説明

多層射出延伸ブロー容器

【課題】従来のポリプロピレン樹脂層とバリア樹脂層を含む多層プリフォーム技術における延伸ブロー時に延伸むら等を生じることがなく、耐熱性、バリア性に優れた多層射出延伸ブロー容器の提供。
【解決手段】少なくとも2種3層以上の層構成からなる多層容器において、中間層がバリア性樹脂からなり、中間層に接する層が、MFRppが0.5〜200g/10分、コモノマーから誘導される構成単位が0〜10モル%、分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜8のプロピレン系重合体50〜98重量%とMFRcmpが10〜500g/10分、MFRcmp/MFRppが1以上、不飽和カルボン酸およびその誘導体に由来する構成単位が0.1重量%以上の変性プロピレン重合体2〜50重量%とを含有するプロピレン樹脂組成物からなることを特徴とする射出延伸ブロー容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層射出延伸ブロー容器及びそれに用いる多層射出延伸ブロー用組成物に関し、詳しくは、耐熱性及びバリア性に優れた多層射出延伸ブロー容器及びそれに用いる多層射出延伸ブロー用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
射出延伸ブロー成形によって得られる容器は、ダイレクトブロー成形による容器に比べてより剛性、透明性、耐衝撃性に優れることが知られている。かかる射出延伸ブロー成形とは、一般にまずプリフォームと呼ばれる射出成形品を得て、その次にそのプリフォームを加熱・延伸ブロー成形することにより成形品を得る方法をいう。
成形材料としてはポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂やポリプロピレン系樹脂が挙げられ、なかでもポリエチレンテレフタレート樹脂はその成形性、透明性、ガスバリア性、衛生性に優れるため各種飲料容器や調味料などの食品容器を中心に多用されている。一方、ポリプロピレン系樹脂は一般に安価で、その優れた諸物性から容器類をはじめ各種用途に広く用いられているものの、前述の樹脂に比べガスバリア性に劣るため、食品容器にはほとんど使用されていない。
【0003】
ポリプロピレン系樹脂を用いた射出延伸ブロー容器のバリア性改善のためにはバリア樹脂を用いた多層プリフォームの使用やコーティング等の工夫が図られてきているものの、バリア層を中間層にした2種3層プリフォームを用いた場合には、延伸ブロー時の剥離の問題や接着層を用いた3種5層以上の構成では均一な層構成のプリフォームを成形することが困難であり、延伸ブロー時に延伸むらを生じ外観に劣るという問題を有していた。
このような問題を解決する方法として、ポリプロピレン層に無水マレイン酸変性ポリプロピレン等からなる接着性樹脂を添加し、バリア樹脂のエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)層との接着強度を改善する技術(例えば、特許文献1参照。)が開示されているが、充分な接着強度得るためには高価な接着性樹脂を多量に添加する必要があった。また、ポリプロピレン層にホウ素含有基およびボロン酸基を含有する熱可塑性樹脂を添加する技術(例えば、特許文献2参照。)が開示されているが、このような熱可塑性樹脂は高価な物であった。
【特許文献1】特開昭55−139228号公報
【特許文献2】特開2002−370323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来のポリプロピレン樹脂層とバリア樹脂層を含む多層プリフォーム技術の有する問題点を克服し、耐熱性、バリア性に優れた多層射出延伸ブロー容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、特定のポリプロピレン系樹脂に特定の変性プロピレン重合体を配合したプロピレン樹脂組成物からなる層をバリア性樹脂層に接するようにすることにより、2種3層以上の層構成からなる多層容器においても、耐熱性、バリア性に優れた多層射出延伸ブロー容器が得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、少なくとも2種3層以上の層構成からなる多層容器において、中間層がバリア性樹脂からなり、中間層に接する層が下記(A)プロピレン系重合体と下記(B)変性プロピレン重合体とを含有するプロピレン樹脂組成物からなることを特徴とする射出延伸ブロー容器が提供される。
(A)下記特性(a−1)〜(a−3)を有するプロピレン単独重合体又はプロピレンとエチレン及び/または炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体であるプロピレン系重合体:50〜98重量%
(a−1)メルトフローレート(MFRpp)が0.5〜200g/10分
(a−2)プロピレンから誘導される構成単位が100〜90モル%、エチレン及び炭素数4〜20のα−オレフィンからなる群より選ばれるコモノマーから誘導される構成単位が0〜10モル%
(a−3)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜8
(B)下記特性(b−1)〜(b−3)を有する変性プロピレン重合体:2〜50重量%
(b−1)メルトフローレート(MFRcmp)が10〜500g/10分
