説明

多層多孔膜

【課題】耐酸化性に優れさらに高い透過性を兼ね備え、高安全性および高出力が要求される非水電解液電池用セパレータ等として特に好適な多層多孔膜の提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる多孔層とポリフェニレンエーテルからなる多孔層からなる積層体であり、ポリフェニレンエーテルからなる多孔層の透気度が60秒未満/100mlであることを特徴とする多層多孔膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐酸化性に優れ、さらに高い透過性を備えてなる多層多孔膜であって、安全性、出力特性の高い非水系電解液二次電池等に用いられるセパレータ等に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔膜は、物質の分離や選択透過及び隔離材等として広く用いられている。その中で、ポリオレフィン製微多孔膜は種々の電池のセパレータとして使用されており、特にポリエチレン製微多孔膜は、リチウムイオン二次電池用セパレータとして好適に使用されている。ポリエチレン製微多孔膜は、電子絶縁性に優れる、電解液含浸によりイオン透過性を有する、耐電解液性・耐酸化性に優れる、適度の強度を持っているなどの基本特性に加え、電池異常昇温時に120〜150℃程度の温度において電流を遮断し過度の昇温を抑制する孔閉塞効果を具備しており、これらが好適に使用される理由とみられる。
リチウムイオン二次電池は、近年、自動車用途など高容量・高出力に向けての開発が進められているため、短絡時の危険性は一層増しており、セパレータにもより高いレベルでの安全性が求められている。また、作動電圧の高電圧化により正極近傍での酸化反応によるセパレータの劣化が大きな問題として浮上し、解決が求められている。
【0003】
特許文献1には、正極と対向する層の酸素指数が26以上であり、140℃以下のシャットダウンを有する層と熱変形温度が100℃以上である層を含む積層体が非水系二次電池用セパレータとして開示されている。酸素指数が26以上の材質の例としてポリフェニレンオキサイド(ポリフェニレンエーテルの別称)が挙げられている。
特許文献2には、ポリフェニレンエーテルからなるセパレータが開示されている。
しかしながら、いずれの先行技術においても透過性において課題が残り、耐酸化性と高透過性を併せ持つ多孔膜を得られるには至らず課題が残る。
【特許文献1】特開2006−269359号公報
【特許文献2】特開2000−138048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、耐酸化性に優れさらに高い透過性を兼ね備え、高安全性および高出力が要求される非水電解液電池用セパレータ等として特に好適な多層多孔膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、熱可塑性樹脂からなる多孔層とポリフェニレンエーテルからなる多孔層からなる積層体であり、ポリフェニレンエーテルからなる多孔層の透気度が60秒未満/100mlである多層多孔膜により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち本発明は以下のとおりである。
1.熱可塑性樹脂からなる多孔層とポリフェニレンエーテルからなる多孔層を含む積層体であり、ポリフェニレンエーテルからなる多孔層の透気度が60秒未満/100mlであることを特徴とする多層多孔膜。
2.ポリフェニレンエーテルからなる多孔層の透気度が熱可塑性樹脂からなる多孔層の透気度よりも小さいことを特徴とする1.に記載の多層多孔膜。
3.熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂からなる多孔層であることを特徴とする1.又は2.に記載の多層多孔膜。
4.ポリフェニレンエーテルからなる多孔層の最大孔径が0.1μmより大きく20μm以下であることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の多層多孔膜。
5.ポリフェニレンエーテルからなる多孔層が、平均繊維径が0.01μm以上10μm以下の極細繊維繊維集合体からなる多孔層であることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の多層多孔膜。
6.1.〜5.のいずれかに記載の多層多孔膜からなる非水系電解液二次電池用セパレータ。
7.6.に記載のセパレータを用いた非水系電解液二次電池。
【発明の効果】
【0006】
本発明の多層多孔膜は、優れた耐酸化性と優れた透過性を兼ね備えた多層多孔膜である。特に高安全性および高出力が要求される非水電解液電池用セパレータ等として特に好適である多層多孔膜を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳述する。
<ポリフェニレンエーテルからなる多孔層の構造>
本発明の多層多孔膜はポリフェニレンエーテルからなる多孔層を少なくとも1層以上有する。ポリフェニレンエーテルからなる多孔層は、多層膜の片面もしくは両面の表層に配置されることが好ましい。本発明に用いるポリフェニレンエーテルとは、下記式の繰り返し単位構造からなり、
【0008】
