満である。空孔率30%未満では、低誘電効果が得られにくく、98%以上では、支持体層と積層しても、絶縁体層として機械的強度が不足し、回路配線層を支持できない。
【0036】上記絶縁体層に電気導通路形成用の貫通孔を形成する方法としては、その孔径によって適正な方法を用いればよいが、例えば、ドリル,パンチ,レーザー等が挙げられる。
【0037】また、上記絶縁体層に感光性を付与し、露光および現像することにより孔形成してもよい。この場合、ドープに感光剤を含有させて感光性を付与する。
【0038】感光剤としては、キャストして乾燥させた樹脂を露光したときに、露光部と未露光部の溶解性コントラストを得ることができるものであれば、いずれのものを用いてもよいが、例えば、ジヒドロピリジン誘導体,ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル誘導体,芳香族ジアジド化合物等が挙げられる。
【0039】このような感光剤は、ポリイミド系樹脂もしくはポリアミド系樹脂の1モル部に対して、通常、0.05〜0.5モル部の範囲で用いられる。また、必要に応じて、現像液に対する溶解補助剤として、イミダゾールを配合してもよく、そのような場合には、イミダゾールは、ポリイミド系樹脂もしくはポリアミド系樹脂の1モル部に対して、通常、0.05〜0.5モル部の範囲で用いられる。
【0040】キャストして乾燥させた樹脂に、孔パターンを露光したのち、必要に応じて、100〜220℃で加熱することでポジ型もしくはネガ型の潜像を形成し、現像液に浸漬したり、現像液をスプレーしたりすることにより、所定の孔を形成させる。上記の加熱温度が100℃以下の場合は、潜像形成が不充分で、現像液に対する溶解度のコントラストがとれない。220℃以上では、感光剤の劣化,分解により所望の多孔質の絶縁樹脂層を形成できない。
【0041】現像液には、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム等の有機アルカリ水溶液や、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等の無機アルカリ水溶液が挙げられる。そのアルカリ濃度は、通常、2〜5重量%が適当であり、必要に応じて、アルカリ水溶液には、メタノール,エタノール,N−プロパノール,イソプロピルアルコール等の低級脂肪族アルコールを加えてもよい。そのアルコールの添加量は、通常、50重量%以下である。
【0042】上記支持体層を構成する材料としては、低熱膨張のエンジニアリングプラスチック(ポリイミド系,ポリアミド系,ポリエステル系,ポリエーテルイミド系,エポキシ系,シリコーン系またはその混合系等)、高密度繊維クロス(ガラス等の無機繊維,アラミド等の樹脂繊維,炭素繊維)、セラミック材料、金属箔を用い、多孔質の絶縁層と積層させる。
【0043】特に、平面方向と厚み方向に均一な熱膨張を有し、高弾性率を有する金属箔を用いることが好ましい。金属箔としては、Fe,Ni,Cr,Cu,Al,Ti,Co,Ptもしくはこれらを含む合金箔があり、チップと基板との熱膨張率差を抑制するために、特に低熱膨張率(20〜250℃で20ppm/℃以下)を有するものを用いるのが好ましい。これら金属箔は、単独でもしくは積層して用いることができる。
【0044】Fe/Ni系合金箔の場合には、FeとNiとの成分比率により熱膨張率が異なり、本発明においては、Ni含有率(重量%)は31〜50重量%、好ましくは、31〜45重量%の範囲が好適に用いられる。この範囲以上もしくは以下であると、熱膨張率が大きく、チップと基板との熱膨張率差を抑制することができない。
【0045】支持体層の弾性率は引っ張り試験機(例えば、島津製作所社製オートグラフ)で測定され、1GPa以上のもの、好ましくは、10GPa以上のものが用いられる。1GPa以下の支持体層は、支持体層としての機能が発揮できない。
【0046】支持体層の厚みは、10〜500μmの範囲、好ましくは、20〜200μmの範囲に設定されている。この厚みより小さいと、寸法精度を確保することができない。また、回路基板とシリコンチップの熱膨張差を抑えることができない。この厚みより大きいと、例えば、300μm以下の微細孔を容易に形成することができず、高密度回路が形成しにくくなる。
【0047】金属箔等の導電性支持体層を用いる場合には、上記厚み方向の電気導通路と絶縁するため、上記電気導通路よりも大きな径の孔をあらかじめ形成する必要があり、手段としては、例えば、ドリル,パンチ,レーザーもしくは化学エッチング等が挙げられる。そして、孔を形成したのち、絶縁樹脂を孔の周面(すなわち、導電性支持体層の内周面)に塗布もしくは充填し、内周面の絶縁を図る。
【0048】上記回路配線層を形成する金属箔としては、Cu,Ag,Au,Ni,Coもしくはそれらの合金箔が用いられるが、上記絶縁層の貫通孔を形成する前もしくは形成した後に、加熱加圧されて両面に積層される。
【0049】回路パターンは、感光性レジスト,露光,現像を用いて形成され、化学エッチングやめっき等でサブトラクティブ,アディティブ,セミアディティブ法で形成される。必要に応じて、回路表面には、研磨,めっきや防錆処理が施される。
【0050】上記のようにして得られた多孔質の絶縁層,支持体層,回路配線層は、接着剤を用いて積層する。上記接着剤としては、ポリイミド系,ポリアミド系,ポリエーテルイミド系,エポキシ系,シリコーン系もしくはその混合系の液状あるいは接着性シートが好適に用いられる。また、低吸湿のポリエステル系の熱可塑性液晶ポリマーフィルムも好ましい。もしくは、多孔質の絶縁体層自体に熱可塑性材料を用いて接着機能を付与し、接着剤を用いずに積層してもよいし、支持体層もしくは回路配線層に樹脂溶液を塗布し、上記方法で多孔質化処理し、これを積層してもよい。積層には、熱板プレスや、気圧で加熱加圧するオートクレープ等が利用できる。熱分解温度以下の加熱加圧により、接着剤もしくは多孔質の絶縁体層の表面が溶融し、支持体層もしくは回路配線層と一体化される。
【0051】支持体層に、それ自体で電気伝導性を有する金属箔や炭素繊維クロスを用いる場合には、あらかじめ支持体層に形成された孔に絶縁樹脂を充填し、孔内周を絶縁する必要がある。絶縁しないと、積層したのちに貫通孔を電気導通させて回路配線を形成する場合に、金属箔等と短絡してしまう。
【0052】上記接着剤層の厚みは0.01〜0.5mmとするのがよい。この範囲より小さいと作業性が悪い。この範囲以上であると、積層したのちに形成される貫通孔を電気導通させる場合に、貫通孔内周に金属層を形成したり、貫通孔内部に導電ペースト等を充填したりすることが難しくなる。また、絶縁体層を構成する多孔質の耐熱性材料の低誘電効果が低下してしまう。
【0053】上記絶縁層の貫通孔を電気導通させるためには、貫通孔内周面に電解めっき,無電解めっき,スパッタや蒸着によって金属層を形成したり、金属粉末を含有する導電ペーストを印刷法を用いてスキージで貫通孔内部を充填したりする方法もしくはそれらの組み合わせが用いられる。
【0054】導電ペーストを構成する金属粉末には、Sn,Pb,Cu,Ag,Au,Ni,Pd,Zn,Bi,Sb,Co等の単独,合金,混合物が、必要な耐熱性に応じて使用される。また、貫通孔径に応じて、50μm径以下、好ましくは、10μm径以下のものが使用される。特にSnを含むはんだ材料(300℃以下で溶融する)は、積層時の加熱加圧工程で溶融し、導電ペーストを構成する他の金属粉末や回路配線層を形成する金属と合金層を形成し、信頼性の高い電気接続が得られる。これらの金属粉末をペースト状にするためには、必要に応じて、エポキシ系樹脂等のバインダーやフラックス,有機溶剤等が所定量混合される。
【0055】電気導通路の露出部をバンプ状の突起に盛り上げて形成することもできる。この場合には、接続時に加圧されたバンプは潰れて、チップもしくは基板端子の凹凸形状に追随し、信頼性のよい電気接続が可能になる。さらに、多孔質の絶縁体層の空孔を利用し、上記方法を用い、電気導通させてもよい。この場合には、貫通孔を積層後に形成する必要がない。また、導電ペーストを回路配線層上にドット状にパターン印刷して、回路基板を加熱圧着積層する際に絶縁体層を突き破って貫通させる方法をとることもできる。
【0056】多層回路を形成する方法として、上記のような支持体層と多孔質の絶縁体層と回路配線層を用いて構成された複数枚の両面回路基板を形成し、これらを位置合わせし、接着剤シート等の接着剤層を用い位置合わせして一括多層化する方法が用いられる。この場合に、上記両面回路基板の片面に、あらかじめ貫通孔を形成した接着シートを回路パターンに合わせて積層したり、接着シートを積層したのち所定位置にレーザー等で孔を形成したりする。そののち、上記貫通孔に、上記導電ペーストを印刷充填して導電路を形成し、別の両面回路基板を位置合わせして積層する方法等が用いられる。
【0057】もしくは、上記のような支持体層と多孔質の絶縁体層と回路配線層を用いて構成された両面回路基板を形成したのち、感光性を付与した多孔質の絶縁体層を積層し、露光,現像で所定の絶縁体層や回路パターンを形成し、絶縁体層に厚み方向の導電路を形成しながら、各回路配線層と絶縁体層とを順次積層するようにしてもよい。
【0058】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
【0059】図1は本発明の多層回路基板の一実施の形態を示している。図において、1はFe/Ni系合金箔2を金属芯材層とした多孔質の絶縁体層3の表裏両面に銅箔からなる回路配線(回路配線層)4が形成された両面回路基板である。この実施の形態では、2枚の両面回路基板1が用いられており、これにより、多層回路基板として4層回路基板が作製されている。5は上記各両面回路基板1に穿設された貫通孔1aに導電性ペースト5aを充填してなる電気導通路であり、表裏両面の回路配線4を電気的に接続している。6は上記各両面回路基板1同士を接着するポリイミド系接着剤層である。7は上記各両面回路基板1の回路配線4を電気的に接続する導電路である。図において、8は上記絶縁体層3の表裏両面に形成されたポリイミド系接着剤層である。
【0060】上記両面回路基板1を、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、所定位置(電気導通路5を設ける位置)に貫通孔2aを開けたFe/Ni系合金箔2と、多孔質の絶縁体層3とからなる積層板10(図2参照)を準備し、ついで、上記絶縁体層3の表裏両面からポリイミド系接着シート11を張り合わせ、図3に示すような積層板12を作製する。つぎに、図4に示すように、上記Fe/Ni系合金箔2の貫通孔2aに対応する上記積層板12の部分に、上記貫通孔2aより小さい貫通孔1aを開ける。つぎに、図5に示すように、この貫通孔1aに導電性ペースト5aを充填したのち、表裏両面から、銅箔からなる導体層4aを貼り合わせることにより、表裏両面の導体層4aを(貫通孔1aに導電性ペースト5aを充填してなる)電気導通路5で電気的に接続する(図6参照)。つぎに、図6に示す両面銅張積層板13の表裏両面の導体層4aに回路配線4を形成して両面回路基板1(図7参照)を作製する。
【0061】上記多層回路基板を、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、Fe/Ni系合金箔2を金属芯材層とした多孔質の絶縁体層3の表裏両面に回路配線4が形成された2枚の両面回路基板1(図7R>7参照)と、ポリイミド系接着剤からなる接着シート(図8参照)14とを準備する。ついで、図9に示すように、上記接着シート14を1枚の両面回路基板1の上面に、接着シート14の開口部14aを両面回路基板1の回路配線4の所定位置(図1の導電路7を設ける位置)に位置合わせして仮接着する。つぎに、上記接着シート14の開口部14aにスクリーン印刷により半田ペーストを入れ、加熱溶融させて両面回路基板1の回路配線4上に半田バンプ15を形成する(図10参照)。つぎに、半田バンプ15を設けた両面回路基板1と、回路配線4を形成しただけの両面回路基板1をそれぞれ位置合わせして重ねたのち(図11参照)、加熱加圧し一体化させる。この状態では、接着シート11は接着剤層8となり、接着シート14は接着剤層6となり、各半田バンプ15は導電路7となる(図1参照)。これにより、2枚の両面回路基板1が積層一体化された4層配線基板を得ることができる。
