説明

多層成形システム及び多層成形体の製造方法

【課題】金型交換装置等の特殊な装置や高強度の交換用金型を必要とせず、形状設計の自由度が高い多層成形体を容易に製造可能な多層成形システムを提供する。
【解決手段】第一の射出装置31、発泡剤含有可塑化樹脂を射出可能な第二の射出装置32、その内部にキャビティ5が形成され得る金型10、及び型締装置20を有し、キャビティ5に充填射出された発泡剤含有可塑化樹脂が未発泡状態のまま保持された未発泡層を有する一次多層成形体を成形可能な多層成形装置100と、未発泡層が成形面に対向する状態となるように一次多層成形体が配設されるとともに、未発泡層を発泡させて、緻密層と、成形面の表面形状を投射した表面形状が形成された発泡層を有する多層成形体を成形可能な発泡成形部とを備えた多層成形システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状設計の自由度の高い多層成形体を製造可能な多層成形システム、及び多層成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二種以上の樹脂を金型内に射出して成形する樹脂の多層成形方法が広く知られており、このような多層成形方法によって成形された多層成形体は幅広い分野で使用されている。発泡層を備えた多層成形体を成形する関連技術としては、例えば、特許文献1〜3において開示された多層成形方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、一層目の樹脂を金型キャビティ内で成形した後、金型をわずかに開いて拡大した金型キャビティ内に二層目の樹脂を注入した後、この二層目の樹脂を発泡させる多層成形方法が開示されている。更に、特許文献1には、二層目の樹脂を発泡させる際に必要に応じて金型キャビティを拡大する発泡成形方法も開示されている。特許文献1で開示された多層成形方法によれば、一層目と二層目で異なる樹脂を用いることができる。このため、例えば二層目の樹脂のみを発泡させることによって、ソフトな感触と剛性とを兼ね備えた高機能な多層成形体を成形することが可能である。
【0004】
特許文献2には、一層目の樹脂を金型キャビティ内で成形した後、金型を開いて拡大した金型キャビティ内に二層目の樹脂を注入して発泡させる多層成形方法が開示されている。従って、特許文献1で開示された多層成形方法と同じく、特許文献2で開示された多層成形方法においても、一層目と二層目で異なる樹脂を用いることができる。その結果、高機能な多層成形体を成形することが可能である。
【0005】
なお、二層目の樹脂を射出するために必要な空隙を確保すべく金型キャビティを拡大する方法としては、前述のような金型をわずかに開く方法が知られている。また、このような金型をわずかに開く方法以外にも、いくつかの方法が知られている。例えば、特許文献3には、金型の一部を成形中に交換(ダイ交換)することによって金型キャビティを拡大する方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭54−86550号公報
【特許文献2】特公昭46−29637号公報
【特許文献3】特開平6−134803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、より広い製品分野に適応させるべく、一層目と二層目とでは形状の異なる多層成形体を製造する必要性がある。例えば、二層目のみに突起を形成し、他の部品へ容易に配設できるような形状とした多層成形体や、二層目のみを発泡層とし、この発泡層の厚みを部分的に変化させることにより吸音性や断熱性を高めた多層成形体等を製造することが広く産業界から要請されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2において開示された多層成形方法によると、一層目で成形する層(第一層)の形状により、二層目で成形する層(第二層)の形状が限定されることになる。即ち、第二層の形状についての自由度が少ないといった問題点がある。これは、金型を開くことによって拡大した金型キャビティ内に二層目の樹脂を充填射出するため、第二層の形状は必然的に、第一層の表面を型開き方向に均一な厚さで積層する形状となるからである