【化1】

【0009】
(R1、R4はそれぞれ独立して、水素、塩素、臭素、ヨウ素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、アミノアルキル、炭化水素オキシを表す。R2、R3はそれぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニルを表す。)還元粘度(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)が0.15〜1.0dl/gの範囲にある単独重合体および共重合体であることが好ましい。さらに好ましい還元粘度は0.20〜0.70dl/gの範囲、最も好ましくは0.40〜0.60dl/gの範囲である。還元粘度が1.0dl/g以下であると耐酸化性により優れるので好ましい。また粘度がこの範囲にあると、静電紡糸法において多孔膜を製造する場合に、ポリマーの濃度、溶液の粘度を適切な範囲とすることができる。
【0010】
このポリフェニレンエーテルの具体的な例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに、耐酸化性の観点から、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のようなポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。中でも、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、さらにポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。
【0011】
ポリフェニレンエーテルは、単独で用いても構わないし、ポリフェニレンエーテルに相溶するポリマーが混合されていても構わないし、ポリフェニレンエーテルに非相溶なポリマーや無機粒子、ガラス繊維等が混合されていても構わない。ポリフェニレンエーテルに相溶するポリマーとしてはポリスチレン等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテルからなる多孔層の透気度は60秒/100ml未満である。40秒/100ml以下が好ましく、10秒/100ml以下がさらに好ましい。透気度が60秒/100ml未満の場合は、電池用セパレータとして用いた場合に、良好な出力特性が得られる。このような透気度の低いポリフェニレンエーテルからなる多孔層を有する多層多孔膜を電池用セパレータとして用い、正極活物質層と接するセパレータ表面に該ポリフェニレンエーテルからなる多孔層を配置した場合には、耐酸化性においても著しく良好な結果が得られる。理由は定かではないが、以下のように考える。電池において、正極活物質層とセパレータ表面は密着した状態にあり、その界面におけるイオン移動抵抗は、セパレータ内部に比べて非常に大きい。イオン移動抵抗の増大は、内部抵抗の増大を引き起こすために、実際に電池へ印加される電圧は設定値よりも高くなり、正極はより電位の高い状態となる。
【0012】
そのために正極面においてセパレータの酸化劣化がより進行しやすい。しかしながらセパレータの透気度が60秒/100ml未満と著しく低い場合には、正極活物質層とセパレータ界面におけるイオン移動抵抗の増加は少なく、セパレータのバルクと同様な低抵抗な状態となっていると推察される。ゆえに、内部抵抗の増大は抑制されて、正極電位の上昇も抑制でき、セパレータの酸化劣化は低減出来ると推察している。透気度が60秒/100ml未満であれば、どのような多孔構造でも構わない。孔構造が微細な三次元網目構造からなる微多孔膜や繊維の集合体からなるものであってもよい。繊維の集合体とは、繊維が織り、編み、積層などの操作を受けることによって形成された構造体であり、例えば不織布などを挙げることが出来る。
【0013】
好適な構造としては繊維の集合体が挙げられる。なかでも、平均繊維径が細い、極細繊維が好ましく、極細繊維の平均繊維径は、0.01μm以上10μm以下の範囲が好ましい。平均繊維径が10μm以下であると、それによって得られる多孔層の均一性、緻密性が優れるので好ましい。また、電池用セパレータとして用いた場合に界面におけるイオン移動抵抗の増大を抑制出来る傾向にあり好ましい。0.01μm以上であれば、強度に優れる。繊維の平均繊維径は、好ましくは0.03μm以上1μm以下であり、より好ましくは0.03μm以上0.5μm以下である。
ポリフェニレンエーテルからなる多孔層の厚みは、0.1μm以上20μm未満が好ましい。1μm以上15μm未満がより好ましく、3μm以上10μm未満がさらに好ましい。
【0014】