【0062】上記のように、この実施の形態では、多孔質の絶縁体層3と、この絶縁体層3を保持するFe/Ni系合金箔2とを備えているため、低誘電特性,低誘電損失に優れているとともに、充分な機械的強度を備えている。しかも、一回の加熱加圧により2枚の両面回路基板1の一体化が行えると同時に、4層間の電気的接続が行える。しかも、2層の回路配線4に対して、1層の割合でNi−Fe系合金箔2が配設されているため、銅箔で回路配線4を構成する場合にも、4層配線基板全体の熱膨張率を低くすることができ、極めて高い接続信頼性を得ることができる。さらに、各導電路7の接合部の位置は、電気導通路5の導電性ペースト5aの影響を受けず、任意の位置に配置できるため、設計の自由度が上がり、高密度配線が実現できる。
【0063】以下、実施例により、本発明の効果を示す。
【0064】
【実施例1】ブタンテトラカルボン酸と4,4′−ジアミノジフェニルエーテルをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中にほぼ等モル溶解して、約200℃以下の温度で25時間重合してポリイミド系の重合体(30℃での極限粘度0.86)の溶液を得た。この重合体溶液にさらにポリビニルピロリドンを加えて混合し、ポリイミド重合体16重量%,ポリビニルピロリドン7重量%,NMP71重量%,水6重量%からなるドープを得た。これを厚み30μmの厚みでガラス板の上に塗布し、40℃の水槽に浸漬した。つぎに、ガラス板の上から塗布体を剥離し、24時間水中保存して脱溶剤を行った。
【0065】得られた多孔質膜21(図12参照)は、厚み30μmで、表面層に緻密層がなく、厚み方向に連続孔が形成された構造になっていた。表面層の平均孔径は4μm、裏面層の平均孔径は2μm、空孔率は70%だった。比誘電率は1.6、誘電損失は0.5%であった。
【0066】3,3′,4,4′−テトラカルボキシジフタルエーテル酸二無水物、2,2−ビス−4(4−アミノキシ)フェニルプロパン、末端シリコーン変性ジアミンをモル比で1:0.85:0.15となるようにN−メチルピロリドン中で重合し、ポリアミド酸溶液(固形分20重量%)を得た。これを塗工、乾燥し、さらに300℃で処理し、厚み25μmの熱可塑性ポリイミドフィルム22(図12参照)を作製した。作製された熱可塑性ポリイミドフィルム22のガラス転移温度は210℃であった。
【0067】熱膨張率20ppm/℃,弾性率9.3MPa、厚み75μmのポリイミドフィルム20(宇部興産社製ユーピレックス−75S)からなる支持体層の表面をスパッタ加工で粗面化し、その両面に熱可塑性ポリイミドフィルム22,多孔質膜21,熱可塑性ポリイミドフィルム22,厚み18μmの銅箔23aを加熱加圧接着(5MPa、250℃、60分)し、両面銅張積層板24を形成した(図13参照)。
【0068】つぎに、所定位置に200μmφの貫通孔24aをパンチャーで形成した(図14参照)。この貫通孔24aの内周面に無電解めっきと電解めっきを用いて銅層を形成し、スルーホール導通路25を形成した(図15参照)。つぎに、両面の銅箔23aにエッチング法により回路配線23を形成して、両面回路基板26を得た(図16参照)。
【0069】上記両面回路基板26の両面に、2枚の多孔質膜27(上記多孔質膜21と同様に作製した物)、6枚の熱可塑性ポリイミドフィルム28(上記熱可塑性ポリイミドフィルム22と同様に作製した物)、2枚の厚み18μmの銅箔29aを加熱加圧接着(5MPa、250℃、60分)し(図17参照)、両面に銅箔29aを有する基材30を形成した(図18参照)。つぎに、所定位置に200μmφの貫通孔30aをパンチャーで形成した(図19参照)。この貫通孔30aの内周面に無電解めっきと電解めっきを用いて銅層を形成し、スルーホール導通路31を形成した(図20参照)。そののち、両面の銅箔29aにエッチング法により回路配線29を形成して、4層回路基板を得た(図21参照)。
【0070】
【実施例2】ビフェニルテトラカルボン酸二無水物−ジアミノジフェニルエーテル−パラフェニレンジアミン系のポリイミド前駆体のNMP10重量溶液をドープとして、厚み35μmの銅箔36a(図22参照)の黒色処理面にフィルムアプリケーターを用いて、ギャップ50μmで均一の厚みに塗布した。塗布後、100℃の乾燥機で15分間送風乾燥した。
【0071】乾燥後、常温まで温度が下がってから、乾燥させたポリイミド前駆体フィルムの上に同じドープをフィルムアプリケーターを用いて、ギャップ100μmで均一の厚みに塗布した。塗布後直ちに25℃の純水に浸漬し、ポリイミド前駆体を凝固させた。凝固後、90℃で1時間以上乾燥させた。
【0072】乾燥後、窒素雰囲気中にて400℃で3時間熱処理し、ポリイミド前駆体を加熱閉環させ、ポリイミド樹脂層37と銅箔36aとの積層板35を得た(図2222参照)。ポリイミド樹脂層37は、非多孔質層38(厚み10μm)と多孔質層39(厚み30μm)とからなり、多孔質層39の比誘電率は1.6、誘電損失は0.5%であった。
【0073】つぎに、上記積層板35を、銅箔36aが外側に露出するように、ガラスクロス強化されたビスマレイミド−トリアジン樹脂プリプレグ40(三菱ガス化学社製GHPL−830、厚み100μm,弾性率20GPa、平面方向の熱膨張係数16ppm/℃)を支持体層として加熱加圧して(4MPa、200℃、60分)接着し、両面銅張積層板41を形成した(図23参照)。図22において、40aはプリプレグ40の両面に設けた接着剤層である。
【0074】つぎに、所定位置に200μmφの貫通孔41aをパンチャーで形成した(図24参照)。この貫通孔41aの内周面に無電解めっきと電解めっきを用いて銅層を形成し、スルーホール導通路42を形成した(図25参照)。そののち、両面の銅箔36aにエッチング法により回路配線36を形成して、両面回路基板43を得た(図26参照)。
【0075】ポリイミド系接着シート44(新日鐡化学社製SPB50)を上記両面回路基板43の片側に加熱加圧接着(2MPa、175℃、30分)したのち(図2727参照)、所定位置に回路配線36まで達する200μmφの孔44aをYAGレーザーで開けた(図28参照)。つぎに、この開孔部44aに、Ni粉末が15重量%混合されたSn−Sbはんだペースト(日本ゲンマ社製)を印刷充填し、最高240℃、1分でリフローしてバンプ45を形成した(図29参照)。そののち、もう1枚の両面回路基板43を位置合わせして重ね(図30R>0参照)、加熱加圧(5MPa、180℃、60分)により一体化し、4層回路基板を得た(図31参照)。
【0076】
【実施例3】熱膨張係数3ppm/℃,弾性率70GPa、厚み100μmの炭素繊維クロス50(東邦レーヨン社製W3101)の支持体層に350μmφ、500μmピッチのスルーホール導通路53用の貫通孔50aをドリルであけた(図32参照)。つぎに、炭素繊維クロス50の両面に、厚み50μmの接着性樹脂フィルム51(クラレ社製液晶性芳香族ポリエステルFAグレード、ガラス転移温度205℃)を介して、実施例2で得た積層板35を加熱加圧して(1MPa、290℃、10分)接着し、上記貫通孔50aを接着性樹脂で充填して、両面銅張積層板52を形成した(図33参照)。
【0077】つぎに、所定位置に150μmφの貫通孔52aをYAGレーザーで形成した(図34参照)。この貫通孔52aの内周面に無電解めっきと電解めっきを用いて銅層を形成し、スルーホール導通路53を形成した(図35参照)。つぎに、両面の銅箔36aにエッチング法により回路配線36を形成して、両面回路基板54を得た(図36参照)。
【0078】つぎに、実施例2と同様に、ポリイミド系接着シート55(新日鐡化学社製SPB50)を上記両面回路基板54の片側に加熱加圧接着(2MPa、175℃、30分)したのち(図37参照)、所定位置に回路配線36まで達する150μmφの孔55aをYAGレーザーで開けた(図38参照)。つぎに、この開孔部55aに、Ni粉末が15重量%混合されたSn−Sbはんだペースト(日本ゲンマ社製)を印刷充填し、最高240℃、1分でリフローしてバンプ56を形成した(図39参照)。そののち、もう1枚の両面回路基板54を位置合わせして重ね(図40参照)、加熱加圧(5MPa、180℃、60分)により一体化し、4層回路基板を得た(図41参照)。
【0079】
【実施例4】イソフタル酸塩化物のヘキサン溶液とm−フェニレンジアミンの水溶液とを等モル反応させて芳香族ポリアミドを得た。この芳香族ポリアミド(沈殿物)を水洗,アルコール洗浄,水洗を繰り返し、60℃で12時間真空乾燥して乾燥ポリマーを得た。このポリマーを80℃でNMP中に溶解し、さらに硝酸リチウムを溶解して、硝酸リチウム5重量%,ポリマー10重量%を含むドープを得た。
【0080】厚み50μmのFe/Ni合金箔2の支持体層(Ni含有率:36重量%,熱膨張率1.5ppm/℃)に、250μmφ、350μmピッチの電気導通路5用の貫通孔2aを化学エッチングであけた(図2参照)。これを上記ドープに浸漬し、直ちに40℃の水槽に浸漬した。そののち、24時間水中保存して脱溶剤を行った。得られた絶縁体層3(図2参照)は、Fe/Ni合金箔2の両面に厚み50μmに形成され、かつ、貫通孔2aを充填していた。また、厚み方向に連続孔が形成されたフィンガーボイド構造になっていた。平均孔径は短径5μm、長径は25μm、空孔率は78%だった。比誘電率は1.4、誘電損失は0.4%であった。
【0081】つぎに、この積層板10(図2参照)の両面に、厚み50μmのポリイミド系接着シート11(新日鐡化学社製SPB50)を加熱加圧接着(2MPa、175℃、30分)したのち(図3参照)、上記貫通孔2aと同心状に150μmφの貫通孔1aをYAGレーザーで形成した(図4参照)。この貫通孔1aの内部に、金属版(開孔径200μmφ、厚み100μm)を用いて、Ni粉末が15重量%混合されたSn−Sb共晶はんだペースト(日本ゲンマ社製)を印刷充填した。さらに、開孔両端をプレスして(10MPa、30℃、2分)、ペーストを圧入後、過剰量の金属粉末をバフ研磨により取り除いた。
【0082】加圧下で230℃まで加温し、上記はんだ粉末を溶融させることにより電気導通路5を得た(図5の積層板12参照)。この積層板12の両面に、厚み12μmの銅箔4aを加熱加圧して(5MPa、220℃、15分)積層し、両面銅張積層板13を形成した(図6参照)。つぎに、両面の銅箔4aにエッチング法により回路配線4を形成して、両面回路基板1を得た(図7参照)。
【0083】厚み50μmのポリイミド系接着シート14(新日鐡化学社製SPB50)の所定位置に150μmφの貫通孔14aをYAGレーザーで形成した(図8参照)。つぎに、上記接着シート14を位置合わせして上記両面回路基板1の片面に加熱加圧接着(2MPa、175℃、30分)した(図9参照)。上記と同様の方法で、Sn−Sbはんだペースト(日本ゲンマ社製)を印刷充填し、バンプ15を形成した(図10参照)。そののち、もう1枚の両面回路基板1を位置合わせして積層(5MPa、240℃、30分)し(図11参照)、4層回路基板を得た(図1参照)。
【0084】
【実施例5】厚み50μmのFe/Ni合金箔2の支持体層(Ni含有率:36重量%,熱膨張率1.5ppm/℃)に、250μmφ、350μmピッチの電気導通路5用の貫通孔2aを化学エッチングであけた。これを実施例2と同じドープに浸漬し、直ちに25℃の水槽に浸漬してポリイミド前駆体を凝固させた。凝固後、90℃で1時間以上乾燥させた。
【0085】乾燥後、窒素雰囲気中にて400℃で3時間熱処理し、ポリイミド前駆体を加熱閉環させ、ポリイミド樹脂層60とFe/Ni合金箔2の積層板を得た。ポリイミド樹脂層60の多孔質層は、Fe/Ni合金箔2の両面にそれぞれ30μmに形成され、かつ、上記貫通孔2aを充填し、比誘電率は1.6、誘電損失は0.5%であった。この積層板を用い、ポリイミド系接着シートとして実施例1と同じもの(ポリイミド系接着シート11)を用いた以外は、実施例4と同様に両面回路基板61を作製した(図42参照)。
【0086】実施例2と同じドープに感光剤(4−o−ニトロフェニル−3,5−ジメトキシカルボニル−2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン、4−o−ニトロフェニル−3,5−ジアセチル−1,4−ジヒドロピリジンをそれぞれ2重量%ずつ)と、ウレタンアクリレートを3.8重量%添加して感光性樹脂溶液を得た。