【0009】
従って、第二層については、その肉厚(型開き方向の寸法)を全体的に大きくしたり小さくしたりできる程度の自由度しかないことになる。換言すれば、第一層の形状によって、第二層の形状がほぼ決まってしまうことになる。このため、第一層の外形と異なる外形の第二層を有する成形体を製造することは極めて困難であった。
【0010】
一方、特許文献3で開示された多層成形方法ではダイ交換を行うため、第一層の形状によって第二層の形状が決定されてしまうといった不具合は生じ難い。しかしながら、成形中に金型を交換するために特殊な金型交換装置が必要となる。このため、成形機のサイズが大型化するとともに、成形に要するサイクルタイムが長くなるという問題を有した。更に、成形中に交換される交換用金型は、射出成形に耐え得る強度の高い金型である必要がある。このため、このような高強度の金型は高コストであるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、金型交換装置等の特殊な装置や高強度の交換用金型を必要とせず、形状設計の自由度が高い多層成形体を容易に製造可能な多層成形システム、及び多層成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明によれば、以下に示す多層成形システム、及び多層成形体の製造方法が提供される。
【0013】
[1]可塑化した第一の熱可塑性樹脂を射出可能な第一の射出装置、可塑化した第二の熱可塑性樹脂に発泡剤を含有させた発泡剤含有可塑化樹脂を射出可能な第二の射出装置、可動盤と固定盤とに配設され、その内部にキャビティが形成され得る金型、及び前記金型を開閉可能な型締装置を有し、前記第一及び前記第二の射出装置から前記第一の熱可塑性樹脂及び前記発泡剤含有可塑化樹脂を前記キャビティに積層状態で順次充填射出するとともに、充填射出された前記発泡剤含有可塑化樹脂が未発泡状態のまま保持された未発泡層を有する一次多層成形体を成形可能な多層成形装置と、前記多層成形装置から取り出された前記一次多層成形体が、前記未発泡層の少なくとも一部が所定の表面形状を有する成形面に対向する状態で配設されるとともに、前記未発泡層を発泡させて、前記第一の熱可塑性樹脂からなる緻密層と、前記未発泡層が発泡して前記成形面に当接し、前記成形面の表面形状を投射した表面形状が形成された発泡層を有する多層成形体を成形可能な発泡成形部と、を備えた多層成形システム。
【0014】
[2]前記多層成形装置で成形された前記一次多層成形体を、前記多層成形装置から取り出して前記発泡成形部に移送して配設する移送装置を更に備えた前記[1]に記載の多層成形システム。
【0015】
[3]前記発泡剤が発泡する分解温度未満の温度で前記一次多層成形体を成形可能な前記[1]又は[2]に記載の多層成形システム。
【0016】
[4]前記発泡成形部が自動車部品であるとともに、前記発泡成形面が前記自動車部品の内周面である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の多層成形体の製造方法。
【0017】
[5]可塑化した第一の熱可塑性樹脂を射出可能な第一の射出装置、可塑化した第二の熱可塑性樹脂に発泡剤を含有させた発泡剤含有可塑化樹脂を射出可能な第二の射出装置、可動盤と固定盤とに配設され、その内部にキャビティが形成され得る金型、及び前記金型を開閉可能な型締装置を有する多層成形装置を使用して、前記第一及び前記第二の射出装置から前記第一の熱可塑性樹脂及び前記発泡剤含有可塑化樹脂を前記キャビティに積層状態で順次充填射出するとともに、充填射出された前記発泡剤含有可塑化樹脂が未発泡状態のまま保持された未発泡層を有する一次多層成形体を得る一次成形工程と、得られた前記一次多層成形体を、所定の表面形状を有する成形面を持った発泡成形部に、前記未発泡層の少なくとも一部が前記成形面に対向する状態となるように配設するとともに、前記未発泡層を発泡させて、前記第一の熱可塑性樹脂からなる緻密層と、前記未発泡層が発泡して前記成形面に当接し、前記成形面の表面形状を投射した表面形状が形成された発泡層を有する多層成形体を得る二次成形工程と、を含む多層成形体の製造方法。
