説明

多層容器

【課題】ボイル殺菌処理や高温保管が必要な食品の包装材料として好適なガスバリア性及び透明性を有する多層容器を提供する。
【解決手段】ポリプロピレンを主成分とする層(X)、接着性熱可塑性樹脂からなる接着層(Y)、及びポリアミド樹脂(A)からなるガスバリア層(Z)が内層から外層へこの順に積層された3層以上の層構成を有する多層容器であって、前記ポリアミド樹脂(A)が、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位とアジピン酸単位を85乃至95モル%及びイソフタル酸単位を5乃至15モル%含むジカルボン酸単位とからなるポリアミド樹脂であり、80℃以上100以下の熱水処理をすることを特徴とするポリプロピレンとの多層容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンを主成分とする多層容器に関し、詳しくは、80℃以上100℃以下の熱水浸漬処理後においても透明性及びガスバリア性に優れる多層容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱殺菌処理を必要とされる食品の容器としては、加熱殺菌処理時及び保存時における食品の劣化、変色、褪色を防ぐために缶詰が用いられていた。しかしながら、缶詰を用いた場合においては、酸素や水蒸気等の各種ガスバリア性については高い効果を発現するが、開封前には内容物を視認することができない、電子レンジを用いた加熱処理ができない、充填食品を皿等に盛りつける際に食品を取り出しにくい、使用後の廃棄において重ねることができず廃棄缶詰がかさばり廃棄処理適性に欠けるという問題があった。
【0003】
これに代わる食品保存容器としては、熱可塑性樹脂からなる熱成形容器が挙げられ、広く利用されている。特にポリプロピレン(以下、「PP」と略することがある。)からなる容器は、その融点がボイル殺菌処理やレトルト殺菌処理などの加熱殺菌処理温度よりも高いことから、加熱殺菌処理を必要とする食品の保存容器としても広く利用されている。しかし、PPは防湿性に優れるものの、食品の劣化・変色・褪色の原因となる酸素を透過しやすい性質を有しているため、食品を長期保存するための容器としては性能が不十分である。
【0004】
PPからなる容器で食品の長期保存を可能とする方法としては、中間層として酸素バリア性を持つ熱可塑性樹脂を存在させた多層容器を用いる方法が知られている。ガスバリア層を構成する樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」と略することがある。)が知られている。EVOHは優れた酸素バリア性を持つ樹脂であり、様々な食品を長期保存するための容器に広く利用されているが、バリア樹脂の分子構造中に水酸基を有することから、酸素バリア性の湿度依存性が高い欠点を有する。特に100℃以上の加熱殺菌処理を必要とする食品を収納、保存する場合においては、加熱殺菌処理時に熱水又は水蒸気に一定時間晒されることになるため、EVOHをガスバリア層とした多層容器は加熱殺菌処理により大きく酸素バリア性が低下する。しかも、EVOHは、加熱殺菌処理後においても酸素バリア性が大幅に低下したままであり、経時的に元の酸素バリア性能に回復していくものの完全な回復には長い時間を要するため、その間に大量の酸素透過を許すこととなり、加熱殺菌処理食品の保存性には問題が残る。
【0005】
EVOH以外に酸素バリア性に優れた熱可塑性樹脂としては、ポリメタキシリレンアジパミド(以下、「N−MXD6」と略することがある。)が知られており、ポリオレフィンと組み合わせた多層容器が開示されている(例えば特許文献1を参照)。ポリメタキシリレンアジパミドはメタキシリレンジアミンとアジピン酸とを重縮合させて得られるポリアミド樹脂であり、樹脂の分子構造中に水酸基を有していないことからEVOHよりも湿度依存性が低く、熱水又は水蒸気による加熱殺菌処理時においても酸素バリア性低下が小さいため、容器内部への酸素透過量を低く抑えることができ、加熱殺菌処理食品の保存性を高めることができる。しかしながら、N−MXD6は、PPの熱成形温度である150〜180℃では非常に速く結晶化するため、N−MXD6をガスバリア層として用いた多層容器は、成形時に、N−MXD6層の切断や厚みムラ、白化がみられ、ガスバリア性、透明性等の性能が低下したり、変形したりするという欠点を有する。
【0006】
N−MXD6を中間層としたPP多層容器を得るためにはN−MXD6の結晶化速度を小さくする必要があり、N−MXD6にジカルボン酸成分としてイソフタル酸を共重合させる方法(例えば特許文献2を参照)が開示されている。N−MXD6にイソフタル酸を共重合させて結晶化速度を遅くすることにより、PPとの多層容器の成形性が向上されることが記載されており、またレトルト処理(水蒸気処理)条件において多層容器の白化が抑制されることが記載されている。しかしながら、他の加熱殺菌処理法(たとえば、ボイル処理)における多層容器の白化抑制については、なんら記載はない。
【0007】
N−MXD6の白化を抑制する手段としては、特定の脂肪酸金属塩を添加する方法(例えば特許文献3を参照)、特定のジアミド化合物又はジエステル化合物を添加する方法(例えば特許文献4を参照)が開示されている。これらの添加剤による白化抑制は、水に直接晒される単層フィルムや、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略することがある。)を用いたPET/N−MXD6/PET多層延伸ボトルのような延伸される用途(例えば特許文献5を参照)には効果があることが開示されている。しかしながら、これらの白化抑制処方は30℃〜60℃程度の常温に近い温度条件下における処方であり、80℃以上の熱水浸漬による加熱殺菌処理後の白化抑制効果は満足できるものではない。
また、特定のジアミド化合物又はジエステル化合物とタルクやベンジリデンソルビトール系の結晶化核剤を組み合わせる方法(例えば特許文献6)で、白化抑制にさらなる効果があることが開示されている。しかしながら、上記化合物を添加したMXD6と透湿度の大きいPPを組み合わせた多層容器において、レトルト処理による加熱殺菌処理後の白化抑制効果は満足できるものではない。また、これらの添加剤は0.1%以上添加しないと効果が小さく、0.1%以上添加すると、N−MXD6が粉っぽくなるとともに、多層容器に成形した際に、N−MXD6と他の樹脂層との接着性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平02−125733号公報