【0087】この感光性樹脂溶液を上記両面回路基板61の両面にスピンコーターを用い、乾燥後の被膜の厚みが20μmとなるように塗布し、90℃で15分乾燥させ、塗膜層62にウレタンアクリレートのドメインが形成されるように塗膜層62を形成した(図43参照)。
【0088】つぎに、マスクを介して350〜420nmの紫外線を700mJ/cm2 になるように露光し、180℃で10分間、熱風循環式オーブン中で露光後加熱を行い、現像液に浸漬処理して、ネガ型画像パターン(回路配線4の表面層の所定位置に、回路配線4まで達する直径50μmの孔62a)を形成した(図44参照)。
【0089】これを500ccの耐圧容器に入れ、40℃の雰囲気中、25MPaに加圧したのち、圧力を保ったままガス量約3L/分の流量で二酸化炭素を注入し、排気してウレタンアクリレートを2時間抽出した。そののち、1.33Paの真空下に減圧した状態で最高温度330℃まで加熱して、厚み12μm、独立気泡を有する多孔質のポリイミド樹脂からなる絶縁体層を積層した。
【0090】つぎに、上記多孔質のポリイミド樹脂の孔62a内周と両表面を触媒活性化して、無電解めっきと電解めっきで上記孔62aを充填して導電路63を形成し、かつ、厚み10μmの銅層64aを形成した(図45R>5参照)。そののち、これを化学エッチング法で回路配線64を形成して、4層回路基板を得た(図46参照)。
【0091】
【比較例1】実施例1で、ポリイミドフィルム20の支持体層なしで、厚み18μmの銅箔23a,多孔質膜21,熱可塑性ポリイミドフィルム22,多孔質膜21,厚み18μmの銅箔23aを積層し、孔あけ、スルーホールめっきを施し、化学エッチング法で回路配線23を形成して、両面回路基板(図示せず)を作製した。
【0092】基板表面のうねりが大きく、外観上問題があったが、さらに上記両面回路基板の両面に、上記多孔質膜21と熱可塑性ポリイミドフィルム22とを介して厚み18μmの銅箔23aを接着し、両面に銅箔23aを形成した。所定位置に200μmφの貫通孔をパンチャーで形成しようとしたが、寸法ずれが生じており、所定の位置に内層となる上記両面回路基板の回路配線23がなく、4層回路の厚み方向の導通を得ることができなかった。
【0093】
【比較例2】実施例2で、ガラスクロス強化ビスマレイミド−トリアジン樹脂プリプレグ40の支持体層を用いず、加熱加圧して(4MPa、200℃、60分)接着し、ポリイミド樹脂層37と銅箔36aとの積層板35を、銅箔36aが外側に露出するように、加熱加圧して(4MPa、200℃、60分)接着し、両面銅張積層板(図示せず)を形成した。
【0094】つぎに、所定位置に200μmφの貫通孔41aをパンチャーで形成した。この貫通孔41aの内周面に無電解めっきと電解めっきを用いて銅層を形成し、スルーホール導通路42を形成した。そののち、両面の銅箔36aにエッチング法により回路配線36を形成して、両面回路基板(図示せず)を得た。
【0095】ポリイミド系接着シート44(新日鐡化学社製SPB50)を上記両面回路基板の片側に加熱加圧接着(2MPa、175℃、30分)したのち、所定位置に回路配線36まで達する200μmφの孔44aをYAGレーザーで開けた。つぎに、この開孔部44aに、Ni粉末が15重量%混合された共晶はんだペースト(日本ゲンマ社製)を印刷充填し、最高240℃、1分でリフローしてバンプ45を形成した。そののち、もう1枚の両面回路基板を位置合わせして重ね、加熱加圧(5MPa、180℃、60分)により一体化し、4層回路基板を得た(図示せず)。
【0096】
【比較例3】実施例2と同じドープをガラス板に塗布し、直ちに25℃の水槽に浸漬し、ポリイミド前駆体を凝固させた。凝固後、90℃で1時間以上乾燥させた。乾燥後、窒素雰囲気中にて400℃で3時間熱処理し、ポリイミド前駆体を加熱閉環させ、ガラス板から剥離して、厚み30μmのポリイミド多孔質膜を得た。
【0097】実施例1で作製した熱可塑性ポリイミドフィルム22を用い、熱可塑性ポリイミド,ポリイミド多孔質膜,熱可塑性ポリイミド,ポリイミド多孔質膜,熱可塑性ポリイミドを積層した。
【0098】つぎに、150μmφの貫通孔をYAGレーザーで形成した。これらの貫通孔の内部に、金属版(開孔径200μmφ、厚み100μm)を用いて、Ni粉末が15重量%混合されたSn−Sb共晶はんだペースト(日本ゲンマ社製)を印刷充填した。さらに、開孔両端をプレスして(10MPa、30℃、2分)、ペーストを圧入後、過剰量の金属粉末をバフ研磨により取り除いた。
【0099】加圧下で230℃まで加温し、上記はんだ粉末を溶融させることにより電気導通路を得た。そののち、この積層板の両面に、12μm厚みの銅箔を加熱加圧して(5MPa、220℃、15分)積層し、両面の銅箔にエッチング法により回路配線を形成したが、電気導通路の位置と回路位置がずれており、両面回路の導通を得ることができなかった。
【0100】上記のようにして作製した実施例1〜5品、比較例2品のサンプルについて、熱衝撃試験(−65〜150℃、各10分)を行い、基板の厚み方向の電気導通の有無を調べた。その結果を下記の表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】また、実施例1〜5品、比較例2品のサンプルに、はんだバンプの形成されたフリップチップ(8mm□、100i/oデイジーチェイン、120μmφSn/Pbはんだバンプ、300μmピッチ)を実装(アンダーフィルなし)されたサンプルについて、熱サイクル試験(−40〜125℃、各10分)を行い、基板の厚み方向の電気導通の有無を調べた。その結果を下記の表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】上記の表1および表2から明らかなように、実施例1〜5品は比較例2品よりも機械的強度に優れていることが判る。
【0105】なお、上記実施の形態や各実施例は,4層回路までの多層化例であるが、同様な方法を用いて積層し、4層以上の多層回路基板をも作製することができる。
【0106】
【発明の効果】以上のように、本発明の多層回路基板は、多孔質の耐熱性材料で構成されている絶縁体層と、この絶縁体層を保持する支持体層と、複数の回路配線層とを備えている。このように、本発明の多層回路基板は、機械的強度が不足している多孔質の絶縁体層を支持体層で支持しているため、低誘電特性,低誘電損失に優れているとともに、充分な機械的強度を備えている。
【0107】また、支持体層を構成する材料として、高弾性率材料を用いると、全体の積層構造の機械的強度を大きく向上させることができる。また、低熱膨張材料を用いると、シリコンとの熱膨張の差を小さくすることができるため、ストレス発生を抑止することができる。したがって、高弾性率で低熱膨張の支持体層を、多孔質の絶縁体層と積層することにより、寸法安定性を得ることができ、しかも、回路配線の位置寸法精度がよくなり、積層時の回路配線層間やチップ実装時の位置合わせが容易になる。特に、低熱膨張の金属箔を用いた場合は、剛直性にも優れ、曲げても割れにくい。また、ベアチップ実装時に搭載時の圧力にも耐え、熱膨張差によるストレス抑止効果も高く、信頼性も良好になる。
【0108】一方、本発明の多層回路基板の製造方法により、上記優れた効果を奏する多層回路基板を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層回路基板の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図3】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図4】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図5】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図6】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図7】上記多層回路基板の断面図である。
【図8】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図9】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図10】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図11】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図12】実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図13】上記実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図14】上記実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図15】上記実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図16】上記実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図17】上記実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図18】上記実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図19】上記実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図20】上記実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図21】上記実施例1の4層回路基板を示す断面図である。
【図22】実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図23】上記実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図24】上記実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図25】上記実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図26】上記実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図27】上記実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図28】上記実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図29】上記実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図30】上記実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図31】上記実施例2の4層回路基板を示す断面図である。
【図32】実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図33】上記実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図34】上記実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図35】上記実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図36】上記実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図37】上記実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図38】上記実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図39】上記実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図40】上記実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図41】上記実施例3の4層回路基板を示す断面図である。