【0018】
[6]前記発泡剤が発泡する分解温度未満の温度で前記一次多層成形体を得る前記[5]に記載の多層成形体の製造方法。
【0019】
[7]前記発泡剤が、アゾジカルボンアミド(ADCA)、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、炭酸水素ナトリウム(NaNCO)、及び熱膨張性マイクロカプセルからなる群より選択される少なくとも一種である前記[5]又は[6]に記載の多層成形体の製造方法。
【0020】
[8]前記発泡成形部が自動車部品であるとともに、前記発泡成形面が前記自動車部品の内周面である前記[5]〜[7]のいずれかに記載の多層成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の多層成形システムは、金型交換装置等の特殊な装置や高強度の交換用金型を必要とせず、形状設計の自由度が高い多層成形体を容易に製造可能であるといった効果を奏するものである。また、本発明の多層成形システムを用いれば、変形等の不具合が生じ難く、寸法精度の高い多層成形体を製造することができる。
【0022】
本発明の多層成形体の製造方法によれば、金型交換装置等の特殊な装置や高強度の交換用金型を必要とせず、形状設計の自由度が高い多層成形体を容易に製造することができる。また、本発明の多層成形体の製造方法によれば、緻密層に接する未発泡層を発泡させるにもかかわらず、変形等の不具合が生じ難く、寸法精度の高い多層成形体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0024】
図1は、本発明の多層成形システムの一実施形態に用いられる多層成形装置(横型締タイプの成形装置)の一例を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態の多層成形システムに用いられる多層成形装置100は、可塑化した第一の熱可塑性樹脂を射出可能な第一の射出装置31と、可塑化した第二の熱可塑性樹脂に発泡剤を含有させた発泡剤含有可塑化樹脂を射出可能な第二の射出装置32と、可動盤2と固定盤1とに配設され、その内部にキャビティ5が形成され得る金型10、及び金型10を開閉可能な型締装置20とを備えている。
【0025】
第一の射出装置31は、可塑化シリンダ31aと、可塑化シリンダ31aに内装されフライトを有するスクリュ31cと、可塑化シリンダ31a内に成形材料を供給するホッパ35aとを備え、スクリュ31cを回転駆動及び前後進させるスクリュ回転・移動手段31dが設けられている。そして、可塑化シリンダ31a外周面には、ヒータ(図示せず)が取付けられている。
【0026】
第一の射出装置31は、スクリュ回転・移動手段31dによってスクリュ31cが回転することにより、ホッパ35aからペレット状の成形材料(第一の熱可塑性樹脂)が可塑化シリンダ31a内に供給される構成となっており、供給されたペレット状の成形材料は、可塑化シリンダ31aに取付けられたヒータによって加熱され、また、スクリュ31cの回転によって混練圧縮作用を受けて可塑化(溶融)し、スクリュ31cの前方へ送られる。スクリュ31cの前方へ送られた、可塑化した第一の熱可塑性樹脂は、スクリュ回転・移動手段31dにより前進するスクリュ31cによって、可塑化シリンダ31aの先端に取付けられたノズル31bから金型10内へ射出充填される。
【0027】
本実施形態の多層成形システムを構成する多層成形装置100は、図1に示すように前述の第一の射出装置31に加えて、更に第二の射出装置32を備えている。この第二の射出装置32は、可塑化シリンダ32aと、可塑化シリンダ32aに内装されフライトを有するスクリュ32cと、可塑化シリンダ32a内に成形材料を供給するホッパ35bとを備え、スクリュ32cを回転駆動及び前後進させるスクリュ回転・移動手段32dが設けられている。そして、可塑化シリンダ32a外周面には、ヒータ(図示せず)が取付けられている。
【0028】