【特許文献2】特開2004−160987号公報
【特許文献3】特開平11−315207号公報
【特許文献4】特開2000−248176号公報
【特許文献5】特開2001−199024号公報
【特許文献6】特開2011−26417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、80℃以上100℃以下の熱水処理によるボイル殺菌処理(以下、熱水処理と呼ぶ)や高温保管が必要な食品の包装材料として好適なガスバリア性及び透明性を有する多層容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、熱水処理や高温保管後のガスバリア性及び透明性を兼ね備えた多層容器について鋭意研究を重ねた結果、特定のポリアミド樹脂をガスバリア層に用いることにより、熱水処理によるボイル殺菌処理後においてもガスバリア性及び透明性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、ポリプロピレンを主成分とする層(X)、接着性熱可塑性樹脂からなる接着層(Y)、及びポリアミド樹脂(A)からなるガスバリア層(Z)が内層から外層へこの順に積層された3層以上の層構成を有する多層容器であって、前記ポリアミド樹脂(A)が、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位とアジピン酸単位を85乃至95モル%及びイソフタル酸単位を5乃至15モル%含むジカルボン酸単位とからなるポリアミド樹脂である多層容器
【発明の効果】
【0012】
本発明の多層容器は、80℃以上100℃以下の熱水浸漬によるボイル殺菌処理(以下、熱水処理と呼ぶ)や高温保管が必要な食品の包装材料として好適なガスバリア性及び透明性を有する。したがって、食品を長期保存することができ、しかも熱水処理や高温保管といった熱履歴を加えた後においても透明性が保持されるため内容物を視認することができ、顧客の利便性向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の多層容器は、ポリプロピレンを主成分とする層(以下、「PP層」と略することがある。)(X)、接着性熱可塑性樹脂からなる接着層(Y)、及びガスバリア層(Z)の少なくとも3層が内層から外層へこの順に積層されてなるものである。
前記3層の外側に更に接着層やPP層、あるいはポリアミド6など別の熱可塑性樹脂からなる層が積層されていてもよい。例えば、多層容器に特徴を持たせるためにPP層の内側に、ポリカーボネートや各種イージーピール性樹脂からなる熱可塑性樹脂層を積層することができる。これらに限らず、目的に応じて様々な熱可塑性樹脂層を積層することが可能である。本発明の多層容器は、内層側から外側へPP層/接着層/ガスバリア層/ポリアミドの4層構造やPP層/接着層/ガスバリア層/接着層/PP層の5層構造であることが好ましい。
また、前記3層がその順に積層されていればよく、その層間に中間層が積層されていてもよい。例えば、多層シート及び多層容器製造時にトリミングしてできたトリミングくずを粉砕して、粉砕物を単独で、又はPPや他の熱可塑性樹脂と混合してリサイクル樹脂層として、PP層と接着層との間に中間層として積層することができる。
【0014】
本発明の多層容器を構成するPP層(X)は、ポリプロピレンを主成分とする層であり、ガスバリア層を食品から隔離する役割や、容器に食品を収納後、トップフィルムと接着するためのシーラントとしての役割を有する。ポリプロピレンは公知のものを使用することができる。具体的にはその化学構造から、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダムコポリマー、プロピレン−エチレンブロックコポリマーが挙げられる。
本発明において、「ポリプロピレンを主成分とする」とは、ポリプロピレンを50質量%以上含むことを意味し、好ましくは70質量%以上である。PP層には本発明の効果を損なわない範囲でポリプロピレンの酸化劣化を防止するための酸化防止剤や艶消剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、結晶化核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を加えることができる。また、場合によってはポリプロピレンの物性を改質するためにポリエチレンやエチレン−α−オレフィン共重合体等の熱可塑性樹脂を加えることもできる。
PP層(X)の厚さは特に限定されないが、強度及びコストの観点から、20〜2000μmが好ましく、50〜1000μmがより好ましい。
【0015】
本発明の多層容器を構成する接着層(Y)は、PP層とガスバリア層とを十分な強度で接着する役割を有する。接着層に使用される接着性熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン類等が挙げられる。この中でも、ポリプロピレンを主成分とする酸変性熱可塑性樹脂が、PP層との接着性の面から特に好ましく用いられる。
接着層(Y)の厚さは特に限定されないが、接着性及びコストの観点から、1〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましい。
【0016】
本発明の多層容器を構成するガスバリア層(Z)は、容器外部から進入する酸素を遮断し、食品の酸化劣化を防止する役割を有する。良好なガスバリア性の観点から、ガスバリア層(Z)を構成するポリアミド樹脂(A)の23℃、60%RH環境下における酸素透過係数が0.09ml・mm/m2・day・atm以下であることが好ましく、0.05〜0.09ml・mm/m2・day・atmであることがより好ましい。酸素透過係数は、ASTM D3985に準じて測定することができ、例えばOX−TRAN 2/21(商品名、モコン社製)を使用して測定することができる。
