説明

多層容器

【課題】含水率の低い内容物を収容する多層容器において、効果的に酸素を遮断することができる多層容器を提供する。
【解決手段】含水率の低い内容物(101)を充填する多層容器(100)であり、耐湿性樹脂からなる内層(1)と、ガスバリア性樹脂からなるガスバリア層(2)と、ガスバリア性樹脂と酸素吸収性樹脂とからなる酸素吸収層(3)と、耐湿性樹脂からなる外層(4)と、をそれぞれ内容物(101)が充填される内層(1)側から配置し、ガスバリア層(2)が酸素吸収層(3)よりも内層(1)側に位置し、酸素吸収層(3)の肉厚中心線(β)が、多層容器(100)全体の肉厚中心線(α)よりも内層(1)側寄りに位置することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用油、油脂加工品、塩、コショウなどの調味料、粉薬などの粉末、顆粒などの粉体などの含水率の低い内容物を収容する多層容器に関する。
【背景技術】
【0002】
内容物を容器に充填して容器を長時間放置すると、容器内部に酸素が透過し、内容物が酸化劣化してしまう。このため、近年では、内容物の酸化劣化を防止するために酸素吸収剤を有する樹脂を層として有する多層プラスチック容器が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2010−163193号公報)には、長期間に渡って酸素透過を実質ゼロに保つことのできる容器について開示されている。
【0004】
上記特許文献1では、酸素吸収樹脂層をガスバリア樹脂層でサンドイッチした中間層を、層全体の厚みに対して外側寄りに備えることで内容物の水分によるガスバリア性の低下を防止し、さらに酸素吸収を行わせることにより内部への酸素透過を抑制した容器について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−163193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、酸素吸収樹脂層をガスバリア樹脂層でサンドイッチした中間層を、層全体の厚みに対して外側寄りに備えることで内容物の水分によるガスバリア性の低下を防止している。
【0007】
しかし、上記特許文献1の容器は、含水率の多い内容物を収容することを前提としており、含水率の低い内容物を収容した場合は、容器の外側の方が容器の内側よりも湿度が高くなるため、容器の外側からの湿度の影響により、ガスバリア性が低下すると共に、内部への酸素透過を抑制することができなくなってしまう。また、酸素吸収樹脂層で発生した臭いをガスバリア樹脂層で効果的に遮断することもできず、内容物に臭いが移行してしまうおそれがある。
【0008】
このため、上記特許文献1の容器は、含水率の低い内容物を収容する容器として好適なものではなくなってしまう。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、含水率の低い内容物を収容する多層容器において、効果的に酸素を遮断すると共に内容物への臭いの移行を防止することができる多層容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明は以下の特徴を有することとする。
【0011】
本発明にかかる多層容器は、
含水率の低い内容物を充填する多層容器であって、
耐湿性樹脂からなる内層と、ガスバリア性樹脂からなるガスバリア層と、ガスバリア性樹脂と酸素吸収性樹脂とからなる酸素吸収層と、耐湿性樹脂からなる外層と、をそれぞれ内容物が充填される内層側から配置し、前記ガスバリア層が前記酸素吸収層よりも前記内層側に位置し、
前記酸素吸収層の肉厚中心線が、多層容器全体の肉厚中心線よりも前記内層側寄りに位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、含水率の低い内容物を収容する多層容器において、効果的に酸素を遮断すると共に内容物への臭いの移行を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態のプラスチック容器100の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態のプラスチック容器100の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<プラスチック容器100の概要>
まず、図1を参照しながら、本実施形態のプラスチック容器100の概要について説明する。
【0015】
本実施形態のプラスチック容器100は、含水率の低い内容物101を充填する多層容器100である。本実施形態のプラスチック容器100は、耐湿性樹脂からなる内層1と、ガスバリア性樹脂からなるガスバリア層2と、ガスバリア性樹脂と酸素吸収性樹脂とからなる酸素吸収層3と、耐湿性樹脂からなる外層4と、をそれぞれ内容物101が充填される内層1側から配置し、ガスバリア層2が酸素吸収層3よりも内層1側に位置し、酸素吸収層3の肉厚中心線βが、多層容器100全体の肉厚中心線αよりも内層1側寄りに位置することを特徴とする。
【0016】