(b−2)MFRcmp/MFRppが1以上
(b−3)不飽和カルボン酸およびその誘導体に由来する構成単位が0.1重量%以上
【0007】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、中間層のバリア性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体であることを特徴とする射出延伸ブロー容器が提供される。
【0008】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、中間層の厚みが全体の3〜20%であることを特徴とする射出延伸ブロー容器が提供される。
【0009】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、プロピレン樹脂組成物がプロピレン系重合体の粒状物と変性プロピレン重合体の粒状物との混合物であることを特徴とする射出延伸ブロー容器が提供される。
【0010】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、(A)プロピレン系重合体がメタロセン触媒で重合された重合体であることを特徴とする射出延伸ブロー容器が提供される。
【0011】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、プロピレン樹脂組成物におけるプロピレン系重合体(A)と変性プロピレン重合体(B)の合計量に対する変性プロピレン重合体(B)の含有量(X:重量%)と、中間層に接するプロピレン樹脂組成物からなる層における中間層側近傍の(B)変性プロピレン重合体含有量(X:重量%)とが、X>Xであることを特徴とする射出延伸ブロー容器が提供される。
【0012】
また、本発明の第7の発明によれば、下記(A)プロピレン系重合体と下記(B)変性プロピレンとを含有するプロピレン樹脂組成物からなることを特徴とする多層射出延伸ブロー用組成物が提供される。
(A)下記特性(a−1)〜(a−3)を有するプロピレン単独重合体又はプロピレンとエチレン及び/または炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体であるプロピレン系重合体:50〜98重量%
(a−1)メルトフローレート(MFRpp)が0.5〜200g/10分
(a−2)プロピレンから誘導される構成単位が100〜90モル%、エチレン及び炭素数4〜20のα−オレフィンからなる群より選ばれるコモノマーから誘導される構成単位が0〜10モル%
(a−3)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4
(B)下記特性(b−1)〜(b−3)を有する変性プロピレン重合体:2〜50重量%
(b−1)メルトフローレート(MFRcmp)が10〜500g/10分
(b−2)MFRcmp/MFRppが1以上
(b−3)不飽和カルボン酸およびその誘導体に由来する構成単位が0.1%以上
【0013】
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、(A)プロピレン系重合体がメタロセン触媒で重合された重合体であることを特徴とする射出延伸ブロー用組成物が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポリプロピレン樹脂層とバリア樹脂層とのを含む2種3層以上の多層ブロー容器においても、延伸ブロー時に延伸むら等を生じることがなく、耐熱性、バリア性に優れた多層射出延伸ブロー容器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、少なくとも2種3層以上の層構成からなる多層容器において、中間層がバリア性樹脂からなり、中間層に接する層が(A)プロピレン系重合体と(B)変性プロピレンとを含有するプロピレン樹脂組成物からなる射出延伸ブロー容器及びそれに用いる樹脂組成物である。以下、各構成成分等について詳細に説明する。
【0016】
[I]バリア性樹脂層に接する層
1.プロピレン樹脂組成物の構成成分
(1)プロピレン系重合体(A)
本発明のプロピレン樹脂組成物に用いる(A)プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、又は、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体が用いられ、下記の特性(a−1)〜(a−3)を有している共重合体である。
プロピレンと共重合されるコモノマーのエチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等を挙げることができる。
【0017】
(a−1)メルトフローレート
本発明で用いるプロピレン系重合体のメルトフローレート(MFRpp)は、0.5〜200g/10分であり、好ましくは2〜100g/10分であり、より好ましくは5〜50g/10分である。MFRppが上記範囲を上回ると容器としての衝撃強度が不足する傾向があり、上記範囲を下回るとプリフォーム成形時に流動不良となり易く、延伸ブロー性も悪化する。
ここで、MFRは、JIS−K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定される値である。