1μm以上では、例えば電池用セパレータとして用い、電極面と接する面をポリフェニレンエーテルからなる多孔層とした場合に、電極活物質がポリフェニレンエーテルからなる多孔層の下位層(電極との界面から数えて2層目以降)との接触を抑制でき、セパレータの劣化を抑制できる傾向にあり好ましい。20μm未満では、セパレータの占有体積が減るため、電池の高容量化の点において有利となる傾向がある。気孔率は40%以上99%以下が好ましく、60%以上95%以下がより好ましい。40%以上では界面における抵抗増大を抑制できる傾向にあり、99%以下では電極活物質がポリフェニレンエーテルからなる多孔層の下位層(電極との界面から数えて2層目以降)との接触を抑制でき、セパレータの劣化を抑制できる傾向にあり好ましい。ポリフェニレンエーテルからなる多孔層の最大孔径は0.1μmより大きく20μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以上10μm以下である。0.1μmより大きければ、界面における抵抗増大を抑制できる傾向にあり、20μm以下では電極活物質がポリフェニレンエーテルからなる多孔層の下位層(電極との界面から数えて2層目以降)との接触を抑制でき、セパレータの劣化を抑制できる傾向にあり好ましい。
【0015】
<熱可塑性樹脂からなる多孔層の構造>
本発明の多層多孔膜は熱可塑性樹脂からなる多孔層を少なくとも1層以上有する。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネートなどが挙げられるが、特に非水電解液電池用セパレータとして用いる場合、耐電解液性の観点からポリオレフィン樹脂が好ましい。
ポリオレフィン樹脂とは、通常の押出、射出、インフレーション、及びブロー成形等に使用するポリオレフィン樹脂をいい、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、及び1−オクテン等のホモ重合体及び共重合体、多段重合体等を使用することができる。また、これらのホモ重合体及び共重合体、多段重合体の群から選んだポリオレフィンを単独、もしくは混合して使用することもできる。前記重合体の代表例としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、ポリブテン、エチレンプロピレンラバー等が挙げられる。本発明の多孔膜を電池セパレータとして使用する場合、低融点樹脂であり、かつ高突刺強度の要求性能から、特に高密度ポリエチレンを主成分(例えば、10質量部以上)とする樹脂を使用することが好ましい。また、本発明においては、上記ポリオレフィン樹脂を単独で用いることもでき又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0016】
熱可塑性樹脂からなる多孔層の構造は連通孔を含む多孔層であれば、いかなる多孔層でも構わない。連通孔を含むとは、片面からもう一方の片面まで連通した孔構造を有していることであり、片面からもう一方の片面へ気体透過性を測定することで確認できる。気体透過性を示す指標である透気度が10000秒以下であれば多孔層であると言える。多孔層の構造は、孔構造が微細な三次元網目構造からなる微多孔膜や繊維の集合体からなるものであってもよい。繊維の集合体とは、繊維が織り、編み、積層などの操作を受けることによって形成された構造体であり、例えば不織布などを挙げることが出来る。電池用セパレータとして用いた場合に、信頼性の観点から微多孔膜が好ましい。
【0017】
熱可塑性樹脂からなる多孔層の厚みは1μm以上40μm以下が好ましく、2μm以上35μm以下がより好ましく、5μm以上30μm以下がさらに好ましい。例えば電池用セパレータとして用いた場合、1μm以上であればハンドリング、操作性に優れ、40μm以下であればセパレータの占有体積が減るため、電池の高容量化の点において有利となる傾向がある。気孔率は、好ましくは25%以上70%以下、より好ましくは30%以上60%以下の範囲である。気孔率が25%以上では、透過性が低下しにくく、一方70%以下では電池セパレータとして使用した場合に自己放電の可能性が少なく信頼性がある。透気度は、10秒/100ml以上1000秒/100ml以下が好ましく、60秒/100ml以上500秒/100ml以下がより好ましく、80秒/100ml以上300秒/100ml以下がさらに好ましい。
【0018】
透気度が10秒/100ml以上では電池用セパレータとして使用した際に自己放電が少なく、1000秒/100ml以下では良好な充放電特性が得られる。突き刺し強度は、2N以上が好ましく、3N以上がより好ましく、4N以上がさらに好ましい。2N以上では、電池捲回時における脱落した活物質等による破膜を抑制出来る。また充放電に伴う電極の膨張収縮によって短絡する懸念が少ない。上限は特に制限がないが、10N以下が熱収縮を低減できる観点から好ましい。最大孔径は、0.01μm以上0.5μm以下が好ましく、0.02μm以上0.3μm以下がより好ましく、0.03μm以上0.1μm未満がさらに好ましい。最大孔径が0.01μm以上であれば透過性は良好であり好ましい。0.5μm以下であれば、電池セパレータとして使用した場合に自己放電の可能性が少なく信頼性の観点から好ましい。
【0019】
<多層多孔膜の構造>