本実施形態のプラスチック容器100は、ガスバリア性樹脂と酸素吸収性樹脂とからなる酸素吸収層3の肉厚中心線βが、容器100全体の肉厚中心線αよりも内層1側寄りに位置する。これにより、容器100の外側の湿度の影響を酸素吸収層3が受け難く、その結果、酸素吸収層3のガスバリア性の低下を防止し、効果的に酸素を遮断することができる。また、酸素吸収層3の内層1側にガスバリア層2を有しているため、酸素吸収層3で発生した臭いをガスバリア層2で遮断し、内容物101への臭いの移行を防止することができる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態のプラスチック容器100について詳細に説明する。
【0017】
<プラスチック容器100>
まず、図1を参照しながら、本実施形態のプラスチック容器100の構成例について説明する。
【0018】
本実施形態のプラスチック容器100は、含水率の低い内容物101を充填する容器100であり、図1に示すように、内層1、ガスバリア層2、酸素吸収層3、外層4の4層構造で構成している。なお、本実施形態のプラスチック容器100は、内層1、ガスバリア層2、酸素吸収層3、外層4の間に他の層を介在させることも可能である。本実施形態のプラスチック容器100は、公知のブロー成形、射出成形などの方法で成形することができる。
【0019】
本実施形態のプラスチック容器100に収容する内容物101としては、少量の水分を吸収することによって、風味、品質、外観などが著しく低下し、商品価値を失うものが好適であり、含水率を概ね10重量%以下に維持することが求められるものに好適である。例えば、食用油、油脂加工品、塩、コショウなどの調味料、粉薬などの粉末、顆粒などの粉体などが挙げられる。
【0020】
内層1及び外層4は、耐湿性樹脂で構成する。耐湿性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、密度が0.935g/cm3未満の低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物など適宜公知の樹脂が挙げられる。
【0021】
ガスバリア層2は、ガスバリア性を有する樹脂で構成する。ガスバリア層2は、容器100の外方から進入する酸素や後述する酸素吸収層3で発生する臭いを好適に遮断する観点から酸素透過率の小さい熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。例えば、30℃−60%RHにおける酸素透過率が10(cc・20μm/m2・day・atm)以下の熱可塑性樹脂が好ましく、1.0(cc・20μm/m2・day・atm)以下の熱可塑性樹脂が更に好ましい。この種の熱可塑性樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)又はポリアミドなどが好適に用いられるが、特に、EVOHが好適であり、一般にエチレン含有量が60mol%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化度90%以上にケン化したものが用いられる。EVOHの製造時に用いるビニルエステルとしては、酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。また、本発明の目的が阻害されない範囲であれば、他の共単量体、例えば、プロピレン、ブチレン、イソブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどのα-オレフィン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸又はそのエステル、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物、不飽和スルホン酸又はその塩、アルキルチオール類、N-ビニルピロリドンなどのビニルピロリドン等を共重合することもできる。また、EVOHのビニルエステル成分のケン化度は、好ましくは、90%以上である。ビニルエステル成分のケン化度は、より好ましくは、95%以上であり、さらに好ましくは、98%以上であり、最適には、99%以上である。ケン化度が90%未満では、ガスバリア性、特に、高湿度時のガスバリア性が低下するおそれがあるだけでなく、熱安定性が不十分となり、成形物にゲル・ブツが発生しやすくなるおそれがある。
【0022】
酸素吸収層3は、ガスバリア性樹脂と酸素吸収性樹脂とで構成する。
【0023】
酸素吸収層3を構成するガスバリア性樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)又はポリアミドなどが好ましい。
【0024】
酸素吸収層3を構成する酸素吸収性樹脂としては、公知の酸素吸収性樹脂を用いることができ、例えば、還元鉄、共役ジエン重合体環化物、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂などを用いることができる。本実施形態の酸素吸収層3は、酸素吸収性樹脂を好ましくは5〜50wt%、より好ましくは、5〜15wt%の範囲で配合する。なお、ガスバリア性樹脂に反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂を反応させた混合樹脂組成物を用いることで透明性の高い容器を得ることができる。
【0025】