【0018】
(a−2)構成単位量
本発明で用いるプロピレン系重合体のプロピレンから誘導される構成単位は、100〜90モル%であり、好ましくは97〜90モル%であり、より好ましくは97〜90モル%である。また、エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構成単位は、0〜10モル%であり、好ましくは0.5〜7モル%であり、より好ましくは1.0〜5モル%である。
コモノマーの構成単位が上記範囲を超過する場合には、剛性が大きく低下してしまい、容器としての座屈強度等が損なわれてしまう。コモノマーから得られる構成単位が上記範囲内であればプロピレン・エチレン・ブテン−1ターポリマーの如く複数のα−オレフィンを用いてもよい。
プロピレン系重合体中のプロピレンから得られる構成単位、及び、エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構成単位量は、13C−NMR(核磁気共鳴法)を用いて測定される値である。具体的には、日本電子社製FT−NMRの270MHzの装置により測定される値である。
【0019】
(a−3)分子量分布(Mw/Mn)
本発明で用いるプロピレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、下限が1.5、好ましくは2.0、より好ましくは2.5であり、上限が8、好ましくは7、より好ましくは4である。分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲未満であると成形性が不良となり、また、上記範囲を超過すると透明性が悪化する。さらに接着強度が劣る傾向がある。
ここで、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定して得られた、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で求める。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である、F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000を用い、各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS : K=1.38×10−4、α=0.7
PP : K=1.03×10−4、α=0.78
なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図1のように行う。
【0020】
本発明で用いるプロピレン系重合体は、上記特性を有するものであれば、その製造方法は特に限定されないが、下記の触媒、重合法を挙げることができる。
(i)触媒
プロピレン系重合体の製造に用いる触媒は、特に制限はなく、三塩化チタン触媒、塩化マグネシウム担持四塩化チタン触媒、メタロセン触媒等が使用可能であるが、接着性、透明性、臭気等の良好なメタロセン触媒が好ましい。
(ii)重合
プロピレン系重合体の製造は、プロピレン単独、或いは、プロピレンとエチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンとの混合物を接触させることにより行なわれる。共重合の場合は、反応系中の各モノマーの量比は経時的に一定である必要はなく、各モノマーを一定の混合比で供給することも便利であるし、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。また、共重合反応比を考慮してモノマーのいずれかを分割添加することもできる。
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率良く接触するならば、あらゆる様式の方法を採用することができる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずにプロピレンを溶媒として用いるスラリー法、溶液重合法或いは実質的に液体溶媒を用いずに各モノマーを実質的にガス状に保つ気相法等を採用することができる。また、連続重合、回分式重合にも適用される。スラリー重合の場合には、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独或いは混合物を用いることができる。
重合条件としては、重合温度が−78〜160℃、好ましくは0〜150℃であり、その時の分子量調節剤として補助的に水素を用いることができる。また、重合圧力は0〜90kg/cm・G、好ましくは0〜60kg/cm・G、特に好ましくは1〜50kg/cm・Gが適当である。
【0021】