ガスバリア層(Z)の厚さは特に限定されないが、ガスバリア性、透明性及びコストの観点から、1〜400μmが好ましく、5〜150μmがより好ましい。また、本発明の多層容器におけるガスバリア層(Z)の厚みは、ガスバリア性、透明性及びコストの観点から、多層容器の総厚みに対して2〜20%の範囲であることが好ましく、より好ましくは3〜18%であり、さらに好ましくは5〜15%である。
【0017】
本発明の多層容器を構成するガスバリア層(Z)は、ポリアミド樹脂(A)からなり、該ポリアミド樹脂(A)は、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位とアジピン酸単位を85乃至95モル%及びイソフタル酸単位を5乃至15モル%含むジカルボン酸単位とからなる。
ポリアミド樹脂(A)中のジアミン単位は、優れたガスバリア性を発現させる観点から、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むことが好ましく、より好ましくは80モル%以上100モル%以下、特に好ましくは90モル%以上100モル%以下である。メタキシリレンジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる化合物としては、パラキシリレンジアミン等の芳香環を含むジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン等の直鎖脂肪族ジアミン等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
ポリアミド樹脂(A)中のジカルボン酸単位は、アジピン酸単位85〜95モル%及びイソフタル酸単位15〜5モル%を含む。より好ましくは、ポリアミド樹脂(A)中のジカルボン酸単位は、アジピン酸単位88〜93モル%及びイソフタル酸単位12〜7モル%を含むことが好ましく、アジピン酸単位90〜95モル%及びイソフタル酸単位10〜5モル%を含むことがさらに好ましい。
ジカルボン酸単位のうち、アジピン酸単位を85モル%以上含むことにより、ガスバリア性の低下や結晶性の過度の低下を避けることができる。また、イソフタル酸単位を5モル%以上含むことにより、ポリアミド樹脂(A)の非晶性が増加して結晶化速度が低下するため、容器成形時の熱成形性が良好になるとともに、80℃〜100℃の熱水浸漬処理によるボイル殺菌処理や高温保管時の白化の抑制が可能である。
またイソフタル酸単位の含有量が15モル%を超えると、ポリアミド樹脂(A)の重合が、多層容器の成形に必要な溶融粘度まで到達しないため多層容器の作製が困難となり、さらにポリアミド樹脂(A)が結晶性をほとんど示さなくなるため、該ポリアミド樹脂(A)をガスバリア層として用いたPP多層容器は80℃〜100℃の熱水浸漬処理によるボイル殺菌処理や高温保管時の白化が大きくなり好ましくない。
【0019】
本発明において、ポリアミド樹脂(A)は結晶性であり、且つ脱偏光光度法における160℃における結晶化による半結晶化時間(ST(P))が、80秒以上700秒以下であることが好ましく、より好ましくは80秒以上650秒以下の範囲となるポリアミド樹脂である。該ポリアミド樹脂を適度な結晶性とすることで、多層容器を80℃以上100℃以下で熱水処理しても、極端な白化を抑制し、透明性を維持することができる。また前記半結晶化時間を80秒以上に制御することで、多層構造物の深絞り成形等の二次加工時に結晶化による白化や成形不良を抑制する事が出来る。前記半結晶化時間が700秒以下であれば、二次加工性を保持したまま、結晶性が過度に低下するのを防ぐことができ、さらに熱水処理時のポリアミド層の軟化により多層構造物および多層成形品が変形することを抑制できる
【0020】
本発明におけるポリアミド樹脂(A)は、100℃、1時間の乾熱処理前後のDSCによる求めた結晶化度の上昇が1%以下あることが好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。乾熱処理前後のDSCにより求めた結晶化度の上昇が1%を超える場合、熱水処理時に結晶化に伴う白化が発生することとなり好ましくない。
なお、本願発明における乾熱処理とは、熱風乾燥機等で、乾燥熱処理することを指し、必ずしも窒素雰囲気下である必要はない。
【0021】
ポリアミド樹脂(A)は、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分とアジピン酸85〜95モル%及びイソフタル酸15〜5モル%を含むジカルボン酸成分とを重縮合することで得ることができる。重縮合時に分子量調整剤として少量のモノアミンやモノカルボン酸を加えてもよい。
ポリアミド樹脂(A)は、溶融重合法により重縮合した後、さらに固相重合することにより製造されたものであることが好ましい。溶融重縮合法としては、例えばジアミン成分とジカルボン酸成分とからなるナイロン塩を、水の存在下に加圧下で昇温し、加えた水および縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法が挙げられる。また、ジアミン成分を溶融状態のジカルボン酸成分に直接加えて、重縮合する方法を挙げることもできる。この場合、反応系を均一な液状状態に保つために、ジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミド樹脂の融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ重縮合が進められる。
【0022】
固相重合は、溶融重縮合で得られたポリマーを一旦取り出した後に行うことが好ましい。固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱装置よりも、気密性に優れ、高度に酸素とポリアミド樹脂との接触を絶つことができる回分式加熱装置が好ましく、特にタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置およびナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