第二の射出装置32は、スクリュ回転・移動手段32dによってスクリュ32cが回転することにより、ホッパ35bからペレット状の成形材料(第二の熱可塑性樹脂と発泡剤)が可塑化シリンダ32a内に供給される構成となっており、供給されたペレット状の成形材料は、可塑化シリンダ32aに取付けられたヒータによって加熱され、また、スクリュ31cの回転によって混練圧縮作用を受けることにより発泡剤を分散、混合して可塑化(溶融)し、スクリュ32cの前方へ送られる。スクリュ32cの前方へ送られた、発泡剤を含有する可塑化した第二の熱可塑性樹脂(発泡剤含有可塑化樹脂)は、スクリュ回転・移動手段32dにより前進するスクリュ32cによって、可塑化シリンダ32aの先端に取付けられたノズル32bから金型10内へ射出充填される。
【0029】
第一の射出装置31及び第二の射出装置32におけるスクリュ回転・移動手段31d,32dは、油圧シリンダ、油圧モータ、電動サーボモータ等を用いて構成することができる。また、図1においては、可塑化と射出とを一本のスクリュで行なうインラインスクリュ方式の射出装置を示しているが、可塑化と射出とを別々の機構で行なうスクリュプリプラ方式の射出装置を用いることもできる。
【0030】
図2は、多層成形装置に用いられる金型の一例を模式的に示す断面図である。図1及び2に示すように、金型10は、固定盤1に取付けられた固定金型3と、可動盤2に取付けられた可動金型4とからなり、固定金型3と可動金型4とは半押込み構造であり嵌合部で嵌合され、嵌合された状態で固定金型3に形成されたキャビティ面と可動金型4に形成されたキャビティ面とが組み合わされて、キャビティ5を形成する構成となっている。そして、半押込み構造の嵌合部はキャビティ5の全周にわたって形成され、射出充填後にキャビティ5を拡大してもキャビティ5に充填した樹脂が金型10から漏れ出すことを防止している。
【0031】
固定型3には、第一の射出装置31から射出された、可塑化した第一の熱可塑性樹脂を導入口3aからキャビティ5まで導入するための溶融樹脂流動経路11aと、第二の射出装置32から射出された発泡剤含有可塑化樹脂を導入口3bからキャビティ5に導入するための溶融樹脂流動経路11bが形成されている。溶融樹脂流動経路11a,11bには、それぞれ第一バルブ6a,6bが配設されており、溶融樹脂流動経路11a,11b内における樹脂の流動を制御することができる。
【0032】
型締装置20は、型締用サーボモータ20b等のリンク駆動機構によって駆動されるトグル式型締機構21を備えており、可動金型4が固定金型3に対してタイバー(図示せず)に案内されて前後進できるように構成されている。このため、このトグル式型締機構21により金型10の型開、型締を行い、キャビティ5の容積を拡大縮小可能にしている。
【0033】
なお、図1及び2においては、金型10を所定のストローク開いてもキャビティ5内に充填した樹脂が漏れ出すことのない半押込み構造の金型10を用いたが、これに制限されるものではなく、発泡成形に適用可能なものであればそれ以外の、例えば、平押し構造等の金型を用いてもよい。また、図1では、トグル式型締機構を有する横型締タイプの射出成形装置を用いた場合を示しているが、直圧式の型締装置電動サーボモータや、竪型締タイプの射出成形装置を用いてもよい。
【0034】
なお、型締装置20のリンク駆動機構のクロスヘッド駆動軸に、クロスヘッドの位置を検出するためのストロークセンサを取り付けると、可動盤2の位置を精度よくコントロールすることが可能となる。更に、型開閉ストロークを検出する型開閉ストロークセンサを、可動盤位置センサ(図示せず)が可動盤2の位置を検出するように配設することが好ましい。
【0035】
制御装置60は、図1に示すように、第一の熱可塑性樹脂及び第二の熱可塑性樹脂の可塑化を行うとともに、発泡剤含有可塑化樹脂の金型10内への射出を制御する、射出条件設定器71aと連動した射出装置制御部71と、金型10の開閉や型締力を制御する、型締条件設定器72aと連動した型締装置制御部72と、タイマ類等とから構成されている。型締装置制御部72は、キャビティ5の容積が所望の容積となるよう可動盤2の位置を移動させる位置及び速度の設定部(型締条件設定器72a)を備えるとともに、射出が完了して各層が固化するまで可動盤2の位置を保持する制御ができるようになっている。また、キャビティ5の拡大速度は成形樹脂の伸長粘度によって設定し、伸長粘度が低い場合は拡大速度を遅く、伸長粘度が高い場合は拡大速度を速く設定することが好ましい。
