説明

多層成形体

【課題】 接着剤などの添加材料を用いずに、層同士の結合力に優れ、層間剥離が生ずることのない多層成形体を提供する
【解決手段】 第1の高分子材料から主構成される第1樹脂層と、第2の高分子材料から主構成される第2樹脂層とを少なくとも有する多層成形体において、第1の高分子材料は、第2の高分子材料に比して所定の成形温度における溶融粘度の大きいものであり、第1樹脂層と第2樹脂層との層間には、第1樹脂層を構成する高分子鎖と第2樹脂層を構成する高分子鎖とのからみ合いが形成されているようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物性の異なる樹脂層からなる多層成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ダイレクトブロー成形法により多層ボトルを成形する場合、図3に示すようなダイ20が用いられる。このダイ20は、2種3層の多層ブロー成形用スパイダヘッドであって、2種の溶融樹脂材料を供給するための2つの押出機21,22が接続されている。そして、2種の樹脂材料の共押出により多層構造の円筒状パリソン(多層成形体)が成形される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来方法によって成形された多層成形体においては、特にバリアー性や耐薬品性向上のために異種材料の積層成形品の場合に、各層同士の接着力不足を補うために接着剤が用いられることが多い。
【0004】
しかし、例えば、バリアー性や耐薬品性を向上した医薬品容器や食品容器として多層成形体を用いる場合には、安全性等の観点から接着剤などを用いることが制約されることがある。その一方、接着剤を用いなければ層間剥離し、特に透明性が要求される医薬品容器や食品容器においては、外観不良が無視できない問題となり、製品価値が無くなることもある。
【0005】
そこで、本発明は、接着剤などの添加材料を用いずに、層同士の結合力に優れ、層間剥離が生ずることのない多層成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。
【0007】
即ち、本発明は、第1の高分子材料から主構成される第1樹脂層と、第2の高分子材料から主構成される第2樹脂層とを少なくとも有する多層成形体において、第1の高分子材料は、第2の高分子材料に比して所定の成形温度における溶融粘度の大きいものであり、第1樹脂層と第2樹脂層との層間には界面を有さず、該層間に、第1樹脂層を構成する高分子鎖と第2樹脂層を構成する高分子鎖とのからみ合い(entanglement)が形成されていることを特徴とするものである。これによれば、第1樹脂層と第2樹脂層とは、これらの層間に形成された相互の高分子鎖のからみ合いにより強固に結合され、接着剤などの添加材料を用いずとも層間剥離が生ずることが防止される。また、第1の高分子材料として、第2の高分子材料に比して所定の成形温度における溶融粘度の大きいものを採用しているため、後述する回転押出成形による単押出成形法によって、第1及び第2の高分子材料の混合樹脂材料から上記の積層構造を容易に得ることができ、リサイクル容易な多層成形体を提供できる。
【0008】
なお、従来公知の共押出成形等によって得られた多層成形体は、各層同士は、主として分子間のファンデルワールス力によって接着しているものであり、層間における高分子鎖同士のからみ合いが形成されるものではなく、物性の異なる異種樹脂材料の多層成形品の場合に接着力不足が問題となる。一方、本発明の多層成形体は、上記のように十分な層間の結合力を得ることが可能となる。
【0009】
上記第1の高分子材料と第2の高分子材料の組み合わせは、成形温度における溶融状態での粘度の異なるものであればよく、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ケイ素樹脂、ポリイミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AXS樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレン、EVA樹脂、EVOH樹脂、ポリプロピレン、ポリブチレン、メチルペンテン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、飽和ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性エラストマー等の適宜の高分子材料から選択することが可能である。好ましくは、第1及び第2の高分子材料として熱可塑性樹脂を採用し、特に、PET、ポリアミド、ポリエチレン等のポリオレフィンを採用することができる。第1の高分子材料と第2の高分子材料の重量比は適宜のものであってよい。