ポリアミド樹脂の固相重合工程は、例えば、ポリアミド樹脂ペレット同士が融着したり、ポリアミド樹脂ペレットが装置内壁に付着したりしないように、ポリアミド樹脂の結晶化度を高める第一の工程、ポリアミド樹脂の分子量を高める第二の工程、所望の分子量まで固相重合を進めた後にポリアミド樹脂を冷却する第三の工程により進められることが好ましい。第一の工程はポリアミド樹脂のガラス転移温度以下で行うことが好ましい。第二の工程は減圧下でポリアミド樹脂の融点よりも低い温度で行うことが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0024】
ポリアミド樹脂(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、結晶化核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等の任意の添加剤を含有してもよい。
【0025】
また、必要に応じて、非晶性ポリアミド樹脂(B)をポリアミド樹脂(A)に溶融混合して使用することも可能である。具体的な非晶性ポリアミド樹脂(B)は、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(以下、6T/6Iと呼ぶ)であり、テレフタル酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重縮合して得られる共重合体である。ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマーにおいて、6T/6Iの配合比は、50/50〜10/90(モル%)、好ましくは45/55〜15/85(%モル)、さらに好ましくは40/60〜20/80(モル%)である。N−6T/6Iは、ブロック共重合体であってもランダム共重合体であってもよい。N−6T/6Iとしては市販品を用いることができ、例えばノバミッドX21(商品名、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)、シーラPA3426(三井デュポンポリケミカル社製)を用いてもよい。
【0026】
ポリアミド樹脂(A)に非晶性ポリアミド樹脂(B)を溶融混合する場合のポリアミド樹脂(B)の含有量は、(A):(B)が80〜100質量%:20〜0質量%であり、好ましくは85〜100質量%:15〜0質量%である。ポリアミド樹脂(A)の結晶化速度がイソフタル酸単位の導入により遅い場合には、ポリアミド(B)を含有させる必要はない。
また、ポリアミド樹脂(A)における非晶性ポリアミド樹脂(B)の含有量が20質量%以下であれば、ガスバリア性が良好で、加熱殺菌処理後の白化が抑制された容器を得ることができる。
【0027】
前記非晶性ポリアミド(B)は、基本的には従来公知の、水共存下での溶融重縮合法あるいは水不存在下の溶融重縮合法や、これらの溶融重縮合法で得られたポリアミドを更に固相重合する方法などによって製造することが出来る。溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。これらは回分式反応装置から構成されていてもよいし、また連続式反応装置から構成されていてもよい。また溶融重縮合工程と固相重合工程は連続的に運転してもよいし、分割して運転してもよい。
【0028】
ポリアミド樹脂(A)と非晶性ポリアミド樹脂(B)とは、任意の混合方法及び/又は混練方法を適用して調製することができる。混合方法としては、例えば、回転中空容器内にポリアミド樹脂ペレットを投入し混合してもよく、定量フィーダーを用いてホッパーに所定量投入してもよい。混練方法としては、例えば溶融混練が挙げられる。また、ポリアミド樹脂(A)と非晶性ポリアミド樹脂(B)とを混合及び/又は混練して調製してもよい。特に、ドライブレンドし、混合物をホッパーに一括投入して、調製することが特に好ましい。
【0029】
また、ポリアミド樹脂(A)は、熱水処理による殺菌処理後のさらなる白化抑制及びブリードアウトの観点から、炭素数18〜50の脂肪酸金属塩、炭素数8〜30の脂肪酸と炭素数2〜10のジアミンとから得られるジアミド化合物、及び炭素数8〜30の脂肪酸と炭素数2〜10のジオールとから得られるジエステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。またその配合量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜1.0質量部、より好ましくは0.02〜0.8質量部、さらに好ましくは0.02〜0.5質量部含有していてもよい。上記脂肪酸金属塩、ジアミド化合物及びジエステル化合物は、1種類のみを含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0030】
本発明で用いることができる脂肪酸金属塩としては、熱水処理による殺菌処理後の白化抑制効果及びポリアミド樹脂(A)中における均一分散性の観点から、炭素数18〜50、好ましくは炭素数18〜34の脂肪酸金属塩が好ましい。
脂肪酸は側鎖や二重結合があってもよいが、ステアリン酸(炭素数18)、エイコ酸(炭素数20)、ベヘン酸(炭素数22)、モンタン酸(炭素数28)、トリアコンタン酸(炭素数30)などの直鎖飽和脂肪酸が好ましい。脂肪酸と塩を形成する金属に特に制限はないが、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム、バリウム、マグネシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、およびアルミニウム、亜鉛等が例示できる。これらの中でもナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、アルミニウム、または亜鉛が特に好ましい。
脂肪酸金属塩の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム等が例示でき、これらの中でも、白化抑制効果の観点から、ステアリン酸カルシウム、モンタン酸カルシウムが好ましい。上記脂肪酸金属塩は、1種類のみを含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0031】