【0036】
射出装置は、積層数に応じた数の熱可塑性樹脂をそれぞれ独立に可塑化させ、かつ、独立に充填射出しうるように配設すればよい。溶融樹脂流動経路やバルブの数も、積層数に応じて配設すればよい。なお、多層射出装置30は、固定型3側に配設してあるが(図1参照)、これに限定されず、例えば、射出装置30を金型10の側面に配設してもよい。また、三層以上の場合には、射出装置は、金型の側面や上部に配設すればよい。金型の型締・型開きは、型締装置制御部72からインプットされる情報に基づき行われる。樹脂の射出量の制御は、射出装置制御部71からインプットされる情報に基づき行われる。更に、第二の熱可塑性樹脂に発泡剤を添加することが可能な発泡剤供給装置が配設されていてもよい。
【0037】
次に、本発明に係る多層成形システム及び多層成形体の製造方法の更なる詳細について図面を参照しつつ説明する。先ず、一次多層成形体を得る一次成形工程について説明する。図3は、一次多層成形体の製造例を示す模式図である。図3に示すように、一次多層成形体を製造するには、型締装置(図示せず)の作動により、金型10のキャビティ5の空間容積が所定の値となるように型締動作を行い、停止保持させる(図3(a))。この金型10の固定型3に配設された第一バルブ6aを開くとともに、第一の射出装置(図示せず)から射出された可塑化した第一の熱可塑性樹脂を、導入口3a及び溶融樹脂流動経路11aを通じてキャビティ5内へと射出充填する(図3(b))。
【0038】
第一バルブ6aを閉じ、キャビティ5内に射出充填された第一の熱可塑性樹脂が冷却固化して緻密層40が形成された後、型締装置を操作して可動型4を固定型3から離隔する方向へと所定距離移動させ、発泡剤含有可塑化樹脂が射出充填される空間(キャビティ5)を新たに形成する(図3(c))。次に、固定型3に配設された第二バルブ6bを開くとともに、第二の射出装置(図示せず)から射出された発泡剤含有可塑化樹脂を、導入口3b及び溶融樹脂流動経路11bを通じてキャビティ5内へと射出充填し、あらかじめ形成された緻密層の表面に未発泡層41を形成する(図3(d))。
【0039】
ここで、本実施形態においては、発泡剤含有可塑化樹脂がキャビティ5内に射出充填されるが、発泡はしない条件で金型10を保持する。このような「発泡剤含有可塑化樹脂がキャビティ5内に射出充填されるが、発泡はしない条件」は、使用する第二の熱可塑性樹脂及び第二の熱可塑性樹脂の種類や溶融温度、並びに発泡剤の種類や発泡温度等によって適宜設定される。
【0040】
本発明において用いられる第一の熱可塑性樹脂と第二の熱可塑性樹脂は、同種のものであっても、異種のものであってもよい。好適に用いられる第一の熱可塑性樹脂及び第二の熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリカーボネート樹脂;変性ポリフェニレンエーテル樹脂;オレフィン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。これらの樹脂は、用途等に応じて一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂には、必要に応じて可塑剤、剥離剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等の種々の添加剤や物性改良のための各種フィラー、ガラス繊維、カーボン繊維等、更には、着色剤、染料等を混合して使用してもよい。
【0041】
本発明において用いられる発泡剤は、成形過程では発泡分解しないものである必要がある。使用可能な発泡剤としては、化学発泡剤、電子線架橋反応剤、化学架橋反応剤、ウレタン発泡反応剤等を挙げることができる。化学発泡剤を使用する場合には、「化学発泡剤の分解温度>成形時温度」の関係を満たす必要がある。なお、化学発泡剤の分解温度を上げることが可能な熱安定助剤等を必要に応じて添加してもよい。好適に使用可能な化学発泡剤の具体例とそれらの分解温度、及び熱可塑性樹脂の具体例とそれらの成形温度を以下に示す。なお、これらの化学発泡剤や熱可塑性樹脂は、それぞれ、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、発泡剤とともに各種の添加剤を用いることも好ましい。発泡剤と併用可能な添加剤の好適例としては、発泡助剤、気泡造核剤、分散剤、無機充填剤、難燃剤、帯電防止剤等を挙げることができる。