【図42】実施例5の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図43】上記実施例5の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図44】上記実施例5の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図45】上記実施例5の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図46】上記実施例5の4層回路基板を示す断面図である。
【符号の説明】
2 合金箔
3 絶縁体層
4 回路配線
5 電気導通路
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多層回路基板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年の通信機器を含む様々な電子機器の小型化,高性能化に伴い、高密度配線で、かつ、電気信号の高速処理に対応する高周波特性に優れた回路基板が求められている。一方、多孔質膜は、多くの空孔を含有しており、これによって、従来の樹脂よりも低誘電特性,低誘電損失に優れている。そこで、これを絶縁層に採用することで、高周波用途の微細回路のインピーダンス制御対応が容易になったり、回路設計に自由度が得られたりするという利点がある。
【0003】また、高密度実装の必要性から、パッケージされていない半導体(ベアチップ)が、回路基板に直接実装されることも求められている。このベアチップ実装において、端子の位置合わせの観点から、回路基板の寸法精度の確保はますます重要になっている。さらに、実装後の信頼性を得るため、ベアチップのシリコン材料と回路基板の熱膨張係数の差から発生する実装工程での熱ストレスを抑止することも試みられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、空孔率30%以上の多孔質膜は、低誘電特性に優れているものの、単体では機械的強度が不足しているため、回路配線層を支持し、寸法精度を得ることが難しい。また、多孔質膜の内部にファイバー等を充填したり、ガラス繊維等のクロスを埋設して補強したりしても、機械的強度は充分ではなく、かえって、利点だった低誘電性等の電気特性が損なわれる。一方、低誘電特性を発揮するため、これらの充填量を減らしたり、クロスの目付空孔率を大きくしたりすると、支持効果が不足する。
【0005】本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低誘電特性,低誘電損失に優れ、かつ、充分な機械的強度を備えた多層回路基板およびその製造方法の提供をその目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明は、絶縁体層と、上記絶縁体層を保持する支持体層と、複数の回路配線層とを備え、上記絶縁体層と支持体層とを貫通する電気導通路を用いて回路配線層の各層が所定の位置で電気接続されている多層回路基板であって、上記絶縁体層が多孔質の耐熱性材料で構成されている多層回路基板を第1の要旨とし、多孔質の耐熱性材料で構成される絶縁体層を介して上記絶縁体層を保持する支持体層の両面に導体層を積層して第1の積層板を作製する工程と、上記第1の積層板の絶縁体層と支持体層とを貫通する電気導通路を形成する工程と、上記第1の積層板の両面の導体層に回路配線を形成して両面回路基板を作製する工程と、上記両面回路基板の両面の回路配線層に、多孔質の耐熱性材料で構成される絶縁体層を介して、少なくとも導体層を積層して第2の積層板を作製する工程と、上記第2の積層板に表面の導体層から裏面の導体層まで貫通する導電路を形成する工程と、上記第2の積層板の両面の導体層に回路配線を形成する工程とを備えた多層回路基板の製造方法を第2の要旨とし、多孔質の耐熱性材料で構成される絶縁体層を介して上記絶縁体層を保持する支持体層の両面に導体層を積層して第1の積層板を作製する工程と、上記第1の積層板の絶縁体層と支持体層とを貫通する電気導通路を形成する工程と、上記第1の積層板の両面の導体層に回路配線を形成して両面回路基板を作製する工程と、上記両面回路基板を2枚以上準備する工程と、上記2枚以上の両面回路基板を位置合わせし、所定の位置に厚み方向の導電路が形成された接着性絶縁樹脂層を介して積層し、かつ、上記接着性絶縁樹脂層を挟む2つの両面回路基板の回路配線層を上記導電路により電気接続させる工程とを備えた多層回路基板の製造方法を第3の要旨とする。
【0007】すなわち、本発明の多層回路基板は、多孔質の耐熱性材料で構成されている絶縁体層と、この絶縁体層を保持する支持体層と、複数の回路配線層とを備えている。このように、本発明の多層回路基板は、機械的強度が不足している多孔質の絶縁体層を支持体層で支持しているため、低誘電特性,低誘電損失に優れているとともに、充分な機械的強度を備えている。
【0008】また、支持体層を構成する材料として、高弾性率材料を用いると、全体の積層構造の機械的強度を大きく向上させることができる。また、低熱膨張材料を用いると、シリコンとの熱膨張の差を小さくすることができるため、熱ストレス発生を抑止することができる。したがって、高弾性率で低熱膨張の支持体層を、多孔質の絶縁体層と積層することにより、寸法安定性を得ることができ、しかも、回路配線の位置寸法精度がよくなり、積層時の回路配線層間やチップ実装時の位置合わせが容易になる。特に、低熱膨張の金属箔を用いた場合は、剛直性にも優れ、曲げても割れにくい。また、ベアチップ実装時に搭載時の圧力にも耐え、熱膨張差による熱ストレス抑止効果も高く、信頼性も良好になる。
【0009】一方、本発明の多層回路基板の製造方法により、上記優れた効果を奏する多層回路基板を作製することができる。
【0010】つぎに、本発明を詳しく説明する。
【0011】本発明は、多孔質の耐熱性材料で構成されている絶縁体層と、支持体層と、回路配線層とを備えている。
【0012】上記絶縁体層を構成する絶縁樹脂としては、耐熱性,電気的特性等から、ポリイミド系,ポリアミド系,ポリエステル系,ポリエーテルイミド系,エポキシ系,シリコーン系もしくはその混合系の材料が用いられるが、耐熱性があり、樹脂の中では機械的強度も高いポリイミド系,ポリアミド系が好ましい。なお、これらの絶縁樹脂は、フッ素系樹脂を含有したもの(例えば、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体〔PFA〕、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕)でもよい。
【0013】ポリイミド系樹脂としては、酸残基とアミノ残基とがイミド結合した繰り返し単位を主体とするものであれば、他の共重合成分やブレンド成分を含むものでもよい。好ましくは、耐熱性,機械的強度の点から、主鎖に芳香族基を有するポリイミドを挙げることができる。特に、0.55〜3.00、好ましくは、0.60〜0.85の極限粘度(30℃での測定値)を有している高分子であることが望ましい。上記範囲の極限粘度を有するものは、多孔質の絶縁体層の形成を湿式凝固法で行う場合に、溶剤への溶解性が良好で、機械的強度が大きい。
【0014】また、ポリイミド系樹脂は、例えば、酸成分とジアミン成分とを用いて得られる。上記酸成分としては、テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。上記テトラカルボン酸二無水物として、具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。ブタンテトラカルボン酸は、無水物でなくても、ジアミンとの加熱反応によってイミド環形成が可能である。
【0015】一方、上記ジアミン成分の例としては、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノフェニルスルホン、2,2′−ビス−4−(4−アミノフェノキシ)フェニルプロパン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0016】ポリイミド系樹脂は、当該重合体またはその前駆体(ポリアミド酸)を用いることができるが、ポリアミド酸はポリイミドと比較して溶解性が高いために、分子構造上の制約が少ないという利点がある。なお、重合体としては、完全にイミド化しているものがよいが、イミド化率が70%以上のものでもよい。
【0017】ポリアミド系樹脂を構成する酸成分とアミン成分としては、例えば、下記のようなものを用いることができる。
【0018】上記酸成分であるジカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2−クロロテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0019】一方、上記アミン成分の例としては、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノフェニルスルホン、2,2′−ビス−4−(4−アミノフェノキシ)フェニルプロパン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0020】多孔質の絶縁樹脂層の形成は、湿式凝固法,乾式凝固法,延伸法等種々の製膜法が挙げられる。湿式凝固法では、一般的に、溶剤に樹脂と添加剤等を溶解した製膜原液(ドープ)を調製し、これを基材に塗布(キャスト)したものを凝固液に浸漬して溶剤置換させることで、樹脂を凝固(ゲル化)させ、そののち、凝固液等を乾燥除去する等して多孔質樹脂層を得る。もしくは、ドープに分散性化合物を含有させ、加熱によって揮散せしめるか、特定の溶剤によって抽出させるかして、多孔化することもできる。
【0021】上記ドープは、好ましくは、−20〜40℃の温度範囲で塗布される。また、凝固液としては、上記樹脂を溶解せずに、上記溶剤と相溶性を有するものであれば、限定されないが、水やメタノール,エタノール,イソプロピルアルコール等のアルコール類およびこれらの混合液が用いられ、特に水が好適に用いられる。浸漬時の凝固液の温度は、特に限定されないが、好ましくは、0〜50℃の温度である。
【0022】上記ドープのポリマー濃度は、5重量%から25重量%の範囲が好ましく、7重量%から20重量%がより好ましい。濃度が高すぎると、粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難になるし、濃度が低すぎると、多孔質の絶縁樹脂層が形成できないからである。
【0023】ポリイミド系樹脂もしくはその前駆体であるポリアミド酸樹脂を溶解する溶剤は、溶解するものであれば特に限定されないが、溶解性の観点から、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N′−ジメチルアセトアミド、N,N′−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0024】孔径形状や孔径コントロールのために硝酸リチウムのような無機物やポリビニルピロリドンのような有機物を添加することもできる。添加物の濃度は、溶液中に1重量%から10重量%まで添加するのが好ましい。硝酸リチウムを添加すると、溶剤と凝固液との置換速度が速く、スポンジ構造の中にフィンガーボイド構造(指状にボイドを有する構造)を形成することができる。ポリビニルピロリドンのような凝固スピードを遅くする添加剤を加えると、スポンジ構造が均一に広がった多孔質フィルムを得ることができる。
【0025】上記ドープは一定の厚みに塗布し、水等の凝固液中に浸漬して凝固させたり、水蒸気雰囲気下に放置して凝固させたりしたのち、水中に浸漬する等して、脱溶剤された多孔質層となる。多孔質層の形成後、凝固液から取り出したのち乾燥する。乾燥温度は特に限定されないが、200℃以下での乾燥が望ましい。