本発明のプロピレン系重合体には、他の付加的成分(任意成分)を本発明の効果を著しく損なわない範囲で配合することもできる。この付加的成分としては、通常のポリプロピレン樹脂用配合剤として使用される核剤、フェノール系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、分散剤、無機顔料、有機顔料、金属不活性剤、過酸化物、充填剤、及び、本発明に使用する以外の樹脂、エチレン・プロピレン系ゴム、エチレン・ブテン系ゴム、エチレン・ヘキセン系ゴム、エチレン・オクテン系ゴム等を挙げることができる。上記核剤の具体例としては、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸ナトリウム、タルク、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール等のソルビトール系化合物、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸アルミニウム、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸と炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸リチウム塩混合物(旭電化(株)製:商品名NA21)等を挙げることができる。
【0022】
本発明で用いるプロピレン系重合体は、一般的に酸化防止剤、中和剤等の添加剤及び顔料を配合して、混合、溶融、混練することによりペレット化して用いることができる。上記混合、溶融、混練は、通常、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、一軸又は二軸の混練押出機にて実施することができる。これらの中でも一軸又は二軸の混練押出機により混合或いは溶融混練を行なうことで得られるプロピレン系重合体の粒状物を使用することが好ましい。
粒状物の平均粒径は、後述する変性プロピレン系重合体の平均粒径にもよるが、0.1〜10mmが好ましく、より好ましくは0.2〜5mm程度である。ここで、平均粒径とは粒状物1ヶ毎の最大径をノギスで測定した粒状物30ヶの平均の値である。
【0023】
(2)変性プロピレン重合体(B)
本発明のプロピレン樹脂組成物で用いる(B)変性プロピレン重合体は、ポリプロピレン系樹脂を単独で、又は複数を併用して、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性することにより得られ、下記の特性(b−1)〜(b−3)を有する重合体である。
【0024】
本発明で用いる変性プロピレン重合体の製造には、常用されている任意の方法を用いることができる。例えば、ポリプロピレンの有機溶剤溶液に不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び必要な場合にはラジカル発生剤を加え、通常60〜350℃、好ましくは80〜190℃の温度で、通常0.5〜15時間、好ましくは1〜10時間反応させることにより行う溶液変性法;押出機等を使用して、ポリプロピレンと不飽和カルボン酸又はその酸無水物とをポリプロピレン樹脂の融点以上、例えば170〜280℃、で溶融混練し、通常0.5〜10分間、反応させる溶融変性法などが挙げられる。
本発明の変性プロピレン系重合体は、一軸又は二軸の混練押出機にて製造する方法が好ましい。一軸又は二軸の混練押出機により混合或いは溶融混練を行なうことで得られる変性プロピレン系重合体の粒状物は、プロピレン樹脂組成物の製造に当たっては、(A)プロピレン系重合体の粒状物と共に使用することが好ましい。粒状物の平均粒径は、0.1〜10mmが好ましく、より好ましくは0.2〜5mm程度である。
【0025】
ポリプロピレンの変性に用いる不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、及びエンドシス−ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸等、並びにそれらの酸無水物が挙げられる。これらは1種を用いても複数種を併用してもよい。これらのうち、マレイン酸又はマレイン酸無水物を用いるのが好ましい。
【0026】
(b−1)メルトフローレート
本発明で用いる変性プロピレン重合体のメルトフローレート(MFRcmp)は、10〜500g/10分であり、好ましくは20〜400g/10分であり、より好ましくは50〜350g/10分である。MFRcmpが上記範囲を上回ると容器としての衝撃強度が不足する傾向があり、上記範囲を下回ると接着性が悪化する。
ここで、MFRcmpは、JIS−K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定される値である。
【0027】
(b−2)MFRcmp/MFRpp
本発明で用いる(B)変性プロピレン重合体のMFRcmpと(A)プロピレン重合体のMFRppとの比(MFRcmp/MFRpp)は、1以上であり、好ましくは3以上であり、より好ましくは5〜40である。MFRcmp/MFRppが1未満であると接着性が低下し好ましくない。MFRcmp/MFRppを1以上にすることによってブレンド物中の変性プロピレン重合体を射出成形時の剪断によって、中間層に接する層の表層すなわち中間層近傍に偏在させることができ、加えた変性プロピレン割合の効果以上に中間層との接着性を高めることができる。
中間層近傍の変性プロピレン重合体量は、射出成形されたプリフォームからミクロトームを用いて切削採取したサンプルの赤外分光分析により測定される不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来する構成単位量から計算される。
【0028】
(b−3)不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来する構成単位