【0042】
[化学発泡剤(分解温度)]:アゾジカルボンアミド(ADCA)(180〜210℃)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)(190〜200℃)、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)(150〜160℃)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)(130〜170℃)、熱膨張性マイクロカプセル
【0043】
[熱可塑性樹脂(成形温度)]:エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)(180〜210℃)、低密度ポリエチレン(LDPE)(100〜140℃)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(100〜160℃)
【0044】
発泡剤含有可塑化樹脂をキャビティ5内に射出充填した後、第二バルブ6bを閉めて金型10の状態を保持し、発泡剤含有可塑化樹脂が冷却固化した後に可動型4を移動させて型開きすると、第一の熱可塑性樹脂からなる緻密層40と、この緻密層40の少なくとも一部の表面上に形成された、第二の熱可塑性樹脂及び発泡剤を含有する未発泡層41とを備えた一次多層成形体を得ることができる(図3(e))。
【0045】
次に、多層成形体を得る二次成形工程について説明する。図4は、多層成形体の製造例を示す模式図である。図4に示すように、一次成形工程で得られた、緻密層40と未発泡層41を備えた一次多層成形体45(図4(a))を発泡成形部80に配設する(図4(b))。一次多層成形体が配設される発泡成形部80は、例えば、所定の表面形状の成形面85を有する成形部80aと、この成形部80a以外の保持部80bにより構成されている。発泡成形部80の成形面85の形状としては、図4(b)に示すような角部を有する凹凸面形状の他、角部のない滑らかな曲面により構成された形状(曲面形状)等を挙げることができる。
【0046】
図4(b)に示すように、本実施形態においては、未発泡層41の少なくとも一部が成形面85に対向する状態となるように一次多層成形体45を配設する。その後、未発泡層41を所定の条件で発泡させて発泡層51を形成する(図4(c))。未発泡層41を発泡させる方法としては、発泡成形部80に加熱ヒータ、スチーム噴霧機構、ハロゲンヒータ等の加熱装置を配設し、未発泡層41を加熱して発泡させる方法(加熱方法)、発泡成形部80に電子線照射装置を配設し、未発泡層41に電子線を照射して発泡させる方法(電子線照射方法)等を挙げることができる。
【0047】
本実施形態においては、発泡成形部80に対して樹脂を射出充填する必要がないため、発泡成形部80自体は従来の金型のように大きな強度を必要としない。特に従来、発泡を促進させるための加熱ヒータや電子線照射装置等を交換用の金型に組み込む場合には、樹脂の充填圧力に耐え得る機構や構造が金型に必要になっていたため、交換用の金型は大きく複雑な構造になりがちであった。
【0048】
これに対して、本発明では、発泡を行う部分を射出用の金型から分離して独立させたため、発泡を行う部分(発泡成形部)には、従来の交換用の金型に対して要求されていた高強度は必要とされない。従って、発泡成形部は、従来の交換用の金型と比較して、構造を簡単にすることが可能であるとともにそのサイズも小さくすることができる。また、射出用の金型を発泡成形用の金型に交換する必要等もないため、金型交換工程をなくして工程全体を簡略化することが可能である。更には、多層成形装置自体を小型化することも可能となる。また、射出成形を行う部分と発泡成形を行う部分とを物理的に分離したため、第一層(緻密層)の外形と異なる外形の第二層(発泡層)を有するといった、形状設計の自由度が極めて高い多層成形体を容易に製造することができる。また、得られる多層成形体、緻密層に接する未発泡層を緻密層の形成後に発泡させるにもかかわらず、変形等の不具合が生じ難く、寸法精度の高いものである。