【0026】多孔質樹脂層にポリイミド系樹脂として前駆体(ポリアミド酸)を用いた場合には、最終的に200〜500℃で熱処理して、前駆体(ポリアミド酸)を加熱閉環させてポリイミドとする。
【0027】ポリアミド系樹脂の場合は、ポリアミド系樹脂を極性溶剤に溶解した物をガラス板のような無多孔の基材上に一定の厚みに塗布し、水中に浸漬して凝固させたり、水蒸気雰囲気下に放置して凝固させたのち、水中に浸漬する等して、脱溶剤された多孔質フィルムを得る。無多孔の基材としては、ガラス板やステンレス板等の無機物のほか、ポリエチレンのシートのような高分子フィルムも使用できる。
【0028】分散性化合物を用い、これを溶剤で抽出する場合には、ポリイミド系樹脂もしくはポリアミド系樹脂と完全に相溶しないものが好ましく、特定の溶剤により抽出できるものが好ましい。そのような化合物としては、同一もしくは相異なる単量体が2以上重合している比較的低重合度のオリゴマーが挙げられる。例えば、ポリアクレートオリゴマー,ポリエーテルオリゴマー,ポリエステルオリゴマー,ポリウレタンオリゴマー等が挙げられる。
【0029】抽出溶剤としては、通常用いられる有機溶剤でよく、ポリアミド酸樹脂の組成や分散性化合物の種類によって適宜選択すればよい。そのような有機溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系極性溶剤、メタノール等のアルコール系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0030】また、この抽出による方法では、特に、液化二酸化炭素、高温高圧状態もしくは超臨界状態にある二酸化炭素を用いることが好ましい。このような二酸化炭素を用いる場合には、例えば、耐圧容器中で、0〜150℃、さらには、20〜120℃で、3.5〜100MPa、さらには、6〜50MPaで抽出を行うことが好ましい。
【0031】多孔質樹脂層の厚みは、通常、0.1〜200μm程度、好ましくは、10〜50μmである。
【0032】多孔質樹脂層の孔径は、この樹脂層について走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて写真撮影を行い、その写真のコンピューターによる画像解析から求める。
【0033】多孔質樹脂層の空孔率は、この絶縁層の容積と重量とを測定し、この絶縁層の材料の密度を用い、下記の式(1)により求める。
【0034】
【式1】
【0035】表面や内部の細孔が小さすぎると、低誘電効果が小さく、大きすぎると強度的に問題がある。このため、裏表両面が何れも孔径0.05μm以上が好ましい。より好ましくは、0.1〜5μmである。また、スポンジ構造部分(内部)の細孔のサイズは0.05μmから10μmであればよいが、好ましくは、1μmから7μmである。フィンガーボイド構造では、ファインピッチのレーザービア加工を良好に行ううえで、直径0.05μmから10μmが好ましいが、長さは最も長い場合フィルム厚み程度となる。空孔率については、30%以上で98%未満に設定されているが、好ましくは、50%以上で95%未満である。空孔率30%未満では、低誘電効果が得られにくく、98%以上では、支持体層と積層しても、絶縁体層として機械的強度が不足し、回路配線層を支持できない。
【0036】上記絶縁体層に電気導通路形成用の貫通孔を形成する方法としては、その孔径によって適正な方法を用いればよいが、例えば、ドリル,パンチ,レーザー等が挙げられる。
【0037】また、上記絶縁体層に感光性を付与し、露光および現像することにより孔形成してもよい。この場合、ドープに感光剤を含有させて感光性を付与する。
【0038】感光剤としては、キャストして乾燥させた樹脂を露光したときに、露光部と未露光部の溶解性コントラストを得ることができるものであれば、いずれのものを用いてもよいが、例えば、ジヒドロピリジン誘導体,ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル誘導体,芳香族ジアジド化合物等が挙げられる。
【0039】このような感光剤は、ポリイミド系樹脂もしくはポリアミド系樹脂の1モル部に対して、通常、0.05〜0.5モル部の範囲で用いられる。また、必要に応じて、現像液に対する溶解補助剤として、イミダゾールを配合してもよく、そのような場合には、イミダゾールは、ポリイミド系樹脂もしくはポリアミド系樹脂の1モル部に対して、通常、0.05〜0.5モル部の範囲で用いられる。
【0040】キャストして乾燥させた樹脂に、孔パターンを露光したのち、必要に応じて、100〜220℃で加熱することでポジ型もしくはネガ型の潜像を形成し、現像液に浸漬したり、現像液をスプレーしたりすることにより、所定の孔を形成させる。上記の加熱温度が100℃以下の場合は、潜像形成が不充分で、現像液に対する溶解度のコントラストがとれない。220℃以上では、感光剤の劣化,分解により所望の多孔質の絶縁樹脂層を形成できない。
【0041】現像液には、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム等の有機アルカリ水溶液や、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等の無機アルカリ水溶液が挙げられる。そのアルカリ濃度は、通常、2〜5重量%が適当であり、必要に応じて、アルカリ水溶液には、メタノール,エタノール,N−プロパノール,イソプロピルアルコール等の低級脂肪族アルコールを加えてもよい。そのアルコールの添加量は、通常、50重量%以下である。
【0042】上記支持体層を構成する材料としては、低熱膨張のエンジニアリングプラスチック(ポリイミド系,ポリアミド系,ポリエステル系,ポリエーテルイミド系,エポキシ系,シリコーン系またはその混合系等)、高密度繊維クロス(ガラス等の無機繊維,アラミド等の樹脂繊維,炭素繊維)、セラミック材料、金属箔を用い、多孔質の絶縁層と積層させる。
【0043】特に、平面方向と厚み方向に均一な熱膨張を有し、高弾性率を有する金属箔を用いることが好ましい。金属箔としては、Fe,Ni,Cr,Cu,Al,Ti,Co,Ptもしくはこれらを含む合金箔があり、チップと基板との熱膨張率差を抑制するために、特に低熱膨張率(20〜250℃で20ppm/℃以下)を有するものを用いるのが好ましい。これら金属箔は、単独でもしくは積層して用いることができる。
【0044】Fe/Ni系合金箔の場合には、FeとNiとの成分比率により熱膨張率が異なり、本発明においては、Ni含有率(重量%)は31〜50重量%、好ましくは、31〜45重量%の範囲が好適に用いられる。この範囲以上もしくは以下であると、熱膨張率が大きく、チップと基板との熱膨張率差を抑制することができない。
【0045】支持体層の弾性率は引っ張り試験機(例えば、島津製作所社製オートグラフ)で測定され、1GPa以上のもの、好ましくは、10GPa以上のものが用いられる。1GPa以下の支持体層は、支持体層としての機能が発揮できない。
【0046】支持体層の厚みは、10〜500μmの範囲、好ましくは、20〜200μmの範囲に設定されている。この厚みより小さいと、寸法精度を確保することができない。また、回路基板とシリコンチップの熱膨張差を抑えることができない。この厚みより大きいと、例えば、300μm以下の微細孔を容易に形成することができず、高密度回路が形成しにくくなる。
【0047】金属箔等の導電性支持体層を用いる場合には、上記厚み方向の電気導通路と絶縁するため、上記電気導通路よりも大きな径の孔をあらかじめ形成する必要があり、手段としては、例えば、ドリル,パンチ,レーザーもしくは化学エッチング等が挙げられる。そして、孔を形成したのち、絶縁樹脂を孔の周面(すなわち、導電性支持体層の内周面)に塗布もしくは充填し、内周面の絶縁を図る。
【0048】上記回路配線層を形成する金属箔としては、Cu,Ag,Au,Ni,Coもしくはそれらの合金箔が用いられるが、上記絶縁層の貫通孔を形成する前もしくは形成した後に、加熱加圧されて両面に積層される。
【0049】回路パターンは、感光性レジスト,露光,現像を用いて形成され、化学エッチングやめっき等でサブトラクティブ,アディティブ,セミアディティブ法で形成される。必要に応じて、回路表面には、研磨,めっきや防錆処理が施される。
【0050】上記のようにして得られた多孔質の絶縁層,支持体層,回路配線層は、接着剤を用いて積層する。上記接着剤としては、ポリイミド系,ポリアミド系,ポリエーテルイミド系,エポキシ系,シリコーン系もしくはその混合系の液状あるいは接着性シートが好適に用いられる。また、低吸湿のポリエステル系の熱可塑性液晶ポリマーフィルムも好ましい。もしくは、多孔質の絶縁体層自体に熱可塑性材料を用いて接着機能を付与し、接着剤を用いずに積層してもよいし、支持体層もしくは回路配線層に樹脂溶液を塗布し、上記方法で多孔質化処理し、これを積層してもよい。積層には、熱板プレスや、気圧で加熱加圧するオートクレープ等が利用できる。熱分解温度以下の加熱加圧により、接着剤もしくは多孔質の絶縁体層の表面が溶融し、支持体層もしくは回路配線層と一体化される。
【0051】支持体層に、それ自体で電気伝導性を有する金属箔や炭素繊維クロスを用いる場合には、あらかじめ支持体層に形成された孔に絶縁樹脂を充填し、孔内周を絶縁する必要がある。絶縁しないと、積層したのちに貫通孔を電気導通させて回路配線を形成する場合に、金属箔等と短絡してしまう。
【0052】上記接着剤層の厚みは0.01〜0.5mmとするのがよい。この範囲より小さいと作業性が悪い。この範囲以上であると、積層したのちに形成される貫通孔を電気導通させる場合に、貫通孔内周に金属層を形成したり、貫通孔内部に導電ペースト等を充填したりすることが難しくなる。また、絶縁体層を構成する多孔質の耐熱性材料の低誘電効果が低下してしまう。
【0053】上記絶縁層の貫通孔を電気導通させるためには、貫通孔内周面に電解めっき,無電解めっき,スパッタや蒸着によって金属層を形成したり、金属粉末を含有する導電ペーストを印刷法を用いてスキージで貫通孔内部を充填したりする方法もしくはそれらの組み合わせが用いられる。
【0054】導電ペーストを構成する金属粉末には、Sn,Pb,Cu,Ag,Au,Ni,Pd,Zn,Bi,Sb,Co等の単独,合金,混合物が、必要な耐熱性に応じて使用される。また、貫通孔径に応じて、50μm径以下、好ましくは、10μm径以下のものが使用される。特にSnを含むはんだ材料(300℃以下で溶融する)は、積層時の加熱加圧工程で溶融し、導電ペーストを構成する他の金属粉末や回路配線層を形成する金属と合金層を形成し、信頼性の高い電気接続が得られる。これらの金属粉末をペースト状にするためには、必要に応じて、エポキシ系樹脂等のバインダーやフラックス,有機溶剤等が所定量混合される。
【0055】電気導通路の露出部をバンプ状の突起に盛り上げて形成することもできる。この場合には、接続時に加圧されたバンプは潰れて、チップもしくは基板端子の凹凸形状に追随し、信頼性のよい電気接続が可能になる。さらに、多孔質の絶縁体層の空孔を利用し、上記方法を用い、電気導通させてもよい。この場合には、貫通孔を積層後に形成する必要がない。また、導電ペーストを回路配線層上にドット状にパターン印刷して、回路基板を加熱圧着積層する際に絶縁体層を突き破って貫通させる方法をとることもできる。
【0056】多層回路を形成する方法として、上記のような支持体層と多孔質の絶縁体層と回路配線層を用いて構成された複数枚の両面回路基板を形成し、これらを位置合わせし、接着剤シート等の接着剤層を用い位置合わせして一括多層化する方法が用いられる。この場合に、上記両面回路基板の片面に、あらかじめ貫通孔を形成した接着シートを回路パターンに合わせて積層したり、接着シートを積層したのち所定位置にレーザー等で孔を形成したりする。そののち、上記貫通孔に、上記導電ペーストを印刷充填して導電路を形成し、別の両面回路基板を位置合わせして積層する方法等が用いられる。
【0057】もしくは、上記のような支持体層と多孔質の絶縁体層と回路配線層を用いて構成された両面回路基板を形成したのち、感光性を付与した多孔質の絶縁体層を積層し、露光,現像で所定の絶縁体層や回路パターンを形成し、絶縁体層に厚み方向の導電路を形成しながら、各回路配線層と絶縁体層とを順次積層するようにしてもよい。