本発明の変性プロピレン重合体は、その不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来する構成単位が0.1重量%以上であり、好ましくは0.5〜8.0重量%以上であり、より好ましくは1.0〜6.0重量%である。不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来する構成単位が0.1重量%未満では中間層との接着性が悪化する。
【0029】
不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来する構成単位量の測定は、赤外分光光度法により、前もって作成された検量線から求めることが出来る。具体的な方法は次の通りである。
すなわち、先ず、圧縮成形機にて厚さ0.1〜0.4mmのプレスサンプルを作成する。次に、フーリエ変換型赤外分光光度計にてプレスサンプルの2000〜1600cm−1のスペクトルを測定する。得られたスペクトルに、1950cm−1と1665cm−1との間でベースラインを引き、1827〜1665cm−1の間のピーク面積Sを算出する。得られたピーク面積Sを使用し、不飽和カルボン酸またはその酸無水物に由来する構成単位の含有量Xmを次の計算式より求める。
Xm=k・S/t・ρ
(ここで、kは不飽和カルボン酸を含有するポリオレフィンのアルキルエステル化物のNMR定量値を元に求められた係数、t(mm)はサンプルの厚さ、ρはサンプルの密度(g/cm)を表す。)
【0030】
なお、変性ポリプロピレン重合体は、一種類の変性剤により変性されたものであっても異種の変性剤により変性されたものとの混合物であってもよく、さらに、未変性の同種のポリプロピレンとの混合物であってもよい。ただし、変性ポリプロピレン重合体が未変性の同種のポリプロピレンとの混合物の場合は、変性ポリプロピレン重合体全体に占める不飽和カルボン酸又はその酸無水物由来の構成単位の含有量は、変性ポリプロピレンのみからなるものの場合と同じく、通常0.1重量%以上であり、好ましくは0.5〜8.0重量%、特に1.0〜6.0重量%である。
【0031】
(3)プロピレン樹脂組成物
本発明の多層容器のバリア性樹脂層に接する層に用いるプロピレン樹脂組成物は、上記(A)プロピレン系重合体と(B)変性プロピレン重合体を含有する組成物である。プロピレン樹脂組成物中の(A)プロピレン系重合体の組成割合は、50〜98重量%であり、好ましくは60〜96重量%であり、より好ましくは70〜95重量%である。一方、変性プロピレン系重合体の組成割合は、2〜50重量%であり、好ましくは4〜40重量%であり、より好ましくは5〜30重量%である。変性プロピレン系重合体が50重量%を超えると容器が非常に高価なものになり、2重量%未満であると充分な接着性が得られない。
【0032】
なお、プロピレン樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で核剤、フェノール系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、分散剤、無機顔料、有機顔料、金属不活性剤、過酸化物、充填剤、及び、本発明に使用する以外の樹脂、エチレン・プロピレン系ゴム、エチレン・ブテン系ゴム、エチレン・ヘキセン系ゴム、エチレン・オクテン系ゴムなどの公知の配合剤を目的に応じて配合することができる。
【0033】
上記プロピレン樹脂組成物は、(A)プロピレン系重合体と(B)変性プロピレン系重合体とを溶融混練し押出し機から押出された溶融樹脂を裁断して得られる粒状物を用いることができ、(A)プロピレン系重合体を溶融混練し押出し機から押出された溶融樹脂を裁断して得られるプロピレン系重合体の粒状物と(B)変性プロピレン系重合体を溶融混練し押出し機から押出された溶融樹脂を裁断して得られる変性プロピレン系重合体の粒状物との混合物を用いることもできる。
【0034】
上述のように、本発明で用いる変性プロピレン重合体のMFRcmpとプロピレン重合体のMFRppとの比(MFRcmp/MFRpp)を1以上にし、プロピレン系重合体を溶融混練し押出し機から押出された溶融樹脂を裁断して得られるプロピレン系重合体の粒状物と変性プロピレン系重合体を溶融混練し押出し機から押出された溶融樹脂を裁断して得られる変性プロピレン系重合体の粒状物との混合物を使用することにより、変性プロピレン重合体成分をバリア層近傍に偏在させることができ、接着性を向上させられる点で好ましい。
【0035】
[II]バリア性樹脂層
本発明の多層ブロー容器において、バリア製樹脂層に用いるガスバリア性樹脂としては、代表的には、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0036】
上記のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂は、通常、エチレン−酢酸ビニル共重合体を鹸化して得られる。本発明においては、エチレン含有量が20〜50モル%で、鹸化度が95%以上のものが好ましい。
【0037】
上記のポリアミド樹脂としては、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムの重合体、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸の重合体が挙げられる。