【0049】
発泡した未発泡層は成形面85に当接し、成形面85の表面形状を投射した表面形状が形成された発泡層51が形成され(図4(c))、第一の熱可塑性樹脂からなる緻密層40と、発泡層51とを備えた多層成形体55を得ることができる(図4(d))。本発明によれば、得られる多層成形体の形状を、容易に所望とする最終製品の形状とすることができる。このため、得られる成形品をその都度カット等して加工する必要がない。従って、端材が生じ難く、加工の手間と製造コストを抑えることができる。
【0050】
近年、製品にソフト感を出すため、自動車等の内張り材等として発泡層を有する多層成形体を使用することが多い。そこで、本発明においては、一次多層成形体が配設される発泡成形部が自動車部品であるとともに、この自動車部品の内周面を発泡成形面として未発泡層を発泡させることが好ましい。即ち、自動車部品の内周面に一次多層成形体を配設し、この状態で一次多層成形体の未発泡層を発泡させることにより、自動車部品の内周面形状に極めて正確に一致する形状の多層成形体を容易に成形することができる。
【0051】
従来は、発泡層を有するシート状の多層成形体を自動車部品に貼付するとともに、自動車部品の形状に合わせて余剰部をカットする必要があった。このため従来は、端材が生じる上に、手間とコストがかかるといった問題があった。これに対して、本発明によれば、自動車部品に必要とされる形状に予め加工された一次多層成形体を使用し、配設箇所で発泡させる。従って、配設箇所の形状に正確にフィットした多層成形体(自動車部品用内張り材)を製造することができるために、カット等して加工する必要がない。このため、端材が生じ難く、加工の手間と製造コストを抑えることができる。
【0052】
本発明の多層成形システムにおいては、多層成形装置で成形された一次多層成形体を、多層成形装置から取り出して発泡成形部に移送して配設する移送装置を更に備えていることが、システム全体のオートメーション化を図ることができ、製造コストの低減等を図ることができるために好ましい。移送装置としては、一次多層成形体を取り出す吸着具や、旋回アーム及びスライド機構等を備えた取出・取付ロボットを好適例として挙げることができる。このような取出・取付ロボットを、多層成形装置と発泡成形部の間に配置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の多層成形システム、及び多層成形体の製造方法によれば、形状設計の自由度が高い多層成形体を容易に製造することができるため、例えば、自動車部品用内張り材等の製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の多層成形システムの一実施形態に用いられる多層成形装置の一例を示す模式図である。
【図2】多層成形装置に用いられる金型の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】一次多層成形体の製造例を示す模式図である。
【図4】多層成形体の製造例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0055】
1:固定盤、2:可動盤、3a,3b:導入口、3:固定型、4:可動型、5:キャビティ、6a:第一バルブ、6b:第二バルブ、10:金型、11a,11b:溶融樹脂流動経路、20b:型締用サーボモータ、20:型締装置、21:トグル式型締機構、30:多層射出装置、31a,32a:可塑化シリンダ、31b,32b:ノズル、31c,32c:スクリュ、31d,32d:スクリュ回転・移動手段、31:第一の射出装置、32:第二の射出装置、35a,35b:ホッパ、40:緻密層、41:未発泡層、45:一次多層成形体、51:発泡層、55:多層成形体、60:制御装置、71a:射出条件設定器、71:射出装置制御部、72a:型締条件設定器、72:型締装置制御部、80:発泡成形部、80a:成形部、80