本発明で用いることができるジアミド化合物としては、熱水処理による殺菌処理後の白化抑制効果及びポリアミド樹脂(A)中における均一分散性の観点から、炭素数8〜30の脂肪酸と炭素数2〜10のジアミンとから得られるジアミド化合物が好ましい。
ジアミド化合物の脂肪酸成分としては、側鎖や二重結合があってもよいが直鎖脂肪酸が好ましく、ステアリン酸(炭素数18)、エイコ酸(炭素数20)、ベヘン酸(炭素数22)、モンタン酸(炭素数28)、トリアコンタン酸(炭素数30)等が例示できる。脂肪酸成分は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。
ジアミド化合物のジアミン成分としては、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサンジアミン、キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が例示できる。ジアミン成分は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。
ジアミド化合物としては、炭素数8〜30の脂肪酸とエチレンジアミンとから得られるジアミド化合物、又はモンタン酸と炭素数2〜10のジアミンとから得られるジアミド化合物が好ましく、ステアリン酸とエチレンジアミンとから得られるジアミド化合物が特に好ましい。ジアミド化合物は1種類のみを含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0032】
本発明で用いることができるジエステル化合物は、熱水処理後の白化抑制効果及びポリアミド樹脂(A)中における均一分散性の観点から、炭素数8〜30の脂肪酸と炭素数2〜10のジオールとから得られるジエステル化合物が好ましい。
ジエステル化合物の脂肪酸成分としては、上記ジアミド化合物の脂肪酸成分と同様である。ジエステル化合物のジオール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、キシリレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が例示できる。ジオール成分は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。
ジエステル化合物としては、炭素数8〜30の脂肪酸とエチレングリコール及び/又は1,3−ブタンジオールからなるジオールとから得られるジエステル化合物が好ましく、主としてモンタン酸とエチレングリコール及び/又は1,3−ブタンジオールからなるジオールとから得られるジエステル化合物が特に好ましい。ジエステル化合物は1種類のみを含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0033】
本発明の多層容器は、80℃以上100℃以下で熱水処理した後の多層容器のヘイズ値(h(a))を、熱水処理前の多層容器のヘイズ値(h(b))で除した値H(H=h(a)/h(b))の値が、1.0以上1.4以下であることが好ましく、1.0以上1.2以下であることがさらに好ましい。
多層容器の熱水処理後のヘイズ値の上昇が上記範囲であれば、内容物を視認することができるため、熱処理後の多層容器の透明性は実用的な範囲となる。
【0034】
本発明の多層容器は、押出成形、押出・吹込み成形等の任意の方法により製造することができる。例えば、3台の押出機、フィードブロック、Tダイ、冷却ロール、巻き取り機等を備えた多層シート製造装置を用い、1台目の押出機からPPを、2台目の押出機から接着性樹脂を、3台目の押出機からガスバリア層(Z)を構成するポリアミド樹脂(A)をそれぞれ押し出し、フィードブロックを介してPP層/接着層/ガスバリア層/接着層/PP層の3種5層構造の多層シートを製造し、これを加熱軟化した後、真空、圧空、又は真空と圧空を併用した熱成形法によってシートを金型に密着させて容器形状に成形し、これをトリミングして容器を得る方法が挙げられる。ここで、熱成形時のシート表面温度としては、賦形性の観点から、130〜200℃の範囲が好ましく、150〜180℃の範囲がより好ましい。なお、多層シート製造装置や容器の成形方法についてはこれらに限定されるものではなく、任意の方法を適用することができる。
【0035】
本発明の多層容器の形状は特に限定されず、例えば、ボトル、カップ、チューブ、トレイ、タッパウェア等の成形容器であってもよく、また、パウチ、スタンディングパウチ、ジッパー式保存袋等の袋状容器であってもよい。また、多層容器がフランジ部分を有する場合には、そのフランジ部分にイージーピール機能を付与するための特殊加工を施してもよい。
【0036】
本発明の多層容器には顧客の購入意欲を高めるために内容物を可視化したい様々な物品を収納、保存することができる。例えば、水産加工品、畜産加工品、飯類、液体食品が挙げられる。例えば、マグロ、カツオ、サケ、マス、サバ、イワシ、サンマ、ニシン、ウナギ、カニ、ホタテ、赤貝、アサリ、カキ、バイ貝、北寄貝、トップシェル、イカ、海苔、ヒジキ、寒天、クキワカメ、昆布等の水煮、油漬、燻製油漬、蒲焼き、トマト漬け等の水産加工品、コンビーフ、牛肉、ソーセージ、ハム、豚肉、鶏肉、鶏卵、うずら卵等の塩漬、油漬、水煮、味付等の畜産加工品、カレー、シチュー、ハッシュドビーフ、パスタソース、調理用ソース等のソース類や洋風スープ、中華スープ、和風スープ等のスープ類等の液体食品、ミカン、桃、パインアップル、サクランボ、アンズ、クリ、ブドウ等や、トマト、コーン、タケノコ、キノコ類等の農産加工品、犬や猫等向けのペットフード食材がある。
【0037】
本発明の多層容器を熱水処理により殺菌処理する方法としては、カゴに入れ一定温度
の熱水槽に一定時間 浸漬したあと、冷水槽にとる湿熱式が挙げられるが、この方法に限定されるものではない。また、殺菌処理温度としては、好ましくは80℃〜100℃の範囲であり、殺菌時間としては好ましくは10〜120分である。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、本実施例において各種測定は以下の方法により行った。
(1)半結晶化時間