【0010】
上記からみ合いは、層厚方向に0.01mm以上にわたって形成されていることが好ましく、より好ましくは0.02mm以上とするのが好ましい。
【0011】
また、上記本発明の多層成形体において、第1樹脂層の表裏両側に、第2樹脂層を積層形成することができる。なお、第1樹脂層は、多層成形体の全範囲にわたって展伸された単一層として形成されていてもよく、また、多数の小さな第1樹脂層が多層成形体の全体に分散形成されていてもよく、第1樹脂層が層厚方向に複数形成されていてもよい。いずれの場合においても、第1樹脂層の表裏両側に第2樹脂層が形成されていればよく、第2樹脂層が2つの第1樹脂層に挟まれたような形態であっても本発明に含まれる。
【0012】
また、上記第1及び第2の樹脂層は、第1の高分子材料と第2の高分子材料とを含む溶融混合樹脂材料を外型と内型とを有するダイから押し出す際に、環状流路を形成する外型と内型とを相対回転し、これにより第1の高分子材料と第2の高分子材料とを層厚方向に分離させ、これら第1及び第2の高分子材料を冷却固化することにより形成されたものとすることができる。これによれば、ダイの環状流路内で溶融混合樹脂材料が上記相対回転により大きな剪断応力を受けることにより、粘度の大きい第1の高分子材料を層厚方向中途部に凝集させる一方、粘度の小さい第2の高分子材料を層表面側に凝集させつつ、これらの層間に両材料が混合した混合層が形成され、これを冷却固化することにより、容易に上記の積層構造が得られる。さらに、かかる多層成形体は、使用後に回収して洗浄・粉砕してなる再生ペレットを用いて成形することも容易に行うことができ、リサイクル性に優れた多層成形体となる。
【0013】
また、肉厚が全体にわたって略均一な上記本発明の多層成形体において、好ましくは、第1樹脂層がすべて、多層成形体の面内方向に沿って形成されたものとする。ここで、面内方向に沿ってとは、例えば平板状の多層成形体ではその平面に沿って平行であることをいい、円筒状の多層成形体では、その周面に沿って同様の曲率で湾曲していることをいう。
【0014】
また、本発明の多層成形体は、円筒状の押出成形体であってもよく、また、その円筒状多層成形体の周方向の所定部位を軸方向に切り開いて、平板状若しくはフィルム状に圧延してなる多層成形体であってもよく、また、上記円筒状多層成形体をパリソンとして用いてボトル状に吹き込み成形してなる多層成形体であってもよく、その他、適宜の二次加工が施された適宜の形態の多層成形体であってよい。
【0015】
次に、上記多層成形体を製造する方法の一例を説明する。本願発明者らは、多層成形品の各層を構成するそれぞれの成形材料を単純に混ぜ合わせて溶融したブレンド物に剪断力を付与すると、各成形材料の粘度差によって押出成形時のダイ内で各材料が内外に分離され、層状に構成されることを知見している。即ち、押出成形は、溶融した成形材料を、ダイの外型(ダイスなど)と内型(コアなど)の間に形成された横断面環状の流路を通過させ、この流路通過過程で賦形硬化させるが、ダイ内で成形材料が流動すると、溶融樹脂材料が金型壁面に触れた直後から冷却されてその粘度が上昇し、その結果、粘度が上昇した材料のすぐ内側の流動中材料との間で常に剪断状態にある。このとき、成形材料が溶融時粘度に差がある混合材料により構成されていると、この剪断現象によって低粘度材料が流動層の外側へ移行し、高粘度材料が流動層の内側(層厚方向中途部)に移行しようとする現象が生じる。かかる知見に加えて、本願発明者らは、単純に押出成形するときに成形材料に生じる剪断現象のみでは良好な多層構造を得ることはできないため、成形材料の押出成形開始の時点から、ダイの外型と内型とを高速に相対回転させることによって強烈な剪断力を発生させ、その結果混合材料の積層押出成形品を得る方法を見出した。
【0016】