本発明の多層多孔膜は、熱可塑性樹脂からなる多孔層とポリフェニレンエーテルからなる多孔層を含む積層体である。熱可塑性樹脂からなる多孔層とポリフェニレンエーテルからなる多孔層は結合していることが好ましい。多層多孔膜が三層以上の場合は、酸化劣化を抑制する観点からポリフェニレンエーテルからなる多孔層が表面層を形成することが好ましい。多層多孔膜の全体の厚みは2μm以上60μm未満が好ましく、4μm以上50μm未満がより好ましく、8μm以上40μm未満がさらに好ましい。例えば電池用セパレータとして用いた場合、2μm以上であればハンドリング、操作性に優れ、60μm未満であればセパレータの占有体積が減るため、電池の高容量化の点において有利となる傾向がある。透気度は、10秒/100ml以上1000秒/100ml以下が好ましく、60秒/100ml以上500秒/100ml以下がより好ましく、80秒/100ml以上300秒/100ml以下がさらに好ましい。透気度が10秒/100ml以上では電池用セパレータとして使用した際に自己放電が少なく、1000秒/100ml以下では良好な充放電特性が得られる。突き刺し強度は、2N以上が好ましく、3N以上がより好ましく、4N以上がさらに好ましい。2N以上では、電池捲回時における脱落した活物質等による破膜を抑制出来る。また充放電に伴う電極の膨張収縮によって短絡する懸念が少ない。上限は特に制限がないが、10N以下が熱収縮を低減できる観点から好ましい。
【0020】
多層多孔膜の構成として、ポリフェニレンエーテルからなる多孔層の透気度は、熱可塑性樹脂層の透気度よりも低い方が好ましい。またポリフェニレンエーテルからなる多孔層の最大孔径は、熱可塑性樹脂の最大孔径よりも大きい方が好ましい。本発明の多層多孔膜のポリフェニレンエーテルからなる多孔層と熱可塑性樹脂からなる多孔層の構造を相違させることで電池用セパレータとして用いた場合に、優れた耐酸化性と出力特性を発現しやすい。
本発明の多層多孔膜の製造方法の一例を説明する。
本発明の多層多孔膜は、既存の微多孔膜の製法、繊維の集合体の製法を利用して達成してもよい。また各多孔層を単独で製造した後、その後の工程で積層体としてもよく、積層体とした後に多孔化してもよく、多孔層の上に多孔層を製造しても良い。
【0021】
熱可塑性樹脂からなる多孔層の製造方法としては、例えば以下のような例があげられる。
(1)熱可塑性樹脂に後工程で容易に抽出除去可能な可塑剤を加えて成形を行い、その後可塑剤を適当な溶媒で除去して多孔化する抽出法
(2)結晶性高分子材料を成形した後、構造的に弱い非晶部分を選択的に延伸して微細孔を形成する延伸法
(3)熱可塑性樹脂に充填剤を加えて成形を行い、その後の延伸操作により熱可塑性樹脂と充填剤との界面を剥離させて微細孔を形成する界面剥離法
(4)熱可塑性樹脂を良溶媒に溶解しシート状にキャストした後、貧溶媒に接触させて多孔層を形成する相転換法
電池用セパレータとして用いる場合、緻密で均一な孔構造、高強度などの観点から(1)の抽出法、なかでも(1)の抽出法において、可塑剤抽出前または可塑剤抽出のいずれか、もしくは両方に延伸を併用した製法が好適である。
【0022】
具体的には以下のような(a)〜(d)の工程を含む製法が一例として挙げられる。
(a)ポリオレフィン樹脂、可塑剤、及び酸化防止剤等を窒素雰囲気下で溶融混練する工程。
(b)溶融物を押し出し、シート状に成形して冷却固化する工程。
(c)少なくとも一軸方向へ延伸を行う工程。
(d)可塑剤を抽出する工程。
これらの工程の順序及び回数については特に制限はないが、(a)工程→(b)工程→(c)工程→(d)工程の順序、 (a)工程→(b)工程→(c)工程→(d)工程→(c)工程の順序、或いは(a)工程→(b)工程→(d)工程→(c)工程の順序が好ましく、(a)工程→(b)工程→(c)工程→(d)工程の順序、 (a)工程→(b)工程→(c)工程→(d)工程→(c)工程の順序がさらに好ましい。
【0023】
また、必要に応じて、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色顔料等の公知の添加剤も、製膜性を損なうことなく、そして本発明の要件及び効果を損なわない範囲で混合して使用することが出来る。さらに、ポリオレフィン樹脂以外のポリマー材料や他の有機及び無機材料についても、製膜性を損なうことなく、そして本発明の要件及び効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0024】
ポリフェニレンエーテルからなる多孔層の製造方法としては、以下のような例があげられる。
(1)ポリフェニレンエーテルに充填剤を加えて成形を行い、その後の延伸操作によりポリフェニレンエーテルと充填剤との界面を剥離させて微細孔を形成する界面剥離法
(2)ポリフェニレンエーテルを良溶媒に溶解しシート状にキャストした後、貧溶媒に接触させて多孔層を形成する相転換法
【0025】
ポリフェニレンエーテルからなる多孔層の製造方法として、繊維の集合体の不織布を製造する場合には以下のような例があげられる。
(1) 紡績工程でのカードを使用し、又は空気中に分散した繊維をシート状に積層し、一つ又は二つ以上の結合方法で繊維を結合する乾式法。
(2)抄紙方式で、繊維を水等の分散液に分散し、それらをシート状に集積し、一つ又は二つ以上の結合方法で 繊維を結合する湿式法
(3)ポリフェニレンエーテルの溶融又は溶解によって、紡糸された連続繊維を動くスクリーン上に積層し、一つ又は二つ以上の結合方法で繊維を結合するスパンボンド法
(4)ポリフェニレンエーテル溶液を電極間で形成された静電場中にノズル等を用いて吐出することで、静電気力と溶媒の揮発により、溶液を細化・固化させて極細繊維状物質をコレクターに堆積させることによって、繊維の集合体を得る静電紡糸法
電池用セパレータとして用いる場合、緻密で均一な孔構造が得られる観点から、極細繊維の集合体が好ましく、(4)の静電紡糸法が好適である。
【0026】
