説明

多層成形品及びその成形方法

【課題】一次成形部材の表面部に二次成形材料を注入し、多層成形した製品において表面外観品質に優れた多層成形品及びその成形方法の提供を目的とする。
【解決手段】一次成形部材の表面部に二次成形材料を注入し多層成形する多層成形方法であって、一次成形部材の基材に開口部を予め形成し、二次成形材料の注入時に前記開口部を当該二次成形材料のガス逃げ部として作用させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次成形部材の表面に二次成形層、あるいはさらに三次成形層を形成した多層成形品及びその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
色の異なる樹脂を同一金型キャビティ内に射出する二色成形方法や一次成形部材の表面に二次層を注入又は射出等する多層成形においては、樹脂が流れ合流するウエルド部、あるいは充填末端部からガス抜きを図る必要がある。
キャビティ内からガス抜きが不充分の場合には、図4に「c」で示すようにガスの逃げ場がなくなり、ガス溜まりによる外観不良が発生する。
例えば特許文献1には、キャビティ内の樹脂の最終合流位置にガス抜き機構を設けた技術を開示し、特許文献2には、一次成形時に肉厚部を形成し、この肉厚部を冷却手段で冷却することで収縮させ、二次成形材料のガス排出部を形成する技術を開示する。
しかし、多層成形にて二次材料の厚みは薄く、一次成形部材との隙間のバラツキも大きいため、二次材料の注入合流部を所定の位置に定めるのが難しく、特許文献1の方法は適用できない。
また、特許文献2に示す肉厚部は形成できる部位に制限があり、型構造も複雑になるため実用的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3315435号公報
【特許文献2】特開2004−174812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、一次成形部材の表面部に二次成形材料を注入し、多層成形した製品において表面外観品質に優れた多層成形品及びその成形方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る多層成形方法は、一次成形部材の表面部に二次成形材料を注入し多層成形する多層成形方法であって、一次成形部材の基材に開口部を予め形成し、二次成形材料の注入時に前記開口部を当該二次成形材料のガス逃げ部として作用させたことを特徴とする。
ここで一次成形部材は、一層のみならず複層からなる樹脂部材であってもよいことから、多層成形と表現した。
また、一次成形部材の基材に設けた開口部に限定したのは、製品の形状として元々、求められている開口部は本発明における一次成形部材の開口部に含まれない趣旨である。
従って、一次成形部材の基材に予め形成した開口部は多層成形品の状態で表面部から見えない開口部をいう。
二次成形材料の注入方法は、射出成形に限らずインジェクター等を用いた高圧注入でもよい。
また、一次成形部材の表面部とは、外観意匠として必要な表面部をいい、特に一次成形部材の片面の多くあるいは殆どの部分が表面部となる場合に本発明が効果的である。
【0006】
一次成形部材の基材に形成した開口部は、二次成形材料を注入する工程にて生じるガスの逃げ部として作用させるものであることから、前記一次成形部材の開口部は、二次成形材料の注入時に充填末端部又はウエルド部となる部位に形成してあるのが好ましい。
ここでウエルド部とは、注入した樹脂の流れ先端同士の合流部をいう。
【0007】
本発明に係る多層成形品は、上記の方法で成形したものであり、一次成形部材の基材に開口部を形成してあり、二次成形層が前記開口部の少なくとも表面部側を塞いであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にあっては、二次成形材料の注入時に発生するガスの逃げ部を、一次成形部材の基材に設けた開口部としたことにより、二次成形にて形成された表面部にガス溜まり等による外観欠陥が生じるのを抑え、外観品質に優れた多層成形品が得られる。
また、金型構造も簡単であり、生産性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る多層成形方法に用いる金型構造例を示す。
【図2】多層成形品の断面構造及び外観例を示す。
【図3】多層成形品の例を示す。