かかる知見に基づいてなされた新規な多層押出成形体の製造方法は、粘度の異なる2種以上の樹脂材料(好ましくは熱可塑性樹脂材料)を溶融混練し、この溶融混合樹脂材料をダイから押し出す際に、ダイの外型と内型とを相対回転させ、ダイ内の環状流路の厚さ方向所定部分に粘度の高い樹脂材料の層を形成するとともに、該高粘度樹脂層の内外に粘度の低い樹脂材料の層を形成することを特徴とするものである。なお、2以上の樹脂材料としては、ガスバリアー性や耐薬品性などの物性の異なる複数の熱可塑性樹脂の組み合わせを選択することができる。ここで、2種以上の樹脂材料として、上記第1及び第2の高分子材料を用いることができ、高粘度樹脂層が上記第1の樹脂層となり、低粘度樹脂層が上記第2の樹脂層となる。また、上記高粘度樹脂層は、薄い複数の高粘度樹脂層が層厚方向に複数層形成されていてもよく、また、多層押出成形体の全肉厚の50%以上の肉厚の高粘度樹脂層が1層だけ形成されていてもよい。
【0017】
なお、上記した2種以上の樹脂材料としては、これら複数の樹脂材料のうちの最も高い融点の近傍の温度では相溶性の小さいもの(即ち、非相溶系の組み合わせ)を選択するのが好ましい。一方で、ダイの環状流路に供給される際の溶融混合樹脂材料は、2種以上の樹脂材料が均一に混合溶融された均一ブレンド物であることが望ましい。異種のポリマーは、通常は混和し難いが、重合性の界面作用物質である相溶化剤を添加することによって、2種以上のポリマーから所望の性質を有する均一ブレンド物が形成され易くなる。特に、上記相溶化剤としては、所定の温度以上で大きな相溶性を示すものが好ましい。これによれば、ダイ内に溶融混合樹脂材料を供給する時点においては、この溶融混合樹脂材料の温度を、相溶化剤により大きな相溶性を示す温度にしておくことで、押出機内で混合材料の分離現象が生じることを解消して、均一ブレンド物の状態でダイに溶融混合樹脂材料を供給することが可能である。そして、金型に接触して冷却されると相溶性を示さなくなり、上記した金型の相対回転によりダイの環状流路内の樹脂材料に剪断力を付与することで容易に多層化させることが可能となる。
【0018】
上記の製造方法によれば、単一の押出機と、単一の環状流路を有するダイとにより多層押出成形品を得ることが可能であるから、多層押出成形品の大幅なコスト低減を図ることが可能となる。
【0019】
一般に、外型と内型とを相対回転しつつ溶融混合樹脂材料が環状流路を通過すると、金型接触面近傍が最も剪断力が大きくなり、環状流路の厚さ方向中央部が最も剪断力が小さくなる。したがって、上記高粘度樹脂層は、環状流路の厚さ方向中央部に形成される。さらに、相対回転により、内型の自己調心作用が生じ、周方向に均一な肉厚の円筒状押出成形体を得ることが可能となる。かかる自己調心作用を生じさせるために、押出成形体の肉厚(即ち、第1及び第2の樹脂層を含む全肉厚)は、2mm以下の薄肉状とするのが好ましい。
【0020】
上記製造方法によって製造される成形品は、横断面円筒状のものに制約されるが、その成形品の種類は特定のものに限定されるものではない。例えば、積層構造の樹脂管、ダイレクトブロー成形に用いる円筒状パリソンなどを上記製造方法によって成形することが可能である。即ち、上記製造方法を適用したダイレクトブロー成形法は、上記製造方法によってパイプ状の多層パリソンを成形し、このパリソンを割金型に挟み込んでボトル底部となるパリソンの軸方向一部を融着するとともに、このパリソン内にエアーを吹き込み、エア圧によりパリソンを割金型の内面に押圧させることを特徴とするものである。かかるダイレクトブロー成形法は、パリソンの積層化法を除いて従来周知の技術を適用することにより当業者ならば容易に実施できる。
【0021】
上記製造方法は、次の製造装置によって実施することが可能である。かかる多層押出成形体の製造装置は、粘度の異なる2種以上の熱可塑性樹脂材料を溶融混練する押出機と、該押出機の先端部に取付けられたダイとを備え、該ダイは、円筒状の内周面を有する外型と、円筒状の外周面を有し外型内に同一軸心上に配設された内型と、外型と内型とをその軸心回りに相対回転させる回転駆動機構とを備え、内型と外型の間には横断面において環状の流路が形成されたものである。かかる製造装置によれば、回転駆動機構により外型と内型とを相対回転することで剪断応力の小さい環状流路の厚さ方向所定部分に粘度の高い樹脂材料の層を形成するとともに、該高粘度樹脂層の内外に粘度の低い樹脂材料の層を形成することが可能である。また、回転駆動機構を作動させなければ、単層押出用ダイとして使用することが可能であるため、かかる製造装置を用いて単層の押出成形品を成形することも可能である。
【0022】
回転駆動機構は、外型及び内型の何れか一方をその軸心回りに回転駆動するものとすることができる。これによれば、外型と内型の一方のみに回転駆動機構を設ければよいから、装置構造の簡素化が図られるとともに、ダイ内の流路構造や、ダイと押出機との接続構造などの設計の自由度を大きくすることができる。