【0058】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
【0059】図1は本発明の多層回路基板の一実施の形態を示している。図において、1はFe/Ni系合金箔2を金属芯材層とした多孔質の絶縁体層3の表裏両面に銅箔からなる回路配線(回路配線層)4が形成された両面回路基板である。この実施の形態では、2枚の両面回路基板1が用いられており、これにより、多層回路基板として4層回路基板が作製されている。5は上記各両面回路基板1に穿設された貫通孔1aに導電性ペースト5aを充填してなる電気導通路であり、表裏両面の回路配線4を電気的に接続している。6は上記各両面回路基板1同士を接着するポリイミド系接着剤層である。7は上記各両面回路基板1の回路配線4を電気的に接続する導電路である。図において、8は上記絶縁体層3の表裏両面に形成されたポリイミド系接着剤層である。
【0060】上記両面回路基板1を、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、所定位置(電気導通路5を設ける位置)に貫通孔2aを開けたFe/Ni系合金箔2と、多孔質の絶縁体層3とからなる積層板10(図2参照)を準備し、ついで、上記絶縁体層3の表裏両面からポリイミド系接着シート11を張り合わせ、図3に示すような積層板12を作製する。つぎに、図4に示すように、上記Fe/Ni系合金箔2の貫通孔2aに対応する上記積層板12の部分に、上記貫通孔2aより小さい貫通孔1aを開ける。つぎに、図5に示すように、この貫通孔1aに導電性ペースト5aを充填したのち、表裏両面から、銅箔からなる導体層4aを貼り合わせることにより、表裏両面の導体層4aを(貫通孔1aに導電性ペースト5aを充填してなる)電気導通路5で電気的に接続する(図6参照)。つぎに、図6に示す両面銅張積層板13の表裏両面の導体層4aに回路配線4を形成して両面回路基板1(図7参照)を作製する。
【0061】上記多層回路基板を、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、Fe/Ni系合金箔2を金属芯材層とした多孔質の絶縁体層3の表裏両面に回路配線4が形成された2枚の両面回路基板1(図7R>7参照)と、ポリイミド系接着剤からなる接着シート(図8参照)14とを準備する。ついで、図9に示すように、上記接着シート14を1枚の両面回路基板1の上面に、接着シート14の開口部14aを両面回路基板1の回路配線4の所定位置(図1の導電路7を設ける位置)に位置合わせして仮接着する。つぎに、上記接着シート14の開口部14aにスクリーン印刷により半田ペーストを入れ、加熱溶融させて両面回路基板1の回路配線4上に半田バンプ15を形成する(図10参照)。つぎに、半田バンプ15を設けた両面回路基板1と、回路配線4を形成しただけの両面回路基板1をそれぞれ位置合わせして重ねたのち(図11参照)、加熱加圧し一体化させる。この状態では、接着シート11は接着剤層8となり、接着シート14は接着剤層6となり、各半田バンプ15は導電路7となる(図1参照)。これにより、2枚の両面回路基板1が積層一体化された4層配線基板を得ることができる。
【0062】上記のように、この実施の形態では、多孔質の絶縁体層3と、この絶縁体層3を保持するFe/Ni系合金箔2とを備えているため、低誘電特性,低誘電損失に優れているとともに、充分な機械的強度を備えている。しかも、一回の加熱加圧により2枚の両面回路基板1の一体化が行えると同時に、4層間の電気的接続が行える。しかも、2層の回路配線4に対して、1層の割合でNi−Fe系合金箔2が配設されているため、銅箔で回路配線4を構成する場合にも、4層配線基板全体の熱膨張率を低くすることができ、極めて高い接続信頼性を得ることができる。さらに、各導電路7の接合部の位置は、電気導通路5の導電性ペースト5aの影響を受けず、任意の位置に配置できるため、設計の自由度が上がり、高密度配線が実現できる。
【0063】以下、実施例により、本発明の効果を示す。
【0064】
【実施例1】ブタンテトラカルボン酸と4,4′−ジアミノジフェニルエーテルをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中にほぼ等モル溶解して、約200℃以下の温度で25時間重合してポリイミド系の重合体(30℃での極限粘度0.86)の溶液を得た。この重合体溶液にさらにポリビニルピロリドンを加えて混合し、ポリイミド重合体16重量%,ポリビニルピロリドン7重量%,NMP71重量%,水6重量%からなるドープを得た。これを厚み30μmの厚みでガラス板の上に塗布し、40℃の水槽に浸漬した。つぎに、ガラス板の上から塗布体を剥離し、24時間水中保存して脱溶剤を行った。
【0065】得られた多孔質膜21(図12参照)は、厚み30μmで、表面層に緻密層がなく、厚み方向に連続孔が形成された構造になっていた。表面層の平均孔径は4μm、裏面層の平均孔径は2μm、空孔率は70%だった。比誘電率は1.6、誘電損失は0.5%であった。
【0066】3,3′,4,4′−テトラカルボキシジフタルエーテル酸二無水物、2,2−ビス−4(4−アミノキシ)フェニルプロパン、末端シリコーン変性ジアミンをモル比で1:0.85:0.15となるようにN−メチルピロリドン中で重合し、ポリアミド酸溶液(固形分20重量%)を得た。これを塗工、乾燥し、さらに300℃で処理し、厚み25μmの熱可塑性ポリイミドフィルム22(図12参照)を作製した。作製された熱可塑性ポリイミドフィルム22のガラス転移温度は210℃であった。
【0067】熱膨張率20ppm/℃,弾性率9.3MPa、厚み75μmのポリイミドフィルム20(宇部興産社製ユーピレックス−75S)からなる支持体層の表面をスパッタ加工で粗面化し、その両面に熱可塑性ポリイミドフィルム22,多孔質膜21,熱可塑性ポリイミドフィルム22,厚み18μmの銅箔23aを加熱加圧接着(5MPa、250℃、60分)し、両面銅張積層板24を形成した(図13参照)。
【0068】つぎに、所定位置に200μmφの貫通孔24aをパンチャーで形成した(図14参照)。この貫通孔24aの内周面に無電解めっきと電解めっきを用いて銅層を形成し、スルーホール導通路25を形成した(図15参照)。つぎに、両面の銅箔23aにエッチング法により回路配線23を形成して、両面回路基板26を得た(図16参照)。
【0069】上記両面回路基板26の両面に、2枚の多孔質膜27(上記多孔質膜21と同様に作製した物)、6枚の熱可塑性ポリイミドフィルム28(上記熱可塑性ポリイミドフィルム22と同様に作製した物)、2枚の厚み18μmの銅箔29aを加熱加圧接着(5MPa、250℃、60分)し(図17参照)、両面に銅箔29aを有する基材30を形成した(図18参照)。つぎに、所定位置に200μmφの貫通孔30aをパンチャーで形成した(図19参照)。この貫通孔30aの内周面に無電解めっきと電解めっきを用いて銅層を形成し、スルーホール導通路31を形成した(図20参照)。そののち、両面の銅箔29aにエッチング法により回路配線29を形成して、4層回路基板を得た(図21参照)。
【0070】
【実施例2】ビフェニルテトラカルボン酸二無水物−ジアミノジフェニルエーテル−パラフェニレンジアミン系のポリイミド前駆体のNMP10重量溶液をドープとして、厚み35μmの銅箔36a(図22参照)の黒色処理面にフィルムアプリケーターを用いて、ギャップ50μmで均一の厚みに塗布した。塗布後、100℃の乾燥機で15分間送風乾燥した。
【0071】乾燥後、常温まで温度が下がってから、乾燥させたポリイミド前駆体フィルムの上に同じドープをフィルムアプリケーターを用いて、ギャップ100μmで均一の厚みに塗布した。塗布後直ちに25℃の純水に浸漬し、ポリイミド前駆体を凝固させた。凝固後、90℃で1時間以上乾燥させた。
【0072】乾燥後、窒素雰囲気中にて400℃で3時間熱処理し、ポリイミド前駆体を加熱閉環させ、ポリイミド樹脂層37と銅箔36aとの積層板35を得た(図2222参照)。ポリイミド樹脂層37は、非多孔質層38(厚み10μm)と多孔質層39(厚み30μm)とからなり、多孔質層39の比誘電率は1.6、誘電損失は0.5%であった。
【0073】つぎに、上記積層板35を、銅箔36aが外側に露出するように、ガラスクロス強化されたビスマレイミド−トリアジン樹脂プリプレグ40(三菱ガス化学社製GHPL−830、厚み100μm,弾性率20GPa、平面方向の熱膨張係数16ppm/℃)を支持体層として加熱加圧して(4MPa、200℃、60分)接着し、両面銅張積層板41を形成した(図23参照)。図22において、40aはプリプレグ40の両面に設けた接着剤層である。
【0074】つぎに、所定位置に200μmφの貫通孔41aをパンチャーで形成した(図24参照)。この貫通孔41aの内周面に無電解めっきと電解めっきを用いて銅層を形成し、スルーホール導通路42を形成した(図25参照)。そののち、両面の銅箔36aにエッチング法により回路配線36を形成して、両面回路基板43を得た(図26参照)。
【0075】ポリイミド系接着シート44(新日鐡化学社製SPB50)を上記両面回路基板43の片側に加熱加圧接着(2MPa、175℃、30分)したのち(図2727参照)、所定位置に回路配線36まで達する200μmφの孔44aをYAGレーザーで開けた(図28参照)。つぎに、この開孔部44aに、Ni粉末が15重量%混合されたSn−Sbはんだペースト(日本ゲンマ社製)を印刷充填し、最高240℃、1分でリフローしてバンプ45を形成した(図29参照)。そののち、もう1枚の両面回路基板43を位置合わせして重ね(図30R>0参照)、加熱加圧(5MPa、180℃、60分)により一体化し、4層回路基板を得た(図31参照)。
【0076】
【実施例3】熱膨張係数3ppm/℃,弾性率70GPa、厚み100μmの炭素繊維クロス50(東邦レーヨン社製W3101)の支持体層に350μmφ、500μmピッチのスルーホール導通路53用の貫通孔50aをドリルであけた(図32参照)。つぎに、炭素繊維クロス50の両面に、厚み50μmの接着性樹脂フィルム51(クラレ社製液晶性芳香族ポリエステルFAグレード、ガラス転移温度205℃)を介して、実施例2で得た積層板35を加熱加圧して(1MPa、290℃、10分)接着し、上記貫通孔50aを接着性樹脂で充填して、両面銅張積層板52を形成した(図33参照)。
【0077】つぎに、所定位置に150μmφの貫通孔52aをYAGレーザーで形成した(図34参照)。この貫通孔52aの内周面に無電解めっきと電解めっきを用いて銅層を形成し、スルーホール導通路53を形成した(図35参照)。つぎに、両面の銅箔36aにエッチング法により回路配線36を形成して、両面回路基板54を得た(図36参照)。
【0078】つぎに、実施例2と同様に、ポリイミド系接着シート55(新日鐡化学社製SPB50)を上記両面回路基板54の片側に加熱加圧接着(2MPa、175℃、30分)したのち(図37参照)、所定位置に回路配線36まで達する150μmφの孔55aをYAGレーザーで開けた(図38参照)。つぎに、この開孔部55aに、Ni粉末が15重量%混合されたSn−Sbはんだペースト(日本ゲンマ社製)を印刷充填し、最高240℃、1分でリフローしてバンプ56を形成した(図39参照)。そののち、もう1枚の両面回路基板54を位置合わせして重ね(図40参照)、加熱加圧(5MPa、180℃、60分)により一体化し、4層回路基板を得た(図41参照)。
【0079】
【実施例4】イソフタル酸塩化物のヘキサン溶液とm−フェニレンジアミンの水溶液とを等モル反応させて芳香族ポリアミドを得た。この芳香族ポリアミド(沈殿物)を水洗,アルコール洗浄,水洗を繰り返し、60℃で12時間真空乾燥して乾燥ポリマーを得た。このポリマーを80℃でNMP中に溶解し、さらに硝酸リチウムを溶解して、硝酸リチウム5重量%,ポリマー10重量%を含むドープを得た。
【0080】厚み50μmのFe/Ni合金箔2の支持体層(Ni含有率:36重量%,熱膨張率1.5ppm/℃)に、250μmφ、350μmピッチの電気導通路5用の貫通孔2aを化学エッチングであけた(図2参照)。これを上記ドープに浸漬し、直ちに40℃の水槽に浸漬した。そののち、24時間水中保存して脱溶剤を行った。得られた絶縁体層3(図2参照)は、Fe/Ni合金箔2の両面に厚み50μmに形成され、かつ、貫通孔2aを充填していた。また、厚み方向に連続孔が形成されたフィンガーボイド構造になっていた。平均孔径は短径5μm、長径は25μm、空孔率は78%だった。比誘電率は1.4、誘電損失は0.4%であった。