【図4】表面にガス溜まり欠陥が発生する従来例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る多層成形品の用途に限定はないが、一次成形部材をポリプロピレン(PP)樹脂、硬質ウレタン樹脂、硬質塩化ビニル樹脂等の比較的硬質で強度の高い樹脂材料を用いた場合に製品全体の強度は確保しやすいが、表面が硬く、手触り品質に劣るので、表面部を軟質の熱可塑性エラストマー材料等で被覆することで表面が柔らかい内装品等としての高級感を得る用途に効果的である。
【0011】
本発明者らは、本発明の効果を確認、検証すべく、図3に示すような自動車の内装部品として使用されるドアトリムを試作評価したので以下説明する。
【0012】
ドアトリムのような比較的大きく、複雑な凹凸形状を有する製品の場合には、流動性の高い熱可塑性エラストマーを二次注入材料に用いたとしてもドアトリムの表面部(車内側)全体に射出被覆するのは難しく、PP樹脂で成形した一次成形部材と金型の間に0.1〜1.5mm程度の隙間を形成し、熱可塑性エラストマーを射出注入すると、図4に示すように充填末端部付近にガス溜まりによる外観不良が発生した。
そこで、この充填末端部付近に対応して一次成形品に開口部を形成して試作した。
【0013】
試作に用いた金型構造例を図1に模式的に示す。
固定型1と可動型2にてキャビティ3を形成し、一次成形部材の基材に開口部が形成されるように例えば図1では固定型1側に突部5を形成する。
突部5の形状や大きさは、二次成形材料のガス逃げに必要な大きさで且つ二次成形材の注入時に少なくとも表面部側がこの二次成形材料で塞がれる大きさである。
一次成形部材の肉厚によっても設定が異なるが、開口面積で3mm〜400mmの範囲である。
また、開口部の数も二次成形材料で塞がれる範囲で制限がない。
図1(a)の金型を用いてスプルー4からPP樹脂を射出成形した。
これにより、図1(b)に示すように一次成形部材11の基材に開口部11aが形成される。
次に図1(b)に示すように一次成形部材が型内に残る可動型2と、固定型1aとの間に二次成形材料を注入する隙間を形成し、その隙間に注入部6から熱可塑性エラストマーを注入(射出)した。
なお、図1(b)において二次成形層の厚みを分かりやすくするために実際よりも大きく表現してあり、実際には、0.1〜2.0mmの範囲であり、好ましくは0.3〜1.0mm程度である。
多くの場合に一次成形部材の基材に開口部を形成するだけで、その開口部に二次成形時のガスが逃げ、二次成形層の外観表面が均一で良好に成形されるが、例えば図1(b)に想像線で模式的に表現したように開口部から金型を経由したガス抜き機構2aを設けるとさらに表面品質が向上する。
【0014】
図2(a)は図3に示した多層成形品10のA部の断面図で、図2(b)は外観図である。
二次成形材料の充填末端部が一次成形部材に形成した開口部11aに流れ込み、その際にガスがこの開口部に逃げ、外観は図2(b)に示すように開口部が見えず、均一で良好な外観品質となった。
【符号の説明】
【0015】
1 固定型
1a 固定型
2 可動型
3 キャビティ
4 スプルー
5 突部
6 注入部
10 多層成形品
11 一次成形部材
11a 開口部
12 二次成形層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次成形部材の表面部に二次成形材料を注入し多層成形する多層成形方法であって、
一次成形部材の基材に開口部を予め形成し、二次成形材料の注入時に前記開口部を当該二次成形材料のガス逃げ部として作用させたことを特徴とする多層成形方法。
【請求項2】
前記一次成形部材の開口部は、二次成形材料の注入時に充填末端部又はウエルド部となる部位に形成してあることを特徴とする請求項1記載の多層成形方法。
【請求項3】
一次成形部材の基材に開口部を形成してあり、二次成形層が前記開口部の少なくとも表面部側を塞いであることを特徴とする多層成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−104839(P2011−104839A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261119(P2009−261119)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000132932)株式会社タカギセイコー (29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】