【0023】
なお、上記本発明の成形体は合成樹脂成形品が好ましく、また、成形品としては最終成形品のみならず、その後に更にブロー成形等の成形加工或いはアフターベーキング等の二次加工が施されるもの(パリソンなど)も含まれる。また、本発明の成形体は、3層成形体のみならず、4層以上の成形体や2層成形体も含まれる。
【0024】
上記回転駆動機構は、外型と内型とを相対的に回転駆動するものであればどのような構成を採用してもよく、例えば、外型と内型の両者を回転駆動するものでもよいし、外型と内型のいずれか一方を固定し、他方を回転駆動するものでもよい。具体的には、例えば、回転駆動機構は、外型をその軸心回りに回転駆動するものとすることができる。また、回転駆動機構は、内型をその軸心回りに回転駆動するものとすることもできる。また、環状流路の軸方向一部分のみにおいて外型と内型とを相対回転させるように構成することもでき、この場合、相対回転部分において2種以上の溶融樹脂材料が径方向内外に分離されるが、この相対回転部分の下流側で各樹脂材料毎の環状流路を分離して形成し、ある程度粘度が増した時点で各樹脂材料層を合流させることも可能である。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明にあっては、多層成形品の各層を構成する樹脂材料を予め溶融混合し、この溶融混合樹脂材料をダイの内部の環状流路を流通させる過程で外型及び内型を相対回転させることにより、各樹脂材料の粘度差と環状流路内部における剪断力の差に起因して各樹脂材料が内外に分散するので、単一の押出機で多層押出成形品を得ることができる。かかる新規な製造方法及び製造装置を用いて多層樹脂成形品を製造することにより、装置構成の簡略化、設備コストの削減を図ることができ、製品コストをも大幅に低減することが可能であるとともに、本発明の押出成形装置は単層成形品と多層成形品のいずれをも成形することが可能であるという顕著な効果を奏することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る多層パリソン(多層成形体)を用いたダイレクトブロー成形装置1の要部を簡略視している。該ダイレクトブロー成形装置1は、円筒状の多層パリソンPを押出成形する多層押出成形装置2と、該装置2により成形された直後にパリソンPをブロー成形してボトル製品を得るためのブロー成形金型3とを備えている。なお、このようにして得られたボトル製品もまた、本発明の多層成形体の一実施形態である。
【0028】
上記押出成形装置2は、クロスヘッドダイ4と、該ダイ4へ溶融混合樹脂材料(成形材料)を供給する単一の混練押出機5と、該混練押出機5にペレット状の原材料を供給するためのホッパー6とを備えている。このホッパー6には、多層成形品の各層を構成する複数の樹脂材料が供給されるとともに、必要ならば各種添加材料(相溶化剤など)が供給される。この樹脂材料の組み合わせは、成形品に要求される性能、用途等に応じて種々選択することができ、例えば、ナイロン(第1の高分子材料)とポリオレフィン(第2の高分子材料)や、PET(第1の高分子材料)とナイロン(第2の高分子材料)などとすることができる。なお、各樹脂材料毎にホッパー4を設けてもよく、また、各樹脂材料毎に溶融混練を行い、溶融状態で異なる樹脂材料を混合するように構成することもできる。また、2種以上の樹脂材料を混合してなる混合ペレットを用いることも可能である。
【0029】
ダイ4は、押出機5の先端に接続されており、円筒状の内周面を有する外型7(ダイス)と、円筒状の外周面を有し外型7内に同一軸心上に配設された内型8(コア)とを備えている。外型7と内型8との間には、横断面において円環状の流路が形成されており、押出機5内でスクリュー5aによって混練溶融され押し出された成形材料は、この環状流路内で賦形・冷却され、ダイ4の先端部(下端部)から押し出される。なお、ダイ4から押し出された成形材料は、押出機5並びにダイ4内部の加圧状態から瞬間的に常圧状態となるために径方向に膨らみ、所定の径のパリソンが形成される。
【0030】
上記内型8は、モータ10及び伝動ギア11,12を有する回転駆動機構によって高速に回転駆動可能に構成されている。即ち、内型8の上部側は外型7の上部側に回転可能に嵌合されており、内型8の下部側は上部側に比して小径に構成され、この内型8の下部側と外型7との間の隙間が成形材料の流路となされている。なお、内型8は、外型7に固定したベアリングによって回転可能に支持することもできる。また、内型8の上端部にはギア12が一体的に設けられているとともに、該ギア12と噛合するギア11がモータ10の出力軸に設けられている。