ポリフェニレンエーテルからなる多孔層の製造方法の一例として、静電紡糸法にて製造する方法を記載する。
まず最初に、ポリフェニレンエーテルを溶媒に溶解したポリマー溶液を調製する段階について説明する。
溶媒は、常圧での沸点が250℃以下であり、常温で液体である物質で、ポリフェニレンエーテルを溶解可能な溶媒であれば特に制限は無く、例えば、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒が挙げられる。
【0027】
また、ベンゼン、トルエン、o−キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル系溶媒、o−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種類以上の混合溶媒として用いてもかまわない。
ハロゲン化炭化水素系化合物と沸点が140℃以上の低揮発性溶媒を含む混合溶媒がポリフェニレンエーテルの溶解性が良く、低揮発速度のため針汚れ、針詰まりが起こりにくく、長時間安定紡糸することが可能である点から好ましい。
芳香族炭化水素系溶媒と、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドの中から選択される少なくとも1種類の溶媒との混合溶媒であることが溶媒の低毒性かつポリフェニレンエーテルの溶解性がよく、低揮発速度のため針汚れ、針詰まりが起こりにくく、長時間安定紡糸することが可能である点から好ましい。
【0028】
溶媒の誘電率を上げるため、ポリフェニレンエーテルが析出しない程度の量の貧溶媒を混合してもよい。貧溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。
溶液の電気伝導度を上げるために、静電紡糸法の溶液に0.01〜5wt%の有機酸塩又は無機酸塩を含むことが好ましく、より好ましくは0.1〜2wt%の範囲である。例えば、無機酸塩としては塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム等、臭化リチウム、臭化カリウム、フッ化カリウム等の一価の無機塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化カルシウム、フッ化カルシウム等の二価の無機塩、有機酸塩としては、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等のアンモニウム塩が挙げられる。
【0029】
ポリフェニレンエーテル溶液のポリマー濃度としては、用いるポリマー分子量にもよるが、重量平均分子量5×10程度のものを用いた場合、5wt%以上20wt%以下である。
ポリマー濃度が5wt%以上では、繊維構造体を形成することが容易な溶液粘度であり好ましい。また、ポリマー濃度が20wt%以下では得られる繊維の繊維径が細くなり易い溶液粘度であり好ましい。
また、静電紡糸法において、ポリマー溶液をノズルで供給する場合に、溶媒が常圧における沸点が100℃以下の低沸点溶媒成分のみであるとノズル汚れや詰まりが発生しやすく、連続生産時に効率が悪くなる。そこで、溶媒として常圧での沸点が140℃以上の溶媒を20〜100重量%用いると針詰まりや針汚れが起こらず連続安定して極細繊維が生産可能になるので好ましい。より好ましい割合は50〜100重量%である。常圧で沸点が140℃以上の高沸点溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,1,2,2−テトラクロロエタン、o−クロロフェノール、N−メチル−2−ピロリドン、o−キシレン等が挙げられる。
【0030】
次に、前記ポリマー溶液を静電紡糸法にて紡糸する段階について説明する。該溶液を静電場に導入するには、任意の便宜の方法を用いることができる。例えば、図1に示すように、溶液保持槽1に該溶液をいれ、定量ポンプ2により金属製ノズル3を通じて該溶液を任意の流量で押出すと同時に、高電圧発生装置4によりノズル3に高電圧を印加することで、ノズル3と接地されたコレクター5の間に静電場を形成させる。静電場中に押出されたポリマー溶液は溶液内の電荷の反発により引き伸ばされ極細繊維化し、コレクターに捕集される。ノズル3とコレクター5の間に熱可塑性樹脂からなる多孔膜6を配置することで、熱可塑性樹脂からなる多孔膜とポリフェニレンエーテルからなる多孔層の多層多孔膜を直接得ることが可能であり好ましい。
なお、本方法はノズル3とコレクター5との間に静電場を生じさせればよく、コレクターに高電圧を印加させ、ノズル4を接地しても構わない。また、印加する電圧の大きさは5kv以上100kV以下が好ましい。印加電圧が5kV以上だと溶液中の電荷の反発力が繊維化を起すのに十分であり、100kV以下では空気の絶縁破壊が生じにくく好ましい。より好ましい範囲は8〜50kVである。
【0031】
ノズル4とコレクター5の距離は1〜20cmが好ましい。コレクター5上に熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂からなる多孔膜6を配置し、直接多層多孔膜を得る場合には、1cm〜10cmの範囲が好適である。ノズル−コレクター間距離が1cm〜10cmの範囲では溶液が多孔膜に到達する前に、溶媒が完全に揮発しないことがあるので多孔膜との接着性が向上するために好ましい。コレクター5にポリフェニレンエーテル単独の繊維集合体を作成する場合には、5〜20cmの範囲が好ましい。20cmより短いと繊維化可能な静電場を形成させるのに、比較的小さな印加電圧で達成できるために好ましい。