【0081】つぎに、この積層板10(図2参照)の両面に、厚み50μmのポリイミド系接着シート11(新日鐡化学社製SPB50)を加熱加圧接着(2MPa、175℃、30分)したのち(図3参照)、上記貫通孔2aと同心状に150μmφの貫通孔1aをYAGレーザーで形成した(図4参照)。この貫通孔1aの内部に、金属版(開孔径200μmφ、厚み100μm)を用いて、Ni粉末が15重量%混合されたSn−Sb共晶はんだペースト(日本ゲンマ社製)を印刷充填した。さらに、開孔両端をプレスして(10MPa、30℃、2分)、ペーストを圧入後、過剰量の金属粉末をバフ研磨により取り除いた。
【0082】加圧下で230℃まで加温し、上記はんだ粉末を溶融させることにより電気導通路5を得た(図5の積層板12参照)。この積層板12の両面に、厚み12μmの銅箔4aを加熱加圧して(5MPa、220℃、15分)積層し、両面銅張積層板13を形成した(図6参照)。つぎに、両面の銅箔4aにエッチング法により回路配線4を形成して、両面回路基板1を得た(図7参照)。
【0083】厚み50μmのポリイミド系接着シート14(新日鐡化学社製SPB50)の所定位置に150μmφの貫通孔14aをYAGレーザーで形成した(図8参照)。つぎに、上記接着シート14を位置合わせして上記両面回路基板1の片面に加熱加圧接着(2MPa、175℃、30分)した(図9参照)。上記と同様の方法で、Sn−Sbはんだペースト(日本ゲンマ社製)を印刷充填し、バンプ15を形成した(図10参照)。そののち、もう1枚の両面回路基板1を位置合わせして積層(5MPa、240℃、30分)し(図11参照)、4層回路基板を得た(図1参照)。
【0084】
【実施例5】厚み50μmのFe/Ni合金箔2の支持体層(Ni含有率:36重量%,熱膨張率1.5ppm/℃)に、250μmφ、350μmピッチの電気導通路5用の貫通孔2aを化学エッチングであけた。これを実施例2と同じドープに浸漬し、直ちに25℃の水槽に浸漬してポリイミド前駆体を凝固させた。凝固後、90℃で1時間以上乾燥させた。
【0085】乾燥後、窒素雰囲気中にて400℃で3時間熱処理し、ポリイミド前駆体を加熱閉環させ、ポリイミド樹脂層60とFe/Ni合金箔2の積層板を得た。ポリイミド樹脂層60の多孔質層は、Fe/Ni合金箔2の両面にそれぞれ30μmに形成され、かつ、上記貫通孔2aを充填し、比誘電率は1.6、誘電損失は0.5%であった。この積層板を用い、ポリイミド系接着シートとして実施例1と同じもの(ポリイミド系接着シート11)を用いた以外は、実施例4と同様に両面回路基板61を作製した(図42参照)。
【0086】実施例2と同じドープに感光剤(4−o−ニトロフェニル−3,5−ジメトキシカルボニル−2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン、4−o−ニトロフェニル−3,5−ジアセチル−1,4−ジヒドロピリジンをそれぞれ2重量%ずつ)と、ウレタンアクリレートを3.8重量%添加して感光性樹脂溶液を得た。
【0087】この感光性樹脂溶液を上記両面回路基板61の両面にスピンコーターを用い、乾燥後の被膜の厚みが20μmとなるように塗布し、90℃で15分乾燥させ、塗膜層62にウレタンアクリレートのドメインが形成されるように塗膜層62を形成した(図43参照)。
【0088】つぎに、マスクを介して350〜420nmの紫外線を700mJ/cm2 になるように露光し、180℃で10分間、熱風循環式オーブン中で露光後加熱を行い、現像液に浸漬処理して、ネガ型画像パターン(回路配線4の表面層の所定位置に、回路配線4まで達する直径50μmの孔62a)を形成した(図44参照)。
【0089】これを500ccの耐圧容器に入れ、40℃の雰囲気中、25MPaに加圧したのち、圧力を保ったままガス量約3L/分の流量で二酸化炭素を注入し、排気してウレタンアクリレートを2時間抽出した。そののち、1.33Paの真空下に減圧した状態で最高温度330℃まで加熱して、厚み12μm、独立気泡を有する多孔質のポリイミド樹脂からなる絶縁体層を積層した。
【0090】つぎに、上記多孔質のポリイミド樹脂の孔62a内周と両表面を触媒活性化して、無電解めっきと電解めっきで上記孔62aを充填して導電路63を形成し、かつ、厚み10μmの銅層64aを形成した(図45R>5参照)。そののち、これを化学エッチング法で回路配線64を形成して、4層回路基板を得た(図46参照)。
【0091】
【比較例1】実施例1で、ポリイミドフィルム20の支持体層なしで、厚み18μmの銅箔23a,多孔質膜21,熱可塑性ポリイミドフィルム22,多孔質膜21,厚み18μmの銅箔23aを積層し、孔あけ、スルーホールめっきを施し、化学エッチング法で回路配線23を形成して、両面回路基板(図示せず)を作製した。
【0092】基板表面のうねりが大きく、外観上問題があったが、さらに上記両面回路基板の両面に、上記多孔質膜21と熱可塑性ポリイミドフィルム22とを介して厚み18μmの銅箔23aを接着し、両面に銅箔23aを形成した。所定位置に200μmφの貫通孔をパンチャーで形成しようとしたが、寸法ずれが生じており、所定の位置に内層となる上記両面回路基板の回路配線23がなく、4層回路の厚み方向の導通を得ることができなかった。
【0093】
【比較例2】実施例2で、ガラスクロス強化ビスマレイミド−トリアジン樹脂プリプレグ40の支持体層を用いず、加熱加圧して(4MPa、200℃、60分)接着し、ポリイミド樹脂層37と銅箔36aとの積層板35を、銅箔36aが外側に露出するように、加熱加圧して(4MPa、200℃、60分)接着し、両面銅張積層板(図示せず)を形成した。
【0094】つぎに、所定位置に200μmφの貫通孔41aをパンチャーで形成した。この貫通孔41aの内周面に無電解めっきと電解めっきを用いて銅層を形成し、スルーホール導通路42を形成した。そののち、両面の銅箔36aにエッチング法により回路配線36を形成して、両面回路基板(図示せず)を得た。
【0095】ポリイミド系接着シート44(新日鐡化学社製SPB50)を上記両面回路基板の片側に加熱加圧接着(2MPa、175℃、30分)したのち、所定位置に回路配線36まで達する200μmφの孔44aをYAGレーザーで開けた。つぎに、この開孔部44aに、Ni粉末が15重量%混合された共晶はんだペースト(日本ゲンマ社製)を印刷充填し、最高240℃、1分でリフローしてバンプ45を形成した。そののち、もう1枚の両面回路基板を位置合わせして重ね、加熱加圧(5MPa、180℃、60分)により一体化し、4層回路基板を得た(図示せず)。
【0096】
【比較例3】実施例2と同じドープをガラス板に塗布し、直ちに25℃の水槽に浸漬し、ポリイミド前駆体を凝固させた。凝固後、90℃で1時間以上乾燥させた。乾燥後、窒素雰囲気中にて400℃で3時間熱処理し、ポリイミド前駆体を加熱閉環させ、ガラス板から剥離して、厚み30μmのポリイミド多孔質膜を得た。
【0097】実施例1で作製した熱可塑性ポリイミドフィルム22を用い、熱可塑性ポリイミド,ポリイミド多孔質膜,熱可塑性ポリイミド,ポリイミド多孔質膜,熱可塑性ポリイミドを積層した。
【0098】つぎに、150μmφの貫通孔をYAGレーザーで形成した。これらの貫通孔の内部に、金属版(開孔径200μmφ、厚み100μm)を用いて、Ni粉末が15重量%混合されたSn−Sb共晶はんだペースト(日本ゲンマ社製)を印刷充填した。さらに、開孔両端をプレスして(10MPa、30℃、2分)、ペーストを圧入後、過剰量の金属粉末をバフ研磨により取り除いた。
【0099】加圧下で230℃まで加温し、上記はんだ粉末を溶融させることにより電気導通路を得た。そののち、この積層板の両面に、12μm厚みの銅箔を加熱加圧して(5MPa、220℃、15分)積層し、両面の銅箔にエッチング法により回路配線を形成したが、電気導通路の位置と回路位置がずれており、両面回路の導通を得ることができなかった。
【0100】上記のようにして作製した実施例1〜5品、比較例2品のサンプルについて、熱衝撃試験(−65〜150℃、各10分)を行い、基板の厚み方向の電気導通の有無を調べた。その結果を下記の表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】また、実施例1〜5品、比較例2品のサンプルに、はんだバンプの形成されたフリップチップ(8mm□、100i/oデイジーチェイン、120μmφSn/Pbはんだバンプ、300μmピッチ)を実装(アンダーフィルなし)されたサンプルについて、熱サイクル試験(−40〜125℃、各10分)を行い、基板の厚み方向の電気導通の有無を調べた。その結果を下記の表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】上記の表1および表2から明らかなように、実施例1〜5品は比較例2品よりも機械的強度に優れていることが判る。
【0105】なお、上記実施の形態や各実施例は,4層回路までの多層化例であるが、同様な方法を用いて積層し、4層以上の多層回路基板をも作製することができる。
【0106】
【発明の効果】以上のように、本発明の多層回路基板は、多孔質の耐熱性材料で構成されている絶縁体層と、この絶縁体層を保持する支持体層と、複数の回路配線層とを備えている。このように、本発明の多層回路基板は、機械的強度が不足している多孔質の絶縁体層を支持体層で支持しているため、低誘電特性,低誘電損失に優れているとともに、充分な機械的強度を備えている。
【0107】また、支持体層を構成する材料として、高弾性率材料を用いると、全体の積層構造の機械的強度を大きく向上させることができる。また、低熱膨張材料を用いると、シリコンとの熱膨張の差を小さくすることができるため、ストレス発生を抑止することができる。したがって、高弾性率で低熱膨張の支持体層を、多孔質の絶縁体層と積層することにより、寸法安定性を得ることができ、しかも、回路配線の位置寸法精度がよくなり、積層時の回路配線層間やチップ実装時の位置合わせが容易になる。特に、低熱膨張の金属箔を用いた場合は、剛直性にも優れ、曲げても割れにくい。また、ベアチップ実装時に搭載時の圧力にも耐え、熱膨張差によるストレス抑止効果も高く、信頼性も良好になる。
【0108】一方、本発明の多層回路基板の製造方法により、上記優れた効果を奏する多層回路基板を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層回路基板の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図3】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図4】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図5】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図6】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図7】上記多層回路基板の断面図である。
【図8】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図9】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図10】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図11】上記多層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図12】実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図13】上記実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図14】上記実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図15】上記実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図16】上記実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図17】上記実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図18】上記実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図19】上記実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図20】上記実施例1の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図21】上記実施例1の4層回路基板を示す断面図である。