b:保持部、85:成形面、100:多層成形装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑化した第一の熱可塑性樹脂を射出可能な第一の射出装置、可塑化した第二の熱可塑性樹脂に発泡剤を含有させた発泡剤含有可塑化樹脂を射出可能な第二の射出装置、可動盤と固定盤とに配設され、その内部にキャビティが形成され得る金型、及び前記金型を開閉可能な型締装置を有し、前記第一及び前記第二の射出装置から前記第一の熱可塑性樹脂及び前記発泡剤含有可塑化樹脂を前記キャビティに積層状態で順次充填射出するとともに、充填射出された前記発泡剤含有可塑化樹脂が未発泡状態のまま保持された未発泡層を有する一次多層成形体を成形可能な多層成形装置と、
前記多層成形装置から取り出された前記一次多層成形体が、前記未発泡層の少なくとも一部が所定の表面形状を有する成形面に対向する状態で配設されるとともに、前記未発泡層を発泡させて、前記第一の熱可塑性樹脂からなる緻密層と、前記未発泡層が発泡して前記成形面に当接し、前記成形面の表面形状を投射した表面形状が形成された発泡層を有する多層成形体を成形可能な発泡成形部と、
を備えた多層成形システム。
【請求項2】
前記多層成形装置で成形された前記一次多層成形体を、前記多層成形装置から取り出して前記発泡成形部に移送して配設する移送装置を更に備えた請求項1に記載の多層成形システム。
【請求項3】
前記発泡剤が発泡する分解温度未満の温度で前記一次多層成形体を成形可能な請求項1又は2に記載の多層成形システム。
【請求項4】
前記発泡成形部が自動車部品であるとともに、前記発泡成形面が前記自動車部品の内周面である請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層成形体の製造方法。
【請求項5】
可塑化した第一の熱可塑性樹脂を射出可能な第一の射出装置、可塑化した第二の熱可塑性樹脂に発泡剤を含有させた発泡剤含有可塑化樹脂を射出可能な第二の射出装置、可動盤と固定盤とに配設され、その内部にキャビティが形成され得る金型、及び前記金型を開閉可能な型締装置を有する多層成形装置を使用して、
前記第一及び前記第二の射出装置から前記第一の熱可塑性樹脂及び前記発泡剤含有可塑化樹脂を前記キャビティに積層状態で順次充填射出するとともに、充填射出された前記発泡剤含有可塑化樹脂が未発泡状態のまま保持された未発泡層を有する一次多層成形体を得る一次成形工程と、
得られた前記一次多層成形体を、所定の表面形状を有する成形面を持った発泡成形部に、前記未発泡層の少なくとも一部が前記成形面に対向する状態となるように配設するとともに、前記未発泡層を発泡させて、前記第一の熱可塑性樹脂からなる緻密層と、前記未発泡層が発泡して前記成形面に当接し、前記成形面の表面形状を投射した表面形状が形成された発泡層を有する多層成形体を得る二次成形工程と、
を含む多層成形体の製造方法。
【請求項6】
前記発泡剤が発泡する分解温度未満の温度で前記一次多層成形体を得る請求項5に記載の多層成形体の製造方法。
【請求項7】
前記発泡剤が、アゾジカルボンアミド(ADCA)、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、炭酸水素ナトリウム(NaNCO)、及び熱膨張性マイクロカプセルからなる群より選択される少なくとも一種である請求項5又は6に記載の多層成形体の製造方法。
【請求項8】
前記発泡成形部が自動車部品であるとともに、前記発泡成形面が前記自動車部品の内周面である請求項5〜7のいずれか一項に記載の多層成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−307771(P2008−307771A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157150(P2007−157150)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【出願人】(000120847)永和化成工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】