ノズル4の内径は、0.1〜2mmであることが好ましく。生産性と得られる繊維径のバランスを考慮すると、0.5〜1.2mmがより好ましい。
また、ノズルは生産性を上げるためにマルチノズルを用いるのが好ましい。
溶液保持槽1およびノズル2の温度は、溶媒の組み合わせにもよるが、ポリマーが均一に溶解している範囲の温度なら任意に選ぶことができ、好ましくは20〜80℃の範囲である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例を記載する。
実施例中にある各値は以下の方法により求めた。
(1)膜厚
ダイヤルゲージ(尾崎製作所:PEACOCK No.25)にて室温(23℃)にて測定した。
(2)透気度
JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計にて測定した。
ポリフェニレンエーテルからなる多孔層を多層多孔膜より剥離可能な場合は、剥離した後にポリフェニレンエーテルからなる多孔層の透気度を測定した。ポリフェニレンエーテルからなる多孔層を多層多孔膜より剥離不可能な場合は、ポリフェニレンエーテルの良溶媒であり、多層多孔膜の熱可塑性樹脂を溶解しない溶媒を用い、ポリフェニレンエーテルからなる多孔層を溶解、除去した後に、透気度を測定し、多層多孔膜の透気度から差し引いた透気度をポリフェニレンエーテルからなる多孔層の透気度とした。
【0033】
(3)最大孔径
ASTM F−316−86に準拠し、エタノールを使用して測定した。
ポリフェニレンエーテルからなる多孔層を多層多孔膜より剥離可能な場合は、剥離した後にポリフェニレンエーテルからなる多孔層の最大孔径を測定した。ポリフェニレンエーテルからなる多孔層を多層多孔膜より剥離不可能な場合は、走査型電子顕微鏡を用いて表面を撮影して測定した。ポリフェニレンエーテルからなる多孔層が微多孔膜の場合は、孔の長径を孔径とした。測定した孔径の中で最大の孔径を最大孔径とする。ポリフェニレンエーテルからなる多孔層が繊維の集合体である場合には、1視野に数十繊維が観測される倍率で撮影し、4繊維から構成される四角形を孔とみなす。該四角形の内部にさらに四角形が構成される場合は、内部にある四角形を孔とみなす。最小単位の四角形を孔とし、その長径を孔径とする。測定した孔径の中で最大の孔径を最大孔径とする。
【0034】
(4)平均繊維径
走査型電子顕微鏡を用いて1視野に数十繊維が観測される倍率で撮影し、任意の10本の繊維径を測定し、その平均値を平均繊維径Daとした。
(5)突刺強度
カトーテック製KES−G5ハンディー圧縮試験器を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突き刺し速度2mm/secの条件で突き刺し試験を行い、最大突刺荷重(N)を突刺強度とした。
(6)還元粘度
ポリフェニレンエーテルをクロロホルムに0.5g/dlの濃度となるように溶解させ、30℃における粘度をウベローデ粘度管を用いて測定した。
【0035】
(7)耐酸化性評価
a.正極の作製
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)を92.2質量%、導電材としてリン片状グラファイトとアセチレンブラックをそれぞれ2.3質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3.2質量%をN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製する。このスラリーを正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターで塗布し、130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形する。この時、正極の活物質塗布量は250g/m、活物質嵩密度は3.00g/cmになるようにする。
【0036】
b.負極の作製
負極活物質として人造グラファイト96.6質量%、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%とスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス1.7質量%を精製水中に分散させてスラリーを調製する。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形する。この時、負極の活物質塗布量は106g/m、活物質嵩密度は1.35g/cmになるようにする。
c.非水電解液の調製
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを濃度1.0mol/Lとなるように溶解させて調製する。
【0037】
d.電池組立
多層多孔膜を30mmφ,正極及び負極を16mmφの円形に切り出し、正極と負極の活物質面が対向するよう、正極、多層多孔膜、負極の順に重ね、蓋付きステンレス金属製容器に収納する。容器と蓋とは絶縁されており、容器は負極の銅箔と、蓋は正極のアルミ箔と接している。この容器内に前記した非水電解液を注入して密閉する。