酸素吸収層3は、酸素吸収性樹脂の酸素吸収性能を向上させる観点から酸化触媒として遷移金属塩が金属原子重量で5000ppm以下の範囲で添加することも可能である。遷移金属塩は、コバルト、鉄、ニッケル、さらには銅、チタン、クロム、マンガン、ルテニウムなどの遷移金属の無機塩、有機塩、または錯塩であり、特にカルボン酸塩、スルホン酸塩などの有機酸塩が好適であり、その具体例としては酢酸塩、ステアリン酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、オクタン酸塩、ネオデカン酸塩などが挙げられる。
【0026】
本実施形態のプラスチック容器100は、酸素吸収層3の肉厚中心線βが、容器100全体の肉厚中心線αよりも内層1側寄りに位置するようにしている。酸素吸収層3は、ガスバリア性樹脂が水分を吸収するとガスバリア性が低下してしまう。このため、容器100の外部から侵入した水分の影響を防止するために、酸素吸収層3が容器100の中央αよりも内層1側に位置するように構成している。これにより、容器100の外部から侵入した水分の影響を受け難くすることができる。その結果、酸素吸収層3を構成するガスバリア性樹脂のガスバリア性の低下を防止し、効果的に酸素を遮断することができる。また、酸素吸収層3の内層1側にガスバリア層2を有しているため、酸素吸収層3で発生した臭いをガスバリア層2で遮断し、内容物101への臭いの移行を防止することができる。なお、本実施形態のプラスチック容器100を構成する内層1、ガスバリア層2、酸素吸収層3、外層4の各層の厚みは、特に限定せず、上述した酸素吸収層3の肉厚中心線βが、容器100全体の肉厚中心線αよりも内層1側よりに位置していれば、任意の厚みで構成することが可能である。
【0027】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0028】
第2の実施形態のプラスチック容器100は、酸素吸収層3の外側にリプロ層5を有して構成する。リプロ層5は、本実施形態のプラスチック容器100をスクラップして得られるスクラップ樹脂で構成する。なお、リプロ層5には、ゼオライトのなどの多孔質体からなる脱臭剤を含めることで、酸素吸収層3から発生する臭気及びリプロ層5自身の臭気を吸着することができる。
【0029】
なお、金属触媒を配合してリプロ層5を構成した場合は、酸素吸収後に臭いを発生することになる。しかし、本実施形態のプラスチック容器100は、リプロ層5の内層1側にガスバリア層2を有しているため、リプロ層5及び酸素吸収層3で発生した臭いをガスバリア層2で遮断し、内容物101への臭いの移行を防止することができる。さらに、リプロ層5の外側にガスバリア性樹脂からなる層を配置することで容器100外部への臭いの移行も防止することができ、外部へ臭いが移行することを防止することが可能となる。
【0030】
また、本実施形態のプラスチック容器100も第1の実施形態と同様に、酸素吸収層3の肉厚中心線βが、容器100全体の肉厚中心線αよりも内層1側寄りに位置するようにしている。これにより、容器100の外部から侵入した水分の影響を酸素吸収層3が受け難くなるため、酸素吸収層3を構成するガスバリア性樹脂のガスバリア性の低下を防止し、効果的に酸素を遮断することができる。なお、本実施形態のプラスチック容器100を構成する内層1、ガスバリア層2、酸素吸収層3、リプロ層5、外層4の各層の厚みは、特に限定せず、上述した酸素吸収層3の肉厚中心線βが、容器100全体の肉厚中心線αよりも内層1側よりに位置していれば、任意の厚みで構成することが可能である。
【0031】
なお、上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0032】
例えば、本実施形態のプラスチック容器100の形状は、特に限定せず、任意の形状で構成することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
100 プラスチック容器(多層容器)
1 内層
2 ガスバリア層
3 酸素吸収層
4 外層
5 リプロ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水率の低い内容物を充填する多層容器であって、
耐湿性樹脂からなる内層と、ガスバリア性樹脂からなるガスバリア層と、ガスバリア性樹脂と酸素吸収性樹脂とからなる酸素吸収層と、耐湿性樹脂からなる外層と、をそれぞれ内容物が充填される内層側から配置し、前記ガスバリア層が前記酸素吸収層よりも前記内層側に位置し、
前記酸素吸収層の肉厚中心線が、多層容器全体の肉厚中心線よりも前記内層側寄りに位置することを特徴とする多層容器。
【請求項2】
前記酸素吸収層の外側にリプロ層を備えることを特徴とする請求項1記載の多層容器。
【請求項3】
前記リプロ層は、脱臭剤を含むことを特徴とする請求項2記載の多層容器。
【請求項4】
前記リプロ層の外側にガスバリア性樹脂からなる層を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の多層容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−49483(P2013−49483A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189872(P2011−189872)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】