【0031】
上述したダイ4の下方には、ブロー成形金型3が配設されている。該ブロー成形金型3は、割型3a,3bと、図示しない吹き込みノズル等から構成される従来公知のものと同様であるので詳細説明を省略する。
【0032】
上記ダイレクトブロー成形装置によれば、例えばポリエチレンなどのポリオレフィンとナイロンとのポリマーブレンドを単一の押出機から押し出すことによって多層構成のブロー成形品を製造することが可能である。即ち、押出機5内で溶融混合された均一ブレンド樹脂材料をダイ4に供給してダイ4内の流路を流通させるが、この際にモータ10を駆動して内型8を高速に回転させると、ポリオレフィンとナイロンとの溶融時粘度差により、粘度の高いナイロンが環状流路の厚さ方向中央側へ移行し、粘度の低いポリオレフィンが環状流路の厚さ方向方向両外側(ナイロンの外周側と内周側)へ移行していき、混合樹脂材料が環状流路内で多層化される。なお、内型8の回転により、該内型8に自己調心作用が生じ、周方向にほぼ均一な肉厚で多層パリソンが形成される。
【0033】
そして、成形材料は環状流路の下流側に至るにしたがって冷却され、成形材料の硬化が進むため、多層化された状態でダイ4の先端部から押し出され、円筒状の多層パリソン(3層パリソン)が成形される。このように成形された多層成形体であるパリソンは、成形温度における溶融粘度の高いナイロン(第1の高分子材料)が層厚方向中央部に凝集して該ナイロンから主構成される第1樹脂層を構成するとともに、溶融粘度の低いポリオレフィンが第1樹脂層の表裏両側に凝集して第2樹脂層を構成したものとなる。さらに、これら第1樹脂層と第2樹脂層との界面は明確ではなく、第1樹脂層を構成する高分子鎖と第2樹脂層を構成する高分子鎖とのからみ合いが形成されたものとなる。このからみ合いは、成形条件を種々設定することにより、層厚方向に0.1mm以上形成させることもでき、また、0.2mm以上形成させることもできる。
【0034】
このパリソンを、上記ブロー成形型の割金型3a,3bに挟み込んでボトル底部となるパリソンの軸方向一部(図面において割金型3a,3bの上部側)を融着するとともに、このパリソン内にエアーを吹き込み、エア圧によりパリソンを膨張させて割金型3a,3bの内面に押圧させ、冷却固化することで、積層ボトル容器が形成される。
【0035】
一方、単層成形品を製造する場合には、モータ10を停止させておくことにより、上記ダイ4により単層パリソンの成形を行うことができ、単層成形品と多層成形品とで装置の共用を図ることができる。
【0036】
また、多層構造を得るための2以上の樹脂材料を単一の押出機内で混練溶融すればよいから、押出機の数を少なくすることができ、装置コストの低減、装置全体の小型化を図ることも可能である。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態の態様に限定されるものではなく、本願発明の意図する範囲内で適宜設計変更可能である。例えば、ダイは、クロスヘッドダイに限らず、オフセットダイやストレートダイなどの従来公知の適宜の構成とすることができる。また、本発明は、少なくとも一つの押出機内で2以上の樹脂材料を混練溶融し、これをダイ内で多層化させるものであればよく、このような多層化される2以上の樹脂材料を混練溶融する押出機とともに、従来公知のライニング用成形材料の押出機を備えることも可能である。
【0038】
また、上記パリソンPの周方向の1カ所を軸方向に切り開いて、適宜の圧延機を用いて平板状若しくはフィルム状に圧延することにより、多層フィルム若しくは多層板状成形体を得ることも可能であり、これら多層フィルムや多層板状成形体も本発明の多層成形体に包含される。
【実施例】
【0039】
三菱ガス化学株式会社製のポリアミドである「MXナイロン6001」と、ユニチカ株式会社製のポリエチレンテレフタレートである「PET1206」の2種の高分子材料を、PET/PA=85/15(wt%)の比率で混合し、押出機を用いて混合ペレットを製作した。この押出機の押し出し条件は、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数30rpmとした。製作したペレットを0.1%氷酢酸溶液で染色したところ、ポリアミドがPETに均一に分散していることが確認された。