室温にて1日放置した後、25℃雰囲気下、2mA(0.33C)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、到達後4.2Vを保持するようにして電流値を2mAから絞り始めるという方法で、合計8時間電池作成後の最初の充電を行う。
続いて2mA(0.33C)の電流値で電池電圧3.0Vまで放電する。
【0038】
e.評価
25℃雰囲気下、6mA(1.0C)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、到達後4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法で、合計3時間充電を行う。次に、4.4V保持するように充電を続けた状態にて70℃雰囲気下で7日間保存を行う。その後、セルを取り出し25℃雰囲気下、6mA(1.0C)の電流値で電池電圧3.0Vまで放電する。
また、この電池より多層多孔膜を取り出し、付着物を取り除くために、ジメトキシエタン、エタノール、及び1規定の塩酸中で各15分間、超音波洗浄を行う。
その後、空気中にて乾燥し、多層多孔膜の正極接触面側の黒色変色具合を目視にて観察し、耐酸化性評価を行う。ここで、黒色変色した割合が面積あたりで3%以下のものを黒色変色無し(◎)と判定し、10%以下のものを黒色変色ほぼ無し(○)と判定し、10%を超えるものを黒色変色有り(×)と判定した。
【0039】
(8)出力特性評価
耐熱性評価における、a.正極の作製、b.負極の作製、c.非水電解液の調製、d.電池組立、と同様の内容を実施し、簡易電池を作製した。
e.評価
25℃雰囲気下、6mA(1.0C)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、到達後4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法で、合計3時間充電を行う。次に、6mA(1.0C)の電流値で電池電圧3.0Vまで放電する。その時の放電容量をA(mAh)とする。次に、6mA(1.0C)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、到達後4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法で、合計3時間充電を行う。続いて、18mA(3.0C)の電流値で電池電圧3.0Vまで放電する。その時の放電容量をB(mAh)とする。1.0C放電時と3.0C放電時の放電容量の比率(B/A)より出力特性を比較した。
出力特性(%)=B/A×100
【0040】
[実施例1]
a.ポリオレフィン微多孔膜の作製
粘度平均分子量200万の超高分子量ポリエチレン12重量%、粘度平均分子量28万の高密度ポリエチレン12重量%、粘度平均分子量15万の直鎖状低密度ポリエチレン16重量%、フタル酸ジオクチル(DOP)42.4重量%、微粉シリカ17.6重量%を混合造粒した後、T−ダイを装着した二軸押出機にて混練・押出し厚さ90μmのシート状に成形した。該成形物からDOPと微粉シリカを抽出除去し微多孔膜とした。
該微多孔膜を2枚重ねてロール延伸機に導き、縦方向に117℃で5.0倍延伸した後、テンターへ導き横方向に115℃で1.9倍延伸し、128℃で5%熱緩和してポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0041】
b.多層多孔膜の作製
還元粘度0.515g/dlのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が10重量部、溶媒として1,1,2,2−テトラクロロエタンが89重量部、添加塩としてテトラブチルアンモニウムブロミドが1重量部を均一な溶液になるまで攪拌し、静電紡糸溶液を調製した。a.で得たポリオレフィン微多孔膜をコレクター5上に配置し、印加電圧が11kV、ノズル3−コレクター5間距離が6cm、吐出量が0.7ml/hr、電圧印加時間が3秒間の条件で静電紡糸を行い、ポリオレフィン多孔膜上にポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)からなる繊維の集合体からなる多孔層を形成した。その後、水、およびエタノールに十分に浸漬し、添加塩であるテトラアンモニウムブロミドを除去、乾燥し多層多孔膜を得た。
【0042】
[実施例2]
実施例1において、還元粘度が0.515g/dlのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)のかわりに、還元粘度が0.54g/dlのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を使用した以外は実施例1と同様にして多層多孔膜を得た。
【0043】
[実施例3]
実施例1において、電圧印加時間を10秒にした以外は実施例1と同様にして多層多孔膜を得た。
【0044】
[実施例4]