脱偏光光度法により測定した。具体的には、ポリマー結晶化速度測定装置(コタキ製作所製、形式:MK701)を使用し、以下の条件で測定した。
試料溶融温度:270℃
試料溶融時間:3分
結晶化油浴温度:160℃
【0039】
(2)DSCによる結晶化度(%)
熱風乾燥機にて、100℃・1時間の乾燥熱処理したポリアミド樹脂(A)及び未処理のポリアミド樹脂(A)を示差走査熱量測定装置((株)島津製作所製、DSC-60)を用いて、昇温速度10℃/分で窒素気流下にDSC測定を行い、測定中の結晶化に起因するピーク温度(結晶化ピーク温度)及び発熱ピーク(熱量(1))と融解に起因するピーク温度(融点)及び吸熱ピーク(熱量(2))から下記式(1)を用いて結晶化度を求めた。なお、結晶融解熱(熱量(3))は151J/gとし、熱量A及びBは絶対値で示される。
結晶化度=((熱量(2))−(熱量(1)))/(熱量(3))×100 (%)・・(1)
【0040】
(3)ガスバリア性
ASTM D3985に準じて測定した。具体的には、酸素透過率測定装置(OX−TRAN 2/21A、商品名、モコン社製)を使用し、ポリアミド樹脂(A)からなるガスバリアフィルムの23℃、60%RH環境下における酸素透過係数(ml・mm/m2・day・atm)を測定した。
【0041】
(4)ヘイズ(Haze)
オートクレーブ(SR−240、商品名、(株)トミー精工製)を用いて単層フィルム、多層容器及び多層パウチを90℃で30分熱水浸漬処理し、熱処理前後の容器側面部を切り出し、JIS K−7105に準じてヘイズを測定した。なお、前記レトルト処理時間には加熱及び冷却時間は含まれない。測定装置は、色彩・濁度測定器(商品名:COH−300A、日本電色工業社製)を使用した。ヘイズ測定箇所における厚さを測定し、厚さ100μmに換算した値とした。ヘイズ値が小さいほど、透明性が高いことを示す。
【0042】
(5)熟成型の成形性評価
プラグアシストを備えた圧空真空成形機(浅野研究所製)を使用して、セラミックヒーター温度:480℃にてシート表面温度を170℃に加熱後、圧空真空成形を行った。得られた熱成型容器の底面、側面を観察し、以下の基準で評価を行った。
○:伸びムラなく、良好な成形品
×:伸びムラによる外観不良を生じる
【0043】
実施例1
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下槽および窒素ガス導入管を備えたジャケット付反応缶に、モル比でアジピン酸(AdA)(旭化成製)が95モル%とイソフタル酸(IPA)(エーアイジーインターナショナル製)が5モル%となる様に投入し、十分窒素置換した後、さらに窒素気流下で170℃まで昇温してジカルボン酸を流動状態とした後、メタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学製)100モル%を撹拌下に滴下した。この間、内温を連続的に245℃まで昇温させ、またメタキシリレンジアミンの滴下とともに留出する水は分縮器および冷却器を通して系外に除いた。メタキシリレンジアミン滴下終了後、内温を連続的に255℃まで昇温し、15分間反応を継続した。その後、反応系内圧を600mmHgまで10分間で連続的に減圧し、その後、40分間反応を継続した。この間、反応温度を260℃まで連続的に昇温させた。反応終了後、反応缶内を窒素ガスにて0.2MPaの圧力を掛けポリマーを重合槽下部のノズルよりストランドとして取出し、水冷後に切断し、ペレット形状のポリマーを得た。
【0044】
次にこのペレットをステンレス製の回転ドラム式の加熱装置に仕込み、5rpmで回転させた。十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下にて反応系内を室温から140℃まで昇温した。反応系内温度が140℃に達した時点で1torr以下まで減圧を行い、更に系内温度を110分間で180℃まで昇温した。系内温度が190℃に達した時点から、同温度にて190分間、固相重合反応を継続した。反応終了後、減圧を終了し窒素気流下にて系内温度を下げ、60℃に達した時点でペレットを取り出すことにより、メタキシリレンジアミン単位とアジピン酸単位95モル%及びイソフタル酸単位5モル%とからなるポリメタキシリレンアジパミド/ポリメタキシリレンイソフタルアミドコポリマー(以下、「N−MXD6/MXDI」と略することがある。)(ポリアミド樹脂(A1))を得た。
【0045】
次に、前記ポリアミド樹脂(A1)を単軸押出機にて押し出し、膜厚50μmのガスバリアフィルムを作製した。ポリアミド樹脂(A1)からなるガスバリアフィルムの160℃における半結晶化時間、結晶化度、23℃・60%RH環境下における酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
3台の押出機、フィードブロック、Tダイ、冷却ロール、巻き取り機等を備えた多層シート製造装置を用い、1台目の押出機からポリプロピレン(日本ポリプロ社製、商品名:ノバテックPP、グレード名:FY6、メルトインデックス:2.5)を260℃で、2台目の押出機から接着性樹脂(三井化学社製、商品名:アドマー、グレード:QB515)を230℃で、3台目の押出機からポリアミド樹脂(A1)を260℃でそれぞれ押し出し、フィードブロックを介してPP層(X層)/接着層(Y層)/ガスバリア層(Z層)/接着層(Y層)/PP層(X層)の3種5層構造の多層シートを製造した。なお、各層の厚みは、425/25/100/25/425(μm)とした。
次いで、プラグアシストを備えた圧空真空成形機を使用して、シート表面温度が170℃に達した時点で熱成形を行い、開口部79mm角×底部63mm×深さ25mm、表面積110cm2、容積100mlの容器を作製した。得られたカップ状容器を90℃で30分熱水浸漬処理し、熱水処理前後の容器側面部ヘイズを測定した。結果を表1に示す。