【0040】
この混合ペレットを、上記押出成形装置2のホッパー6に投入し、押出条件を、シリンダー温度180℃、スクリュー回転数60rpm、押出ヘッド温度190℃、押出速度20mm/sec、コア回転数60rpmとして押出成形したところ、図2に示すように、ポリアミド層/PET層/ポリアミド層の3層積層構造の断面を有する多層パリソンが得られた。
【0041】
この多層パリソンの壁肉厚は略1.07mm、外周面側表層(図2において右側)を構成するポリアミド層の肉厚は略0.12mm、内周面側表層(図2において左側)を構成するポリアミド層の肉厚は略0.15mm、中央のPET層の肉厚は略0.8mmであった。また、ポリアミド層とPET層との界面は不明確なものとなっており、該界面においては層厚方向に略0.01mm〜0.02mmにわたってPETとポリアミドの両材料が分散して、両高分子鎖のからみ合いが形成されていた。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る多層パリソン並びに多層ボトルを成形するためのダイレクトブロー成形装置の全体簡略側断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係る多層パリソンの断面構造を示す断面拡大写真である。
【図3】従来の多層押出成形装置の簡略側断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ダイレクトブロー成形装置
2 多層押出成形装置
3 ブロー成形金型
4 ダイ
5 押出機
7 外型(ダイス)
8 内型(コア)
10,11,12 回転駆動機構
P パリソン(多層成形体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の高分子材料から主構成される第1樹脂層と、第2の高分子材料から主構成される第2樹脂層とを少なくとも有する多層成形体において、第1の高分子材料は、第2の高分子材料に比して所定の成形温度における溶融粘度の大きいものであり、第1樹脂層と第2樹脂層との層間には、第1樹脂層を構成する高分子鎖と第2樹脂層を構成する高分子鎖とのからみ合いが形成されていることを特徴とする多層成形体。
【請求項2】
からみ合いは、層厚方向に0.01mm以上にわたって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多層成形体。
【請求項3】
第1樹脂層の表裏両側に、第2樹脂層が積層形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層成形体。
【請求項4】
第1の高分子材料と第2の高分子材料とを含む溶融混合樹脂材料を外型と内型とを有するダイから押し出す際に、環状流路を形成する外型と内型とを相対回転し、これにより第1の高分子材料と第2の高分子材料とを層厚方向に分離させ、これら第1及び第2の高分子材料を冷却固化することにより第1及び第2の樹脂層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多層成形体。
【請求項5】
肉厚が全体にわたって略均一な請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多層成形体において、第1樹脂層がすべて、多層成形体の面内方向に沿って形成されていることを特徴とする多層成形体。
【請求項6】
円筒状の押出成形体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の多層成形体。
【請求項7】
請求項6に記載の円筒状多層成形体の周方向の所定部位を軸方向に切り開いて、平板状若しくはフィルム状に圧延してなる多層成形体。
【請求項8】
請求項6に記載の円筒状多層成形体をパリソンとして用いてボトル状に吹き込み成形してなる多層成形体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−168290(P2006−168290A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367087(P2004−367087)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000206185)大成化工株式会社 (83)
【Fターム(参考)】