【図22】実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図23】上記実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図24】上記実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図25】上記実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図26】上記実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図27】上記実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図28】上記実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図29】上記実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図30】上記実施例2の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図31】上記実施例2の4層回路基板を示す断面図である。
【図32】実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図33】上記実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図34】上記実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図35】上記実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図36】上記実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図37】上記実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図38】上記実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図39】上記実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図40】上記実施例3の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図41】上記実施例3の4層回路基板を示す断面図である。
【図42】実施例5の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図43】上記実施例5の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図44】上記実施例5の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図45】上記実施例5の4層回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図46】上記実施例5の4層回路基板を示す断面図である。
【符号の説明】
2 合金箔
3 絶縁体層
4 回路配線
5 電気導通路
【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁体層と、上記絶縁体層を保持する支持体層と、複数の回路配線層とを備え、上記絶縁体層と支持体層とを貫通する電気導通路を用いて回路配線層の各層が所定の位置で電気接続されている多層回路基板であって、上記絶縁体層が多孔質の耐熱性材料で構成されていることを特徴とする多層回路基板。
【請求項2】 上記多孔質の耐熱性材料で構成されている絶縁体層の空孔率が30%以上で、かつ、98%未満である請求項1記載の多層回路基板。
【請求項3】 上記多孔質の耐熱性材料がポリイミド系樹脂もしくはポリアミド系樹脂である請求項1または2記載の多層回路基板。
【請求項4】 上記多孔質の耐熱性材料で構成されている絶縁体層の孔が、上記絶縁体層の厚み方向にその絶縁体層を貫通する状態で形成された孔径0.05μm以上の孔を含んでいる請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層回路基板。
【請求項5】 上記多孔質の耐熱性材料で構成されている絶縁体層の孔が、個々に独立して形成された孔径0.05μm以上の孔を含んでいる請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層回路基板。
【請求項6】 上記支持体層の引っ張り弾性率が1GPa以上で、平面方向の熱膨張係数が20〜250℃で20ppm/℃以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層回路基板。
【請求項7】 上記支持体層が、Fe/Ni系合金箔からなる金属芯材層からなり、そのNi含有量が31〜50重量%で、かつ、その厚みが10〜500μmの範囲に設定されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の多層回路基板。
【請求項8】 上記電気導通路が、300℃以下で溶融するはんだ材料を含んでいる請求項1〜7のいずれか一項に記載の多層回路基板。
【請求項9】 多孔質の耐熱性材料で構成される絶縁体層を介して上記絶縁体層を保持する支持体層の両面に導体層を積層して第1の積層板を作製する工程と、上記第1の積層板の絶縁体層と支持体層とを貫通する電気導通路を形成する工程と、上記第1の積層板の両面の導体層に回路配線を形成して両面回路基板を作製する工程と、上記両面回路基板の両面の回路配線層に、多孔質の耐熱性材料で構成される絶縁体層を介して、少なくとも導体層を積層して第2の積層板を作製する工程と、上記第2の積層板に表面の導体層から裏面の導体層まで貫通する導電路を形成する工程と、上記第2の積層板の両面の導体層に回路配線を形成する工程とを備えたことを特徴とする多層回路基板の製造方法。
【請求項10】 多孔質の耐熱性材料で構成される絶縁体層を介して上記絶縁体層を保持する支持体層の両面に導体層を積層して第1の積層板を作製する工程と、上記第1の積層板の絶縁体層と支持体層とを貫通する電気導通路を形成する工程と、上記第1の積層板の両面の導体層に回路配線を形成して両面回路基板を作製する工程と、上記両面回路基板を2枚以上準備する工程と、上記2枚以上の両面回路基板を位置合わせし、所定の位置に厚み方向の導電路が形成された接着性絶縁樹脂層を介して積層し、かつ、上記接着性絶縁樹脂層を挟む2つの両面回路基板の回路配線層を上記導電路により電気接続させる工程とを備えたことを特徴とする多層回路基板の製造方法。
【請求項1】 絶縁体層と、上記絶縁体層を保持する支持体層と、複数の回路配線層とを備え、上記絶縁体層と支持体層とを貫通する電気導通路を用いて回路配線層の各層が所定の位置で電気接続されている多層回路基板であって、上記絶縁体層が多孔質の耐熱性材料で構成されていることを特徴とする多層回路基板。
【請求項2】 上記多孔質の耐熱性材料で構成されている絶縁体層の空孔率が30%以上で、かつ、98%未満である請求項1記載の多層回路基板。
【請求項3】 上記多孔質の耐熱性材料がポリイミド系樹脂もしくはポリアミド系樹脂である請求項1または2記載の多層回路基板。
【請求項4】 上記多孔質の耐熱性材料で構成されている絶縁体層の孔が、上記絶縁体層の厚み方向にその絶縁体層を貫通する状態で形成された孔径0.05μm以上の孔を含んでいる請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層回路基板。
【請求項5】 上記多孔質の耐熱性材料で構成されている絶縁体層の孔が、個々に独立して形成された孔径0.05μm以上の孔を含んでいる請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層回路基板。
【請求項6】 上記支持体層の引っ張り弾性率が1GPa以上で、平面方向の熱膨張係数が20〜250℃で20ppm/℃以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層回路基板。
【請求項7】 上記支持体層が、Fe/Ni系合金箔からなる金属芯材層からなり、そのNi含有量が31〜50重量%で、かつ、その厚みが10〜500μmの範囲に設定されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の多層回路基板。
【請求項8】 上記電気導通路が、300℃以下で溶融するはんだ材料を含んでいる請求項1〜7のいずれか一項に記載の多層回路基板。
【請求項9】 多孔質の耐熱性材料で構成される絶縁体層を介して上記絶縁体層を保持する支持体層の両面に導体層を積層して第1の積層板を作製する工程と、上記第1の積層板の絶縁体層と支持体層とを貫通する電気導通路を形成する工程と、上記第1の積層板の両面の導体層に回路配線を形成して両面回路基板を作製する工程と、上記両面回路基板の両面の回路配線層に、多孔質の耐熱性材料で構成される絶縁体層を介して、少なくとも導体層を積層して第2の積層板を作製する工程と、上記第2の積層板に表面の導体層から裏面の導体層まで貫通する導電路を形成する工程と、上記第2の積層板の両面の導体層に回路配線を形成する工程とを備えたことを特徴とする多層回路基板の製造方法。
【請求項10】 多孔質の耐熱性材料で構成される絶縁体層を介して上記絶縁体層を保持する支持体層の両面に導体層を積層して第1の積層板を作製する工程と、上記第1の積層板の絶縁体層と支持体層とを貫通する電気導通路を形成する工程と、上記第1の積層板の両面の導体層に回路配線を形成して両面回路基板を作製する工程と、上記両面回路基板を2枚以上準備する工程と、上記2枚以上の両面回路基板を位置合わせし、所定の位置に厚み方向の導電路が形成された接着性絶縁樹脂層を介して積層し、かつ、上記接着性絶縁樹脂層を挟む2つの両面回路基板の回路配線層を上記導電路により電気接続させる工程とを備えたことを特徴とする多層回路基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図42】
【図41】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図42】
【図41】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【公開番号】特開2002−134925(P2002−134925A)
【公開日】平成14年5月10日(2002.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−327748(P2000−327748)
【出願日】平成12年10月26日(2000.10.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成14年5月10日(2002.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成12年10月26日(2000.10.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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