また、4台の押出機、フィードブロック、Tダイ、冷却ロール、巻き取り機等を備えた多層シート製造装置を用い、1台目の押出機からポリプロピレン(日本ポリプロ社製、商品名:ノバテックPP、グレード名:FY6、メルトインデックス:2.5)を260℃で、2台目の押出機から接着性樹脂(三井化学社製、商品名:アドマー、グレード:QB515)を230℃で、3台目の押出機からポリアミド樹脂(A1)を260℃で、4台目の押出機からポリアミド6樹脂(宇部興産株式会社製 商品名:UBEナイロン6、グレード:1024B)を240℃でそれぞれ押し出し、フィードブロックを介してPP層(X層)/接着層(Y層)/ガスバリア層(Z層)/ポリアミド6層の4種4層構造の多層シートを製造した。なお、各層の厚みは、120/10/30/120/20(μm)とした。
次いで、ヒートシール機を用いて、4方シール形状のPP多層パウチ(縦200mm、横100mm)を作成し、水10ccを入れて、ヒートシールした後、オートクレーブ(トミー精工製SR−240)にて90℃で30分熱水浸漬処理し、熱水処理前後のパウチフィルムのヘイズを測定した。結果を表1に示す。
【0047】
実施例2
メタキシリレンジアミン単位とアジピン酸単位94モル%及びイソフタル酸単位6モル%とからなるN−MXD6/MXDI(ポリアミド樹脂(A2))としたこと以外は、実施例1と同様に、フィルム試作を実施し、160℃における半結晶化時間、結晶化度、23℃・60%RH環境下における酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。また、PP多層カップを成形し、90℃30分熱水浸漬処理し、熱水処理前後の容器側面部及びパウチフィルムのヘイズを測定した。結果を表1に示す。
【0048】
実施例3
メタキシリレンジアミン単位とアジピン酸単位90モル%及びイソフタル酸単位10モル%とからなるN−MXD6/MXDI(ポリアミド樹脂(A3))としたこと以外は、実施例1と同様に、フィルム試作を実施し、160℃における半結晶化時間、結晶化度、23℃・60%RH環境下における酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。また、PP多層カップ及びパウチを成形し、90℃で30分ボイル処理し、ボイル処理前後の容器側面部及びパウチフィルムのヘイズを測定した。結果を表1に示す。
【0049】
実施例4
メタキシリレンジアミン単位とアジピン酸単位85モル%及びイソフタル酸単位15モル%とからなるN−MXD6/MXDI(ポリアミド樹脂(A4))としたこと以外は、実施例1と同様に、フィルム試作を実施し、160℃における半結晶化時間、結晶化度、23℃60%RH環境下における酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。また、PP多層カップ及びパウチを成形し、90℃・30分ボイル処理し、ボイル処理前後の容器側面部及びパウチフィルムのヘイズを測定した。結果を表1に示す。
【0050】
参考例1
メタキシリレンジアミン単位とアジピン酸単位94モル%及びイソフタル酸単位6モル%とからなるN−MXD6/MXDI(ポリアミド樹脂(A2))100質量部に、エチレンビスステアリルアミド(EBS)(商品名:アルフローH−50T、日油(株)製)0.2質量部をドライブレンドした樹脂を37mmφ2軸押出機により、押出温度260℃〜270℃、スクリュー回転数100rpmにて、ストランド状の樹脂を押出し、水冷後、ペレタイズして、ポリアミド樹脂組成物を作成した。このポリアミド樹脂組成物とした以外は、実施例1と同様に、フィルム試作を実施し、160℃における半結晶化時間、結晶化度、23℃60%RH環境下における酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。また、PP多層カップ及びパウチを成形し、90℃30分熱水浸漬処理し、熱水処理前後の容器側面部及びパウチフィルムのヘイズを測定した。結果を表1に示す。
【0051】
比較例1
ポリアミド樹脂(A)の組成比を、モル比でアジピン酸を100モル%とした以外は実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂(A5)を得た。実施例1と同様に、フィルム試作を実施し、160℃における半結晶化時間、結晶化度、23℃60%RH環境下における酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。また、PP多層カップ及びパウチを成形し、90℃で30分熱水浸漬処理し、熱水処理前後の容器側面部及びパウチフィルムのヘイズを測定した。結果を表1に示す。
【0052】
比較例2
メタキシリレンジアミン単位とアジピン酸単位96モル%及びイソフタル酸単位4モル%とからなるN−MXD6/MXDI(ポリアミド樹脂(A6))としたこと以外は、実施例1と同様に、フィルム試作を実施し、160℃における半結晶化時間、結晶化度、23℃60%RH環境下における酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。また、PP多層カップ及びパウチを成形し、90℃30分熱水浸漬処理し、熱水処理前後の容器側面部及びパウチフィルムのヘイズを測定した。結果を表1に示す。
【0053】
比較例3
メタキシリレンジアミン単位とジアミン単位がアジピン酸単位80モル%及びイソフタル酸単位20モル%とからなるN−MXD6/MXDI(ポリアミド樹脂(A7))としたこと以外は、実施例1と同様に、フィルム試作を実施し、160℃における半結晶化時間、結晶化度、23℃60%RH環境下における酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。また、PP多層カップ及びパウチを成形し、90℃で30分熱水浸漬処理し、熱水処理前後の容器側面部及びパウチフィルムのヘイズを測定した。結果を表1に示す。
【0054】
比較例4
実施例2で試作したフィルム、PP多層カップ、パウチを、オートクレーブ(トミー精工製SR−240)にて121℃30分のレトルト処理し、レトルト処理後の容器側面部及びパウチフィルムのヘイズを測定した。結果を表2に示す。
【0055】
比較例5
実施例4で試作したフィルム、PP多層カップ、パウチを、オートクレーブ(トミー精工製SR−240)にて121℃30分のレトルト処理し、レトルト処理後の容器側面部及びパウチフィルムのヘイズを測定した。結果を表2に示す。
【0056】
【表1】

AdA:アジピン酸