粘度平均分子量95万の超高分子量ポリエチレン12質量部、粘度平均分子量27万の高密度ポリエチレン28質量部、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3質量部添加したものをヘンシェルミキサーにて予備混合した。得られた混合物をフィーダーにより二軸同方向スクリュー式押出機フィード口へ供給した。また溶融混練し押し出される全混合物(100質量部)中に占める流動パラフィン量比が60質量部となるように、流動パラフィンを二軸押出機シリンダーへサイドフィードした。続いて、溶融混練物をTダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール間に押出し、厚み1200μmのシート状のポリオレフィン組成物を得た。次に連続して同時二軸テンターへ導き、縦方向に7倍、横方向に7倍に同時二軸延伸を行った。この時同時二軸テンターの設定温度は120℃である。次に塩化メチレン槽に導き、十分に塩化メチレンに浸漬して流動パラフィンを抽出除去した。その後塩化メチレンの乾燥を行った。さらに横テンターに導き横方向に125℃で1.6倍延伸したのち、130℃で12%熱緩和してポリオレフィン微多孔膜を得た。
得られたポリオレフィン微多孔膜を実施例1と同様にしてポリフェニレンエーテルを多層化した。
【0045】
[比較例1]
実施例1において使用したポリオレフィン微多孔膜をポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)で多層化せずに単独で使用した。
【0046】
[比較例2]
ポリフェニレンエーテル(GEプラスチック社製、NOLYL PPO534)が25重量部、N−メチル−2−ピロリドンが75重量部を均一な溶液になるまで攪拌し、塗工溶液を調製した。実施例1において使用したポリオレフィン微多孔膜上にバーコーターを用い、該溶液を厚さ10μmで塗工し多層化した。イソプロピルアルコール中に該多層体を3分間浸漬させた後、乾燥してイソプロピルアルコールを除去して多層多孔膜を得た。
【0047】
[比較例3]
溶媒可溶型ポリイミド(新日本理化社製、リカコートSN−20)にN,N−ジメチルホルムアミドを加え、固形分濃度が17重量部になるように静電紡糸溶液を調製した。実施例1で使用したポリオレフィン微多孔膜をコレクター5上に配置し、印加電圧が13kV、ノズル3−コレクター5間距離が20cm、吐出量が1.0ml/hr、電圧印加時間が10秒間の条件で静電紡糸を行い、ポリオレフィン多孔膜上にポリイミドからなる繊維の集合体からなる多層多孔膜を得た。
実施例1〜4、比較例1〜3で得られた多層多孔膜の特性を表1に示す。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の多層多孔膜は、安全性、出力特性の高い非水系電解液二次電池等に用いられるセパレータ等として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の静電紡糸法で用いる装置の一例である。
【図2】実施例1で得られた多層多孔膜のポリフェニレンエーテル側表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率10000倍)である。
【符号の説明】
【0051】
1.溶液保持槽
2.定量ポンプ
3.金属製ノズル
4.高電圧発生装置
5.コレクター
6.熱可塑性樹脂からなる多孔膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる多孔層とポリフェニレンエーテルからなる多孔層を含む積層体であり、ポリフェニレンエーテルからなる多孔層の透気度が60秒未満/100mlであることを特徴とする多層多孔膜。
【請求項2】
ポリフェニレンエーテルからなる多孔層の透気度が熱可塑性樹脂からなる多孔層の透気度よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の多層多孔膜。
【請求項3】
熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂からなる多孔層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層多孔膜。
【請求項4】
ポリフェニレンエーテルからなる多孔層の最大孔径が0.1μmより大きく20μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多層多孔膜。
【請求項5】
ポリフェニレンエーテルからなる多孔層が、平均繊維径が0.01μm以上10μm以下の極細繊維集合体からなる多孔層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多層多孔膜。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の多層多孔膜からなる非水系電解液二次電池用セパレータ。
【請求項7】
請求項6に記載のセパレータを用いた非水系電解液二次電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−104834(P2009−104834A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273755(P2007−273755)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】