また、上記の他、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、アジピン酸、スペリン酸、セバシン酸などの脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸単位との重縮合体およびこれらの共重合体が挙げられる。
【0038】
上記のポリアミド樹脂の具体例としては、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6等が挙げられる。これらの中では、ガスバリア性の観点から、ナイロン6又はナイロンMXD6が好ましい。
【0039】
上記の飽和ポリエステル樹脂としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール、ビスフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオール等のジオール単位と、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸単位との重縮合体が挙げられる。これらは、熱可塑性を示す限り、少量のトリオールやトリカンルボン酸などで変性されていてもよい。
【0040】
飽和ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート共重合体などが挙げられ。これらの中では、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0041】
上記バリア性樹脂の中では、ガスバリア性と延伸ブロー成形適性の理由からEVOHが好ましい。
【0042】
[III]射出延伸ブロー容器の製造
(1)構成樹脂の配合・溶融・混練
本発明の射出延伸ブロー容器の製造においては、まずバリア層に接するプロピレン樹脂組成物を構成するプロピレン系重合体の粒状物を製造する。プロピレン系重合体は、一般的に酸化防止剤、中和剤等の添加剤及び顔料を配合して、混合、溶融、混練することによりペレット化することができる。上記混合、溶融、混練は、通常、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、一軸又は二軸の混練押出機にて実施することができる。これらの中でも一軸又は二軸の混練押出機により混合或いは溶融混練を行なうことが好ましい。
【0043】
(2)プロピレン樹脂組成物の製造
次に、上記のようにしてプロピレン系重合体を溶融混練し押出し機から押出された溶融樹脂を裁断して得られるプロピレン系重合体の粒状物と変性プロピレン重合体を溶融混練し押出し機から押出された溶融樹脂を裁断して得られる変性プロピレン系重合体の粒状物とを混合する。上述のプロピレン系重合体と変性プロピレン重合体を選択し、この粒状物の混合物を使用することで、変性プロピレン重合体成分をバリア層近傍に偏在させることができる。
すなわち、中間層に接するプロピレン樹脂組成物からなる層における中間層側近傍の(B)変性プロピレン重合体含有量(X:重量%)は、プロピレン樹脂組成物におけるプロピレン系重合体(A)と変性プロピレン重合体(B)の合計量に対する変性プロピレン重合体(B)の含有量(X:重量%)よりその割合が高くなり、中間層との接着性が改善される。
ここで、中間層に接するプロピレン樹脂組成物からなる層における中間層側近傍の(B)変性プロピレン重合体含有量(X:重量%)は、好ましくはXより大きく、より好ましくはX>1.2×X、特に好ましくX>1.5×Xである。
なお本発明において中間層側近傍とは、中間層に接するプロピレン樹脂組成物からなる層を厚さ方向に約3等分したうちの中間層に接する部分をいう。
【0044】
(3)多層容器の製造
本発明の多層射出延伸ブロー容器は、上記プロピレン樹脂組成物のペレットとバリア性樹脂を用い、公知の方法に従った射出延伸ブロー成形により製造することができる。
この方法は、射出成形により有底筒状の所謂プリフォームを先ず製造し、次工程で該プリフォームを金型内に挿入し、高圧空気を吹き込み所定の容器にブローアップして賦形するものであるが、プリフォーム成形工程とブローアップ工程が分離しプリフォームを再加熱するコールドパリソン法とプリフォーム成形工程とブローアップ工程が分離せずに同時に行うホットパリソン法が挙げられる。本発明においては、いずれの方法を用いても良いが、好ましくはコールドパリソン法で製造する方が品質面、生産性の面でより好ましい。
通常、プリフォーム延伸時の縦方向の倍率は、1.5倍以上、好ましくは2〜5倍の範囲、横方向の倍率は、1.5倍以上、好ましくは2〜10倍の範囲で、2軸延伸し、縦/横の延伸比は1〜5倍とすることが透明性、強度の観点から好ましい。
【0045】
(3)多層容器の層構成
本発明の多層射出延伸ブロー容器は、少なくとも2種3層以上の層構成からなる多層容器で、バリア性樹脂からなるバリア層と上記のプロピレン樹脂組成物層が接している多層容器であれば、その層構成に特に制限はない。例えば、中間層にバリア層を用い、両表層にプロピレン樹脂組成物層を用いた2種3層、中間層にバリア層、中間層に接する層に上記ポリプロピレン樹脂組成物、表層にポリプロピレン層を用いた3種5層の容器であっても良い。
【0046】
本発明の多層射出延伸ブロー容器における中間層の厚みは、全体の3〜20%が好ましく、より好ましくは3〜15%である。中間層の厚みが全体の3%未満であるとガスバリア性が充分でなくであり、20%を超えると容器が高価になり延伸ブロー成形性も悪化する。
【0047】