IPA:イソフタル酸
MXDA:メタキシレンジアミン
EBS:エチレンビスステアリルアミド
N.D.:PP多層容器成形できないためデータ無し
1)フィルムの厚さ:50μm厚
2)PP多層容器=PP(425μm)/接着層(25μm)/ガスバリア層(100μm)/接着層(25μm)/PP(425μm)のカップ状容器。容器側面についてhazeを測定した。
3)90℃、30分熱水浸漬処理
4) Haze比=(h(a))/(h(b))
5)PP多層パウチ=PP(120μm)/接着層(10μm)/ガスバリア層(30μm)/ポリアミド6層(120μm)
【0057】
【表2】

1)フィルムの厚さ:50μm厚
2)PP多層容器=PP(425μm)/接着層(25μm)/ガスバリア層(100μm)/接着層(25μm)/PP(425μm)容器の側面についてhazeを測定した。
3)121℃、30分加圧熱水処理
4) Haze比=(h(a))/(h(b))
5)PP多層パウチ=PP(120μm)/接着層(10μm)/ガスバリア層(30μm)/ポリアミド6層(120μm)
【0058】
イソフタル酸単位を含まないポリアミド樹脂(A5)を用いた比較例1では、熱水処理前の単層フィルムのヘイズが2%であったが、熱水処理後のフィルムは79%と透明性が悪化した。また、ポリアミド樹脂(A5)は半結晶化時間が短いため、PP多層容器への成形はできなかった。また、イソフタル酸単位が4mol%のポリアミド樹脂(A6)を用いた比較例2は、半結晶化時間は長くなるものの、単層フィルムのヘイズは大きく悪化した。また、PP多層容器やPP多層パウチでの白化抑制は実用的なレベルまで十分改善できていない。
さらに、イソフタル酸単位が20mol%のポリアミド樹脂(A7)の比較例3は、単層フィルムのボイル処理後のヘイズはほとんど変化がなく、透明性は良好であるものの、多層シート成形時に、ポリアミド樹脂(A7)からなるガスバリア層が安定して層を形成できないため、多層容器及び多層パウチ成形ができなかった。一方、本発明であるイソフタル酸単位が5〜15モル%のポリアミド樹脂(A1〜A4)を用いた実施例1〜4では、半結晶化時間が80秒以上700秒以下であり、また、熱水処理後の結晶化度の変化も小さいため、熱水処理後のフィルムのヘイズは、大きく上昇せず、透明性を維持することができた。このように、単層フィルムでのヘイズ変化も小さかったため、多層容器及び多層パウチの熱水処理前後のヘイズ変化は小さく、白化を十分に抑制ができた。また、23℃60%RHでの酸素透過係数の値も、比較例1のイソフタル酸を含まないポリアミド(A5)と比較しても良好な値を示した。
また、本発明であるイソフタル酸単位が5〜15モル%のポリアミド樹脂(A1〜A4)を121℃30分で加圧熱水処理したフィルム、PP多層容器・PP多層パウチではヘイズが悪化した。
一方、本発明のソフタル酸単位が5〜15モル%のポリアミド樹脂(A1〜A4)を本願の熱水処理条件である80〜100℃の熱水浸漬処理を行った場合には、白化抑制剤を添加しなくとも、白化抑制剤を添加した場合(参考例1)と同レベル、あるいはそれ以上の透明性を示した(参考例1)。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の多層容器は、80℃以上100℃以下の熱水処理による殺菌処理後や高温保管後においても、ガスバリア性及び透明性に優れることから食品の保存及び視認が可能である。さらに、本発明のガスバリア層に特定の樹脂を使用することで、白化抑制材を使用せずとも透明性を維持できるため、コストを抑えることが可能である。その結果、顧客の利便性が必要な食品の包装材料として、その工業的価値は高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンを主成分とする層(X)、接着性熱可塑性樹脂からなる接着層(Y)、及びポリアミド樹脂(A)からなるガスバリア層(Z)が内層から外層へこの順に積層された3層以上の層構成を有する多層容器であって、前記ポリアミド樹脂(A)が、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位とアジピン酸単位を85乃至95モル%及びイソフタル酸単位を5乃至15モル%含むジカルボン酸単位とからなるポリアミド樹脂である多層容器。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂(A)の、脱偏光光度法による160℃での結晶化における半結晶化時間(ST(P))が80秒以上700秒以下である、請求項1に記載の多層容器。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂(A)の、100℃、1時間の乾熱処理前後のDSCによる求めた結晶化度の上昇が1%以下である請求項1または2に記載の多層容器。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂(A)の23℃、60%RH環境下における酸素透過係数が0.09ml・mm/m2・day・atm以下である、請求項1乃至3のいずれかに記載の多層容器。
【請求項5】
前記多層容器を80℃以上100℃以下で熱水処理した際のヘイズ値(h(a))と、熱水処理前のヘイズ値(h(b))の比H(=h(a)/h(b))が1.0〜1.40である請求項1乃至4のいずれかに記載の多層容器。
【請求項6】
前記ガスバリア層(Z)の厚みが、多層容器の総厚みに対して2〜20%である、請求項1乃至5のいずれかに記載の多層容器。
【請求項7】
前記ガスバリア層(Z)の外側に他のポリアミドが積層された1乃至6のいずれかに記載の多層容器。
【請求項8】
前記ガスバリア層(Z)の外層側に接着性熱可塑性樹脂からなる接着層(Y)、ポリプロピレンを主成分とする層(X)が内層から外層へこの順に積層された1乃至7のいずれかに記載の多層容器。


【公開番号】特開2012−201412(P2012−201412A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70721(P2011−70721)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】