[IV]射出延伸ブロー容器の用途
本発明の多層射出延伸ブロー容器の用途としては、ミネラルウオーター、お茶等の各種非炭酸系の飲料や食品容器、更には、シャンプー、リンスなどのヘアケア容器、各種化粧品容器、家庭用洗剤容器、トイレタリー製品容器、その他薬品容器、輸液ボトルなどの医療容器などが挙げられるが、耐熱性とバリア性といった特徴から飲料や食品向容器がより好適である。
【実施例】
【0048】
以下に示す実施例及び比較例によって、本発明を更に具体的に説明する。
なお、実施例、比較例で用いた評価方法は以下の通りである。
(1)接着性:容器胴部を押しつぶし、内外層と中間層の剥離状況を目視で確認した。
(2)酸素透過性:容器胴部から切り出した3cm×3cmの試験片を用いて、20℃、65RHの条件で、JIS−K7126に準拠して酸素透過度を測定した。
(3)容器耐熱性:空容器を90℃の水中に10min浸し、容器の変形を目視で確認した。
(4)容器透明性:容器胴部より測定用切片を切り出し、JIS−K7105に準拠して容器胴部の0.3mm厚み部分のHAZE値を測定した。
(5)容器落下強度:容器10本に各々水を満水にし、0℃・1m高から平滑なコンクリ−ト面に垂直に繰り返し落下させ、割れる平均落下回数にて判定した。
(6)容器圧縮強度:空容器を23℃、50RHの条件で縦方向に50mm/minの速度で圧縮した時の座屈強度を測定した。
【0049】
(実施例1)
2種3層の多層容器の内外表層に、メタロセン触媒を用いて重合したプロピレン・エチレン共重合体(日本ポリプロ社製ノバテックPP−PMB004)95重量%、メルトフローレート1.0g/10分のホモPP100重量部、無水マレイン酸2重量部、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン3重量部の混合物を温度200℃、スクリュー回転数100rpmに設定した単軸スクリュー押出機で押し出し、カッターでカッティングした無水マレイン酸に由来する構成単位が5.0重量%、MFRが300g/10分の無水マレイン酸変性プロピレン重合体5重量%のブレンドペレットを使用した。
中間層用には、エチレン−ビニルアルコール共重合体(クラレ社製エバール−G156B)ペレットを使用した。
これらのペレットを用いて、日精樹脂工業(株)社製FSD80S型射出成形機を用い、内外層の射出圧力100kg/cm、射出樹脂温度200℃、中間層の射出圧力100kg/cm、射出樹脂温度200℃、金型冷却水温度20℃の条件で、目付21g、外径2.8mm、高さ90mm、胴部最大肉厚4.5mmの試験管状の2種3層有底プリフォ−ムを成形した。このプリフォームの中間層の厚み比は全体の15%であった。次にこのプリフォ−ムをフロンティア社製二軸延伸ブロー成形機EFB1000型二軸延伸ブロー成形機を用いて、近赤外ランプでプリフォームを回転させながら加熱し、非接触表面温度計でプリフォームの表面温度が120℃になったところで、縦延伸倍率2.7倍、横延伸倍率2.4倍となるように縦延伸ロッドの上昇と共に一次圧力5kg/cm、二次圧力15kg/cmの空気圧力で二軸延伸ブロー成形して500cc円筒ボトル容器を得た。得られた容器の評価結果を表1に示す。
【0050】
(実施例2)
実施例1の変性プロピレン重合体のブレンド量を20重量%にした以外は実施例1と同様にして容器を得た。得られた容器の評価結果を表1に示す。
【0051】
(実施例3)
実施例1のプロピレン・エチレンランダム共重合体(PMB004)に換え、塩化マグネシウム担持四塩化チタン触媒を使用して重合したプロピレン・エチレンランダム共重合体(日本ポリプロ社製ノバテックPP−MX03DC)にした以外は実施例1と同様にして容器を得た。得られた容器の評価結果を表1に示す。
【0052】
(実施例4)
実施例1の変性プロピレン重合体に換え、メルトフローレイトが300g/10分、無水マレイン酸に由来する構成単位が2.0重量%の無水マレイン酸変性プロピレン重合体を使用した以外は実施例1と同様にして容器を得た。得られた容器の評価結果を表1に示す。
【0053】
(実施例5)
実施例1の変性プロピレン重合体に換え、メルトフローレイトが100g/10分、無水マレイン酸に由来する構成単位が5.0重量%の無水マレイン酸変性プロピレン重合体を使用した以外は実施例1と同様にして容器を得た。得られた容器の評価結果を表1に示す。
【0054】
(実施例6)
実施例1のプリフォームの中間層厚み比を全体の5%にした以外は実施例1と同様にして容器を得た。得られた容器の評価結果を表1に示す。
【0055】
(比較例1)
実施例1の変性プロピレン重合体のブレンド量を1重量%に変更した以外は実施例1と同様にして容器を得た。得られた容器の評価結果を表2に示す。
【0056】
(比較例2)
実施例3の変性プロピレン重合体のブレンド量を1重量%に変更した以外は実施例3と同様にして容器を得た。得られた容器の評価結果を表2に示す。
【0057】
(比較例3)
実施例1の変性プロピレン重合体をMFRが5g/10分の変性プロピレン重合体に変更した以外は実施例1と同様にして容器を得た。得られた容器の評価結果を表2に示す。
【0058】
(比較例4)
実施例1の変性プロピレン重合体をMFRが10g/10分の変性プロピレン重合体に変更した以外は実施例1と同様にして容器を得た。得られた容器の評価結果を表2に示す。
【0059】
(比較例5)
実施例1のプロピレン・エチレンランダム共重合体(PMB004)に換え、三塩化チタン触媒を使用して重合したプロピレン・エチレンランダム共重合体(日本ポリプロ社製ノバテックPP−FX2)にした以外は実施例1と同様にして容器を得た。得られた容器の評価結果を表2に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の多層射出延伸ブロー容器は、延伸ブロー時に延伸むら等を生じることがなく、耐熱性、バリア性に優れているので、飲料や食品容器、ヘアケア容器、各種化粧品容器、家庭用洗剤容器、トイレタリー製品容器、その他薬品容器、輸液ボトルなどの医療容器などに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】GPCによるポリマー分子量の測定におけるクロマトグラムのベースラインと区間を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種3層以上の層構成からなる多層容器において、中間層がバリア性樹脂からなり、中間層に接する層が下記(A)プロピレン系重合体と下記(B)変性プロピレン重合体とを含有するプロピレン樹脂組成物からなることを特徴とする射出延伸ブロー容器。
(A)下記特性(a−1)〜(a−3)を有するプロピレン単独重合体又はプロピレンとエチレン及び/または炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体であるプロピレン系重合体:50〜98重量%
(a−1)メルトフローレート(MFRpp)が0.5〜200g/10分
(a−2)プロピレンから誘導される構成単位が100〜90モル%、エチレン及び炭素数4〜20のα−オレフィンからなる群より選ばれるコモノマーから誘導される構成単位が0〜10モル%
(a−3)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜8
(B)下記特性(b−1)〜(b−3)を有する変性プロピレン重合体:2〜50重量%
(b−1)メルトフローレート(MFRcmp)が10〜500g/10分
(b−2)MFRcmp/MFRppが1以上
(b−3)不飽和カルボン酸およびその誘導体に由来する構成単位が0.1重量%以上
【請求項2】
中間層のバリア性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の射出延伸ブロー容器。
【請求項3】
中間層の厚みが全体の3〜20%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の射出延伸ブロー容器。
【請求項4】
プロピレン樹脂組成物がプロピレン系重合体の粒状物と変性プロピレン重合体の粒状物との混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の射出延伸ブロー容器。
【請求項5】
(A)プロピレン系重合体がメタロセン触媒で重合された重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の射出延伸ブロー容器。
【請求項6】
プロピレン樹脂組成物におけるプロピレン系重合体(A)と変性プロピレン重合体(B)の合計量に対する変性プロピレン重合体(B)の含有量(X:重量%)と、中間層に接するプロピレン樹脂組成物からなる層における中間層側近傍の(B)変性プロピレン重合体含有量(X:重量%)とが、X>Xであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の射出延伸ブロー容器。
【請求項7】
下記(A)プロピレン系重合体と下記(B)変性プロピレンとを含有するプロピレン樹脂組成物からなることを特徴とする多層射出延伸ブロー用組成物。
(A)下記特性(a−1)〜(a−3)を有するプロピレン単独重合体又はプロピレンとエチレン及び/または炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体であるプロピレン系重合体:50〜98重量%
(a−1)メルトフローレート(MFRpp)が0.5〜200g/10分
(a−2)プロピレンから誘導される構成単位が100〜90モル%、エチレン及び炭素数4〜20のα−オレフィンからなる群より選ばれるコモノマーから誘導される構成単位が0〜10モル%
(a−3)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4
(B)下記特性(b−1)〜(b−3)を有する変性プロピレン重合体:2〜50重量%
(b−1)メルトフローレート(MFRcmp)が10〜500g/10分
(b−2)MFRcmp/MFRppが1以上
(b−3)不飽和カルボン酸およびその誘導体に由来する構成単位が0.1%以上
【請求項8】
(A)プロピレン系重合体がメタロセン触媒で重合された重合体であることを特徴とする請求項7に記載の射出延伸ブロー用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−131275(P2006−131275A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323393(P2004−323393)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】